流動資産回転率

 ただし、分母に期末総資本(総資産)を用いることもあります。この場合の
計算式は次のようになります。
総資本(総資産)回転率(回)=
売上高
期末総資本(総資産)
なお、本コースでは、分母に期末総資本を用いるやり方によって計算してい
ます。また、単に「総資本」としている場合には、期末総資本のことをいいます。
流動資産回転率
流動資産回転率(回)=
売上高
流動資産
この比率は、投下した総資本から流動性の高い資産だけを抜き出して、これ
が正常に運用されているかどうか、その回転のよしあしをみるものです。この
回転率は高いほど好ましいといえます。総資本回転率は、1つには、この比率
によって影響を受けます。
なお、総資本回転率の算出にあたって、分母の総資本に期首と期末の平均を
使った場合は、この比率の算出においても同様に、期首と期末の平均を使うこ
とになります。以下で説明する比率についても同様です。
流動性の高い資産のなかには、現金預金、売上債権、棚卸資産が含まれてい
ますが、これらの個々の回転率をみれば、流動資産回転率の内訳がわかること
図表4−3 流動資産回転率の考え方
現金預金
当
現
受取手形
金預金
棚
座
売
資
卸
上
資
債
売掛金
産
原材料
権
産
仕掛品
製品・商品
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になります。
売上債権回転率
売上高
売上債権
売上債権回転率(回)=
この比率は、売上債権の滞留状況ないしは回収状況を明らかにするものです。
売上債権は、 受取手形+売掛金−貸倒引当金
です。売上高は、厳密には掛
売上高とすべきですが、一般には売上高が用いられています。
この回転率がよいこと、つまり率が高いことは、売上債権の回収状況がよい
ことを示しています。過去から現在への推移をみて、この率が高くなっていれ
ば、回収状況がよくなってきているということを示しています。また、競争会
社や業界平均と比べてみて、わが社の率が低ければ、わが社の回収に問題があ
ることを示しています。
売上債権回転率は、売上債権回転日数におきかえることもできます。このほ
うが、一般にはなじみがあるかもしれません。 売上債権回転日数(日)=
=
年間日数(365日)
売上債権回転率
売上債権
売上高÷365日
売上債権回転日数とは、売上債権が1日あたりの売上高の何倍あるかを示す
もので、いいかえれば、売上債権がどのくらいの日数で回収されるかを示すも
のです。これはまた、1ヵ月あたりの売上高の何倍あるかをみることによって
回転期間(月数)に換算できます。
売上債権回転期間(ヵ月)=
年間月数12ヵ月
売上債権回転率
=
売上債権
売上高÷12ヵ月
棚卸資産回転率
棚卸資産回転率=
売上高
棚卸資産
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棚卸資産は、製造業では、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品といった
項目があります。商業では、商品、積送品、未着品があります。
棚卸資産回転率は、棚卸資産の新陳代謝の速度を示すもので、この率が高け
れば、新陳代謝が速く、投下した資金の利用効率が高いことを、また在庫が少
ないことを示します。
棚卸資産回転率の計算方式に関する学説は、2つあります。
アメリカ流の学説を採る人は、実務上の便宜を考慮して、棚卸資産回転率の
計算式の分子に、売上高をもってきます。この場合は、 売上高=売上原価+
売上総利益 ですから、売上総利益の大小によって、この計算値が変わってき
ます。
ドイツ流の学説を採る人は、この計算式の分子に、売上原価をもってきます。
この場合は、売上総利益を含みませんので、厳密な意味での回転率が計算され
ることになります。
実務的な有用性という面からみれば、大差ないのですが、会社によって採用
している計算式に違いがあります。ここでは、計算式の分子は売上高というこ
とで統一して説明することにします。
さて、棚卸資産回転率は、売上債権回転率と同様、回転日数、回転期間にお
きかえることができます。
棚卸資産回転日数=
年間日数365日
棚卸資産回転率
棚卸資産回転期間=
年間月数12ヵ月
棚卸資産回転率
製造業の場合には、さらに棚卸資産の項目ごとに回転率を出すこともできま
す。以下がその計算式です。
製 品 回 転 率=
売上高
製品
仕掛品回転率=
売上高
仕掛品
原材料回転率=
売上高
原材料
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商業の場合には、棚卸資産回転率というよりも、商品回転率とよばれています。
商品回転率=
売上高
商品
固定資産回転率
固定資産回転率=
売上高
有形固定資産
この比率は、機械、設備などの有形固定資産に投資された固定性の強い資産
の利用効率をみるものです。設備などへの投資が、効率よく売上高に結びつい
ていれば、固定資産回転率は高くなりますし、過大投資で遊休設備などが多け
れば、低くなります。
効率性分析の事例
図表4−4は、ある食品会社の貸借対照表です。この数字を使って、効率性分
析の比率を計算してみましょう。なお売上高は42,292百万円とします。
図表4−4 貸借対照表
(単位:百万円)
××年3月31日現在
科 目
金 額
科 目
金 額
(資産の部)
(負債の部)
流 動 資 産
12,778
18,126 流 動 負 債
現金・預金
4,922
3,686 支払手形
受取手形
1,873
3,329 買掛金
売掛金
1,770
4,257 短期借入金
有価証券
2,533
357 未払金
棚卸資産
687
6,424 未払法人税等
その他
993
128 その他
貸倒引当金
△ 55
固 定 資 産
負 債 合 計
12,778
10,484
有形固定資産
8,811
建物・構築物
2,032 (純資産の部)
機械装置・車両・工具備品
1,499 資 本 金
1,756
土地
5,167 資本剰余金
5,177
建設仮勘定
113 利益剰余金
8,899
無形固定資産
101
投資その他の資産
1,572
投資有価証券
715
そ の 他
857
15,832
純 資 産 合 計
負債・純資産合計
28,610
資 産 合 計
28,610
(注)有形固定資産の減価償却累計額 5,244百万円
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