第5分科会 国際社会と平和 ① 平和を守る取り組み ② 地域社会の国際

第5分科会 国際社会と平和
① 平和を守る取り組み
② 地域社会の国際化に向けて
助
言
者
矢島
亮一
NPO法人自然塾寺子屋理事長
オブザーバー
山口
和美
群馬県多文化共生支援室長
司
三苫 紀美子
佐賀県地域婦人連絡協議会会長
小渡 ハル子
沖縄県婦人連合会会長
会
現在、日本の国内も世界も、グローバル化の影響も大きく受けながら人と情報・資本・文化の行
き来がますます盛んになっています。日本でも、海外に留学や旅行をする人、外資系の企業で働く
人も急速に増えるなど、多くの若者が早いうちから国際感覚を身につける時代にもなりました。日
本国内で働く外国人も増えています。
ところが世界では、地域間紛争が絶えず、さらに市場化・グローバル化が途上国の貧困問題や環
境問題の解決を困難としています。そして 2001 年 9.11 テロ以降の世界は、対立の構造が複雑化
し、
目に見えない漠然とした不安感の中で、
「不寛容」
といわれる状況が広がる気配を見せています。
しかしほんの数年前までは、わたしたち日本人を含む世界の人々は、あたらしい世紀に、途上国
の貧困の解消や、
紛争の解決と平和の構築、
温暖化などをはじめとする地球環境問題の解決を信じ、
個別のテーマに応じて解決のための国際協議機関の設置や条約の締結、そして各国のNGOの連携
活動など、さまざまな努力が行われてきました。全地婦連と加盟団体も、全国の会員のみなさんと
ともに、戦後一貫して、その活動・地域・生活の中に、特に平和問題、女性問題、貧困問題などに
関して、国際的視野をもって世界の一員としての真摯な学びと理解、そして支援や提言活動などを
絶えることなく続けてきました(事例2参照)
。
それらの問題解決のための道筋はなくなってはいませんし、このような時代だからこそ、いまこ
の瞬間も、絶えず世界の隅々で、日本の国内各地で、
「信頼関係」や「人権」
「公正」といった理念
にしっかりと支えられた共生の社会、安全・安心で持続可能な平和な国際社会の構築に向けた努力
が続けられていることを、いまこそわたしたちは冷静に心に刻むときではないでしょうか。
特に世界平和の問題は、宗教だけではなく、経済問題や先進国・途上国間の格差問題とも大きく
深く結びついており、歴史観の問題も含めて、不寛容な態度だけで問題を解決することは不可能で
あることが明らかです。
また現実に国内では、妻の来ての無い農山漁村での外国人妻が増えていたり、先ごろ日本とフィ
リピンとの間に締結された経済連携協定(EPA)では、介護力不足を見越して看護師と介護福祉
士の受け入れが盛り込まれ、日本語での試験など厳しい条件が課されつつも、来年度はじめには志
望者の受け入れが始まる予定です。このように時代の変化の中で日本の中の「内なる国際化」は、
今後ますます進んでいくことでしょう。国際協力NGO、在日外国人の支援をするボランティア団
体など、国際関連の市民団体と地域との連携を通した、情報の共有や支援のありようを模索してい
く必要性が、今後増していくことも予測されます。
今一度、わたしたちの活動のステージである地域から、
「ローカル」
「グローバル」両方の視野を
もち、人権の意識も大切にしながら、これからの国際社会と平和問題について、話し合うときにあ
るといえます。
1
【実践事例の紹介】
☆ここで挙げた事例は、全国の取り組みの一部です。
<事例1> 平和を語り継ぐ、考える、広める、実践する① (各地における取り組み例)
〔沖縄県婦人連合会〕
第二次世界大戦で国内唯一の地上戦に見舞われた悲惨な戦争体験を語り継ぎ、平和な社会を築
こうと、地上戦終結の昭和 20 年 6 月に重ね、毎年「平和集会」を開催。2006 年 6 月 2 日、今年
の集会でも、
「私たちは、どのような状況の中でも平和憲法を守り、草の根からの国際理解と協力
を推進し、21世紀を生きる人々が平和に暮らせることを心から願い、沖縄を発信基地として平
和をもとめ続けることを誓い、声を大にして広くアピールいたします」とアピールを採択しまし
た。
〔長崎県地域婦人団体連絡協議会・長崎市婦人会〕
長崎市婦人会では、市内の中学校における平和教育の一環として、戦時食づくりと、婦人会員
の語り部による戦争体験の語り継ぎ活動を継続してきました。また、長崎県地婦連では、平和に
対する思いや単位会の取り組み事例を機関紙等で発信するとともに、県地婦連で生協も運営して
いるため、長崎県生活協同組合連合会の主催の平和集会「虹のひろば」にも毎年参加し、広く平
和の大切さをアピールしています。
〔徳島県婦人団体連合会・海部郡婦人団体連合会〕
戦争を知らない世代が増える中で、その悲惨さ、虚しさを確認しあうとともに、平和への願い、
「命の尊さ」について、前途ある若者にしっかりと伝えるために、2006 年 8 月 4 日、海部郡婦
人団体連合会との共催で、中学生 120 人を招いて「戦争を語り継ぐ会」を開催。海部郡の3地区
の住民で、東南アジアを転戦したり硫黄島を訪ねたといった、悲惨で苦しい戦争体験を背負って
きた方たちから、その実際のお話を聞いてもらい、スイトンを食べたり、当時の服装を体験して
もらいました。平和の大切さを認識できたとの、中学生からのしっかりとした感想文も婦人会へ
届けられています。
〔長野県連合婦人会〕
今年で 44 回目の「世界をひとつに平和の集い」を、2006 年 8 月 9 日、大町市文化会館で開催。
大町市長を迎え、市内の中学校3年生が、修学旅行でたずねた広島について、その被爆の悲惨さ
と平和の大切さへの思いを発表。平和憲法についての講演会も聞き、最後に、
「平和が世界のうね
りとなって広がるよう努力を続ける」と、力強く大会声明を発表しました。
〔岩手県地域婦人団体協議会〕
「戦争の悲惨さを身をもって体験した人たちが、今それを記録し、後世に伝えなければ」と、
『灯をみつめて―戦後六十年 語り継ぐ女たちの歴史』を刊行。会員 66 人がつづった戦争体験
と、巻末には中学生、高校生の作文「平和な未来をめざして」をまとめています。
2
〔東京都地域婦人団体連盟〕
核兵器廃絶と戦争のない平和な世界の実現アピールのため、東京地婦連・東京都生活協同組合
連合会・東友会(東京の被爆者団体)で実行委員会をつくり、2006 年 6 月 12 日、
「2006ピ
ースアクション inTOKYO&ピースパレード」を、東京・青山のウィメンズプラザで開催しま
した。
〔川崎市地域女性連絡協議会〕
昭和 57 年に川崎市が、わが国の非核三原則が完全に実施されることを願い、核兵器廃絶平和
都市となることを宣言したことから、平和活動を始める。昭和58年からは毎年「平和のつどい」
を開催し、講演会や映画鑑賞を行ってきた。内容は、太平洋戦争の体験談や、南アフリカの人種
隔離問題、
「国境なき医師団」の活動報告、21 世紀の外国人とのあたらしい共生、自然エネルギ
ーから平和を見つめるなといったテーマでの取り組みを継続して行っている。
<事例2> 平和を語り継ぐ、考える、広める、実践する②(全地婦連)
1952年 全地婦連創立。
「男女平等」
「世界平和の確立」を掲げ、平和で民主的な社会の実
現を、全国のリーダーが一堂に会して決意する。
1950年代 原水爆禁止運動、沖縄復帰国民運動でその中心的役割を果たす
1960年代 北方領土返還要求運動への取り組み(現在も継続)
日中国交正常化前から中華婦女連合会との交流、現在も相互交流がつづく
1975年 国際婦人年を記念して『母たちの昭和史』を刊行
78年 国連に核兵器完全禁止を要請する日本国民(NGO)代表団に代表を派遣
(署名総数 2,002 万余名、そのうち全地婦連分は 532 万名分)
79年 「世界の飢えた子どもたちに1日分のおやつを送ろう」と呼びかけ、全国からの
募金 1 億円を外務省を通じてタイのカンボジア難民キャンプに、8,000 万円をユ
ニセフ協会を通じてバングラディッシュに寄付
1981年 「バングラディッシュの子らに光を!ビタミンAを送る運動」を展開し、募金約
1 億 2,000 万円をユニセフに寄付
82・88年 国連軍縮特別総会への日本からの核廃絶要請団に、全地婦連の代表を送る
84~85年 「アフリカの子ども達を飢えから救おう」
「アフリカへ毛布を送る運動」を展開し
募金を募る(総額 1 億 3000 万円 ☆)
85年 アフリカへの救援基金を国連へ寄付(子どもの食糧支援とワクチン・医療機器の
ために、☆の募金より 5,000 万円)
86年 エチオピアにおける干ばつ被災者救援で、日本赤十字社に☆の募金より 5,000 万
円寄付
ザンビア飲料水確保の井戸掘削支援で、難民を助ける会に☆の募金より 2,000 万
円寄付
メキシコ地震・コロンビア地震支援(☆の募金より)
88年 ソ連・アルメニア地震支援(全地婦連救援基金より)
91年 中国洪水支援(全地婦連救援基金より)
1993年 ソマリアへ米を送る運動(全地婦連救援基金より)
94年 ルワンダの難民救援活動支援(全地婦連救援基金より)
95年 全国大会で沖縄における米兵の少女暴行事件に抗議する特別決議を採択
3
北京女性会議に参加
99年 オランダ・ハーグでの世界市民平和会議に代表派遣
2002年 アフガニスタン救援募金活動を実施し、5,580 万円を、日本ユニセフ協会に寄付
05年 北京女性会議から 10 年の国際会議「北京+10」
(北京)に代表が参加
2005 日本NGO女性大会に参画
06年 在日米軍基地縮小/撤去を求める請願署名を政府に提出(約 32 万名分)
ジャワ島地震緊急募金を日本ユニセフ協会に寄付
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