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ビケンワクチンニュース
【インタビュー特別号】
感染性胃腸炎と食中毒の違い?!
【守口保健所所長 一居誠先生 インタビュー】
Q1:最近、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が話題になっていますが、
食中毒との違いについてご教示ください。
一居所長:
感染性胃腸炎と食中毒に明確な違いはないのですよ。どちらも細菌やウイルスなどの病原体が
原因でおこる急性胃腸炎なので、人から人に伝播する感染症か飲食物に起因した食中毒かの判
断が重要なのです。
食中毒であると判断するポイントは大きく3つあります。
まず一つ目、腹痛・嘔吐・下痢・発熱などの症状を示す複数の患者に『共通食』がある場合は
食中毒ではないかと疑います。
二つ目は、それら患者の発生頻度の分布を見た場合、短時間のうちに患者が多数発生して、
その後、急速に終息するような発生状況である場合も、食中毒の可能性が高くなります。
最後三つ目には、飲食物やその食材から患者から出たものと同じ病原体が検出されればほぼ
確定的です。
感染症の場合は、一度患者がでると、長い間発生報告が続くことが多いです。
ただ、ノロウイルスによる感染性胃腸炎のように感染症か食中毒か判断が難しい場合もあります。
Q2:実際に食中毒もしくは感染性胃腸炎の報告が
入った場合、保健所ではどのような対応を行う
のでしょうか。
一居所長:
大阪府の保健所では、感染症の場合は地域保健
課、食中毒の場合は衛生課という別の部門が対応
に当たるようになっています。
先ほどお話したように、食中毒か感染症かの判断
は簡単ではないので、発生の連絡があれば、地域
保健課と衛生課の担当者が一緒に現場に向かいま
す。そして原因追求と拡大防止のために
①病状調査(発症者の状況)
②喫食調査(いつ何を食べたか)
③施設調査
④検便
⑤衛生指導
⑥消毒(必要であれば)
を行います。要は、発症者の便や吐物から原因と
なった病原体を早期に特定することです。
Q3:食中毒と判断する場合、なにか苦労
されていることはありますか?
一居所長:
食中毒の判断は慎重にしています。
というのも、もしも飲食店等で食中毒が発生した
のであれば、何日間かの営業停止という行政
処分になるからです。
Q4:医療機関にお願いすることはありますか?
一居所長:
食中毒や感染症の患者(疑いを含む)
を診た場合、直ちに保健所に連絡して
いただくよう、お願いします。
主な細菌性・ウイルス性食中毒については、
裏面をご参照ください。
食品衛生講習会テキスト 大阪府健康福祉
部 食の安全推進課・保健所から出されてい
る「食中毒を防ぐには」を掲載しました。
食中毒の分類
感染型
毒素型
ウイルス性食中毒
自然毒食中毒
化学性食中毒
寄生虫
細菌性食中毒
サルモネラ・エンテリティディス、カンピロバクター、O157、赤痢菌、コレラ菌、腸チフス菌 等
黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌 等
ノロウイルス 等
フグ毒、貝毒、毒キノコ、ジャガイモの芽、ハシリドコロ 等
農薬、殺鼠剤、ヒ素、鉛、ヒスタミン 等
クリプトスポリジウム、アニサキス 等
【出典】:「食中毒を防ぐには」 食品衛生講習会テキスト 大阪府健康福祉部 食の安全推進課・保健所
企画編集
:財団法人阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp)
特別号担当 :藤田、福田、福原、鷹尾
発行
:財団法人阪大微生物病研究会/田辺製薬株式会社
▲上記本文中のホームページの内容に関するお問い合わせは,お受けしておりません.
BI-S07460702B04
「食中毒を防ぐには」 食品衛生講習会テキスト 大阪府健康福祉部 食の安全推進課・保健所 より
細菌名
原因食品
卵およびその加工
品、食肉、調理器具
などから汚染された
食品
生鮮魚介類および
その加工品、調理器
具などから汚染され
た食品(おもに塩分の
あるもの)
弁当、おにぎり、
生菓子類
ウイルスの特徴
症状【潜伏時間】
★動物の腸管内に分布しており、
ネズミやハエ、ゴキブリやペット
類も汚染源
★近年、サルモネラ・エンテリティディ
ス (S.E)に汚染された卵類による
食中毒が増加しており、少量の菌
(100個程度)で発症することが知ら
れている
下痢、
腹痛、
高熱
(38℃以上)
【6~72時間】
★塩分を好み、塩分2~5%でよく
発育する
激しい腹痛、
★真水に弱い
下痢、
★増殖が速い
嘔吐
【10~24時間】
★人や動物の傷口や鼻、のどの
粘膜に広く分布
★食品中で増殖する時、
熱に強い
毒素を
産生する
嘔気、
嘔吐、
下痢、
腹痛
【1~5時間】
食肉(鶏肉など)およ
びペットなどから汚 ★少量の菌で発症する
染された食品、
★特に乳幼児が発症しやすい
飲料水
生レバー、
生肉(ユッケ等)、
ハンバーグ、
井戸水
カレー、シチュー、
スープ、煮物
チャーハン、
スパゲッティ
ウイルス名
原因食品
生かき、飲料水、
二次汚染された
非加熱食品
まず頭痛、
発熱などの
風邪様症状
★水の中でも生存する
次に下痢、
★動物の腸管内に分布しており、 腹痛
鶏や牛、ペット、野鳥、ネズミ
【2~7日間/潜
などが汚染源
伏期が長い】
★牛など動物の腸管内に
存在する
★体内でベロ毒素を産生し、
少量の菌で発症する
★水系汚染
による
集団発生
がある
★容易に芽胞を形成し芽胞は熱
に強い
★大型なべで加熱調理するときは
注意する
★集団給食などの大量調理施設
で発生しやすい
★自然界および人や動物の腸管
に広く分布する
★容易に芽胞を形成し、芽胞は熱
に強い
★症状は嘔吐型と下痢型に分け
られる
★土壌に存在し穀類などに付着
する
ウイルスの特徴
腹痛、下痢
(血便)、発熱、
HUS(溶血性
尿毒症症候
群)
【3~8日間/潜
伏期が長い】
鶏卵の取り扱い(S.E対策)
★表示の確認
期限表示、生食用か加熱調理用の別など
★殻付き卵は10℃以下、液卵は8℃以下で
保存する
★調理は70℃1分以上で加熱する
★乳幼児や高齢者は生食をさける
★割卵後の手洗い、
調理器具の洗浄・
消毒を行う
★生食用鮮魚介類加工品は10℃以下で保存する
(刺身類は4℃以下が理想的)
★冷蔵庫から出して2時間以内に食べる
★できるだけ加熱して食べる
★魚介類専用の調理器具を
使用する
★魚介類は真水でよく洗う
★カニなどをゆでるときは
70℃1分以上で加熱する
★手指に傷口がある人は直接食品に
ふれない
★手指の洗浄・消毒を十分に行う
★食肉類と他の食品は別々に保存
★食肉類の調理器具は専用とし洗浄の
際も他の食品を汚染
させないこと
★鶏肉を流水で解凍した
シンクはよく洗浄する
★牛レバー・鳥刺等食肉
の生食をさける
★食品は75℃で1分以上中心部まで
加熱する
★特に、子どもや高齢者はユッケ・
レバー等食肉の生食をさける
★調理器具、手指の洗浄・消毒を十分
に行う
★箸の使い分けをする
★加熱調理済みの食品を室温で放置し
ない
下痢、
★小分け保存する
腹痛、
★食べる
発熱
【6~18時間】 前に
十分
加熱する
〔嘔吐型〕
嘔気、嘔吐
【1~5時間】
〔下痢型〕
腹痛、下痢、
嘔気
【8~16時間】
症状【潜伏時間】
★かきなどの二枚貝に分布
★冬場に多発する
★少量で発症する
★人の体内でしか増殖せず、
食品中では増えない
★集団生活を営む場所(介護施設、
学校等)では、患者の糞便や吐物
から二次感染し、集団発生をひきお
こす場合がある
予防のポイント
嘔吐、
下痢、
発熱
【24~48時間】
★大量に作ったチャーハンやスパゲッティ
などを翌日再調理することはさける
★室温放置しない
予防のポイント
★かきはなるべく加熱調理する(85℃1分以上)
★かきの調理は専用の調理器具を使用する
★調理器具の洗浄・消毒を十分に行う
エタノールや逆性石鹸はあまり効果
がありません。次亜塩素酸ナトリウム
(塩素濃度200ppm)で浸すように拭
くことでウイルスを失活化できます
(厚生労働省HP Q&Aより)
★手指の洗浄・消毒を十分に行う
*潜伏時間:病原体が体の中に入ってから、症状が現れるまでの時間