ROAD TEST No 5089 BMW M135i ビーエムダブリュー M135i 先代モデルに設定された1シリーズMクーペほどには本格的ではないM135iだが、 BMWはこの現行最強のホットモデルにどこまで本格的な乗り味を与えたのか？ photo: Stuart Price（スチュアート・プライス） WE LIKE 驚異的な直線路でのパフォーマンス、スペックから見たときのバリュー、スムーズなエンジンとギヤシフト ドアミラーとフロントバンパーの一部に使われ ているフェリックグレーの外装トリムは、BMW M パフォーマンスのスタイリング的な特徴にな るだろう。 082 AUTOCAR 02/2013 1 8 イン チ の M スポ ー ツ・ア ルミホイー ル は M135iの専用品である。通常の1シリーズと違 い、タイヤはリヤのほうが広く、フロントは225 サイズ、リヤは245サイズを装着する。 フロントエプロンの突起は、レースマシーンのエ アロパーツに対するオマージュである。LED式 のデイタイムランニングライトのおかげで、フォ グライトは不要となった。 ソリッドのボディカラーはアルピンホワイトの み。それ以外は有償オプションで、ブラックサ ファイア、エストリルブルー、グレイシャルシル バー、ミネラルグレー、バレンシアオレンジが用 意される。専用色の設定はない。 HISTORY BMW M135i ROAD TEST 目指すは “M” の大衆化!? BMWはこのところ、 “M” の神聖化されたイ み込まれた最初のガソリンエンジン車が、 この メージを捨てようとしているようにも思える。 M135iというわけである。 狂気の沙汰とも思えるが、これはじつに筋道 が通った措置だ。彼らは本格的なMモデルより も、性能的には一歩後退しているが利幅の大 きいパフォーマンスモデルのレンジを設定しよ MODEL TESTED うとしており、M135iはその戦略にのっとった ◎テスト車輌概要 ●モデル名：M135i（3ドア）●車両本体価格：549.0万円（5ドア） ●日本発売時期：2012年8月1日 ●最高出力：320ps/5800rpm●最大トルク：45.9kgm/1300-4500rpm ●0-97km/h加速：4.6秒●113-0km/h制動距離：45.9m●最大求心加速度：1.05G ●テスト平均燃費：10.7km/ℓ●二酸化炭素排出量：175g/km WE DON’T LIKE 一台なのである。そして、これらの派生モデル を純粋なモータースポーツマシーンではなく、 “powered by M” と考えてほしがっているら しい。X5 M50dあたりもこの戦略によって生 み出されたモデルで、そんな新しい区分に組 M135iはX5 M50dなどと同様、BMWの新しい ジャンルのクルマである。 スペシャルなデザインタッチの欠如、平凡な室内、ハードドライビングでのタイヤの摩耗 半円形に熱線が入ったリヤウィンドウは、リヤワイパー が拭き取るエリアの曇り取りに有効だ。われわれの知る 限り、1シリーズ以外ではまだ使われていない。 欧州仕様ではパーキングセンサーが前 後それぞれ別のオプションとなってい る。テスト車両については、BMWは賢 明にもリヤのみに装着しており、フロン トの外観に悪影響を与えていなかった。 欧州仕様の1シリーズではキセノンヘッドライト とのセットオプションとなる、L字型のLED式サイ ドランプを備えたテールライト。M135iでは標準 装備となる。 サイドスカートの張り出しはMパフォーマンスエ アロキットの一部として設定されている。これ は、よりスポーティなスタンスを作り出し、ボディ と路面の近さを際立たせる。 www.autocar.jp 083 ON THE INSIDE “M135i”のロゴ入りキックプレートは、このモデルがノーマル の1シリーズのMスポーツ仕様とは異なることを示す、数少な い内装パーツのひとつだ。 青いアクセントが付いた“アルミヘキサゴン”キャビントリムは 魅力的だが、120d Mスポーツでも同じものが手に入る。 BMWにはもっと工夫を望みたい。 車線逸脱警告システムには、簡単に切り替えできるこのよう なボタンを付けるべきだ。走行中にメニューと格闘するのは困 難で、注意も散漫になる。 COMMUNICATION コミュニケーション 標準のBMWプロフェッショナルラジオ/CDシステム にはBluetooth接続機能が備わる。 ビジネスまたは プロフェッショナルメディアにアップグレードすると、 コ ミュニケーションシステムにBMWアシストが付帯し、 故障の際の助けとなる。電話の適合は簡単で素早 く、 接続の信頼性も高い。 NAVIGATION GPSナビゲーション 8.8インチワイドスクリーンディスプレイと、 3Dマップ/ バーズアイビューガイダンス付きナビゲーションが欲 しい場合、 BMWプロフェッショナルマルチメディアに 084 AUTOCAR 02/2013 アップグレードする必要がある。高額だが、 車両の資 産価値を高く保つにも役立ってくれるはずだ。機能 にも優れ、 幅の広いディスプレイに分割スクリーンが うまく収まっている。 ビジネスナビシステムのスクリー ンは6.5インチである。 ENTERTAINMENT エンターテインメント すでにこのクルマをオーダー済みでも、 7個のスピー カーを持つビジネスステレオへのフリーアップグレード を受けられるかもしれない。 テスト車はハーマン・カード ン製ハイファイを装備していた。素晴らしいサウンドな がらリーズナブルだ。 だが、 驚くべきことにDAB製ラ ジオはオプションである。 BMW M135i ROAD TEST HOW BIG IS IT? 低く座り、足を伸ばす1シリーズのドライビングポジションは、 ホットモデルに最適 だ。 フロントはヘッドルームも広い。 min mm max 860 0mm 103 765mm 960m 3601200 litres n mi ax mm m m 0 49 20m 8 2690mm 52% 1421mm 940m 1060m m min m max 0.33 m サイズはどれくらい？ 869mm 48% 4324mm M135iのリヤシート構成は3座のベンチシートのみとなっている。下位の3ドアの1 シリーズでは、 左右が独立した2座シートを選ぶことも可能だ。 VISIBILITY TEST 視認性テスト 8.4º obscured FRONT 前方視界はそこそこ良好だが、後 方視界は制約を受ける。 Turning circle: 10.9m テスト車が装着していたアダプ ティブヘッドライトの性能はエクセ レント。 1535mm 1569mm 1765mm HEADLIGHTS 標準的なシート位置での足元 スペース：850mm ふたつしかないペダルは、 理想的な配置がされている。 幅：980-1060mm 奥行き：790-1580mm 高さ ：450-730mm Centre ステアリングホイールとペダルの配置 40mm WHEEL AND PEDAL ALIGNMENT 160mm 8.0º obscured 荷室はかなり広く、60：40の分割可倒リヤシートがそれをさらに拡大する。だが、 フ ロア用のネットとサイドの小物入れはオプションだ。 こ のクルマが市場に投入された理由を説明す ルセデスのA45 AMGも出番待ちの段階だ。 でトリッキーさを抑えた折衷案的なマシーンとして るのはじつに簡単だ。われわれは先代に設 結果的に、BMWはこれでひと息つく余裕ができ は、十分にスペシャルだろう。 定された特別仕立ての1シリーズであるMクーペ たわけだが、結果としてできあがったクルマは、由 ボンネットの下には、やや目新しく興味をそそる の野性味を賞賛したが、それは大量生産を意図し 緒あるMバッジにふさわしいものなのだろうか。 エンジンが収まる。その3.0ℓ直6ターボは、最高 ていない限定車ということもあり、恐ろしく高価な モデルだった。市場に求められているのは、同じく 出力が320ps、最大トルクは45.9kgmだ。中回転 DESIGN&ENGINEERING 域のトルクは、クーペの135i Mスポーツに比べて ★★★★★★★☆☆☆ クーペモデルより65.5万円安い。 重ねて言おう。これはBMWモータースポーツの しかし、シャシーはどちらかといえば下位の1シ M135iは、その要求に対するBMWの回答だ。 モデルとしてふさわしいクルマなのだろうか？ そ リーズに類似した内容だ。サスペンションは、フロ 1Mクーペがハードコアなエンスージアスト向け れがこのM135iに対する根本的な問いであり、わ ントがアルミを多用したマクファーソン・ストラット、 の派手な打ち上げ花火的企画だったのに対し、こ れわれはここでその答えを出そうとしている。 リヤがマルチリンクで、どちらも “専用スペック” と のM135iはBMWの新しいパフォーマンス戦略に M135iはライプツィヒにある1シリーズの生産ラ 称するスプリングとダンパーが装着されているが、 沿った最上級モデルであり、純粋に最新の技術を インで製造されており、 ミュンヘンのMディビジョン BMWが“Mスポーツサスペンション” と呼んでいる 投じたハイパフォーマンスハッチというコンセプト で造られているわけではない。だが、それはE39型 ものは、125i Mスポーツのそれとさほど違いがな に魅力を感じる多数の顧客への提案である。 のM5以降に登場した主要なMモデルすべてで同 い。アダプティブダンパーはオプション設定だ。操 マーケットに同種の商品がないわけではない じことだ。したがって、それ自体は必ずしもマイナ 舵系には、パッシブ式の可変レシオパワーステアリ が、今回のデビューはきわめてタイミングがいい。 ス要素とはならない。 ングを標準装備する。 やたらに高価なアウディRS3はもはや去るのみの パワートレインとサスペンションは、 “特別”だと タイヤサイズは現行1シリーズとしては唯一、リ モデル末期にあり、次世代のVWゴルフRとフォー 形容できる内容だ。1シリーズMクーペに肩を並べ ヤがフロントよりも大きい。当然、それは駆動輪で ド・フォーカスRSの登場までにはまだ間がある。メ るほどだとはいえないが、より手が届きやすい価格 ある後輪によって、強大なトルクを効率よく路面に らいに強烈なパワーをハッチバックのボディシェル で包み、少々鋭さを増したシャシーに載せて、しか もより安価で購入できるクルマなのは明白である。 意匠と技術 10％強化されている。一方で、価格は性能で劣る www.autocar.jp 085 ON THE ROAD 伝達するのが目的だろう。だが、機械式リヤLSDは 装備されていない。われわれからすれば、これはM TRACK NOTES サーキットテスト モデルとして減点対象になると感じられる。 ■ドライサーキット BMW M135i ラップタイム：1分15秒9 アウディRS3 参考タイム：1分15秒6 T3 INTERIOR T6 T2 T5 T7 Start/finish M135iのリヤエンドは、 ヘアピン からの立ち上がりを除いて、 ワイ ドにステップすることを嫌う傾向 が見られた。 ドライハンドリングサーキットを5周して も、 ブレーキはフェードしなかった。 ★★★★★★★☆☆☆ 欧州では、M135iは3ドアと5ドアの両方から選 T1 T4 アウディRS3のほうがわずかに速 いが、M135iのテスト時は路面が 少し湿っていた。完全なドライコン ディションであれば、状況は逆転す るだろう。いずれにしてもM135iの ほうが愉しさで上回る。 室内 べるが、今回テストしたのは3ドアのほうだ。選定理 由は安価な価格設定と、実用性で劣る3ドアの1シ リーズをわれわれがフルテストする初の機会とな るからである。 1シリーズでは2座のリヤシートも設定されてい るが、このクルマには3座のベンチシートとレザー ■ウェットサーキット BMW M135i ラップタイム：1分19秒8 アウディRS3 参考タイム：1分10秒4 サスペンションをスポー ティなモードに切り替える と、E S Pはより多くのス リップを許容するセッティ ングになる。解除すればコ ントロールは意のままだ。 内装が標準装備になるのは残念だ。M135iのオー ナーは、左右独立式の2座リヤシートのほうを好む T5 はずだとわれわれは考えるのだが。 T6 T7 T3 運転は愉しく、 ウェットでも少しも心配は ない。ただし、装着タイヤの銘柄と後輪 駆動により、M135iはRS3よりも遅く、 絶対的に見てもとくに速いというわけで はない。 T4 T2 T1 簡単に倒せるおかげである。ただし、バックレスト T8 直線ではハードブレーキングでも安 定しているが、 コーナーではテール は徐々にブレークする。 Start/finish 後席へのアクセスは良好だ。 ドアが長く、前席を の電動スライドスイッチは有償オプションだ。後席 のスペースは十分とはいえず、どうにか我慢でき るというレベルである。かさばるチャイルドシートを 装着したり、平均よりも体格の大きい大人が前席 に乗る場合には、理想的とはいえない。もっとも、こ ■発進加速 テストトラック条件：乾燥路面/気温18℃ 0-402m発進加速：14.0秒 （到達速度：173.2km/h） 0-1000m発進加速：24.7秒 （到達速度：220.5km/h） BMW M135i 48km/h 64 97 113 1.8s 2.6s 3.5s 4.6s 5.9s 129 7.5s 145 9.2s 5s 48km/h 64 80 おそらく些末な問題だろう。 対して、前席の状況はずっと良好である。すべ 80 0 アウディRS3 の手のクルマを選んだ人にとっては、こうした点は 97 1.6s 2.5s 3.4s 4.5s 0 177km/h 11.4s 13.7s 10s 113 5.8s 160km/h 129 7.2s 5s 145 9.1s 160km/h 11.2s 193km/h 209km/h 225km/h 16.6s 20.7s 25.1s 15s 20s 25s 177km/h 193km/h 209km/h 225km/h 13.5s 16.6s 20.4s 25.3s 20s 25s 10s 15s ムの両方ともアジャスト幅が大きいおかげで、 ドラ イビングポジションには欠点らしい欠点は見当た らない。ハッチバックとは思えないほどヒップポジ ションが低く、居心地がいい。 97-0km/h制動時間：2.6秒 48-0km/h 8.7m 0 80-0km/h 23.2m 10m WET グルームとヘッドルームはオーバースペックに感じ られるほど余裕がある。シートとステアリングコラ ■制動距離 DRY ての1シリーズがそうであるように、M135iもレッ 20m 9.0m 48-0km/h ところが、キャビンの仕立てと装備については、 113-0km/h 45.9m 30m 40m 25.4m 80-0km/h それほど感銘を受けない。下位モデルのMスポー 50m 55.0m 113-0km/h ツ仕様とこのモデルを区別する装飾がきわめて少 ないためだ。さらに、ほかのホットハッチのメーカー ON THE LIMIT 限界時の挙動 競合するアウディR S3は車重とパ できる程度の弱いアンダーステア傾向 ワーの配分の関係でリヤタイヤ （225幅） を備えた、 とてもバランスに優れたクルマ がフロント （235幅） より細いが、 M135iは となっている。 これでリヤに機械式リミテッ リヤタイヤのほうが20mm広い。 これはよ ドスリップディファレンシャルを備えてさえ り均一な重量バランスと後輪駆動に対 いれば、 われわれはその走りにかなり満 応した結果だ。 足できただろうと思う。 なぜなら、 アンダー その結果、 M135iはスロッ トルで対処 ステアからオーバーステアへの移行が、 086 AUTOCAR 02/2013 時としてぎこちないことがあり、 それが解消 される可能性がかなり高いと思われるか らだ。 コーナーではブレーキを残しながら鼻 先を突っ込み、 それからスロッ トルを踏み 込んでやるのが正しい作法だ。 そうしなけ ればアンダーステアが出て、 フロントタイ ヤがすぐにオーバーヒートしてしまう。 その あたりのコツをつかめば、 M135iは操りや すく愉しい。 ただ、 ひとつ忠告しておくなら、 このタイ ヤは横方向のグリップは強力だが、 少し でもざらざらした路面でハードにコーナリ ングすると、 すぐに摩耗してしまう。 BMW M135i ROAD TEST が省こうとは夢にも思わないであろう多くの装備 がオプションとなっている。いずれにしても、標準 仕様のままで購入するという人は少ないだろう。こ の問題についてはまたのちほど触れよう。 PERFORMANCE 動力性能 ★★★★★★★★★★ M135iでMIRAのテストコースに向かう前、ある テスターが「A/Tモデルは0-97km/hで5秒を切れ るかもしれない」と感想を述べた。だが、テスト車は ローンチコントロールは備えていないし、すでに写 真撮影に使われたあとでタイヤが新品ではなかっ た。またコースに到着したとき、路面は完全なドラ イではなく、気温も暖かくはなかった。 それゆえに、BMWはパフォーマンスの公表値に 関して控えめな場合が多いとはいえ、2名乗車＋燃 料満タン状態で、0-97km/hのタイム（往復2回計 測の平均）が公称値通りの4.6秒を達成したとき、 われわれは驚きを禁じ得なかった。Cセグメントの 特殊ではないホットハッチとしては、恐ろしく速い タイムである。同時にこれは、ヴォグゾール・アスト ラVXRやフォルクワーゲン・シロッコRといった前 輪駆動モデルに対して、パワーをどれだけ高めて M135iの乗り心地は非常に硬いが、 許容できないほどではない。 も、少なくともその駆動力の一部を後輪に伝えな い限りは対抗できないというメッセージを突きつけ る結果でもある。 いえば、じつはそうでもない。穏やかな過給の6気 各ギヤ固定、あるいはシフトアップしつつ加速に 筒ターボとスムーズに動作するコンベンショナル おいても劣るところはない。それは加速データの なA/Tは、Mのバッジとは相容れないように思える 一覧をひと目見ればわかる。たとえば、3速ギヤの かもしれない。だが、このクルマの妥協案的な位置 RIDE&HANDLING ままでの48-112km/h加速はわずか4.1秒だ。6 づけを考えると、十分なレスポンスと鋭さを備えて 速でさえ（48km/hではアイドリング回転数の少し いる。低回転域では若干ターボラグがあるが、それ ★★★★★★★★☆☆ 上程度である）8.1秒しか要しない。このエンジン を探そうと意識しなければ気づかない。 はハイパワーながら、きわめてフレキシブルかつス 一方、8段A/Tがドライブモードでためらいを示 いた。このサスペンションはエコプロからスポーツ ムーズである。低回転から不平を言わずに回る。 す場面があったとしても、スポーツモードへ切り替 プラスまで、ダンパーの減衰力を切り替えるいくつ 正直なところ、これでまったく申し分ない。 乗り心地と操縦安定性 A/Tに加えて、テストした個体にはアダプティブ Mスポーツサスペンションがオプション装備されて ムチを打つようなレスポンスを備えた、これぞ真 えたり、 ドライバー自身が変速する手間は少しも面 かの走行モードを備えている。同時にステアリング のMエンジンといいたくなるような自然吸気ユニッ 倒ではない。間違いなくこのドライブトレインは、ど も、緩やかな状態からシャープな状態まで調整され トでないことに、われわれが強い失望を覚えるかと のライバル車にも負けないくらい魅力的だ。そして る。たいていのオーナーはコンフォート （もっとも使 UNDER THE SKIN チューンド・バイ“M” 3.0ℓ直列6気筒ターボは、 320psと 45.9kgm （1300〜5000rpm） を発 生する。 排気系をチューニングし直し、 ECU セッティングも変更。 またヘビーデュー ティな冷却キッ トを装着した。 “モータースポーツディビジョン” と聞くと、 依然として8500rpm のレッドラインを期待するだろうが、 今後はそういうこともなくなるだ ろう。 したがって、 そうした原理主義的な面でM135iの6気筒ター ボに失望する必要はないし、 それ以外の理由でも同じである。 通常モデルの335iなどでは306psとされている3.0ℓツインス クロールターボエンジンは、 ヘビーデューティ冷却システム、 専用 の排気系チューニング、 新たなECUセッティングによって320ps を実現した。 さらにトルクは40.8kgmから45.9kgmへと増強さ れ、 それが1300〜5000rpmで発生する。直噴インジェクション とバルブトロニック、 ダブルVANOSの恩恵だ。 ドライブトレインについては通常は個人的な嗜好だと考えてい るが、 このクルマの場合、 A/Tを選ぶのが得策だ （日本仕様はA/ Tのみ） 。8段A/Tによって0-97km/hが5.0秒を切る （ハッチバッ クとしては立派なタイム） だけでなく、 燃費もリセールバリューもは るかに向上するからだ。 新設計の冷却系は、 夏のサーキットでも問題ない。M/Tがドラ イサンプ式ギヤボックスとなるものの、 賢明な選択はA/Tだ。 www.autocar.jp 087 DATA LOG 用頻度が多い）あるいはスポーツ（ワインディング ロードで路面がなめらかな場合に使う）の、中間的 SPECIFICATIONS 計測テストデータ なモードに落ち着くはずだ。 タイヤはランフラットではなく、ミシュラン・パイ ロットスーパースポーツを装着している。だが、 ■メカニカルレイアウト スティール製モノコックの シャシーにターボチャー ジャー付き直6ガソリンエ ンジンをフロント縦置きし、 8段のトルクコンバーター 式A / Tを介して後輪で駆 動する。サスペンション形 式はフロントがマクファーソ ン・ストラット、 リヤがマルチ リンクである。 それでもなお、ボディには硬さと揺れが感じられ、 たとえばフォード・フォーカスSTのようなスムーズ な乗り心地にはなっていない。しかし、前世代の 52 litres BMW130iに比べれば格段によくなっており、硬い セッティングでも許容できる。この硬さはボディの 動きをかなりタイトに制御する。ステアリングから 伝わってくるロードフィールは多くないが、ステアリ ングはスムーズで正確である。切り込んでいるとき よりも直進付近のほうがレシオはスローだが、これ は切りはじめの敏捷なステアリングでよくある、直 線時の安定性を生み出すためのトリックだ。 車重は実測で1545kgだったが、200kgほど軽 355 オートカー実測値 総平均 消費率 10.9km/ℓ ツーリング 動力性能計測時 14.5km/ℓ 5.9km/ℓ メーカー公表値 市街地 消費率 9.7km/ℓ 郊外 混合 燃料タンク容量 現実的な航続距離 CO₂排出量 17.2km/ℓ 13.3km/ℓ 52ℓ 566km 175g/km 83 320ps 5800rpm 304 69 253 45.9kgm 1300-4500rpm 203 55 41 152 28 101 14 51 0 ■燃料消費率 ■シャシー/ボディ Torque (kgm) 駆動方式：縦置き後輪駆動 形式：直列6気筒, 2979cc ブロック/ヘッド：アルミ軽合金 ボア×ストローク： φ89.6×84.0mm 圧縮比：10.2:1 バルブ配置：4バルブDOHC 最高出力：320ps/5800rpm 最大トルク：45.9kgm/1300-4500rpm 許容回転数：7500rpm 馬力荷重比：211ps/t トルク荷重比：30.2kgm/t 比出力：107ps/ℓ ■エンジン性能曲線 Power output (ps) ■エンジン 0 2000 Engine (rpm) 4000 6000 0 8000 ■サスペンション 構造：スティールモノコック 車両重量：1525/1545kg （実測） 抗力係数：0.33 ホイール：前7.5J×18in, 後8.0J×18in タイヤ：前225/40R18, 後245/35R18 スペアタイヤ：なし （補修キット） ■変速機 形式：8段オートマティック ギヤ比/1000rpm時車速〈km/h〉 ①4.714/8.2②3.143/12.2 ③2.106/18.3④1.667/23.2 ⑤1.285/29.9⑥1.000/38.5 ⑦0.839/45.9⑧0.667/57.8 最終減速比：3.077 ■安全装備 前：マクファーソン・ストラット/コイル ＋スタビライザー 後：マルチリンク/コイル＋スタビライザー ABS, EBD, DSC, TCS Euro N CAP/ 5つ星 乗員保護性能/成人：91%, 子供：83％ 歩行者保護性能：63%, 安全補助装置性能：86％ ■ステアリング 形式：ラック＆ピニオン （電動アシスト） ロック・ トゥ・ロック：2.7回転 最小回転半径：5.60m 量なクルマのような積極性と正確さで向きを変え ていく。フロントタイヤには車重の52％しかかかっ ていない重量配分にも助けられているだろう。 これまで1シリーズには、限界時にとてもバラン スに優れ、アジャストしやすいクルマだという印象 を抱いていたが、このM135iはフロントにリヤと同 じ幅のタイヤを履かない限り、テールハッピーすぎ るようである。現状では、たいていの道では向きを 変えるのが愉しく、真剣になったときはしかるべき レベルのアジャスタビリティを発揮する。 ブレーキは優秀で、97km/hからはドライ路面で 2.6秒、ウェットでも3.0秒で停止できた。 BUYING&OWNING 購入と維持 ★★★★★★★★☆☆ ■ブレーキ BMWはM135iの549万円（日本仕様の5ドア） 前：通気冷却式ディスク 後：通気冷却式ディスク というスタートプライスに、大きな意味を持たせ た。135iよりも14ps高いパワーが30万円も安い 価格で手に入るのだ。同様に、M135iのパワーは ■発進加速 ■中間加速〈秒〉 mph (km/h） 2nd 3rd 4th 5th 6th 7th 8th 20-40 (32-64） 1.4 2.4 2.6 - - 30-50 (40-80） 1.6 1.9 2.3 3.1 4.2 5.5 - 実測車速mph （km/h） 秒 30 (48) 1.8 40 (64) 2.6 50 (80) 3.5 40-60 (64-97） - 2.0 2.4 3.1 4.1 5.0 6.7 60 (97) 4.6 50-70 (80-113） - 2.2 2.5 3.1 4.1 5.1 6.8 70 (113) 5.9 60-80 (97-129） - - 2.7 3.3 4.2 5.2 7.2 80 (129) 7.5 90 (145) 9.2 70-90 (113-145） - - 3.1 3.5 4.4 5.5 7.5 100 (161) 11.4 110 (177) 13.7 120 (193) 16.6 130 (209) - - 80-100 (129-161） - - - 3.8 4.7 5.8 8.0 90-110 (145-177） - - - 4.3 5.0 6.3 8.8 100-120 (161-193） - - - 5.2 5.5 7.010.0 20.7 110-130 (177-209） - - - 6.6 7.8 - 140 (225) 25.1 120-140 (193-225） - - - - 7.9 - - 150 (241) - 130-150 (209-241） - - - - - - - 140-160 (193-257） - - - - - - - ROAD TEST 一部バックナンバーは www.autocar.jp に掲載されています。 注意事項：馬力荷重比とトルク荷重比の計算にはメーカー公称車両 重量を使用しています。 © Autocar 2012. テスト結果は権利者の 書面による承諾なしに転用することはできません。 088 AUTOCAR 02/2013 RS3にわずかに20psおよばないだけだが、RS3の ■最高速 1 2 3 4 5 6 7 8 邦貨換算価格よりも300万円近く安い。 61km/h 7500rpm 92km/h 7500rpm 137km/h 7500rpm 174km/h 7500rpm 225km/h 7500rpm 250km/h 6479rpm 250km/h 5436rpm 250km/h* 4321rpm * claimed な仕様のM135iを走らせて満足だったが、500万 円以上のクルマで、パーキングセンサーさえ省か れているのは受け入れがたい。 車輌本体以外にも出費を余儀なくさせられる不 満は拭えないが、M135iは6気筒ターボエンジンを 搭載するクルマとしては、驚異的な競争力を持っ ている。今回のテスト車両はA/Tモデルで、これは M/Tモデルよりも若干高額だが、CO₂排出量はむし ■今月の数字 £1195 11.3km/ℓ だが、これはオプションリストを検討する前まで の話である。われわれは、ほぼいちばんベーシック 英国ではスバル・インプレッサW R X STIを購入したほうが、M135iよりも 年間で40％も税金を多く払わなけれ ばならない。その金額がこれ（日本円 にして16万円強）。 これは新型フォーカスSTの4気筒エコブーストの 2006年にテストした330iクーペの ツーリング燃費。同じエンジンで、当 時は305p sどまりだったが、最新の 320ps版より消費燃料は多かったの である。 らしい燃費を記録したが、これは以前にフォードST ろ少なく175g/kmとなる（M/T車は188g/km）。 それよりも6g/km多いだけである。また、われわれ は独自のツーリングルートで14.6km/ℓという素晴 で達成した燃費を若干上回りさえしている。 BMW M135i ROAD TEST ROAD TEST No 5089 BMW M135i AUTOCAR VERDICT ●オートカーの結論 ★★★★★★★★☆☆ 「ドライビングプレジャーと現実世界において 求められる要素がうまくバランスされている」 TESTERS’ NOTES ●テスターのひと言コメント エンジンのサウンドはたいていの状況 で好ましい程度に元気がいいが、高速 道路での巡航時には静かだ。 マット・プライアー 12Vの電源ソケットが、ダッシュボード だけでなく助手席側フットウェルにも備 わっている。 ニック・キャケット SPEC ADVICE ●購入にあたっての助言 率直なところ、われわれはもっとも安価 な仕様のM135iが好きだ。そのため、 手に入れるならできるだけ素の仕様に 近付けたい。だが、これは6段M/T（未 テスト）に固執するという意味ではな い。手漕ぎでシフトする労力が必要なう えに、これによって0-100km/hの公称 タイムが0.2秒余計にかかり、CO₂排出 量が13g / k m増え、複合燃費の値が 0.8km/ℓ悪化するからだ。 こ エンジニアリングとコンポーネンツは、残念ながら与えら スタンダードモデルと本格的なMモデルとの妥協の産 れていない。そのためM135iは必然的に、Mディビジョン 物──それがこのM135iをスペックシートから見たときの ならではの製品というよりも普通のBMW車に近い感触と 姿であり、またテストの結果、実際にそうであることが判明 なっている。それも、どちらかといえばノーマルの1シリー した。スタンダードな1シリーズの持つ現実的な面でのア ズのほうにむしろ近い。 れは、いうなれば折衷案的なクルマである。Mモデル に近いが、完全なMモデルとは呼べない。 とはいえこのモデルには、Mディビジョンによる専用の ピールを保っていながらも、通常のモデルに期待できる以 しかしながら、これはドライビングの相棒として優れてお 上の輝きを放っている。妥協が非常にうまく機能している。 り、壮大なパフォーマンスと魅力的なプライスが組み合わ じつに愉しいクルマだ。 されたクルマである。 TOP FIVE 1st 2nd 3rd JOBS FOR THE FACELIFT ●マイナーチェンジ時に望むこと ・あと2〜3のオプションを標準装備にし てほしい（欧州仕様）。 ・もう少し美しいクルマにしてほしい。 4th 5th VOLKSWAGEN BMW AUDI VAUXHALL SUBARU フォルクスワーゲン・シロッコR BMW M135i 3ドア アウディRS3スポーツバック ヴォグゾール・アストラVXR インプレッサWRX STI 4ドア 373.8万円 308ps/6400rpm 43.0kgm/4400rpm 5.2秒 （0-100km/h公称） 250km/h （リミッター） 9.5km/ℓ 1490kg 243g/km Scirocco R M135i 3dr RS3 Sportback Astra VXR IMPREZA WRX STI 4dr 車両価格 最高出力 最大トルク 0-97km/h加速 最高速度 燃料消費率 （混合） 車輌重量 （公称値） CO₂排出量 515.0万円 256ps/6000rpm 33.7kgm/2500-5000rpm 6.5秒 250km/h （リミッター） 12.5km/ℓ 1410kg 187g/km 549.0万円 （5ドア） 320ps/5800rpm 45.9kgm/1300-4500rpm 4.6秒 250km/h （リミッター） 13.3km/ℓ 1525kg 175g/km 邦貨換算約830万円 340ps/5400rpm 45.9kgm/1600-5300rpm 4.5秒 250km/h （リミッター） 11.0km/ℓ 1575kg 119g/km 邦貨換算約500万円 280ps/5500rpm 40.8kgm/2450-5000rpm 6.4秒 250km/h （リミッター） 12.4km/ℓ 1565kg 189g/km われわれは こう考える ライバルと比べてパワーに劣る が、依然としてドライビングは魅力 的である。 Mディビジョンのパフォーマンスを 魅力的な価格で提供する、愉しい 折衷案。 素晴らしいパフォーマンスと強力な グリップが売りだが、繊細さに欠 け、 価格も高い。 前輪駆動のハッチバックとしては 速くて能力は高いが繊細さに欠 ハイパワー。活気に欠けるが鋭く、 け、 ショッキングなほどCO₂排出量 乗り心地に優れる。 が多い。 結論 ★★★★★★★★☆☆ ★★★★★★★★☆☆ ★★★★★★★★☆☆ ★★★★★★★★☆☆ ★★★★★★☆☆☆☆ www.autocar.jp 089
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