SWP® 三井化学株式会社 加工品事業本部 不織布事業部 合成パルプグループ 合成パルプ SWP®使用上の留意点 (湿式抄造プロセス) 合成パルプはポリオレフィンからなる多分岐状合成繊維です。フィブリル形状を有し、 また親水性処理がなされているために、水中分散性が良好となり、抄紙性に極めて優れた 材料です。合成パルプ100%、あるいは木材パルプなど他の抄紙原料と混合し、一般の 抄紙機を用いて抄造できます。 1.離 解 合成パルプは、通常水分を40∼70%含有した厚さ3∼6mm のシート状で供給され ます。ポリオレフィン繊維で作られるため、基本的には疎水性であり、パルパー又はビー ターにかけて水に分散させる際、木材パルプとは若干異なる離解(分散)条件をとる必要が あります。 ①離解温度 合成パルプはポリオレフィン系多分岐繊維であるため、一般的に、木材パルプより やや離解しにくく、通常は、水温40∼60℃で離解することをお勧めします。 ②離解濃度 木材パルプの場合は3∼5%で離解されますが、合成パルプの場合は1∼3%での離 解が適切です。また使用するSWP銘柄により適性濃度が異なります。 ③離解時間 使用する SWP、および水温、パルプ濃度、また離解装置の影響を受けますが、一 般的には、10∼30分程度で、分散性良好な銘柄(参考:E620等)では、20分 以下の離解時間で十分離解されます。メスシリンダーにて離解状態を確認する事をお 勧めします。また、離解時間が長すぎると、繊維同士の絡み合い、いわゆる「ヨレ」 が発生することがあります。 ④離解装置 パルパーの使用が最も適しております。 ビーター使用の際は、ローターを上げて離解を行って下さい。 -1- SWP® 三井化学(株) 2. 叩 解 合成パルプはすでに十分フィブリル化されておりますので、とくに叩解を行う必要はな く、また叩解をすると、繊維同士の絡み合い、いわゆる「ヨレ」が発生することがありま す。また、木材パルプとの混抄により叩解しなければならない場合には、極力、ソフトな 叩解を行ってください。 3.抄 紙 ①フローティングとフロキュレーション 水中に分散した合成パルプを機械的な力をかけず数10分放置すると、比重差によ り水面に浮いてしまいます(フローティング)。 また、水平方向の動きとして比較的長 繊維のものは凝集する傾向があります(フロキュレーション)。 いずれの場合も攪拌等、若干の機械的な力を加えれば容易にもとの分散状態に戻り ます。 さらに木材パルプと十分混合されれば、繊維同士がからみ合って水との比重差 の小さい繊維群となり、これらの問題はさらに減少します。 ヨレの原因となりますの で強撹拌は避け、分散終了後、抄紙までは極力低攪拌とする事をお勧めします。抄造 上、フローティングおよびフロキュレーションが解消できない場合は、ある種の分散 剤を添加するのが有効です。 分散剤は水の粘度を高くし繊維の動きを封じるタイプ、 あるいは正電荷をもったタイプの分散剤が効果的です。 ②フェルトの汚れ 合成パルプの場合、フィブリル化した短繊維がフェルトの目を詰める傾向がありま すので、木材パルプ使用時よりフェルトの洗浄を強化する必要があります。 ③乾 燥 合成パルプ混抄紙は熱によりその性質が種々変化しますので、ドライヤーの温度制 御が重要となります。 また、乾燥温度を上げ過ぎますとドライヤー表面に樹脂状物の 付着の恐れが生じますので(スティッキングの発生)、可能な限り表面温度を、使用 する SWP の融点より20℃以下、好ましくは 30℃以下での乾燥をお勧めします。 例えば、E620 の場合には、融点より 30℃以下である 95℃∼110℃での乾燥を お勧めいたします。付着時の清掃を考慮し、ヤンキードライヤーの使用が好まれます。 多筒ドライヤー使用時には、入口温度は出来るだけ低温に保ち、徐々に昇温して頂く 事をお勧めします。 また、ドライヤーでの付着が大きい場合には、内添の離型剤(例えば、日華化学製 の「サントール KL」)、もしくは外添離型剤(例えば、工業用サラダ油「デバイダ ーオイル」)を使用することをお勧めします。 -2- SWP® 三井化学(株) 4.巻取り 特別の配慮は不要ですが、高速機の場合には摩擦熱による溶融発生を防ぐため、テンシ ョン・バー等の摺動部分をなくして下さい。 やむを得ない場合はその部分のエアー冷却 を行って下さい。 また、同じ理由によりスリッティグは刃と紙との速度差が過大になら ないようにして下さい。 5.熱処理(後加工) 合成パルプを使用する場合、用途により抄造後に熱処理を行うことがあります。この場 合には、熱処理温度は、融点より 5∼10℃低い温度で行うことをお勧めします。(例え ば、E620の場合には、125∼130℃で熱処理) 熱処理温度を融点以上に上げますと、フィルム状になり透明化します。また透気度が高 くなり通気性がなくなります。 6.損紙の回収 商業生産においては、損紙をいかに回収し再利用するかがその製品コストに大きく影響 します。合成パルプを使用する場合、損紙回収の難易度は抄紙機での乾燥温度、及び後加 工での熱処理温度によって異なります。一般的に、使用するSWPの融点に近い温度処理 では、損紙回収は難しくなります。 記載内容は現時点で入手できた資料、情報、データ等に基づいて作成しておりますが、記載のデータや評価に関しては、い かなる保証をするものではありません。 また、注意事項は通常の取扱いを対象としたものですので、特別な取扱いをする 場合には、新たに用途・用法に適した安全対策を実施の上、お取扱い願います。 三井化学株式会社 加工品事業本部 不織布事業部 合成パルプグループ 〒105-7117 東京都港区東新橋 1-5-2 汐留シティセンター TEL 03-6253-3651 FAX 03-6253-4226 -3-
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