1-2. 省エネ住宅の情報・仲介センターをつくる~「カークリーズ・ディストリ

カークリーズ
ディストリクト
省エネ住宅の情報・仲介センターをつくる
〜省エネ実行プロジェクト〜
地 域 名
カークリーズ ディストリクト2(英国)
人 口 390,000人
面 積 410km2
目
的
カークリーズとカルダーデール
ディストリクトの世帯・住宅を対象に、合理的で費用
も適正なエネルギー効率の高い暖房や断熱工事をすすめる省エネ対策を実施し、CO2排
出を削減すること。
期
間
2000年9月〜2003年11月(その後地域を拡大し、太陽エネルギー利用関連設備も
対象に加えて続行中)
事業内容
非営利団体であるカークリーズ・エネルギー・サービス(KES)が、ディストリクトの
予算等を得てこの事業を実行し、その後も運営している。
ある調査によれば、英国世帯が住宅関連部門から排出するCO2は、1世帯あたり平均6
トン/年だが、省エネ対策を実施することにより年間200ポンド/世帯の節約ができ、
2トン/年のCO2を削減することが可能であるという。
省エネ対策のうち80%は、壁や屋根裏の断熱とボイラーの効率的暖房調整で達成でき
ると推測される。寒冷地においては、健康管理の面からも低所得者や高齢者の住宅改修
が必要である。
しかし市民には、以下が障害となっている:
・省エネ方法やその費用対効果がわからない
・各種優遇ローンや払い戻し等の制度の存在や利用法を知らない
・暖房や断熱工事業者のサービス内容や価格の適正さがわからない
このため、「省エネ実行プロジェクト」は、窓口を1本化し、一般家庭が簡単に相談・
情報入手ができ、価格が公正で、信頼できる業者や優遇制度の紹介が受けられる情報・
仲介センターの体制を整えた。
2 ディストリクト:英国の地方自治体の単位。直訳すると地区・地域・郡など。日本の郡にあたる。
第1部 ヨーロッパ> 9
① 情報・仲介センターのサービス内容
一般家庭を対象としてサービスを提供し、特に以下の暖房・断熱工事については、か
かった費用の払い戻し等の財政的な優遇制度を設けて、導入を強化している。
力を入れている暖房・断熱工事の内容:空気孔のある壁の断熱、屋根裏の断熱、ド
アや窓の隙間風防止、ガス暖房コントロール、温水タンクの覆い取り付け、床暖房、
ボイラー改良等
1) 情報提供
>無料電話や質問用紙配布による、省エネ相談
の受け付け
>住宅のエネルギー診断
>再生可能エネルギーを利用するための設備
機器紹介
>建物以外の省エネ対策等の助言
>技術指導等
2) 資金補助制度の紹介
>地域の3金融機関による優遇ローン制度の
利用紹介
>英国政府や電力会社、自治体等による、20
種類以上の払い戻しや各種
補助制度利用のためのアド
バイス
3) 設備業者の登録と紹介
>KESによる適正割引価格の
設定
>顧客サービス基準を満たす
設備業者の登録と業者の紹
介、研修
優遇制度対象外の注文が
KESに来た場合、研修受講
業者に優先的に紹介する。
>登録業者は、断熱工事には
上:壁の隙間を埋める
下:屋根裏の断熱
(写真提供 カークリーズ ディストリクト)
紹介料として10%、暖房工
事には10%(当初暖房工事については5%だったが、管理費をカバーするため
に引き上げられた)をKESに支払う。この資金は、紹介サービス全体の管理費用
に充当されている。
4) 広報活動
>事業開始当初の6ヶ月間、以下のプロモーションを実施し、周知を図った。
◇質問票の配布
◇オンラインでの情報提供
10 >第1部 ヨーロッパ
カークリーズ
ディストリクト
◇電話帳での宣伝
◇ポスターや冊子の配布
◇エネルギー効率週間の実施
◇請求書への広告掲出
◇イベントでの特別価格提供
◇メディアの活用(宣伝や成
功例を紹介するプレスリリ
ースの配布等)
5) フォローアップ活動
>全工事の10%の実地監査を
含む、改修工事実施状況のモ
ニタリング
省エネや断熱工事のパンフレット
>費用払い戻し時のアンケート
>電話調査による顧客の満足度調査
>相談者の住宅状況、登録業者、補助金制度のデータベース作成
結
果
>改修工事
1,455世帯が2,080の改修工事を行った。これにより今後CO2に換算して34,300
トンの排出が抑えられることになる。
>投資総額
2003年9月までのこの住宅改修事業への投資総額は、事業準備や運営コストも含め
て、1,824,000ユーロであった。このうち62%は利用世帯の支出、16%は英国政
府や電力会社等からの払戻金、11%はカークリーズとカルダーデールディストリク
トの支出、8%は助成金、3%が登録業者からの紹介料である。
スタッフ
参考情報
KESの活動全体のために9名が働いている。
>1995年の英国政府住宅省エネルギー法(Home Energy Conservation Act)は、
住宅部門を管理する自治体に、1996年4月1日から10年以内に、地域の住宅建築物
の顕著なエネルギー効率向上(30%)を目標とした対策の実行を求めている。
また、新築住宅に関しては、2001年1月より「エネルギー・ラベリング」制度に基
づき、エネルギー効率を表示することが義務付けられている。
>カークリーズは、2005年までに1990年レベルよりCO2排出を30%削減するとい
う、英国政府(2010年までに20%削減)よりも高い目標を掲げている。
>カークリーズは地方自治体として環境監査を行った最初のディストリクトであり、英
国が2002年3月から独自に始めた排出権取引制度に参加している31団体のうち、
唯一の自治体である。
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詳しい情報を
知りたい方は
>"CAKES-Calderdale & Kirklees Energy Savers, UK", managenergy
http://www.managenergy.net/products/R451.htm
ヨーロッパのエネルギー効率、再生可能エネルギー、及び持続可能な交通に関連する
エネルギー主体間の協力を推進している「マネージ・エネルギー」のウェブサイト内
の、本事例のケーススタディや結果が掲載されているページ
>"Climate Change Kirklees", Energy-Cite/Ademe 2001
>"Environment Unit Annual Report 2003-2004", Kirklees Metropolitan
Council
>http://www.energy-help.org.uk
KESのウェブサイト
>http://www.energie-cites.org
ヨーロッパ21カ国110のメンバーと300近くの市町村が参加するヨーロッパ地域の
持続可能なエネルギー政策を推進するための連盟「エナジー・シティ」のウェブサイト
12 >第1部 ヨーロッパ