1-7. 持続可能性をめざす国際都市~「ハノーバー」

持続可能性をめざす国際都市
∼総合的取り組み∼
都 市 名
ハノーバー(ドイツ)
人 口 522,000人
面 積 204km2
目
的
>原子力発電による電力供給割合を順次減らし、エネルギーの効率的利用と再生可能エ
ネルギーに転換すること
>技術革新に積極的に取り組み、温暖化防止のための解決策を示してゆくこと
>国際都市として、持続可能性をめざす面での知名度の向上
期
間
事業内容
1992年∼現在実行中
1992年に、ハノーバー市議会とハノーバー事業団(電力などを供給する公社、現エナ
ーシティー)は、ハノーバーのエネルギー政策の方針を打ち出し、温室効果ガス排出削
減への取り組みを開始した。
市の担当局だけでなく様々の団体が、多方面から地球温暖化防止と持続可能な都市づく
りのための総合的な取り組みを行っている。国際的なフェアや会議も多く開かれる都市
であることから、様々な先進的対策の実施も誘致の役に立っている。
重要な役割を果たしている団体とその活 動
① ハノーバー市(関連する主な施策)
>省エネ利益の配分
1994年から学校、1998年から幼稚園、2000年からは公共の建物に、対象を
拡大した。市が電力料金を支払っているが、これらの団体が省エネによって得た
利益(年間合計40万ユーロ以上)は、これらの建物での省エネ実施団体に30%
を還元し、さらに団体は、エネルギーと水使用削減のための対策促進に40%を
使うことができ、残り30%を市が受け取る制度を導入した。この制度はドイツ
国内に広まった。
>市が所有する土地を売却する際に、低エネルギー住宅や小規模コジェネ設備建設
を契約に入れ、義務付けた
>地区暖房の拡大
30 >第1部 ヨーロッパ
ハノーバー
>住宅改修基準を設定し、基準クリアを保証する「エネルギーパス制度」の導入
>市所有建物に取り付ける太陽光発電装置に民間からの投資募集
>学校を含む全公共建物の駐車場を有料化(1992年から)
>駐車場料金収入を市職員の公共交通機関利用費用に充当する「ジョブチケット制
度」の導入(1994年から)
② アジェンダ21事務所
(市長室に所属し、2名が勤務)
多くの国籍の人々が住み、失業率が11.3%のこの
地域では、アジェンダ21事務所が雇用や社会福祉
政策と地球温暖化防止政策とを結びつけ、ボトム
アップの活動を支えている。
>活動内容
アジェンダ21事務所
1)ハ ノ ー バ ー 市 の ア ジ ェ ン ダ 2 1 行 動 計 画
(1998年市議会承認)の評価作業
2)市民や企業への働きかけや情報提供、相談
受付
3)市の関連部署や市議会委員会との調整
>活動成果の例
1)市民からの提案を、市民・企業・行政・市議会
工場建物を改装した
コミュニティーセンター
の幅広いネットワークを活用して実現させた。
⇒低所得者が多く住む地域の工場跡地を再開発
する際に、コミュニティーセンターを建設
⇒低所得者地区での、小規模コジェネ施設の設
置への協力・仲介
⇒不登校生徒を対象にした教育訓練校への太陽
光発電装置の設置、自転車リサイクル作業へ
の協力等
2)行政と企業を対象に、環境管理について研
修するエコプロフィットプログラムを実行し、
教育訓練校のリサイクル品置き場
研修参加企業のネットワークを作った。既に50
社が研修を受講している。
③ エナーシティー(旧ハノーバー事業団 Stadtwerke Hannover AG)
>自由競争への対応
ドイツではエネルギー管理は従来から自治体の役割で、多くの自治体が電力やガ
ス、水供給等の公益サービスを担当する事業団を持っていた。旧ハノーバー事業
団は、ドイツの中でも最大規模の団体のひとつだった。
第1部 ヨーロッパ> 31
ドイツでは電力は2001年から完全に自由化され、ガスも2002年10月から完
全に自由化されている。これに伴いハノーバー事業団は名称をエナーシティー
(Enercity)に変更した。株主構成は、ガス会社2社が各12%、市が75.1%、
周辺自治体が0.9%である。
現在、ハノーバー市には他にも小規模のエネルギー供給会社が数社あり、消費者
は自由に会社を選択できる。エナーシティーは、省エネや住宅対策にも力を入れ
ていることを示し、質の高い「製品」とサービスを提供することを心がけている。
>最小費用計画(least cost planning)方針
新規に電源を開発する(ダムや発電所などの新規建設)よりも、エネルギー効率
を高め省エネを促進しつつ需要を喚起した方が費用も少ないという考えに基づ
き、経営方針をたてている。
>省エネや効率的なエネルギー利用のための対策
1993年から1999年まで、省エネ型家庭用機器への購入助成金やエネルギー消
費分析サービスなど、顧客向けに14のプログラムを実施した。
⇒51,000世帯が利用し、年間16,000トンのCO2削減が実現した。
現在のプログラム内容は以下の通り:
◇省エネ製品の販売
◇省エネアドバイス
◇コンピューターによる世帯のエネルギー消費診断とアドバイス
◇住宅のエネルギー監査と省エネ対策提案
>電力料金体系
1999年から、電力料金の体系を変更し、価格の安いものから、コジェネレーシ
ョンや再生可能エネルギーを電力源として選択できるものまで複数にした。
価格は高いものの電力源を選択できる体系を選んだ消費者は、コジェネレーショ
ンや再生可能エネルギーへ支援をしていることになる。また省エネアドバイスや
エネルギー監査を無料または割引で受けることができる。
④ プロクリマ(ProKlima)基金
ハノーバー市の積極的な地球温暖化防止対策を可能にした画期的な基金である。毎
年平均500万ユーロの資金を、1,500件以上の事業に提供している。
>設立:1998年
>出資:エナーシティー、ハノーバー市と周辺5自治体、および民間企業等
エナーシティーと、その電力の主要供給先であるハノーバー市および周辺5自治
体との交渉の結果、エナーシティーの利益、および電力供給を受ける周辺自治体
が支払う契約金の一部が、プロクリマ基金に積み立てられることになった。
32 >第1部 ヨーロッパ
ハノーバー
>基金の目的:建物の断熱改修工事、及び高度の技術を駆使した新築建物の建設、
CO2削減対策の実施、再生可能エネルギーの利用などを普及・促進すること。
⑤ ハノーバー地域気候保護センター
(Klimaschutzagentur Region Hannover)
>設立:2001年
>株主:ハノーバー市、ハノーバー広域政府(各々が25.6%の株を保有)、エナーシ
ティー、公共交通機関、中規模企業5社、小規模企業26社、その他非営利団体
>目的:温暖化防止対策を通した地域経済の発展と、長期的な雇用の創出
>活動内容
◇太陽エネルギーの利用、および建物の改修工事促進キャンペーン、その他各種
関連イベントの実施
◇企業への、温暖化防止対策関連情報の提供や仲介
>予算・財源:年間予算は約100万ユーロ。うちプロクリマ基金から年間約30万
ユーロの事業資金を得て、活動を行っている
>スタッフ:10名
分 野 別
取り組みの
状況と成果
① 既存住宅の改修
>EUのプロジェクトに参加して、エナーシティー(当時ハノーバー事業団)は1994
∼1997年の間、26団地合計300戸の断熱改修工事に対して助成を行った。
>改修時の断熱工事促進キャンペーン
1999年からハノーバー市が、その後ハノーバー地域気候保護センターが引き継
いで実施している、地区毎に古い建物の所有者に対して、改修時に断熱工事の実
施を促進するキャンペーンである。
ハノーバー市とプロクリマ基金およびエナーシティーが作った「エネルギーパス」
には、住宅のエネルギー消費の現状と、改修策が記入される。プロクリマ基金か
らの改修工事のための補助金獲得を希望する住宅所有者は、このパスの取得を義
務付けた。
この活動により、2001年には4,500トンのCO2削減が実現した。
② 新設住宅の省エネ
>1990年代初めからエナーシティーが、省エネルギーモデル住宅建設事業を始め
た。
1999年からは、市の保有地を開発する業者に対して、ハノーバー市が省エネル
ギー住宅基準を助言するサービスを始めた。
実施業者には、プロクリマ基金が投資費用や品質保証にかかる費用を補助している。
>クロンスベルク地区でのモデル事業
1)2000年ハノーバー万博で展示の一部にもなった、クロンスベルク地区開発
第1部 ヨーロッパ> 33
事業では、省エネルギー住宅基準が全面的に
適用され、2箇所のコジェネ施設からの地区
暖房も導入されている。これによってクロン
スベルク地区では、従来の新築住宅よりも
CO2排出を60%削減している。
2)32戸のパッシブソーラー・テラスハウス7
が建設された。40㎝の厚さの断熱壁、屋根に
設置した太陽光パネルからの温水供給など太陽
光の最大限利用、植栽の工夫等により、通常の
テラスハウスに比べて90%暖房エネルギー消
費が少ない。エネルギー不足分は、住宅所有者
が投資している地区の風力発電からの電力供給
でまかなっており、CO2排出を100%削減し
た。
クロンスベルク地区のソーラー住宅
年間100トンのCO2削減効果があがった。
③ 人々のライフスタイル変更による省エネ
>暖房の調整、不必要な照明を消すこと、短時間で室内空気を入れ替える等の注意
により、15%の省エネができると推測される。市が学校、幼稚園、公共建物で
実施したところ、これによって得た利益は年間約40万ユーロになり、1,800ト
ンのCO2削減になった。
>エナーシティーは、1993年から省エネプログラムを実行している。
④ エネルギー効率の高い発電の拡大
>地区暖房
エナーシティーの顧客のうち、低所得者に対しては、プロクリマ基金が地区暖房
への連結工事への補助をしている。
>小規模コジェネ設備
設備は、燃料の使用効率を90%上げることができる。市やエナーシティーの促
進策により、53設備が設置されている。
⑤ 再生可能エネルギー
>水力発電
2000年ハノーバー万博展示の一部として、エナーシティー(当時ハノーバー事
業団)は魚の迂回水路を設けた水力発電所を建設した。この水力発電所は、年間
4,000トンのCO2削減をもたらしている。
>風力発電
クロンスベルク地区には3基の風力発電装置があり、約3,000世帯分の電力をま
かなっている。現在クロンスベルク地区の電力消費量の10%を供給し、CO2排
出を5%削減している。
7 パッシブソーラー・テラスハウス(Passive Solar Terrace house):自然の風、気温、太陽光や太陽熱を最大限に利用
した建築デザインやシステムを導入したテラスハウス。
34 >第1部 ヨーロッパ
ハノーバー
>太陽光発電
・クロンスベルク地区の104戸の福祉住宅には1,350㎡の太陽光パネルが取り
付けられ、2,750㎡の蓄熱タンクが地下6mの深さに埋設されている。春から
年末までの総暖房需要の40%はこの太陽光エネルギーで供給している。残り
は地区暖房ネットワークから供給している。
・2001年以来、ハノーバー市は民間投資家に対して、公共建築物の屋根に設置
する太陽光発電装置への投資を開放した。これによって民間投資家による基金
ができ、現在2つの学校に太陽光発電装置を設置する資金として使われている。
・毎年5月にはハノーバー市で「ソーラー週間」が開催される。展示やワークシ
ョップ、ソーラーパワーボート競技会、ソーラーアート、ソーラーマーケット
等、市民や企業、学校等が参加する楽しいイベントである。
詳しい情報を
知りたい方は
>"Hannover on the Way to Sustainability - A Progress Report on Local
Agenda 21 and the Aalborg Charter" , May 2004, Agenda 21 bureau, City
of Hannover
>"10 years of Climate Protection in Hannover" , July 2002, Environmental
Protection Division, City of Hannover
>"Local Agenda 21 and energy, Hannover" , case study of Energy Cites,
http://www.energie-cites.org
>"Integrated Energy and Climate Protection Policy, Hannover" , case study
of Energy Cites, http://www.energie-cites.org
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