不動産レポート№14 -登記できる建物について

(参考資料)
不動産レポート№14
2003/09/12
㈱尼信経営相談所
-登記できる建物について-
一般に建物といえば一戸建住宅、マンション、オフィスビル、工場などをイメージ
しますが、簡易なプレハブ倉庫やゴルフ練習場は建物といえるでしょうか?
また、キャンピングカーハウス、コンテナハウス、廃棄された電車などはどうなの
でしょうか?
「建築基準法」や「不動産登記法」などの法律によって建物といえるかどうかの認
定基準は若干異なるものとなりますが、ここでは建物といえるかどうかの認定基準を、
建物として登記できるかどうかといった「不動産登記法」の観点から考えてみたいと
思います。
1.不動産登記法上の「建物」の認定について
建物として登記できるかどうかは、不動産登記法上の「建物」として認定され
るかどうかによります。
一般住宅や倉庫などの建物は、一般常識から考えても不動産登記法上の「建物」
として認定されることに問題はないのですが、プレハブの仮設建物やコンテナ
ハウス、さらにはゴルフ練習場などになると、
「建物」として認定されるかどう
かの判断が難しくなります。
プレハブの仮設建物やコンテナハウスなどであれば、端に地上においてあるだ
けなのか基礎工事が施されているのかによって異なりますし、ゴルフ練習場で
あれば、壁がどの程度あるのかなどによっても異なってきます。
そこで、不動産登記法では「建物」として認定されるかどうかの基準(認定基
準)を設けています。個別具体的な現実の建物については、専門家でさえ判定が
困難なケースがあると思われますが、大部分の建物についてはこの認定基準に
したがって大よその判断は可能かと思われます。
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2.不動産登記法上の「建物」の認定基準
不動産登記事務取扱手続準則第 136 条 1 項では、
「建物とは、屋根及び周壁又
はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする
用途に供し得る状態にあるものをいう。」と定めています。
つまり、不動産登記法上の「建物」かどうかの認定については、次のような要
件が必要だということになります。
(1) 土地定着性
土地への定着性とは、その建物が永続的にその土地に固着して使用できる状
態のことをいいます。
例えば、キャンピングカーハウスや廃棄電車、簡易式建物などは自由に移動
させることが出来たり、単に地上においただけの状態では建物と認定できませ
んが、基礎工事などを施工された場合は建物として認定されます(※)。
(※)基礎工事の例
・ 一面に基礎が施され(べた基礎)、固定位置が本体の中央部にあって、ボルト・
ナット等を用いて基礎の部分と固着されているような場合
・ 本体底部の外周と同型の基礎が施され(布基礎)、基礎と固定するためのボツ
ト・ナットも容易に取り外しができない位置に配置されているような場合
(2) 外気分断性
風雨を遮断するための屋根や周壁等があることをいいます。
(具体例-何れも上屋がある場合-)
① 集荷場などの建造物で周壁が二方しかないようなものについては、こ
の建造物の用途を達成する上で、二方向あけておくことが望ましいと
判定されるので、建物として認定されます。
② また、ゴルフ練習場やバッティングセンターはその用途上、球の飛ぶ
方向をあけておく必要があるので、他の三方に周壁がある場合は建物
として認定します。
③ 駐車場や駐輪場についても、必ずしも完全な周壁があることが望まし
いとは限りませんので、周壁が簡単なものでも建物として認定します。
(3) 用途性
屋根及び周壁等の外部構造によって区画された内部の空間には一定の用途
に供することの可能な生活空間(人や貨物の滞留が可能な場所)が形成されて
いることをいいます。
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3.建物であるかどうかの判定についての例示
不動産登記事務取扱手続準則第 136 条 2 項では、
「建物であるかどうかを定め
がたい建造物については、次の例示から類推し、その利用状況を勘案して判定
しなければならない。
」として、建物として取り扱うものと取り扱わないものを
例示しています。
不動産登記法上の「建物」かどうかの認定に、この例示内容を参考としてくだ
さい。
① 建物として取り扱うもの
・ 停車場の乗降場及び荷物積卸場、ただし、上屋を有する部分に限る
・ 野球場、競馬場の観覧席、ただし、屋根を有する部分に限る
・ ガード下を利用して築造した店舗、倉庫等の建造物
・ 地下停車場、地下駐車場及び地下街の建造物
・ 園芸、農耕用の温床施設、ただし、半永久的な建造物と認められるも
のに限る
② 建物として取り扱わないもの
・ 瓦斯タンク、石油タンク、給水タンク
・ 機械上に建設した建造物、ただし、地上に基脚を有し、又は支柱を施
したものを除く
・ 浮船を利用したもの、ただし、固定しているものを除く
・ アーケード付街路(公衆用道路上に屋根覆を施した部分)
・ 容易に運搬し得る切符売場、入場券売場等
3.建物として登記が可能かどうかの判定が困難な場合
建物として登記できるかどうかは建物表示登記の問題ですので、建物として登
記が可能かどうかの判定が困難な場合は、専門家である土地家屋調査士に相談
することをお勧めします。
以
3
上