血液および血管壁の自己蛍光分析による動脈硬化診断装置の開発に

血液および血管壁の自己蛍光分析による動脈硬化診断装置の開発に
関する基礎的研究
教授
東北大学 r
学研究科機械電子工学専攻
助教授
学専攻 博士課程
東北大学工学研究科機械電子 r
1
. はじめに
正新健淳
教授
東北大学加齢医学研究所
藤田本橋
東北大学工学研究科機械電子,--学専攻
共同研究者
佐仁松高
研究責任者
明
郎
子
を照射することにより動脈硬化部位を特定するという研
我が固における食生活の西洋化に伴ってその数が急速
7,
8
1 T
suchidaらは,血清の水溶性成
究がなされている (6,
に増加している動脈硬化疾患の予防には,早期発見のた
分が蛍光を発し,過酸化脂質の増加と共に蛍光強度が増
めの安価で、簡便な診断法の確立が求められる。現在の動
すことから,蛍光物質は蛋白に過酸化脂質が結合したも
0
脈硬化の診断は, CT (ComputedTomography),血管
のであると述べている問。また,動脈硬化の成因と深い関
D
i
g
i
t
a
lS
u
b
t
r
a
c
t
i
o
nAngiography),腹部
造影, DSA (
係を持っと考えられている LDLに関して, LDLは蛍光を
エコー等であり,簡便とは言い難し病変がかなり進行
発 L,酸化によって蛍光強度が増すことが報告されてい
る(10,11,12)。
した場合のみ有効である。
ところで,動脈硬化巣の構成細胞の特徴は泡沫化した
このように,動脈硬化と血液および血管壁の自己蛍光
未細胞は単球由来 7 クロファージ
細胞の出現である。?包j
について検討されつつあるが,血液と血管壁の自己蛍光
が酸化 LDLを摂取し,脂質を蓄積した終末像であると考
物質の関連,また,蛍光物質がどのようなかたちで動脈
えられている (11。また,動脈硬化部伎に酸化 LDLおよびそ
硬化に関与しているかについての十分な検討はなきれて
のレセプターが存在することが知られている(口)。これま
いない。
の酸化変性は血管壁内で起こるものと考えられ,
でLDL
以上の点より,本研究の目的は動脈硬化と血液および
この過程には血管内皮細胞あるいはマクロファージ由来
血管壁の q
lにみられる自己蛍光物質の関係を明確にし,
5 リポキシゲナーセ、 (
1
5
L
O
)が関与するといわれて
の1
動脈硬化の早期診断方法を確立することとした。また,
いる。
そのためには,白己蛍光の波長分析を行い動脈硬化度を
しかし最近,血築中におけるリポタンパグ質の両変化変
表す指標を見いだすこと,血液および血管壁の自己蛍光
性物と動脈硬化の関連が検討されつつある。中村の報告
物質を同定し動脈硬化との関係を明らかにすることが必
によると,血中過酸化脂質を測定したところ,冠動脈硬
要であり,これらについて検討した結果を報告する。
化群では有意な差はないが,末梢動脈硬化群では対照群
より高値を示した (41。秦らが,人間ドックの受診者と病院
2
. 実験方法
患者の 2集団について血清過酸化脂質を測定したところ,
2. 1 血管壁の自己蛍光の測定
が上昇する傾向が認められ,高脂血症でもコレステロー
血管壁の自己蛍光波形の測定は蛍光顕微鏡 (BX50
,
BX-FLA,オリンパス光学工業側)の接眼部に発光・反
,大塚電子側)を光ファイパ
射分光分析装置(IMUC7000
ル (
3
0
0
m
g
/
d
Q以上)およびトリグリセライド (
5
0
0
m
g
/d
Q
ーを用いて接続して行った。蛍光顕微鏡の励起フィルタ
健常人集団では脂質と過酸化脂質には相関がないこと,
患者集団では急性期の心筋梗塞や痛風では過酸化脂質値
以上)が非常に高値を示す群では,過酸化脂質濃度も健
ーは WU(帯域
常者群より有意の高値を示した(回。
部大動脈(東北大学医学部胸部外科大動脈溜手術時に
330-380nm) を用いた。血管はヒト胸
一方,血液および血管壁の自己蛍光の研究も進められ
および剖検時に摘出した組織片,動脈硬化無し 6例,動
ている。動脈硬化部位にレーザー光を照射すると自己蛍
脈硬化有り 1
6
例)を採取後冷凍保存したものを用い,血
光を示すので, i
nv
i
v
oでレーザ一光(波長 308-476nm)
管内腔面の自己蛍光を 1つの血管につき,
4
4
8-12点測定
した。
ー
p
<
0
.
0
5
500
2. 2 血紫の自己蛍光の測定
a 血禁の自己蛍光波形の解析
部大動脈癌,胸部大動脈焔,上行大動脈短,高脂血症で
ある。抗凝固剤としてへパリンナトリウムまたは EDTA
ナトリウムを用いて採血を行い,遠心分離して得た血紫
色窒素を封入して宮封し冷蔵保存し
c由一也﹀国主
(EE)£m
血液は東北大学医学部附属病院胸部外科に入院中の患
者およびボランティアのものを用いた。 患者の病名は円
490 ト
。
480
470
3日以内に測定
に用いた。試料を生理食塩水にて 1
0
倍に希釈した後,分
よ
460
光蛍光光度計 (F-2000, 目立欄)を用いて自己蛍光を測
N
o
r
m
a
l
定した。 測定条件は,励起波長 340-420nmまて"20nm間隔
と し 蛍 光 波 長 300-600nmとした。
A
t
h
e
r
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s
c
l
e
r
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t
i
cA
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r
t
a
F
i
g
.
l
l 血管壁の蛍光ピーク波長
b
. 血殺のリポタンパク質分両
抗凝同剤として EDTAナ ト リ ウ ム を 用 い て 採 血 を 行
い,遠心分離して血紫を得た。血楽からのリボタンパク
心 法(13)を 行 い , カ イ ロ ミ ク ロ ン (chylomicron),
VLDL,LDL,HDLおよび 1
)ボタンパク質フリー (LPF)
の分画を得た。
c 血築の酸化
j
紅紫を
2つの条件により酸化した。一つは弱〈酸化す
るための酸素付加によるものであり,
もう一つは強く酸
化するための硫酸銅によるものである。同金素付加は室慌
にて血柴を入れた容器に酸素パプリングまたは駿素を封
入して密閉し軽く振没した。酸素付加時間は 2
4時間, 4
8
時間, 7
2時間である。硫酸銅による酸化は血奨およびリ
(e)bあc
s
c
- 由U C由U的由﹄ロコ一比ω﹀昌叩一山広
質の分画は HatchとLeeの方法をもとにした段階的超遠
N.S
0
.
1
0
0
*
0
.
0
7
5
0
.
0
5
0
0
.
0
2
5
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r
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c
l
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r
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t
i
cA
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r
t
a
ボタンパク質分画に対して行った。 DasguptaとZdunek
の方法を改変し,高濃度の硫酸銅(最終濃度 3mM迄)を
F
i
g
.
1
2 血管墜の蛍光ピーク強度
血紫およびリボタンパク質分両に加え 4C, 7
2時間静置
0
した (14)。酸化後,蛍光波形と過酸化脂質濃度を測定し
た。過酸化脂質の測定は市販のキットを用いて八木別法
(デタミナー LPO
,協和メディックス糊)を用いた。
3.結果
3. 1 血管壁の自己蛍光
動脈硬化を生じていない部位の蛍光ピークは主に
460-480nmの聞に分布するのに対し,動脈硬化を生じた
ものは 440-520nmに分布し平均のピーク波長は長波長
側にシフトしピーク強度は弱くなる傾向を示した (
F
i
g
.
1
1
)。動脈硬化を生じた部位のピーク強度は生じていない
部位より低い傾向を示したが有意差は見られなかった
(
F
i
g
.
1
2
)。また,蛍光顕微鏡で観察すると,肉眼で病変
が観察される部位には正常部には見られないような直径
数 μm-lOOμm
程度の白,黄色,茶色の物質が観察きれた
Bar:400μm
F
i
g
.
2
1 動脈硬化を生じていない血管
(
F
i
g
.
2
1
.
2
2
)。
45
にともない,蛍光波長 400-450nm
の強度は増し,逆に 5
0
0
nmの近辺の強度は僅かに減少した。健常人と患者の比較
の場合と同様の波長条件の蛍光強度比は,酸素付加時間
とともに増加した (
F
i
g
.
4
)。また,全体の蛍光強度も僅か
に増加した。酸素付加 0, 2
4, 4
8, 7
2時間における血紫
の過酸化脂質濃度の平均値は,それぞれ, 2
.
5, 3
.
8,
5
.
0,8.0nmol
/m
lであった。
強い酸化条件としての硫酸銅による蛍光波形の変化は,
酸素付加と同様の傾向を示し,変化の割合は大きかった。
上記と同様の波長条件における蛍光強度比は,硫酸銅濃
度とともに増加した (
F
i
g
.
5
)。また,硫酸銅による酸化で
は特に蛍光強度の増加が著しし励起波長 340nm
,蛍光波
Fig.2~2 動脈硬化を生じている血管
長 420nmて、の蛍光強度はコントロールに比べ,酸素付加
7
2時間ではl.0
7
倍であるのに対し,硫酸銅 3mMでは
l
.1
5倍であった。硫酸銅の濃度 0,1,3mMにおける血
3
. 2 血紫の自己蛍光
a 血業の自己蛍光波形
7
.
3歳
, n=12) と東北大学医学部
健常人(平均年齢3
胸部外科患者(平均年齢 7
0
.
8歳
, n= 5
) の血築の自己
蛍光波形を比較した。励起波長 340nmにおいて,患者の蛍
祭の過酸化脂質濃度の平均値は,それぞれ, 3
.
5, 7
.
0,
3
2
7
.7nmol
/m
lていあり,著しい増加がみられた。
「
τ
光波形は健常人より蛍光ピーク波長が僅かに短<.蛍光
:p
<
0
.
0
5
p
<
0
.
0
1
• :p
<
0
.
0
0
1
20
1
.
8
波長 420nm
近辺の蛍光強度が強いという一定の違いが見
られた。この時,蛍光強度は健常人と患者ではあまり変
わらず,ぱらつきが大きかった。そこで,励起波長 340nm
で、の蛍光波長 420nmと500nmの比を評価の指標としたと
1
.6
.
:
.
ころ,健常人と患者では有意な差が見られた (
F
i
g
.
3
)。ま
た,血殺の過酸化脂質濃度の平均値は健常人は 2.2nmol
/
m
l,患者は 5.0nmol
/m
lと患者の方が高い傾向を示した。
•:
p
<
0
.
0
1
1
.
5
1
.
2
1
.
01
0
.
8
O
H
1
.
4
2
4
H
4
8
H
T
i
m
e(
h
o
u
r
s
)
7
2
H
n
=
7
F
i
g.4酸素付加による自己蛍光波形の変化
1
.
3
1
.
2
)
z
311
:N
.
S
.
p
<
0
.
0
0
5
1
.
4
1
.
3ト
0
.
9
0
.
8
0
.
7
N
o
r
m
a
l
P
a
t
i
e
n
t
s
F
i
g
.
3健常人と患者の血紫の自己蛍光波形
b
. 異なる酸化条件における血衆の自己蛍光波形の変
化
弱い酸化条件としての酸素付加による蛍光波形の変化
は,励起波長 320-340nmてー顕著て*あった。酸素付加時間
4
6
。
E
言 1
.
1
1
.
0
0
.
8
。
1
2
CUS04(
m
M
)
3
n
=
5
F
i
g
.
5硫酸銅による自己蛍光波形の変化
c リポタンパク質分画の自己蛍光波形
血築の自己蛍光の成分を検討するために,
1
5
0
0
リボタンパ
ク質の各分両の蛍光を測定した。カイロミクロン,
VLDL,LDL,HDLおよびリボタンパク質フリーの分画
はそれぞれ蛍光を示したが,
リポタンパク質をほとんど
含まず主にタンパク質を含むリボタンパク質フリーの分
F
i
g
.
6
1
)。各分画の蛍光波形の
画の蛍光強度が強かった (
和は血柴の蛍光波形とほぼ、等しし血殺の蛍光は主にタ
ンパク質によるものであった (
F
i
g
.
6
2
)。
一一一ーー LDL
---ーー LDLCuO.5mM
..LDLCu1mM
z
ω
.
s1000
。
話
。
0
@
。
。
2500
主
恩
江
,
ー
一
、 -,声ー匂一ーーー ー 一一ーー‘
.
・
.
。
450
400
500
550
Wavelength(nm)
F
i
g
.
7
1 硫酸銅による蛍光波形の変化 :LDL
-
1
5
0
0
550
MM
500
nunu
450
Wavelength(nm)
''qu
400
mm
。
、 ・ . ー
-・.._,.-:..:.;・一-:..a...円-;--.~:--::巴:--..~ー
F ー ー
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O
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﹂
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3
nununu
500
~
。
c
。
玉 1
0
0
0
u
詰
ω
旨
コ
500
。
E
S
。
LL
F
i
g
.
6
1 リボタンパク質分画の蛍光波形
(励起波長 340nm)
匡
。 ← 一 450
1500
500
550
Wavelength(nm)
5
.
s
F
i
g
.
7
2硫酸銅による蛍光波形の変化
HDL
1000
2
8
1
5
0
0
。
@
500
LL
••
0
〉
d. 強い酸化条件における血祭およびリボタンパク質
分画の自己蛍光波形の変化
リポタンパク質の各分画の蛍光波形に対する酸化の影
響を検討するため,各分画に硫酸銅を付加したところ,
•
•
Aw-
F
i
g
.
6
2各リポタンパク質分画の和と血紫の蛍光波形
••
A
.
.
。
。
0
、
.
、司
3
L
I 500
、
.
、
..
、
、
、
、.
、
2
、.
、
.
、.、
、
、.
、、
、.
F
550
,
500
、.
450
Wavelength(nm)
,
400
•
••
h
。
イ
.
s1000
0
E
0
,
,
,,
E
,.
豆
z
ーー一一一 LPF
・ーーーー LPFCu1mM
ー L
PFCu3mM
と
@
〉
匡
400
450
500
550
Wavelength(nm)
F
i
g
.
7
3硫酸銅による蛍光波形の変化
LPF
.0mMて'LDL,HDLの分画の蛍光強度が著
硫酸銅 O.3-1
しく増加した (
F
i
g
.
7
1,
7
2
)。一方,硫酸銅 3mMで、もリ
ボタンパク質フリーの分画の自己蛍光は変化しなかった
が,前述のように血築の自己蛍光は増加した (
F
i
g
.
7
3,
7
4
)。
4
7
および粒子全体の陰性荷電の増加である。これらのこと
2000
リボタンパク質の酸化に伴う蛍光物質の増加は老
化の場合とほぼ叩じ反応によるものであることが予想さ
れる。しかし,加齢と酸化の検討では,ヒト血築中の主
i、.
:
i
:
、
一
.、、
・
?
、
、
、
・
1
.﹄‘
- て7
・
J
一戸,
な過酸化リン脂質であるフォスファチジルコリンヒドロ
i
、
、
一
、
ペルオキシド (PCOOH)は健常者では加齢とともにわず
、
﹂
ぜ
,
••
s
m
a
C
u1mM
ー
ー
ー
ー
ー -p
国s
maCu3mM
ー ----p
陥
,,
•
1
.・一-
;
J
,
〆
J
〆
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!,
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,
,
一
,
一
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;
l
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'
から,
ー一一一一ーがa
s
m
a
,
-
ωnu
,
かな増加を示すが,高脂血症者では加齢とともに著しい
•
••
増加を示すという報告もあり (181 血築の酸化状態は年齢
のみではなく健康状態も反映する可能性も考えられる。
。
また,脂質過酸化による自己蛍光を持つ有害生成物の検
450
400
550
500
W
a
v
e
l
e
n
g
l
h(
n
m
)
F
i
g
.
7
4硫酸銅による蛍光波形の変化
討 (19)もされており,自己蛍光物質が直接動脈硬化の初期
病変に関与する可能性も考えられる。
血祭
4. まとめ
4. 1 動脈硬化症患者の血紫の自己蛍光の特徴
実験より動脈硬化症患者の血禁の自己蛍光は,血禁を
、
の4
3
0
また,タンパク質の糖化度と励起波長 340nmで
nm'こおける蛍光強度は正の相聞があるとの報告もあ
り(20) 今後は加齢や糖化による蛍光物質と動脈硬化によ
るものの関係を明確にする必要があると思われる。
4. 3 血紫と血管壁の自己蛍光の関連
これまでの検討から,血築と血管壁のどちらにも動脈
酸化変性きせた場合と同じ特徴を持つことがわかった。
硬化と関連した自己蛍光物質が存在していると考えられ
現在, i
nv
i
t
r
oの LDLの酸化モデルとして銅イオンによる
る。しかし,それぞれについて異なる測定系を用いてい
酸化が多く用いられているが,実際の生体内でこのよう
ること,また,血紫のアルブミン,血管壁のコラーゲン
な反応は考えにくい。そこで,酸素付加のような訪れミ般
やエラスチンのような正常な状態においても自己蛍光を
化条件と,高濃度の銅イオンによる強い酸化条件の両方
有する物質が存在していることから,単に自己蛍党波形
を検討したところ,異なる酸化方法では蛍光波形の変化
を比較するだけでは両者の関連についての検討はできな
の割合が変わるが,変化の特徴は同じであった。
い。さらに,動脈硬化の進行に関する血紫と血管壁の自
これまでの研究から血築中に酸化変性物質が存在する
ことが証明されている。道下らは抗酸化リン脂質モノク
己蛍光物質の役割l
について検討を進めるうえで,両者の
蛍光物質の同定が必要で、あると思われる。
ローン抗体とベルオキシダーゼ標識アポ B抗体を用いた
サンドイツチ酵素免疫法により血中酸化 LDL値 を 測 定
したところ,循環器疾患患者は健常人の 2倍の値を示す
ヘLDLが血中で酸化されるとすると他
謝辞
実験に協力して頂いた東北大学工学部
技術官小川
と報告している (1
原凱紀氏に感謝致します。また,本研究に際し御助成頂
のリボタンパク質もまた酸化されることが予想、される。
きました中谷電子計測技術振興財団に深〈感謝致します。
長野は, i
nv
i
t
r
oで'HDLは LDLと同じ条件で酸化きれる
こと,また HDLは動脈硬化に対して抑制的に働くリボタ
[引用文献]
ンパク質ときれているが, HDLが酸化するとこの作用が
1
)S
t
e
i
n
b
e
r
gD,WitztumJL
:L
i
p
o
p
r
o
t
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s and a
t
h
e
r
-
著しく減弱すると報告している(16)。このことから,酸化
o
g
e
n
e
s
i
s
.JAMA2
6
4
(
2
3
),3047-3052,1
9
9
0
.
LDLの濃度だけでなく, LDLとHDLを含めた血紫の酸
2)FukuzumiK:R
e
l
a
t
i
o
n
s
h
i
pb
e
t
w
e
e
nl
i
p
o
p
e
r
o
x
i
d
e
sand
化度を測定することは,動脈硬化の初期診断方法として
d
i
s
e
a
s
e
s
.JEnvironP
a
t
h
o
lT
o
x
i
c
o
lOncol6
(
3
4
),2
5
有効であると考えられ,血紫の自己蛍光測定はこのよう
9
8
6
.
5
6,1
ta
l
:R
a
b
b
i
tandhumana
t
h
e
r
o
s
c
l
e
r
・
3) Y
l
a
H
e
r
t
t
u
a
l
aS,e
な診断方法の一候補と考えられる。
4
. 2 老化および糖尿病と血祭の自己蛍光
血築の自己蛍光は動脈硬化症のみでなく,加齢や糖尿
病に影響きれる可能性がある。
o
t
i
cl
e
s
i
o
n
sc
o
n
t
a
i
nIgGt
h
a
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c
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g
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se
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sof
.A
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t
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r
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s
c
l
e
r
o
s
i
s and Thrombosis
o
x
i
d
i
z
e
d LDL
1
)
, 3
2-40,1
9
9
4
1
4(
リポフスチンがあり,過般化脂質がタンパク質や炭水化
4) 中村寿久.過酸化脂質と病態. 臨床栄養 7
3
(
2
),1
3
4
1
3
61
9
8
8
.
物等の高分子化合物と反!必して生成きれ,老化にともな
5)秦
生体内の自己蛍光物質としてよく知られているものに
司
霞哉,相原和男,宮崎和枝・動脈硬化と過酸化
って増加することが知られている(17)。一方, LDLの酸化
脂質に関する研究 I血清過酸化脂質の臨床的指標と
による主な変化は過酸化脂質の増加,アポ蛋白 Bの崩壊,
しての検討. 日本老年医学会雑誌 1
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とその機序の解明.持田記念財団・研究成果報告集
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応と蛍光物質. 日本産科婦人科学会雑誌 2
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