「三島市経済活性のための人的資源再生計画」 グループ名 女性就労環境・WLB グループ 上原祥子、永倉えり子、渡辺靖乃 1 現状の課題 リーマンショック以降、震災、原発問題、と政界・経済界を問わず日本が揺れ動く中、 少子高齢化による労働力人口不足の波は粛々と確実に私たちの未来に向かって進ん でいます。三島市も5年後には団塊の世代が一斉に70歳を迎える大介護時代が幕開 けし、多くの人が在宅介護に追われることとなります。このまま労働人口が減少すると したとき、経済の衰えを防ぐには、家庭で眠っている人的資源である女性の力を有効 に活用することこそが重要であることは各界で語られている通りです。 現在三島市では就労していない母親の約 9 割が就労を希望しています。三島市には、時期や場所を選ばな ければほぼ 100%入園できる保育施設があり、イクメン制度等の施策もありますが、十分に活用されていない のが現状です。その理由として、女性の社会進出に対する社会や企業・家庭の理解不足や、女性自身の就労 意欲やエンプロイアビリティの欠如、きめ細やかな就労相談をする窓口の欠如が考えられます。三島市では 23 度末まで女性就労支援を東京の㈱アルバイトタイムズに委託し、女性就労応援施設「らしくる」の運営を行って きましたが、それも昨年度末で閉鎖となっており、この空白部分を補完することが早急の課題となっています。 また、女性就労を促すために、女性の努力のみに期待するのでは片手落ちといえます。 一世代前の、いさ さか感情的な『ウーマン・リブ』的な男女平等や、「男らしさ・女らしさ」といった議論とは全く違った視点での、『男 女共同参画』へのスムーズなシフトこそが、日本の、また地方経済発展のポイントとなり、そのためには、特に 企業・男性をターゲットとしたワークライフバランス(WLB)の浸透が大きなカギになると思われます。 2 課題の分析・調査・要因 平成 21 年度発行の「三島市市民意識調査報告書」によると、市民がもっとも重要度が高く、満足度が低いと 認識する施策は『女性の就業・再就職支援・就労環境整備に関する企業啓発』となっています。現在、三島市 の当該施策状況は決して十分とは言えず、特に 1.企業への学習機会や情報提供が 2 年間で 2 回のみと極 端に少ない 2.女性へのスキルアップ支援は、「らしくる」の撤退後の平成 24 年以降行われない見込みである こと、 が三島市の女性就労が停滞している一因であることがわかりました。 平成 23 年度〜24 年度にかけ、私たちは三島市の企業や各団体のご協力のもと、市内中小企業の女性就労 や男女共同参画の現状について調査を行い、現状と問題の洗い出しを行いました。その結果、女性雇用につ いても保守的な考えの企業がある一方、すでに、女性雇用を前向きに捉え、戦力とする企業があること、女性 を戦力として捉えている会社ほど、仕事と家庭・育児ができる環境づくりに取り組んでいることがわかりました。 一方、まだ取り組みがされていない企業も、一様に制度・手法がわかれば取り組みを検討したいと回答してお り、企業側の女性雇用に関する関心とニーズの高まりが感じられます。 一方、女性の側から見ると、平成 23 年度発行の「三島市男女共同参画プラン」によれば、女性が就労して いない理由の4割は「働きながら子育てできる仕事がないため」であり、出産前後の離職は4割強でその半分 は「環境が整っていれば就労したい」としています。女性就労への企業の理解や、家事・育児への男性参加を 進めることは、家族のためという以上に、もはや地域経済の存続・興隆のためといっても過言ではありません。 3 提案内容 1.眠っている豊富な人的資源を目覚めさせ、三島経済の活性化を目指す 三島の近未来を考えた場合に、今後必ず必要となる良質な女性の労働力の確保の為に、いま三島市に必 要なのは、女性の資質・スキルを高め、適切なマッチングを行い、企業に女性の雇用促進の働きかけをする機 関です。残念ながら現在静岡県東部でこのような支援を専門に行う事業所が見当たらないことから、この「女性 まちづくり講座」への参加を契機に、私たちは女性就労支援グループを立ち上げ、市内外の有資格者(キャリ アコンサルタント、コーチ、産業カウンセラー、各種講師等)を中心に、活動を始めました(キャリア・リング)。 このグループでは、これからの経済の突破口のカギは女性就労が握ると考え、女性の資質を高めるための 就労支援、中小企業への女性雇用推進へのアプローチやWLB、家庭でのキャリア教育支援をこの三島にお ける一つの循環ととらえ、下記に取り組みます ①就労支援では、専業主婦から社会復帰にあたってのキャリア・デザイン作成、就労に当たっての数々のス キルアップ、子育てや介護、家事などの事情で外に出られない女性のためのスキルの紹介とトレーニング、 積極的にキャリアアップを目指す女性へのアプローチ等の多岐にわたるメニューを揃えて支援します。 ②地元企業の女性の雇用促進を目指したアプローチと女性社員のスキルアップを支援します。 ③保護者への働きかけを通じて、子どもたちへの将来を見据えた「家庭におけるにおけるキャリア教育」の 支援を行い、学校での「キャリア教育」の成功にスムーズにシフトできるよう支援します。 いずれもセミナー形式、ワークショップ形式、きめ細かい個人カウンセリング等、ニーズに沿った適切なアプ ローチで、三島ならではの地域特性を踏まえた「翌日から実行に移せる」現実的な内容で対処します。 いま三島市に不足している女性就労に前向きに取り組むことで、今後三島市は近隣市町村に先駆けた「女性 を活かす・女性が元気に活躍するまち」となります。そのためにもぜひ私達をご活用いただき、積極的なご支援 をいただきたいということを本日の提言1にさせていただきます。 2.男性の家庭参加へのアプローチ もう一つの大切な側面は家庭や育児を支える男性へのアプローチです。男女共同参画に関わる施策は女性 の就労支援が先行しているため、女性に負担がかかる状況が生まれています。それは子育て世代の家庭にお いて深刻な問題となっており、男性の家庭参加、特に子育て参加を推進する必要があります。また、祖父母世 代・市民全体への啓発も、不可欠といえます。 現在、イクメン補助金制度・育メン教室等、新生児・乳幼児期に父親が関わる施策がありますが、より多くの 父親が様々な場面で子育て参加するためには、オール三島での取り組みが必要です。 そこで、以下の 3 つを提言します。 ① 三島市が主導する、父親の子育て参加推進 ② 三島市の各種団体と協力しての、父親の子育て参加推進 ③ 三島市の子育て世代議員が中心となっての父親の子育て参加啓発活動 父親の子育て参加は、父親の身体的・心理的・社会的健康を保つ効果も期待されることから、①②の取り組 みを「スマートウェル男子養成講座」と名付けてPRし、全市民への啓発も促します。この講座の実行・啓発に議 員の皆様にも関わってもらうことが、三島市の男女共同参画施策の強化につながると確信します。 父親の子育て参加を推進することは、金銭補助に頼らない子育て支援です。近隣市町に先駆けてこの分野 の施策を進めることで、「働きながら子育てしやすい街」として三島市のイメージも向上します。父親向けの子 育て情報発信を工夫すれば、外部から三島市に遊びに来る父と子が増え、イクメンツーリズムの可能性も見え てきます。提言 2 は、三島市が「イクメンの聖地」と呼ばれることを目指して、一歩踏み出すことです。
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