7 月号(第 11 号)2000.7 東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌 IMCB University of Tokyo IMCB Institute of Molecular and Cellular Biosciences University Tokyo The of University of Tokyo 目次 NMR 距離解析により計算した Apoptolidin の立体構造 (共通機器紹介ー核磁気共鳴装置(NMR) の記事参照) Apoptolidin の立体構造 ……………………………………………………1 研究分野紹介(染色体分子構造解析研究分野)…………………………1 転出のご挨拶(川原裕之、佐野智典)……………………………………3 留学生手記(尹 志洙)……………………………………………………3 ドクターへの道(木村 暁、溝口 信貴、千村 崇彦、横山 夏子)……4 OB の手記 (飯田祐子)……………………………………………………5 海外ウォッチング(井原啓一)……………………………………………6 共通機器紹介ー NMR(早川洋一) ………………………………………7 Welcome to IMCB - 新人紹介 ……………………………………………8 次代のホープ ………………………………………………………………10 平成 12 年度科学研究費補助金採択一覧 ………………………………11 平成 12 年度受託研究・共同研究一覧 …………………………………13 お店探訪(藤島久見子) …………………………………………………13 知ってネット ………………………………………………………………14 Tea Time-編集後記 ………………………………………………………14 研究紹介(冨岡茂雄、西田洋巳) ………………………………………15 研究最前線(細胞構造研究分野、蛋白質解析研究分野) ……………16 研究分野紹介 染色体分子構造解析研究分野 生物の体が一つの受精卵から出発し、複雑な体構造を作 充満する論文は一般の注意はあまりひかなかったのではな り上げる過程は生命の神秘そのものと言ってよく、昔から いかと思います。それが、1980年代に入り分子遺伝学 多くの人々を魅了し続けております。発生学の名でよばれ の導入にともない、急展開をみせることになります。発生 る学問領域が専らこの機構の解明を目指してきました。 遺伝学の貴重な財産であった各種の突然変異の原因遺伝子 研究テーマ が次々にクローン化され始めました。そのなかで、発生学 ショウジョウバエの発生、形態形成メカニズムの解析 に最初のそしておそらくは最大の衝撃を与えたものはホメ (1)モルフォゲンの作用機構 オティック遺伝子の発見であったかと思われます。ショウ (2)コンパートメント形成機構 ジョウバエの各体節の個性を決定する遺伝子があり、それ (3)新規形態形成遺伝子の探索 20年ほど前までは他のいくつかの伝統的な生物学の諸分 野と同様に、発生学は記述の多い学問分野の1つとして、 また胚操作等、個別な訓練と熟練を要する世界であると認 識されていました。もちろん現在もこれらの伝統の上にな りたっていることに変わりはありませんが、遺伝子組み換 え技術の登場により、これまた他の生物学諸分野と同様に 大きく様変りしました。様々な発生現象が共通の言語で理 解されるようになってきたのです。さらにこれを決定的に 押し進めたのがショウジョウバエの遺伝学でした。この学 問分野も独自の世界を築いてきたもので、誰もがその名は 知っていても(赤眼と白眼の遺伝学等を教科書で見ること はあっても)、3文字のイタリックで書かれた遺伝子名の らがゲノム上に、体の前後軸に沿った順番通りに並んでい 図1 A 前後コンパー トメントとモルフォゲ ンの濃度勾配 翅は前部と後部の2つ のコンパートメントか らできている。後部で 発現する en 遺伝子は後 部のアイデンティティ ーを決定すると同時に 前部の細胞に働きかけ てモルフォゲン dpp の 発現を誘導する。概念 的なモルフォゲンの濃 度勾配を示す。 B 後部コンパートメントに en 活性を持たない細胞集団(クローン)を作成す ると前部コンパートメントに発生運命が変わると同時に隣接する野生型の後部 コンパートメントに働きかけて結果的に完全な翅の鏡像対称構造を生じる。2 つのコンパートメントの接触により新たなモルフォゲンの発現が誘導される。 2 構 成 員 たのです。驚いたことにその相同遺伝子はヒトを含めた脊 椎動物においても良く保存され、遺伝子重複により数は増 教授 多羽田哲也 技術補佐員 4名 えていますが、やはり前後軸に沿ってゲノム上に並んでい 助手 常泉和秀 事務補佐員 1名 技官 前山有子 博士研究員 1名 るのです。小さな昆虫の体構造を形成する基本原理のかな りの部分は、脊椎動物の体を作る原理でもあることが解り 大学院生 ました。Ed Lewis が長年のホメオティック遺伝子の遺伝学 理学系研究科生物化学専攻博士課程 4名 理学系研究科生物化学専攻修士課程 2名 (分子という接頭辞はつかない)の功績により、数年前に ノーベル賞を贈られた時に Christian Nusslein-Volhard と せんでした。細胞がモルフォゲンを受け取った時にその濃 Eric Wieschaus もその功績に対して同賞を贈られておりま 度(強度)に応じて細胞内の信号伝達因子(Mad)がりん す。それはショウジョウバエの胚発生の突然変異を網羅的 酸化されます。それを指標として、前駆組織を染色してみ に収集しようとする途方もない営為でありますが、ともか ますと、図2に示すような複雑なパターンを示すことがわ く彼女らはやりとげ、私たちに計り知れない恩恵をもたら かりました。その勾配も翅の前半分と後ろ半分では異なっ してくれています。そこで同定された遺伝子の多くはすで ております。このような複雑なパターンはモルフォゲン受 にクローン化され、ひとりハエのみならず、あらゆる生物 容体の発現レベルを制御することにより形成されることも の様々な発生、形態形成のメカニズムを説き明かす鍵とな 明らかになりました。それは、図1に示した、モルフォゲ っております。さて随分前置きが長くなってしまいました。 ンを発現する遺伝子の働きによるものでした。つまりモル そろそろ私たちの研究の話をしなければいけませんが、敢 フォゲンを発現する機構は最終的にその活性の勾配をもプ えて長い前置きを書いたのは私たちの仕事はこの文脈の中 ログラムしていることになります。分泌されたシグナル分 にあるからです。私たちは現在のところ専らショウジョウ 子の濃度勾配で生物の構造がきまる、という少し頼りない バエの翅の形態形成を研究しております。形態形成の大き 漠然としたイメージは大きな修正を迫られております。そ な基本原理ともいうべきものに、モルフォゲンによる細胞 れにまつわる研究はいくつかありますが、もう紙数は尽き 運命の決定機構があります。モルフォゲンは分泌され濃度 たようです。ホームページを(できればオリジナルペーパ 勾配を形成することにより、細胞の発生運命を決定します。 ーを)参照していただければ幸いです。発生学の研究も最 個々の細胞はモルフォゲンの濃度により自らの運命を知る 近は再生医学、幹細胞の樹立等、医学応用面で取り上げら ことになります。この仕組を理解するための最良のモデル れることが多く、ヒトに近い哺乳動物をモデル生物とした がショウジョウバエの翅であると考えています。図1に示 研究がますます盛んになっていくことでしょう。小林秀雄 したように1つの遺伝子の変異で、その支配するカスケー のいうパラドックス-----およそ行為は無償であればあるほど ドが作動し、その結果を形態の変化として見ることができ 美しく無用であればあるほど真実である-----を座右の銘に、 るという醍醐味があります。この図はモルフォゲンを発現 この小さな昆虫の翅の語るところを聞いてみたいと思って する契機となる遺伝子の働きを雄弁に語っております。最 います。 近の成果を少し具体的に示します。モルフォゲン dpp は翅 の前駆組織で図2のように発現し、濃度勾配を形成すると (ホームページ http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/fly/htmls/index.htm) 考えられてきましたが、誰もその勾配を見たことはありま 図2 モルフォゲン活性の勾配 翅を作る前駆組織である翅成虫原基の蛍 光抗体染色像。Dpp (青)は後部コンパー トメントで en により発現が活性化され るヘッジホッグ(hh、緑)によりコン パートメント境界に誘導される。ヘッジ ホッグが発現している部分が後部コンパ ートメント、発現していない部分が前部 コンパートメントの組織。リン酸化型 Mad の分布(赤)は単なる釣り鐘型の 分布を示さず、dpp を発現している細胞 で低くなっている。また後部の方が勾配 が急である。これは、en および hh によ り、dpp の受容体の発現レベルが制御さ れていることによる。 3 「転出のご挨拶」 お世話になりました 前生体超高分子研究分野 助手 川原裕之 前研究助成掛 主任 佐野智典 平成12年4月付けで、お世話になりま この度私は 9 年間お世話になった分生研 した分生研から北大薬学部に転出するこ を離れ、経済学部へ異動となりました。 とになりました。 9 年間といえば一昔まであと 1 年という、 鈴木紘一先生に声をかけていただいて臨 口で言ってしまえば長いようですが、私 床研より分生研に赴任して以来2年間、 にとってはあっという間の 9 年間でした。 分生研の皆様には本当に良くしていただ 最初研究所に来たころは、まだ応用微生 いて、充実した研究生活を送らさせてい 物研究所のときで、初めての部署に加え ただきました。心から感謝申し上げる次 右も左もわからないまま、手探りの状態 第です。4月から所属する研究室は、実は私の大学院時の所属研 で仕事をこなしてまいりました。そのような中で応微研スタッフ 究室でもあるのですが、時間の経過と共に居室もテーマもすっか の皆様のご協力により、仕事を軌道にのせることができました。 り up to date されているようです。大学院を卒業以来、英国留学、 その後、分生研に改組され、応微研当時のスタッフに加え、新し 臨床研、分生研そして北大と2年おきに研究室を移動することに い先生方や助手の方等が見えられ、さらに研究所が活気づいてき なりますが、これまで分生研にてご教示いただいたことを糧に、 たところです。教官の数が増え、研究分野の組織が複雑になり、 古巣でも新しい研究分野に“じっくりと”挑戦していきたいと考 研究助成掛の業務もかなり煩雑になってきましたが、これも研究 えています。これからもどうぞ変わらぬご指導をお願い申し上げ 室の方々の並々ならぬご協力により仕事をこなすことができうれ ます。 しく思います。しかし、この間、私にも至らないところが数々あ り大変ご迷惑をおかけしたことを深く反省しております。本来な らば研究助成掛の体制を完全にして異動したかったのですが、事 務体制の流れによる異動で研究室の皆様には申し訳なく思ってお ります。今後とも研究所の発展を心よりお祈りいたしております。 異動したとはいえ少々離れている程度です。また、経済学部は総 合研究棟にも研究室があり時々農学部キャンパスにもうかがって おりますので見かけた際は、ぜひ声をかけてやってください。 留学生手記 分子生物活性研究分野 博士課程3年 尹 志洙 留学生手記執筆依頼を受けた時は悩みましたが、これを機会にい しさ、私を暖かい目で見守ってくれた仲間たち(自分の研究室の ままでの自分の留学生活を振り返ってみたいと思います。おそら 仲間にこの場を借りて感謝したい)がいままでの自分を支えてく く、自分は分生研にいる留学生の中で一番古い一人だろうと思い れたと思います。それともうひとつ学んだことはものを長い目で ます。私は91年末に当時応微研12研の門を叩き、修士を終え 見ることです(残念ながらなかなか上手くできないんだな∼これ 兵役のため母国へ帰国し2年間半、韓国陸軍で服務後、98年4 が)。この後何年間も研究をしていく研究者として、すぐ目の前 月から復学、現在博士3年に在学中です。しかし、今年が分生研 のことより長い目でものを見ることがいかに大事であるかをしみ での最後の年になるだろうか・・・・・それはだれにも分からな じみ感じています。 いでしょう。留学生なら、だれでも感じることでしょうが、私も ここまで、自分が思ったことを勝手に書かせて頂きました。これ 最初は言葉の壁の前で苦しみ、その上さらに私と日本人学生との からも色々な苦しみや悩みがあるとおもいますが、それらに負け あまりにも大きい実力差で悩み、また実験に関してほとんどなに ずに“やればできる”と“努力はいつか報われる”という言葉を も分からない状態でした。なのに今は博士3年(どうして?)。 信じ、これからも前に進んでいきたいと思います。留学生の皆さ いまだにどうやって自分が修士を卒業できたのか謎であります んも頑張って下さい。 (自分って結構ついてる男かもね) 。しかし、もっと苦しかったの は復学してからでした。修士とは違って厳しい博士課程の重圧感 と博士として恥ずかしくない研究をしたいという気持ちと責任 感、一生懸命に頑張っても出ない実験結果、何回やめたいと思っ たか数えられない日々の連続でした(お・・神様)。これは私だ けではなく留学生ならだれでも経験したことだと思います。しか し、ほかの留学生の皆さんはこれらの悩みやストレスをどうやっ て解消しているんでしょうか?多分、留学生は皆鉄人だからスト レスを感じないかも(冗談)。本研究所には色々な国から留学生 が来ています。皆さんはほんとに頑張っている。それを見て自分 も負けちゃいられないという想い、実力のない自分に対しての悔 左から 2 番目が筆者 4 ドクターへの道 分子発生分化研究分野 木村 暁 (理学系研究科生物化学専攻 博士課程2年) 溝口 信貴 (理学系研究科生物化学専攻 博士課程2年) 千村 崇彦 (理学系研究科生物化学専攻 博士課程2年) 横山 夏子 (薬学系研究科生命薬学専攻 博士課程2年) 「分子発生分化の学生です」というと、指導教官である 堀越先生の研究に対する真摯な姿勢と厳しい議論そしてハ ードワーキングが国内外で有名なので、「大変でしょう?」 とか「先生は厳しいですか?」とか、よく聞かれます。海 外の研究者に「君はマサミの学生だろう?どうりで痩せて いると思った」などとジョークを言われたこともあります。 でも実際は「研究室から卒業したときに自立した研究者に なれるようにする」という先生の教育方針から、学生の成 長にあわせ研究を進めさせていただいています。一方で、 「学生のうちから海外のポスドクをしのぐ研究ができる」 よう、それぞれが独立した大きなテーマを与えられており、 写真:後列左より 木村、千村 前列左より 溝口、横山 また海外のミーティングへの積極的な参加を奨励してくだ ンチワークでは、それぞれが各自のペースと体力、気力に さるなど、分不相応に恵まれた研究環境の中で、責任と期 合わせて実験を進めています。研究室員の中には結婚して 待の重さを感じながら研究を行う毎日です。 いる学生もおり(といっても私ですが)、一日のサイクル 研究室はここ数年は堀越先生以下 15 人前後で構成されて は各自に任されている(ただし徹夜厳禁)ので、大変助か います。この人数はお互いに「顔がよく見える」適正人数 っています。このような感じで研究室員はみな仲が良く厳 で、しかも出身学部も、理学部、薬学部、医学部、工学部 しさの中にあっても和気藹々とした雰囲気で研究をしてい といったように様々で、バックグラウンドを活かして活発 ます。 な議論が日々繰り返されています。私たちの学年は最も人 ドクターに進学したからには、将来は科学者としての生 数が多く、研究に限らず様々な面で気兼ねなく議論ができ 活がほぼ間違いなく待ち構えています。どんな科学者であ る点で恵まれています。もちろん、同期が少ないからとい りたいか?毎日が新しい発見に満ちた充実した生活を送る って寂しい思いをするわけではありません。研究室の方針 科学者、今日までの進化を可能にした驚嘆に満ちた生命の として、学年による差は考える必要はなく、「先輩風を吹 巧みさを一つでも多く見出すことができる科学者であるこ かせる」なんてことは全くありません。実際アイディアの とを目指して生きていきたいと誰もが考えているに違いあ 素晴らしさには学年など関係あるはずもなく、後輩達の創 りません。それには問題提起する力と洞察する力そして遂 造性あふれるアイディアを聞くたびに身の引き締まる思い 行、完成する力が必要不可欠でしょう。先生が日々の徹底 を感じています。 した批判力のあるディスカッションを重視するのはこう言 朝はミーティングから始まります。事務連絡に加えて、 ったことが根底にあります。堀越研の研究室員は街で見か 最近得られた知見、アイディアなどをもとにその内容と発 けても分からないとは思いますが、日本のセミナー、ミー 展性について話し合いが行われます。ベンチワークばかり ティング、そして海外のミーティング等では若い大学院学 の研究室もあるなかで、理論面を重視する先生の特徴が現 生が堀越先生に絞られながらも(?!)質問している光景 れています。週に一度は研究室のセミナー以外に先生を除 が見られるはずです。 く研究室員全員が、結果を持ち寄り議論する機会もあり、 全員が全員の現在の進行状況を把握している状態です。ベ 5 OB の手記 読売新聞社八王子支局 記者 飯田祐子 「分生研ニュース」への寄稿依頼を受けた時、とても勤 勉とは言えない学生だった大学院時代を省みて「汗顔の至 りとはまさにこのことだ」と一人つぶやきました。すべて 水に流して(下さったのだと思っているのですが)声をか けて頂き、感謝しています。 日ごろ「大学院まで行ったのになぜ一般紙の記者に」と 問われると、「自然科学の面白さを広く伝えたくて」など と薄ら寒い言い訳でお茶を濁しているのですが、「研究者 になるほどの才能がないことに遅まきながら気づいた」と いうのが本当のところです。分生研でも、先生方や先輩た ちを見るにつけ、ひらめきや情熱、忍耐力など、あらゆる 面で「私では遠く及ばない」と思わせられるばかりでした。 そんな挫折の傷心を抱えて入社したのが読売新聞社です。 後列の左端が筆者 全国紙の記者はたいてい、最初の数年間は地方支局で基礎 が出たばかりの研究室では、それまで得意満面だった教授 を学ぶことになっており、私は都西部の地域版である「多 の表情が一変し、「具体的な数値は教えられない。それか 摩版」を編集する八王子支局に配属されました。赴任前日、 ら、記事になる前に原稿を見せてもらいたい」などと言わ JR八王子駅から、怪しげな店が続く暗い通りを新居まで れて戸惑ったこともありました。 とぼとぼと歩いた時のわびしさは今も忘れません。 どの支局でも新人記者は「サツ回り」と相場が決まって いて、私も最初の年は八王子市内の二つの警察署を担当し とはいえ、結果を出すまでの苦労を思えば、無理もない ことです。最初に論文が載った者の勝ち、という「業界」 の厳しさを思い出させてくれた一件でした。 ました。初日の朝、先輩に言われた通り七時ごろに署に行 そうして取材を重ねていると、大学にとって激動の時代 くと、お巡りさんたちは皆忙しそうで、だれも相手をして が始まったのだということをひしひしと感じます。何しろ、 くれません。揚げ句には宿直責任者に「今日は何もない 世間で一流と言われる国立大が、変革の大波に洗われるま っ!」などとどなられ、犬のように手を振って追い払われ ま、右に左にと翻弄されているのを目の当たりにしている る始末。それでも何か月かたつと、時折小さなスクープを のです。私立大などでは差別化で生き残りを計ろうと、新 棚ぼた式にものにしたりするようにもなりましたが、時に 手、妙手で受験生へのアピールに必死なところもあります は上司の顔を見たくなくて、取材が終わっても支局に帰ら が、東大がこのサバイバル時代を生き延びるには、教育・ ずに多摩川支流の浅川という川でカモにパンくずをやった 研究機関としてさらにレベルアップするしかありません。 りしていたこともありました。 すなわち、分生研の皆さんの肩に母校の将来がかかってい その後、二年目のスランプ、三年目の倦怠、四年目の悟 得と変遷しながら、裁判所や地検の担当などを経て、現在 るのです。頑張って下さい。 現場から離れて、人の研究成果を取材するようになって、 は八王子市政を受け持っています。そろそろ立川や府中な 科学の面白さを再発見したりもしました。世間では、子供 どのミニ支局に異動かな、と思い続けてはや二年。どうや の理科離れもすっかり定着したように言われていますが、 ら本社に戻るまでのあと一年余も八王子で過ごすことにな 理解しがたい現象です。悪いのは教師なのか学校なのか、 りそうです。 それともやはり文部省なのでしょうか。ひょっとすると、 多摩地区は日本有数の大学地帯で、管内には東京農工大 など理科系の大学も多く、時には取材で研究室にお邪魔す 子供を含め、人々の関心を引く報道ができないマスコミの 責任でもあるのかもしれません。 ることもあります。その度に、東大での六年間に覚えた 分生研の皆さん、子供たちに夢を与えるような素晴らし (ような気がする)知識を総動員して原稿を書いています。 い発見をして下さい。そして、その際には必ず当支局にご 分生研の出身と話すと「テーマは何だったのですか」と 逆に取材されることもしばしばです。先生や学生に親近感 を持ってもらえるのはありがたいのですが、新しいデータ 一報下さい。取材に伺います。 (平成 8 年 3 月 応用生命工学 修士課程 修了 (生物物理研究分野)) 6 海外ウォッチング 森永乳業(株)食品総合研究所 井原 啓一 分子細胞生物学研究所卒業生の留学記とのことですが、 何から書いていいのか今迷っています。とりあえず、私の 見たアメリカおよび大学について思いつくまま書いていき たいと思っています。 まずは自己紹介になりますが、私は井原啓一と申しまし て現在アメリカのアイオワ州立大学に留学しています。平 成 3 年 4 月から平成 6 年 3 月まで当時の第 9 研究室(現在の 生物物理部門)にお世話になっていました。分生研では DNA 複製の忠実度制御機構についての研究を行っていまし た。修士課程終了後、森永乳業に就職し、1 年半の工場勤 務の後、研究所配属になりマーガリン・チーズの商品開発 および製造技術の基礎研究を行っていました。そこへアイ オワ州立大学への留学の話が来て、現在にいたっています。 じような感じですが、学部生はアルバイトといった感じで アイオワ州はトウモロコシおよび大豆の収穫量が全米で す。日本の大学では理系の学部 4 年生のほとんどはいずれ 1,2 位を争うくらいの穀倉地帯で、大学から少し外に出ると かの研究室に配属となり、自分のテーマとして研究に取り 地平線まで畑が続くという光景が見られます。当然、アイ 組みますが、こちらでは特にそれは必要でなくまた、研究 オワ州立大学でも穀物に関する基礎研究および応用研究は 室にやって来る学生も 4 年生とは限らず、現在私のいる研 活発に行われており、国内外のさまざまな企業から人が派 究室には 2 年生と 3 年生の学生がいます。収入になり研究 遣されて研究しています。NASA からも宇宙ステーション 室の様子もわかり勉強にもなるので学生にとってはよい話 における食料供給方法および宇宙食に関する研究を行って だと思います。学生の働き場所といえば学内のいたるとこ いる人が来ています。また、アイオワ州立大はコンピュー ろにあり、学科の事務も院生のアルバイトを雇っています ター関係でも有名らしく、アメリカで初めてのコンピュー し、学生実験の助手も院生のアルバイトでやっています。 ターなどが飾られていたりもしています。大学自体は、ア 研究室のほうも安く済みますし、学生のほうもよい働き口 イオワ州のエイムズ(Ames)という町にあります。人口の が学内にあって(特に留学生の場合は学内でしか働けないは 半分以上が大学関係者という大学の町です。 ずだったと思います)、双方にとって良い制度なのでしょう 私自身は、昨年の 8 月より食品科学科(Department of ね。留学生といって思い出しましたが、アジア系の留学生 Food Science)の食品製造の研究室で研究しています。研 が多く中国人、韓国人を良く見ます。また、中西部なので 究期間としては 2 年間または 3 年間ということで比較的じ 日本人はほとんどいないだろうと予想していたのですが、 っくりと研究できる時間をもらいました。現在の私のテー 20 ∼ 30 人程いて意外でした。それらの留学生の多くが卒業 マは「豆腐品質に影響を及ぼす大豆因子の調査」で現在実 後アメリカで働くつもりのようで、それらの学生が自分の 験条件の検討を行っています。乳業会社でありながらアメ 履歴・能力等を載せたホームページを開設し、就職活動を リカでは豆腐の製造・販売を行っているためこのテーマで しています。海外での生活はおろか海外旅行すらほとんど 研究しています。企業から派遣されている研究生であるた したことがなかったので、今回の留学生活では驚いたり、 めかもしれませんが、研究のほうはかなり自由にさせても 感心したりと色々と刺激を受けています。研究のほうはこ らっていて、自分をしっかりと持っていないとただ時間だ れから本格的に動き出しますが、頑張っていきたいと思っ けが流れていってしまうなと自分を戒めています。 ています。 アイオワ州立大学の農学部は先に述べました通り産学協 同がかなり進んでおり、大学であるのにもかかわらず、企 業が持っているような製品試作室があり実製造の一歩手前 以上取り止めのない文書になってしまいましたが、これ で失礼させていただきます。 現所属(アメリカでの所属) のスケールまで実験をすることが出来ます。それらの研究 Iowa State University 施設を利用して農家の人が作った穀物が製品になったとき Department of Food Science and Human Nutrition の品質の評価をしたりしています。 電話 +1-515-294-3821 研究室のスタッフとしては教授と助手が一人というのが この学科の一般的なスタイルのようです。その他に院生お よび実験助手的な学部生がいます。院生は日本の院生と同 メールアドレス [email protected] 7 共通機器紹介 核磁気共鳴装置(NMR) 1980 年、応用微生物研究所(現在の分子細胞生物学研究 NMR スペクトルを示すが、このような測定を組み合わせ 所)に超電導磁石を利用した 400 MHz の NMR が国内では ることにより、複雑な有機化合物の構造を決定することが じめて導入された。多くの研究機関で 100 MHz の NMR が できる。 主力機であった時代に投入されたこの装置は、天然有機化 また、最近では原子核間の距離に依存する NOE を測定す 合物の構造解析に圧倒的な威力を発揮し、当研究所は一躍、 ることにより、化合物の立体構造を推定できるようになっ 日本の天然物有機化学研究の中心と目されるようになっ てきた。表紙コラムの図は NOE とカップリング情報から得 た。現在の装置はその2代目にあたり、500 MHz にグレー られる原子間距離と角度を入力し、コンピュータ計算によ ドアップされたのみならず、多くの複雑な測定が自動化さ り算出した抗生物質 Apoptolidin の立体構造である。このよ れ、様々な2次元 NMR の測定が可能になっている。また、 うな手法はポリペプチドにも適用することができ、タンパ 1995 年には、もう1機の 500 MHz NMR 装置が導入され、 ク質の立体構造解析に用いられている。NMR を利用した 現在は高速液体クロマトグラフィーと連結した LC-NMR と 立体構造解析は X 線結晶解析と異なり、結晶化の必要がな して天然有機化合物の成分分析に活躍している。 く、溶液中の立体構造が解析できるため、X 線解析に替わ NMR は、強力な磁場中において回転している原子核に 対して電磁波を照射し、共鳴によって生じる電磁波の吸収 を観測するものである。共鳴周波数は磁場の強さに比例す るため、磁石の強さを水素原子核(プロトン)の共鳴周波 数で 500 MHz というように表している。観測する原子核は、 有機化合物中に普遍的に存在する水素と炭素が主である。 分子中の各原子核の存在状態によって共鳴周波数がわずか に異なるため、それぞれの原子核に対応する吸収ピークが スペクトル上で分離して観測される。それに加えて、3結 合以内に存在する原子核間にはカップリングが観測される ため、分子中の原子のつながりを解析することができる。 図1にはプロトン間のカップリングを測定した2次元 図1.Apoptolidin のプロトン相関スペクトル る方法として注目されている。 (生理活性物質研究分野 早川洋一) 8 < Welcome to IMCB > − 新人紹介− <事務部> 藤枝 優一 入手 藤雄 畠山 良一 松尾 美鶴 庶務主任(東洋文化研究所) 用度掛長(地震研究所) 庶務掛主任(研究協力部) 研究助成掛主任(国立婦人教育会館) ( )内は以前の所属です。 <細胞合成・人工細胞研究分野> 関根 圭輔 助手(分生研 分子系統) 荘 敦尭 博士研究員(東北大学(台湾出身) ) 須田 芳國 理学系研究科 M 1(電気通産大学 電子物性工学科) 野中 秀紀 理学系研究科 M 1(東京工業大学 生命理工学部) 小宮 友香 技術補佐員(日本女子大学) 写真:左から 入手、藤枝、畠山、松尾 <細胞構造研究分野> 原 崇 生命科学研究科 D 1(東京理科大学 理工学研究科) 菖蒲田 章人 生命科学研究科 M 1(東京工業大学 生命理工学部) 加藤 佳久 生命科学研究科 M 1(東京理科大学 理学部) 倉田 晃文 生命科学研究科 M 1(東京理科大学 理学部) 写真:後列左から 須田、荘 前列左から 関根、小宮、野中 <分子遺伝・育種研究分野> 華岡 光正 農学生命科学研究科 D1(京都大学 人間・環境学研究科) 高野 敦司 農学生命科学研究科 M1(農学部) 谷川 亮平 農学生命科学研究科 M1(東京工業大学 生命理工学部) 写真:後列左から 倉田、原 前列左から 加藤、菖蒲田 写真:左から 華岡、谷川、高野 <細胞機能研究分野> 山田(川合)真紀 助手(日本原子力研究所 先端基礎研究センター) 金 敬旻 特別研究員(慶北大学校 農業科学技術研究所) 黄 継栄 特別研究員(農学生命科学研究科) 李 淨瓊 農学生命科学研究科 D 1(大邱暁星カトリック大学) 金 麗華 理学系研究科 M 1(北京大学 生物工学系) Das Avijit 外国人研究員(Central Rice Research Institute, インド) <分子系統研究分野> 高田 伊知郎 農学生命科学研究科 D 3:依託(京都大学 ウィルス研) 竹澤 慎一郎 農学生命科学研究科 D 1(京都大学 ウィルス研) 金 美善 農学生命科学研究科 M 1(高麗大学 生命科学部) 吉村 公宏 農学生命科学研究科 M 1(農学部) 大竹 史明 農学生命科学研究科 M 1(理学部) 中村 貴 農学生命科学研究科 M 1(東京農業大学 農学部) 福田 亨 研究員:戦略的基礎研究推進事業(東京農業大学 農学部) 過足 芳子 研究員:戦略的基礎研究推進事業(東京農業大学 農学研究科) 山本 泰司 受託研究員(大鵬薬品工業株式会社) 写真:後列左から Avijit、金敬旻、黄 前列左から 金麗華、山田(川合) <細胞工学研究分野> 鎌倉 幸子 機関研究員(京都大学 理学系研究科) 砂澤 裕子 工学系研究科 D 1(東北大学 農学系研究科) 樋口 麻衣子 工学系研究科 D 1(工学系研究科) 鶴田 文憲 工学系研究科 D 1(持田製薬(株)1 月より技術補佐員) 森 靖典 新領域創成科学研究科 M 2(新領域創成科学研究科) 岸下 昇平 工学系研究科 M 1(大阪市立大学 理学部) 齊藤 剛志 工学系研究科 M 1(桐蔭横浜大学 工学部) 写真:後列左から 高田、福田、中村、吉村 中列左から 竹澤、大竹、山本 前列左から 過足、金 <染色体分子構造解析研究分野> 小沢 豊彦 理学系研究科 M 1(東京工業大学) 原 桃世 事務補佐員 写真:左から 小沢、原 写真:後列左から 鶴田、森、岸下 中列左から 樋口、斎藤 前列左から 砂澤、鎌倉 9 <生体超高分子研究分野> 堀江 美頼 農学生命科学研究科 M 1(明治大学 農学部) 横田 一成 農学生命科学研究科 M 1(明治大学 農学部) <生理活性物質研究分野> 朴 海龍 農学生命科学研究科 D 1(韓国から留学) 加藤 大暢 農学生命科学研究科 M 1(東京農工大学) 霜越 俊江 事務補佐員(秘書) 写真:左から 堀江、横田 写真:左から 朴、霜越、加藤 <分子情報研究分野> 森口 徹生 助手(京都大学 生命科学研究科) 矢花(篠崎)聡子 博士研究員(理学系研究科) 金 池 農学生命科学研究科 D 1(農学生命化学研究科) 地神 貴史 農学生命科学研究科 M 1(東京理科大学 理工学部) 佐藤 梨奈 理学系研究科 M 1(理学部) 岡部 敏夫 研究生(群馬大学 医学部) 神保 猛 研究生(第一製薬(株)創薬第四研究所より派遣) 加藤 みのり 事務補佐員(法律事務所勤務) <分子生物活性研究分野> 石田 敦士 薬学研究科 M 1(薬学部) フィリペ・オリヴィエ 研究生(リール大学・リール大学病院 INSERM (フランス)) 金谷 安紀子 薬学部 4年(薬学部) 南条 雅裕 薬学部 4年(薬学部) 写真:後列左から オリヴィエ、石田 前列左から 金谷、南条 写真:後列左から 森口、岡部、神保、金 前列左から 矢花(篠崎) 、佐藤、加藤、地神 <生体有機化学研究分野> 高橋 裕保 博士研究員:医薬品機構(東北薬科大学 薬学研究科) 辻 一徳 博士研究員:医薬品機構(九州大学 薬学系研究科) 加来田 博貴 薬学系研究科 D1(薬学部) 喜多 哲也 薬学部 4 年(薬学部) <微生物微細藻類研究分野> 丁 林賢 農学生命科学研究科 D 1(信州大学 工学系研究科) 徐 必守 農学生命科学研究科 D 1(釜山大学自然科学大学 一般大学院) 石 濱海 農学生命科学研究科 M 1(華東理工大学 工学部) 安 光得 研究生(東京農業大学 農学研究科) 石川 岳 受託研究員(持田製薬株式会社) 宇波 榮子 技術補佐員(分生研助手を定年退職) 写真:左から 加来田、喜多、高橋 写真:後列左から 徐、安、石川 前列左から 石、宇波、丁 <生物物理研究分野> 松本 宏樹 農学生命科学研究科 M 1(東京工業大学 生命理工学部) 太田 与志津 農学生命科学研究科 M 1(東京理科大学 理学部) <蛋白質解析研究分野> 小川 治夫 助手(医学系研究科 助手) 写真:松本 10 次代のホープ達 −分生研卒業生進路紹介 平成 12 年 3 月に博士・修士課程を修了された方々の進路 <分子情報研究分野> をご紹介します。(ただし、同一研究科進学者を除く) 博士卒 <細胞構造研究分野> 修士卒 河原康一(理学系研究科):吉富製薬 穴井憲一(農学生命科学研究科):藤沢薬品 修士卒 黒田敏朗(農学生命科学研究科):(株)ノエビア 森下 剛(理学系研究科):協和発酵 竹前和久(農学生命科学研究科):興和(株) <生体有機化学研究分野> 博士卒 修士卒 清水久代(農学生命科学研究科): (財)日本産業技術振興協会 研究職 神谷 正(薬学系研究科):興和(株) 高山久恵(共立薬大修士):グレラン製薬(株) <細胞機能研究分野> <生物物理研究分野> 修士卒 松林聡子(理学系研究科):日清製粉(株)食品開発研究所 博士卒 久米川宣一(農学生命科学研究科):かずさ DNA 研究所 <細胞合成・人工細胞研究分野> 野間健一(農学生命科学研究科):日本学術振興会 特別研究員 修士卒 中野和宏(理学系研究科):大正製薬(株)創薬研究所 <生理活性物質> <分子遺伝・育種研究分野> 博士卒 小林誠司(農学生命科学研究科): 博士卒 米国スタンフォード大 ポスドク 藤原 誠(農学生命科学研究科): 理化学研究所 基礎科学特別研究員 修士卒 葉室美香(農学生命科学研究科):フクダ電子(株) 大沼 みお(農学生命科学研究科): 東京薬科大学生命科学部細胞機能学研究室 研究室嘱託職員 <分子生物活性研究分野> <分子系統研究分野> 修士卒 輿水律子(薬学系研究科):(株)ノエビア 博士卒 関根圭輔(農学生命科学研究科):細胞合成・人工細胞 <微生物微細藻類研究分野> 研究分野 助手 博士卒 舛廣善和(農学生命科学研究科): 科学技術振興事業団研究員(分子系統研究分野 派遣研究員) 内野佳仁(農学生命科学研究科):(財)発酵研究所 修士卒 <生体超高分子研究分野> 石田達也(農学生命科学研究科):工業技術院生命工学 工業技術研究所 特許微生物寄託センター 博士研究員 博士卒 小池 恒(農学生命科学研究科):明治薬科大学 助手 高橋展弘(農学生命科学研究科):米国 NIH ポスドク 黄 湘萍(農学生命科学研究科): 米国オクラホマ大 ポスドク 修士卒 入江章太(農学生命科学研究科):中外製薬(株) 柿沼良美(農学生命科学研究科): 科学技術振興事業団 研究技術員 周防 諭(農学生命科学研究科): 総合文化研究科 博士課程進学 小倉 淳(農学生命科学研究科): 総合研究大学院大学 博士課程進学 11 平成 12 年度科学研究費補助金採択一覧 以下は平成 12 年度科学研究費補助金の分生研における採択者(代表者氏名と研究題目、本年度配分予算額)です。 ○特定領域研究(A) (1) プロテアソーム蛋白分解系を標的とした固形がんの抗がん剤 宮島 篤 教授 細胞合成・人工細胞研究分野 造血細胞のシグナル伝達 耐性克服法の開発 52,600 千円 3,300 千円 柳澤 純 助手 分子系統研究分野 BRCA 1とエストロゲンレセプターのクロストークの分子メ ○特定領域研究(A) (2) カニズムの解析 豊島 近 教授 蛋白質解析研究分野 Ca-ATPase の電子線・X線結晶解析 4,000 千円 加藤茂明 教授 分子系統研究分野 7,700 千円 核内レセプター転写制御の分子メカニズムの解明 22,000 千円 葛原 隆 助手 分子発生分化研究分野 クロマチン構造変換に関する ATPase および HAT に関する解析 3,200 千円 3,100 千円 3,500 千円 豊島 近 教授 蛋白質解析研究分野 多羽田哲也 教授 染色体分子構造解析研究分野 ショウジョウバエのパターン形成遺伝子 徳田 元 教授 細胞構造研究分野 蛋白質の膜透過・局在化システムの構造と分子認識機構 田中 寛 助教授 分子遺伝・育種研究分野 高等植物葉緑体 RNA ポリメラーゼシグマ因子の研究 ○基盤研究(A) (2) 2,100 千円 イオン能動輸送機構の結晶学的研究 6,700 千円 多羽田哲也 教授 染色体分子構造解析研究分野 ショウジョウバエの位置情報遺伝子ネットワーク 2,300 千円 中迫雅由 講師 蛋白質解析研究分野 西山賢一 助手 細胞構造研究分野 大腸菌 secG-leuU オペロンの発現調節に関する研究 ○基盤研究(B) (1) 1,700 千円 極低温下でのX線、中性子蛋白質結晶解析のための結晶冷却 装置の研究開発 葛山智久 助手 生理活性物質研究分野 2,500 千円 テルペン−ポリケタイド融合物質ナフテルピンの生合成 1,900 千円 トランスポゾン IS3 と Tn3 の転移と制御機構 ○基盤研究(B) (2) 橋本祐一 教授 生体有機化学研究分野 大坪栄一 教授 生物物理研究分野 8,600 千円 対核内レセプターの活性分子の創製 2,900 千円 加藤茂明 教授 分子系統研究分野 脂溶性生理活性物質をリガンドとする新規核内レセプタ−の ○特定領域研究(C) (1) 検索 鶴尾 隆 教授 分子生物活性研究分野 がん研究の総合的推進に関する研究 739,000 千円 6,900 千円 秋山 徹 教授 分子情報研究分野 NMDA 受容体と癌抑制遺伝子産物 APC および DLG ファミリ ーの複合体形成の意義 ○特定領域研究(C) (2) 田中 寛 助教授 分子遺伝・育種研究分野 増山典久 助手 細胞工学研究分野 TGF-βファミリーによるガン抑制機構の解析 3,100 千円 モデル生物を用いた癌抑制遺伝子産物 PTEN の機能解析 3,700 千円 55,000 千円 11,000 千円 生存シグナル伝達に関わる AKT のカスパーゼによる分解とそ 3,000 千円 がん細胞のアポトーシス抵抗性を標的とする抗がん物質の探索 8,000 千円 キナーゼを介した細胞死誘導機構の解析 新規パターン形成遺伝子の同定と機能解析 5,700 千円 9,100 千円 12,100 千円 加藤茂明 教授 分子系統研究分野 合物評価系の構築 6,500 千円 後藤由季子 助教授 細胞工学研究分野 神経変性疾患治療薬の開発 内藤幹彦 助教授 動植物培養細胞研究分野 5,400 千円 5,200 千円 ○基盤研究(C) (2) 橋本祐一 教授 生体有機化学研究分野 サリドマイドの構造展開による、がん増悪因子を阻害する医 冨田章弘 助手 分子生物活性研究分野 細胞死による植物生存戦略の分子遺伝学的解析 核内ステロイドレセプターによる性ステロイドホルモン様化 早川洋一 助教授 生理活性物質研究分野 薬リードの創製 4,200 千円 多羽田哲也 教授 染色体分子構造解析研究分野 藤田直也 助手 分子生物活性研究分野 FLIP によるアポトーシス制御機構の解析 植物細胞の分化と増殖特性に関する共同研究 後藤由季子 助教授 細胞工学研究分野 後藤由季子 助教授 細胞工学研究分野 の活性調節機構の解析 4,800 千円 高橋秀夫 教授 分子遺伝・育種研究分野 内宮博文 教授 細胞機能研究分野 秋山 徹 教授 分子情報研究分野 蛋白質リン酸化の異常と細胞増殖制御の破綻 ゲノム情報を最大限に活用したシアノバクテリアグループ 2 シグマ因子群の機能解析 前田達哉 助教授 生体超高分子研究分野 細胞周期の制御異常 5,400 千円 4,700 千円 平田愛子 助手 電子顕微鏡室 酵母細胞における胞子形成過程及び各種変異株の超微細構造 的三次元構築による解析 900 千円 12 と治療への応用 内藤幹彦 助教授 動植物培養細胞研究分野 ヘビ毒由来アポトーシス誘導因子アポキシン I の分子機能及び 生合成機構 1,800 千円 血液細胞の分化とその運命付けのケミカルコントロール 1,300 千円 植物ゲノム上に現れる gypsy 型レトロランスポゾンの多様性 2,200 千円 松山伸一 助教授 細胞構造研究分野 900 千円 小口慶子 学振特別研究員 分子遺伝・育種研究分野 高等植物におけるテロメラーゼの分子解析 900 千円 脳の性差を規定する遺伝子群の検索 900 千円 野間健一 学振特別研究員 生物物理研究分野 イネの LINE、RILN1 の発現と転移メカニズムの解析 外膜リポ蛋白質のみを選別して膜から遊離させる ABC トラン 2,000 千円 柳澤 純 助手 分子系統研究分野 900 千円 西川明日香 学振特別研究員 生体有機化学研究分野 細胞応答を誘導する生理活性イノシトールリン脂質とその代 謝酵素阻害剤の合成 脂溶性ホルモンによるクロマチン構造変換の分子メカニズム の解析 Mv1Lu 細胞を用いた TGF-βレセプター刺激作用を有する物質 佐藤隆史 学振特別研究員 分子系統研究分野 大坪久子 講師 生物物理研究分野 スポーターの機能解析 升岡優太 学振特別研究員 生理活性物質研究分野 の探索 小磯邦子 助手 生体有機化学研究分野 と局在性に関する研究 900 千円 2,000 千円 900 千円 木村 暁 学振特別研究員 分子発生分化研究分野 遺伝子発現抑制状態をモデルとした新しい転写調節機構の 解明 ○萌芽的研究 日向亮介 学振特別研究員 分子発生分化研究分野 橋本祐一 教授 生体有機化学研究分野 蛋白質構造変換による核内反応の制御機構の解析 ホルモンとしてのサリドマイド−細胞検定を指標にした構造 展開 900 千円 プラスチド分化における核と葉緑体間のクロストーク 葉緑 植物細胞に特徴的な分裂期を制御する細胞周期関連因子に関 イネのレトロエレメント、p-SINE1 の発現制御の分子機構と、 1,000 千円 金丸研吾 助手 分子遺伝・育種研究分野 する解析 2種類のモルフォゲンからの位置情報を統合する機構 700 千円 梅田正明 助教授 細胞機能研究分野 1,000 千円 中山 恒 学振特別研究員 細胞合成・人工細胞研究分野 マウス胎仔造血発生のサイトカインによる制御機構の解析 1,000 千円 植物の細胞周期関連因子による細胞質分裂の制御機構 1,000 千円 秦 勝志 学振特別研究員 生体超高分子研究分野 葛山智久 助手 生理活性物質研究分野 新規テルペン生合成経路、非メバロン酸経路の解明、及びそ 700 千円 800 千円 下等菌類の系統分類学的研究 1,000 千円 牛田奈緒子 学振特別研究員 染色体分子構造解析研究分野 1,100 千円 ショウジョウバエ翅パターン形成に関与する新規遺伝子の探 索とその機能解析 西山賢一 助手 細胞構造研究分野 分泌蛋白質膜透過反応に関与する膜内在性新因子の精製と機 1,300 千円 1,000 千円 余 茘華 学振外国人特別研究員(指導教官:内宮博文 教授) 細胞機能研究分野 イネのメタロチオネイン遺伝子発現の制御機構及び植物生長 田村勝徳 助手 分子遺伝・育種研究分野 分裂細胞の維持機構におけるテロメアの機能 900 千円 田辺雄彦 学振特別研究員 微生物微細藻類研究分野 関根靖彦 助手 生物物理研究分野 能解析 1,000 千円 枡田和宏 学振特別研究員 細胞構造研究分野 800 千円 藤田直也 助手 分子生物活性研究分野 大腸菌の挿入因子 IS の転移とその制御の分子機構 胃特異的カルパインの生理機能の解析 大腸菌リポ蛋白質の内膜遊離因子 LolCDE の構造と機能 冨田章弘 助手 分子生物活性研究分野 骨血管内皮細胞による骨吸収誘導機構 1,000 千円 谷本 拓 学振特別研究員 染色体分子構造解析研究分野 高等植物葉緑体構成因子の遺伝子発現における核支配と逐次性 ストレスによるプロテアソーム核内蓄積の機序解析 1,000 千円 山口雅利 学振特別研究員 細胞機能研究分野 土本 卓 助手 生物物理研究分野 の生合成遺伝子の取得 900 千円 華岡光正 学振特別研究員 分子遺伝・育種研究分野 体形質転換系を用いて ○奨励研究(A) 転移様式の研究 900 千円 700 千円 における役割の解析 1,000 千円 黄 継栄 学振外国人特別研究員(指導教官:内宮博文 教授) 常泉和秀 助手 染色体分子構造解析研究分野 モルフォゲンによる形態形成機構に内包される抑制機構の発 細胞機能研究分野 現調節およびその役割 植物の嫌気ストレスの分子的研究 1,100 千円 900 千円 張 麗英 学振外国人特別研究員(指導教官:鶴尾 隆 教授) 分子生物活性研究分野 ○特別研究員奨励費 骨代謝制御における骨血管内皮細胞の役割 永森收志 学振特別研究員 細胞構造研究分野 蛋白質膜透過に共役する SecG の膜内配向性反転に伴った因子 間相互作用の変化 900 千円 小玉信之 学振特別研究員 分子生物活性研究分野 肺高転移性結腸癌細胞膜上に発現する血小板凝集因子の解析 900 千円 金 敬旻 学振外国人特別研究員(指導教官:内宮博文 教授) 細胞機能研究分野 イネのオゾン応答遺伝子の解析 900 千円 13 平成 12 年度受託研究・共同研究一覧(平成 12 年 6 月 1 日現在) 〈受託研究〉 ◆分子系統・加藤茂明・教授 科学技術振興事業団(戦略的基礎研究推進事業) ◆分子発生分化・堀越雅美・助教授 科学技術振興事業団 ヌクレオソーム構造変換因子群の 機能解析 3,000 千円 ◆分子系統・加藤茂明・教授 7,700 千円 ◆細胞合成・人工細胞・宮島 篤・教授 科学技術振興事業団(戦略的基礎研究推進事業) 中外製薬株式会社 ビタミン D による骨形成の作用メカ ニズムの解明 4,000 千円 ◆生体有機化学・橋本祐一・教授 サイトカインによる造血細胞の増殖分化の制御 1,000 千円 ◆分子遺伝・育種・田中 寛・助教授 科学技術振興事業団(戦略的基礎研究推進事業) 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(保険医療分 野における基礎研究推進事業) 大腸菌転写装置の機能制御機構 990 千円 ◆細胞構造・徳田 元・教授 コンピュータ分子設計法の高度化とその有効性の実験的 (核内レセプターリガンドの設計による)検証 科学技術振興事業団(戦略的基礎研究推進事業) 分泌蛋白質の膜輸送と膜局在化の分子機構 (分担題目:平成 12 年度 核内レセプターおよび細胞内 情報伝達系リガンドの設計、合成および活性評価) 15,800 千円 ◆細胞工学・後藤由季子・助教授 科学技術振興事業団(さきがけ研究) 核内レセプター及びその共役因子の性状の解析 2,420 千円 〈民間等との共同研究〉 ◆分子情報研究分野・教授・秋山 徹 バイオテクノロジー開発研究組合 ゲノムインフォマティクス技術の開発:ゲノムサブトラ 神経細胞の生存 シグナル伝達機構の解析 500 千円 クションを用いたゲノム DNA 変異の高速解析技術の確立 と応用に関する研究 420 千円(共同研究員受入のみ) 〈平成12年度奨学寄附金受入状況〉 (平成 12 年 5 月現在) ◆生理活性物質・早川洋一・助教授 日本学術振興会(未来開拓学術研究推進事業) 総件数 8 件 活性天然物の生産とその分子機構解析および生合成工学 総額 12,400,000 円(内 500 万円を超えるものはなし) への応用 86,000 千円 ◆染色体分子構造解析・多羽田哲也・教授 日本学術振興会(未来開拓学術研究推進事業) モルフォゲンの作用機構(発生におけるパターン形成機 構) 23,001 千円 お店探訪 マミ−ズ マミーズのパイは、その名のとおりお母さんの手作りパイです。仕 入れから生地造りまで一切を切り盛りする横川さんが、20年前、お 子さんが小さかった頃焼いていたアップルパイそのままのレシピで造 っています。まずはひと口。バターが溶けてそのあとに出来た空洞と サクッとした生地の層。中身は、長野の知り合いの農家から千秋、紅 玉、ふじというように、その時季に一番美味しいりんごを取り寄せて います。美味しさの秘密はもう一つ。パイ生地を引き立て、りんごの 邪魔にならないものといくつも試し、生まれたのがカスタードクリー ムだそうです。甘く煮詰めたりんごと口の中でふわっと溶けるクリー ムの抜群の相性を是非お試し下さい。アップルパイにはもう一種類、 薄切りりんごを生地の上にのせてた焼いたものもあります。りんごの 食感をより好む方へは、こちらをお勧めします。これからの季節、旬 の味にこだわったピーチパイも登場。焼き立て熱々を届けて欲しいと いう注文にも応えてくれます。まずは緑の旗を目印に足を運んでみて 下さい。 住所 東京都文京区西片 1-2-2 TEL ・ FAX 03-3812-0042 営業時間 AM9:00 ∼ PM7:00 細胞機能研究分野・藤島久見子 14 ○平成12年4月16日付 掲示板 〈知ってネット〉 <転入> 森口徹生 助手(分子情報研究分野):新規採用 研究助成等公募(2000.5.24 現在) (職員の異動について) 以下のとおり異動がありましたのでお知らせします。 詳細は研究助成掛へお問い合わせ下さい。 TEL03-5841-7803 / E-mail:[email protected] 最新の情報は、ホームページで公開しております。 ○平成12年3月31日付 http://imcbns.iam.u-tokyo.ac.jp/office/keijiban.html <停(定)年退職> 鈴木紘一 教授(生体超高分子研究分野) 瀬戸治男 教授(生理活性物質研究分野) 第17回(平成12年度)井上研究奨励費受賞候補者の推薦に ついて(財団法人井上科学振興財団)募集先 2000.9.20 締切 宇波榮子 助手(微生物微細藻類研究分野) 長岡性真 庶務主任/研究助成掛長(併) (事務部) 安倍フェローシップ奨学研究者募集について(安倍フェローシ ップ)募集先 2000.9.1 締切 ○平成12年4月1日付 第27回(平成12年度)岩谷科学技術研究助成金候補者推薦 ご依頼について(財団法人岩谷直治記念財団)募集先 2000.7.31 <転出> 袖岡幹子 助教授(生体有機化学研究分野): 東北大学反応化学研究所教授へ 川原裕之 助手(生体超高分子研究分野): 北海道大学大学院薬学研究科助手へ 吉住義男 用度掛長(事務部): 教養学部等事務部経理課経理掛長へ 教官公募(2000.5.24 現在) 詳細は研究助成掛へお問い合わせ下さい。 TEL03-5841-7803 / E-mail:[email protected] 最新の情報は、ホームページで公開しております。 http://imcbns.iam.u-tokyo.ac.jp/office/keijiban.html 佐野智典 研究助成掛主任(事務部):経済学部会計掛主任へ <転入> 東京農工大学助教授1名(農学部 分子生命化学講座 生物化 関根圭輔 助手(細胞合成・人工細胞研究分野):新規採用 学教育研究分野)2000.9.1 締切 武山健一 助手(分子系統研究分野):新規採用 藤枝優一 庶務主任/研究助成掛長(併) (事務部): 慶応義塾大学教授1名(医学部)2000.7.31 締切 東洋文化研究所総務主任/研究協力掛長(併)より 入手藤雄 用度掛長(事務部):地震研究所管理掛長より 松尾美鶴 研究助成掛主任(事務部): 国立婦人教育会館事業課事業係企画主任より Tea Time−編集後記 6年ぶりに大学のキャンパスの雰囲気を味わっています。まだまだ ームページを開設しいろいろな情報を発信している。私も分生研の広 戸惑うことが多く毎日が新鮮です。分生研ニュースの編集委員の大役 報誌「分生研ニュース」に携わっているのでイベント主催者の気持ち を仰せつかりましたが、皆さんと力を合わせて頑張っていきたいと思 が分からないわけではないが、子供のためではなく広報のためのイベ いますので、どうぞよろしくお願いいたします。(研究助成掛・松尾 ントも少なからず開催されている。また、親子のふれあい、地域との 美鶴) 交流のためと称するイベントにしても我が家には多すぎるのである。 私には保育園と小学校に通う3人の娘がいる。小学生の2人は放課 先日、次女が一輪車クラブに入った。『おとうさん、おかあさんに 後学童保育のお世話になり、週末にはバスケットボールを楽しんでい 長生きしてほしかったら、もうこれ以上なにもしないでくれ!』と心 る。このため順番だからと回ってくる役員を断るわけにもいかず、現 の中で叫ぶ親の声は当分の間娘たちに届きそうもない。(細胞構造研 在いくつかのお役目をおおせつかっており、平日は家内が、週末は私 究分野・松山伸一) が役員活動をしている。さらに週末ともなれば毎週のようになにがし 分生研ニュース第11号 かのイベントが開催され、早起きして参加する。主催者のご厚意には 2000年7月1日号 感謝しているが、はっきり言って私はダウン寸前だ。週末の雨のうれ 発行 東京大学分子細胞生物学研究所 しいことこの上もない。先月、小学校の校長から「子供の健全育成の 編集 分生研ニュース編集委員会(松山伸一、松尾美鶴、前田達哉、大坪久子、 ために学校や PTA で行ってほしい行事や活動は何か」を問うアンケー 野村博美、梅田千景、小野口幸雄) トが来た。私は「イベントで子供は育たない。現状の行事と活動で十 お問い合わせ先 編集委員長 松山伸一 分。これ以上なにもしない勇気を!」と回答したが、後日配布された 電話 03-5841-7831 アンケート結果を見て私の訴えが届かなかったことを確認した。 保育園、小学校をはじめ各種団体も広報の時代と無縁ではなく、ホ 電子メール [email protected] 分生研 URL http//www.iam.u-tokyo.ac.jp 15 研究紹介 カルシウム依存性プロテアーゼ・カルパイン の活性制御と機能 アミノ酸生合成経路と進化 微生物微細藻類研究分野 西田 洋巳 生体超高分子研究分野 冨岡 茂雄 すべての原核生物はリシンをアスパラギン プロテアーゼの生体制御での積極的な役割 酸よりジアミノピメリン酸を経由し生合成 が理解されつつある。私は、動物の細胞質 すると信じられてきたが、細菌 Thermus 内カルシウム依存性プロテアーゼ・カルパ はリシンをオキソグルタル酸よりアミノア インのカルシウムによる生体制御系での役 ジピン酸を経由し生合成することが明らか 割を、活性制御と基質の検索を通じて検討 となった。リシン要求変異株の取得に端を している。カルパインは多数の相同蛋白質 発し、本細菌のリシン生合成関連遺伝子ク を擁してファミリーを成すが、対象とする ラスターが明らかとなった。現在のところ、本遺伝子クラスタ のは脊椎動物の「普遍型カルパイン」である。最も多量に存在 ーを有する生物は唯一古細菌の Pyrococcus だけある。この遺伝 する分子種で、ヘテロ二量体を成し、全ての細胞にアイソザイ 子クラスターを構成する1つ1つの遺伝子に関する分子進化学 ムが普通は2種類発現する。この分子種は菌類や線虫には見つ 的解析により、本リシン生合成経路の前半の5ステップはロイ からず、カエル・トリ・哺乳類間でも性質の差が大きかった。 シン生合成経路と TCA 回路の一部に進化的な共通起源を有し、 またこれをノックアウトすると ES 細胞は影響を受けないがマ さらに後半の5ステップはアルギニン生合成経路と共通起源を ウスの胚発生は後期で停止したと言う。従ってこの分子種は進 有することを明らかにした。生命の起源は高温環境下に生じた 化上新しく、細胞の生育自体にではなく高次の体制の制御に関 と考えられている。現在高温環境に生育している微生物の中に 与すると思われる。酵素活性の制御についての私たちの結果を は初期の微生物が有した機構の一部を持っているものがいるか 図に示す。カルシウムイオンで可逆的に解離・活性化され、活 もしれない。Thermus は 70 ℃、Pyrococcus は 100 ℃を至適生育 性型酵素は自己消化や阻害因子により不活化する。不活化は経 温度としている。進化的に初期の微生物は Thermus 型リシン生 路が多く、能動的な活性抑制機構と見られる。なお、活性化は 合成機構を持っており、さらに高温環境から低温環境へ進出す 細胞質内のカルシウム濃度変化だけで説明し切れず、更に研究 る際に酵素の基質特異性を要求され、それに応じるように遺伝 が必要である。機能の研究はこれからだが、上の知見をもとに、 子重複が生じたのではないかと考えている。実際、Pyrococcus 基質蛋白質とその切断様式の同定から解析を進めたい。カルシ horikoshii はゲノムにこの遺伝子クラスター構成遺伝子のホモロ ウムによる生体制御の一端が明らかになれば、と思っている。 グを持たないにもかかわらず、生育にリシン、ロイシン、アル ギニンを要求しない。よって、この遺伝子クラスターはこれら Kitagaki, H., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 64 : 689, 2000 3つのアミノ酸生合成に関与し、1つ1つの遺伝子産物は複数 Lee, H-J., et al., Arch. Biochem. Biophys. 362 : 22, 1999 の基質を認識しているようである。この仕組みはアミノ酸生合 Kinbara, K., et al., Biochem. J. 335 : 589, 1998 成の進化を紐解くカギとなるだろう。 Nishida H et al. (1999) A prokaryotic gene cluster involved in synthesis of lysine through the amino adipate pathway: A key to the evolution of amino acid biosynthesis. Genome Research 9: 1175-1183 カルパインはカルシウムイオンにより可逆的に解離・活性化し、基質とカル パイン自身を消化する。部分消化したカルパインは更に分解されるか他成分 に阻害され、不活化する。この他に内在性阻害因子・カルパスタチンによる 阻害的制御がある。 16 研究 究最 最前 前線 線 研 脂質修飾された蛋白質を膜から遊離させる新 しい ABC トランスポーター 筋小胞体カルシウムポンプの結晶構造 豊島 近(蛋白質解析研究分野) 薬師寿治、桝田和宏、成田新一郎、松山伸一、徳田 元(細胞構造研究分野) Nature Cell Biol. 2 : 212-218(2000) Nature 405 : 647-655(2000) 大腸菌の細胞表層は、細胞質膜、外膜およびこの2つの膜に囲 筋小胞体カルシウム ATPase は P 型 ATPase を代表するカルシウ まれたペリプラズム空間から成っており、細胞質膜と外膜には ムポンプであり、生体のイオン環境の維持の為に極めて重要な N 末端のシステインが脂質で修飾されたリポ蛋白質が90種あ 役割を果たす P 型 ATPase 中比較的単純なものである。単一鎖か まり存在している。細胞質膜で修飾されて成熟体となったリポ ら成る分子量 11 万の膜蛋白質であるが、構造予測からは 10 本の 蛋白質はシステインの次のアミノ酸が選別シグナルとなって細 膜貫通ヘリックスを持ち、負の荷電を持つアミノ酸を有する 4 胞質膜に留まるものと外膜に輸送されるものに分別される。私 本の膜貫通ヘリックスが、カルシウム結合部位を構成すること たちは以前、外膜輸送シグナルを持つリポ蛋白質が ATP に依存 が、部位特異的変異から予想されてきた。 して細胞質膜から遊離し、ペリプラズム空間のキャリアー蛋白 直接的構造研究は、これ迄電子顕微鏡レベルにとどまっており、 質 LolA と複合体を形成して外膜に運ばれること、外膜受容体 カルシウム非存在下、バナジン酸存在下で形成されるチューブ LolB の働きでリポ蛋白質が外膜に組み込まれることを明らかに 状結晶と、高濃度(mM)カルシウム存在下で形成される三次元 していた。そして本論文で、リポ蛋白質の細胞質膜からの遊離 微結晶が知られていた。我々は三次元微結晶をX線結晶解析可 に関与する ATPase を膜再構成系を用いて同定した。この 能な大きさに迄成長させ、2 個のカルシウムを膜内の高親和性部 ATPase は膜サブユニット LolC、LolE と ATPase サブユニット 位に結合した状態の構造を 2.6 Å分解能で解くことが出来た。ま LolD から成る ABC トランスポーターの一種で、LolA 存在下で た、基質アナログである TNP-AMP の結合位置も直接同定でき 外膜輸送シグナルを持つリポ蛋白質のみを選択的に細胞質膜か た。さらに、上記チューブ状結晶からの密度図(8 Å分解能)と ら遊離させる。既知の ABC トランスポーターが膜を横断する物 の比較を行った結果、分子全体に非常に大きな構造変化が起こ 質輸送を行うのに対して、LolCDE は膜表面からの物質の遊離を ることがわかった。 触媒する新しいタイプの ABC トランスポーターである点が注目 されている。LolCDE は LolA、LolB と同様に大腸菌の生育に必 須で、これらのホモログはグラム陰性細菌に広く存在している ことから、Lol システムによるリポ蛋白質の輸送はグラム陰性細 菌に普遍的に備わっている重要な機能であると考えられる。な お、この成果は Science 誌上でも紹介された(287 : 2377 (2000))。
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