てんかんはあらゆる年齢で発病します

てんかんはあらゆる年齢で発病します
中野隆史. てんかん類型と疫学 Ⅰ.てんかん類型とその特徴 G. 成年期, 老年期のてんかん.
松下正明総編集. 臨床精神医学講座9 -てんかん- 1998.p.265-72.
てんかんの原因は様々で、誰でも発病する可能性があります
• 原因
– 特発性:特定の病変・原因がなく、ある程度体質による、治りやすい
– 症候性:器質性病変があり、治りにくい
• 原因が明らかなのは全体の3分の1で、残りは原因不明である。
• 原因としては外傷、脳炎、脳血管障害、先天性の脳奇形などがある。
• 遺伝はあまり関係なく、家族内に出現することはまれである。
腫瘍性
4.1%
変性
3.5%
感染性
2.5%
てんかんの原因1)
外傷性
5.5%
先天性
8.0%
血管性
10.9%
特発性
65.5%
1) Hauser WA. Epilepsia. 1993;34(3):453-468
(%)
てんかんのある人のう
ち、50%の人は発作が
止まり服薬も不要にな
り、20%の人は服薬して
いれば発作は止まって
おり、残り30%の人は服
薬にもかかわらず発作
がとありません
(1979年報告)
発作が抑制された患者の割合
てんかんの長期予後
1度でも5年以上発作が抑制されたことがある
5年以上発作が抑制されている
5年以上発作がなく、服薬もしていない
(年)
治療年数
Remission of Seizures and Relapse in Patients with Epilepsy: Annegers JF, Epilepsia 20; 729, 1979を改変
死亡事故原因
米国1995-1997年
(てんかん)発作
糖尿病
心疾患、高血圧症
若年運転手
飲酒
その他
総件数
てんかん(日本)
件数(年間)
86
144
1800
10,579
13,434
17841
43,884
割合(%)
0.20%
0.30%
4.10%
24%
31%
40.40%
100%
0.05%
An advisory board to the Driving Licence Committee of the European
Union : Final report, 2005
病気が原因
4.2%
特殊事故区分別発生件数(当事者内容)
日本:1997~2010年
人身事故
件数
死亡事故
全人身事故
全死亡事故に 人身事故に 死亡事
件数
に対する割合
対する割合 対する割合 故比
身障者1)*
242.1
0.028%
17.5
0.25%
7.2%
8.8
薬物影響1)
82.2
0.010%
2.9
0.04%
3.5%
4.2
69.0
0.008%
1.8
0.03%
2.6%
3.1
68.7
0.008%
3.6
0.05%
5.2%
6.3
16.5
0.002%
1.3
0.02%
7.8%
9.4
169.0
0.020%
7.9
0.11%
4.6%
5.6
647.6
0.075%
34.9
0.49%
5.4%
6.5
859513
100%
7088
100%
0.8%
1.0
脳血管障害1)
発
1)
作 てんかん
・ 心臓マヒ1)
急
病 発作・急病
その他1)
年間合計
全体2)
1) 交通事故統計年報(財団法人交通事故総合分析センター)
2) 平成22年中の交通事故の発生状況(警察庁交通局)
*:身障者とは、身体障害者が第1当事者となった事故
事故件数(日本)
医学的要因による交通事故の相対危険度
疾患
難聴
脳血管障害
糖尿病
精神疾患
アルコール依存症
薬物
てんかん
相対危険度
1.19
1.23
1.56
1.72
2
1.58
1.33
1.4 (重大事故)
信頼区間
1.02–1.4
1.05–1.43
1.31–1.85
1.48–1.99
1.89–2.12
1.45–1.73
1.0–1.8
Drazkowski J: Epilepsia 48(Suppl. 9): 10–12, 2007
交通事故統計
日本:2010年
人身事故
免許保有
総件数 者10万人
あたり
全体1),2)
725773
てんかん発作3)
てんかん患者
の事故率比
71
896
死亡事故
比率
1.0
0.01312-20
0.023
1.013-1.023
総件数
免許保有
者10万人
あたり
4863
6.0
2
比率
1.0
0.0560.3-0.6
0.095
1.056-1.095
運転免許保有者数:8100万人4)
免許保有てんかん患者数(推定):35~60万人
1)
2)
3)
4)
警察庁交通局:平成22年中の交通事故の発生状況
警察庁交通局:平成22年中の死亡交通事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について
財団法人交通事故総合分析センター:交通事故統計年報
警察庁交通局運転免許課: http://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/menkyo13/h22_main.pdf
誰にも関係する、あるいは防ぎようのない要因による事故とてんかん
のある人の事故:日本
(MVA caused by common or unavoidable situation)
死亡事故率比
交通事故率比
1.てんかんのある人の事故率は、以下の仮定をもとに推計した:①発作による事故以外は一般の事故率と同じと仮定、②運転免
許保有者数はアイスランド、ローチェスターの年齢別有病率、Wakamotoの地域調査による運転可能年齢てんかん患者で発作が
止まり、運転能力を有する人の割合とその中で実際に運転免許を保有していた人の割合のうち事故率が高くなる方を採用した
2.交通事故率比:平成22年中の交通事故の発生状況(警察庁交通局)
3.死亡事故率比:平成22年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法取り締まり状況について(警察庁交通局)
運用基準
• 道交法をてんかん診療の実際に合ったものに変え
る必要がある
–
2年間の発作抑制を必要としながら、6か月しか経過観
察期間がないのは矛盾している。治療意欲につながらな
い
– 断薬など理由が明らかな再発の場合は観察期間を短縮
してほしい
– 発作抑制期間の2年は長すぎる。
• 諸外国の基準と比較して、守りやすい法律への改
定を日本てんかん学会と検討してほしい
• 病気が理由で免許証を失った場合には、再取得を
容易にしてほしい
EU(2009年)
Epilepsy and Driving in Europe. A report of the second European working group on epilepsy and
driving. Final report 04/03/05
• てんかん:1年以上発作がない場合、運転適性を有する
• 睡眠中にのみ起る発作(過去に睡眠中以外に一度も発作を起こしたことがな
い):このパターンが1年以上変化しなければ、運転に適している
• 意識や行為に影響を及ぼさない発作:このパターンが1年以上変化しなけれ
ば、運転に適している
• 医師の指示にもとづく抗てんかん薬の変更または減量による発作:抗てんか
ん薬の変更開始以降、変更終了後6 月間は運転しないことが推奨される。医
師の指示による投薬の変更または中止期間中に発作が起きた場合は、以前
の治療法に戻したあと、3 月間は運転をしてはならない。
• 初回、もしくは一回のみの非誘発発作:非誘発発作を一回だけ起こした人は
、その後6 月間発作がなければ、医学的に妥当な判断がある場合、運転は
可能である。
• 誘発てんかん発作:過去に誘発発作を一度有するが、それが運転中に繰り
返されることがないと考えられる場合には、神経科医による個別の判断に基
づき、運転が可能である
• 5年以上発作が抑制されるまで、上記制限を受ける
オーストラリア(1997年)
• 慢性てんかん(抑制困難であった発作歴のある場合):2年間発作消失する
まで運転禁止。
• 孤発発作:3~6月の運転禁止。
• 最近てんかんと診断された場合:3~6月間発作が消失するまで運転禁止。
• 発作が消失していたが明らかな誘因により再発した場合(急性疾患,薬物
相互作用,断眠など):ガイドラインの他の基準を満たせば,3月後に運転
可。
• 薬物の減量時に再発した場合:これまで有効であった薬物を再服薬した後
,1月間は運転禁止。薬物を服用しない場合には2年間の運転禁止。
• 発作により事故がおこった場合:最低1年間は運転禁止。医師の意見が必
要。
• 睡眠中にのみおこる発作:覚醒中に発作がおこらないことを1年間確認す
るまで運転禁止。
• 側頭葉の外科手術後:1年間発作が消失するまで運転禁止。
• 抗てんかん薬治療を中止する場合:医師が再発のリスクがあると判断した
場合には,減量期間中および減鎚後少なくとも3月間は運転禁止。
オーストラリア(2012年)
•
•
•
•
•
•
•
•
発作、てんかん:1年以上発作がない
小児期の良性てんかん:11歳以降発作がない場合は、制限なし
初めての発作:6月以上発作がない
18月以内に治療が開始された:6月以上治療を受けていて、直前の6月
以上発作がない。治療開始後発作が起こった場合、それが治療開始後
6月以内で、最近の6月以上発作がない
急性症候性発作:6月以上発作がない
安全な発作:安全な発作が2年以上続き、その他の発作が2年以上ない
睡眠中にのみおこる発作:過去に覚醒時の発作がなく、1年以上睡眠
中に限られる場合、あるいは過去に覚醒中の発作があったが最近2年
間はなく、2年以上睡眠中に限られる場合
過去に1年以上発作が消失していて再発した場合:明らかな誘因により
再発した場合で、誘因を避けることが可能で、過去に同一の誘因で発
作が起こったことがなく、4週間以上発作がない場合、または、明らかな
誘因がなく、3月以上発作が抑制されている
オーストラリア(2012年)
• 外科手術を受けた場合:術後1年以上発作がない
• 1種類あるいはそれ以上の抗てんかん薬の計画的中止:減量中と、最
終用量になって3月以上経過
• 1種類あるいはそれ以上の抗てんかん薬の計画的中止:発作が再発し
た場合、有効だった薬剤を戻し、4週以上発作がない
• 抗てんかん薬の減量:減量中と、最終用量になって3月以上経過(副作
用のために減量した場合は適用されない)
• 抗てんかん薬の減量:発作が再発した場合、有効だった薬剤を戻し、4
週以上発作がない
• 発作により事故がおこった場合:最低1年間は運転禁止
• 通常の運転免許に戻るのは、5年以上発作がなく、1年以上抗てんかん
薬を服用していない場合
日本てんかん学会(2001年)
1.
2.
3.
4.
5.
6.
最近治療を開始された:1年以上発作がない
長年発作が反復していた:2年以上発作がなく、脳波が正常
運転に支障をきたさない単純部分発作:1年以上悪化がない
発作は睡眠中に限られる:2年以上同じ状態
運転に支障をきたさない単純部分発作:1年以上悪化がない
医師の指示により抗てんかん薬を減量(中止):減量中およ
び減量後3月は運転禁止
7. 特定の条件に結びついた初めての発作:条件が取り除かれ
たうえで、3~6月禁止
8. てんかんと診断されない初めての発作:3-6月禁止