Brahms Programm Feldeinsamkeit 野の寂しさ Op.86-2 Die Mainacht 五月の夜 Op.48-2 Der Tod, das ist die kühre Nacht 死は冷たい夜 Op.96-1 Auf dem Kirchhofe 墓場にて Op.105-4 Von ewiger Liebe 永遠の愛 Op.43-1 Ständchen セレナーデ Op.106-1 ドイツ民謡集 Duetsche Volkslieder Sag mir, o schönste Schäf’rin ねえ Erlaube mir, feins Mädchen 許しておくれ Da unten im Tale あの下の谷では Schwesterlein お姉さん Wach auf, mein’ Herzensschöne おきなさい All’ mein Gedanken すべての想いが Es sthet ein’ Lind 一本の菩提樹が 休 美しいお嬢さん 愛しい人よ 憩 3つのインテルメッツォ 3 Intermezzi 美しい羊飼いのお嬢さん Op.117 *************************** Vier ernste Gesänge 4つの厳粛な歌 Ⅰ.人の成り行きは Ⅱ.私はふりかえり見た Ⅲ.おお 死よ Ⅳ.たとえ私が人間の言葉や天使の言葉を Op.121 歌 詞 大 意 Feldeinsamkeit 野の寂しさ Op.86-2 Armers 僕は小高い緑の丘に座り じっと空を見上げている 絶え間なく鳴き続けるこおろぎの音が 美しい空の青さがすべてをつつんでいる その日は嵐もようで 雨も降り 墓石はすべて言葉が凍りついていた「過去」と 棺は静かにまどろみ 墓は静かに露にぬれて「救済」と 美しい白い雲が流れていく 深い蒼い空を 静かな夢のように ずっと前に僕は死んでしまっていて 魂が永遠の空間をゆっくりといくようだ Die Mainacht 五月の夜 Von ewiger Liebe 永遠の愛 Op.43-2 Hölty 銀色の月が林の茂みからみえるとき そのまどろむような光は 芝生一面にひろがり 小夜鳥が啼くとき 藪から藪へと寂しくさまよう Op.43-1 Wentzig 暗く なんと森も野も暗いことよ 夜はすでに訪れ すべてが静まりかえった どこにも光は見えず 煙もない そうだ 雲雀さえも今は黙っている 村から若者が出てきた 恋人を家に送って行く 柳の林のそばをとおりながら 思いの丈を語っていた 葉陰に身を隠し つがいの鳩が愛を語り その陶酔を僕に聞かせる しかし僕はふり返り暗い方を探し 一人で涙を流す 恥辱に耐えて 嘆いているなら 僕のことで苦しんでいるのなら 僕らの愛を早く終わらせよう かつて結ばれるときも早かったように 雨や風によって別れることにしよう かつて結ばれるときも早かったように 朝焼けの光のように 微笑んでいる面影が 僕の心に浮かんでくる この世で君に会えるだろうか? すると孤独の熱い涙が 頬を伝わって落ちてくる Der Tod, das ist die kühre Nacht 死は冷たい夜 Op.96-1 僕は多くの忘れられた墓地にいた 墓石や十字架は荒れはて 花は古び 墓碑銘は読むこともできない 乙女は口を開いた 乙女は語った 私たちの愛は 別れたりしたりはしないは 鋼や鉄よりも固いけれど 私たちの愛はもっと堅いのよ Heine 死は冷たい夜 人生はむしあつい昼 暮れてきて 睡くなる 昼は僕を疲れさせた 鐡も鋼も鍛え直せるけれど 誰が私たちの愛を変えることができましょう 鉄も鋼も溶かされるけれど 私たちの愛は永久に続くのよ! Ständchen セレナーデ Op.106-1 Kugler Auf dem Kirchhofe 墓地にて Op.105-4 月が山の上にのぼり 恋人たちにかくもふさわしい 庭には泉の音がする その他は静かに静まりかえっている 壁の陰のそばに 三人の学生が立っている 笛やバイオリンやチターを持って 歌ったり奏でたりしている v. Liliencron その日は激しく雨が降り 嵐もようで 調べは静かに彼女のもとに 僕の寝床の上に樹が そこで若い小夜鳥が啼いている 恋の歌ばかり歌うので 僕は夢の中でも聴いていた 〈 夢の中に忍びこんでいく 金髪の恋人に乙女は 私を忘れないでね とささやく 許しておくれ ブラームス 「ドイツ民謡集」より 〈 Sagt mir, o schnsöte Schaf'rin mein ねぇ 美しい羊飼いのお嬢さん Erlaube mir, fein’s Mädchen 〉 ねぇ素敵な眼差しの美しい羊飼いのお嬢さん! 誠実な羊飼いの僕が あなたの家に入ってはいけませんか? 僕はもうずっと前から あなたの戸口の前に立ってるんです 戸を開けて僕を中へ入れて下さいな この戸を この戸をこの戸を! 「戸をたたいて 入ってこようって言うのは誰? この小屋の戸は 開けませんからね 私は誰も入れもしませんからね どんなに美しい男であったとしても・・ 私の心を苦しめないで 無駄よ 無駄よ 無駄よ」 闇夜の森の中で僕は道に迷ったのです どうか僕を可愛そうと思い 早く戸を開けて下さい 誠実な羊飼にふさわしいように 僕はいつも振る舞ってきました いつも いつも いつも 「では私はあわれみの心から あなたの願いをききましょう 戸はすでにあいています どうぞ私の小屋に来て下さい」 ああ、あなたの美しい姿・・ しとやかで やさしく 美しい 美しい 美しい 美しい・・」 「ああ なんと私は馬鹿だったことか おお 美しい羊飼さん! もっと早く開ければよかった ごめんなさいね。 お入りなさい 私の美しい羊飼さん 私はいつまでもあなたのもの そう あなたの」 「おお 立派な羊飼いさん 私のそばに 家を建てて下さい もう私はあなたのもとから離れません 私の心は、あなたのもの 愛に終わりが来ぬかぎり!」 美しいお嬢さん 〉 許しておくれ 美しいお嬢さん 庭に入るのを許 して下さい ばらが美しく咲いたのを見たいのです ばらを手折るのを許して下さい この今の瞬間のばらの美しさ若さが 僕を喜ばせるのです おお お嬢さん 僕が庭の花を見てはいけないと 一体誰があなたに教えたのです? ひとりでいる さびしいお嬢さん あなたは僕の目を引きつけているのです 〈 Da unten im Tale あの下の谷では 〉 あの下の谷では 水が濁って流れている そして 口で言えないほど あなたが好き いつも愛だの 誠実だの言うけど すこしはちがうこともあるでしょう そして愛してると十回言っても 信じないでしょう 私は前へ進むだけ 愛して下さった事には感謝します どこかで幸福になること 祈ってます 〈Schwesterlein お姉さん 〉 お姉さん お姉さんってば いつ僕たちは家に帰るの? 「あしたの朝 鶏が鳴いたら家に帰りましょう ね。弟よ そうしたらお家に帰りましょう」 お姉さん お姉さんってば いつ僕たちは家に帰るの? 「あしたの夜が明けたらね それまでは私の楽しみが終わらないの 弟よ とっても楽しいの」 お姉さん お姉さんってば もう帰る時間だよ 「私は今彼と踊っているの もし帰ると 彼女と踊ってしまうの」 弟よ 今日だけは許してね」 お姉さん おねえさんってば 何故そんなに顔色が悪いの? 「それは朝陽のせい 私の頬に・・・ 弟よ 朝露がぬれているのよ」 お姉さん お姉さんってば どうしてそんなに力なくよろめくの? 「お家はどこ 私のベットをさがして 弟よ 土の下のベットは気持ちよいでしょうね」 〈Wach auf, mein’ herzensschöne おきなさい 愛しい人よ 〉 おきなさい 愛しき人よ 愛しい やさしい人よ 森の小鳥たちの美しい声がきこえる あの愛らしい歌声は 東の方から朝の光が さし込んで来たしるしなのだ 鶏が時を告げるのは もう朝のしるしだ 涼しい風が吹き星はまたたいている 小夜鳥が我々のために美しいメロディーを歌い 朝の到来を高らかに告げる おまえは僕の心をとらえ 変わりなき愛情に火をつけた 僕はおまえの姿をしばしばさがした おまえに会えはしまいかと そうしたらどんなに嬉しかろうと 真実を私は白状するが・・・ そしてあなたのような恋人に 出会うことも決して無いのだ 〈 Es steht ein' Lind 一本の菩提樹が 〉 一本の菩提樹が あの谷に立っている ああ そこに何のために? わたしが恋人を失った悲しみを 共に分かとうとしているのだ 小鳥が一羽 垣根にとまっている ああ そこで何をしているのか? わたしが恋人を失った嘆きを 共に分かとうとしているのだ 泉がひとつ 野原に湧き出ている ああ そこで何をしようとしているのか? わたしが恋人を失い、涙するのを 共に涙を流そうとしているのだ Vier ernste Gesänge 四つの厳粛な歌 Op.121 おまえが生まれた日と時は神聖なのだ おまえの赤い唇に幸あれと祝福される それこそは僕が選んだもの おまえより愛しいものはなく 僕の愛はなくならない おまえは僕のこの世で最高の安らぎ 〈 All’mein Gedanken すべての想いが 〉 すべての想いがあなたのもとに あなたは僕の選んだ唯一の慰み いつも僕のそばに居ておくれ 僕のことを思っておくれ すべての思いが望みのままなら 僕はあなたから離れはしないよ あなたは僕の選んだ唯一の慰み 僕のことを忘れないでおくれ 僕のからだも心もすべて あなたのものなのだ 僕はいつまでもあなたのものでありたい あなたは僕に喜びと力をあたえ くるしみを追いやってくれる いとしい いとしい彼女は やさしく 美しい乙女 このような娘は国中探しても なかなか見つからない あなたと一緒ならすべては幸福 彼女から去らねばならぬ時に 僕をとらえて離さぬ彼女 別れの来たときに きよらかな娘は泣いた あなたは僕のもの 僕はあなたのもの 彼女は悲しげに言った 私はあなたを忘れることは決して無い Ⅰ.人の成り行きは 人間の成り行きは獣の成り行きと同じで 獣が死ぬように人間も死に すべてはおなじ息吹である そして人間は獣よりもなに一つ勝るものはなく すべてのものは虚しいからである すべてのものは同じ所へ行きつき すべてのものは塵から生じてまた塵に帰る 人間の魂は上へ昇って行き 獣の霊は地下に降って行くと誰が知ろうか それゆえ人間はその動きによって楽しむに まさることはないと わたしたちは見た それが人間の分だからである その後ひとがどうなるかを見せるために 誰があの世へ連れて行くことができよう (旧約聖書 ソロモン伝道の書) Ⅱ.私はふりかえりみた 私はふりかえりすべての人々がこの太陽の下で 不当な扱いに悩んでいるのを見た 不当な扱いのため悩む そして慰める人もいない そのものたちの涙が流されるのを見た 人々に不当な扱いをする者たちの権力は大きく 人々は慰める人を得ることはできなかった それでなお生きている生者よりも すでにみまかった死者をわたしは讃えていた そしてまだ生まれてこない者 この世で起こっている悪を知らない者は この両者よりも幸いある (旧約聖書 ソロモン伝道の書) Ⅲ.おお 死よ おお 死よ おまえはなんと苦々しいものか 楽しい日々をすごし満足して 不自由のない生活をし すべてのことが順調に運んで その上 美味しいものを食べたいと思う人間が 死ぬことを考えるときは! おお 死よ おまえはなんと苦しいものか おお 死よ 貧者にはなんとおまえは 喜ばしいものか 力が弱く 年老いて あらゆるものに悩まされ もはや死にまさるものを持たず なにも望むもののない者には おお 死よ おまえはなんと喜ばしいものか (旧約聖書外典 イエス・シラク書) Ⅳ.たとえ私が人間の言葉や天使の言葉を たとえ私が人間の言葉や天使の言葉を話しても もし愛がなければ わたしは鳴る青銅の鐘や響く鈴と同じであろう またたとえ私に預言する力があり あらゆる奥義と知識に通じていても また山を動かすほどの 強い信仰心があったとしても もし愛がなければ 私は無に等しい またたとえ私が自分の全財産を貧者に施し その上自分の身を焼かれる犠牲を払っても 愛がなければ それは私にはなにも役に立たないであろう 私たちは 今は鏡に映して見るように おぼろげな言葉で見ている しかしやがて顔と顔を合わせてみるであろう 今 私はそれを部分的に知っているにすぎない やがて私がよく知られているように 私はそれをよく知るであろう さて 永遠に存続するのは 信仰と希望と愛の三つである しかし この中で最も偉大なるものは愛である (新約聖書 コリント人への第一の手紙) (訳:河野克典)
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