頭痛の診断と治療(その2) B.緊張型頭痛(tension−type headache) [病態と診断] 慢性頭痛患者の 50%以上は緊張型頭痛患者である.頭部を締め付けるような,圧迫され るような頭痛で,両側性で後頭部の痛みを伴うことが多い.頭痛の程度は軽度〜中等度で 日常生活に支障きたすことは少ない.悪心・嘔吐,音過敏などの随伴症状や動作による頭 痛の増悪も認められない. [治療方針] ストレスが誘因となることが多いので生活パターンの見直し,姿勢,睡眠不足などの改 善が中心となる.本頭痛患者は運動不足の例が多いので,歩行を中心とする軽い運動を勧 める. 抗不安作用を有する中枢性筋弛緩薬の投与が基本である.中枢性筋弛緩薬で保険適応 を有するものはデパス錠のみである.頭痛の強いときは消炎鎮痛薬を投与するが,連用に より薬剤誘発性頭痛に移行することがあるので注意する. [項部の筋緊張が強い場合] ●処 方 例 11)デパス錠(0.5mg)3−6 錠 分 3 朝・昼・夕食後(保険適応薬) 12)ミオナール(50mg)3−6 錠 分 3 朝・昼・夕食後(非保険適応薬) 2.痛みが強いとき次のいずれかの処方を併用する 13)バファリン錠 1回 1−2 錠 14)ポンタール(250mg)1 回 頓用 1 日 3 回まで 1−2 錠 頓用 1 日 3 回まで 緊張型頭痛治療に用いる薬物(承認薬のみ) 一 般 名 アセチルサリチル酸 メフェナム酸 商 品 名 用 量 用 法 ミニマックス® 1〜2錠/回 経口 バファリン® 1〜2錠/回 経口 アスピリン® 1〜2錠/回 経口 ポンタール® 1〜2C/回 経口 C.群発頭痛(cluster headache) [病態と診断] 一側の眼窩を中心とする側頭部から後頭部にかけて非常に強い頭痛を訴えるのが特徴で, 眼球結膜充血,流涙,鼻汁を伴う. 頭痛の持続時間は 15 分〜2 時間以内であるが,1 日に 1〜10 回の頭痛発作が数週〜数ヶ月 間,夜間の睡眠中を中心に群発する(この期間を群発期と呼ぶ)体動で増悪することはな い.群発期には飲酒によりほぼ 100%頭痛発作が誘発される.群発頭痛は片頭痛・緊張型頭 痛と異なり,男性に多いのが特徴である. [治療方針] 1.頭痛発作時の治療 片頭痛発作時の治療に類似している.イミグラン注が保険適応薬 であり,有効性が高いので,処方例 5)を用いる.その他,純酸素吸入で改善する例がある. 100%酸素(7L/分)をフェイスマスクを用いて吸入させる.10〜15 分で軽快する. 処方例 1),2)を試みても良いが,トリプタン系薬剤との併用は行わない.処方例 3),4) のトリプタン系内服剤は保険適応がないが有効な症例があり,試みても良い. 2.群発頭痛の予防的治療 まず禁酒させる.発作予防薬の保険適応薬はない.処方例 7),8)を群発期に内服させる と 発作時の痛みが軽快することがある. 3.就寝中に発作が出現する場合 処方例 7)と下記の処方を併用する. ●処方例 15)デパス(0.5mg) 1錠 カフェルゴット錠 1 錠 (1 回 就寝前) 群発頭痛治療に用いる薬物(承認薬のみ) 一 般 名 商 品 名 スマトリプタン イミグラン® 酒石酸エルゴタミン,カフェイン カフェルゴット® 用 量 3mg/回 1錠/回 (6錠/日まで) 上記+イソプロピルアンチピリン クリアミンA® 1錠/回 (6錠/日まで) 安息香酸ナトリウム,カフェイン アンナカ 0.1〜0.6g/回 (極量1g/回) アセチルサリチル酸 用 法 皮下注 経口 経口 経口 バファリン® 1〜2錠/回 経口 アスピリン® 1〜2錠/回 経口 メフェナム酸 ミニマックス® 1〜2錠/回 経口 ポンタール® 1〜2C/回 経口 D.その他の治療上のポイント ■ 説明のポイント ・運動不足,食事内容により頭痛が誘発されることがあることを十分説明する. ■ 服薬指導上の注意 ・トリプタン系薬剤は前兆期ではなく頭痛が発現してから服用するように指導する. ・エルゴタミン製剤とトリプタン系製剤の併用はしないように注意する. ・上記の薬剤や鎮痛薬の連用により,薬物が原因の頭痛がおこる可能性を説明する. ■ 看護・介護のポイント ・精神的因子が発症に関わっていることがあるので,患者の精神的ケアにも配慮する. 国立病院機構 さいがた病院 下村 〒949-3193 上越市大潟区犀潟468−1 TEL:025-534-3131
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