絶縁体内部電荷分布の測定

85℃85%環境下での
絶縁体内部電荷分布経時変化の測定技術
ファイブラボ 株式会社
デバイス部
河野 唯通 Email: [email protected]
表面実装から部品内蔵基板へ
従来からの表面実装から部品内蔵基板へ
基板は層状構造となり厚さ方向の絶縁性も重要
使用される絶縁層間フィルムはますます薄くなる
低電圧だが,電界は電力線並み!
高電圧電力ケーブル・機器の絶縁材料評価方法
絶縁材料評価方法として空間電荷の測定が重要とされた理由
空間電荷がたまると、均一であるべき
電界が歪む。これによって絶縁体の破
壊強度が大きく変わる可能性がある。
Copper
絶縁体中にある不純物の種類や量によっ
て空間電荷のたまりかたが異なるため、
空間電荷による材料の絶縁性評価や劣化
状態の推定ができる。
2007年 JPCA-ET01規格に追加された項目
1ページ2.2項エレクトロケミカルマイグレーションの説明に
「絶縁体中の中に存在するイオン性不純物が絶
縁劣化に寄与する場合を含む」
マイグレーションなしで,いきなり破壊する現象
がある。
これは内部のイオン性不純物が電極界面付近に蓄
積することによる電界強調が原因と考えられる。
絶縁材料内部の電荷分布の測定法
パルス静電応力(PEA)法
Pulsed ElectroAcoustic
Force F
Charge Q x Field E
出力信号の大きさが電荷量,信号の遅
れ時間が位置を表す,
圧電センサー
14
0.3mmPET EB照射 電荷分布
0.3mmPET
12
Ch arge de n sity[C/ m3 ]
試料
10
8
6
4
2
0
-2 0
50
100
150
200
250
300
-4
-6
position
16
15
標準 PEA 検出ユニット
(5ns, 50-600 V
at 400 Hz)
85℃度85%RH環境下での測定
85℃85%RH温湿度環境下でのPEA検出器の改良
1)温度特性のよいセンサーを使用
2)プリアンプの温度特性を配慮し試験機外に設置
アンプ部
恒温恒湿槽外に設置
検出部
恒温恒湿槽内に設置
85℃度85%RH環境下での空間電荷測定
測定サンプル
厚さ63μmのエポキシ系層間絶縁フィルム
配合比を変えて吸水率差があるA,B,Cサンプル
吸水率差は
A<B<C
同一硬化条件にて硬化
測定条件
85℃85%RH環境下で1時間放置後、10kV/mmの電界印加
電界印加後85℃85%RH環境下で空間電荷分布の経時変化を
測定
85℃度85%RH環境下での電荷分布経時変化
[A] 85℃85% 30hr 電荷分布
40
[C] 85℃85% 30Hr 電荷分布
40
20
0
-20
60
70
80
90
100
110
120
-40
-60
10min
10hr
30hr
position
-80
cathode
-100
-120
anode
0
-20
60
70
80
90
100
-40
-60
10min
-80
-100
cathode
10hr
position
吸水率差は
A<B<C
0
60
70
80
90
100
110
-40
-60
10min
-80
10hr
-100
-120
anode
30hr
-120
20
-20
110
[B] 85℃85% 30Hr 電荷分布
40
Charge density[C/m3]
Charge density[C/m3]
Charge density[C/m3]
20
cathode
30hr
position
120
印加電界 10kV/mm
anode
120
85℃度85%RH環境下での電界分布経時変化
10000
0
60
80
20000
10min
10hr
30hr
10000
100
120
-10000
-20000
-30000
-40000
Charge density[v/㎜]
20000
Charge density[v/㎜]
[C] 85℃85% 30Hr 電界分布
[A] 85℃85% 30Hr 電界分布
10min
10hr
30hr
0
60
80
100
120
-10000
-20000
-30000
-40000
cathode
-50000
anode
-60000
-50000
cathode
anode
-60000
position
position
[B] 85℃85% 30Hr 電界分布
20000
10min
10hr
30hr
Charge density[v/㎜]
10000
吸水率差は
A<B<C
0
60
80
100
120
-10000
-20000
印加電界 10kV/mm
-30000
-40000
-50000
cathode
anode
-60000
position
測定結果及び考察
結果
試料A,B,C,とも電界印加後時間経過とともに
cathode側に発生した誘導電荷が大きくなる
その度合いはC>B>Aの順に吸水率の大きな試料順と
なる。
考察
anodeより電荷注入がおこり、吸水率の大きい試料順
に電荷移動できるキャリアの発生が多く、cathode側
にヘテロチャージを生み誘導電荷が大きくなったと考
えられる。
まとめ
層間絶縁フィルムの空間電荷分布測定を分離タイプ
PEA装置を用いて85℃85%RH環境下での測定を行い空
間電荷の経時変化を確認できた。
本測定に用いた技術の一部は、情報通信研究機構の
研究成果展開支援制度により技術移管され実施した。
福永 香, 岡本 健次, 前野 恭
プリント配線板用絶縁材料の空間電荷挙動と内部電界分布の観測
エレクトロニクス実装学会誌, Vol. 7, No. 7, pp. 635-638, Nov. 2004
内部に電荷がない均一な電界分布
PMMA
内部電荷により不均一な電界分布
エポキシ PET
80μ 30μ
電荷サンド
コンデンサ
Q=CV
(0.2 mm PS, 2 kV)
with Dr K. Fukunaga, NICT
EB照射により内部に電荷が存在する測定例 1
14
0.3mmPET EB照射 電荷分布
0.3mmPET
Charge density[C/m3]
12
サンプル:
0.3mm PET板にEB照射し内部
にマイナス電荷を注入
10
8
6
4
2
0
-2 0
50
100
150
200
250
300
-4
-6
position
0.3mmPET EB照射 電界分布
0.3mmPET
8000
electric potential[V]
Electric Field[V/㎜]
4000
-200
2000
0
50
100
150
-400
0
50
100
150
200
250
300
-600
-800
-4000
-1000
-6000
-8000
0.3mmPET
0
6000
-2000 0
0.3mmPET EB照射 電位分布
200
position
-1200
position
200
250
300
EB照射により内部に電荷が存在する測定例 2
経 時 変 化 B W1 A 電 荷 分 布
サンプル:
0.3mm PET板にEB照射したサ
ンプルの初期・2日後・8日後
の電荷分布の経時変化
BW1A 1104
BW1A 1106
BW1A 1113
12
10
8
6
4
2
0
0
50
100
150
200
250
300
-2
経 時 変 化 B W 1 A 2 Kv 電 荷 分 布
-4
12
BW1A 1104
BW1A 1106
BW1A 1113
-6
10
8
6
4
2
0
0
-2
-4
-6
50
100
150
200
250
300
高電界によるサンプルへの電荷注入の測定例
サンプル:0.073mmLDPEに
5kV印加し1min間隔での空間
電荷の経時変化
LDPE Charg Distribution[C/m3]
60
40
20
B0min
B1min
B2min
B3min
B4min
B5min
B6min
B7min
B8min
B9min
110
120
Measurement conditions
Thickness [mm]
0.073
Applied Voltage [kV]
Electric Field [kV/mm]
Temp
25℃
5
69.4
0
40
50
60
70
80
90
100
-20
LDPE Electric Field Distribution[V/mm]
-40
-60
20000
-80
0
-100
40
-20000
-40000
-60000
-80000
-100000
50
60
70
80
90
100
110
120
B0min
B1min
B2min
B3min
B4min
B5min
B6min
B7min
B8min
B9min
PCB
(複合材料, 多層材料)の内部構造と電荷分布
電荷が動けば,電界が変わる
8 plyであっても,アラミドが疎であ
れば界面まで電荷が動き,電界を
強調する。
内部電界は内部のイ
オンの動き依存する。
アラミドが密であれば界面に蓄積
しやすい(5plyの例)。
85˚C, 85 %RH での観測も可能
マイグレーションなしで,いきなり破壊する現象が最近増加している。
これは内部のイオン性不純物が電極界面付近に蓄積することによる
電界強調が原因と考えられる。
(超高圧での現象と類似:電界からみれば,起こって当然。)
イオンマイグレーションモニタリング
マイグレーションが発生する
と,正電極があたかも絶縁層
内に移動したような分布とな
る。
マイグレーション発生前にも
不純物イオンが電極付近に存
在(移動,蓄積)する。
with Dr K. Fukunaga, NICT
電子線照射によるポリマー内の電荷蓄積
Time
汎用 Mini-PEA 試験電極ユニット(普及版)
フランス宇宙研では材料内部への帯電実験のため,真空チャンバー内に導入。
日本では85˚C, 85%RHの環境試験器内で基板の劣化実験
3D PEA 試験電極ユニット(研究用)
スキャン方式のため,時間がかかるが,
高分解能(面方向:80ミクロン程度)。
分解能はミリ単位だが,
リアルタイム。
3次元で観たイオンマイグレーション