トウモロコシ原料のポリエステルがあるんで しょうか?

2015.07.15
ニ ッ セ ン ケ ン 分 室 「 思 い つ き ラ ボ 」 No.4 4
トウモロコシ原 料 のポリエステルがあるんで
しょうか?・・・
繊 維 の資 格 試 験 の時 期 でもあり過 去 の問 題 集 や当 センターの採 用 試 験 の問 題 など ここのところ休 憩
時 間 や仕 事 が終 わったあとに職 員 同 士 で問 題 を出 し合 ったり答 えを調 べたりしている光 景 を目 にする機
会 が多 くなりました。筆 者 も思 いつきラボの原 稿 を担 当 するようになって質 問 を受 けることも増 えてきている
のですがこれがなかなか手 ごわい問 題 が多 く解 答 するのに四 苦 八 苦 しております。繊 維 業 界 に長 く身 を
置 いていても専 門 外 のことはまだまだ知 らないことのほうが多 いのです。
先 日 知 り合 いの子 供 さんが持 っていた小 学 生 の問 題 集 を見 せてもらったのです が 開 いたページがいきな
り横 文 字 の問 題 が・・・。小 学 生 でも英 語 の勉 強 してるんだと何 気 に見 ていたらこの意 味 が分 らない。
To be to be ten made to be.
なんの言 い回 しだろうかと・・・こんな問 題 を小 学 生 が習 っているのかと驚 きと自 分 のレベルの低 さに愕 然
(がくぜん)として落 ち込 んでしまいました・・ ・と恥 をさらしたところで今 回 のテーマに入 ります。
植 物 由 来 の ポリ エステ ル
今 年 の春 頃 から「トウモロコシから作 ったポリエステルがあるの
か?」とか「サトウキビからポリエステルが作 れるのか?」「トウモロ
コシから作 られる糸 はポリ乳 酸 繊 維 ではないのか?」という質 問 が
増 えてきています。生 産 サイドでは植 物 由 来 のポリエステル繊 維
が ちょっとした流 行 (はや)りになっているのかもしれません。植 物
由 来 の合 成 繊 維 というとポリ乳 酸 繊 維 がよく知 られていて イメー
ジ的 に“トウモロコシ”から作 るのはポリ乳 酸 繊 維 という認 識 が強 く
なっているので トウモロコシからポリエステルが作 れるのかという
疑 問 を持 たれてしまうようです。
ポリ乳 酸 繊 維 は植 物 のデンプンから発 酵 させて造 った乳 酸 を繊
維 化 したもので代 表 的 な原 料 として“トウモロコシ”や“サトウキビ”
が使 われています。原 料 も植 物 でさらに土 に戻 せば生 化 学 分 解
で自 然 に帰 る地 球 にやさしい環 境 配 慮 型 素 材 として注 目 される
ようになったのです。一 方 でデンプン以 外 の糖 質 からエチレングリ
コールや 1,3 プロパンジオール(トリメチレングリコール)を作 りテレ
フタル酸 と共 重 合 させてポリエステルを造 ることも可 能 なのです。
植 物 由 来 ではあるもののテレフタル酸 は石 油 原 料 から取 り出 すので ポリ乳 酸 繊 維 のように生 化 学 分 解
作 用 も働 きにくく いまひとつ環 境 に配 慮 した印 象 を与 えていないのですが とはいえ 100%化 石 資 源 の
石 油 から造 っているポリエステルと比 較 すれば地 球 環 境 にはかなり貢 献 していることになります。この植 物
から取 出 す糖 質 を“トウモロコシ”に限 定 すると「トウモロコシから作 ったポリエステル」と表 現 することは
2015.07.15
可 能 なわけで 同 様 に「サトウキビから作 ったポリエステル」も可 能 ということになります。
植 物 由 来 とはいえ糖 質 も種 類 の異 なるものが作 り出 せるのでエチレングリコー
ルか ら 造 り 出 したも の は テレフタ ル 酸 と 共 重 合 さ せて PET( ポリ エチ レン テレフ
タレート)に 1,3 プロパンジオールから造 り出 したものは テレフタル酸 と共 重 合 さ
せて PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)になります。植 物 由 来 のポリエステル
も種 類 があるのです。ということで質 問 の答 えとしては「トウモロコシやサトウキビ
から作 られる植 物 由 来 原 料 のポリエステルはあります」ということになります。
植 物 由 来 のポリエステルは環 境 配 慮 型 素 材 と書 きましたが 原 料 生 産 時 や廃 棄 の時 には CO²(二 酸 化
炭 素 )を排 出 しているので温 室 効 果 ガス削 減 には貢 献 していない印 象 を持 たれてしまうのですが 植 物 由
来 の商 品 に関 しては“カーボン ニュートラル”という考 えに成 り立 って環 境 配 慮 型 素 材 に分 類 されていま
す。“カーボン ニュートラル”とは直 訳 すれば“炭 素 中 立 ”となり生 産 時 や廃 棄 時 には CO²を排 出 するも
のの 原 料 として使 われ るまでに大 気 中 の CO²を吸 収 しているから同 等 ですよという考 え方 になっていま
す。厳 密 にいえば吸 収 と排 出 がイコールということはないのですが ほぼチャラですよという考 え方 をしてい
ます。
となれば繊 維 の分 類 でパルプやリンター(綿 花 の残 り繊 維 )から作 られる再 生 繊 維 (レーヨン キュプラなど)
や半 合 成 繊 維 (アセテート トリアセテートなど)も“カーボン ニュートラル”の考 え方 に見 合 うことになります
ので環 境 配 慮 型 素 材 ということになります。 2011.3.11 の大 震 災 での原 発 事 故 以 降 地 球 温 暖 化 防 止
の声 が小 さくなってしまいましたが 再 生 エネルギーだけでなく“カーボン ニュートラル”の考 え方 にも注 目
が集 まってきています。繊 維 業 界 でもこの考 え方 に基 づいた物 造 りが見 直 されてきています。
頭 は 柔 ら かく ・ ・ ・
ということで今回の原稿は終わりたいと思いますが
冒 頭 に 書 い た 小 学 生 の 問 題 ・・・
問題
集の答えを覗いてみると
飛べ
飛べ
天まで
飛べ。
と い う 解 答 に な っ て い ま し た・・・何 か 変 な 気 が・・・も う 一 度 問 題 集 を 見 る と 小 学 生 高 学 年
向け ローマ字ドリル・・・。人間
思い込みはしくじりの素(もと)という教訓です。
原稿担当:竹中
直(チョク)