台湾の電子マニフェスト調査報告 - 公益財団法人 日本産業廃棄物処理

台湾の電子マニフェスト調査報告
国際協力担当部 部長代理 尾崎弘憲
台湾では、2000年10月より行政院環境保護署廃棄物
管理処の事業廃棄物管理センターの直営により電子マニ
フェスト
(オンライン報告システム)が運営されている。現在、
年間の廃棄物排出量の約80%以上が同システムにより管
理されている結果、不法投棄が大幅に抑制されて環境マ
録番号
(ID)の自動発行、
❸排出事業者はID受領後、3枚綴り複写伝票の印刷、サイ
ンして収集運搬業者および処理業者に渡す、
❹収集運搬業者および処理業者は順次WEB上で情報を確
認して、サインし排出事業者に返送、
ネジメントの促進が達成される一方、業務効率の向上にも
の流れとなる。廃棄物が中間処理業者からさらに最終処
大きく寄与している。
分業者に引き渡たされる場合、再度3枚綴り伝票を印刷し、
日廃振センターでは、2007年6月29日に事業廃棄物管
サイン、返送する。この流れにおいて、それぞれの当事者
理センターを訪問し、同システムの現状について直接情報
の廃棄物の受取りから申告には期限が設けられている。な
を入手する機会を得たので、その概要を紹介する
(写真1)
。
お、
前者の伝票を前段伝票、
後者のそれを後段伝票という。
(2)オンライン報告システムの普及
オンライン報告システム
台湾には、約9万ヵ所の工場、約2万ヵ所の病院そして
約2万ヵ所の建設現場があり、年間の事業廃棄物の排出
(1)オンライン報告システムの仕組み
オンライン報告システムの仕組みは、排出事業者、収
量は3200万トンとなっている。
集運搬業者および処分・保管施設を当事者として、事業
オンライン報告システムの普及については、まず政府直
廃棄物に関する許可および報告事項のオンラインによる申
営の10事業体(76施設)
、上位規模企業1,000社および
請を指定事業者に義務付けるものである
(図1)
。同仕組み
病床数50以上の病院、排水許可申請が必要な企業、廃
の実際の手順は、
棄物処理業者、有害廃棄物を多量に排出する企業、工業
❶排出事業者から事業廃棄物管理センターへ出荷24時間
団地内の企業、の順に事業者を指定し、取り組みを進め、
前までに基礎情報(廃棄物の種類・量、処理業者、処理
2005年において指定事業者数は、排出事業者約4万社、
方法、収集日時、収集運搬業者、車両免許)の申告、
処分施設約4,000社に達し、年間の報告件数は約百万件
❷事業廃棄物管理センターによる申告内容の確認と積荷登
に至っている。このような普及努力の結果、指定排出事業
排出事業者
●廃棄物処分計画
原材料、製品、
廃棄物発生工程
●オンライン報告
写真1 台湾環境保護署での情報交換
収集運搬業者
処分・保管施設
●運搬許可
JW INFORMATION 2007.10
●処理報告
●処理記録
●処分許可
●出荷報告
GPS追跡
再生施設
●再生許可
●再生報告
●処理記録
排出業者の
オンライン
報告は不要
廃棄物輸出
図1 台湾のオンライン報告システムの概要
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●処理許可
●輸出/入許可
●輸出/入記録
調査報告
者のうちの大規模な約2万社(全排出事業者数の22%で、
搬車両のGPS軌跡データの照会等が可能で、これによっ
全排出量の80%を占めている)は同システムで、また処分
て検査官は、疑わしい運搬車両の監視や抜き打ち停止検
施設からのものが大半である排出量の残りの20%は排出
査を効率的に行うことができる。なお、収集運搬業者も、
月報により管理されていることから、事業廃棄物の排出は
自社の車両の運行状況の情報をモニターすることができ、
おおむね管理されている状況にある。
効率的なルートの探索などに活用することができる。
今後の取組み課題としては、GPS搭載車両数の拡大と無
廃棄物移動追跡システム
線周波数検知
(RFID)システムの実用化の2つがある。現在、
台湾では、オンライン報告システムに加え、本システム
GPS搭載車両は約1,750台であるが、2010年までにさらに
を導入し、不法投棄対策をさらに強力なものにしている。
4,000台の増加を見込んでいる。RFIDシステムについては、
本システムは、GPS位置検知システム
(GPS)
、パケット伝
廃棄物の処分過程の監視効率及び精度の改善を目的として
送システム(GPRS)
、インターネットシステムおよびデジタ
取り組みを進めており、対象を飛灰として試行段階にある。
ル補助端末器(PDA)照会システムの要素システムから構
成され、運搬車両にGPSを搭載させることにより、リアル
あとがき
タイムでの車両の位置検知、パソコン上での画像表示や
台湾環境保護署では、この不法投棄対策の成功を得て、
情報伝送が可能である。PDA照会システムは、台湾環境
さらにIT技術を利用した総合的な廃棄物マネジメントシス
保護署の検査官によるパソコンまたはPDAを利用した運
テムの構築を進めている。
お知らせ
日付
氏名
(新)一木 嘉之
平成19年9月25日付
センターだより
理事異動
所属団体名
㈱荏原製作所 取締役常務執行役員
(旧)古賀 惇司
㈱荏原製作所 執行役員
(新)菅野 俊
新明和工業㈱ 常務執行役員
(旧)松岡 正親
新明和工業㈱ 常務執行役員
(新)三本木 徹
㈶日本産業廃棄物処理振興センター 情報処理センター長
(旧)大島 高志
㈶日本産業廃棄物処理振興センター
役職員人事異動
日付
平成19年8月31日付
平成19年9月1日付
新職名
氏名
退 職
大島 高志
採 用(事業推進部長)
大林 重信
旧職名
情報処理センター長
併任解除(事業推進部長)
馬場 寿
調査研究部長
平成19年9月2日付
退 職
岡澤 和好
特別顧問
平成19年9月4日付
採 用(情報処理センター長)
三本木 徹
2007.10 JW INFORMATION
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