第一章 化学の歴史 (復習) 前4000~18世紀 A) 古代の工芸技術 前4000-前8世紀(メソポタミア文明) B) ギリシャ・ヘレニズム・ローマ(前8-3世紀) C) 4-16世紀 イスラム―インド―中国―ヨーロッパ 錬金術 D) 近代化学の誕生 (17 世紀―18世紀) 19世紀以降 E)化学の拡大。隣接科学との融合(19世紀) F)無節操的飛躍と基礎科学(20世紀~) 1.金属加工品、武器、2.ガラスとうわぐすり、3.染料、4.薬、香料 1.金属加工品 金、銀、鉛、錫、鉄、アンチモン、亜鉛、水銀 青銅(銅+錫)、真鍮(銅+亜鉛)、 → 錬金術や贋金つくり 水銀+硫黄、金+亜鉛、銀+亜鉛、金+銅、銅+ヒ素 2.ガラスとうわぐすり 石英+炭酸ソーダ →透明ガラス +孔雀石+石灰 →水色、藍色 エジプシャンブルー +コバルト →青紫 青は非常に好まれた色である ・・・ラピスラズリ(顔料の原料)、孔雀石(アイシャドー) ラピスラズリ:エジプト、シュメール、バビロニアな どの古代から、宝石として、また顔料ウルトラマリ 孔雀石(マラカイト) Cu2CO3(OH)2 であり、 ンの原料として珍重されてきた。日本ではトルコ 銅製品にできるサビの緑青の主成分と同 石と共に12月のほかに9月の誕生石とされる。ラ じである。皮膜状、粉状、微結晶の集合体 ピスはラテン語で「石」 、ラズリはペルシア語から (塊状や層状など)などの形態で産出する アラビア語に入った “lazward”(ラズワルド: 天・ 空・青などの意でアジュールの語源)が起源で 「群青の空の色」を意味している。石言葉は「尊 厳・崇高」など。 3.染料 インド藍(indigo)建染染料・・・ジーンズ クリムゾン:カイガラムシより、明赤色・・・カーミン色素、食品添加剤 油絵の原料は顔料、特に 青色のラピスラズリを粉砕しオイルに分 散・・・極めて高価・・・より廉価な合成色素が要請され 19世紀後半 モーブ染料、茜染料(アリザリン)、インディゴ 4.薬・香料・毒 ミョウバン、ヒマシ油、天然ソーダ(防腐剤)、乳香(乳白色~橙色の 涙滴状の樹脂)、没薬 (赤褐色の涙滴状樹脂) ●ミョウバン無水物を焼きミョウバンという(食品添加剤) 殺菌剤、染色剤、防水剤、消火剤、沈澱剤、ナスの色付け、ウニの 保存剤として利用。毒ニンジン(ソクラテス)、ヒヨス(アルカロイド系) 色 名前 漢字・英語 同色・混同色 備考 #0F5474 あいいろ 藍色 インディゴ アイで染めた色 #855896 モーブ mauve アニリンから合成される染料の色 #DC143C クリムソン crimson ハーバード大学のスクールカラー B22D35 あかねいろ 茜色 アカネの根で染めた色 没薬樹 ボスウェリア属植物の花 カリミョウバン 乳香 クロムミョウバン ギリシャ時代 四元素説:土、空気、火、水 ◎デモクリトス(BC469-370) 原子論 ◎アリストテレス(BC384-322)の四元素説(下図)+天体 火(Fire) 空気(Air) 土(Earth) 水(Water) アリストテレス アレキサンダー帝国 アレキサンダー大王 アレク サンド リア プトレマイオス2世夫妻 アレクサンドリア図書館 クレオパトラ7世 ヘレニズム時代 プトレマイオス2世(科学、文学のパトロン) しかしヘルメス主義(神秘学) ニセ科学が横行 例:三位一体+錬金術 → 水銀+硫黄+塩 贋金つくり→中世錬金術に展開:エリキシル(エリクサー) 賢者の石 どんな卑金属でも金・銀に変える、どんな病気でも治す ●イスラム錬金術 錬金術(アルケミー)書の翻訳 アラビア語→ヘブライ語→ラテン語 4元素説を踏襲。錬金術の試行の過程で、硫酸・硝酸・塩酸など、現 在の化学薬品の発見が多くなされており、実験道具が発明された。そ の成果は現在の化学 (Chemistry) に引き継がれている。 ●古代中国から10世紀 140年ころ 錬金術の書 硫黄、水銀、金、鉛などの化学反応 唐時代:錬金術が隆盛(道教が国教であり、神仙思想) 不老長寿 唐の6人の皇帝は丹薬で中毒死 火薬、鉱物、樹脂、薬草、抽出法(毒、薬)、メッキ技術 宋時代:朱子学(実践道徳) 錬金術落ちぶれる 辰砂は硫化水銀(II)(HgS)からなる鉱物で、別名に賢者の石、赤 色硫化水銀、丹砂、朱砂、水銀朱などがある。日本では古来「丹 (に)」と呼ばれた。加熱で水銀を与える。 ●中世ヨーロッパ (5世紀―15世紀) ○キリスト教 4-5世紀 ローマ帝国容認、11世紀 2つに分裂 ギリ シャ正教(モスクワ)+ローマン・カトリック(ヴァチカン):後者が西 ヨーロッパ文化圏をまとめる(従って、宗教色の強い科学となる) ○学術の活発化 12世紀 共通語(ラテン語)、大学(イタリア・ボ ローニャ、フランス・パリ、イギリス・オックスフォード) ○十字軍(1095-1291)の働き:イスラム文化をヨーロッパに持ち込む 医術化学 16-17世紀 科学的な展開が一部にある (正確な実験記述)ただし、まだ錬金術の域 ○ヘルモント : ガス、柳の実験(光合成) 近代化学の誕生 (17 世紀―18世紀、主に英国・フランス) 科学思考と定量実験、但し、まだ宗教臭の強い科学 ●ボイル(英)ボイルの法則、元素の定義、原子論 貴族、錬金術的思 考(金属を元素と考えず、別の金属に変化できると考えた)、神学、 フックの師 ●フック(英) フックの法則、顕微鏡による観察、”cell” を細胞の意味 で初めて使用 きわめて幅広い科学者、性格が悪く弟子がいない。 ニュートンと激しく対立、ニュートンはフックの科学業績や肖像画を 消却 ●シュタール(ドイツ) 医師、フロジストン説を提唱し、ボイル、フックの 進めた科学的化学を逆行させ、長期間すぐれた化学者の成長は止 まる:1780年までにフロジストン説はほぼ全ての化学者に受け入れ られ、皆、フロギストン獲得を目指す。 ●キャベンディシュ(英) 貴族、人嫌いの偏屈者、研究のみのすぐれ た実験家。燃えやすい空気(水素)獲得。 ●プリーストリー(英) フロジストンを抜いた空気(酸素)獲得、電気化 学、科学と神学、神学者、牧師、フロジストン信奉者。 ●シェーレ(スウェーデン)、火の空気(酸素)獲得、シアン化水素、 シュウ酸、フッ化水素、酪酸、硫化水素を発見、薬屋、すぐれた実 験家、若死(薬品をなめる癖あり)。 ●ラヴォアジェ(仏) 幅広い科学者、フロジストン説打破、近代化学樹 立、質量保存の法則、物質の命名法、化学方程式、経済官僚、ロ ベスピエールによりギロチンで断首刑 、ベルトレ、デューマ、パス トゥール、ベルセーリウス、デーヴィーに影響を与える。 19世紀以降 E)化学の拡大。隣接科学との融合(19世紀) F)無節操的飛躍と基礎科学(20世紀~) E)化学の拡大。隣接科学との融合 19世紀初頭 ●ボルタ(イタリア) 電池、 ●シャルル(仏) シャルルの法則、気球乗り、 ●プルースト(仏) 定比例の法則、 ●ドルトン(英) ニュートン信奉者、色盲、原子説、原子量、倍数比 例の法則、実験・講演は下手 ボルタの電堆 ●アヴォガドロ(イタリア)アヴォガドロの仮説、分子、 ●ゲーリュサック(仏) 気体反応の法則 気体の物理化学、原子、分子 ●ベルセリウス(スウェーデン)アルファベット式化学記号、陰気で一徹 でありデーヴィーと気が合わず ●デーヴィー(英) 研究と遊びの達人、電気化学、ファラディーは弟子、 多くの元素を発見・単離、笑気ガス中毒、一酸化炭素の吸引実験 で死線をさまよう、三塩化窒素で視力(デュロンの負傷もNCl3 の爆 発)を損ない助手を雇う(ファラディー)。 ●デュロン(仏) 片目、片方の手に指がない ●プティ(仏) ・・デュロン・プティの法則(熱力学) ●ファラディー(英)化学、電磁気学など幅広い 研究・教育、ファラディーの法則、ベンゼン、ローソクの科学 ●ヴェーラー(独) 有機化学の創始、尿素 ●リービッヒ(独)有機化学、実験教育、偉大な頑固もの ●フランクランド(英)原子価 ●ケクレ(独)有機化学、夢とベンゼン 元素単離、電磁気学、熱力学、有機化学 19世紀後半 ●ファント・ホッフ(オランダ)正四面体炭素原子、反応速度、ノーベル賞 ●ファンデルワールス(オランダ)ファンデルワールス方程式、ノーベル賞 ●フィッシャー(独)単糖類、ノーベル賞、偉大な化学者 ●マイヤー(独)元素の周期性 ●メンデレーエフ(ロシア)(1834-1907)周期律、女性教育 ◎周期律の提案のち、化学的に獲得できない(化学反応しない)原子分 である不活性ガスが見いだされる。 元素の一覧表(周期律)、熱力学、有機化学 不活性ガスの発見 ●レーリー(英、男爵 1842-1919)アルゴンの発見、ノーベル賞 ●ラムゼー(英、1852-1916)不活性ガスの発見、ノーベル賞 ◎ついで、電子(ストーニー、クルックス、ジョゼフ・トムソン)、X線 (レントゲン:電磁波)、放射線(ベックレル)の研究が、20世紀の 科学の出発点である原子構造につながる(キュリー、ラザーフォー ド・・a, b, g線) 元素の一覧表(周期律)、原子とは? F)無節操的飛躍と基礎科学(20世紀~) 1.原子の成り立ち:レントゲン、ベックレル、キューリ(1911) 、ラザォー ド、モーズリー、ユーリー(重水素、 1934)、キューリ(1935)、チャド ウィック(中性子1935)、ハーン、シーボーグ 2.量子力学 :プランク(1918), アインシュタイン(1921)、ボーア(1922)、 ドブローイ(1929)、ハイゼンベルグ(1932)、ゾンマーフェルト、シュ レーディンガー(1933)、ディラック(1933)、ハイトラー、ロンドン、パウ リ(1945)、ボルン(1954)、スレーター、ウィグナー(1963)、朝永(1965)、 ファインマン(1965)、 量子化学:ヒュッケル、ルイス、ポーリング (1954)、マリケン(1966)、福井(1981)、ホフマン(1981)、コーン(1998) 3.結合:イオン結合:マーデルング、ボルン、ハーバー、共有結合: ポーリング他多数、金属結合:ゾンマーフェルト他多数、ファン・デ ル・ワールス結合 4.熱力学:19世紀:ル・シャトリエ、カルノ、ジュール、クラジウス、クラ ペーロン、ヘルムホルツ、ケルヴィン(トムソン)、ファントホッフ (1901)、アレニウス(1903)、オストヴァルト(1909)、 20世紀:ネルンスト(1920)、ボルン・ハーバーのサイクル、オン サーガー(1968) 、ブリゴジン(1977) 5.化学反応:ポラニー(1986)、ウッドワード・ホフマン・福井、平衡: 酸・塩基 ブレンシュテッド、ローリー、ルイス、ピアソン、ハメット、 統計:ボルツマン、フェルミ、ボース、アインシュタイン、連鎖反応 (1956)、高速化学反応(1967) 、遊離基スペクトルスコピー(ヘルツ ベルグ 1971) 6.構造:ラウエ(1914)、ブラッグ(1915)、デバイ(1936)、ホジキン (1964、生化学物質)、フィッシャー・ウィルキンソン(有機金属錯塩 1973)、リブスコム(ボラン、1976)、核酸の基本構造(1980)、巨大 分子微細構造(1982)、光合成反応中心(1988) 7.固体・金属・超伝導:固体物理、固体化学、材料化学:ローレンツ (1902)、ゼーマン(1902)、フェルミ(1938)、ブロッホ(1952)、ショック レー(1958)、ワイス、ネール(1970)、江崎(1973)、モット(1977)、アン ダーソン(1977)、ヴァンブレック(1977)、超伝導:オンネス(1913)、 バーディーン(1972)、クーパー(1972)、シュリーファー(1972)、ジョセ フソン(1973)、クリッツィンク(1985)、ベドノルツ(1987)、 ミューラー (1987)、ギンズブルグ(2003) 8.界面、表面:ラングミュアー(1932) 9.測定技術:電気炉 モアサン(1906)、質量分析 アストン(1922)、有 機微量分析 プレーグル(1923)、ラマン分光(ラマン 1930)、サイク ロトロン(ローレンス1939)、高圧 ブリッジマン(1946)、NMR(ブロッ ホ 1952)、位相差顕微鏡(ゼルニケ、1953)、ペーパークロマト(アミ ノ酸分析 1952)、ポーラログラフィー(1959)、メスバウアー(1961)、 レーザーの開発(1964)、分子、原子の観測と操作・・電子顕微鏡・S TMの開発(1986)、AFM,田中(2002) 10.高分子、衣料、機材:シュタウディンガー(1953)、ツィグラー・ナッタ (1963)、フローリー(1974)、ヒーガー・マクダイアミッド・白川(2000) 11・機能材料 色素:バイヤー(1905)、エレクトロニクス:トランジスタ(ブラッテン・ バーディーン・ショックレー(1956)、液晶(1888ライニッツァー・レーマ ン)、エネルギー材料、触媒(グリニャール(1913)、ボッシュ(1931)、 ツィグラー・ナッタ(1963)、野依(2001), 根岸・鈴木(2010)、クラウン エーテル(ペダーセン1987)、クリプタンド(レーン1987)、分子認識(ク ラム1987)、フラーレン(クロトー・スモーリー・カール(1996)、ナノ チューブ(飯島)、グラフェン(ガイム・ノボセロフ 2010) 12.生化学、生命化学、医薬、農薬 (糖 フィシャー(1902)、クロ ロフィル ウィルシュテッター(1915)、空中窒素固定法 ハー バー・ボッシュ、胆汁酸 ウィーラント(1927)、ステリン類(1928)、 アルコル発酵(1929)、血液色素(1930)、ビタミン(1937,1938)、 性ホルモン(1939)、食糧保存(1945)、酵素(1946)、アルカロイ ド(1947)、血清タンパク質(1948)、抗原抗体(ポーリング 1954)、合成ホルモン(1955)、ヌクレオチド(1957)、インシュリ ン(1958)、炭酸同化作用(カルビン、1961)、リボ核酸分解酵 素(1972)、生体内エネルギー伝達(1978)、 13.環境化学 クルッツェン・モリーナ・ローランド(1995) 14.宇宙化学
© Copyright 2024 Paperzz