主婦の調理に対する態度によるセグメンテーション

VR 流
インサイト
主婦の 3 割は良“菜”賢母、夕食メニューは「手作り和食」
主婦の調理に対する態度によるセグメンテーション
~調理性向クラスター~
フスケープマーケティング社との共同で、調理に対
はじめに
する考え方(態度)を基準に、毎日の食卓を担う主
婦を分類したものです。
マーケティングやコミュニケーションを成功させ
るためには、的確なターゲットを定め、効果的なア
プローチを検討することが必要です。そこで、生活
者のセグメンテーション(分類)を行い、ターゲッ
トを絞った上で、その特性を深く理解していきます。
このセグメンテーションを行う基準は、対象とする
製品の特性やどのようなマーケティングを行うとし
ているかによって様々です。これまで、ACR など
のデータを用いて生活者の性格や生活価値感を基準
としたセグメンテーションについて紹介してきまし
た。今回は、調理という消費の現場に近い生活者意
識セグメンテーションについて紹介します。このセ
使用したデータ
株式会社ライフスケープマーケティングが実施
している食 MAP データのモニター登録時および
年 1 回更新時に実施している「食生活に関するア
ンケート調査」の食や調理に関する意識アンケー
トを用いました。
食 MAP® とは、首都圏 30 キロ圏内在住の 20
~ 64 歳の主婦 360 世帯を対象に、食品の購買
および食卓のデータを 365 日連続して収集して
いる機械式食卓メニュー調査システムです。
グメンテーションは、食 MAP を提供しているライ
図 1:「料理が好き」×「面倒な時は外食で済ませる」
50%
料
理
が
好
き
①良菜賢母派
40%
料
理
を
作
る
の
は
好
き
だ
③流行を追う
食楽派
30%
⑤高感度
ヘルシー派
20%
10%
②調理回避派
④悩み多き
消極派
0%
0%
5%
10%
15%
食事の支度をするのが面倒なときは、外食で済ませることがよくある
※「あてはまる」の割合
面倒な時は外食
18
20%
Video Research Digest 2013. 11
writer
調査業務局
塚原新一
調理性向による5つのグループ
③流行を追う食楽派(全体の 22%)
料理が好きで、食の情報にも関心が高い若い主婦。
調理は面倒に感じないが、外食も積極的に利用。旬
調理に対する考え方を整理するために、因子分析
の食材を取り入れたメニュー作りを心掛ける。
を行い、主要な考え方(因子)を抽出しました。合
④悩み多き消極派(全体の 15%)
わせて、アンケートに答えた主婦がどのくらい考え
外食の利用も消極的。健康のために食材を積極的
方にあっているかというスコア(因子得点)を使っ
に摂取する意識は高くないが、塩分・糖分・カロリー
て、
主婦モニターを5つのグループに分けました(非
などの摂りすぎには注意している。
階層クラスター分析)
。各グループの特性を俯瞰的
⑤高感度ヘルシー派(全体の 16%)
に理解するためのプロットしたのが、図1です。縦
調理に対して積極的で、食の情報への関心が高い
軸に「料理が好き」
、横軸に「食事の支度が面倒な
内食志向の若い主婦。健康づくりのための食材を積
ときは外食ですませる」に、
“あてはまる”と答え
極的に利用する反面、油脂・糖分・カロリーの摂り
た人の割合を用いています。料理が好きと外食は相
過ぎは注意していない。
対する考え方のように思われますが、そうではない
ようです。男性の料理好きは、
「外で食べておいし
実際に、日々の食卓づくりには様々な特徴があり
かったものを家でも」と考えるようですが、主婦で
ます。なかでも、調理にどのような簡便化の手段を
も同じように考える人がいるようです。逆に、共に
とっているのか、その違いを比較してみました。調
消極的なグループもありました。では、各グループ
理済み食品や半調理品、料理の素をミールソリュー
のプロフィールを見てみましょう。
ションとしています。
5つのグループのプロフィール
食生活意識と属性から見た各グループのプロ
フィールは以下の通りです。
ミールソリューションの利用状況
図 2(次頁)は、グループ別に夕食での“惣菜”
“半調理品”
“料理の素”のTI値*の特化度(対全
体比)を示したものです。
「良菜賢母派」は、惣菜・
①良菜賢母派(全体の 27%)
半調理品・料理の素の利用が他のグループに比べて
調理に対して積極的で、食に関する情報感度が高
顕著に少なく、手作り重視の意識が反映されている
く、食を通じた健康づくりの意識の高い主婦。末子
ことがわかります。一方で、
「消極派」は利用頻度
が中高生以上の主婦、または 50 歳以上夫婦のみで
が高く、料理への苦手意識があるにもかかわらず外
暮らすような年代の高い層の割合が多い。
食にも回避しないので、ミールソリューションを最
②調理回避派(全体の 20%)
も頼りにしているようです。
料理があまり好きではなく、調理に対しても自信
“料理の素”については、
利用の高い「調理回避派」
、
がない。食の情報への関心は低い。調理をおっくう
に感じ、外食を積極的に利用する主婦。50 歳未満
「食楽派」
「
、消極派」と利用の少ない「良菜派」と「ヘ
ルシー派」にはっきりふたつに分かれました。
が 8 割強で、中高生以下の子供がいる人の割合が
高い。
*TI値(Table Index)とは…1000 食卓あたりの出現回数
19
インサイト
VR 流
図 2:各クラスターの食材の利用状況/夕食におけるミールソリューションの利用状況[全体値を 100 とする]
120
111
100
80
114
102 109 110
105
89 87 85
98 100 94
105 104 104
60
40
20
0
[夕食、2011/10/01 ~ 2012/09/30]
図 3:各クラスターの料理の素の利用状況/夕食における和洋中の料理の素の利用状況[全体値を 100 とする]
160
140
142
120
125
100
80
60
78
98
87
119
119
116 118
105
91
98
83
84
65
40
20
0
[夕食、2011/10/01 ~ 2012/09/30]
和洋中の料理の素を使いこなす
「流行を追う食楽派」
図 3 は夕食におけるメニューの和洋中別で“料
理の素”の利用頻度を、グループ別に比較したもの
です。
「流行を追う食楽派」が和洋中全てのメニューに
おいて、まんべんなく“料理の素”を良く利用して
いることがわかります。これは、いろいろな料理を
内食でも外食でも楽しみたい「流行を追う食楽派」
みると、以下のようになりました。
「和食の料理の素」の利用から読み取れる
マインドの違い
良菜賢母派 和食がとても好きだけどそもそも素
は使わないので手作りで。
悩み多き消極派 和食が好きだけど面倒なので料
理の素を利用。
流行を追う食楽派 色んな和食を楽しむために料
の特性が表れていると言えます。
理の素を積極活用。
“料理の素”の中でその利用頻度に、各クラスター
高感度ヘルシー派 健康意識から和食は手作りで。
の特性が最も良く表れているのは“和風料理の素”
調理回避派 手間のかかる和食は素を使ってでも
です。グループの特徴と照らし合わせて、
“和風料
20
理の素”を利用する際のマインドの違いを考察して
作らない。
Video Research Digest 2013. 11
図 4:各クラスターの料理の素の利用状況/夕食における料理の素の利用状況[全体値を 100 とする]
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
155
108
82
101
77
77
115
84
117
93
[夕食、2011/10/01 ~ 2012/09/30]
“料理の素”の利用が多いのは、
「消極派」
「食楽派」
の素において、先行層となる「高感度ヘルシー派」
「調理回避派」です。しかし、
「消極派」
「調理回避派」
では、時短・簡便に加え、
「こだわり」の要素を入
は、食の情報に関心が低く、フォロワー層の割合が
れた“料理の素”が、市場拡大の鍵になるのではな
高いため、新しいメニューや商品を積極的に取り入
いでしょうか。
れる人たちとは言えません。一方で、いろいろなメ
ニューを手軽に試してみたいという「食楽派」は、
食卓づくり・メニュー選択において「より簡単に、
“料理の素”の新商品のターゲットとして最適と言
よりおいしく、より健康に」という傾向が強まる中、
えるでしょう。
調理性向クラスターは商品開発のターゲットや期待
価値を決めるのに有効なツールとなることが期待さ
“こだわり系料理の素”は
「高感度ヘルシー派」がけん引
れます。
※調理性向クラスターの作成は、㈱ライフスケープマーケ
料理の素全般についての先行層となる「流行を追
ティング 新市場開発部 井上朋子氏、磨井美幸氏、大日
う食楽派」ですが、カテゴリーを細分化してみると、
本印刷㈱ 包装事業部企画本部リサーチ&プランニング戦
「高感度ヘルシー派」は“こだわり系”の料理の素
の食卓出現率が高いことが特徴です。その傾向が顕
著に表れているカテゴリーを抽出したのが図 4 で
す。
“顆粒カレールー”や“缶・ビンのドミグラスソー
ス”は、
「ヘルシー派」の利用頻度が他のクラスター
に比べ高くなっています。内食志向で料理が好き、
そして食の情報や健康に関心がある「ヘルシー派」
略室 川嶋佑輔氏とともに行いました。
<参考文献>
田中洋編著 リサーチ・ナレッジ研究会著(2010)
、
「課
題解決!マーケティングリサーチ入門」
、ダイヤモンド
社、p91-93
Donald R Lehmann(1989)
,“Market Research and
Analysis”
, IRWIN,
は、
“料理の素”を簡便のためでなく、よりおいし
くする“こだわり”として利用していることが読み
取れます。
このように、生活者の価値感や行動特性と合わせ
て消費をみることで、同じ“料理の素”でも、生活
者グループによって期待されること(ベネフィット)
※発行以降に、クラスター名称の変更がありました。
②調理回避派を②家族志向の簡単調理派、
⑤高感度ヘルシー派を⑤スマートクッキング派
としています。
が異なることが想定できます。
「こだわり系」料理
21