e 手仕事図鑑 指導者用活用ガイド

e 手仕事図鑑
指導者用活用ガイド
1.e 手仕事図鑑とは何か
e 手仕事図鑑は、書籍のいわゆる図鑑ではなく、みんなで作っ
ていく Wikipedia のようなキャリア学習プラットフォームです。キ
ャリア学習を進める上で必要となる基本的な情報や、調べ学習
のきっかけとなる情報のみがあらかじめ掲載されており、それを
基に、学習者が様々な活動を行うことによって得られた学習成
果を図鑑に登録してもらうことで、内容がどんどん充実していき
ます。
このプラットフォームを利用することにより、他の人の書き込み
を読んだり、自分の調べた結果を書きこんだりするこができます。
このような活動を通して、
1) 職業についての知識を得る
といった一つのキャリアについて知ることだけでなく、
2) 他の人と自分の視点や考えの違いを比べることによって
「働く」ということについての考えを広げる
といった、自らのキャリアプランを考える上で必要となる様々な
視点を学び、さらに、
3) アポイントメントの取り方、インタビューの方法、得られた情
報のまとめ方、著作権、肖像権など情報モラルに関する法
的な問題、情報発信の責任を学ぶ
といった、調べ学習のために必要となるさまざまなスキルを学
んだりしてほしいと考えています。
平成18年に文部科学省から出された「キャリア教育推進の手
引き」では、キャリアを「個々人が生涯にわたって遂行する様々
な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの
関係付けや価値付けの累積」と定義し、キャリア発達を「自己の
知的、身体的、情緒的、社会的な特徴を一人一人の生き方とし
て統合していく過程」と位置づけています。小学校段階の子ども
たちにとって、キャリアについて学ぶことは、「社会との関係性の
中における自己を発見するための学び」と考えることができま
す。
現時点では、登録されている情報がまだまだ少ないため、内
容があまり無いように感じられるかもしれませんが、皆さんの活
用が進むに従って、図鑑としても充実したものになると考えてい
ます。この活用ガイドをごらんいただき、新しい活用事例がたく
さんできあがってほしいと願っています。
皆さんの積極的な活用を期待しています。
2.想定される活用場面
本プラットフォームは、小学校中・高学年の子どもたちの活用を
想定して、作られています。学校教育だけでなく、社会教育、家
庭教育も含めた様々な場面での活用が考えられます。
<学校教育での活用場面例>
・ 社会科の地域学習や職業調べでの活用
・ 総合的な学習での進路学習での活用
・ 総合的な学習での地域調べや地域の産業調べでの活用
・ 企業見学等の学校行事での活用
<社会教育での活用場面例>
・ 子ども会活動で地域について学ぶ活動を行うときに
・ 歴史・民俗・文化系博物館等でのワークショップに
<家庭教育での活用場面例>
・ 将来つきたい仕事について話をするときに
・ お父さん、お母さんの仕事について話をするときに
ここに上げた例以外でも、様々な場面での活用が考えられます。
皆さんの活用事例についても、是非ご紹介ください。
3.e 手仕事図鑑の概要と活用のポイント
e 手仕事図鑑は、指導者が学習者に「何を学ばせたいと考え
るか」によって、様々な意味を持たせることが可能になります。
自由度の高い教材ですが、その分、指導者が、明確な利用の
意図を持って活用することが求められます。
本プラットフォームには、次の4つの部分で構成されていま
す。
1) 各職業の概要について簡単に紹介する
2) 職業を検索する
3) 各職業について調べたことを発信する
4) 友だちの書いた記事にコメント、質問をする
1)の部分には、サンプルとして富山県で取り組まれている手仕
事を紹介する簡単なビデオや仕事場で聞こえる音、イラストを
用いた紹介文をおいてあります。これらの情報から、仕事の様
子や作業現場をイメージし、実際に訪問して見てみたいという
思いを起こさせる工夫をしています。
もちろん、ここに詳しい情報を載せることも可能ですが、コンピ
ュータに正しい情報が詰まっていて、それを見て学習すれば良
いというようにならないことを願い、このような情報のみを掲載
することにしました。「コンピュータは、子どもたちを外に出す」道
具になってほしいと願っています。
インターネットが家庭にまで浸透してきた現在、パソコンや携
帯電話を利用して、多くの情報を簡単に得ることができます。そ
れらの情報は、すべて誰かによって構成されたものであるという
ことを理解し、書かれている事がすべて事実では無いということ
を意識してほしいと考えています。もちろん、これらの情報を入
手することは重要ですが、一番大切にしたい事は、可能な限り、
自分で情報を集め、自分で責任を持って判断するということで
す。そのためにも、インターネットで調べただけで学習を終わら
さないように、学習をデザインしていく必要があります。
地域によっては、サンプルに掲載されている事例では学習を
行わせにくいところも多いと思われます。その場合は、できれば、
先ほどの設計思想をご理解いただき、同様の情報を指導者の
方でご用意いただき、e 手仕事図鑑に登録してご利用ください。
ビデオ映像も最近ではデジタルカメラで簡単に撮影できます。
パソコンに付属のビデオ編集ソフトを利用すれば、より効果的
な利用が可能になります。登録作業は誰でも簡単にできます。
(登録方法の詳細については、利用マニュアルをご覧ください)
2)の検索の機能は、簡単なキーワード等で仕事を検索すること
が可能です。まだ登録数が少ない段階では、ほとんど必要ない
と思われますが、今後登録が増えてきた際には、この機能が必
要になってくると考えています。
3)の情報発信機能は、自分が調べたことをまとめ、他の人にわ
かるようにまとめ、責任を持って発信することを意識させたいと
考えています。どのような表現にしたら伝わるか、専門的な用
語などをどのように説明すれば良いか、写真やビデオと文章を
どのように組み合わせればきちんと伝わるかなどを考えさせる
事をねらっています。
情報を発信する活動は、単に伝えるというだけでなく、自分の
中で得られた情報をまとめ、自分の理解について見つめ直すこ
とにもなります。キャリア教育のねらいの一つでもある「自己を
見つめ直し、知る」ということにもつながります。
他者を意識した情報発信は、社会的なつながりを意識し、発
信する情報について責任を持ち、また、著作権や肖像権といっ
た情報モラルについても学ぶことにつなげることが可能です。社
会の中で働く大人としての基本的な知識や技能を学ぶことにも
つながっています。
4)他者の発信した情報を正確に読み取り、自らの考えをより深
めていく活動も重要です。自分と違った視点からの情報は、他
者の理解、考えのプロセスを学び、自己を理解することにもつ
ながります。他者とのコミュニケーションをより深めるためにも重
要です。
コメントを書く際にも、他者を意識した発信を行うことになりま
す。読み手の思いを理解し、コメントに対してどのような感情を
抱くかなどを考えさせることも可能です。質問をすることは、質
問された方にも調べたことを見直し、調べ切れていなかったこと
を気づかせ、次の学びへのきっかけ与えることができます。コメ
ントや質問は、ネットで公開されますので、不特定多数の第 3 者
に読まれる可能性があることも意識させることができます。
e 手仕事図鑑はこのような思いで設計・構築されています。し
かしながら、単に、子どもたちが勝手に使うだけで、このような
学習効果がでるようにはなっていません。指導者の積極的なか
かわり、声かけによって、効果は大きく変わってきます。指導者
として e 手仕事図鑑を利用する場合、是非この趣旨を理解して
いただき、学習者の状況に応じて積極的にコミュニケーションを
図っていってください。
4.活用事例
本システムを活用した活動事例として、子ども会活動の一環と
して職業調べを行った際の記録を紹介します。
<活動概要>
e−手仕事図鑑を活用したキャリア教育活動は2日間にわたり
実施され、1 日目は事前学習(60分)、体験活動(60分×2カ
所)を行い、2日目にはe手仕事図鑑を活用した事後学習(180
分)が行われた。活動内容は、富山県の伝統的な手仕事の職
人さんの職場を訪問し、職人さんの働く姿を見たり、話を聞いた
りし学んだことを図鑑に書きこんでいくというものである。
【参加者】小学3年生1名
小学5年生2名
小学6年生5名 計8名
【利用コンテンツ】石工芸「水口青玉堂」 水口秀治さん
食品サンプル「いわさき株式会社富山営業所」
勝田誠一さん
<活動の流れ>
e−手仕事図鑑を活用したキャリア教育活動は事前学習・体験
学習・事後学習に分けて実施された。
■事前学習
事前学習では、子どもたちの手仕事に対する興味・関心を喚
起することを目的とした。そのために、まず訪問予定である手仕
事の職人さんの職場の音を子ども達に聞かせ、何をしていると
ころか想像させた。子ども達が何を想像したか聞き、発表させた
後、イラストを配り答えを教える。事前活動では音やイラストの
みを使用し、あえて職人さんの働いている映像は見せないこと
で、子ども達は手仕事に対するイメージを膨らませた。
イラストを見て、手仕事について知りたいこと、分からないこと
を子ども達に考えさせ、体験学習で職人さんにインタビューする
活動につなげた。
事前活動の様子
事前学習の際には、添付
資料にあるワークシートを利用した。また、インタビューの方法、
アポイントメントの取り方についての資料として、インターネット
上にある資料
チャレンジステーション
http://edu.cside.ne.jp/challenge/
の調べ方資料(人(アポイントメントの取り方)、見学)の部分を
印刷して配布し、活用させていただいた。
■体験学習
体験学習では、職人さんの働く姿を直接見たり、働くことの苦
労、やりがいについて話を聞いたりすることで、子ども達の働くこ
とや手仕事についての理解を深めることをねらいとした。子ども
達は、事前学習で考えた知りたいことを職人さんに質問し、メモ
やデジカメを利用し記録した。
今回の活動では石工芸の水口さんと食品サンプルを作ってい
る勝田さんの2人の手仕事職人さんを訪問させていただいた。
石工芸の水口さんの職場見学では実際に石を削る作業を体験
させていただいた。
体験活動の様子
■事後活動
事後活動では、実際にe−手仕
事図鑑に情報を発信する活動を
事後学習の様子
通して、体験活動での学習を振り返り、内面化を図った。まとめ、
書き込みにはかなりの時間を要し、また、パソコン操作のスキ
ルの差を考慮し、訪問先毎に2つのグループに分け、グループ
で書き込みを行わせた。グループ毎に相談しながら、図鑑に書
く内容や構成を決める。このとき、付箋紙を利用し、KJ 法的に
書きたい内容を整理し、伝えたい順番を整理して、文章化行っ
た。
まとめの時間には、お互いの図鑑を見て、良い点、改善点に
ついて発表しあった。また、2日間の活動について振り返って感
想を発表しあった。この活動では、友人の意見や感想を聞くこと
で様々な考えや見方を知り、互いの体験を共有することを期待
した。
■完成した e-手仕事図鑑
■参加した子どもたちの感想
・普段何気なく見ているものも工夫や努力をして作られているこ
とが分かった。(6年生女子)
・みんなで書いたものを全部集めたら本当の図鑑みたいになっ
て嬉しかった。(6年生女子)
・最初はどうまとめていいのか分からなかったけど、友達と話合
ったり、書いていったりしているうちにまとまった。最後にはちゃ
んとしたものが完成して良かった。(6年生女子)
・実際に仕事を体験してみて、その仕事の難しさを知った。職人
さんを尊敬した。(6年生女子)
・こんな活動がまたあったら参加したい。(5年生女子)
【添付資料】
手仕事図鑑 学習シート(例)
学年
氏名
1. 仕事現場の音を聞いて想像した、仕事の内容、仕事の様子、使っている道具などを書きまし
ょう。
2. イラストを見て、わかったこと、もっと知りたいことを書きましょう。
3. もっと知りたいことを、どのように聞けば良いか、質問を作ってみましょう。また、実際に聞い
てみて、わかったことをメモしておきましょう。