三方見と四方見の話 テーブルアレンジの基本 花材を有効に 切り分けの

P a r t
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フラワーアレンジメントの基礎知識
コラム
コラム
三 方 見と四 方 見 の 話
花 材 を 有 効 に ─ 切り分 け の 基 本
フラワーアレンジメントはテーブルやホテルのロビー
の中央などの、前・後・右・左の四方向どこからも見える
し ほう み
三方見は、日本では床の間や祭壇などに飾るお花とし
て古くから親しまれてきました。
場所に飾る「四方見」と、床の間や祭壇などの壁を背にし
また、欧米でも、教会やセレモニーが行われるホール
た場所で、正面・右・左の三方向から見るものとして飾る
などにアレンジされ、格調高い空間を演出してきました。
さんぽう み
「三方見」の 2 つに大きく分けられます。
四方見
四方見のアレンジメントには、マウンド、ホリゾンタル、
トピアリーなどの基本となる型・スタイルがあります。正
面を決めずに 360 度どこから見てもきれいに見えるよう
にアレンジすることが最大のポイントとなります。
四方見のアレンジメントを壁の前などに飾る時には、
後ろに鏡を置いて壁側の花も楽しめるようにすることも
あります。
三方見
バラやカーネーションやキク(マム)
などで、1 本の茎に 1 輪の花を咲かせる
ものを「一輪咲き」といいます。
同じバラやカーネーションやキクで
家庭でも、絵画や鏡、暖炉などの両脇に左右対称(シンメ
も、メインとなる 1 本の茎(主軸)から
トリー)に飾ることなどで、クラシカルな雰囲気をかもし
複数の花茎を出し、それぞれの茎の先
だす定番のスタイルとして長く親しまれてきています。
端に花を咲かせるものを「スプレータ
TPO にあわせて作り分ける
れらは、スプレーバラ、スプレーカー
イプ(スプレー咲き)」といいます。こ
欧米の花束には格調のある贈呈用の三方見の花束とと
ネーション、スプレーギク(スプレーマ
もに、そのままテーブルの真ん中に飾れるようなころん
ム)というように、
「スプレー」 を名前
とした丸いタイプのものもたくさん見られます。
の前につけて呼ばれています。
今でこそ四方見の丸いブーケは日本でもめずらしくあ
*
りませんが、ひと昔前までは、後ろに高い背をつくる三
枝分かれしている部分でカットすると、
方見の花束が日本の花束の主流でした。
ほとんどの花(茎)が短くなってしまい
この四方見と三方見の違いは、アレンジメント(花束も
三方見のアレンジメントには、トライアングル、L シェ
含めて)を作る時にはぜひ押さえておきましょう。あらか
短い花をたくさん切り分ける
スプレータイプの花材は全ての花を
ます()
。
小さなアレンジメントを作る時はそ
イプ、バーティカル、インバーテッド T、S ライン、ダイ
じめ飾る場所が壁の前や床の間などに決められている場
れでも問題ないこともありますが、大
ヤ、オーバルなどの基本となる型・スタイルがあります。
合は、三方見のアレンジメント(花束)にしておくと花数
きなアレンジメントを作る時には、短
縦に長いアウトラインを使って、天井までの空間の広が
が少なくてすみコストが節約できますし、同じ予算でも
いものはスポンジの近くにしか配置で
りを意識できるようにアレンジするのがポイントです。
より豪華なものにすることができます。
きなくなってしまいます。
枝分かれした茎のどちらか一方を、1
∼2 輪ずつ高さが異なる位置に花が残
るように長めにカットします()
。
テーブ ル アレンジ の 基 本
そうすることによって、大きめのア
レンジメントでも作品全体に花を配置
フラワーアレンジメントの「基本スタイル」としてご紹
います。また、ユリの花のように大きな花粉がついてい
することができます。配置の際に花の
介したマウンド(☛p.93)とホリゾンタル(☛p.94)は、テーブ
る花は、花粉が落ちて料理に入ってしまわないように花
長さが合わなければその時点でさらに
ルアレンジメントの基本となるものです。
粉のかたまり(葯) を取り除いておきます。花粉は手に
だ
丸や正方形のテーブルにはマウンドスタイルを、楕円
形や長方形のテーブルにはホリゾンタルスタイルを、と
いうようにテーブルの形に合うスタイルをアレンジしま
す。
テーブルアレンジメントの大きさ(面積)は、テーブル
やく
*
つくと洗ってもなかなか落ちないので、ハサミの先端な
どを使って取りましょう。
和食・洋食・中華などのお料理のタイプや盛りつける
お皿と花材や花器との組み合わせを考えながら、
“旬”の
テーブルコーディネートを楽しみましょう。
サイズのおおよそ 1/9 くらいに設定するとバランスがよ
く、グラスやお皿のスペースも十分に確保できます。
香りの強すぎるものは料理の香りの妨げになってしま
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切り分けます。
なるべく長い花(茎)をできるだけ多く切り分ける
∼スプレータイプの花材の切り分け
切り分ける時は、全体の茎の枝分か
れ具合を見ながら、茎の長さをいかすようにして下のほ
うから行うのがポイントです。
もちろん、どうしても短くなってしまう花は出てきま
共通しています。
切り分ける位置はその花によってそれぞれです。切り
分けの感覚はたくさん実践してのみ習得できます。小さ
すので、それらはアレンジメントの中で配置する場所を
めのアレンジメントを作る時でも、長めに残す工夫をし
工夫しましょう。
ながら切り分けの練習をしましょう。
これらのことはスプレータイプの花材だけでなく、カ
*葯はおしべの先端にある、花粉をつくる袋状の器官。
スミソウやマトリカリアなどの細かい花の切り分けにも
*スプレー(spray)は「花や葉や実をつけた小枝」の意味。
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