PAL NEWS 2015/09 猫の乳腺腫瘍 パル動物病院 私たちは最先端の診療技術を生かし、地域に 猫の乳腺腫瘍は、猫の腫瘍の中で 3 番目に多 く発生する腫瘍であり、10 ∼ 12 歳の雌猫でよ くみられます。今回は、加齢とともに増加する 疾患の一つである、乳腺腫瘍についてお話しい 密着した動物病院を目標にしております。 たします。 ~人と動物の絆~ よりよい関係を目指して パルニュース 2015 年 9 月 ●猫の乳腺腫瘍 ●犬のリンパ腫について 診療時間 ●裾野センター病院 月~土 午前 9:00 ~ 午後 14:00 ~ 日・祝 午前 9:00 ~ 午後 14:00 ~ 12:00 (11:30) 21:00 (20:30) 12:00 (11:30) 19:00 (18:30) ●沼津病院 平日 午前 9:00 ~ 12:00 (11:30) 午後 14:00 ~ 19:00 (18:30) 日 午前 9:00 ~ 12:00 (11:30) 木・祝日休診 お問合せ ●裾野センター病院 静岡県裾野市伊豆島田 843-5 TEL: 055-993-3135 ●沼津病院 静岡県沼津市沼北町 1 丁目 5-27 TEL: 055-922-6255 ●ウェブサイト http://pal-ah.jp 原因 雌性ホルモンが腫瘍の発生に関与していると 言われています。1 歳になるまでに不妊手術を行 い、その後の雌性ホルモンの影響を除くと、乳 腺腫瘍の発生が 1/5 になるとの報告があります。 症状 乳腺にしこりができます。猫の乳腺腫瘍は 8 ~ 9 割が悪性と言われております。悪性の場合 進行は早く、放置しておくと腫瘍は大きくなり、 皮膚が破れて化膿することがあります。また、 腫瘍細胞が肺へ転移し、胸水が貯まって、呼 吸困難になることがあります。 診断 乳腺にできるしこりは、乳腺腫瘍、またはそ れ以外(乳腺の過形成、乳腺炎による腫れ、他 の皮膚腫瘍など)の可能性があります。この違い で治療方針が大きく異なるため、まず細い針で しこりを刺して、どのような腫瘤であるかを確認 いたします(細胞診) 。細胞診で、乳腺の腫瘍細 胞を疑う場合は、外科手術を行うことを考えます。 治療 外科手術 乳腺腫瘍の第一選択となる治療は外科手 術です。猫の乳腺腫瘍は悪性の確率が高いた め、腫瘍のある側の乳腺を一括して摘出する ことが推奨されます。しかし、 全身状態が悪い、 すでに肺 転 移 がある、といっ た、手術が不可 能な状 態 の場 合、点滴や疼痛 管理など、症状 に応じた処置を 行い、少しでも、 罹患した猫の生 活の質を上げる 治療を行います。 内科治療 内科治療としては抗がん剤治療があり、外 科手術後に補助的な治療として用いられま す。腫瘍のある側の乳腺を全摘出した猫で、 術後に抗がん剤治療を行った方が 5 倍弱長 生きしたという報告もあります。 ● 今月の専門科診療 ● 今月は下記の日程で専門科の診察を行います。 ご希望の方は事前にご予約ください。 (カッコ内はカレンダー内の省略形です) ◆歯科(歯) 博士(歯学):奥田 綾子 先生 ◆エキゾチックペット(エキゾ) エキゾチックペットクリニック つるの 博士(獣医学):霍野 晋吉 先生 ◆画像診断科(画) 博士(獣医学):小野 晋 先生 ◆眼科 博士(獣医学):当院 小野 啓 毎週火曜~土曜日 (カレンダーには表記していません) 予防 先にも記したとおり、1 歳未満までの不妊手 術により、乳腺腫瘍の発生のリスクを大幅に減 らすことができます。しかし、1 歳から 2 歳未 満での不妊手術は、腫瘍発生を予防する効果 は少なく、2 歳以降に行った場合では、全く予 防効果はなかったという報告がされています。 ご自宅では、日ごろから体全体を触り、しこ りを見つけたら早めに受診することが重要です。 高齢の猫で発生する病気ですが、若いうちの不 妊手術で予防できるので、若齢の猫を迎えたら 1 歳までに不妊手術をすることをお勧めします。 参考文献 くわしい猫の病気大図典 誠文堂新光社 犬と猫の治療ガイド 2012 interzoo 学会等で不在のこともありますので、 事前のご予約をお願いいたします。 2015 年 9 月 月 火 水 木 金 土 2 3 4 7 1 画 8 9 14 15 16 10 歯 17 11 12 エキゾ 18 19 21 22 23 28 29 30 24 25 エキゾ 5 26 日 6 13 20 27 犬のリンパ腫について リンパ腫は、血液の白血球の成分のひとつである、リンパ球が腫瘍化して生じる血液のがんです。犬では、 発生率の高い腫瘍のひとつにあげられています。今回は犬のリンパ腫について、お話しいたします。 <分類> 犬のリンパ腫は、様々なタイプがあり、症状や治療への反応が異なり ます。以下の3つの分類法により分けられます。 1. 発生部位による分類 犬で最も多いのは、複数の体表にあるリンパ節が同時に腫れ る多中心型リンパ腫で、80%を占めます。その他、主に腸管や腸 間膜リンパ節などに発生する消化器型リンパ腫、胸のなかに発生 する縦隔(じゅうかく)型リンパ腫、皮膚に発生する皮膚型リンパ 腫などがあります。 2. 悪性度による分類 腫瘍細胞の悪性度によって、主に低分化型リンパ腫と高悪性度リ ンパ腫に分類されます。低悪性度リンパ腫と高悪性度リンパ腫では、 使用する抗がん剤の種類や、治療の開始時期が異なります。前者 は進行がゆっくりで生存期間が比較的長いのに対し、後者は病状 の進行が急速で生存期間が短いという特徴があります。 3. 免疫学的な分類 リンパ球は、主に B リンパ球と T リンパ球という2つの種類に分 けられ、どちらのリンパ球の腫瘍なのかを、特殊な染色(免疫染 色)や遺伝子検査を行なって調べます。B リンパ球が腫瘍化した B 細胞型リンパ腫は、抗がん治療に良く反応しますが、T リンパ球が 腫瘍化した T 細胞型リンパ腫は、治療に対する反応が悪く、延命 期間も短いといわれています。 <症状> リンパ腫の発生部位により様々な症状が現れます。多中心型リンパ腫 であれば、体表リンパ節が腫れますし、消化器型リンパ腫であれば、嘔 吐や下痢、食欲不振が生じます。縦隔型リンパ腫では、胸水が貯留し、 呼吸が苦しくなります。皮膚型リンパ腫では、潰瘍状皮膚炎として現れ たり、体の表面に腫瘤を形成します。 <診断> 細い針で細胞を吸引する細胞診検査や、組織の一部を切除して調べ る病理組織学的検査にて診断します。また、体の状況を把握するために、 血液検査や、X 線検査、超音波検査、尿検査を行います。 <治療> リンパ腫の治療は、抗がん剤を用いた内科治療が中心となります。治 療法は、リンパ腫のタイプにより異なります。高悪性度リンパ腫は、幾 つかの抗がん剤を組み合わせて積極的に治療を行います。一方、低悪 性度リンパ腫では、無治療で経過を追う場合もあります。 <抗がん剤について> 抗がん剤は腫瘍細胞を死滅させると同時に、正常細胞にもダメージ を与えるため、多少なりとも副作用が生じます。主なものは、血液細胞 (赤血球、白血球、血小板)の生産機能が低下する骨髄抑制、消化器 毒性(嘔吐、下痢、血便、便秘) 、脱毛です。副作用の症状や程度は、 その治療薬の種類や、治療を受ける動物の感受性によって異なります。 治療中は、定期的に検診をしながら、副作用ができるだけ出現しないよ うに、注意を払って経過を追っていきます。 犬のリンパ腫は、残念ながら完治を望めない腫瘍です。しかし、治 療を行うことで寿命を延ばし、生活の質を上げることができます。 早期発見を心がけつつ、万が一発症した場合には、病院と連携をと りながら治療を行なっていきましょう。 参考文献:動物看護専門誌 as2015 年2月号(インターズー社) パルニュース 2015 年 9 月号
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