もう 度 口から食べよう - 全国老人福祉施設協議会

「もう 度 口から食べよう」
「もう一度、口から食べよう」
~みんなで取り組む経口移行~
特別養護老人ホーム愛光園
管理栄養士 渡邉秀美
施設概要
所在地
定 員
長期利用者
宮城県栗原市栗駒
長期利用者 50名
短期利用者 20名
名
平均年齢 84.7歳、平均介護度 4.12
(胃ろうからの栄養補給の方は1名)
職員体制
理事長(医師、嘱託医常勤)
施設長
事務職
3名
名
生活相談員
2名
介護支援専門員 1名
看護職
6名
介護職
29名
名
管理栄養士
1名
給食担当(委託業者)
管理栄養士 1名
調 師
調理師
1名
名
調理員
5名
課 題
「経腸栄養法で栄養補給をしている
経腸栄養法で栄養補給を て る
方の経口摂取への移行と継続」
「もう 度、口から食べることができ、再び食を通し
「もう一度
口から食べることができ 再び食を通し
て生きる喜びを感じ、最期までその人らしく生きる
ことができたら
ことができたら・・・」
」
その思いで取り組み続けている課題です。
その思いで取り組み続けている課題です
表①経口移行状況
名 前 性別
S.N 様 女
S.K 様 女
T.M 様 女
T.K 様 男
OT 様 女
O.T
S.N 様 男
S.K 様 男
S.T 様 男
T.T 様 女
S.S 様 女
T.U 様 女
KI 様 女
K.I
経管
胃ろう
胃ろう
鼻腔
胃ろう
胃ろう
胃ろう
鼻腔
胃ろう
胃ろう
鼻腔
胃ろう
鼻腔
疾
患
脳梗塞
アルツハイマー型認知症
脳梗塞
脳出血後遺症
右視床出血後遺症
多発性脳梗塞
脳血管性認知症
脳梗塞
アルツハイマー型認知症
胃癌・摂食障害
癌 摂食障害
アルツハイマー型認知症
廃用症候群
経口移行期
経口移行加算
制定前
(4名)
経口移行加算
制定後
(8名)
取り組みと支援
【介護力の向上】
・エビデンスに基づいた介護を効果的に行う
【多職種協働での経口移行】
・管理栄養士の役割(栄養ケアマネジメント)
・経口移行後の経口摂取維持と栄養改善(表②)
・美味しい、楽しいを豊かな時間へ支援
再 家族 社会
活
援
・再び家族や社会とつながる生活を支援
【ターミナル(看取り)における経口摂取 】
・“最期まで口から食べたい”を支援
“最
食
” 支援
表② T.U.さんの食事移行状況
(女性 97歳)
栄養補給法
養補
2012.
2.15
4.18
5.16
胃ろう
胃ろう
胃ろう
BMI
アルブミン値
9.26
経
経口のみ
経
経口のみ
12.19
経
経口のみ
5.15
経
経口のみ
経
経口のみ
朝:全粥・
全粥・ 全粥・ 全粥・
全粥・
全粥・
全粥・
極きざみ昼
極きざみ昼・
極 ざ 極きざみ
極きざみ
極 ざ 極きざみ
極 ざ
極 ざ
極きざみ
極きざみ
極
ざ
極 ざ
極きざみ
夕:ご飯
食事摂取
推定摂取
エネルギー量
(kcal)
7.18
2013.
2.27
900
1180
1300
1400
1400
1400
1400
1400
16.8
18.0
17.9
19.3
19.9
20.7
21.1
21.6
3.1
3.6
取り組みと支援
【介護力の向上】
・エビデンスに基づいた介護を効果的に行う
【多職種協働での経口移行】
・管理栄養士の役割(栄養ケアマネジメント)
・経口移行後の経口摂取維持と栄養改善(表②)
・美味しい、楽しいを豊かな時間へ支援
再 家族 社会
活
援
・再び家族や社会とつながる生活を支援
【ターミナル(看取り)における経口摂取 】
・“最期まで口から食べたい”を支援
“最
食
” 支援
具体的な取り組み
組織づくり
・既存の会議、カンファレンス
の活用
・ユニットでの支援
ユ
トでの支援
・サポーター
協
働
・情報伝達、協議
情報伝達、協議
・現場での安全確保
・委託業者等、ご家族との連携
研
修
・介護力向上の研修
介護力向上の研修
・摂食機能、認知症
・事例発表、情報交換
事例発表、情報交換
【事例:胃ろうから移行後の経口摂取継続】
T.U 様 女性 97歳
平成24年1月13日 協力病院療養病床より入園
・入園時の状況(ADL)
食 事 :平成23年2月頃胃ろう造設。
平成 年
胃
設。
YHフローレ
1日3本(600ml)滴下。
エネルギー量 600kcal/日。
たんぱく質
24g/日。
排 泄 :昼夜紙おむつ+尿取りパット。
18Fr尿フォーレ使用。
18Fr尿フォーレ使用
入 浴 :特別浴(機械浴)、全介助。
動作等:完全な寝たきり状態、両手可動可能、表情が乏しく声が出な
くなってきている。
既往歴:大腸癌術後(右半結腸切除)、アルツハイマー型認知症
廃 症候群(嚥 障害)
廃用症候群(嚥下障害)。
・経口移行への模索
経 移行
模索
1/27 医師へ看護師から状態説明。経口移行を試みてよいと回答。
2/6 ご本人の意思とご家族の意向を確認しながら経口移行の
可能性を探っていくことを各職種で確認。
活力向上を期待しアイソジェン1日3本滴下に変更(600ml/日)、
エネルギー量 900kcal/日、
たんぱく質 33g/日に。
/ に
2/15 栄養ケアカンファレンスにて
家族同意 医師 の報告等
家族同意、医師への報告等、
必要なことを進めていくことを
各職域で確認 (写真①)
各職域で確認。(写真①)
(写真
①)
・経口移行のはじまり
経口移行のはじまり
2/16 「喫茶」の時にバニラアイスクリームを舐める程度で味わ
「喫茶」の時にバニラアイスクリ ムを舐める程度で味わ
っていると報告。(その後も状況に合わせこのような試行
を継続)
3/1 医師からの経口移行指示書と経口移行計画により経口
移行開始 1日3本の経腸栄養剤滴下に加え 午後の
移行開始。1日3本の経腸栄養剤滴下に加え、午後の
補食時にベッド上、全介助でプリン1個をむせ込み無く
食べ「美味しい」と話される。
食べ「美味しい」と話される
3/6 経過は良好で1日3本の滴下に加え、午後の補食時に
30分程度スウイング型車椅子に離床し プリン1個の提
30分程度スウイング型車椅子に離床し、プリン1個の提
供を継続。ご自分で全量摂取。
・無理をしない経口移行
無理をしない経口移行
3/12
3/13
3/14
3/19
3/26
4/5
4/6
微熱にて経口摂取中止。
発熱無 看護師 状態報告後
発熱無く、看護師の状態報告後、医師より翌日からの補食
師 翌
ら 補食
時の経口摂取に加え昼食も経口摂取の指示あり。
朝 夕 経腸栄養剤滴下。昼食時に離床し西ユニットで
朝、夕
経腸栄養剤滴下 昼食時に離床し西
トで
ミキサー食1/2量提供。むせ込み無く自力で食べていたが、
疲れが見え1/2量で中止。
疲れが見え1/2量で中止
状態に合わせた支援により徐々に摂取量が増え全量摂取
となった。
となった
朝、夕 経腸栄養剤滴下。
昼食時 1/2ミキサ
1/2ミキサー食
食 → 全量ミキサ
全量ミキサー食
食 を提供。
食器(小分け用小鉢)を持って食べることを支援。
活
活気があり離床すると昼食時、笑顔でお話をされる。
離床す
食 、笑顔
話
。
・経口移行完了まで
4/10 副食の極きざみ食を試食。
「おいしいね、あなたも食べなさい」
食
(膀胱訓練開始:尿フォーレを取る為)
4/13 はっきりとした発語で嗜好をお話なさる。
「菜の花の辛子和えは好まない」
4/16 ご本人希望の「月見うどん(小盛り)」を箸で自力摂取。
4/18 ミキサー食 → 主食:全粥、副食:極きざみ食。
麺類は刻まない。
4/20
/
行事食お花見弁当を全量摂取
行事食お花見弁当を全量摂取。
「サクラ弁当、おいしい」と、活気有り明るい表情。
5/10 昼食に加え夕食も経口摂取へ。
昼食に加え夕食も経口摂取
5/24 朝食も経口摂取になり、1日3食経口摂取(エネルギー量
1400kcal/日 たんぱく質60g/日)。
たんぱく質60g/日)
むせ込み無く良好に全量摂取し表情も明るい。
・食べる楽しみへ -1
5/30 1日3食経口摂取継続。(便意の訴え後、ポータブルトイレで排泄)
9/15 お化粧し和服を着て敬老会に出席
「祝い弁当」を美味しそうに召上る。
(写真②)
9/27 朝食の主食は、全粥、昼食と夕食
の主食はご飯で提供。
10/10 栗原市老人福祉施設親善ゲーム
大会に参加。市販のお弁当も皆さ
んと一緒に笑顔で。(写真③)
(写真
②)
(写真③)
・食べる楽しみへ-2
平成25年
1/16 園での餅つき、2/14 職人さんの実演を見てにぎり寿司を味わ
う。(写真④)
(写真④)
1/30 胃ろう釦の抜去。
8/3 夏祭りで出店の味を
楽
楽しみ、歌う。(写真
⑤)
(写真⑤)
学ば
学ばせていただいたこと
ただ た と
•
•
•
•
•
•
身体拘束の必要が無くなったこと
多動による転倒への対応が必要になったこと
栄養補給法の臨機応変な対応が可能になったこと
タ ミナ にお ても味わう喜び 支援
ターミナルにおいても味わう喜びの支援
嬉しい気持ちがご本人の活力へ
多様な生活時間の過し方へ
ご本人の笑顔⇒私達の仕事への意欲
継続していく今後の課題
•
•
•
•
•
支援に関わる全職員の共通認識
経口移行の可能性を見出すこと
スタッフの育成
タッフの育成
チームワーク
スキルア プ
スキルアップ
さらに良いサービスの提供へ
学び続ける「生きるということ」
今まで人生を過してきた地域の中で
家族に限らず人とのつながりを持ちながら
最期の最期まで生きる時間を全うできるよう
に支援させていただくこと
ご清聴ありがとうございました。