ROAD TEST No 5121 Audi RS6 Avant アウディRS6アバント アウディのハイエンドブランドにも、ダウンサイジングターボ化は波及した。 2気筒を切り落とした効果は、RSに新たな進化をもたらしたのだろうか。 photo: Stuart Price WE LIKE 怪物的なパフォーマンス、洗練度、全体的なクオリティ、実用性とキャビンスペース テスト車のドアミラーはシルバーに塗装さ れていない。デリバリーミスかと思いき や、約 1 . 9 万円のボディカラー同色キャッ プを装着した状態だった。 096 AUTOCAR 02/2014 LEDヘッドライトは、欧州では約 14万円のオ プションとなっている。日本仕様は標準装備。 このクワトロのロゴは、欧州で設定されるカーボンスタイ リングパッケージの一部として用意されている。約71 万 円のオプションで、カーボンファイバー製フロントスポイ ラーとリヤディフューザーとセットで提供される。 LEDヘッドライトの恩恵で必要なくなったフォ グライトが通常なら据え付けられるような位置 に、アダプティブクルーズおよび衝突緩和シ ステムのレーダーが装着されている。 Audi RS6 Avant ROAD TEST HISTORY はじまりは20年前 アウディのハイパフォーマンスワゴンは、 1993年から1996年まで生産されたRS2から はじまった。 RS6の初登場は2002年だ。4.2 ℓV8ツインターボを搭載し、 直線は速かった MODEL TESTED が、 とくに魅力的というわけではなかった。 ◎テスト車両概要 2008年に登場した後継モデルも同様だった ●モデル名:アウディRS6アバント ●車両本体価格:1520.0万円●日本発売時期:2013年10月8日 ●最高出力:560ps/5700-6700rpm●最大トルク:71.3kgm/1750-5500rpm ●0-97km/h加速:3.7秒●113-0km/h制動距離:43.5m●最大求心加速度:0.97G ●テスト平均燃費:6.9km/ℓ●二酸化炭素排出量:229g/km WE DON’T LIKE が、 5.0ℓV10ツインターボの魅力は人びとの 心に訴えかけるものがあった。 一般的な先入 観に反し、 ランボルギーニ・ガヤルドのV10ユ ニットとは関連性が少ないものの、 580psと いう驚異的なパワーの持ち主である。 初代RS6アバントは2002年に登場。 4.2ℓV8ツインターボを搭載していた。 スポーツサスのしなやかさに欠けた乗り心地、相変わらずバランスと落ち着きを欠くハンドリング ルーフスポイラーは見落としてしまいそうなほ ど控えめだが、ひとたび目にとまれば魅力的に 見えるデザインに仕上げられている。直下には ハイマウントストップランプが備わる。 プライバシーガラスは、欧州では約6.5万円のオプション となっている。カーボンパーツが追加されたホワイトボ ディにはよく似合うが、いささかワルそうだ。 カーボンスタイリングパッケージを選ぶと、 ルーフレールがクロームではなくマットブラッ クになる。明るいボディカラーには絶妙なアク セントとしてマッチするだろう。カスタマイズの ヒントにしてはいかがだろうか。 ブラックのキャリパーは標準仕様の鋳 鉄ブレーキを示している。キャリパーの 色がチャコールグレーであれば、124.0 万円のカーボンセラミック製ブレーキ ディスク装備車である。 www.autocar.jp 097 ON THE INSIDE シフトノブはゴルフボールほどの大きさで扱いやす い。変速操作はカチっと決まる。 アウディ (およびVW) は、ステアリングホイールのパドルに関して 学習する姿勢がないようだ。パドルはアヒルの足のような幅の狭 いものではなく、金属製のダンボの耳のような形状であるべきだ。 この写真を見ると、RS6のペダルオフセットの程度がわかるので はないだろうか。右足ですべてを行うには問題ないが、左足でブ レーキを操作するには足をひねらなければならない。 COMMUNICATIONS コミュニケーション ほかのモデル同様、 Bluetooth機能が備わる。 ほとんど苦労することなく接続を確立し、 使用で きる。 3G接続でオンラインサービスにアクセスす るパッケージを選ぶことも可能だ。 250km/hで 移動するWi-Fiホッ トスポッ トが必要なら便利だ。 ENTERTAINMENT エンターテインメント 高級モデルには当然ながらまずまずのオーディ オシステムが付いてくるが、 このRS6も例外で はない。 14スピーカーのBOSE製システムは素 098 AUTOCAR 02/2014 晴らしく、 12チャンネルのアンプと5.1chサラウン ドを装備する。 アウディの音楽インターフェイス では、 Bluetoothを用いる以外にも、 さまざまなメ ディアデバイスが物理的にも接続できる。 NAVIGATION GPSナビゲーション 標準のハードドライブベースのシステムは郵便 番号による検索が可能で、 センターコンソール 一体型のタッチパッ ドを用いて手書き入力もで きる。 BMWがiDriveで同種の入力方式を採用 しているが、 少なくともアウディの新機軸も、 実 用的なレベルである。 操作性に定評あるライバ ルとのギャップを埋めるかもしれない。 Audi RS6 Avant ROAD TEST HOW BIG IS IT? 939mm m n mi m ax 0m m 59 0mm 96 565-1680 litres 2915mm 55% 4979mm 1461mm min x mm ma 850 0mm 109 980m 0.35 840m 1030m m min m max サイズはどれくらい? 1125mm 39% 45% 前席の足元や頭上、肩まわりの余裕は、ほとんどの人びとが求めているより も広い。 キャビンのクオリティとフィニッシュも相変わらず完璧だ。 VISIBILITY TEST 視認性テスト 7.8º obscured 1662mm 1663mm 1936mm HEADLIGHTS Turning circle: 11.9m FRONT ベース車であるA 6と同じく、とく に問題は感じられない。 より高い 視点で見下ろしたい場合にも不 満がないほど、 シートのアジャスト 量が大きい。 LEDヘッドライトは優秀だ。明るく クリアで、インテリジェント・オート・ ロービームを備える。ありがたみ を実感しやすいアイテムだ。 リヤシートの中央座席は、外側ふたつよりもかなり狭く、比べると居住性に劣 る。それ以外は、快適性とスペースのいずれも良好である。 7.8º obscured WHEEL AND PEDAL ALIGNMENT 幅:1020-1250mm ステアリングホイールとペダルの配置 寸法を測る前にテスト車両を返却する時間 となってしまったため数値は記載していない が、 どちらのペダルも明確に右側にオフセット している。快適さに影響をおよぼすほどの偏 りではないが、左足ブレーキをするのはむず かしい。それが気になる購入者はほとんどい ないだろうが。 奥行き:1060-2120mm 高さ:450-730mm スキーハッチと、荷室の仕切りも設定される。荷室の全体的なスペースに関 しては、 クラストップとはいえないが十分に広い。 か つてのアウディRSはじつにおもしろいクル ンはわれわれを大いに楽しませてきたからだ。そし 5.0ℓV10に替えて、560psの4.0ℓV8ツインターボ マだった。テストのたびに、 コースと編集部の て、速さを誇る大型ステーションワゴンを提供してい エンジンを搭載する。5年ほど前に先代が発表され ホットラインが鳴りっぱなしだった頃が懐かしい。近 るのはアウディだけではない。BMW M5のツーリン たとき、 このRS6は自動車産業にとって、ある種の望 頃のRSモデルは、以前のような未知数だらけのマ グはもはや手に入らないが、ほかのおもなライバル ましくない頂点を象徴しているのではないかとわれ シーンではない。2006年のRS4のような予想外の はすべて、 このクラスに商品を投入しており、なかに われは疑問に思ったものだ。2008 年に測定した車 素晴らしさに目を見張ることも、2004年のRS6プラ は非常に優秀なモデルも存在しているのを忘れて 重が2145kgにも達していたためである。対して最 スのようにショッキングなまでの硬い乗り心地にあき はならないのである。 新のRS6は2070kgで、軽量とはいえないものの減 れることもなくなった。 それはアウディが、独自のキャラクターを見いだし 量したのは事実だ。 もしこのアウディが新しい流れに DESIGN&ENGINEERING 乗っていくのなら、それは歓迎したい。 アウディのハイパフォーマンスモデルは、その乗 れにV 8エンジンが縦置きされる。2基のツインスク になった。何よりそれは速さだ。合わせて、 ノーズの り心地とハンドリング能力について必ずしも同じラ ロールタービンはシリンダーバンクのあいだに収ま 重さを感じさせない工夫も施している。それも、それ イン上に並んでいるとはいえないかもしれないが、 るため、エグゾーストバルブは通常とは違って各シリ ぞれのクラスで築き上げた名声を危険にさらすよう ルックスに関しては間違いなく一貫性がある。そして ンダーヘッドのあいだに置かれ、シリンダーの排気 なチャレンジをかわしつつだ。 このクルマは、紛れもなくハイパフォーマンス・アウ 口からタービンまでの距離を短くしている。 では、今回のRSもそのレシピどおりなのか。 これ ディのフォーマットどおりだ。 駆動力は4輪に伝えられ、 トランスミッションは8段 は確かめる価値がある。ボルボが850でT-5Rを送り ただ、変化がないわけではない。 まずはエンジン トルコンA/Tを使用しておりDCTのSトロニックでは 出して以来、ハイパフォーマンスなステーションワゴ の排気量だ。現行RS6は、580psを発生した先代の ない。4WDの駆動系および前軸に55%がかかる重 てきた証拠ともいえるだろう。 シルバーのドアミラー を与えられた、アウディのパフォーマンスの上限を担 うモデル群は、 より一貫したテーマが適用されるよう 意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆ ボディは全長が5mに近い。モノコックにはアルミ が20%ほど使われているが、大部分が鋼板製で、 こ www.autocar.jp 099 ON THE ROAD TRACK NOTES 量配分には、セルフロッキング式センターディファレ サーキットテスト ンシャルとリヤLSDで対処している。 T3 ■ドライサーキット アウディRS6アバント ラップタイム:1 分 12 秒 8 しかし、RS 3 のように、フロントより幅が狭いホ イールをリヤに装着するセッティングは採られてい T6 T2 T5 BMW M5 参考タイム:1 分 14 秒 1 製が標準で、420mm径のカーボンセラミック製が スピードを大幅に落として、アン ダーステアを防いでT1を抜け、パ ワーを慎重にかけてT2を回る。 T7ではパワーを大きく、または早くかけす ぎないよう、我慢が必要だ。さもないと深刻 なオーバーステアに陥る。ニュートラルな ラインを取るのはほとんど不可能である。 T 5 への進入では、ぞっとするよう なアングルにまでスライドした。だ が、長いホイールベースのおかげ で、反応する時間は十分にある。 BMW M5 参考タイム:1分17秒3 T5 T7 T4 T2 T1 T2からの脱出では驚異的なトラクションが 得られた。だが、あまりにも大きなパワーを かけたりパワーオンが早すぎると前方に進 まず、カニのように横滑りする。 1.9s 2.1 2.9s 3.7s 4.7s 0 113 161 177 193km/h 209km/h 5.8s 7.2s 8.7s 10.6s 12.6s 15.0s 10s 129 2.1s 2.8 3.6 4.3 5.3s 6.4s 0 145 7.6s 161 177km/h 9.0s 10.6s 5s 225km/h DRY 0 18.1s 15s 193km/h 209km/h 12.4s 14.5s 10s されたハイパフォーマンスカーのイメージを確固た 21.7s るものとしている。そして、そこに配置されたスイッ 20s 225km/h チ類は、 ドライバーの体重などものともしないシャ 17.0s シーと同じく、操作感に曖昧さは微塵もない。 241km/h 19.9s ステアリングホイールは、RS モデルのトレード 15s マークとなっている、3 本スポークでリムが太いフ ラットボトム型だ。エンボス加工された超スポーティ なシートは、大きく張り出したサイドサポートがハー 80-0km/h 21.9m 10m WET アーキテクチャーは新鮮な印象だ。BMWほど懸命 なまでに手を加えたり、メルセデスのように演出不 241km/h ■制動距離 97-0km/h制動時間:2.4秒 48-0km/h 8.1m ド格納式 8インチスクリーンの鮮明さのおかげで、 の流れるような水平のラインが、完璧なまでに洗練 145 BMW M5 48km/h 64 80 97 目の前に置かれたLCDディスプレイとダッシュボー センターコンソールは幅が30cmほどあるが、そ 129 5s 室内 ★★★★★★★★★☆ ベースとなるA6の登場からすでに2年が経ってい め上げられている。 アウディRS6アバント 113 プション装着していた。 足だったりすることなく、 ダッシュボードは見事にまと ■発進加速 テストトラック条件:乾燥路面/気温14℃ 0-402m発進加速:12.2秒(到達速度:188.6km/h) 0-1000m発進加速:22.1秒(到達速度:242.2km/h) 97 は日本仕様のスタンダードとなる金属製コイルをオ るが、室内は時の流れを感じさせない。 ドライバーの T8 Start/finish ションはエアスプリングを標準装備するが、テスト車 INTERIOR T6 T3 足枷は何もない走りっぷりだ。 スポーツ モードでESPは有効に働く。ESPをオ フにすると、 ターンインの際にテールが 驚くほどよく動く。 コーナー脱出時のト ラクションを活かすのが、ラップタイム を縮めるもっとも有効な方法である。 80 だ。 フロントのブレーキディスクは390mm径の鋳鉄 Start/finish オプションで用意されている。欧州仕様のサスペン ■ウェットサーキット アウディRS6アバント ラップタイム:1分13秒3 48 64 ない。テスト車の285/30R21タイヤはオプションだ が、標準装着の275/35R20ともども前後同サイズ T1 T4 速いタイムはおもに強力なパワーによ るものだ。 トラクションは強大で、 グリッ プレベルは高い。 しかし、ハンドリングは 限界時にはバランスに欠け、 ノーズから 滑り出しはじめる。 T7 20m 9.1m 48-0km/h ドドライビング時にもドライバーをしっかり支えてく 113-0km/h 43.5m 30m 40m 25.6m 80-0km/h 50m 51.2m 113-0km/h れる。加えて電動調整機構は標準装備で、適切な ドライビングポジションを得るのに十分な調整幅 がある。後席は相変わらず中央シートが小さいが、 ON THE LIMIT 限界時の挙動 100 サーキットに向かう道のりでは所要時間 の醍醐味や楽しさは、RS6からは残念なが 高い。 しかし、 コーナーへの進入でブレー スを見せる。ESPをオフにした状態でス を短縮できるかもしれないが、土砂降りの ら感じられないのだ。 キを残したり、そのほかのきっかけを与え ロットルを戻した途端、 リヤアクスルがワイ 雨でもない限り、 ピットレーンに乗り入れた リヤにスポーツデフを装備しているが、 たりしても、ニュートラルにラインを保ちつ ドに踊り出すが、 ドライブトレインは関係な 時点で失望が訪れる。そのパフォーマンス タイヤがグリップの限界を超えたときにフ つコーナーのエイペックスを抜け、立ち上 くクルマをコーナーから素早く押し出す。 や高いグリップレベルに不満はない。期待 ロントから滑り出す傾向を抑制できてい がりでスロットルワークによるラインコント ここでもパワーオーバーステアを楽しむこ を裏切られるのは、ひたすら限界時のハン ない。その臨界点まではハードに攻めるこ ロールを実践することはできない。 とはできないが、そのサイズを考えればと ドリングによってだ。 ライバルのような走り とができ、 コーナリングスピードも驚くほど ウェットでは、 ドライよりも優れたバラン ても速い部類だといえるだろう。 AUTOCAR 02/2014 Audi RS6 Avant ROAD TEST レッグルームは余裕があり、極端に長身でなければ 不満に感じたりはしないだろう。荷室のフロア長は 1050mmで、犬を放せるほどに広い。 マテリアルのタッチはさながらコンクリート製の象 といった固さで、 クルマの雰囲気にぴったりだ。スタ ンダードモデルと同様、見た目と触感に関して目と 指が肥えたオーナーでも、おおむね満足するはず だ。テスト車に備えられていたカーボン調トリムはい ただけないが、既製品で何もかも思いどおりという ことはまずあり得ない。113km/h 走行時の室内騒 音は、2011年にテストしたA6 3.0TDIを1dB上回る のみだ。ただし、3速で回転をめいっぱい上げたとき 金属スプリングによるボディの制御は、エアサスに比べるとあまり洗練されていない。 は、76dBに達する音量で腹に響いた。 ろか150km/hを超えても勢いはとどまるところを知 PERFORMANCE 動力性能 ★★★★★★★★★★ おいて優秀で当然だと考える。けれどアウディは、 らない。高負荷状態でもエンジンは猛獣のような粗 過去10年間そうだったように、金属スプリングと、対 暴さを示すが、同時に柔軟でもある。 角線上のダンパーを連携させるDRCを装備した車 一方、低負荷時にはなめらかで繊細、そしてフレン 両をわれわれに貸与する選択をしてきた。標準仕様 スタンディングスタートでの加速タイムは驚異的 ドリーな顔を見せる。スロットルペダルとの連携は、 車の運動特性がどれくらい変化したか正確に知るに だった。全長5mで、 ドライバーが乗車した状態では 熟練の技で念入りに調整されたようだ。踏みはじめ は、エアサス仕様のテストカーを用意できる機会を 2.1tを超えるラグジュアリーなステーションワゴン は穏やかなスタートをたやすく実現し、深く踏み込む 待たなければならない。 が、0-97km/hを3.7秒で駆け抜けるのだ。 これはポ につれて勢いが増す。 カーペットまであと3cmを切 コイルスプリング仕様のRS6は、先代とじつによく ルシェの先代911 GT2が2007年に記録したタイム る頃には、クワトロ謹製の V 8は牙を剥き出し、エグ 似た振る舞いをする。高速道路での乗り心地はとて をしのぐ。それほどの発進加速がローンチコントロー ゾーストは重厚かつ美しい旋律を奏で出す。 も良好だ。21インチのリムを装着していてさえも、滅 ルの助けなしに可能だとは、 まさに前代未聞である。 運転はしやすい。 ドライバーが望むままに、ほとん 多に2tの車重で自縄自縛に陥ったりはしないような しかも0-400mのタイムも、先代GT 2にわずか0.2 どのシチュエーションで喜ばしい挙動を見せる。8 スムーズな幹線道路を走るのと変わらないほどだ。 秒差で食らいつくのである。 段A/Tは、変速のスムーズさに妥協がまったくない。 そうした道路では洗練度が著しく改善されており、 ラ さらに注目すべきは、0 - 161 km/h 加速の 8 . 7 マニュアルモードでは時としてもう少し素早い動作 イバルたちに互する、バランスのとれたコントロール 秒という記録だ。これは、先代 RS 6 の 9 . 9 秒より1 を願いたくなることもあるが、 これほどの速さとラグ 性と従順さを手に入れている。 秒以上、また BMW の現行 M 5よりも0 . 3 秒速い。 ジュアリーさやスペースを兼ね備えていることに対 だが、それ以外の場所に足を踏み入れると、ス 193km/hから先はM5に道を譲るが、比較対象は する畏敬の念の前では些事に過ぎない。 ポーツサスペンションは混乱した印象になる。 くぼ みの多い荒れた路面をいなすにはかなりきつい縦 もっと軽量な、オプション装備の少ない状態だった 事実は断り書きしておくべきだろう。 エンジンから2本のシリンダーを取り去ることで常 にこれだけの効果をもたらされるのであれば、自動 車産業界全体が後に続くはずだ。荒々しいスピード RIDE&HANDLING 乗り心地と操縦安定性 ★★★★★★★☆☆☆ 方向の動きに対処する必要があるが、そんなとき、 RS6の徹底されたボディコントロールでは、絨毯の 固い縁を踏みしめるように強引に踏みつける所作に ここで述べたいのは、新たに発見された快適な乗 なってしまう。 ピッチングやロールはほとんど見せな 感はないが、 とんでもなくグリップの高い路面でもな り心地と、幅がさらに広がった運動能力についてだ。 いが、高速域では上下動する傾向があり、残念なこ ければ、ESPを解除していると100km/h以上でも エアサス仕様のA6をテストした経験からいえば、欧 とにその抑制はあまり巧みではない。 前後ともホイールスピンする場合さえある。それどこ 州では標準仕様のエアサス版RS6は、その両面に ステアリング操作への反応はダイレクトかつ正確 UNDER THE SKIN DRCは金属スプリングとセット 新型RS6アバントの欧州仕様は、アウディRSモデルと D R C 装備車では、スプリングがエ アではなく金属となり、さらにトップ スピードが280km/hに高められる。 してはじめてエアサスペンションを標準装備している。だ が、例によって選択肢はこれだけではない。 日本仕様に標準装備されるダイナミックライドコント ロール (DRC) は、対角線上にあるダンパーをチューブで 連結し、エアスプリングを金属スプリングに替えた構成 を採る。その目的は、純粋にメカニカルなシステムを用い て、 コーナリング時のボディコントロールを可能な限り一 定に保つことにある。ボディが傾き、片側のダンパーが圧 縮されると、そのダンパーからの対角線上のダンパーへと チュ-ブを介してフルードが送られる。 この動作により、片 側のダンパー内のフルードが反対側よりも減るだけで、筒 内の圧力自体は変化しない。 オプションのカーボンセラミック製 ブレーキを選ぶと、最高速度はじつ に304km/hに達する。 制御プログラムは3タイプが用意されており、 ダンパー の減衰力は3段階に調節されるが、圧力変化を排除して、 より正確な作動を維持するのがDRCの狙いだ。 www.autocar.jp 101 DATA LOG SPECIFICATIONS 計測テストデータ ■今月の数字 3,7sec ■メカニカルレイアウト いわゆる “本物のクワトロ” で ある。つまり、エンジンを縦 置きし、動作の迅速なクラウ ンギヤ式センターデフを備 え、 リヤアクスルにリミテッド スリップデフを置く。構造体 は高張力鋼板とアルミのハ イブリッドで、重量配分はフ ロントアクスルに55%がか かる。 0-97km/h加速のタイムは、もはや ワゴンのそれではない。何しろ911カ レラSより1秒近く速いのだ。 75 litres 2070kg 車重は2 tを超える。BMW M 5より 100 kg 近く重い。ワゴンボディの不 利を考慮しても重すぎる。 ■エンジン性能曲線 オートカー実測値 総平均 ツーリング 動力性能計測時 メーカー公表値 市街地 郊外 混合 燃料タンク容量 現実的な航続距離 CO₂排出量 消費率 6.9km/ℓ 9.9km/ℓ 2.4km/ℓ 消費率 7.2km/ℓ 13.3km/ℓ 10.2km/ℓ 75ℓ 519km 229g/km 97 560ps /5700-6700rpm 71.3kgm /1750-5500rpm 608 83 507 69 406 55 304 41 203 28 101 14 0 ■燃料消費率 ■シャシー/ボディ 710 0 2000 Engine (rpm) 4000 6000 Torque (kgm) 駆動方式:縦置き4輪駆動 形式:V型8気筒+ツインターボ, 3992cc ブロック/ヘッド:アルミ軽合金 ボア×ストローク: φ84.5×89.0mm 圧縮比:9.3:1 バルブ配置:4バルブDOHC 最高出力:560ps/5700-6700rpm 最大トルク:71.3kgm/1750-5500rpm 許容回転数:6750rpm 馬力荷重比:275ps/t トルク荷重比:35.0kgm/t 比出力:140ps/ℓ Power output (ps) ■エンジン 0 8000 ■サスペンション 前:5リンク/コイル+スタビライザー 後: トラペゾイダル/コイル+スタビライザー ■ステアリング 形式:ラック&ピニオン (電動アシスト) ロック・ トゥ・ロック:2.20回転 最小回転半径:5.95m 構造:スティール/アルミモノコック 車両重量:2040/2070kg (実測) 抗力係数:0.35 ホイール:9.5J×21 タイヤ:285/30R21 ピレリ Pゼロ スペアタイヤ:補修キット ■変速機 形式:8段A/T ギヤ比/1000rpm時車速〈km/h〉 ①4.71/9.2②3.14/13.7 ③2.11/20.4④1.67/25.9 ⑤1.29/33.5⑥1.00/43.1 ⑦0.84/51.3⑧0.67/64.4 最終減速比:3.08 ■静粛性 アイドリング:45dB 3速最高回転時:76dB 3速48km/h走行時:66dB 3速80km/h走行時:67dB 3速113km/h走行時:69dB ■安全装備 ESC, ABS, ASR, EDL Euro N CAP/5つ星(2011年型A6 2.0TDIセダン) 乗員保護性能:成人91%, 子供83% 歩行者保護性能:41% 安全補助装置性能:86% ■ブレーキ 前: φ390mm通気冷却式ディスク 後: φ365mm通気冷却式ディスク で、クワトロの開発陣がオプションのアクティブス テアリングをものにしつつあるのがわかる。 とはい え、依然として明らかに前輪から切り離されている フィールは消えていない。手元に伝わる重みはある が、 フィードバックがきわめて少なく、 この大型ワゴン がアンダーステアを出しはじめるポイントを正確に 判断するのはむずかしい。パワーをかけると、 どのよ うなコンディションでも徐々に、 しかし必ずアンダー ステアが出るにもかかわらずだ。 BUYING&OWNING 購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆ アウディはこれまで、歴代RSモデルの運動性能 もそろそろ限界に直面するのではないかという周囲 の懸念を、得難いような数字の羅列によって否定し 続けてきた。RS6については、0-97km/hタイムとク ワトロ・システムの独自性が、後輪駆動のBMW M5 やジャガーXFR-S、 メルセデスE63 AMGワゴンか らユーザーを翻意させる説得材料となる。荷室容量 の点ではE63 AMGがRS6を凌駕するが、3台のラ イバルはいずれも、4.0秒を切る0-97km/h加速タ ■発進加速 実測車速mph(km/h) ■中間加速〈秒〉 秒 イムも4輪駆動のフレキシビリティやスタビリティも ■最高速 mph(km/h) 2nd 3rd 4th 5th 6th 7th 8th 20-40(32-64) 1.5 2.6 - - - 1.4 2.0 2.7 4.3 - - - - 1.9 2.5 3.5 5.8 8.6 - 30(48) 1.9 - - 40(64) 2.1 30-50(48-80) 50(80) 2.9 40-60(64-97) 60(97) 3.7 50-70(80-113) - 1.9 2.5 3.4 4.9 7.112.8 70(113) 4.7 60-80(97-129) - 2.1 2.5 3.5 4.7 6.311.3 80(129) 5.8 70-90(113-145) - 90(145) 7.2 80-100(129-161) - - 2.8 3.4 4.9 6.3 9.6 100(161) 8.7 90-110(145-177) - - - 3.6 5.0 6.610.0 110(177) 10.6 100-120(161-193)- - - 3.9 5.2 7.0 - 120(193) 12.6 110-130(177-209)- - - 4.4 5.6 7.5 - 130(209) 15.0 120-140(193-225)- - - - 6.2 - - 140(225) 18.1 130-150(209-241)- - - - 6.9 - - 150(241) 21.7 140-160(193-257)- - - - - - - 2.6 3.4 4.8 6.2 9.9 - 1 2 3 4 5 6 7 8 61km/h 6750rpm 93km/h 6750rpm 138km/h 6750rpm 174km/h 6750rpm 225km/h 6750rpm 250km/h 5781rpm 250km/h 4856rpm 250km/h* 3873rpm * claimed 提供することはできない。 テストを通じての平均燃費は6.9 km/ℓを記録し た。 これは2009年にテストしたXFR並みで、V10を 積んだ先代RS6の5.9km/ℓという絶望的な数字よ りははるかに向上している。 最上級モデルだけに、標準装備のリストは比較的 充実している。4ゾーン空調システム、GPSナビ、20 インチアルミホイール、 リヤのスポーツディファレン シャルに加え、欧州ではオプションのスポーツサス ペンションが日本仕様には標準で備わる。だが、最 終的な価格を膨れ上がらせる多数のオプションも、 ROAD TEST 一部バックナンバーは www.autocar.jp に掲載されています。 102 AUTOCAR 02/2014 注意事項:馬力荷重比とトルク荷重比の計算にはメー カー公称車両重量を使用しています。 © A u t o c a r 2013. テスト結果は権利者の書面による承諾なしに転 用することはできません。 当然ながら用意されている。17.0万円の装飾パネル をはじめ、21インチホイールは28.0万~33.0万円、 B&Oのオーディオは84.0万円、セラミックブレーキ は124.0万円だ。 Audi RS6 Avant ROAD TEST ROAD TEST No 5121 Audi RS6 Avant AUTOCAR VERDICT ●オートカーの結論 ★★★★★★★☆☆☆ 「間違いなく驚異的なパフォーマンス。 ただし、運動能力の不備は相変わらずだ」 TESTERS’ NOTES ●テスターのひと言コメント この1520万円のステーションワゴンは じつに快適に、速く走れる。同じエンジン を積むベントレー・コンチネンタルGTC が500kg近く重く、2190万円もするの は興味深い。 マット・ソーンダース 装備によってトップスピードが変わると いうシステムはあまり気に入らない。 ハードウェアの変 更を伴うとはいえ、 安っぽいギミックのような感じがする。 マット・プライアー SPEC ADVICE ●購入にあたっての助言 日本仕様は残念ながら、欧州ではオプ ションの、そして乗り心地の悪いスポー ツサスペンションのみの設定だ。アダプ ティブエアサスペンションが設定されて いるなら、絶対的にそちらをリコメンドす るところだ。 こ のRS6は本来、アウトバーンを想定して造られてい ずにいられるエンスージアストはいないだろう。 るのだろうが、過密状態の島国を忙しく走り回る用途 だが、下位モデルの RS 4 のほうが隙はない。クワトロ でも魅力的なソリューションを提供している。人間を静かで 居心地のいい環境に包み込んで運び、必要であれば犬を GmbHは、RS6に縦横2次元方向の卓越した運動能力を 与えたが、第 3 の次元を制するまでにはいたらなかった。 乗せることができ、雪道でもスタックしたりせず、見るから フィールの薄いステアリングと強烈なシャシーに中和され に高価だ。 また、流れの遅い走行車線側のクルマたちを、 て、 ドライバーに手綱を取ることよりもしがみつくことを強 並外れた加速であっという間に置き去りにすることもでき いる。その違いが悩みとならない人もいるだろうが、それこ る。車重2tのステーションワゴンがまるでロケットに姿を変 そがわれわれにとって、単に印象的なクルマと、真に素晴ら えるさまに、思わずこみ上げてくる笑いを抑えてうなずか しいクルマを分ける違いである。 TOP FIVE 1st 2nd 3rd JOBS FOR THE FACELIFT ●マイナーチェンジ時に望むこと ・アクティブステアリングにもう少し一貫 性を持たせてほしい。 ・乗り心地を改善してほしい。 もしくはエ アサスの日本導入を望みたい。 ・レブリミット時の変速をもっと素早くして ほしい。 4th 5th JAGUAR MERCEDES-BENZ BMW AUDI VAUXHALL ジャガーXFR メルセデス・ベンツE63 AMG ステーションワゴン (2WD) BMW M5 アウディ RS6アバント ヴォグゾール VXR8ツアラー 車両価格 最高出力 最大トルク 0-97km/h加速 最高速度 燃料消費率 (混合) 車両重量 (公称値) CO₂排出量 1200.0万円 510ps/6000-6500rpm 63.7kgm/2500-5500rpm 4.9秒 (0-100km/h公称) 250km/h (リミッター) 8.6km/ℓ 1960kg 268g/km 邦貨換算約1320万円 557ps/5500rpm 73.4kgm/1750-5250rpm 4.3秒 (0-100km/h公称) 250km/h (リミッター) 10.0km/ℓ 1945kg 234g/km 1510.0万円 560ps/6000rpm 69.3kgm/1500-5750rpm 4.3秒 250km/h (リミッター) 10.1km/ℓ 1980kg 232g/km 1520.0万円 560ps/5700-6700rpm 71.3kgm/1750-5500rpm 3.9秒 (0-100km/h公称) 250km/h (リミッター) 10.2km/ℓ 2040kg 229g/km 邦貨換算約980万円 431ps/6000rpm 56.0kgm/4600rpm 4.9秒 (公称) 250km/h (リミッター) 7.4km/ℓ 1878kg 324g/km われわれは こう考える 依然としてわれわれが選ぶスポー ツセダンのナンバーワンはこれだ。 ルックス、 サウンド、 走りのいずれも が理想的である。 RS6を大型と表現するならば、 こち らは巨大である。 だが、 RS6が無感 動だとすれば、 こちらは魅力的だ。 評価は星ひとつ違うが、 その差ほど R S6を引き離しているわけではな い。単純な速さとスペースではアウ ディのほうが有利だ。 このクラスの強烈なニューカマー。 主流からは逸れるが、 美点は少なく RSモデル特有の短所は残るが、 こ ない。 チープだが楽しい。 いかにも れまで以上に長所は高まった。 オーストラリア生まれ的で、 大柄な M/T車らしい。 結論 ★★★★★★★★★☆ ★★★★★★★★★☆ ★★★★★★★★☆☆ ★★★★★★★☆☆☆ XFR E63 AMG Stationwagon M5 RS6 Avant VXR8 Tourer ★★★★★★☆☆☆☆ www.autocar.jp 103
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