「Ker Yaay」にて思うこと

特定非営利活動法人
サヘルの森 機関誌
サヘル
SAHEL
No.83 2009.12
「Ker Yaay」にて思うこと
NGO地球風
セネガル人の友人が Ker Yaay(お母さん
の家)というアソシエーションを立ち上
げ、子供達や母親を取り巻く環境を改善
しようと奮闘している。ここに滞在して
いると、子供達が学校帰りに寄って本を
読んで行ったり、喉が渇いたのでお水く
ださいと立ち寄ってくれるのが楽しい。
お母さん達は識字を習ったり手芸をした
りとこれまた賑やかで、ほんとうにオー
プンな居場所がここにはある。
Ker Yaay は THIES というセネガル第 2
の州、つまり地方にあるが、ここを尋ね
る度に、海外から研修生が滞在している
のに驚く。ヨーロッパやカナダの学生さ
ん達と友人になる機会があり、セネガル
についてどう考えるかなど、改めて問い
かけられ戸惑ってしまったこともある
(確かに、なんでセネガルのそれも THIES
に 足 掛 け 20 年 も 関 わ っ て い る の
私???)。
また、昨年は Guadeloupe からこのセネ
ガルに農業をしたくてやってきたという
元看護士さんが長期滞在していた。畑の
面白さと難しさについて雤を眺めながら
話したこともあった。その方曰く、医療
の世界に長く携わったが、その向こうに
は農業があるって思ったそうです。それ
にしても、どうやってカリブの島から、
アフリカ大陸、それもセネガル THIES に?
という問いに、インターネットで検索し
て Ker Yaay に辿り着きました、と言われ
たのには『HONTOO?!』と叫んでしまっ
た。
肌の色も年齢も性別も目的も異なるけ
れど、人と人が出会えるオープンな場所
がここにある。そして、その場所を紹介
内野香美
する場がインターネット上に存在するこ
とで、Ker Yaay がより多くの人々に開か
れる。もちろん、こういう形の情報提供
はネガティブな点もあるかもしれない。
しかし、ここは敢えてポジティブ思考。
不特定多数の人々が Ker Yaay を検索でき
る、だからこそ、素敵な人達と出会える
チャンスも沢山生まれる。そして、その
チャンスが本物かどうかを見極める力も
必要だ。
友人がこんな心地よいスペースを提供
しているということの陰に、まずは他者
を受け入れてみようという寛容なハート
と、自分が相手にとって心地よい他者と
なってみようとする気前の良さ、そして、
賢く相手を知ろうとするスマートさを磨
いてきた努力を感じる。
『コッド、ご飯だよ~~!』お昼ご飯を
知らせる友人の声が Ker Yaay に響く時間
だ。(“コッド”とは私のセネガルネームです。)
今度、彼女のセネガル料理をホームペ
ージにアップするようにお願いしてみよ
うかな。
内野香美さん(写真中央)
元サヘルの会現地スタッフ。コーディネーター
としてトンブクトゥに滞在した。(編集担当)
-1-
No.83 2009.12 サヘル
会員・関係者の皆様にご報告します。
マリ北部地域での治安悪化に伴って、同地域における現地活動の内容を変更することとなりまし
た。サヘルの森運営委員会では、スタッフの安全確保のため、マリ北部地域での活動(ファギビ
ンヌ旧湖底の地中火対策、ゴッシ地域での活動)を一時中断することを決議しました。3 月の会員
総会で決定した内容とは異なりますが、地域をマリ中部のファナ地域や首都のバマコ周辺に移し
て、活動を継続してまいります。
マリ共和国北部における治安悪化と現地活動の一部変更について
代表 坂場光雄
事業内容変更の背景
近年トンブクトゥ以北ではイスラム武装組織の強盗や誘拐が散発しており、日本の外務省
の「海外安全ホームページ」でも「渡航の是非を検討」と十分な安全対策が必要とされてい
ました。2009 年になって状況はさらに悪化し、以下のような事件が発生しています。
これらの事件に関連する「イスラム圏マグレブのアルカイダ(AQMI)」などのテロ組織は、
以前の独立や地方の尐数民族としての権利を主張していた武装グループとは異なり、性質も
行動も過激で非常に危険な状況にあると考えられます。
1.
・隣国ニジェール国境付近で、昨年 12 月にはカナダ人外交官 2 名が、2009 年 1 月にはヨーロ
ッパ人観光客 4 名が誘拐された。4 月にカナダ人 2 名と観光客 4 人のうち女性 2 名は解放
されましたが、イギリス政府が要求を拒んだとのことで、5 月にはうち一人が殺害され、
その後の交渉の結果、7 月に残る一人が解放されました。
この誘拐事件には国際テロ組織「イスラム圏マグレブのアルカイダ(AQMI)」が関与したと
いわれています。
・6 月にはイスラム武装組織の逮捕に関わっていたマリ陸軍中尉がトンブクトゥ市内の自宅の
居間で 4 人組の男に殺害されました。この殺害が「イスラーム・マグリブ地域のアル=カ
ーイダ機構」に加盟する過激派によるものだと言われ、マリ国軍が掃討作戦に乗り出しま
した。
・中国・新疆ウイグル自治区でイスラム教徒のウイグル人が多数死亡したことを受けて、「イ
スラム圏マグレブのアルカイダ(AQMI)」が、アフリカ北西部で働く中国人を対象にした報
復を行うと宣言しました。
多くのアフリカ人は日本人と中国人との区別はつかないと思われ、事件に巻き込まれる危
険性が大きくなっています。
・11 月にはフランス人の援助関係者が、ニジェール国境に近いメナカのホテルで「イスラム
圏マグレブのアルカイダ(AQMI)」によって誘拐されました。
これを受けてフランス政府はキダール、ガオ及びトンブクトゥ地域のフランス人に同地域
から速やかに首都に向かうよう声明を出したとのこと。
イギリス政府も同様にトンブクトゥ地域からの自国民の引き上げを指示しました。
2.
事業変更の内容
このような治安状況であるため、今年度の活動計画としてあげていたトンブクトゥ州ファ
ギビンヌ旧湖底における「地中火による荒廃地の天然更新の検討と推進」の事業を進めるの
が困難であると判断し、10 月 11 日の当会運営委員会にて一時中止を決定しました。この分の
事業費は、他の苗木配布や植林、荒廃地植林等に振り分けて、計画通りに実行します。
マリの現地活動においては、他の地域でも注意深い行動をするつもりです。
No.83 2009.12 サヘル
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サヘルの景色
坂場光雄
バマコの大ネズミ
バマコで住んでいる住宅は、間口 15m奥行き 25mほどの敶地
に平屋の家屋があり、周囲は高さ 2mほどのコンクリート塀で囲
まれている。家の裏庭を苗畑として使っているのだが、ここに
ネズミが住み着いていて、蒔いた種や若芽を食ってしまい、困っ
ていた。壁際の地面に穴があり、出入り口になっているようだっ
全長 65 センチの大ネズミ
たので、石で塞いでみたが次の日にはきれいに運び出していた。
廃油を流し込んだり、ホースで水を大量に注ぎ込んだりしても出て行かなかった。
2009 年 5 月にネズミ捕りを 3 個買った。長さ 30cm、幅 20cm、高さ 20cm のかまぼこ型で、薄く
細い鉄板で編み上げてある。幅の狭いところがくぼんでおり、薄い鉄板の開閉部がある。そこに
重さが加わると、下がって中に入れるようになっている。中に新鮮なマンゴーの皮をいれ、入口
にもマンゴーの汁をつけて、穴を囲むように仕掛けた。すると、次の朝、灰色の顔で尖ったネズ
ミが 3 匹かかった。一つには 2 匹入っていた。
さらにその日の作業で、その近くの枝葉を積んでおき、腐葉土を作っている場所を掘り下げて
いたら、大きなネズミが飛び出した。壁沿いに逃げたネズミを水やり青年のジャラさんがすごい
速さで追いかけ、棒で一撃して捕まえた。さらにもう一匹もしとめた。頭から尻尾の先までを測
ると 65cm、身体部分だけで 30cm の巨大なものであった。驚いたことに、これはその日の彼の食
料となった。
別の日には塀の上を歩いている白と灰色のネズミが目撃されていた。これは隣の家の隙間から
這い出て、10mほど塀の上を歩き、向こう側に降りていった。このネズミはまた異なった種類で、
鼻先がやや丸く、ずんぐりした体型である。これもジャラさんが見つけ、すごい俊敏さで一撃、
しとめていた。
事務所の道路側には自動車が出入りできる大きな鉄門があり、その下には 10cm ほどの隙間があ
る。ここからもネズミが出入りしていた。何回かの失敗のあと、これも捕まえた。やや小さめ灰
色の種類であった。
さらに部屋の中にもネズミが住み着いていて(播種用の)種子が食われている。これはまだ捕
まっていない。庭に植わっているインドセンダンの実が落ちると、これをポットの間などに溜め
込んでいることがあり、しばらくすると、まとまって芽が出てくることがある。
その後、庭のネズミたちは、マンゴーの皮を入れたネズミ捕りをかけても全く反応しなくなっ
た。苗づくりでは金網をかけたり、ドラム缶の中に入れたりしてのネズミ対策が続きそうである。
庭の隅の腐葉土の山
バマコ事務所の苗畑
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No.83 2009.12 サヘル
拠点方式から広域植林へ
(本年の現地活動を理解するために)
に有望そうな場所や人を見付けたら、早く始
められるよう手助けも行っている。
また、植えたい人をより確実に植えられる
人に育てるにはどうすれば良いか。植え方の
ワークショップを開催し、植え穴の形状や土
質、湿度等を見る方法、植えるに当たっての
注意点を伝えていく。さらに、植えた後のチ
ェックや植え直し指導なども行っている。
広域植林への一つのアプローチ
20 数年前、ファギビンヌでスタートした頃
とっていた小規模多拠点多段階モデルの方式
(村に住込んで苗を作りその周囲に植える、
しかし一カ所に長居はせず、次々に新しい所
に移って育苗、植栽を繰返す)では或る一定
期間にカバー出来る広さには限りがある。勿
論住込むチームを増やせばそれに比例してカ
バー出来る大きさは広がるが。より広域への
植林を考えると、このアプローチには限界が
ある。自分達で苗を作り周囲に植えるのでは
なく、考え方を変えて、植えたい人達に苗を
配って植えて貰う、苗も苗屋さんで購入する
とすれば、カバー出来る広さ、植えられる面
積、本数は、飛躍的に大きく出来る可能性が
ある。勿論、植えたい人達が居るか、何処に
居るか。それに苗屋さんの存在や分布、その
両者を結びつける運搬配布の能力次第という
事になるが。
ところでそうした都合の良い苗屋さんがあ
り、植えたいという人達が居るのだろうか。
マリという国で考えると、一見したところ苗
屋さんは首都バマコにしかない。それ以外で
は二、三の大都市に 1~2 ヶ所、それも園芸用
のもので植林用の樹種は殆ど見られない。ま
た、地方の町や村に行って聞けば、今やって
欲しいのは、井戸を掘る事、学校の教室増築、
修理する事・・・であって、木を植えることなど
はその次だとの返事が返ってくる。本当に苗
屋は無く、木を植えたい人達は居ないのか。
答えは探し方を工夫すれば「あるし、居る」
ということになる。
種々試行錯誤しながら、苗屋や木を植えた
い人達を探す方法をマスター出来たことで、
両者のネットワークを使って「配布」という
形式で広域の植林活動を遂行出来そうな目途
が立ったというところである。
現在はまだ本格的な配布をしているという
より、苗屋さんや植えたい人達のネットワー
ク作り-その充実化に力を注いでいる段階で
ある。たとえば、苗を買うだけでなく、その
苗畑でクワをふるい苗の質を向上させ、種類
や数量をふやす手助けをする事もある。まだ
苗屋さんの充分見つかっていない地域では、
新たな所を探す努力を続け、苗畑を開設する
No.83 2009.12 サヘル
小島通雅
長年の活動で得たものをベースに
こうした配布形式での広域植林作戦は、今
年突然思いつき、始めたわけではない。古く
はトンブクトゥ周辺で 1 村 10 本 100 ヶ村の植
林活動としてやっていたものであり、最近で
言えば、バマコの北、ノッソンブグウ周辺で
畑に出ている人達に苗を配って植えて貰った
り、幾つかの小中学校へ配布、植栽したり同
様の試みを続けている。また、何年か前迄ト
ミニアンでローカル NGO と組んでワークショ
ップ、配布、荒廃地の植生回復試験をやり、
ここ数年はファナの近くで道路わきの荒廃地
植生回復試験をやりながら、周辺の村への配
布をしていた。これらによって植林や試験上
の成果が得られたことは勿論だが、我々の得
たものはそれだけではなかった。
得たもの、一つ目は長年の活動の結果、か
なり広い範囲の人々が、
「我々が何をしている
か」認識、認知してくれている事である。こ
ちらからアプローチしなくても向こうから親
しげに声を掛けてくれる。
二つ目は、最初に始めた砂漠地帯の遊牧民
とは違う、農村地帯の村の組織、人間関係に
ついての知見が深まり、村への入り方につい
ても、カンやコツが会得出来たことだろう。
三つ目、これが一番大きなものだろうが、
マリ社会の変化が、活動している地域にどう
押し寄せ、村や村民のレベルで意識がどう変
わりつつあるのかを実感できたことだろう。
サヘルの森は今迄に多くの技術的集積を培
った。しかしそれだけで「配布」をベースに
した広域の植林活動に乗り出そうとしている
わけではない。上に指摘した三つの条件を満
たしたので(まだそれぞれ充分だとは言い切
れないが)、「配布」をベースにした地域の植
林戦略を思い描き、それに乗り出す資格は出
来たかなと思っている。
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拠 点 方 式
・現地に日本人が長期間住み込んで植林活動を行う。
ファギビンヌ湖、トンブクトウ周辺の遊牧民を対象
1988
社会的要因
1992
南のプロジェクト(拠点方式)
モプチ周辺(ニナグー、ジャンウェリ村)
民族紛争
治安悪化
内部要因
1999
2009
認
知
度
の
上
昇
ノ
ウ
ハ
ウ
の
蓄
積
民主化
一村十本百か村(小規模多拠点方式)
トンブクトゥ周辺
植林ブーム
地方分権
広 域 植 林 方 式
・苗畑のネットワークを構築し広域に苗木配布を行う。
ファナ、バマコ周辺の農耕民を対象
村の共同植林地、その実態
緑化・植林活動に限らず、NGO 等が村で何
か活動を始めようという時、一般的には県と
か郡や市レベルの役所を訪ねる事から始める。
御存知のように我々はこうした上からのルー
トでなく、自分で木を植えるような個々人に
直接アプローチしている。最近は更に徹底し
て、上記の役所の連中だけでなく、村レベル
でも、村長、議員といった人達に接触するの
は、極力避けるようにしている。理由は上の
方の連中は、援助慣れしていて、最初から「何
ha 植えたいので苗木何千本と家畜除けの金
網が欲しい」とか言い出すからだ。
今迄に NGO 等の援助で 1~2ha の植林地を、
幾つか既に持っているような村も多い。村の
共同植林地として位置づけられており、村の
学校など公共施設の補修の際にはこれを伐っ
てあてるという事になっている。しかし、共
同植林地となってはいるが、その土地自体は
従来誰かの使用していた土地だった所。下層
の村民は土地の余裕など無いから、当然村長
等の上層部の土地だったところがこれに当て
られている事が多い。
共同で植えた林の中に、元々個人で植えて
あった木が残っていたり、新しく個人で購入
した苗を植込んだりしている例もある。勿論
それが共同林の私的利用だと決めつけている
わけではない。
しかし、共同の仮面のウラに村の権力構造
がチラチラし、利益の独占指向がスケて見え
る、と言ったら言い過ぎだろうか。でも、そ
れでなければ、何で辺縁部の連中があんなに
自分達で植えたがるのか、一寸理解に苦しん
でしまう。
個人が小さく適所に植えることから
個人の需要を満たせるような充分な数量の
共同植林地を造成して、これを村で共同管理
する。
「共同で植え、管理する」言葉としては
大義名分のある、立派なものだ。しかし、そ
んな造成が上手くいき、且つ管理も上手くい
く、そんな事の確率はゼロに近いだろう。共
同で植え、育てて、共同で管理していく方が、
合理的、効率的だなどという机上の空論に引
っ張られてはダメだ。
そもそもそれに必要な土地は何処にどう確
保するのか。まとまった所に共同でやるより、
個人個人が自分の家の周りや畑の道沿い、耕
作限界の畑、それに続く草地や疎林に自己の
責任で植え、育てる方が確実だろう。畑の中
に植えてアグロフォレストリーの復活を目指
しても良いだろう。とにかく細分された形で
良いから、植え、育て、そして必要に応じて
利用し、更新管理していくことが大切である。
村の全員が尐しずつ、自分の林を持って利用
する。サヘルの森はこの方向で進んで行きた
いと考えている。
-5-
No.83 2009.12 サヘル
榎本肇のマリ通信
10 月 29 日からマリ派遣中の榎本さんの様子を、送られてきたメールを通じてご紹介します。
10 月 29 日
エチオピア航空で未明にバマコ到着。
バマコは涼しく、
(迎えてくれた)スレイマ
ンさんによるとまだ雤が時々降るようです。
そういえば、滑走路も濡れていました。
今年の作柄は、9 月以降雤がよく降ってく
れたおかげで、心配していたほど悪くないと
のことです。雤期初めの穀物の生育具合を見
ていただけに、不作にはならないと聞いてほ
っとしました。
11 月 4 日
遅れて着いた荷物も受け取り、調子の悪か
ったハイラックスも直したので、11 月 3、4
日とバマコの北部に行ってきました。
今回の滞在は、各地域の苗畑で継続的にい
ろいろな苗木が手に入れられるようにいてい
くことと、今まで各々が植林した場所を確認
して今後の植林・苗木配布のあり方を考えた
いと思っています。
(バンバラ語で)ジーシラと呼ばれる雤期
の水の通り道では、年間を通して水分条件が
良く、乾期でも数か月水たまりがあるとこと
もあり、植林の許容量が大きいと考えていま
す。この場所で林づくりができないか試して
みたいと思っています。
サヘルの森はいろいろな村で苗木を配って、
村の人たちが自分たちで使う林づくりを支援
しているわけですが、多くの村人がユーカリ
を植えたいといいます。
特に都市近郊ではそれが顕著で、一つには
建築材として商品価値がある、他には土地占
有の証(何もしていないと取り上げられる)
として木を植えておきたいなどの理由からユ
ーカリの要望が強くなっています。
木を植えたいという要望はうれしいけれど、
ユーカリだけの植林は…というのが正直なと
ころです。その妥協点も今回探していきたい
と考えています。
この二日は、小島さんが開拓したという、
バマコ北部の 2 つの苗畑、チェコロブグーと
カマカを訪れ、ビニールポット渡して、今あ
る苗を鉢上げするように頼んできました。
ついでに、周辺の村(ジェトロブグーなど)
へ苗木を配布しながら…。
No.83 2009.12 サヘル
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11 月 4 日
11 月 5~7 日の 3 日間、ファナに行ってき
ました。今回は、苗畑の状況確認とアルファ
ブグー村で行っているジーシラ(雤期の水の
通り道)での植林の手直しを行ってきました。
アルファブグー村のジーシラ植林ですが、
昨年からユーカリやイピルなどを植えている
のですが、乾期の間の数カ月水たまりがある
ので放牧中の家畜の水飲み場となり、そのつ
いでに保護柵をしてない樹木はつまみ食いを
されるようです。
家長のアルファさん(アルファブグーは一
親族の村)はフルベ族でありながら、ジーシ
ラという良い水条件の場所で木を植えること
に熱心に取り組んでいたのですが、最近では
自身の放棄畑に切り替えてしまいました。
何とかジーシラという環境を活用したいの
で、水たまりの周囲に数本植えて直径 50cm
くらいの保護柵をするという方法でやってみ
ることしました。潅水の必要はないので、後
はウシに倒されなければ順調に生育するので
はないかと思っています。
11 月 20 日
昨日、モプチ方面からバマコに帰って来ま
した。前回(7~8 月)の滞在で見る限りでは、
雤が思うように降らず、凶作が心配されまし
たが、その後順調に雤が降ったようで、心配
したよりも収穫は得られたようです。それで
も不作であることには変わらず、多くの村で
あまりいい顔は見られませんでした。
以前配った村を訪れた時には、多くの人が
「こんなに大きくなった」、あるいは「ここに
植えた」、「まだ生きてる」など植えた木を見
せてくれます。
「うまく育てているね。○○が
欲しい?今度持ってくるね」こんなやり取り
が、村人が木を植えることの後押しになって
くれることを期待しています。
最近、村々を回っていると、あちこちで森
林保護の取り組みを耳にします。各村から選
ばれた監視員が巡回して違反者からは罰金を
取るという薪炭林保護の取り組みも始まりま
した。昨年から行っているそうですが、自分
たちで地域の自然資源を管理していくことは
今後非常に重要になってくると思いました。
■青年海外協力隊マリへ■
青年海外協力隊がいよいよマリに隊員を派遣します。首都バマコへの日本大使館開設に続く本格的な援助
活動の開始といった感があります。
協力隊事務局にうかがったところ、現在 12 件の要請について応募者の選考が行われている最中だそうで
す(下表参照)
。来年 2 月には合格者が発表され、訓練所でのトレーニングを経て、2010 年 9 月には平成 22
年度 2 次隊として現地に派遣される見込みが高いとのお話でした。来年秋のマリ独立 50 周年記念(=日マ
リ国交 50 年)に合わせて隊員を派遣したいとのことです。
当会も活動中のファナ地区での活動や植林!といった職種もあり、今後の展開に目が離せません。
マリからの隊員派遣要請一覧
職種
配属先
植林
セグー州環境保護局
野菜栽培
セグー州農業支局
果樹栽培
セグー州農業支局
土壌肥料
セグー州農業支局
村落開発普及員
セグー州農業支局
看護師
ニアナンコロ・フォンバ病院
村落開発普及員
ファナ地区教育振興センター
青尐年活動
ファナ地区教育振興センター
小学校教諭
ファナ地区教育振興センター
服飾
アワケイタ職業訓練センター
PCインストラクター
スマオロ・カンテ職業訓練センター
PCインストラクター
地方分権化・分散化支援室
注)協力隊ホームページ(要請・職種情報)から引用
備考
砂漠化防止プロジ
ェクトの一環
サンザナを拠点に
活動
セグー州病院
JICA が実施中の学
校運営プロジェク
トと協力
バマコ
■砂漠のボーイング727■
マリで今最も話題の事件についてお伝えします。
11 月 2 日にガオ郊外(約 200 キロ北)の砂漠で焼け焦げたボーイング 727 型旅客機の残骸が発見されまし
た。マリに滞在中の榎本さんからの報告では、南米ベネズエラからコカインの密輸に使われたという治安当
局の見解が報道されたそうです。ベネズエラから麻薬を積んで大西洋をノンストップでマリの砂漠まで飛ん
できたという訳です。事実は小説より奇なり!まるでスパイ映画のような出来事です。
ガオ郊外の砂漠に着陸した旅客機に地上で待機していた四輪駆動車が近づき、積荷を移し替えたという目
撃談も伝えられています。空路持ち込まれた麻薬は、アフリカ大陸を陸路で運ばれてヨーロッパで売買され
るそうです。
(通信社のサイトには機体の写真などもアップされています)
事件の起こったガオはニジェール河に面したマリ東部の主要都市です。当会のプロジェクト地であるゴッ
シからも近く、車で約 2 時間(160 キロ)の距離にあります。トンブクトゥと同様にトゥアレグやソンガイ
の人たちが多く住んでいる地域です。ゴッシのお隣さんとも言える場所でこんな大事件が起こっていたとは
本当に驚きです。
ボーイング 727 といえば、かつて日本国内でもおなじみの旅客機です。よど号ハイジャック事件もこの機
体でした。航続距離が長く、堅い地面があれば原野のようなところでも着陸できるとか。一線を退いた今、
テロリストのお役に立っていようとは思いもしませんでした。
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No.83 2009.12 サヘル
イベント報告
■クリスマス募金にご協力ください
■ジャパンバードフェスティバル 2009
11 月 7 日(土)
、8 日(日)に千葉県我孫子市でジ
ャパンバードフェスティバル2009が開催されました。
毎年秋に手賀沼湖畔で開催される野鳥愛好家の集
まるイベントで、サヘルの森も 2004 年から参加して
います。アフリカの鳥をデザインした仮面や織物の展
示、マリの民芸品販売を行いました。
日本の野鳥の巣に加えてマリから持ち帰った珍し
いハタオリドリの巣なども展示しました。あまりに見
事な作りに「人間が編んだんじゃないの?」と驚く人
も大勢いました。
(高津佳史)
ハタオリドリの巣
いつもサヘルの森の活動を支えてくださり、ありがとう
ございます。本誌でもご報告しましたように、マリ北部の
治安悪化からファギビンヌ旧湖底の地中火対策プロジェ
クトは中断しましたが、マリ南部(バマコ、ファナ周辺)で
の苗木配布プロジェクトは順調に進んでいます。
本会の活動は皆様からのご支援により支えられていま
す。クリスマス募金へのご協力をよろしくお願いいたしま
す(郵便振込の用紙を同封させていただきます)。
■牛乳パック回収報告
今年 7 月~12 月の回収状況をご報告します。
回収し
たパックはこれまで同様、山田洋二商店さんに売却し
本会の活動費として活用させていただきました。
・埼玉県騎西町役場:750 キロ=10,500 円
ご協力ありがとうございました。
●新たにパック回収を希望される皆様にお願いです
現在、牛乳パックの回収は東京近郊の学校や役場な
どパック保管場所をお持ちの団体(グループ)に限ら
せていただいています。
1 回の訪問で古紙業者さんに運搬できる量は、約
300 キロが限界です。ある程度の量をまとめて保管し
ていただければ、日程を調整して回収に伺うことが可
能です。大きめの段ボール箱に詰めて 10~15 箱が目
安となりますので、保管場所の確保をお願いします。
マリから報告
会員になって活動を支えてください
■白百合学園の森
学校でのお話し会でお約束した記念植樹がゴッシ
郊外のティンタハッテン村で行われました。
6 月にマリに滞在した坂場代表が村の子供たちに苗
木を配布、苗畑の周辺や小学校に植林しました。白百
合学園の生徒さんから託された看板も無事、現地まで
届けることができました。
看板を持つティンタハッテン村の子供
No.83 2009.12 サヘル
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NPO 法人『サヘルの森』はサハラ砂漠の南縁サヘル
地域において植林活動を行う市民団体です。会員には
機関誌『サヘル』が届きます。お申し込みは、郵便振替
で下記の口座に会費をお振込みください。
・一般会員 年 5,000 円
・維持会員 年 20,000 円
特定非営利活動法人 サヘルの森
住所:〒194-0013 東京都町田市原町田 1-2-3
アーベイン平本 403 ㈱エコプラン内
TEL:042-721-1601
FAX:042-721-1704
郵便振替口座:00170-6-115054
HP:<http://www.jca.apc.org/sahel-no-mori/>
E-mail:[email protected]
*********************
機関誌『サヘル』No.83 2009 年 12 月 14 日発行
発行人:坂場光雄 /編集:高津佳史
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