写真を撮るように設定した。

課題研究
アリの生態
動機
・ 私達はアリについて知っているようだが、実は、あまりよく知らない。
・ お菓子に集まっているアリをよく見かけるが、どこからどのようにして集まってくる
のか、巣はどうなっているのか…などの疑問を抱きテーマとした。
アリの社会について
・ アリは、女王アリ(♀)
、はたらきアリ(♀)、雄アリ
女王(2n)
雄(n)
(♂)に分かれる(図1)。このような階級を「カー
卵(n)+精子(n)
スト」と言う。
・ 「カースト」によって働きが異なる。
・ 女王は最初に働きアリを生み、巣を作る。巣が出来上
がるにつれて女王アリや雄アリ(生殖カースト)を生
卵(n)
受精
単為発生
女王(2n)
雄(n)
はたらき、兵隊(2n)
む。
・ カーストは幼虫期に与えられた餌で決まる。
図1
雌雄の産み分け
アリの巣作り
はたらきありだけでも巣をつくるか、市販の観察装置(図 2)で予備実験を行った。そ
の結果、アリは壁を上手く使って巣穴を掘っていた。(図3)
この実験から、女王がいなくても巣を作ることが分かった。
図2
アントクアリウム
図 3 壁面に沿って巣穴が伸びている
観察方法
・ 中庭でアリを採集し、ビンに湿らせた砂とアリをいれ、ビンの口にろ紙とラップをかぶ
せ、針で空気穴を開けた。
・ CCD カメラを PC で操作し、30 分ごとに自動で写真を撮るように設定した。
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・ 観察から、花壇の縁などのようなへこみのあるところに巣が多いことがわかったので、
指で1cmほどへこませた。
・ アリは乾燥に弱いため、霧吹きをこまめに行った。
観察したアリの種類と巣材
巣の材料
個体数
予備実験 アントクアリウム
実験1 白砂
調査日
使用したアリ
10 匹
10 月 20 日~
不明 中庭花壇の塀より採集。
21 匹
11 月 17 日~
トビイロシワアリ 中庭の花壇の塀より採集。
2
〃後に木の枝
15 匹
11 月 25 日~
3
〃
31 匹
11 月 26 日~
クロクサアリ、トビイロケアリ
中庭のカシの木より採集。
オオハリアリ タイヤの下より採集。・
結果
実験1 トビイロシワアリ(図 4)
掘った土を扇状に巣穴の回りに運んでいた。
図 4 トビイロシワアリ
実験2 クロクサアリ・トビイロケアリ(図 5)
ともに枯れ木や枝などに巣を作る樹上性だが、実験時に撮った写真で種類を調べたため、
特定することができなかった。
このアリは虫かごの中に枝などを折って入れ、観察した。その結果、枝の真ん中に円形状
でまっすぐの穴を掘った(図 6)。
図 5 クロクサアリ・トビイロケアリ
図 6 木に掘られた巣穴の断面
実験3 オオハリアリ(図 7)
巣の特徴は巣穴から円状に砂を運ぶこと。壁に
も円状(図 8)に砂を運んでいた。
図 7 オオハリアリ
図 8 壁面についた砂
考察
・ 夜も活発に活動している。
・ 花壇の縁などのような場所に巣を作りやすい。
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・ 土のへこみをきっかけに掘り始める。
・ 初めはまっすぐ下に掘り、ある程度掘ったら枝分かれする。
・ 女王アリ、卵、幼虫がいなくても巣を掘り続けるので、巣作りは本能的行動であり、限
りなく反射行動に近い行動である。
チョークに対する忌避行動について
仮説
アリはアルカリ性であるチョークと酸性である蟻酸が中和されることを嫌う。
実験1
白い紙に、3色のチョークそれぞれで半径2cmほどの円を書き、中にアリを1匹いれて、
その行動と反応を記録した。チョークのphは、赤=7、黄=8、白=9 である。
結果
円からしばらく出ることができなかった。
実験1で見られた行動の共通点
・円の縁に沿って歩く。
・手足についた粉をなめる。
・体をまるめる。
実験2
アルカリ性を嫌がるのか、粉を嫌がるのかを確かめるため、石灰、小麦粉で観察した。
結果
・石灰(アルカリ性)
水に石灰をとかし、白い紙に円をかき、中にアリをいれた。結果、線に近づくとひっく
りかえリ、体をまるめふるえたが、結局円の外に出ていった。
・小麦粉(アルカリ性では無い)
小麦粉で円形に土手をつくり、中にアリをいれた。結果、チョークの時と同様、手足に
ついた粉をなめた。
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考察
アリは、チョークや石灰だけなく、アルカリ性でない小麦粉も嫌う様子が見られたため、
アルカリ性に関わらず、体に付着した物自体を嫌がると考えられる。
アリの行列
実験
中庭に氷砂糖を置き、アリの行列を観察した。
アリの行列ができている場所の土をすくって表面の土がない状態にした。
結果
アリの行列は乱れてばらばらになったが元に戻った。
考察
行列ができたのは雨が降った日の翌日だったため、氷砂糖は溶けないと利用できない。
土をすくうと行列がバラバラになった理由としてアリが出す道しるべフェロモンが考え
られる。アリはえさなどを見つけて巣に戻る際に道しるべフェロモンを出している。土を
すくうと道しるべフェロモンがついた土もすくわれて途切れるので、アリは一時的に混乱
したと考える。
図 9 中庭に見られた行列の経路
図 10 行列の様子
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