DEUTSCH-JAPANISCHER WIRTSCHAFTSKREIS 4 季刊誌 09 2009 年 DJW ニュース テーマ 1 おもちゃは子供だけのものじゃない! 2009 年も早いもので、師走を迎えました。この時期、ドイツ ではクリスマスマーケットが開き、日本も美しいイルミネーション が街を彩り、クリスマス特有の華やかな、心躍る雰囲気が街を 包みます。DJW ニュースの読者の中にも、お子様やお友達へ のクリスマスプレゼントをお探しの方もおられるでしょう。そこで 今回は、ドイツのおもちゃについてお話したいと思います。 ドイツで人気のおもちゃと言えば、「環境にやさしいおもちゃ」 です。環境にやさしいおもちゃとは、環境への負担が少ないよ う、再生可能な材料で製造されたおもちゃ、つまり集約栽培や 乱作によって調達されたものでないと同時に、農薬も使われて いない原材料を使用したものを意味しています。製造過程にお いて、できる限りエネルギーや水を使わないこと、環境を考え たゴミ処理、ペンキ、ラッカーや接着剤などの補助剤に有害物 質が含まれてない、もしくはできるだけ少ないこと、そして包装 は無駄なくリサイクル可能なものであることなども、この「環境 にやさしいおもちゃ」と言う概念に含まれています。それに加 え、製品は長期使用に耐え、修理可能で交換部品があるもの でなければなりません。 自然や環境への意識が高まるなか、「持続可能性」という概 念は、ますますその意義を増しています。この「持続可能性」と いう観点から、おもちゃを見た場合、その長期的価値が光る 「木製のおもちゃ」こそ、他のどのおもちゃよりも、この点を満た していると言えるでしょう。 ドイツの教育施設では、難易度にあわせて拡大可能なビー 玉レーンをはじめとした、木でできたシステムおもちゃがとりわ け好評です。こうしたおもちゃは、幼少時から遊べるだけでなく、 子供の成長に合わせておもちゃも一緒に成長させることができ るのが特徴です。つまり、簡単な物からスタートし、徐々に難易 度を上げていくことが可能で、それにより、飽きること無く、長期 にわたり、このおもちゃで遊ぶことができるのです。 ところで、遊ぶことは子供だけの特権ではありません。遊ぶこ とによってリラックスでき、想像力を養い、脳の活性化や手先の 器用さを高める効果もあるため、大人の方々にも是非取り組ん でもらいたいものです。大人も楽しく遊べるおもちゃの数は驚く ほど多く、誰もが知っているチェスなどのボードゲームの他、手 先の器用さをトレーニングするもの(日本から輸入されたバラン ス積木が、ドイツの市場に出たところです)、知的ゲームやデザ インを重視した収集目的の木のおもちゃまで種類も様々です。 クリスマス、そしてお正月を迎えるこのシーズン、子供に戻っ ておもちゃで遊んでみるのも、よいのではないでしょうか。楽し いクリスマスシーズンを、そしてよい新年をお迎え下さい。 著者:Sigrid Franz / Kikram コンタクト:[email protected] URL:http://www.kikram.de/indexJp.html テーマ 2 日独租税条約改定の意義とドイツ進出日本企業の欧州事業再編上の課題 ドイツ進出日本企業は、EU の拡大・深化(単一市場の形 成、ユーロ導入、加盟国数の増加)によりロシア・東欧市場を 含む欧州市場のポテンシャルが伸張し、欧州市場競争が激化 するなか、2008 年後半に米国を端緒に世界経済を席巻したグ ローバル金融危機に起因する厳しい市場環境への対応を迫ら れています。 ドイツが、広い国土面積、高い人口、高度の産業インフラ、 質の高い労働力、ロシア・東欧へのアクセス等のあらゆる面に おいて、日本企業にとって欧州最大の市場規模とマーケット・ ポテンシャルを有している最重要国であることに疑問の余地は ありません。他方、1966 年 4 月に締結された現行の日独租税 条約は、日本と米、英、蘭他先進諸国間の租税条約と比し、急 速に競争力を失いつつあり、このことが、日本企業のドイツへ の投資阻害要因となると同時に、ドイツから他国への脱出誘因 となりかねない深刻な事態を招いています。課税所得圧縮の ベースとなっている健全で保守的な会計思想にも拘らず、もと もと高いドイツ法人税等の実効税率(30%)に加えて、現行日 独租税条約で定める配当、利子、ロイヤルティに対する源泉税 率が高いために、ドイツの税的競争力は非常に低く、加えて、 日本税法の改正により 2009 年 4 月 1 日以降開始される事業 年度から適用される外国子会社受取配当金の益金不参入制 度により、ドイツ子会社からの配当時に徴収される 15%の配 1 日独産業協力推進委員会 当源泉税が、日本親会社でコスト要15%の配当源泉税コストの 生じるリスクについても、日本政府側の認識が弱いように思わ れます。日独間の税的障害要因の排除につながる日独租税条 約改定が切望される所以です。 日本企業の欧州事業再編は、欧州自治とガバナンスの強化、 組織簡素化、直接費/間接費の削減による競争力強化、事業 部管理の強化/徹底、販売価格管理の強化等のさまざまな目 的をもって行われますが、その中味は、常に欧州子会社の「法 形態変更」と「機能移転」の二つの側面を有しています。「法形 態」では、日本親会社/欧州兄弟会社形態のほかに、欧州事 業持株会社形態と欧州本支店形態の二つが主流になりつつあ ります。そのなかで、EU子会社の支店化の方法としては、形態 変更に伴う含み益課税の回避を目的に、今後「クロス・ボーダ ー・マージャー」方式が有力となると思われます。他方、欧州再 編は、欧州子会社間の国境を跨いだ機能移転の側面を持つの が通常です。欧州子会社間の機能移転には事業リスクのみな らず、利益ポテンシャルの移転を随伴する故に、機能移転する 国での出口課税(営業譲渡益課税)のリスクが生じます。ドイツ 連邦財務省は、機能移転に関する国際課税法第1条3項ならび に連邦財省令における運用上の疑問点を明確化するために、 2009年7月17日付で、国境を跨いだ機能移転が行われた場合 のグループ会社間の因となることの認識が、ドイツ政府側に共 有されていない危惧があります。更に、ドイツ子会社がドイツの 税務調査で移転価格税制に基づく更正を受けた場合、「隠れた 利益配当」が認定され、所得配分に関する運用通達草案を公 表しています。この通達は、2008 年 1 月 1 日以降終了する事 業年度から適用が開始されます。この通達に基づき、ドイツか ら他国に機能移転が行われた場合、「トランスファー・パッケー ジ」としての仮想的独立企業間評価が要求されます。評価方法 としては、特定業の特性、機能が集約された期待税引後利益 に基づく DCF 法および現在価値法が主たる方法になると思わ れます。欧州進出日本企業の事業再編においては、機能移転 を受ける低課税地国での税率差に起因する節税機会と同時 に、機能移転する国での出口課税リスクへの留意が必要となり ます。 著者:国吉卓司 アーンスト&ヤング会計事務所 日本部門パートナー コンタクト:[email protected] URL:http://www.ey.com/DE テーマ 3 講演会「エレクトロ・モビリティの可能性と限界」報告 「エレクトロ・モビリティ」、この言葉は、今では様々な期待を こめて政治的な議論でたびたび取り上げられる、キーワードと なりました。そして現在問われているのは、環境保全と確実な エネルギー供給、そして電気自動車が個人の移動手段として 機能する上で十分な環境が整っているかという、この 3 点でし ょう。自動車大国である日本・ドイツ両国にとって、まさしく重要 なテーマであり、2009 年 11 月 20 日、官界、産業界より約 150 名の参加者を迎え、講演会「エレクトロ・モビリティの可能 性と限界-持続可能な気候保全を目指す日独両国の戦略」が 開催されました。 同講演会に出席した専門家は、電気自動車は、自動車大国 である日独両国に、石油依存度を低減し、温室効果ガスの排 出削減により、環境保護に貢献するまたとないチャンスをもた らすとの見解を示しました。両国共に、この新技術でリードする ため多大な努力をし、政府も独自の補助制度を拡充し、ベス ト・ソリューションを求め鎬を削る企業を支援しています。一方 で、これらの戦略は、各国が独自に策定し、推し進めてきたも ので、今後も国という枠を越えた調整が講じられない場合、誤 った発展を避けることはできないでしょう。 日本もドイツもそれぞれ、国内レベルでは、電気自動車の可 能性について、熱い議論が交わされています。しかし、国際規 格や購入促進策、税制といった観点での政治的枠組みの構 築、そして対策策定の如何が、この新技術市場の成否をわけ、 同時に、これらの枠組み、対策は、自国の利益に囚われず、グ ローバルな視点で講じられる必要があります。 電気自動車にまつわる戦略が、世界各国で進められている にもかかわらず、これまでこのテーマについて、国境を越えた 議論はほとんど行われてきませんでした。今こそ、この状況に 終止符を打つときです。これは、自動車大国である日本とドイ ツに利益をもたらすと共に、地球規模の問題の解決に向けて、 糸口となるに相違ありません。 著者:ルプレヒト・フォンドラン / DJW 委員長 コンタクト:[email protected] ● こちらは、DJW ニュースドイツ語版にも掲載の「Chancen und Grenzen der Elektromobilität」を要約、翻訳したもので す。ドイツ語版オリジナルは DJW ホームページ(www.djw.de 「イベント・セミナー」→「フォトギャラリー&アーカイブ」)からお 読みいただけます。 DJW からのお知らせ ・ 日独イベント情報 ● 会員総会報告 今年度の DJW 会員総会は、11 月 20 日にベルリンにありま す在ドイツ日本国大使館にて開催されました。ゲルハルト・ヴィ ーソウ氏(Bankhaus Metzler パートナー/ フランクフルト)が、 新たに役員に選出された他、翌年度の会計監査役にはニコラ ウス・トーンス氏(PWC/ デュッセルドルフ)が再任いたしまし た。総会議事録と年次報告書はホームページにてご覧頂けま す(「DJW について」→「業務報告書」)。 また、会員総会の翌日に開催されました「DAAD SP 奨学金 プログラム OB 会」でも、新執行部が選出、発足いたしました。 ● DJW ホームページ再リニューアル DJW では以前より、企業・公共機関・フリーランサー会員の 皆様が提供されているサービス内容を一覧にまとめ、「サービ スリスト」として、ホームページでご紹介しています。そして来年 1 月、このサービスリストが、名前も「エキスパート・プール」に 改め、一層機能を拡充してご利用いただけるようになります。 「エキスパート・プール」は、検索機能がついたデータバンクで、 DJW の企業・公共機関・フリーランサー会員の皆様には、連絡 先やサービス内容に加え、PR 文を記載いただける他、小額で 発行: 日独産業協力推進委員会(DJW) 編集:平田佳子、マイト智子 発行責任者: DJW, Graf-Adolf-Str. 49 40210 Düsseldorf, Germany Tel./ Fax: +49(0)211-9945-9191 / -9212 ロゴやバナーなどの掲載が可能になります。更に、DJW 会員 の皆様から寄せられる活動情報も、今後は催事、出版物など、 テーマごとに分類し、ご覧いただきやすくなります。 リニューアルに際してのプログラミングは、DJW 会員企業の JAPAN-CONNECT 社にご担当いただきました。 ● セミナー 「Japan-Karrieren. Chancen und Herausforderungen einer Karriere mit Japanbezug」 日本関連の仕事を得るには、どんな点に注意をすればよい のでしょう。ドイツでの職歴は必要か、それとも日本でキャリア をスタートした方が有利なのか。また、ドイツの若い労働力にと って、日本の労働市場の現況はどうなのか。当セミナーでは、 特に日本での就職を希望する若いドイツ人を対象に、講演、体 験者報告を交え、多岐にわたる質問にお答えいたします。当セ ミナーはドイツ語で行われます。 日時:2010 年 2 月 9 日(火) 場所: 東京 主催:DAAD SP 奨学金プログラム OB 会、DJW 申し込み: www.djw.de *東京 DJW 会の開催も予定しております。日時等の詳細は、 追ってホームページでご案内いたします。 DJW ニュースはEメールで無料購読できます。 お申し込み方法:件名に“Newsletter J“とご記入の上 [email protected] までお送り下さい。ホームページ www.djw.de から直接ダウンロードもできます。 免責事項:DJW ニュース上の情報に関しては万全を期しており ますが、その内容の正確性および安全性を保証するものでは ありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害について も、DJW 及び情報提供者は一切の責任を負いかねます。 2 日独産業協力推進委員会
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