植物の蒸散と環境の研究 In summer 岐阜大学教育学部附属中学校 1 年 川瀨 有香 1 研究の動機 理科の授業で植物の蒸散について興味をもった。 植物のもう一つのはたらきである光合成については 詳しく環境の違いによって行われたり行われなかっ たりすることを学んだ。蒸散の行われる環境につい てももっと知りたいと思い、追究することにした。 2 研究の内容 実験1 蒸散と環境 実験2 蒸散の時刻 実験3 いろいろな植物の蒸散 実験4 ふ入りの葉の蒸散 実験5 気孔の観察 実験1 蒸散と環境 蒸散はどのような環境の中で多く行われるのかを 調べる。 【予想】 蒸散について気孔から行われることを習った。光 合成が行われる日なたでは気孔からの酸素、二酸化 炭素の出入りが多く、気孔が活発に活動しているの ではないか。そうであれば 蒸散も日なたで多く行われ ると予想できる。 【実験方法】 日なた(芝生の上) 、日か げ(玄関の横) 、暗いところ (倉庫の中)の3カ所につ いて、アマナガピーマンを 使用し、それぞれの場所に 写真1:葉の蒸散量 実験開始1時間前 (AM7:00) を調べている にセットする。 葉からの蒸散量は使い捨てコンタクトレンズの 容器を2つ向かい合わせてはさみ、輪ゴムでとめて おく。容器の内側に水滴がついたらスポイトで採取 する。 【結果】 葉の表の様子 葉の裏の様子 日なた 水滴が大粒 水滴が大粒 日かげ 変化なし 少し曇った 暗い所 変化なし 変化なし 【考察】 当たる日光の量が多いとたくさん蒸散するのでは ないか。日光がよく当たると光合成も行われるの で気孔の動きが活発になるのではないかと思う。 実験2 蒸散と時刻 【目的】 蒸散の行われている時刻は決まっているのか、 またそれはいつ頃なのかを調べる。 【予想】 日が最も高い 12 時前後に多く蒸散されると思う。 【実験方法】 実験1と同様の装置を使い、日なたで7時~10 時、10 時~13 時、13 時~16 時の 3 つの時間帯で 比較する。 【結果】 時間 蒸散の様子 7:00-10:00 表も裏もたくさん蒸散し、一番多い。 10:00-13:00 7:00~10:00 の蒸散量よりわずかに 少ない。表は少ないことがよくわか るが、裏はあまり変わらなかった。 13:00-16:00 表はほんのわずか蒸散していた。裏 は少しだけ蒸散していた。蒸散量が 最も少ない時間。 【考察】 朝が一番蒸散量が多いという結果から午前中に たくさん蒸散することがわかる。植物は時刻によっ て蒸散量が違う。 実験3 いろいろな植物の蒸散 植物の種類による蒸散量の違いや葉の表と裏と での蒸散量の違いを調べる。 【予想】 葉の蒸散量はそれぞれ違っていて、気孔が多くて 大きいものほどたくさん蒸散すると思う。理由は前 の理科の気孔の観察でセイタカアワダチソウよりも ホウセンカのほうが表の気孔の数が多かったので、 違いがあると思ったから。 【実験方法】 8 時から13 時の間に容器の内側についた水滴をス ポイトで採取する。その時に葉の表と裏いついた水 滴の量を比較する。 【結果】 表 確認できない 大粒の水滴 確認できない 大粒の水滴 確認できない 水滴がついた 大粒の水滴 水滴がついた 裏 水滴がついた 大粒の水滴 少し曇る 水滴がついた 曇った 大粒の水滴 水滴がついた 水滴がついた バラの葉 ヒマワリの葉 木の葉 アジサイの葉 平行脈の葉 トマト ナス サツマイモ 【考察】 植物によって蒸散量の多いもの、少ないもの、表 と裏で蒸散量が大きく違うものがあった。それぞれ 蒸散量が違うということや、表と裏での差が違うこ とから、それぞれの気孔の数や大きさを調べると、 蒸散量の違いがわかるかもしれないと考えた。 実験4 ふ入りの葉の蒸散 【実験方法】ブーゲンビリアを使用 8 時から 13 時で行う 【結果】 表 裏 緑色 蒸散なし 大粒の水滴 ふ入り 蒸散なし 蒸散なし 【考察】 ふ入りの葉では光合成も蒸散もしていないので、 もし気孔のはたらきとして、酸素と二酸化炭素の出 入り口、水蒸気の出口だけでその他には何もないの であれば、気孔はふ入りの部分に必要がないので存 在していないと思う。 実験5 気孔の観察 【実験方法】 トップコートをぬり、セロハンテープではがした のをスライドガラスにはってプレパラートとした。 それを家の顕微鏡で顕微鏡写真にする。 【結果・考察】 写真2:緑色の部分表側400 倍 写真3:ふ入りの部分裏400 倍 ・ 蒸散も光合成もしなく、気孔を使わないはずで あるふの部分に、なんと気孔があった。緑色の 部分の約 1/3 と、少なかったが、気孔はあった。 これは気孔で呼吸をしていると考えられる。 ・ 蒸散量の多かったサツマイモは,他のものと比 べて気孔が大きいことに気がついた。このこと から蒸散量と気孔の大きさは関係していると考 えられる。 写真4:バラの葉表 400 倍 写真5:バラの葉裏 400 倍 ・ 葉の表と裏で蒸散量が大きく違っていたバラで は、予想通り、気孔の数が全く違っていた。蒸 散が確認できなかった表は気孔も確認できず、 裏は、蒸散量の多かったサツマイモと同じぐら いの大きさ、数の気孔が見られた。このことか ら大きい気孔があるほどたくさん蒸散すること と、1 つの葉の中にもこんなに違いが見られる ことがあると考えられる。 4 研究のまとめ 蒸散は日光のよく当たっている緑色をした葉 が午前中に行うことが多い。また、蒸散の行われる 量や葉の表と裏との蒸散量の差は種類によって違っ ていて、気孔の蒸散量は気孔の大きさ、数量、開き 具合が関係している。気孔の大きさが大きく、数量 が多く、たくさん開いているほど多く蒸散する。 (指導者 附属中学校理科部) 5 審査評 授業で学習した蒸散について興味をもち、日光と の関係や時間帯、いろいろな植物の葉の表と裏の蒸 散量について調べています。正確な蒸散量を計測す るために、使い捨てコンタクトレンズの容器を活用 したところが工夫されています。また、一つ一つの 追究で、目的、予想、実験方法、結果、考察とわか りやすくまとめているので大変わかりやすいです。 さらに一つの実験の考察から新たな課題を生み出し 追究しているところがすばらしいです。
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