検証:欧州の政治リスク - ダイワインターネットTV

欧州経済
検証:欧州の政治リスク
株式会社 大和総研
経済調査部 山崎加津子
2015年9月25日
Global Economy
2015年後半の欧州の政治リスクは選挙?
 ユーロ圏債務危機で財政再建に苦しんだ国々で選挙が続く
2015年9月~12月の主な欧州の選挙日程
9月20日
ギリシャ議会選挙
9月27日
スペインのカタルーニャ州議会選挙
10月 4日
ポルトガル議会選挙
10月25日
ポーランド議会選挙
12月20日までに
スペイン議会選挙
⇒注目点は緊縮財政反対派、EU懐疑派がどの程度支持を集めるか
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にわかに浮上した「難民急増問題」
 EUに庇護を求める難民が急増
背景
・ シリアでの内戦の長期化
・ イスラム過激派の勢力拡大
・ 周辺国に逃れたシリア難民に対する国際機関の支援縮小
・ 欧州で難民認定されたシリア人等を頼って親戚、知人が欧州を目指した
⇒EUへの難民申請者数は2014年の62.8万人から2015年は倍増??
出身国はシリアが最多、このほかアフガニスタン、イラク、エリトリアなど
問題点
・ 難民の数が急増したこと
・ 難民受け入れの負担が一部の国に偏っていること
地中海を船で渡る「海ルート」では、ギリシャやイタリア
トルコからバルカン半島を縦断する「陸ルート」では、ハンガリー
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EUへの難民流入は過去5年増加傾向
 難民認定申請者数はその時々の社
会情勢により大きく増減する
EUに対する難民認定申請者数
万人
70
・ 2001年までの増加時期はユーゴスラ
ビアが崩壊し、内戦が激しくなったこと
が背景に
60
50
40
・ 2011年には「アラブの春」と呼ばれた
民主化運動がアラブ諸国や北アフリカ
で盛り上がったが、その後の政情不安
の原因となってしまった
30
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0
98
・ 2013年以降、難民増加ペースが加
速した背景には、シリアの内戦長期化
とイスラム原理主義者の勢力拡大
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(出所)Eurostatデータより大和総研作成
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機能しなくなったEUの「共通難民政策」
 CEAS(Common European Asylum System)
背景
・ EU域外から来る難民が、「より難民認定されやすい国」を探してEU 内で移動を
繰り返したり、難民認定手続きのたらい回しが起きたりしないように、EU 加盟国
における難民認定手続きの共通化の徹底が図られた
ダブリン・システム
・ 難民認定手続きは最初に入国したEU 加盟国で行われることが原則。難民認定
されるまでの期間にかかる費用も当該国が負担。また、難民申請者が他の国で
難民認定を申請することはできず、最初に申請した国に送還するのが原則
・ 難民認定手続きでは、①申請者を難民として認定し、EU 内での定住や就職を許
可するか、あるいは②難民認定せずに出身国に送還するか、の判断が下される
・ 2014年の難民認定率は57%
問題点
・ 難民受け入れの負担が一部の国に偏っているおり、急増する難民に対して、受付
体制がパンク状態に
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難民問題は解決が非常に厄介
 急増した難民に対するEUの対応
緊急閣僚会議
9月14日にEU内相・法相の緊急会合が招集されて下記の議題が検討されたが、
結論には至らずに仕切り直しとなった
・
・
・
・
イタリア、ギリシャ、ハンガリーなど難民急増地域にEUの難民登録センターを設置
難民認定者の受け入れをEU各国で公平に分担する
バルカン諸国等を「安全な出身国」と認定し、難民認定者の絞り込みを図る
EUの国境警備強化、難民をビジネスにしている闇業者の取り締まり強化
⇒総論賛成(難民救済は必要)、各論反対(受け入れ義務化は拒否)となりやすい
厄介な問題。特に、難民認定者16万人を、各国の人口、経済規模、経済状況に
応じて配分し、その受け入れを義務付けるとの提案に、ハンガリー、ポーランド、
チェコ、スロバキア、バルト諸国がこぞって反対を表明。
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一筋縄ではいかない難民問題の解決
 急増した難民をどう受け入れるか
・ EUとして「共通の受け入れ態勢」をどう構築するか
・ 受け入れにかかるコストをどう分担するか
・ 難民受け入れを「負担」ではなく、「チャンス」と捉えるようにどう国民を啓発するか
・ 難民をどう社会に適合させていくか(語学教室、職業訓練、就職斡旋など)
・ 難民と地域住民との摩擦をどう回避するか
 難民急増をどう抑制するか
・ 緊急に支援が必要な「難民」とそうではない人々を区別する
・ 中東、アフリカ、中央アジアなどの政情安定を図る
⇒難民急増問題に対しては、EUとして多面的な対策を講じて対応する必要があるが、
その際、EU加盟国が概ね納得できる共通難民対策を構築できなければ、すでに指
摘されているような「EUの東西問題」、「EUの分裂」へと発展するリスクが高まる。
難民問題への対応を誤れば、各国の議会選挙でEU懐疑派が台頭するなどの影響
が今後出てくる可能性が高いだろう。
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