2 時 間 目 ・ オ ー プ ン カ ー 乗 り こ な し 術 ( ポ ル シ ェ と フェ ラ ー リ 、ど っ ち が モ テ る ? ) よもやフェラーリというだけでは埋没し かねない …… そんな 焦りを感じたら、オープンボディを選ぶといい。 イバリ度向上、モテ指数アップ。 ポルシェと一 緒 に 走らせ て、3 6 0スパイダーの値打ちを探ります。 Photo:五條伴好 T ext:柴田 充 車両協力=コレツィオーネ世田谷店 Tel.03-5758-7007 (上) インテリアの眺めはクーペ(モデナ) とほぼ同様。2人のた めのスペースは前後左右ともに余裕たっぷり。 (左) モデナと同様にエンジンはシースルー。あたかも博物館の 展 示 品 のような3 . 6 R V 8 ユニットは 4 0 0 p s / 8 5 0 0 r p m 、 38.0mkg/4750rpmを絞り出す。 (右) スリーサイズは4490×1925×1235mm。全高が20mm高 いことを除いてモデナと同一だ。ソフトトップはもちろん油圧に よるフルオート開閉。希少MT、社外ナビ、バケットシート、そし て“MSレーシング”の排気系を備えた魅力的な試乗車は、残 念ながら売約済み。 これまで体育会系クルマ好きの間では、オープ フェラーリといえども、いまや「モテる」 という せる。背中からとどろく爆音でオーディオはもち だった。ボディ剛性が低いやら、強化メンバーで 指標ではライバルは多く、これまでのように安穏 ろん、カーナビの音声も聞き取れないほど。同 車重が増すなど、理由はさまざまあるが、やはりナ としてられない。そこでさらなる格上げを狙う、 乗者に話すにも自然と声が大きくなり、まるでシ ンパな空気が漂うからだろう。なかにはエリーゼや 飛び道具がスパイダーなのだ。 ルバー世代の会話のようだ。だが、これもごち るものの、走り屋に屋根なしはササらないようだ。 060 たこともあり、エンジンも低回転からヤル気を見 ンカーはメタルトップに比べて格下に見られがち ケイターハムを転がす、コアなオープンフェチはい 360 Spider した360モデナもそんな稀少な1台だ。 スロットル・フェロモン ゃごちゃした口説き文句いらず。クルマでオトす という自信のなせる技である。 ところが欧米となると、立場は逆転する。それ 真っ赤なボディ&タンの室内に、ルーフを開 それこそ千切れるようなV8サウンドとともに こそオープンカーはリッチの象徴。目立つことが け放ったスタイルは、シャツのボタンを2つ開け 味わう加速感は圧倒的だ。シートに押し付けら 信条であるセレブにとっては、オープンエアーの たイタリアオヤジの貫録を思わせる。 れるというか、押し倒される気分にもなってしま う。アクセルに合わせてフェロモンも全開に。 快感ばかりでなく、パーティに乗りつけるにも格 ただでさえ数の少ないスパイダーにMTという 好のクルマなんである。ソフトトップはセキュリテ 仕様に驚きつつ、クラッチを踏むとその足応えに ィが心配だし、雨漏りもしそうだ。なにしろ野ざ 閉口した。これをモノともせず、踏みつけるタフさ 助手席に乗る女性にはふさわしいドレスコー らしの駐車場ではなぁ、などというシミッたれた庶 がまずは必要だ。しかし、乗り手を選ぶMTもま ドとして、ぜひともマイクロミニで脚線美を強調 民感覚をみじんも感じさせず、リッチこの上ない。 たモテる小ワザに転用できる。つまり、フェラー していただきたい。スケルトンでむき出しになっ 日本でもクルマの座標軸が「リッチ」や「モテ リを乗りこなすだけの技量を同乗者に見せつけ たV8以上に視線を引きつけること請け合いだ。 る」にシフトするにつれ、オープンカーへの視線 つつ、オープンのメリットを活かして周囲にもアピ こんなクルマの隣に並んだとしたら、どんなに満 は熱くなってきている。あのフェラーリにしても ールするといった寸法だ。しかも、プレミア度も 員の通勤バスに乗っていたとしても、この時ば 最近はスパイダーが人気という。もともとタマが 高い故、街中で同じクルマとカブる心配もない。 かりは感謝することだろう。 少ないこともあって、出回る数も多くない。試乗 試乗車には社外マフラーが取り付けられてい これぞフェラーリの本領発揮だ。 こうして考えてみると、360スパイダーはステー 061 911 Carrera S Cabriolet (上)形状といいカラーリングといい、フェラーリとは対照的にビ ジネスライクなコクピット。ソフトトップを閉じると、ほぼクーペ同 様な走行感覚を得られる。 (左) こちらもフェラーリとは対極にある、見せるつもりなどさらさらな いエンジンルーム。試乗車はカレラSなので3.8R。標準カレラの 3.6Rより30ps/3.1mkg多い355ps/40.8mkgを発生する。 (右) スリーサイズは4425×1810×1300mm。 車重は1550kg(MT)/1590kg(Tip) 。ちなみにアルミボディの 360スパイダーは、911より大柄なサイズにもかかわらず1500kg (MT)/1520kg(F1) と一回り軽い。 ジのようなものだ。オーナーはエンターティナーで ライブ日和なのだ。フェラーリが陽気な太陽な 分けする二毛作というわけで、さすがデキるビジ あり、同乗者もショーガールにほかならない。ストレ らば、ポルシェはそんな月光が似合う。 ネスマンのバランスシートは違う。 スのたまった路上をリッチ&ゴージャスな非日常に イタリアの種馬、ではなく、跳ね馬から911カレ 細部の洗練も周到だ。たとえばオープンエア 変えてくれる。それも中途半端なオープンカーでは ラSカブリオレに乗り換えると、ことのほかジェン ーの走りを堪能して、同乗者をその気にさせつ 恥ずかしくなるが、フェラーリほど突き抜けていれば、 トリーに感じられる。市街地での回転域では、バ つ、ホテル直行といった場合。ひと目もあり、オ 衆目を集めるのもまた心地よくなる。見られる快感 タバタしたボクサー特有のサウンドが強調され、 ープンのまま入るわけにはいかない。停車して というのは、クルマでも体験できるのだ。 さほど躍動感は味わえないものの、すべてにおい から操作したのでは、いくら電動ルーフで数十 てスムーズだ。もちろん、走りは天下一品。オー 秒とはいえ、せっかくの気分も削がれてしまう。 プンボディーであっても非の打ち所がなく、快適 ところが、低速なら走りながらでもルーフを閉じ な車内はオープンであることを意識させない。 られるので、相手に躊躇のいとまも与えない。 大いなる下心 ところで見た目とは裏腹に、日本でのオープ ンカーはけっして快適な乗り物ではない。これ からの季節、日差しは強く、女子高生だってい まどきUVは喜ばない。しかも汚れた空気で1日 走れば、どんなエレガントなホワイトシャツも作 業着と変わらなくなる。しかし、それだけのこと を割り引いても、魅力は余りある。 062 しかし、一方で感じてしまうのが、では、どうし てポルシェでオープンなのか、だ。 ところが、そこにはモテるための意外としたた かなオープン戦略が隠されているのである。 たとえばビジネスシーンで使っても、ルーフを 閉じてしまえば違和感はない。昼間はビジネス これぞ手練手管のモテる技術である。 あくまでも正攻法のフェロモンむき出しで迫る フェラーリに対して、ポルシェのそれは精緻なエ ンジニアリングに秘めた知的スケベといったと ころ。かくして、ポルシェのオープンには大いな る下心が隠されていたのだ。 オープンエアーを楽しむにはむしろ夜がいい。 エクスプレスをこなしつつ、アフタービジネスとも 以上、2台のオープンにはメタルトップを出し 昼間ほどひと目が気にならず、大胆になれる。 なれば、一転してルーフを全開し、モテオープン 抜くだけのリッチ感と、筋金入りの持ち味ならぬ 夜景ならば、猥雑な部分も暗闇に隠され、ネオ に変∼身! このサプライズに同乗した女性も モテ味がある。用途とキャラクターに合わせて ンの美しさも際立つ。満月の夜などは絶好のド 惚れ直すといったやり口だ。1台を昼夜で使い お選びいただきたい。 063
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