パ ー トタイム社会 オ ランダ 賃金格差 と既婚男女 の就業選択 子 社会政策 における福祉 と就労 ( 社会政策学会誌 第 1 6 号) 抜 刷 法律文化社 2 0 0 6 年 9 月 3 0 日発行 字│■ ヤ滑撃 分科会 7=非 正規労働の国際比較一一 日本 ・オランダ ・アメリカ イ章十 1 ヽ タ イ ム 社 会 オ ラ ン ダ 既婚男女の就業選択 1露 1草 韓薄│と ■i権文英子 Kettoh Bko 1 は じめ に パ ー トタイム経済」 と オランダは,「世界初」あ るい は 「 世界 で唯一」 の 「 8;Visser 2000]。 オラ ングにおけるパー トタ 呼ばれ ることがある [Freehan l∞ イム労働者 の割合は,現 在,先 進国中最 も高 く, しか も増加傾向 にある。パ ー トタイム労働者 の割合が高まるにつれて, この国では,パ ー トタイム労働者 と フルタイム労働者 との間の均等待遇 に関す る法的整備が他国 に先駆 けて進めら れてきた。その延長線上で2000年には,労 働者 は,労 働時間を延長 ・短縮す る 権利 をもつ までにいたっている。すなわち,い までは,オ ラングの労働者は, 理由のいかんによらず,時 間当た り賃金を維持 したままで,パ ー トタイムか ら フルタイム,あ るいはフルタイムか らパ ー トタイムヘ と働 き方を変えることが 可能 になってい る。 本稿では,こ のオラングをと りあげ, この国 に住む人 々がパー トタイム労働 をどのように活用 しているのかを検討す る。特 に,オ ラ ングのパ ー トタイム労 働者が,制 度上だけで な く実際 にフルタイム労働者 と同程度 の賃金を得 ている のか,ま た,働 き盛 りの男女 はどのよ うな場合 にパ ー トタイム とい う働 き方を 選択 しているのかに焦点を当てる。なお,本 稿 では, オランダを,「パー トタ イム経済」ではな く,「パー トタイム社会」 と呼 んでいる。なぜならば,パ ー トタイム労働が これほ どまでに普及 した結果,オ ラ ンダでは経済だけではな く, 人 々の生活 の端 々にいたるさまざまな側面 において一― た とえば 日本社会のよ うな フルタイムの常用雇用 のみを標準的働 き方 とし,パ ー トタイム労働を周辺 I。 4 パ ー トタイ ム社会 オ ラ ンダ 的 ・補助 的働 き方 とす る社会 とは異 なる一一 大 きな特徴 がみ られ るか らで あ る。 本稿 の概 要 は,つ ぎの とお りで あ る。第 2節 で は,オ ラ ンダにお けるパ ー ト タイム労働 者 につ いて,そ の割合 と推移,フ ル タイ ム労働者 との賃金格差 ,そ ″Sttregr立 ん 夕切θ して就 業 分 野 な どを概 観 す る。 第 3節 で は,OSA(Ottα あ ″″ エ Aル タ ″ 泳″αれ″ ο ″ ル″ο の の労働 供給 パ ネ ルの個票 デ タを用 い て,既 婚男女 の就 ー 業行動 を分析す る。 この分析 を通 じて,マ イク ロな生活 レベ ルにおいて,パ トタイ ム労働 が どの よ うに 関わ って い るのか を検討 す る。 第 4節 で は,「パ ー トタイ ム社会 オ ラ ィダ」 の実態 を簡潔 にま とめ る。 2 オ ラ ン ダ に お け る パ ー トタ イ ム 労働 者 の 割 合 ,賃 金 ,就 業 分 野 合 (1)パ ー トタイム労働 者 の害」 は じめ に, オ ラ ンダにお けるパ ー トタイ ム労働 者 の書J合 (以下!パ ー ト比率 と 呼ぶ)を 他 の先進諸 国 にお け る この割合 との比較 によ り確 認 してお く。図表 1 は,G7諸 国,オ ラ ンダ,ス ウェー デ ン,デ ンマ ー クにお けるパ ー ト比率 の推 基準 :男女計パー ト比率降順)。 移 を示 してい る (2004年 オラ ンダの2004年にお けるパ ー ト比率 は,男 女計 で35%で あ り,女 性 60%, 男性 15%と ,い ず れ も図表 1に 掲載 され てい な い他 の OECD諸 国 を含 めて も 最高水準 であ った。 もっ と も最近 30年間 のパ ー ト比率 を膨とめ る と,当 初か らオ ラ ンダのパ ー ト比率が ,先 進 国中,突 出 して高 か ったわ けで はない。 1973年に は, オ ラ ンダの パ ー ト比 率 は図表 1の なかで低位 に あ った し,1983年 で も, こ の比 率 はオ ラ ンダよ りもス ウェー デ ンや デ ンマ ー クの方が高 か った。 ところが , ス ウェー デ ンや デ ンマ ー クで は,当 時 パ ー トタイ ムで働 く者が多か った既婚女 性が,徐 々に フル タイ ムで働 くよ うにな り,そ れ につ れ て最近 は,パ ニ ト比率 が 減 少 して い る [権丈他 2003;大 沢 ・ハ ウスマ ン 2003参照]。 これ に対 して, 1970年には既婚女性 の就業率 が きわ めて低 か った オラ ンダで は,彼 ら既婚女性 の就 業率 が高 ま る につ れ て,パ ー ト比 率 も上昇 した。 さ らに最近 で は男性 の パ ー ト比率 も高 ま るよ うにな った。その結果 ,今 日オ ラ ンダは,パ ー ト比率が 先進諸 国 の なか で も際立 って高 い社会 とな ったので あ る (オランダにおけるパー Ⅱ テ ーマ別分科会 図表 1 先 進諸 国にお けるパ ー トタイム労働 者 の割合の推移 (1973-2004年 )(%) 女 男 1973 28.2 3 5 0 15,1 60 2 2 5 5 14 2 41.7 2 4 . 1 10 0 40.4 2 0 1 6 3 37 0 8 7 21.2 7 9 10 5 19 2 イギ リス 16 0 19 1 20,1 ドイツ 10.1 カナ ダ デ ンマ ー ク 10 6 15.4 21.2 23 7 6 . 4 18 0 4 6 25 4 性 2004 日本 イタ リア スウェー デ ン 女 1990 オラ ン ダ 12 6 男性 計 13 4 17 0 1 8 5 10 9 19.2 1 7 . 5 11 6 27.2 24.3 8 . 9 1 4 . 9 5 9 28.8 14.5 14.4 8 5 20.8 フラ ンス 7 2 9 7 1 2 2 [ 3 4 4 8 23 6 アメ リカ 14 0 14 4 14 1 [ 3 2 8 1 18.8 EU 15カ 国平均 13.3 17.4 6 6 3 1 2 OECD平 11 2 15 2 7.5 25 4 均 出典 : o E C D , E 竹 ″り物御ケ0 ″力θ名 1 9 8 5 ( 1 9 7 3 8 3 年分) , 2 0 0 5 ( 1 9 9 0 2 0 0 4 年分) よ り引用6 注 : パ ー トタイム労働者の定義は次のとお りである。 日本については, 全 期間にわたって週労 働時間3 5 時間未満の者。他の国々については, 1 9 9 0 2 0 0 4 年 は, O E C D デ ー タの統一基準 となった週労働時間3 0 時間未満の者。1 9 7 3 8 3 年は, O E C D が 統一 した基準 を用いていな いので, 出 典を参照のこと。 トタイ ム労働 の 増 加 とそ の背 景 につ い て は , V i s s e r , 2 0 0 0 ; 権 丈 他 , 2 0 0 3 参 照 ) 。 (2)パ ー トタイム労働者 とフルタイム労働者の均等待遇 と両者の賃金格差 パー トタイム労働者 の書J合が高ま りゆ くなかで,オ ランダでは,パ ー トタイ ム労働者 とウルタイム労働者 の均等待遇 を保障す る法的整備が進 んで きた。 1993年には,す べてのパー トタイム労働者 に最低賃金法が,適 用されるように ならた。1996年には,パ ー トタイム労働者 とフルタイム労働者 の均等待遇が, 労働法 に規定された。 この規定は,賃 金,手 当,福 呑U厚生,職 場訓練,企 業年 金な ど,労 働条件 のすべ てにわたって,パ ー トタイム労働者 もフルタイム労働 者 と同等 の権利が保障される ことを意味 している。そ して,2000年 には,労 働 時間調整法 (通称パー トタイム労働法)が 施行され,労 働者は,労 働時間をみず か ら短縮 した り延長 した りす る権利 を得 るようになったつ。すなわち, この労 働時間調整法 によって,オ ランダの労働者は理由のいかんによらず,時 間当た Io6 パー トタイム社会 オランダ リ賃金 を維持 したままで,パ ー トタイムか らフルタイムあるいはフルタイムか らパ ー トタイムヘ と働 き方を変 えることが可能 になっている。 これは,1997年 一 の EUパ ー トタイ ム労働指令 の 「 使用者 はで きるだけ,同 企業内で可能な フルタイム労働 か らパー トタイム労働 へ の転換 の希望,パ ー トタイム労働 か ら フルタイム労働 へ の転換 の希望 を考慮すべ きである」 とす る規定よ りも,さ ら に一歩進 んだ権利 を労働者に保障 しているといえる。 このよ うに現在 までにオランダでは,労 働時間の違 いによる時間当た り賃金 格差 は,「制度 上 (法律上)」な くなっている。 とはいえ,制 度 (法律)と 実態 には乖離がみ られる こともあるだろう。そこで,実 際 に,パ ー トタイム労働者 が フルタイム労働者 と同程度 の賃金を得 ているのか どうかをみてみよう。 図表 2は ,最 近 のパ ー トタイム労働者 の平均 でみた時間当た り賃金 (=賃金 率)を ,フ ルタイム労働者 のそれを100として表 した ものである。図表 2に よる と,オ ランダのパ ー トタイム労働者 の賃金率 は,フ ルタイム労働者 の賃金率 に 対 して,男 性でほぼ 9割 で あ り,女 性で 同程度で あった。特に女性 の賃金率 は, 1990年代 には,む しろパー トタイム労働者 の方が高 い年 もあった。 ー 図表 3と 図表 4は ,2003年 を対象 として, フルタイム労働者 とパ トタイム ・ 労働者 について,年 齢階層別 の賃金率 を示 してい る。 これ らの図表は,男 性 女性,そ れぞれ の20-24歳のフルタイム労働者 の賃金率を基準4tL100と ,て ,各 ー 年齢階層 におけるフルタイム労働者やパ トタイム労働者 の賃金率 を,基 準値 とくらべ た相対比で表 している。なお,2024歳 の女性 フルタイム労働者 の賃 金率は,同 じ年齢階層 の男性 フルタイム労働者 の賃金率 の96.7%で あった。 図表 3と 図表 4を みると,フ ルタイム労働者 もパ ー トタイム労働者 も,年 齢 に応 じて,賃 金率が上昇 している。ただ し,パ ー トタイム労働者 の賃金率 の伸 びは,フ ルタイム労働者 の賃金率 の伸びに くらべ て次第 に小さ くな り,両 者 の 格差 は年齢が高まるとともに開いて くる。また,女 性 の賃金率 の伸 びは,男 性 に くらべ てよ り早 い時期 に頭打 ちになっている。 しか しなが ら,オ ラ ンダでは, フルタイム労働者 だけでな くパー トタイム労働者 も,年 齢がかな り高 くなるま で賃金率が上昇しつづけてぃることは注目に値すると思われるもというのも, 一 日本 のパ ー トタイ ム労働 者 の賃金率 は年齢 が高 まって もほぼ 定 で , フ ル タイ I07 Ⅱ テ ーマ別分科会 図表 2 オ ラ ンダにお けるパ ー トタイム労働 者の ム の正 規 労 働 者 と くらべ た 時間当 た り賃金 の推移 (1995-2003年) パ ー トタイ ム労働 者 の相対賃 フルタイム労働者の賃金 =100〕 〔 金 は,年 齢 が 高 い ほ ど非常 に 小 さ くな って しま う。 この事 実 と くらべ る と,オ ラ ンダに お ける中高年 の フル タイ ム と パ ー トタイ ムの賃金格差 は, 実 に小 さ く, こ の ことは きわ 1995 1997 1999 2001 2003(41) 出典 i C B S , 最″あ ビD 倣 力αぇ 2 0 1 1 6 より作成 。 図表 3 オ ランダにおける男性の年齢 ・時間 当 たり賃金プロファイル (2003年) フルタイム労働者2024歳の賃金=100〕 〔 めて ォ ラ ンダ的特徴 で あ る と 思われ るか らで あ る。 なお, 図表 2の 年齢 計 デ ー タは,フ ル タイム とパ ー トタイ ムの賃 金格差 が ,女 性 に くらべ て男 フル タイム労働 者 性 の方 が 大 きい ことを示 して い る。 これ に対 して,図 表 3 パ ー トタイム労働 と図表 4の 年齢 階層 を コ ン ト ロー ル した デ ー タは,両 者 の 1519202425293034353940-44454950545559(歳 ) 出典 : C B S , 前 a 筋″でD α, α あ α″名2 0 0 6 よ り十 r 成。 賃金格差が ,男 女 同程度か む しろ男性 のほ うが小 さい こと を示 してい る。 こ うした現象 図表 4 オ ラ ン ダにお け る女性 の 年齢 ・時 間 当たり賃金プロファイル (2003年) フルタイム労働者2024歳の賃金=100〕 〔 が観 察 され る主 な理 由は,男 性 パ ー トタイ ム労働 者が,フ ル タイ ム労働 者 と くらべ て賃 金 の低 い若年層 に偏 ってい る ためで あ る ことに留意 してお パ ー トタイム労働者 いて もらい た い。 もっとも,パ ー トタイ ム労 151920242529303435394044454950545559(歳 α 出典 : C B S , S ,冴 あでD 協 力α″4 2 0 0 6 よ り作成。 ェ o8 ) 働者 とフル タイ ム労働 者 で は, 就業者 の属性 や仕事 レベ ルが パー トタイム社会オランダ 図表 5 オ ランダの パ ー トタイム労働者 とフル タイム労働者 の 賃金格差 に関す る最近 の推計結果 デー タ 論 文 Dekker et SEP, 1985-94 al,2000 主 な 結 果 手 法 ノやネ ル デー タ ・変量効果 モデル ・フルタイム (週労働時間33時間以上),長 時間パー ト (12 ー 時間を超え33時間未満),短 時間パ ト (12時間以下)に ついてのダミー変数を入れた男女別の推計では,女 性では パー トタイムとフルタイムとの間に統計的に右意な賃金格 ー 差はなかったのに対して,男 性では長時間パ トが,フ ル タイムよりも統計的に有意に賃金が高かった。 他 3 文 0 0 権 2 ・年齢,教 育水準,家 族形態,職 業,産 業をヨントロール。 ・常用 フルタイム (週労働時間35時間以上,期 間の定めのな い契約をもつ者)に くらべて常用パー トタイム (35時間未 満,期 間の定めのない契約をもつ者)は ,男 女ともに,イ OSA(オランダ), OLS BHPS(イギリス), G S O E P O束西 日 ドイツ) , H U S ( スウェーデン) , すべて1 9 9 8 ギリス,旧 西 ドイツでは,賃 金が低かったのに対 して,オ ランダ,ス ウエーデン,旧 東 ドイツでは統計的に有意な賃 金格差はみられなかった。 ・有期雇用契約をもつ者では,男 女ともに,常 用フルタイム にくらべて,す べての国で賃金が低 く,な かでも旧東西 ド イッで 4割 以上も賃金が低かった。 ー 就業選択 (フ ・男女 プール ・デ タのみ。標準的な属性をもつフルタイム ス 30時間以上),長 ルタイム 時間パー ト (2229時間), ギリ 労働時間 (週 ,長 ( イ , オ ー ー 1 9 9 8 時間パ ト, ランダ) 、 短時間パ ト (1221時間)の 比較。年齢,教 育水準,勤 ー 短 時 間 パー 続,失 業経験,企 業規模,産 業をコントロ ル。 ト) に 関す る ・イギリスで はパー トタイムとフルタイムの賃金格差は 3割 セ レ ク ショ に達するが,長 時間パー トと短時間パー トの差はほとんど ン ・バ イアス ない。他方,オ ラングではフルタイムにくらべて,長 時間 パー トは3%,短 時間パー トは105%賃 金が低かった。 を 整 後, ‐ ECHP Hu&Tも dens,2003 修 s s s s u a R H , k n 鵡i OLSで 推計。 AVO,1997-98 パ ネル ・デー 5 0 0 2 & 1 9 9 9 2 1 X 1 0 タ ・企業と労 働者の両方の 個別効果を考 慮。 ・企業側と労働者の両方の情報をマ ッチしたデータ。個人属 性 (年齢,勤 続,教 育水準,職 業,仕 事 レベル,外 国生), 企業属性をコントロール。 ・男女 ともにパー トタイムの賃金は,フ ルタイム (週労働時 間36時間以上)に くらべて低い。フルタイムとの賃金格差 は,女 性では長時間パー ト (20時間以上36時間未満),短 時間パー ト (20時間未満)と もに 2%程 度であるのに対 し て,男 性では長時間パー ト6%,短 時間パー ト9%で あっ た。 ・類似の推計方式を採用 しているアメリカ,イ ギリスの推計 結果にくらべて, オランダの賃金格差は半分以下であった 。新規採用者では,パ ー トタイムとフルタイムの賃金格差は みられなかった。 Ⅱ テ ーマ別分科会 異なってい るのが普通である。そ こで,こ うした属性 を コン トロー ル した場合, パー トタイム とフルタイム とい う労働時間の違いが賃金 にいか なる格差をもた らすのか とい う疑問は,当 然 のよ うに起 こる。 こ うした問題意識 にた ち,個 票 デー タを用 いた研究がい くつかなされている。図表 5に ,最 近 の推計結果を要 約 してお く。 図表 5で は,デ ー タ ・ソー スゃ対 象 とす る年代 のほか,推 計方法,コ ン ト ロールする変数,パ ー トタイム とフルタイムの定義な どが異なるため,推 計結 果 にばらつ きがみ られる。 しか しここか ら少な くともつ ぎのことは言えるであ ろう。第 1に ,オ ランダのパー トタイム労働者 とフルタイム労働者 の賃金格差 は,ア メ リカタ イギ リス,(1日西)ド イッ, 日本 な どと くらべ るとはるか に小 さい。第 2に ,パ ー トタイム労働者を労働時間の長さで長時間パー トと短時間 パー トに分類すると,長 時間パー トの賃金が短時間パ ー トの賃金 よ りも高い。 (3)パ ー トタイム労働者の就業分野 パ ー トタイム労働者 とフルタイム労働者 の賃金格差が きわめて小さい背景 に 図表 6 オ ランダと E U に おける産業 ・職業別 パー トタイム 労働者の書」 合 (2902年 ) (%) 産 業 別 農林漁業 製造業 ・鉱業など オラ ン ダ EU 15 39 0 16 9 24.6 7 4 建設業 1 3 1 卸売業 ・小売業 本テル ・レス トラン 運輸 ・通信 47 4 23.1 64 9 28.0 32 5 1o 9 金融仲介業 不動産 ・事業サー ビス 公務 その他のサー ビス業 5 6 28 9 13 6 36 6 19 7 27 8 13.5 67 1 30.3 出 典 :European Commission,E跡 職 業 別 オラ ンダ 管理的職業 専門的職業 技術者 ・準専門的職業 20 5 6.8 41.8 14 9 EU 15 45 7 17 2 事務的職業 サー ビス ・販売職 56 8 24.4 70.5 33 9 農林漁業従事者 生産工程作業職 48.2 16 7 24.1 6 3 技能工など 初級 レベ ルの職業 1 3 7 合 計 ゥ ια″ & 減 ″ S ′α, おr 2 岱i 娩 70 0 4 4 34 2 182 あ ″″ F O 万竹 S t t r ィン R 谷 ガ 本 2 a 9 2 2003よ り作成。 注 Ⅲ産業分類は,NACEの 産業分類による。「その他のサー ビス業Jは ,教 育,保 健医療,福 祉 関連,そ の他の社会及び個人的サー ビスを含む。「 製造業 ・鉱業などJに は,「電気 ・ガス ・ 水供給」を含む。無回答 を除 く。職業分類 は,ISC0 88の 職業分類 による。無回答及び軍 関係を除 く。パー トタイム労働者 の定義は,回 答者 の 自己評価にょる。 パー トタイム社会オランダ は, オ ラ ンダで は,パ ー トタ 図表 フ オ ランダにお ける産業別 パ ー ト比率 と 女性比率 との相関 (2002年) イ ム労働 とい う働 き方が,未 熟練 の低賃金労働 だ けで はな く,さ まざまな業種 ・職種 に ●1 ●( 2 4 ) パ とを確 かめてみ よ う一― オラ し 6 ゼ ・ ングの人 び とは, ど の よ うな 分野 で パ ー トタイ ム として働 o いてい るのだ ろ うか。 20 ●8 ● 13 セ”・ ると考えられる。いまそのこ 装 1 7 ︲ ・ 廿 由 串瑚 広が ってい るとい う事情 もあ │ ●12 40 60 80 100 女性比率 ( % ) 図 表6は ,オランダとEU違骨 7陛療・ 楊録 街 祉 坪 管 福 富 督 鑑難。 答 筈敏 15カ 国平 均 の パ ー ト比 率 を , (全 就業者の147%が 従事 ;以下同様)2:事 業所向 め まと たも 鮮 二 産 業 別・ 職 別に 業 F課 ど 安 石 亀:響浸 既 す 堅 熟 許ど ぼる 晏 「 'テ ぞ 示 」 塗 :'し 曇 協 暑 ;キ 暑 穐 T] 織 │■ ミ ― ン と は ラ ダ 産業や職業 ,オ 塩皇は く 椛勢 尿脊藁 賓 見% 掩そ サビ ていること がわかる り 通し 。戦 す 共 でど 既平 暫 説 免 脱 看 亀薔 。 将 パート 比率の高い産業は , 「その他 のサ ー ビス業」,「 ホテル ・レス トラ ン」,「卸売業 ・小 売業」 で あ り, 製造業 ・鉱業 な ど」 で あ る。 他面,パ ニ ト比率 の低 い 産業 は,「建設業」 や 「 また,職 業 で は,「 サ ー ビス ・販売職」,「初級 レベ ルの職 業」,「事務 的職業」 な ど,熟 練度 が比較 的低 い仕事 に多 い 一 方夕高 い熟練度 が要請 され るで あろ う 「 管理 的職業」や 「 専 門的職業」 で は,パ ー ト比率 は低 い傾 向 にあ る。 しか し なが ら,オ ラ ンダにお けるパ ー ト比率 は,EU 15カ 国平均 よ りも圧倒 的 に高 い。 そ して,オ ラ ン ダで は,「管 理 的職業」 の20.5%,「 専 門的職 業」 の41.8%が パ ー トタイ ムで働 いて お り,短 時 間労働 の活用が広範 囲 に及 んでい る ことは特 筆 に値 しよ う。 なおパ ー ト比率 の高 い 産業や職業 には,女 性が多 く働 いてい る とい う共通点 Ⅱ テ ーマ別分科会 があるだろ うことも推察 される。そ こで,パ ー ト比率 と女性比率 (就業者に占 める女性の書」 合)と の関係 をみ るために,よ り詳細 な産業分類 ・職業分類が呑U 用可能であるオラ ンダ統計局 (CBS)の 2002年デー タを用 いて,両 者 の相関を とってみたり。その結果,両 変数 の間 には強い正の相関が観察 された。すなわ ち,相 関係数は,産 業別 で 0,940(p値 <0.001),職 業別で 0.948(p値 <0.001) で あった。図表 7は ,産 業別 のパ ー ト比率 と女性比率 との関係 を,散 布図 に描 いた もので ある。 この図表では,就 業者数が全体 の 2%以 上である15産業 につ いて,就 業者数が多い順 に番号 を付 し,そ の産業名を図表下 の注 に示 している。 3 オ ラ ン ダで は ,パ ー トタイ ム 労働 は 個 人 の生 活 レベ ルで どの よ う に 活 用 され て い るのか 前節 で観察 して きたように,「パ千 トタイム社会 オラ ンダ」 では,パ ー ト比 率が きわめて高 く,パ ー トタイム労働者 の就業分野は,さ まざまな産業 ・職業 に広が っている。また,パ ー トタイム労働者 とフルタイム労働者 の均等待遇が 保障されてお り,実 際 に両者 の賃金格差はきわめて小 さい。さらに,労 働者が 労働時間を選択する自由があるとい う制度的枠組みをも備えもってい る。 こう した状 況を受 け,オ ラ ングでは,パ ー トタイムで働 く理由として,「 フルタイ ムの仕事がなか ったか ら」 と答える,い わゆる 「 非 自発的パ ー ト」 の割合は, 男性3.4%す 女性 1.9%と EU諸 国内で も際立 って低 い こと も特徴 として あげ られよう (EU 15カ 国平均は男性19.0%,女 性128%[権 丈 2006])。 では,「パー ト タイム社会 オランダ」では,パ ー トタイム労働が,個 人の生活 レベ ルにおいて どのよ うに関わっているのだろ うか。 (1)パ ー トタイム就業の選択 一般 に ,パ ー トタイムで働 く者 には,仕 事 と家庭 の両立を図ろうとする既婚 女性や,労 働市場へ の参入 ・退出の時期 にある若年者や高年者が多 いことが知 られてい る。他方,働 き盛 りの既婚男性が,パ ー トタイム とい う働 き方を選択 パー トタイム社 することは,か な り珍 しいこととみ られてい る。 このことは 「 パー トタイム社会 オランダ 図表 8 就 業選択 に関する多項 ロジッ トモデルの推計結果 (20-54歳の既婚男女 ) (レファレンス :フルタイム就業〉 男 ー トタイム ミ 女 性 非 就業 ネ 0 350*ネ 高学歴 0 944 お米 0 307米 中学歴 0.933 0.408*ネ 0 922 年齢 1 036 0 912 1 073 年齢 自乗 12歳未満の子供 1 000 教育水準 性 パー トタイム 非 就業 *ネ 0 064率 *Ⅲ 0.390Ⅲ ( 低学歴) 2 入 以上 0 485ネ 1人 0 599 1 002 1 731 0 944 1 000 Ⅲ 21.656*Ⅲ *ネ 5.908ネ 0 932 1 003ネ ネネ 52 026ネ 7 518**ネ (なし) 6歳 未満 の子供 あり ネ 2 828*ネ 配偶者所得 (なし) 第 4階 層 2.568*** 2 340*水 1 788ネ 1 676* 0 919 1.488 2.484*** ネ 2 417*ネ 1 116 0 723 1 388 1.935 1.522 * 2 493ネ 2.021** 3.739ネ ** 1 017 0,673* 1 138 0 770 第 3階 層 第 2階 層 デー タな し 0 833 0 665 0 865 (第 1階 層) 宗教 居 住地域 無宗教 プロテスタン ト ( カトリック他) 3大 都市 0 759 1 129 3大 都市以外 の市 0 756 都市近郊 * 0 515ネ 0 625** 0 478*ネ (村) 観測値数 擬似相関係数 対数尤度 1125 1361 0.061 -5517 0 155 -11218 料*1%水 準で統計的に有意,料 5%水 準で統計的に有意,*10%水 準で統計的 に有意。 出典 : O S A 1 9 9 8 を用 いて筆者が推計。 注 : 推計結果は, レファレンス ・カテゴリ ( フルタイム就業) に 対する相対 リスク比により表示。 会 オ ラ ン ダ」 に お い て も,あ て は ま るの だ ろ うか。 こ こで は,分 析 対 象 を 2054歳 の既婚者 に限定 し,働 き盛 りの男女 が どの よ うな場合 にパ ー トタイ ム 労働 を選択 してい るのか を考 察 す る。 そ のた め に,オ ラ ン ダの OSAの 個 票 デ ー タを用 いて ,個 人が フル タイ ム就業;パ ー トタイ ム就業,非 就業 とい う 3 つ の選択肢 か ら 1つ を選ぶ とい う,多 項 ロジ ッ トモデル を推計 しため (推計方法 配 テ ーマ別分科会 や変数 の定義 な どの詳細 は,権 丈 [2006]参照)。 図表 8は ,推 計結果 を,フ ルタイム就業 に対す るパ ー トタイム就業 (あるい は非就業)の 相対 リス ク比で表 している。推計結果 の うち非常に興味深 い点は, オラ ンダでは,既 婚女性ばか りではな く既婚男性 の就業行動 も,子 供 の存在や 配偶者所得 によって影響を受けていることで ある。具体的には, 6歳 未満 の子 供がい る場合や配偶者所得が高い場合,男 性 もフルタイムではな くパ ー トタイ ムで働 く確率が統計的 に有意 に高 くなってい る。 (2)既 婚男女の就業選択に関するシミュレー ション 図表 8の 推計結果を用 いて,子 供 の有無や年齢,本 人学歴 ,そ して配偶者所 得 に応 じて,オ ラ ンダに住む人 びとが, 3つ の就業形態十一 フルタイム就業, パ ー トタイム就業,非 就業一― を選択する確率が どのよ うに変わるのかについ て,調 べ てみよ う。図表 9は ,男 女別 に行 ったシ ミュレー シ ョン結果を示 して い る。基準 としたケー スは,年 齢35歳,中 学歴,配 偶者所得第 3階 層り,12歳 未満 の子供がいない既婚男女であ り, これ に加えて女性 については,「無宗教」 で,「3大都市以外の市」に居住している場合めである。図表9の最上段は,基 準 ケTス における 3つ の就業形態 を とる予測確率 を,男 女別 に示 してい る。基 準 ケ ー スで は,男 性 で は フル タイム就業確率が最 も高 い一 方,女 性 で はパ ー ト 就業確率が最 も高 く,男 女 で就業 パ タエ ンに は大 きな相違がみ られ る。 パ ネル 1は ,基 準 ケ ー スか ら子供 の数や年齢 が 変化 した場合 に,個 人が各就 業形態 を とる予測確率 を示 してい る。男性 のパ ー トタイ ム就業確率 は, 6歳 未 満 の子供 を 1人 もつ 場合 に最 も高 く,次 いで 6歳 未満 の子供 を含 む 2人 以上 の 子供 を もつ 場合 に高 い。他方,子 供 が いて も子供が 6歳 以上 の場合 には,子 供 が 6歳 未満 の場合 のみ な らず ,(基 準ケースである)12歳 未満 の子供 が い ない場 合 に くらべ て も,男 性 の パ ー トタイ ム就業確 率 は低 く,フ ル タイ ム就業確率が 高 い。 これ は,オ ラ ンダで は,幼 少 の子供が い る場合 には,男 性 も保育 を行 う ため に労働 時 間を短縮す る ことが あ る一 方, この時期 を過 ぎる と,父 親 による 保育 へ の参加 よ りも所得 の必要度が増す こ とか ら,男 性 の パ ー トタイ ム就業 は ° 減少 して い るため と考 え られ る 。他方,女 性 で は,子 供 の数や年齢 を問わず I14 パー トタイム社会 オランダ 図表 9 既 婚男女が各就業形態をとる予測確率 男 (%) 性 女 性 就 業 就 業タ 仏ゲ 去非 なゲ よ非 ィ ア タ ィ ア 基準 ケ ー ス パ ネル 1:子 供 の数 と年齢別 子供 1人 (6歳 未満) ] 8 87 13 1 8 65 27 子供 1人 (6歳 未満含まず) 子供 2人 以上 (6歳 未満含む) 94 5 1 6 71 23 88 10 2 2 55 43 子供 2人 以上 (6歳 未満含まず) 94 4 2 1 61 37 パ ネル 2 : 本 人学歴別 高学歴 91 8 1 55 41 低学歴 90 8 3 22 49 86 11 3 61 13 94 5 1 59 12 94 5 1 53 8 パ ネル 3 : 配 偶者所得階層別 第 4階 層 第 2階層 第 1 階層 出典 : 図表 8 の 推計結果を用いて筆者が推計。 と : 基 準ケースは, 年 齢3 5 歳, 中 学歴, 配 偶者所得第3 階層, 1 2 歳 未満 の子供がい ない既婚男女 であ り, こ れに加えて, 女 性 については, 「無宗教J で , 「 3 大 都市以外 の市」 に居住 してい る場合を仮定 している。 12歳 未満 の子 供が い る場 合 には,(基 準ケースである)12歳 未満 の子供 が い な い 場合 に くらバ て,フ ル タイ ム就業 の確率 が大幅 に低 くな ってい る。 また ,子 供 の数が増 えるにつ れ て フル タイ ムで働 く確率が減少す る一 方,就 業 しない確率 が増加す る。 パ ネル 2と 3で は,基 準 ケ ー スか ら本人 の学歴 と配偶 者所得がそれぞれ変化 した場合 を示 してい る。 パ ネル 2に よる と,男 性 で は,低 学歴者 で フル タイ ム 就業がやや少 な く非就業が若干多 い とい う特徴がみ られ る。 しか し,パ ー トタ イ ム就業 に関 して は学歴 間で の相違 はみ られ ない 。他方,女 性 で は,学 歴が高 くなるほ ど, フ ル タイ ム就業が増加す る反面 ,非 就業が減少す る とい う明確 な 傾 向がみ られ る。 また,パ ー トタイ ム就業 の確率 は,中 学歴者 が最 も高 い。 パ ネ ル 3よ り,配 偶者所得が増加す る と,男 性 の フル タイ ム就業が減少 し, パ ー トタイ ム就業が増 える ことが観察 され る。 また,配 偶 者所得が最 も高 い 第 Ⅱ テ ーマ房U 分科会 4階 層 は,非 就業確率 もい くぶん高い。他方,女 性では,配 偶者所得が最 も低 い第 1階 層は他の階層 とくらべて, フルタイム就業の確率が高 く,パ ー トタイ ム就業 と非就業の確率が低い。 しか し,第 1階 層以外 については,配 偶者の所 得階層 と女性の就業確率 との間には明瞭な関係は観察されていない。 4 お わ りに 1980年代以降,オ ラ ングでは,パ ー トタイム労働者 の割合が大幅 に高ま り, パ ー トタイム社会」 となっている。 現在では,先 進諸国中最 もこの割合が高い 「 わが国のパ ー トタイム労働者を と りま く状況か ら推察 して,私 たち日本人は, パ ー トタイム社会を一― スキルの蓄積 もで きない低賃金の不安定就業層を多 く 抱 えるT― マ イナス ・イメージをともなう社会 と想像 しがちである。 しか しな パ ー トタイム社会オランダ」 の実態は,上 記 のイメー ジと が ら,本 稿 でみた 「 は随分 と異なる。 オラングでは,現 在 までに,パ ー トタイム労働者 とフルタイム労働者 との均 等待遇が法的 に保障され,労 働者 は,労 働時間を短縮 した り延長 した りす る権 利をもつ ようになっている。すなわち,オ ランダの労働者は,い までは,理 由 のいかんによ らず,時 間当た り賃金を維持 したままで,パ ー トタイムか らフル タイム,あ るいはフルタイムか らパ ー トタイムヘ と働 き方を変えることが制度 的 に保障されている。 もっとも法律や制度が充実 していて も,実 態がそれを反映 していないことも あ り得 る。果た して,オ ラ ンダの実情は どうなのであろうか。本稿 の分析 よ り つ ぎのことが観察された。まず,オ ランダにお けるパー トタイム労働者 とフル タイム労働者 の賃金格差は, 日本や他の主要国などとくらべ るとはるかに小 さ い。また,パ ー トタイム労働者 の就業分野は,未 熟練 の仕事 のみ ならず,い ま では,さ まざまな産業や職業 に広が っている。 こ うした状況を受け,オ ランダ の 「 非 自発的パー ト」一― フルタイムの仕事がみつか らないためにやむを得ず パー トタイムで働 いてい る者―一 の割合 は,EU諸 国中最 も小 さい。さらに, 計量分析 の結果 によると,オ ラ ンダでは,既 婚女性や若年者 ・高齢者 だけでな I16 パー トタイム社会オランダ く,働 き盛 りの 年 齢 の 既 婚 男 性 も,配 偶 者 所 得 や 幼 少 の 子 供 の 有 無 に応 じて パ ー トタイ ムで 働 く場 合 もあ る こ とが 確 認 され る。 この よ う に ,「 パ ー トタイ ム社 会 オ ラ ン ダ」 で は ,ラ イ フス テ ー ジ に あわ せ て 個 人 ,夫 婦 が 労働 時 間 をみ ず か ら調 整 す る こ とに よ り,生 活 と仕 事 の バ ラ ンス を とる こ とが 可 能 に な って お り,実 際 にそ う した ライ フス タイルが 選 択 され てい る こ とが 観 察 され る。 オ ラ ン ダは ,パ ー トタイ ムで 働 くこ とを選択 して も,市 場 か ら目立 った ペ ナ パ ー トタイ ム社 会 」 の構 築 に他 国 に先 ん じて 取 り組 んで き ル テ ィを受 け な い 「 て お り,そ の 取 り組 み は着 実 に成 果 をあ げ てい る とい う こ とが で きよ う。 1)2000年 7月 にオランダで施行された 「 労働時間の調整 に関する法律 (Wet Aanpas‐ パー トタイム労働法 DeeltlJdwet)」 sing Arbeidsduur称i通 は,従 業員10人以上の企業 において,労 働者がその企業に 1年以上雇用され,か つ,過 去 2年 間に労働時間の変更 を求めたことがない場合,労 働者に労働時間を延長 ・短縮する権利を与えている。そし て,週 労働時間を変更する4ヶ 月前に,希 望する週労働時間を開始する日,週 労働時間 数,何 曜日に何時間働 くかの要望書を提出しさえすれば,使 用者は原則 として,そ の要 求に同意 しなければならず,同 意できない場合には,そ の理由を示す義務を集 う。さら に,時 間当た り賃金は,週 労働時間を変更する以前 と同水準 に維持される [権丈他 2003]。 2)本 分析では,43産 業分類 の うち就業者が 3万 人未満の産業を除 く36分類;31職 業分類 のうち不明を除 く30分類を用 いて推計 した。就業者は,週 労働時間が12時間以上 の者を 指 し,パ ー トタイム労働者は,週 労働時間が12時間以上35時間未満 の者である。 3)週 の契約労働時間が,35時 間以上を フルタイム就業, 1時 間以上35時間未満をパー ト タイム就業 と分類 している。全 日制の学校 に通 う学生,自 営業主や家族従事者は含 んで いない。 このデー タでは,有 期雇用契約 をもつ者は,男 性就業者 の16%,女 性就業者 の6.5%で ある。 4)配 偶者所得は, lヶ 月の税引 き後労働所得 と社会保障給付 を合算 して算出。サ ンプル に含 まれる男女の配偶者所得 を,男 女別 に所得水準 の最 も低 い 「 第 1階 層」か ら最 も高 い 「 第 4階 層」までの 4つ に分類 した。なお,「第 1階 層」 には,無 所得 の者 も含む。 配偶者所得デー タな し」 とい うダ ミー変数は,配 偶者所得デー タに 推計式 に含 まれる 「 欠損値がある場合を指す。 5)就 業選択 に関す る選好の違いによって,推 計結果 にバ イアスが生 じるのを防 ぐため, 女性 の推計では,宗 教および居住地域 に関す るダミー変数を入れている。 6)オ ランダにおけるパー トタイム就業は,こ の国の保育政策 の特徴 とも関連があると考 えられる。両者の関連 については,た とえば,KenJoh,2005参 照。 Ⅱ テ ーマ別分科会 付記】 【 10月8日 ,北 海道大学)で の依頼報告 本稿 は,社 会政策学会第111会大会 (2005年 に筆削補訂 した もので ある。 参考文献】 【 大沢真知子,ス ーザ ン ・ハ ウスマ ン編 『 働 き方 の未来一 非典型労働の日米欧比較―』 日本労働研究機構,2003年。 権丈英子,シ ヴ ・グス タフソン,セ シール ・ウェ ッツェルス 「オランダ,ス ウェーデ ン,イ ギリス, ドイツにおける典型労働 と非典型労働一 就業選択 と賃金格差一 」 大沢真知子,ス ーザ ン ,ハ ウスマ ン編,前 掲書,226262頁 。 EU諸 国におけるパー トタイム労働」和気洋子 ・伊藤規子編 『 EUの 公共 権丈英子 「 政策』慶應義塾大学出版会,2006年,107-130頁。 C B S ( C e n t r a a l B u r e a u v O o r d e S t a t i s t i e k ) , Saと r r″ ど夕 D αヶ αぅα″名 h t t p : / / w w w c b s ■1 , 2006 Dekker,R, Muffels,R and Stancanelll, E “ WOrk byヽ D ア omen and Men in thё A LOngitudinal Analysis Of Par■ time Netherlands,"in GustaFssOn,S and Mculders, (eds), C夕 ″冴2打α″冴 とん2 二濯あο2r″Ma″ た2ち London: WIacmlllan, 2000, pp 260-287 European Commission, E″ 打 α″ SθC″ 夕5″″」 ctt R否 ″″s α′S,a″ど s,ど 容f励 あo″″ Fo打ご ?クσ 2602 LuxembOurg: Office fOr OfFicial Publications of the EurOpean Communi‐ ties,2003 Freeman,RB,“ War of the MOdeist Which Labour Market lnstitutions fOr the 21st Century?"二 αあθ″″Ecο/20″″ ご 55,1998,pp l-24 Hu,Y and Tijdens,K,“ ChOices fOI Part,time Jobs and the lmpacts On the Wage Differentials A COmparative Study for Great Brital■ and the Netheriands," rRIss n/。 /pr22gご ゅ c″シ ″たあ N。 2003-95,2003 Kenjoh,E,“ New Mothers'Employment and Public Policy in the UK,Germany,the Netherlands,Sweden,and」 apan,"二2,o″ら 19(Sl),2005,pp 5-49 0ECD,E″ ″″働 ″ あοtt PariSt OECD,1985,2005 ク々y″夕 Russo,C and Hassink,W,“ The Part‐Time Wage Penalty:A Career Perspectiv● ," 丘式 Dどscz、ど θ″呂η″″5タガ句 No 1468,2005 Visser,」.,“ The First Part‐Time Economy in the Worldi Does lt Work P'ム WVP00-01,2000 ニ4s 次 まじめ に ヤ 福祉 と就労 をめ ぐる社会政策 の 国際的動 向 …… 埋橋孝文 一一 Mattng Work Pay政策に関する対立構図 を中心に 1 は じめ に 〕 2 リ ア ク シ ョン 1:OECDの 場合 4 3 リ ア クシ ョン 2:If。 (ドイツのシンクタンク)の 場 合 II 4 リ ア ク シ ョン 3:ISSA=ILOの 場 合 I身 一一 へ 5 結 び に代 え て 要約 と日本 の合意 Iぅ 福祉政策の中の就労支援 ………………………… 岩田正美 ――貧困への福社対応をめぐって は じめ に 21 _1 社 会福祉 と自立支援 =「 就労支援 (義務)」の位 置 21 2 ホ ー ム レス 自立支援 対策 にみ る就労支援 23 3 住 宅優 先政策 の導入 とその意味 ,2 お わ りに " L子 職業生活 へ の移行支援 と福祉 ………………i…… 小杉ネ じ め に ,6 2 職 業生活 へ の移行 の変化 と 「日本型 ニ ー ト」 3 7 3 ニ ー ト状態 の若者 の実態 4 0 1 は 4 日 本 の若者就業支援 政策 4 9 5 イ ギ リスの若者支援 政策 との比 較か ら見 える問題 4 〕 就 労 ・福 祉 ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ … … … … … … … 田村哲樹 一一福祉改革の時代における市民像 1 序 論 ぅ1 2 シ テ ィズ ンシ ップ概念 の整理―→権利 と義務 ぅ I 3 福 祉 国家再編 の諮原理 とシテ イズ ンシ ップ ラ 2 4 就 労 =義 務 を超 える シテ ィズ ンシ ップの展望 シ 5 結 論 6 2 〔 座長報告〕 │1正 影 福 祉 と就 労 … … … … … … … … … … … … … … … …武ナ 吾 66 1 古 くて新 しい問題 66 2 ワ ー クフェアの批判的検討 69 3 総 括 7 4 テ ーマ別分科会 3=社 会的包線の系譜 と課題―― 英 ・仏の経験 から 2社 会契約 の再構成 …………………………………田中拓道 77 -― 社会的排除 とフランス福祉国家の再編 1 は じ め に 77 2 フ ラ ンス革命期 の 「 友愛」―― 包摂 I ァ ァ 3 20世 紀 の 「 社 会的連帯」一一 包摂I ァ 9 4 福 祉 国家 の危機 と 「 新 しい連帯」―― 包摂田 81 5 結 論 8 ぅ テーマ別分科会 4車 アジアの社会開発政策―一現状 と展望 瘤 貧困政策 にみ るフ ィリピンにお け る │1華 社会開発政策 の 特徴 …………………………… 小田ナ 子 91 ま じ め に ,I ヤ l 貧 困 の状 況 92 2 貧 困政策 の体系 9, 3 フ イリピンにお ける社 会 開発 政策 の特徴 98 4 結 論 :福 祉社 会 と開発 主義 loI 十一 日本 ・オランダ ・アメリカ テーマ別分科会 7=非 正規労働の国際比較 …………… ………… 権丈英子 縁 パ ー トタイ ム社会 オ ランダ I。4 一―賃金格差 と既婚男女の就業選択 1 は じめ に lo4 ン 2 オ ラ ダにお けるパ ー トタイ ム労働 者 の割合, 賃 金 ,就 業分野 I。5 3 オ ラ ンダで は,パ ー トタイ ム労働 は個 人 の生 活 レベ ルで どの よ うに活用 され てい るのか H2 4 お わ りに I16 座長報告〕 〔 第 1分科会 (労働史部会) ーー比較史の試み (木下 順 ) 119 ホ ワイ トカラー の教育 とキ ャリア 第 2分科会 (産業労働部会) ホ ワイ トカラー の仕事管理 (佐藤 厚 ) 123 第 3分 科会 ― 社 会的包摂 の系譜 と課題 →母 仏の経験から (大沢真理) 127 第 4分 科会 アジアの社 会 開発 政策一一現状 と展望 (埋橋孝文) 1,1 第 5分 科会 (国際交流分科会) ー 東 アジアの福祉 レジ ム (朴 光 駿) I,6 第 6分 科会 (労働組合部会) 地域社 会 と労働組合 (鈴木 玲) 140 第 7分 科会 (非定型労働部会) 一 日 ・オランダ ・アメリカ 1/1ヽ 越洋之助) 14) 非正規労働 の 国際比較 本 ntal Welfare Regime: ・ ・ ・ ・Moo―Kwon CHUNG 149 In Search OF a New Reglme Type in East Asia… 塗 The Korean Developmゃ l lntroduction 2 Theoretical i49 Views of the East Asi。 an Welfare Re ■Iistory of the KOrean Developmental Welfare Regilne , 1960s-1980s Iぅ ぅ Financial Crisis,DemOcratization,and Kim Dac Jung Government's“ Productive Welfare"Reform : path‐ dependent Or path‐ shaping? 162 Conclusion: Sustainability oF the Developmental Welfare Regirne and Future Research DirtctiOns 167 え多 Social Transformation and the Development of Welfare Pluralism in Reform China: ・ `・ `…………… Yuし ‐X10NG 172 An Assessment of China's Welfare Regime・ さ 1ntroductiOn l 172 HistoFy of Social Weifare Deve10phent in China 17, 2 SOcial Problems and Their lmpact on Social Welfare and Social Policy in the Context of the M4rket EcOnOmy 177 3 The Development of Welfare Pluralism in the Era Of the Market EcOnOmy 18, 4 E)iscussion and Conclus10ns 187 十■,■IWI醤 ■■評│■■■│ ●労働問題 木村保 茂 ・永 田万 享 『 転換期 の人材育成 システ ム』 (熊沢 透) 19, 鋼業の管理 ・労働 ・賃剣 平 地 一郎 r労働 過程 の構造分析申 石 田光男 『 仕事 の社 会科学ウ (土屋直樹) 196 働研究のフロンティアJ(中 村圭介) 2oI ●中国の社会保障 鐘 仁耀 『 中国の公的年金改革』 ( 子 洋 ) 2 0 8 田多英範編 『 現代中国の社会保障制度J ( 澤 田ゆかり) 効糸 王 文 亮 F九億 農民 の福 祉― 現代中国差別と貧困J(沈 ●ヨーロ ッパの地方行政 と社会政策 武田公子 『ドイツ自治体の行財政改革つ ロ 権化と経営主義イ (豊田議二) 21ぅ 一一 イギリスの医療 ・福祉改革J 近藤克則 『 「医療 費抑 制 の時代」 を超 えて (渡辺 満 ) 218 一) 222 と地 山純 自治J(横 分権型福 祉社 会 方 槌田 洋 「 変 マ ネ ジ ドケア普及期 における米国企業 の 従 業 員 医療給 付 ― 医療保 購入戦略の分析を中心に… 長谷サ ll千 春 険 229 1 本 稿 の課題 229 2「 管理 され た競争」 の論理 とマ ネジ ドケア 2,0 3 従 業員医療給付改革 に よる 「 管理 された競争」 の実践 2,2 4 企 業 に よる 「 管理 された競争」 の帰結 242 5 結 び 2 4 ) 1 忽 相対的剥奪の実態 と分析 ………………………… 阿部 彩 2ぅ -一 日本のマイクロデータを用いた案証研究 ` 1 貧 困基準 の 問題点 2ぅ I 2 相 対 的剣奪指標 の発展 2,4 3 デ ー タと手法 2ぅ 6 4 相 対 的隷J奪の頻度 と深 さ 2ぅ 9 5 相 対 的剣奪 の リス クの高 い 人 々の状況 26o 6 相 対 的剣奪 の 要因分析 264 7 低 所得 と相対 的幸J奪の 関係 267 8 ま と め 270 SUMMARY 学 会記 事 編 集 後 記 投稿論文募集 につ いて
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