諸外国における“みち”をテーマとした観光・地域振興 - 北の道リサーチ

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第27回日本道路会議
諸外国における“みち”をテーマとした観光・地域振興
(独)土木研究所 寒地土木研究所 地域景観ユニット
○松
田
泰
明
同
松
山
雄
馬
同
加治屋
安
彦
1.はじめに
近年、国際観光の重要性が増す中、道路においても観光振興への貢献が重要となっており、2007 年 1 月に
施行された観光立国推進基本法でも国や自治体の貢献が責務とされている。そのような背景の中、2004 年か
ら本格的に始まった「シーニックバイウェイ北海道」をはじめ、
「日本風景街
道」など、道路資産を有効活用し、地域に新たな活力と富をもたらす“みち”
(台数)
1,600
1,354
1,400
をテーマとした観光・地域振興の取り組が進められている。また、北海道で
1,200
はこのような活動も一つの契機となり、アジアからの外国人観光客にも車窓
1,000
からの美しい沿道景観を楽しみながらのドライブ観光が人気である(図 1)。
800
一方、諸外国においても、様々な特徴ある“みち”をテーマとした“街道
600
プログラム”が展開されている。そこで、これら諸外国での主な施策につい
400
て述べると共に、北海道を始めとする我が国における取り組みと今後成長が
200
期待される外国人ドライブ観光について考察する。
新千歳空港レンタカー協議会調べ
479
345
288
0
2003
2004
2005
2006 (年)
図 1 新千歳空港の外国人
レンタカー利用台数
2.諸外国における“みち”をテーマとした観光・地域振興
2.1 主な取り組み事例
日本人が多く訪れる先進諸国を中心に主なものでも以下のよう
な事例があり、多くは日本語 HP などで情報提供を行っている。
・休暇街道(独)~1927 年にドイツ・アルペン街道が設けられた
後、戦後の経済復興を目的に 1950 年に約 40 ルート、現在は
ドイツ政府観光局や自治体が定めた約 150 ルート以上が「個
人の休暇を楽しむための観点」で企画運営され、各地域の住
民活動も盛んである。法的枠組みはない。
・シーニックバイウェイプログラム(米、米各州)~日本のシー
図 2 外国人向け北海道ドライブマップ 1)
ニックバイウェイが参考としたプログラム。連邦道路庁のシ
ーニックバイウェイ法などに基づくプログラムには、ルート
にグレード設定がある。いずれも指定条件を満足する地域の
資源や活動内容が条件。州交通省などのプログラムは、その
地域環境に応じて独自のスタイルとなっている。
・ 観光街道(加・オンタリオ州)~1990 年代に観光振興を目的
に、優れた自然景観、文化・歴史遺産、街並を結ぶ観光ルー
ト。有名な遺産街道(通称メイプル街道)は、特に日本人向
けに積極的な情報提供を行っている。
図 3 カナダ観光局メープル街道の HP2)
・ 遺産街道とツーリングルート(豪・タスマニア)~既存の遺産道路を軸に 2003 年に州観光・芸術・環境
省が選定。通過観光の問題を解決するため、エリア別に SWOT 分析を行い、ツアールート戦略を構築し、
住民との協働で各アクションプランを策定。現在、11 ルートを日本語などで情報発信している
・ ニュージーランド8街道~古くからの日本の「街道」にならい、政府観光局が旅行業者や観光客に各地
域を簡単に理解することを目的に設定。マーケティングの為のもので、実際には現地に「街道」の標識
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などはないが、同観光局が提供しているパンフレットなどはすべて「8街道」のコンセプトに基づく。
・ フランスの美しい道~仏政府観光局が仏航空会社と共同で展開。従来の人気ルートから一歩奥にある地
域の未知の魅力を紹介し、新しい需要を掘り起こすことを目的としている。それぞれの道には個性的な
テーマを設定し、仏全土から選りすぐりの 10 エリアが政府観光局により独自に選定されている。
・ 観光道路(中・青海省、中)~中国青海省では、チンハイ・チベット高原の観光促進による地域振興を
目的に 5 ルートを観光道路に指定し、国際的な自転車レースなどを開催している。他に中国政府は、本
年、国際的な知名度を上げる狙いで、長江の三峡地域の 120km を中国初の国家景観道として整備する計
画を発表。
2.2 外国人観光客のための安全で快適な運転支援の取り組み
外国人のドライブ観光の増加によって、交通事故の増加が考えられるため、
地理や交通ルールに不案内な外国人に安全で快適な運転支援も重要である。
年間 60 万人の外国人がレンタカーで移動するニュージーランドでは、陸上交
通安全局にてこれらに関する調査研究を行い、外国人ドライバーに対しての
安全運転啓発や交通ルールの周知、交通事故対策が重要とし、特に交通シス
テムの異なる非英語圏への対応の重要性を指摘している 3)。
オーストラリアのニューサウスウェールズ州道路交通局では、現地に住む
外国人などを対象に、11 カ国語のハンドブックを HP4)で提供している(図 4)。
3.諸外国の事例からみた我が国における今後の取り組みについて
多くの国や地域で“みち”をテーマとした観光・地域振興が積極的に行わ
れ、個人のドライブ観光は世界的な市場でグローバルな競争環境にもある中、
図 4 道路利用者のハンドブ
ック(豪・NSW)
諸外国の事例や北海道における外国人ドライブの実証実験の結果 5)などから、以下のことを提案したい。な
お、必要な方策は外国人にとってのドライブ観光の利便性向上とルートそのものの魅力向上に分けられる。
・ 国全体のプログラム推進の重要性と共に、地域資源や環境に応じた地域独自のプログラムも有効。
・ 外国人向けのプロモーションを積極的に行っており、我が国の同様な取り組みでも、道路・交通・観光
など各関係機関が連携した外国語による積極的な情報発信とそれによるドライブ支援が重要である。
・ 特にツーリング環境について、外国人向けの HP、ガイドブックや地図など計画段階の情報提供が重要。
・ レンタカードライブを前提とした街道エリアでの様々な楽しみ方やアクティビティーの提供。
・ 多くが 2 泊 3 日で楽しむエリアやルートを設定し、複数のルートを組み合わせた計画が出来るよう工夫
されており、このような旅の提案が必要。
・ 実際に訪れた外国人旅行者等による評価が、施策や地域の魅力向上に反映されるシステムの構築が有効。
・ 交通事故の増加も懸念されるため、外国人ドライバーに対し、安全運転の支援が重要。北海道において
は、当面、豪州などから訪れるスキーヤーの冬のレンタカー運転への情報提供などが必要と考えられる。
4.おわりに
諸外国の“街道プログラム”は、いずれも美しい沿道景観やすばらしい文化遺産を多く有し、世界レベル
の観光地も多い。同時に、既存の研究 3)では、レンタカー観光をする外国人観光客は高い所得と教育を受け
ている人が多いとの結果もあり、さらに、北海道観光に訪れる外国人ドライバーも海外旅行経験が豊富な富
裕層が多かった 5)。従って、今後はまず官民が協力してルートの魅力向上を図ると共に、質の高いサービス
を目指していくことが必要である。
参考文献
1)北海道開発局 HP:北の夢街道,英語版より
2)カナダ観光局 HP:http://www.canada.or.jp
ウスウェルズ州道路交通局 HP:http://www.rta.nsw.gov.au
Authority:Tourist Road Safety in Otago and Southland.
3)豪ニュースサ
4)A report commissioned by the Land Transport Safety
5)北海道における地域協働型外国人ドライブ観光推進調査
報告書,外国人ドライブ観光推進協議会,2007 年 1 月