税務トピックス No.66 平成 15 年度税制改正の概要 平成 15 年度税制改正の要点を取り上げます。 1.土地・住宅税制 ◯登録免許税と不動産取得税が軽減されます。 【登録免許税の概要】 登記の種類・原因 所有権移転 売買等 遺贈、贈与等 相続等 所有権保存 抵当権の設定(住宅資金の貸付等、課税 標準は債権額) 2.0% 2.0% 0.4% 0.4% 改正後 特例(2003.4.1 から 2006.3.31) 1.0% 1.0% 0.2% 0.2% 居住用家屋の特例 (2005.3.31 まで延長) 0.3% ‑ ‑ 0.15% 0.4% ‑ 0.1% 改正前 (本則) 本則 5.0% 2.5% 0.6% 0.6% 0.4% 【不動産取得税】 課税標準の特例 土地 建物 住宅 非住宅 住宅 非住宅 1 (3 年間延長) 2 1,200 万円控除(新築の場合)等 なし 税率 改正前 3% 4% 3% 4% 改正 3% 3% 3% 3% ◯住宅ローン控除について、転勤等の後に再居住した場合の再適用が可能となりました。 現行の税制では住宅を取得して住宅ローン減税の適用を受けていた者が、転勤等やむを得ない事情に より家族全員で一時転出した場合、住宅ローン控除の適用が打ち切られていました。平成 15 年度税制改 正により 2003 年 4 月 1 日以降にもとの家に再入居した場合は、本来の住宅ローン控除適用期間内であれ ばその残存適用期間で住宅ローン控除が受けられることになりました。 2.相続・贈与税 ○相続時精算課税制度の創設 平成 15 年度税制改正の最大の目玉として相続税・贈与税の改正があげられます。特に生前贈与の促進 を目的とした相続時精算課税制度の創設は、従来の相続税と贈与税の関係を一新する考え方の導入と なりました。この制度は 2003 年 1 月 1 日以後の相続又は贈与から適用されます。 相続時精算課税制度とは 20 歳以上の子(代襲相続人も含む)が 65 歳以上の親から受ける贈与につい て、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する制度で、現行の制度(基礎控除 110 万円、暦年課税)との選択制となります。この選択は、受贈者である子供たちが各々贈与者であ る父・母ごとに行うことができます。ただし、一度この制度の適用を受ける届出を出しますと、相続 が発生するまでこの制度が継続され、暦年課税の贈与税の適用は受けられませんので、注意が必要で す。 贈与時の非課税枠は累積で 2,500 万円を限度として複数年にわたって使用可能です。非課税枠を超え る部分については税率 20%で課税されます。また贈与財産はその種類、金額、贈与の回数には制限が ありません。 なお、相続財産と合算する場合の贈与財産の価額は、贈与時の時価とされています。 1 【相続時精算課税制度イメージ図】 3,500 万円の生前贈与を行った場合 贈与額 3,500 万円 贈与時 非課税枠 2,500 万円 1,000 万 税率 1,000 万円×20%= 200 万円 納付税額(贈与税) 贈与額 相続額 基礎控除 X万円 X×相続税率=相続税額A 相続時 [相続税で精算] 税額A>200 万円 納付 税額A<200 万円 還付 ○住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例の創設 住宅取得資金に係る相続時精算課税制度は、住宅の取得又は増改築に充てる資金を贈与により取 得した場合には 65 歳未満の親からの贈与についても相続時精算課税制度を選択できる制度です。 非課税枠は 3,500 万円です。この制度を受けるための要件は別途定められています。この特例は 2003 年 1 月 1 日から 2005 年 12 月 31 日までの間に、贈与により取得する金銭について適用されま す。また、従来の住宅資金の贈与の特例(5 分 5 乗方式)は 2005 年 12 月 31 日までの間、経過措 置として存続します。この従来の贈与の特例を受けた者は、当該贈与を受けた日の属する年以降 5 年間は、この贈与者から相続時精算課税制度を選択できません。 ○相続税・贈与税の最高税率の引下げ 相続税 贈与税(暦年課税) 各法定相続人 改正前 各法定相続人 改正後 の取得価額 〜 800 万円 〜 1,600 万円 〜 3,000 万円 〜 5,000 万円 〜 1 億円 〜 2 億円 〜 4 億円 〜 20 億円 20 億円超 税率 10% 15% 20% 25% 30% 40% 50% 60% 70% の取得価額 〜 1,000 万円 〜 3,000 万円 〜 5,000 万円 〜 1 億円 〜 3 億円 3 億円超 ろ 10% 15% 20% 30% 40% 50% 課税価格 〜 150 万円 〜 200 万円 〜 250 万円 〜 350 万円 〜 450 万円 〜 600 万円 〜 800 万円 〜 1,000 万円 〜 1,500 万円 〜 2,500 万円 〜 4,000 万円 〜 1 億円 1 億円超 3.金融・証券税制 2 改正前 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 65% 70% 課税価格 〜 200 万円 〜 300 万円 〜 400 万円 〜 600 万円 〜 1,000 万円 1,000 万円超 改正後 税率 10% 15% 20% 30% 40% 50% 上場株式等の譲渡所得の改正 ○申告分離課税の税率の引下げ 2003 年 1 月 1 日から 2007 年年 12 月 31 日までの 5 年間に上場株式等を譲渡した場合、その譲渡 所得に対する税率が 20%から 10%(所得税 7%住民税 3%)に引下げられました。 株式等の譲渡所得は申告分離課税ですので確定申告が必要です。そこで証券会社で特定口座を設 けると手続を代行してもらえるため確定申告が不要になります。この特定口座には今回の改正で 2003 年 4 月 1 日から 2004 年 12 月 31 日までの間に限り自宅で管理していた株券を預けらるよう になりました。 上場株式等の配当所得の改正 ○配当課税の税率の引下げ 従来の配当課税の方法である少額配当の申告不要制度、源泉分離選択課税や総合課税の組合わせ は今回の改正で見直され 2003 年 4 月 1 日以降申告不要制度の上限が撤廃されるとともに源泉分離 選択課税が廃止になります。よって今後の配当課税は 20%の源泉徴収により申告不要を選択する か総合課税(配当控除適用)を選択することになります。ただし、2003 年 4 月 1 日から 2008 年 3 月 31 日までは源泉徴収税率が 20%から 10%に引下げられます。 公募株式投資信託課税制度の見直し ○公募株式投資信託の収益分配金の税率の緩和 従来の公募株式投資信託は収益分配金に対し預貯金等の利子と同様に 20%の源泉分離課税でした が、今回の改正で上場株式等の配当所得と同様の課税方法になりました。つまり公募株式投資信託 の収益分配金は 20%の源泉徴収により申告不要を選択するか総合課税(配当控除適用)を選択する ことになります。ただし 2004 年 1 月 1 日から 2008 年 3 月 31 日までの間は源泉徴収税率が 20%か ら 10%に引下げられます。また新たに償還(解約)損と株式譲渡益との通算が可能となります。 年月 上場株式等 の譲渡益 申告分離課税 上場株式等 の配当 株式配当に対 して 公社債投信 分配金及び償 還(解約)差益 2003 年 3 月末まで 4 月以降 2004 2005 2006 2007 10% 申告不要・源 泉分離課税・ 総合課税 20%の源泉分離課税 2008 3 月末まで 4 月以降 2009 2010 2011〜 20% 10%源泉徴収(申告不要) 10%の源泉徴収(申告不要) (所得税 7%、住民税 3%) 20%源泉徴収(申告不要) 20%の源泉徴収(申告不要) (所得税 15%、住民税 5%) 4.その他の主な税制改正ポイント 消費税(2004 年 4 月 1 日以後に開始する課税期間から適用) 免税点制度適用上限 簡易課税制度適用上限 申告納回数(申告納付回数直前の課税期間の年税額が 6,000 万円(地 方消費税込み)超の事業者) 3 改正前 売上高 3,000 万円 売上高 2 億円 改正後 売上高 1,000 万円 売上高 5,000 万円 年4回 年 12 回 このほかに 2004 年 4 月 1 日から総額表示方式(消費税額を含めた価格の表示)が義務づけられます。 例 ①10,290 円②10,290 円(税込)③10,290 円(本体価格 9,800 円)④10,290 円(うち税 490 円)⑤10,290 円(本体価格 9,800 円,税 490 円)⑥9800 円 (税込 10,290 円) 法人税 交際費 少額減価償却資産 留保金課税 研究開発減税 改正 改正後 適用期間 資本金 5,000 万円以下の中小企業 年 400 万円までの交際費の 8 割を損金算入 資本金 1 億円以下の中小企業 年 400 万円までの交際費の 9 割を損金算入 2003 年 4 月 1 日から 2006 年 3 月 31 日の開始する事業年度 取得価額 10 万円未満 即時償却 同族会社の内部留保金が一定額を超える 場合は、法人税とは別に超過分の 10 から 20%が課税 取得価額 30 万円未満 即時償却 2003 年 4 月 1 日から 2006 年 3 月 31 日までの取得 自己資本比率 50%以下の中小法人(資本金 1 億円以下)について留保金課税を停止 2003 年 4 月 1 日から 2006 年 3 月 31 日の開始する事業年度 中小企業の増額試験研究費の税額控 除 10%、税額控除限度額を法人税の 15% 他 中小企業の増額試験研究費の税額控 除 15%(当面 3 年間)、税額控除限度額を 20% 新たに控除限度額を超えた試験研究費に ついて 1 年間の繰越控除他 このほかに IT 投資促進税制の創設などがあります。 所得税 配偶者特別控除 改正 配偶者の給与収入が 103 万円未満の場合、 所得控除の項目は配偶者控除に加え、配偶 者特別控除があります。 改正後 配偶者の給与収入が 103 万円未満の場合、 所得控除の項目は配偶者控除だけになり ます。 適用期間 2004 年 1 月 1 日から また、 資本金 1 億円超の法人を対象に法人事業税への外形標準課税導入が 2004 年度から導入されます。 4
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