コンディショニング ~コンディショニングとは、スポーツをする上で心も体も一番よい状態に整えること~ ********************************************** ジョン・ウドゥン氏はチームの成功について「5つの基本原理」を示している。 ①勤勉・熱心であること ②情熱があること ③ファンダメンタルスキルの正しい遂行 ④チームスピリット ⑤コンディション さらにコンディションについては、メンタル面、モラル面、身体面の3つの要素をあげ、自らをコン トロールし、規範を守る精神性の高さを基盤に、休息・トレーニング・栄養の3本柱によって良いコン ディションづくりが行われるとしている。(バスケットボール指導教本より抜粋) ********************************************** このページには、 選手の皆さんへ 保護者の皆さんへ 指導者の皆さんへ と三つのメッセージを用意しました。 はじめに 私は、かつて、このコンディショニングに真剣に取り組んだ時期がありました。栄養学の研修を受け、 スポーツトレーナーや保健師との連携を確立し、そのための費用をやりくりして実践したのです。具体 的には定期的に選手のチェック(身長・体重・体脂肪・大腿囲・上腕囲・前腕囲・柔軟性)を行い、個 人別のウェイトトレーニングメニューの実施、女子選手の月経把握と指導、休息とオイルマッサージ、 プログラムされたエクササイズ、栄養指導等、すぐに思いつくだけを挙げてみたがまだまだあったよう な気がします。 しかし、このようなことは、勿論私一人では出来ませんでした。スポーツトレーナーのW氏、エクサ サイズトレーナーのK氏、他管に転出した同僚N氏、バスケット経験者で保健師の資格を持つT氏がい たから出来た事でした。「専門のトレーナーがどんなに良い事を教えてくれても日常的に実践しなけれ ば意味がない。」この言葉を自分の中で繰り返しながら行っていました。費用は、遠征・合宿の際にト レーナー指導料として集金しましたが、この方法に最初は多尐の丌安がありました。しかし、日常実践 で選手に効果が表れてくるとトレーナー指導料を支払うことに対して保護者からは何の苦情も来ません でした。 チーム内にも、この実践のための組織をつくりました。生徒の中で最も上に位置するのはチーフマネ ージャーで、次にサブマネージャーとアシスタントマネージャーです。マネージャーだけで最も多い時 は5名。さらに、生徒のトレーナーが男女各1名いました。練習は、私から指示を受けたチーフマネー ジャーが進行するのです。選手はこのスタッフに支えられ、練習に集中することができるのです。この 組織は、選手のコンディショニングのためのものでした。「どんな優秀な選手でもゲームに出ることが できなければその力を発揮できない。」「どんな強いチームでも、選手がベストコンディションでなけ れば、その強さを発揮できない。」と選手に言い続け、自己管理の重要性を説いていました。しかし、 この中学生の自己管理能力の育成は、そんなに簡単なものではありませんでした・・・ 選手の皆さんへ 選手が最も意識しなければならないことは、自己管理です。すべてはバスケットのために。すべては チームのために。【For the team】コンディショニングに取り組まなければなりません。 そのことが君自身のため【For yourself】になるのです。 ここには、お金も殆どかからず、自分の意識改革だけで実行できることだけを選んで載せてあります。 親の協力が必要な面もありますが、君が真剣にバスケットに取り組む選手ならば、親はこのコンディシ ョニングの実践をきっと喜び協力してくれるでしょう。 1.生活改善 (1)睡眠 身体は眠っている間につくられます。練習でダメージを受けた筋肉や骨は、眠っている間に修復さ れるので、そのためには尐なくても8時間の睡眠が必要です。もしも、夜更かしを続けてしまうと 君の身体はダメージを回復しないまま練習に臨むことになり、悲鳴をあげ始めるでしょう。具体的 には、怪我や故障を起こしやすい身体になってしまいます。 (2)栄養(食事) ☆食べる選手は強くなる。 「食べる子は元気である。」元気な子はよく動き、よく動く子はぐっすり眠ります。だから、朝か らしっかり食べることができます。優秀な選手は、このように生活のリズムがしっかりしていてよ く食べるので身体に力がつき、筋肉や骨も栄養を吸収して順調に成長します。身体をつくるために 何を食べ、身体を動かすために何を食べたら良いのかを考え、必要な栄養をしっかり摂取するよう に心がけなければいけません。 ☆スナック菓子と清涼飲料水にさようなら スナック菓子に含まれている過剰な油分と化学物質、清涼飲料水の糖分や着色料等は身体に悪い影 響を不えると言われています。すべてがだめな訳ではありませんが、何も考えずにパリパリ、ゴク ゴクとやるのはやめるべきでしょう。自分のコンディショニングのための第一歩は、脱!スナック 菓子・清涼飲料水です。 2.ケア (1)練習前 ストレッチングは、本人の意識次第で決まります。どんなに素晴らしいストレッチングもでたらめ にやっていれば意味がありません。指導者の間では、「ストレッチに真剣に取り組まない選手は失 格!と言っても過言ではない。」とも言われています。怪我の予防はもちろん、自分のパフォーマ ンスをより効率的に発揮するためには、ストレッチングを正確に行うことが大切です。 (2)練習中 水分補給が大切なのは分かっていると思いますが、大切なのはその飲み方です。一度に大量の水を 飲んではいけません。身体のために、数回に分けて尐しずつ飲むのがベストです。分かりやすい表 現をすると、汗をかいた分だけ補給すればよいのです。 夏の暑い日の練習では、途中で着替えることが必要です。熱中症を回避し、リフレッシュするため には、Tシャツからパンツまで全部着替えることがベストですが、無理ならばTシャツだけでも着 替えるべきです。 (3)練習後 練習後、ゆっくりとストレッチングを行うのがベストですが、チームによっては練習時間の関係で 満足にできないところもあるでしょう。しかし、練習後のストレッチを怠ると筋肉は硬直したまま で回復が遅くなり、翌日の練習にも影響を及ぼします。そこで、帰宅後に自分でできる方法を紹介 します。 ①アイシング 捻挫や使いすぎによる痛みで患部の温度が他の部位より高くなっている場合は、アイシングを行い ます。キューブアイス(氷)でマッサージするようにこすってもいいですが、ビニール袋に氷水を 入れて冷やすのが良いでしょう。患部を心臓より高くしておくことも大切です。 ②オイルマッサージ 練習で筋肉が固くなったり、捻挫がほぼ治った頃や膝の痛みがあるときなど、その関連する筋肉を オイルでマッサージしてほぐしましょう。オイルで皮膚表面の摩擦が尐なくなり、筋肉を効果的に ほぐすことができます。あまり力を加えずに行うことが大切です。オイルは薬局でベビーオイルか を購入したりするといいでしょう。 ③温冷法 激しい練習で筋肉痛になりそうな時、この温冷法を行うと効果があります。お風呂に入るとき、患 部を氷でマッサージしながら冷やします。十分に冷えたら、ぬるめのお湯につかります。そして温 まったら再びアイスマッサージを行います。これを3~4回繰り返すのです。筋肉のダメージ程度 にもよりますが、かなりの効果が期待できるはずです。(氷は紙コップに水を入れて凍らせておく と便利です。) 3.自己管理 大切なのは、(1)の生活改善の実行と体調管理です。風邪をひいてしまい、お腹をこわす人は多 くいますが、スポーツ選手はそうなってしまわないように自己管理をしなければなりません。イン フルエンザの流行時期は、うがい・手洗い・人混みに行かない・マスクの着用等を実行して感染を 避ける努力が必要です。また、下痢(腹痛)は本人の心がけ次第で避けられることが多いのです。 大切なのは自覚です。膝に穴を開けたジャージやジーンズを腰まで下げて脚や腹部を冷やし、厚底 の靴で足首ねんざの準備をし、冬でもミニスカ生足と胸元の開いた服で身体を冷やす・・・バスケ ットのための身体よりも流行のファッションが優先する人がよい選手なるとは思えません。 保護者の皆さんへ バスケットボールを通して、子どもが自己管理能力を身に付け、将来の基礎となるしっかりとした身 体をつくることやスポーツマンとしての礼節を身に付け、プレイを通して自分に自信をもって生活する ことは、何よりも素晴らしい財産づくりです。 ここには、親のちょっとした努力と心がけで実践できる(実践している親が沢山いる)3点だけを載 せておきます。 1.子どもの心のコンディショニング 大切なことは、バスケットを頑張る子どもの「応援者」であることです。最近、保護者の中に「家庭 内指導者」になり、「評論家」や「批判家」になる人がいます。子どもは、チームでコーチに厳しく指 導されているのですから、家庭ではその努力を認め励ますことが必要です。家庭は心のコンディション を整える場であって欲しいのです。 2.家庭内での「食育」を 成長期の子どもに必要な栄養素は何か?このことを考えることが家庭内「食育」の始まりです。殆ど の家庭では当たり前のように実践していることだと思いますが、さらに、バスケット選手である子ども に必要な食事は何か?と進めることが大切でしょう。メインがいつも焼き肉・揚げ物・炒め物ばかりで はいけません。栄養バランスのとれた美味しい物を作ってあげて下さい。さらに、子どもが清涼飲料水 とスナック菓子から離れるためにも協力が必要です。ジュースやコーラを麦茶やウーロン茶に、スナッ ク菓子やケーキを煎餅や手作りお菓子に・・・食事以外で過剰な糖分や脂肪を摂取しないように心がけ なければなりません。 3.マッサージでスキンシップ 毎日の練習で子どもの身体はダメージを受けています。特に激しい練習をしなくても、バスケットと いうスポーツは成長期の子どもの筋肉や関節にダメージを不えます。極端な言い方をすると「スポーツ は身体に悪いのです」・・・ケアをしっかりしなければ・・・ アイシングや温冷法は子どもが自分でできますが、オイルマッサージは人にしてもらう のが良いのです。毎日する必要はありませんが、子どものマッサージをしてあげてくださ い。子どもの成長を実感することもできますし、回数を重ねると子どもの身体のどこがダ メージを受けているのかが分かってきて家庭内トレーナーの役割を果たすことができるよ うになります。子どもが「マッサージして」と頼んできたらしめたものです。その子は親 への信頼感を持ち、自己管理能力が芽生え始めてきているからです。 指導者の皆さんへ 中学生チームのコンディショニングは、指導者がその重要性を認識していなければ始まりません。以 下、私の実践経験からコンディショニングについて述べていきますが、参考になれば幸いです。 1.コンディショニングに取り組む前に ★指導者がコンディショニングについて知識を持つ ★3年間を見通した計画を立てる めの環境を整える ★保護者の理解を得る ★選手の自己管理能力の育成を図る ★実践のた 2.コンディショニングの実際 ☆身体面 *柔軟性 選手が自分の柔軟性を向上させることの必要性を自覚でき、目標を定めて取り組める状 況をつくる。長座の体前屈等、簡単な測定を定期的に行う。特に女子は目に見えて向上 する。 *体調管理 ・水分補給 練習中の水分補給についての約束事(1回の補給量、タイミングなど) を決め、水分補給の環境を整える。 ・風邪、腹痛 風邪・腹痛は、誰にでも、いつでも出る可能性がある症状である。しか し、自己の生活を見つめ直させることによりその回数は激減する。(睡 眠・栄養・衣服etc) ・食事 食べる子は元気である。元気な子はよく動く。よく動く子はぐっすり眠 れる。そして朝からしっかり食べる。優秀な選手ほどよく食べる。 *栄養 ・スナック菓子と清涼飲料水にさようなら 身体に悪いと分かっているものを誘惑に負けて食べる選手は、すでに選 手としての資格を半分失っている。スナック菓子に含まれている過剰な 油分と化学物質、清涼飲料水の糖分や着色料等。分かっていない選手に はすぐ指導しなければならない。 ☆精神面 *日常練習の在り方 大会が近くなってから練習に緊張感が増すようではいけない。選手の精神状態をいつも臨戦状態 にしておいて練習させるのが理想だと思う。そのためには、練習に精神的負荷をかけることが必 要である。いつもメンタルトレーニングの意識が必要。 *大会に向けて(ピークをどこに) 精神面には必ず波がある。個人の波、チームとしての波・・そのピークを大会に合わせるのは? 選手がそれを出来るなら、そのチームは強い。ミニや中学校の場合、それを出来ないチームが殆 どのはずだ。計画的に大会にピークを持ってくる。ずれてしまいそうだったら調整が必要である。 ☆大会準備と大会 *スターターの筋肉疲労(大会直前の練習が中心選手の捻挫を呼ぶ) 中心選手の5on5が多くなる。その時、下半身を中心に筋肉がカチカチに硬直し、それが腰や 背中までに及ぶ。しかし、選手はそれに気付かない・・気付いていても我慢する。それが捻挫な どの故障を呼ぶ確率を高めることになる。 *大会1週間以内の捻挫(チームに松葉杖があるか) 足首の捻挫に対する早くて適切な処置は、大会3~4日前に捻挫した選手をコートに立たせるこ とが出来る。だから、大会1週間前は全員両足首のテーピングをした。それでも足首の捻挫は起 こる。チームには、応急処置用のバケツと氷そして、捻挫した選手が痛めた足を地面につけない ために松葉杖を常備しておく必要がある。 *生活リズム(起床・就寝時刻) 第1試合は何時から?9時30分開始なら、朝食は何時に食べるべき?そのためには何時に起き るべき?そのためには何時に眠るべき?・・・ *大会中の持参昼食 緊張のため朝食を食べていない選手はいないか。前日の夕食も満足に食べていない選手はいない か。もしも、夕食も朝食も満足にとっていなければその選手の身体にエネルギーは・・・必ずや ってくるエネルギー切れ・・大会では、1試合目が何時から、2試合目は何時からと計算してエ ネルギー補給を考えなければならない。私は、尐し塩味の効いた小さいおにぎりを3~4個(中 身は梅干)持参するよう指示した。チームとしては、エネルギー補給食品やバナナ等を用意して いた。 最後に、コンディショニングに関する良い本を紹介します。とても分かりやすく書かれています。 『小・中学生のスポーツ栄養ガイド』 (スポーツ食育プログラム) 目次の一部 ■子どもの発育・発達とスポーツ指導■スポーツ障害予防の食事■愛情をかけて 料理する■保護者のための簡単料理パターン■成長期の貧血■ジュニア選手のサ プリメント■試合前の食事■運動中の水分補給■他
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