1 判決は絵に描いた餅 ? 金銭の支払いを求める訴訟 (以下「金銭訴訟」 と

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判決は絵 に描 いた 餅 ?
金銭 の 支払 いを求 める訴訟 (以 下 「金銭訴訟 」
といいます。)を 提起 し、時間 と費用 と手間暇 をか
判決 は得 たものの、強制執行 の対象 となる財産 を
把握す ることができないため強制執行 による債権
の 回収 を図ることができず、判決 が正に 「絵 に描
いた餅」 になることも少なからずあ ります。
しか しなが ら、かか る状 況 は誰 が どう考 えて も
か
お しな話 です。 法律 で 自力救 済 は禁止 されてお
り、強制執行手続 によって権利 実現 を図るべ きと
けてようや く勝訴判決 を取 得 したにもかかわ らず、 されているにもかかわ らず、強制執行 の 実効性 を
債務者 が判決 に従 い 自発 的な支払 いを して くれ な 確保す る手段 が設 け られて い な いわ けですか ら。
い場合 、債 権者 は、 強制執行 によ り債権 の 回収 を
図 る必 要 があ ります。
強制執行 は、裁判所 に対 す る申立 て によって行
われ ますが、裁判所 において債務者 の 財 産 を探 し
て くれ るわ けで はな く、 どこそ この土 地 、○○銀
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財産 開示制度
強 制 執 行 の 実 効 性 を確 保 す る 観 点 か ら、平 成
15年 改正 担 保 ・執 行 法 にお いて財 産 開示 制 度 が
行 ○ ○ 支 店 の 預 貯 金 (支 店 まで特 定 す る必 要 が
あるの かにつ いて は争 いとな って い ま したが、最
創設 され ま した。 簡単 に言 えば、裁 判所 における
財 産 開示期 日に債務者 を出頭 させ、宣 誓 の うえ、
債務者 のす べ ての 財産 につ いて 陳述 させ る とい う
判 H23.9,10は 特定 す る必 要 が あ る と判 断 しま し
た。)と い うよ うに、債 権 者 の 方 で 強 制 執 行 の 対
もので、債務者 が正 当 な理 由な く出頭 しない、宣
誓 しない、あるいは陳述 しな い場合 や、虚偽 陳述
象 となる財産 を具 体的 に特定す る必 要 があ ります。 を行 つた場合 には、制裁 を課 す とされています。
しか しなが ら、債 権者 が十分 な情 報 を得 ている
一 見す ると、「おお !」 という制度 の ように思 え
ますが、 実 際 にはそ うで もあ りませ ん。不遵守 に
場合 を除 けば、他人で ある債務者 の 財 産 を把 握 す
ることは困難 です。
訴訟 を初 めて利用 され る方 の 中 には、弁護士 に
は一 般 の方 には認 め られていない特別 な権 限が認
め られ ている と誤 解 されて いる方 も い らっ しゃい
ますが、 残念 なが ら、 その ような権 限 は認 め られ
て い ませ ん。 いわ ゆ る 23条 照 会 (弁 護 士 法 23
条 の 2に 基 づ き、弁護 士 会 か ら公務所又 は公私 の
団体 に照会 して必 要 な事項 の 報告 を求 める こと
があ ります が、プライバ シーや 守秘義務 を理 由 に
)
回答 を拒絶 されるのが オチであ り、債務者 の 財産
情報取得 の手段 と してはほとん ど機 能 しません。
そのため、当たれば最 も容易 か つ確 実 に回収 で
きる預 金 につ いて 言 えば、あてず っぽ うに債務 者
の 自宅 や会 社近 くの取 引 の あ りそ うな銀行 ・支店
を対 象 に強制執行 を申 し立 て、後 は運 を天 に任 せ
る とい うのが実 際 の ところで す。 その結果 、勝 訴
対 す る制裁 が 30万 円以下 の 過 料 であ り、金額 は
もちろん刑事 罰 です らあ りませ んか ら、債務者 の
立 場 か らすれ ば、痛 くも痒 くもな い とい うのが 実
態 ではないで しょうか。
実 は、上 記 改正 の 中間試案 の 段 階 で は 「過料」
ではな く刑事罰である「罰金」とな っていたところ、
ある業 界 団体 か ら 「刑 罰 は行 き過 ぎ !」 との 反対
意見 が 出 たため、現 行 の 「過料 」 へ 修 正 された と
い う経緯 が あるのです が、その業界 団体 こそ、我
らが 日本 弁護士連合会 (以 下 「 日弁連 」 といいま
す。)だ ったので す。
日弁連 内部 にお いて誰 が どの ような議論 を して
上 記 の ような反対意見 にな ったのか まで は把 握 し
と しか いいよ うがあ り
てお りませ んが、「は ぁ
!」
ませ ん。 債務者 の 財産情報取得 のため に有効 な手
段 が な く、実務 で悔 しい思 い を している弁護 士 が
多数 いる 中、 どう して 誰 も刑事 罰導 入 に反対 して
いない状況 で 日弁連 が反対 したの か、全 くも って
理解不能です。
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思 い ま した。 内容 は、債権 者 の 申立 てによ り、財
産 開示手続 を遵守 しなか った債務者 の 住所 。氏名
な どの情 報 を名簿 に登 載 し、裁判所 に行 けば、だ
れで も名簿 を閲覧 。謄写 で きる とい うものです。
この ような名簿 が各種信 用情報 の情報源 と して
日弁連の提言
平 成 15年 改正 か ら 10年 以上 経 過 して い る こ
ともあ り、強制執 行 の 実効性 を確保 す るための手
段 につ いて何 らかの議論 が されていないのか を調
べ てみ た ところ、 日弁連 か ら、平 成 25年 6月 21
利 用 され ることによ り、債 務者 と しては経済 的信
用 の 低下 (例 えば、 ロー ンが 通 らなか った り、 ク
レジ ッ トカ ー ドが作 れ な くな るな ど)を 懸念 し、
かかる事態 を回避 しよ うとす るはずであ り、間接
強制 的機 能 を期待 できるとの理 屈 です。
「
日付 で 財産 開示制度 の 改 正 及 び第 二 者照会制度
(2)も う一 つ の 柱 で あ る第 二 者 に対 す る財 産 照
創設 に向けた提言」 というのが出 されて い ま した。 会制度 は、財産情 報 を持 って い そ うな役所 や金融
提言 の 柱 は財産 開示制度 の 改 正 と第 二 者 に対 す 機 関 な どに対 し、債務者 の 財 産情報 の 開示 を請求
る財産照会制度 の 創設 の 2つ です。
(1)財 産開示制度 の改正 については、刑事罰 (100
万 円 の 罰金 )の 制裁 (た だ し虚偽 陳述 のみ )に よ
実 は平 成 15年 改正 の 中間試 案 にお いて も当 該
制 度 が記載 されてお り、 これ には 日弁連 も賛成 し
る実効性 の 確保、財産 開示手続違 反者名簿 の創設
な どが提言 されています。
ていたのですが、今度 は役 所 や金融機 関 か ら債務
者 のプ ライバ シーな どを理 由 と した 反対意見 があ
今 頃 にな って刑事罰 の導 入 を提言 す るな らなぜ
平 成 15年 改正 の 際 に 反対 したの か との思 い、 さ
り、採用 されなか った経緯 があ ります。
プライバ シーは確 か に重 要 ですが、判決 に従 わ
な い債務者 の プライバ シーが、 国 が定 めたルール
らには、刑事罰 が罰金 に とどま り (諸 外 国 の 例 で
は懲 役刑 と して いる 国 もあ ります。)、 その対 象 も
虚偽 陳述 の 場合 に限定 す るな ど生 ぬ るいとの思 い
を禁 じえ ませ んが、 まあ前進 しただけで もよ しと
しま しょう。
これ に対 し、違 反者名簿 の 創設 はお も しろいと
で きるとい うものです。
力救 済 は ダメで、強制 執 行 手 続 に よって権 利
実 現 を図 るべ き。)を 遵 守 した い わ ば 善 良 な 債権
(自
者 の 利 益 よ り優先 す るなんて、 どう考 えて もおか
しいのではな いで しょうか。
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最後 に
個 人的 には、上 記 日弁連 の 提言 で もまだまだ不
十 分 との思 いが あ ります が、現状 よ りま しである
ことは間違 いないので、判決 同様 、上 記提言 が 「絵
に描 いた餅」 にな らな いよ う、 どこかの業界 団体
の ごとく強力 な ロビー活動 を行 つてで も、可 及的
早期 に法制化 へ こぎつ けて ほ しい と願 う次第です。
以上
どこまでがセクハラ ?
(男 女雇用機会均等法施行規則
改正 につい て)
弁護 士
矢野 智美
相談】
【
(従 業 員
Aさ ん の相 談 )
職場 の上 司 に恋人 との交 際状況 や将来 の ことな
どを しつ こ く尋 ね られ ます。宴席 な ど他 の 従業 員
が いる場所 で、恋人 の ことを大声 でか らかわれ た
りもします。婉 曲的 に答 えを拒 んで も、「心配 して
あげて いるのに。
」 とか、「冗談 だよ。
」 などと言 わ
れて しまい、や めて もらえませ ん。心 配 なんて大
義 され る ことが 多 いで す が、「雇 用 の 分野 にお け
る男女 の 均等 な機会及 び待遇 の 確保等 に関す る法
律」 (以 下 「男女雇用機会 均等法 」 といいます。)
で は、具 体 的 にどの ような行為 がセ クハ ラである
とは定 めてお りません。「事業 主 は、職場 において
行 われ る性 的 な言動 に対 す る労 働者 の 対応 によ り
当該労働者 がその労 働条件 につ き不利益 を受 け、
きなお世 話 です し、冗談 であ つて も不愉快 です。
上司 は同性 なのですが、
何 とかな らな いで しょうか。 または当該性 的 な言動 によ り当該 労働者 の 就業環
境 が害 され る ことのないよ う…雇 用管理上必要 な
(人 事 課 長
Bさ んの 相 談 )
当社 は、 現在 、大 阪 に本 社 を置 き、近畿 二 府 四
県 の 府 県庁所在地 に支 店 を配置 してお ります。具
体 的 な 目途 はないのですが、 いずれ 日本全 国 に支
店 を展 開 したい との思 い を持 つてお り、 この 度 の
社員 の 採用 にあた つては全 国転勤 で きる人 材 を採
用 した い と考 えてお ります。現 時点 で は支店長 ・
部長 といった管理職 クラスの 転勤 はあ ります が、
一 般従業員 での転勤実績 は家庭 の 都合 によ り転勤
措置 を講 じなけれ ばな らない。
」 (男 女雇用機会均
「'陛 的な言動」
等法第 11条 第 1項 )と されてお り、
の主 体 も客体 も男女不 間 で す し、主 体 と客体 が異
性 であるか 同性 であるか定 め られて い ません。
セ クハ ラと間 くと、何 とな く、男性上司 が女性
の部下 に卑猥 な言動 をす る とい うイメ ー ジが思 い
浮 かぶ 方 が少 な くな いで しょう。 最近 で は女性上
司 が 男性 の 部下 をか らか う場面 も思 い浮 かぶか も
しれ ませ ん。 ところが、 これ が 同性 同士 の 場合 は
を願 い 出 た者程度 です。上 記 の ような人材募集 に
つ いて 、当社 はど うい った ことに気 を付 けれ ばよ
どうで しょう。 男性 上 司 が猥 談 を持 ちかけた り、
下 ネ タを 言 う相 手 が 女 性 部 下 の 場 合 にはセ クハ
いので しょうか。
ラだ と感 じて も、男性 部下 な らコ ミュニ ケ ー シ ョ
ンの一 環 の ように思 う方 も多 いか も しれ ませ ん。
男性 上 司 が女 性部下 に 「彼氏 とは うま くい つてる
【
回答】
1
は じめ に
この 通 信 で の 私 の 担 当 回 で は、 経 済 法 や 労 働
の ?ま だプ ロポ ーズ されて いないの P悩 み事 が あ
るな ら相談 しなさい よ。
」 などと尋 ねるとセ クハ ラ
法 その他折 々の 関心事 につ いて執筆 して い く予定
です。 皆様 の 日 々の生 活や業務 の 参考 になれ ば と
の ように感 じる方 も多 いで しょうが、女性上司 が
願 つてお ります。今 回 は男女雇用機会均等法施行
規則改 正 につ いて 、簡単 にご紹介 します。
2
同性 同 士 で もセ ク ハ ラ ?
Aさ んの ご相 談 です が、「恋 人 との 交 際状 況 や
「恋人の こと」
将来 の ことを しつ こ く尋 ね られる」、
の具体 的 な内 容 が は つき り しませ んが、 内容 次第
では、セ クシャル・ハ ラスメ ン ト (以 下 「セ クハ ラ」
といいます①)に 該 当す る場合 もあるで しょう。
セ クハ ラは、相手方 の意 に反す る性 的言動 と定
言 つたな らその上 司が面倒 見 の 良 い上司の ように
思 われ るか もしれませ ん。
平成 26年 7月 1日 に施 行 され る男女雇用機 会
均 等法施行規則改正及 び これ らに付 随す る厚生労
働省 の 指 針 の 改 正 で は、 は っき りと 「なお、職場
にお ける セ クシ ュア ルハ ラスメ ン トには、同性 に
対 す るもの も含 まれるものである。
」 とされてお り
ます。元 々同性 同士 で はセ クハ ラには当た らな い
とされて いたわ けではな いので す が、同性 同士 で
もセ クハ ラに当 た りうる ことが 明確 に定 め られ ま
した。
皆様 の 会社 でのセ クハ ラ防 止 対策 の 中 で既 に認
識 されて い ることか と存 じます が、 この 点 を改 め
てご注意 ください。
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間接 差 別 の 範 囲
今 回 の 改 正 の もう一 つ の注 目点 は、 間接差別 と
一
E
︲
な り得 る措置 の範 囲 の 見直 しです。 男女雇用機 会
均等 法第
7条 で は、性 別以外 の事 由 を要件 とす る
7く
ものの うち、他 の性 の構 成員 と比 較 して一 方 の 性
の構成員 に相 当程度 の不利益 を与 える もの と して
省令 で定 める措置 を、合理 的理 由の な い場合 で な
ければ講 じてはならないとされています。この「省
令で定める措置」の範囲が見直されました。
この「省令で定める措置」ですが、改正前にお
いても、合理的理由がないのに、① 労働者の募集
または採用に当たつて、労働者の身長、体重また
は体力を要件 とすること、② コース別雇用管理 に
おける 「総合職」の労働者の募集または採用 に当
たって、転居を伴う転勤 に応 じることができるこ
とを要件 とすること、③ 労働者の昇進 に当たつて、
転勤 の経験 があることを要件 とすることは、「間
接差別」 として禁止 されていました。
今回の改正 では、
② について「総合職」
との 限 定 が な くな
「募集又 は採用」
り、
に限 らず 「募集若 し
くは採用、昇進又は
職種 の変更」へ と広
げられました。
Bさ んのご相談 で
すが、 これまで全国
転勤がなく、将来全
国 展 開 す る具 体 的
な目途 もないのに、
全国転勤に応 じるこ
とができることを募
集 の要件 にすること
,
事
務
長
弁客
護員
士
弁
護
士
戸根 住 夫
小 野 和 也
事 務 職 員 一同
矢
野
野
中
智
美
徹
也
※著作権法 により無断複写転載 は禁止 されて います。
は、この② に違反することになると考えられます。
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最後 に
平成 18年 改正まで男女雇用機会均等法 は女性
のみを保護対象 とする性格 を有 していましたが、
現在で は、男女双方 を保護対象 とする法律 となっ
てお ります。今般の男女雇用機会均等法施行規則
「雇用の分野 における男女格差 の縮小、
の改正 は、
女性 の活躍促進 を一層推進す る」 ためとされてい
ます。女性の社会進出は国の成熟度を見る目安 と
も言われてお りますか ら、国としては、これか ら
も女性の雇用を保護 していく政策を進めてい くで
しょうし、企業としてもそういった政策 に応 じて、
女性 の雇用をより保護 していく必要 はあるで しょ
う。ただ、性差 に目を向ける以前 に、人はそれぞ
れ多様な個性 を持 っているのであ り、世界中を飛
び回 つて主導的 に忙 しく働 くことを好む女性 もい
れば、住み慣 れた地域で補助的な仕事 に従事す る
「女
ことを好 む男性 もいるで しょう。「男 だから。
」、
だから。
」などといった役割分担意識 にとらわれる
ことな く、各人が働 きやすい労働環境 を整えてい
くことが重要であると考えます。
以上