ただし、分母に期末総資本(総資産)を用いることもあります。この場合の 計算式は次のようになります。 総資本(総資産)回転率(回)= 売上高 期末総資本(総資産) なお、本コースでは、分母に期末総資本を用いるやり方によって計算してい ます。また、単に「総資本」としている場合には、期末総資本のことをいいます。 流動資産回転率 流動資産回転率(回)= 売上高 流動資産 この比率は、投下した総資本から流動性の高い資産だけを抜き出して、これ が正常に運用されているかどうか、その回転のよしあしをみるものです。この 回転率は高いほど好ましいといえます。総資本回転率は、1つには、この比率 によって影響を受けます。 なお、総資本回転率の算出にあたって、分母の総資本に期首と期末の平均を 使った場合は、この比率の算出においても同様に、期首と期末の平均を使うこ とになります。以下で説明する比率についても同様です。 流動性の高い資産のなかには、現金預金、売上債権、棚卸資産が含まれてい ますが、これらの個々の回転率をみれば、流動資産回転率の内訳がわかること 図表4−3 流動資産回転率の考え方 現金預金 当 現 受取手形 金預金 棚 座 売 資 卸 上 資 債 売掛金 産 原材料 権 産 仕掛品 製品・商品 ©2007 JMAM になります。 売上債権回転率 売上高 売上債権 売上債権回転率(回)= この比率は、売上債権の滞留状況ないしは回収状況を明らかにするものです。 売上債権は、 受取手形+売掛金−貸倒引当金 です。売上高は、厳密には掛 売上高とすべきですが、一般には売上高が用いられています。 この回転率がよいこと、つまり率が高いことは、売上債権の回収状況がよい ことを示しています。過去から現在への推移をみて、この率が高くなっていれ ば、回収状況がよくなってきているということを示しています。また、競争会 社や業界平均と比べてみて、わが社の率が低ければ、わが社の回収に問題があ ることを示しています。 売上債権回転率は、売上債権回転日数におきかえることもできます。このほ うが、一般にはなじみがあるかもしれません。 売上債権回転日数(日)= = 年間日数(365日) 売上債権回転率 売上債権 売上高÷365日 売上債権回転日数とは、売上債権が1日あたりの売上高の何倍あるかを示す もので、いいかえれば、売上債権がどのくらいの日数で回収されるかを示すも のです。これはまた、1ヵ月あたりの売上高の何倍あるかをみることによって 回転期間(月数)に換算できます。 売上債権回転期間(ヵ月)= 年間月数12ヵ月 売上債権回転率 = 売上債権 売上高÷12ヵ月 棚卸資産回転率 棚卸資産回転率= 売上高 棚卸資産 ©2007 JMAM 棚卸資産は、製造業では、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品といった 項目があります。商業では、商品、積送品、未着品があります。 棚卸資産回転率は、棚卸資産の新陳代謝の速度を示すもので、この率が高け れば、新陳代謝が速く、投下した資金の利用効率が高いことを、また在庫が少 ないことを示します。 棚卸資産回転率の計算方式に関する学説は、2つあります。 アメリカ流の学説を採る人は、実務上の便宜を考慮して、棚卸資産回転率の 計算式の分子に、売上高をもってきます。この場合は、 売上高=売上原価+ 売上総利益 ですから、売上総利益の大小によって、この計算値が変わってき ます。 ドイツ流の学説を採る人は、この計算式の分子に、売上原価をもってきます。 この場合は、売上総利益を含みませんので、厳密な意味での回転率が計算され ることになります。 実務的な有用性という面からみれば、大差ないのですが、会社によって採用 している計算式に違いがあります。ここでは、計算式の分子は売上高というこ とで統一して説明することにします。 さて、棚卸資産回転率は、売上債権回転率と同様、回転日数、回転期間にお きかえることができます。 棚卸資産回転日数= 年間日数365日 棚卸資産回転率 棚卸資産回転期間= 年間月数12ヵ月 棚卸資産回転率 製造業の場合には、さらに棚卸資産の項目ごとに回転率を出すこともできま す。以下がその計算式です。 製 品 回 転 率= 売上高 製品 仕掛品回転率= 売上高 仕掛品 原材料回転率= 売上高 原材料 ©2007 JMAM 商業の場合には、棚卸資産回転率というよりも、商品回転率とよばれています。 商品回転率= 売上高 商品 固定資産回転率 固定資産回転率= 売上高 有形固定資産 この比率は、機械、設備などの有形固定資産に投資された固定性の強い資産 の利用効率をみるものです。設備などへの投資が、効率よく売上高に結びつい ていれば、固定資産回転率は高くなりますし、過大投資で遊休設備などが多け れば、低くなります。 効率性分析の事例 図表4−4は、ある食品会社の貸借対照表です。この数字を使って、効率性分 析の比率を計算してみましょう。なお売上高は42,292百万円とします。 図表4−4 貸借対照表 (単位:百万円) ××年3月31日現在 科 目 金 額 科 目 金 額 (資産の部) (負債の部) 流 動 資 産 12,778 18,126 流 動 負 債 現金・預金 4,922 3,686 支払手形 受取手形 1,873 3,329 買掛金 売掛金 1,770 4,257 短期借入金 有価証券 2,533 357 未払金 棚卸資産 687 6,424 未払法人税等 その他 993 128 その他 貸倒引当金 △ 55 固 定 資 産 負 債 合 計 12,778 10,484 有形固定資産 8,811 建物・構築物 2,032 (純資産の部) 機械装置・車両・工具備品 1,499 資 本 金 1,756 土地 5,167 資本剰余金 5,177 建設仮勘定 113 利益剰余金 8,899 無形固定資産 101 投資その他の資産 1,572 投資有価証券 715 そ の 他 857 15,832 純 資 産 合 計 負債・純資産合計 28,610 資 産 合 計 28,610 (注)有形固定資産の減価償却累計額 5,244百万円 ©2007 JMAM
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