『 異邦人の救い 』

知多教会説教
2016/01/03
顕現主日
知多教会 牧師:花城 裕一朗
イザヤ書 60:1-6
エフェソの信徒への手紙 3:1-12
マタイによる福音書 2:1-12
『 異邦人の救い 』
私たちの父である神と主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなた
がたにあるように。 アーメーン。
本日の第一の日課において、預言者イザヤはこう言っています。
(イザヤ 60:1)「起きよ、光を放て。あなたを照らす光は昇り 主の栄光
はあなたの上に輝く。」(60:3)「国々はあなたを照らす光に向かい 王
たちは射し出でるその輝きに向かって歩む。」(60:6)「らくだの大群 ミ
ディアンとエファの若いらくだが あなたのもとに押し寄せる。シェバ
の人々は皆、黄金と乳香を携えて来る。こうして主の栄誉が宣べ伝えら
れる。」
このイザヤの預言の言葉は、本日与えられた福音書の場面において、
成就されたと言うことができるでしょう。本日の福音書の場面は、イエス
様がお生まれになってから、しばらく経った頃のお話です。イスラエ
ルからすると東の方から、占星術の学者たちがエルサレムにやって来
たと報告されています。彼らは言いました。「ユダヤ人の王としてお生
1
まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方
の星を見たので、拝みに来たのです。」と。彼らのこの言葉を聞いて、
当時のユダヤ人の王であったヘロデ王は、不安を抱き、また、エルサ
レムの人々も皆、同様であった、と書かれてあります。つまり、東方か
らやって来た占星術の学者たちは、生まれてきた赤ちゃんのことを喜
び、拝みに行こうとしていたのに対して、ヘロデ王やエルサレムの
人々は皆、喜んではいなかった。そして、拝みに行こうともしていなか
ったことが分かります。
イエス様が家畜小屋で生まれた時、その時にはすぐに、羊飼いたち
が拝みにやって来ました。彼らは、生まれてきた男の赤ちゃんが救い
主であることを、天使たちによって告げられていました。そして、羊飼
いたちはそれを信じ、拝みに行ったのです。羊飼いたちは、天使が告
げたことをベツレヘムの人々にも話したのですが、彼らは不思議に思
うだけで、信じることはなかったようでした。ですから、イエス様が生ま
れた直後、イエス様のことを救い主として信じたのは、イスラエルの中
でも、身分の低い人たち、羊飼いのような人たちだったということです。
それからしばらく経って、今度は、東方の占星術の学者たちが、イエ
ス様を拝みにやって来ました。そして彼らは、ヘロデ王や、エルサレ
2
ムの人々にイエス様のことを「ユダヤ人の王だ」と言って知らせたので
すが、彼らもまた、イエス様を拝もうとせず、信じませんでした。
これら二つの出来事は、イエス・キリストについての将来の出来事を
暗示しているものだと言えます。まず第一に、イスラエルの中で、イエ
ス様のことをメシアとして真っ先に信じる人々は、イスラエルの中でも
身分の低い人たち、虐げられている人たちである、ということ。そして、
第二番目に暗示していることは、即ち、イスラエルの人々がイエス様を
信じるよりも先に、異邦人の方が、イエス様をメシアとして信じるように
なる、ということです。
聖書を見てみれば、また、その後の世界の歴史を見てみれば、私が
今、申し上げたことが実際に現実に起こったということが分かるでしょう。
即ち、イエス様が十字架に付けられ、死んで葬られ、三日後に復活し、
そして、聖霊が降臨なさってから、イエス・キリストを宣べ伝えた12弟子
たちは、皆、身分の高い者は一人もいないで、漁師のペトロに代表さ
れるように、皆、身分の低い者たちでした。そして、その後、パウロによ
ってイスラエルの国を超えて、異邦人世界に宣べ伝えられたイエス・キ
リストは、ヨーロッパ諸国において、多くの人々に信じられるようになっ
て行きました。日本人にとっては、キリスト教は、欧米諸国の土着の宗
3
教であるかのように思われがちですけども、実は、キリスト教というの
は、イスラエルから伝わった宗教なのです。ヨーロッパには、キリスト
教が入る前に、別の土着の宗教がありました。しかし、パウロから宣べ
伝えられたキリスト教が、どんどんヨーロッパの人々に信じられ、受け
入れられることになって行ったのです。ヨーロッパの人々は、イスラエ
ルから見れば、異邦人です。異邦人たちが先に、イエス・キリストを信
じて受け入れたということです。
本日の第二の日課によれば、それこそが、神様の秘められた計画で
あったということが分かります。即ち、パウロは次のように言っています。
(エフェソ 3:5-6)「この計画は、キリスト以前の時代には人の子らに知
らされていませんでしたが、今や、“霊”によって、キリストの聖なる使
徒たちや預言者たちに啓示されました。すなわち、異邦人が福音によ
ってキリスト・イエスにおいて、約束されたものをわたしたちと一緒に受
け継ぐ者、同じ体に属する者、同じ約束にあずかる者になるということ
です。」
(3:8-9)「この恵みは、聖なる者たちすべての中で最もつまらない者
であるわたしに与えられました。わたしは、この恵みにより、キリストの
計り知れない富について、異邦人に福音を告げ知らせており、すべて
4
のものをお造りになった神の内に世の初めから隠されていた秘めら
れた計画が、どのように実現されるのかを、すべての人々に説き明か
しています。」
このようにパウロは、神様が明かしてくれた秘められた計画を熱心に
人々に説き明かしていたのですが、実は、そのことが最もよく説明され
ているのは、ローマ 11 章です。即ち、次のようにあります。
(ローマ 11:25-29)「兄弟たち、自分を賢い者とうぬぼれないように、
次のような秘められた計画をぜひ知ってもらいたい。すなわち、一部
のイスラエル人がかたくなになったのは、異邦人全体が救いに達する
までであり、こうして全イスラエルが救われるということです。次のよう
に書いてあるとおりです。『救う方がシオンから来て、ヤコブから不信
心を遠ざける。これこそ、わたしが、彼らの罪を取り除くときに、彼らと
結ぶ契約である。』福音について言えば、イスラエル人は、あなたが
たのために神に敵対していますが、神の選びについて言えば、先祖
たちのお陰で神に愛されています。神の賜物と招きとは取り消されな
いものなのです。」このようにあります。
つまり、キリスト教というのは、神の永遠の御計画に基づいて言うなら
ば、まだ途中段階だということです。2000 年前は、イスラエルの中から、
5
イエス・キリストを信じた人は最初、少なかった。そして、彼らはイエス・
キリストを世界中に宣べ伝えて、その結果、キリスト教は世界中に広ま
った。つまり、異邦人たちに、救いが宣べ伝えられたということです。
そして、神の永遠の御計画はそれで終わりではありません。今度は、
イスラエル人に救いが宣べ伝えらえることになるのです。なぜなら、イ
エス・キリストという御方は、もともと、本来的に、イスラエルの人々のメ
シアであり、イスラエルの人々の救い主であるからです。聖書の御言
葉は、このことをはっきりと、証しし、証言しています。パウロも言って
いる通り、神の賜物と招きとは決して取り消されないものだからです。
本日の第二の日課で、パウロは言っています。
(エフェソ 3:6)「異邦人が福音によってキリスト・イエスにおいて、約束
されたものをわたしたちと一緒に受け継ぐ者、同じ体に属する者、同じ
約束にあずかる者になる」と。
ここで「わたしたち」と言っているのは、イスラエルの人々のことです。
ここで「同じ体」と言っているのは、イスラエルの人々によって形成され
ているキリストの体のことです。ここで「同じ約束」と言っているのは、イ
スラエルの人々が与っている約束のことです。私たちは異邦人です。
異邦人の救いは、イスラエルの人々の救いを土台としてもたらされて
6
いるのです。今日、この驚くべき恵みを改めて覚えて、忘れないように
致しましょう。そして神が、永遠の御計画の中で、私たち異邦人を導き、
またこれから先、イスラエルの人々をも導いてくださること覚えて、ご一
緒にお祈りを致しましょう。
祈りましょう。
7