〈愛媛県教育研究協議会長賞〉 クロオオアリのくらし大発見! ∼2008年 夏 働き者のクロオオアリ観察日記∼ 今治市立国分小学校 1 研究の動機 (2) 家の庭でクロオオアリたちが、一生懸命働いてい 4年 清 水 美 佐 指導教諭 松 下 準 市 クロオオアリの巣を見つける。 5月19日 雨 21℃ 午後6時 るのをみつけた。それを私はずっと見つめていた。 玄関先の石をのけるとアリがたくさんいた。クロ アリたちの働く様子や、好きな物や色、体のつくり オオアリだった。自分の家にたくさんのアリがいる など、一体どうなっているのだろうか。とても調べ ことを発見した。どれくらいの種類がいるんだろう。 たくなった。 2 (3) 研究の計画 (1) ○ インターネットや図鑑を参考にして体のつく 晴れ 22.2℃ 午後6時 紙をまき、巣作りを観察しようとした。 (2) クロオオアリの巣を見つける。 (3) クロオオアリの観察をする。 (4) クロオオアリを使って実験をする。 ○ 5月25日 晴れ 25℃ 午後6時 巣が大きくなっている。何か白い物を運んでいた。 アリの幼虫かな?卵かな? ア 実験1 食べ物の好き嫌いを調べる。 イ 実験2 どんなアリがいるか調べる。 ウ 実験3 色の好ききらいを調べる。 そうだった。アリの幼虫かな?卵かな? エ 実験4 アリの行動について調べる。 ○ オ 実験5 アリの歩き方について調べる。 ○ 6月3日 雨 21.5℃ 6月17日 くもり 26℃ 午後7時 家の前でとても長いアリの行列ができていた。約 130mの行列で、とても驚いた。 体のつくりを調べる。 ○ アリは昆虫である。頭部・胸部・腹部の三つに分 6月23日 晴れ 25℃ 午後5時 アリの巣のまわりで1匹ものんびりしてなくて、 かれ、足が6本ある。目は複眼であるが、暗い巣の とても忙しそうにしていた。 中で生活しているためかあまり発達していない。 ○ 目に対して触覚はとてもよく発達している。味や 7月8日 晴れ 29℃ 午前8時 女王アリを発見した。体は約1.5㎝くらいで、大き においまでかぎ分けられるという。 な羽が生えていた。 体のわりに大変がんじょうな大あごを持っている。 ○ 獲物をおそったり運んだりするのに都合がいい。 8月13日 晴れから雨 30℃ 午後4時 雨がたくさん降っているときは1匹も活動してい アリはハチの仲間から進化した。巣の中で動き回 ない。また、晴れたら巣から一斉に出てきて、あっ るためには体をねじったりくねらせたりできるよう という間に砂糖にむらがってきた。 に腹柄節がある。 色紙に置いていた砂糖が二日ぐらいで全くなくな 働きアリには羽がない。巣や地面だけの生活なの で、不要である。 午後7時 1㎜×2㎜の白い物をつかんだ。いまにもつぶれ 研究の内容 (1) 5月22日 アリの飼育スタート。透明のコーヒービンに黒い りを調べる。 3 クロオオアリの観察をする。(5∼8月) った。砂糖が一粒もないのにアリたちがたくさんい た。何をしているのか。 アリの体イラスト アリには二つの ○ 胃がある。一つは 8月15日 雨から晴れ アリとアリが会ったときのあいさつは触角と触角 自分自身の消化の を合わす。 ための胃、もう一 ○ 8月19日 くもり時々雨 33℃ 午前8時 つは仲間に持ち帰 アリがゼリーを食べているとき、アリの方に指を る食べ物を一時的 出したら、アリが次々とやってきて、触角を出して にたくわえるため 指に当たってきた。 の胃である。 (後略) - 9 - (4) 実験(観察日記の疑問を実験で解決する。) ア 実験1 運んで30㎝離れた巣に入って行った。はなしたとこ 食べ物の好き嫌いを調べる。 ろから巣まで約10分かかっていた。巣からは、それ 8月6日、午前7時∼午後7時の12時間をかけて、 から2時間たっても出てこなかった。ずっと観察を アリが何匹集まったかを調べた。用意したエサは砂 続けていたが、昼から夕方にかけては姿を現さなか 糖、砂糖水、塩、塩水、キュウリ、大根、ニンジン、 った。 なすび、トマトで、同じ大きさのカップに入れた。 翌22日、アリの巣から約10mはなれた所でゼリー それぞれのエサをクロオオアリの巣の近くに置き、 を食べていた。日が暮れて夜から翌日の午前中 アリの数を数えた。 にエサを取りに来たのかもしれない。 砂糖に集まるアリが一番 多く、ついで砂糖水が多か オ 砂糖大好き! 実験5 アリの歩き方について調べる。 8月20日、透明な入れ物にクロオオアリを捕ま った。あとのエサは、あま えて入れる。容器の上下左右から観察する。途中で り食べていない。また、集 砂糖を入れて、どのような動き方をするか観察する まる時刻に変化がある。気 ビンの底からアリの歩き方を見ていたが、あまり 温の高い日中には活動して の速さに目が回りそうだった。よく見ると地面につ いない。暑いのはきらいな いている足(○)と地面からはなれている足(×) のだろうか。 は、それぞれ3本になるよう体を支えている。 イ 実験2 ① どんなアリがいるか調べる。 8月8日午後1時。家のまわりの6カ所でどんな アリがいるのか昆虫ゼリーをおいて誘ってみた。 4 ゼリーに集まるのはクロオオアリが中心で100匹以 前足 ② 後ろ足 前足 ○ × ○ × ○ × × ○ × ○ × ○ 研究の考察 (1) 上がむらがっていた。しかし、日なたに置いたゼリ 後ろ足 体のつくり調べと観察日記より ーには集まらないことや、日かげでは一日中働いて 生活環境に合わせて、体が進化している。特に大 いることが分かった。また、クロオオアリだけでは あご、腹柄節、二つの胃のことを知りそのしくみに なく、小さいアリも集まっていることが分かった。 感心した。また、卵の発見や行列の長さにも驚いた。 (2) さらに、ゼリーのカップの中に芝生のカスと小石で クロオオアリの実験より ○ 甘い砂糖・砂糖水が一番の好物である。 ○ クロオオアリを中心に6種類のアリを発見した。 8月11日、同じ大きさの色紙13色(エサとなる砂 ○ 濃い色や、白い色を好む。 糖を同じ量ずつ置いた。)を大きな紙にはり、巣の ○ 午前中及び夕方からが活発。日中は不活発。 巣をつくっていたのを発見した。 ウ 実験3 色の好ききらいを調べる。 夜から翌日にかけても活発である。 近くに置き、アリが何匹集まったかを調べた。 ○ 茶色や赤色といったしっかりとした濃い色や、グ は、それぞれ3本になるよう体を支える。 レー・白色など白っぽい色を好んで集まってくる。 5 少し暗い色には集まってこない。また、時刻によっ 実験4 が分かった。アリを実際に指にのせたり、白いペン アリの行動について調べる。 で印をつけたりするのはとても難しかった。私は今 8月21日、巣から出てきたアリをつかまえて腹に 白いペンで印(白腹 アリ)をつける。捕 研究を終えて(感想) アリを観察してきて、アリは毎日働いていること ても少しずつ違っている。 エ 地面についている足と地面からはなれている足 までアリの種類は二種類ぐらいだと思ったけれど、 白腹アリの観察スタート 家のまわりにいる種類は6種類だと分かって驚いた。 まえた場所に戻して アリの好物はとっても甘い砂糖や砂糖水だと分かっ 巣から出てきた時間 てやっぱりと思った。アリを虫かごに入れるのにす を調べる。 き間からいつの間にか逃げていて、忍者のようだな あと思った。最後までアリのオス・メスが見分けら 白腹アリは、まず、 れなかった。残念だった。 60㎝位はなれた砂糖 この研究を通して、ずっとこれからもアリたちの のあるところに行っ 仕事を応援したいなあという気持ちになった。 た。そして、砂糖を - 10 -
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