1-4. 持続可能な観光都市をめざす

持続可能な観光都市をめざす
〜ローカルアジェンダ21〜
都 市 名
目
的
カルヴィア(スペイン)
人
口
50,000人(夏場の人口は200,000人)
面
積
145km2
>質の高い環境と、自然や文化に価値をおいた観光
都市をつくる
>ホテル産業のエネルギー効率向上と太陽エネルギ
リゾート地カルヴィア
ーの利用拡大
期
間
事業内容
1994年〜現在実行中
この事業は、カルヴィア市が関連企業や市民の参加を得て、実行したものである。
カルヴィアは、マヨルカ島の中心地パルマ市街から車で20分ほどの場所である。年間
300日は太陽に恵まれ、夏場を中心に年間168万人の観光客が訪れる。地元の経済活
動の95%は観光産業に依存している。ドイツや英国からの移住者も多い。
大規模な海浜リゾート開発は、1980年代末から1990年代にかけて大きな転換期を迎
えた。観光地の大衆化、周辺環境の悪化、市街地の過密が問題になり始め、市民だけで
なく、観光業界でもサービスや質の低下への危機意識が高まった。また、夏に観光客が
極度に集中し、オフシーズンの失業も問題になっていた。
このため、市では市民や地元企業の参加によるローカルアジェンダ21活動を導入する
ことによって、質の高い環境と、自然や文化に価値をおいた、持続可能な観光都市に生
まれ変わることを企画した。
行動過程
ステップ1 ローカルアジェンダ21の策定プロセス
期
間
1994年11月から1998年11月まで
プロセス
1) ローカルアジェンダ21の理論的枠組みづくり:
18 >第1部 ヨーロッパ
カルヴィア
進め方や理論、ローカルアジェンダ21で取り組む課題の範囲、市民参加の方
法等について枠組みを固め、文書を配布した。
2) 専門家の評価分析:
50名の専門家がカルヴィアの持続可能性に関わる基本的な情報を収集し、将
来のシナリオを作成した。
3) 市民フォーラムの形成と活動:
地域の様々な団体代表150名からなる市民フォーラムを立ち上げ、テーマ毎
に約30名のワーキンググループが、目標や行動シナリオを作成した。
4) 市民集会やアンケート調査の実行
5) 「ローカルアジェンダ21行動計画」の策定と市議会での承認(1998年11月)
と広報
アルマダ市の「ローカルアジェンダ21行動計画」
長期的な視野に立ち、経済(観光)発展と、社会文化、環境の観点を統合させ、
地域の持続可能性をめざすもの。
6主要分野(都市計画システム、経済と観光、文化遺産、地域環境、総合化と生
活の質、主要な環境部門)において、27検討項目と750指標を含む。これらが
地域の総合的評価と将来計画の基本方針になっている。
事 業 費 行動計画策定プロセスのための諸経費は、375,000米ドル
スタッフ
市職員3名が中心になって実行した。
ステップ2 ビル取り壊し計画の実行
海岸地域に集中したホテル群を整理しカルヴィアの景観を保全するために、ローカ
ルアジェンダ21の策定プロセスで出てきた提言や指示のもとで行われた、最も大
胆な都市再開発事業である。
結
果
>1993年以来30以上のホテル(13,500㎡)の取り壊し
>25,716㎡を、緑地や遊歩道、駐車場に転換
>ビル建設阻止のため50,788㎡を買収、非開発区域に
>新規観光施設・ホテル・コンドミニアム
数の制限
>旧ホテルの買収・改修を条件に、ホテル
進出を許可
この他、ローカルアジェンダ21では、オ
フシーズンのイベント作りや遊歩道の設置
等、観光産業に関連する多くの提案が出さ
れ、これらも順次実行された。
ホテル建物の解体(写真提供 カルヴィア市)
第1部 ヨーロッパ> 19
ステップ3 ホテルのエネルギー効率向上と太陽エネルギー利用促進
(ゼニオスプロジェクトへの参加)
期
間
活
動
2001年〜2002年
新設ホテルやコンドミニアムには、太陽光パネル・温水装置等の設置が義務付けら
れているが、ホテルは改修が主流のため、170あるホテルのうち7ホテルしか設置
されていない。
このため、地中海地域10団体(カルヴィアの他にギリシャのカリティア、研究機
関、コンサルタント企業等)によるゼニオスプロジェクトに参加し、次のような活
動を行った
>エネルギー監査の実施、及び改修箇所提示システムの導入
ホテル経営者向けの改修計画立案ツールとして、改修箇所提示コンピューター
システムの開発・試行と合わせてホテル建築の簡易エネルギー監査を実施した。
>太陽光発電設備運営管理コンピューターシステムの開発と試行
リアルタイムで設備の稼動状況がわかり、収益計算も容易にできるシステムである。
>ホテル経営者向け室内換気・省エネ対策資料の作成
>ホテルの利用客向け省エネパンフレット
事業費
ゼニオスプロジェクトの総事業費は842,758米ドル。約半分をEU委員会が、残
りをプロジェクトの参加団体が支出した。
カルヴィアでの事業費は98,819米ドルで、50%を自治体が負担した。
スタッフ
>合計30名。うちカルヴィアでは観光業界の専門家1名、技術者1名、行政職員1
名が参加した。
>エネルギー監査やツール試験、広報資料配布等には、ホテル業界が協力した。
ステップ4 ローカルアジェンダ21の評価
1997年〜2000年の進捗状況評価
>対策の進んだ分野は全項目のうち52.5%
新総合都市計画規制の実現
海岸地区の自然保全
旧ホテル取り壊し
廃棄物削減や再利用分野等
>対策が殆ど進まなかった分野
水消費削減
エネルギー消費等
ローカルアジェンダの進捗状況を示したパンフレット
20 >第1部 ヨーロッパ
カルヴィア
2000年〜2003年の進捗状況評価
>2000年から2003年の間に、人口増加率は8.94%、水消費増は0.75%、廃棄物
の減少0.4%、エネルギー消費は2.64 %増加し、CO2排出も2.17 %増加した。
>2005年4月から3ワーキンググループの作業を開始。今までできなかった分野
や目標到達が遅れた分野に焦点を絞って、優先事業を決定する予定。
スタッフと予算
現在活動に従事しているスタッフの数は4〜5名で、以前より数が減り予算も削減さ
れている。
ゼニオスプロジェクトを担当したカルヴィア市担当者は、開発したコンピュータシス
テムの広範な導入によるホテルのエネルギー対策促進を願っており、今後のローカル
アジェンダ21の下での活動が、ゼニオスプロジェクトのフォローアップにつながる
ことを期待している。
詳しい情報を
知りたい方は
>ICLEIケーススタディー53「カルヴィア
た持続可能な観光産業の育成」
ローカルアジェンダ21の策定作業を通じ
イクレイ日本
> ICLEIケーススタディー88「カルヴィア
ホテルにおける省エネルギー政策」
※ICLEIケーススタディーは、イクレイ日本(電話:03-5464-1906、FAX:033797-1906)で販売、500円/部
>http://www.calvia.com
カルヴィア市のウェブサイト
>http://env.meteo.noa.gr/xenios
ゼニオスプロジェクトのウェブサイト
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