DEUTSCH-JAPANISCHER WIRTSCHAFTSKREIS 1 季刊誌 12 2012 年 DJW ニュース テーマ 1 2012 年ドイツ経済 その行く その行く先は? 今年 2012 年のドイツ経済見通しは控えめなものとなりまし た。ドイツ連邦政府や連邦銀行、そして経済研究所は、ドイツの 経済成長を最大で 1%、それどころかそれを下回ると予測して います。この見通しは現実的なのでしょうか、それとも根拠のな い悲観主義が反映されたものなのでしょうか。ただ明らかなの は、明けたばかりの 2012 年が容易な一年にはならないという ことです。いまだ解決を見ない債務危機が足枷となり、ここで新 しい問題が生じることがあれば、個人消費や企業の投資行動 に影響を与え、経済成長にも影を落とすことでしょう。 現状では、こうしたシナリオが現実化する可能性は寧ろ低い と見られます。景気指数は底打ちし、すでに上昇傾向を示して います。2 月の欧州経済研究センター(ZEW)景況感指数は、 昨年 5 月以来初めてプラス圏に復帰しています。同様に Ifo 経 済研究所が 2 月末に発表した景況感指数も大幅に上昇、4 ヶ 月連続で改善を記録し、ドイツ経済回復の兆候を示していま す。2011 年第 4 四半期の成長率は小幅なマイナス成長に落 ち込んだものの、2012 年第 1 四半期には再び景気は上向くと 見られています。 そして何より、ドイツ企業の力強さが 2012 年はプラスに働く でしょう。受注が堅調で、2012 年国内景気がその需要の鍵と なると考えられます。1.4~2.2%と予想される賃金上昇に個人 消費が支えられ、政府支出も 1~1.9%の増加と予測してま す。また、2012 年の企業の投資活動も前年レベルになると見 ています。その一方、外需の低迷が 2012 年の成長に水を差 すことが考えられます。輸出がわずか 2~3%の増加が見込ま れるのに対し、輸入、とりわけ資源の輸入は大幅に拡大する (2.5~4.6%)と予測されています。しかし、予想される世界経 済の回復に伴い、輸出入共に年内には改善するでしょう。確か に、本来の主要輸出先である EU 諸国への輸出は引き続き債 務危機の影響を受けるでしょうが、アジアやアメリカ大陸への輸 出が増加し、EU 圏内への輸出減を一部補うと見られます。 ドイツ企業は、2008~09 年の経済危機を、その経営モデル の効率化を高め、製品やサービスを改善し、自己資本比率を 高める機会に利用しました。このように万全の備えで臨むドイツ 企業の多くは 2012 年をうまく乗り切れると見ています。ドイツ 製品に対する海外からの需要が堅調であることに加え、ヨーロ ッパ最大の経済国であるドイツの安定した雇用率、著しい賃金 上昇の展望が、内需を活性化させるでしょう。 結論: 2012 年は決して容易な 1 年とはならないが、悲観的 になる理由もありません。欧州債務危機は解決策を見出せると の見解を、私どもは持っています。現在議論されている EU 加 盟国への債務ブレーキの導入が、それを証明しています。 著者:Dr. Gerd Meyer / Stadtsparkasse Düsseldorf、広報 コンタクト: [email protected] URL: www.sskduesseldorf.de テーマ 2 ドイツ人が見る福島原発事故後の食品の安全性 ドイツ人が見る福島原発事故後の食品の安全性 東日本大震災以降、世界中が日本の食品の安全性に注目 しています。農地の荒廃という直接的な被害のみならず、食品 の放射能汚染に関するマスコミ報道により消費者の食への信 頼が損なわれています。どの食品が安全なのかわからず、ス ーパーでは安全な食品さえ売れ残っています。更には、南日本 ならびに福島から遠く離れた北日本の一部地域産の農産物の 価格が高騰し、例えば、北海道産及び三重県産の米は、被災 前と比較して格段に値上がりしています。また、福島から遠方 の農家のオンラインショップには、東京をはじめ都市部に住む 人々からの注文が殺到しています。 2011 年 3 月中旬から 10 月中旬にかけて厚生労働省は、 全部で 33 の品目に対し出荷・摂取制限を発表いたしました。こ れには、宮城県、岩手県、福島県など全 8 県で収穫された野 菜や肉、魚、乳製品など、多様な農産物が該当します。出荷・ 摂取制限は、時間の経過とともに徐々に解除されましたが、食 品の安全性への疑問は潰えることはありません。消費者は放 射能汚染を見ることができず、また自分でチェックすることもで きない為、マスコミや政府の情報を信じなくてはなりません。そ れにもかかわらず、汚染された食品の長期的な摂取による健 康への影響を推計したものを政府が提示できないことが、消費 1 日独産業協力推進委員会 者を動揺させています。政府からの情報が乏しいのです。 厚生労働省によると、セシウムの制限値は、飲料水や牛乳・ 乳製品は 1 キロにつき 300 ベクレル、野菜や穀物や肉、卵、魚 などは、1 キロにつき 500 ベクレルです。これらは国際的な基 準値と比較し違いはありません。政府は民間に委託し食品検 査を実施しており、石原慎太郎東京都知事や、枝野幸男官房 長官(当時)が被災県産の農産物を食するパフォーマンスを行 いましたが、こうした動きが被災地産の作物の購買を促すかは 懐疑的です。消費者による政府への信用が低下しており、外 食・食品業界は風評被害対策として独自に食品検査を行わざ る得ないのが実情です。 ドイツでは、消費者の心配の声に対して、ドイツ連邦食料・農 業・消費者保護省がインターネットで日本からの輸入食品の安 全性について公表しています。もともと日本の食品輸出量は少 なく、ドイツの日本からの輸入食品は全体の約0.1%に過ぎま せん。加えて、距離の問題からそのほとんどが加工食品です。 それにもかかわらず、連邦食料・農業・消費者保護省をはじめ とした公的機関は、日本から輸入された食材の検査実施につ いて、常時情報を発信しています。同省は先日も、日本で起き た震災がドイツ人消費者に影響を与えているとは考えられない と発表しています。輸出前に日本で行われる検査だけではな く、日本からの汚染食品が市場に出回らないよう、EUでは抜き 打ち検査までも実施しています。 しかしその一方、ドイツではこうした日本の食の安全性につ いて、大衆受けを狙ったセンセーショナルな報道が多く目に付く のも事実です。ドイツ大手全国紙である南ドイツ新聞でさえ、関 連性が定かでないにもかかわらず、ある日本人キャスターの白 血病の発病について、福島産の食材の安全性をアピールしよ うと試食をしたことと絡め報道をしています。こうしたドイツメディ アの報道により、日本から 1 万キロも離れたドイツでも日本の 食品に対する信頼が損なわれる結果となっています。1986 年 に起きたチェルノブイリ原発事故を背景に、今もなお原発問題 に敏感なドイツ人の日本の食品に対する信頼を取り戻すには、 日本国内同様時間がかかることが予測されます。 著者: Stephanie Krebs / デュースブルク・エッセン大学 東アジア研究所、東アジア経済学講座、嘱託研究員 コンタクト: [email protected] URL: www.uni-due.de/in-east/ テーマ 3 コーチング - ドイツビジネス環境に適応する ドイツビジネス環境に適応するための するための効率的な方法 ための効率的な方法 ドイツ人の同僚やスタッフとのコミュニケーションを改善した いと考える日本人マネジャーは少なくありません。改善したいコ ミュニケーションとは、多くの場合、言葉の問題ではなく、ワーキ ングスタイルや文化の違いといった問題が背景にあります。 そういった問題を解決するためにプロによるコーチングを求 める日本人エクゼキュティブの要望が高まっています。クロスカ ルチャーセミナーに比べると、個別コーチングは合意された期 間の中で個々のニーズに合わせたプログラムが期待できま す。トレーニングに比較した場合、純粋な知識の伝達に対し、コ ーチングプロセスの目標は期待されるべき行動の変化です。コ ーチングを受けることによって、日本人マネジャーがそのリーダ ーシップスタイルをドイツ人のスタッフやビジネスパートナーの ニーズに合わせたスタイルに適応させ変化させることができる というものです。それができればコミュニケーションは改善さ れ、チームのモチベーションも上がります。 コーチングプロセスは通常 4 つのステージから成ります。 1.コーチングされるマネジャー自身の現在の状況の分析: ドイ 人スタッフやビジネスパートナーと仕事をする上での自身の強 みと弱みの分析を行います。 2.目標の設定: コーチングを受けることで期待される達成可能 かつ測定可能な成果を定義します。 3.アクション: 実際の職場での訓練により、日常の現実と体験 をもとにしたフィードバックを受けます。 4.フォローアップ: コーチングが終了したあとでも、自身が挑戦 すべき課題に気づき適切な行動変化を起こせるようになること によって、課題を克服していく能力を身につけます。 コーチングが成功するかは、顧客とコーチの間にどれだけ信 頼関係を築くことができるかにかかっています。コーチングの内 容はすべて極秘扱いです。公認資格を持つコーチ(例:国際コ ーチ連盟の会員)であり、日本とドイツ両国でマネジメントの経 験を持つコーチをお勧めします。 著者: Bettina Al-Sadik-Lowinski / BAS Coaching、公認コーチ コンタクト: [email protected] URL: www.bas-coaching.com DJW からのお知らせ ・ 日独イベント情報 ● DJW 会・DJW 朝の会 「Euro(pe) – Quo vadis?」 」 過去に財政統合をせず通貨統合のみを果たした前例はな く、欧州通貨同盟は非常に大胆な試みと言えます。欧州ソブリ ン危機ではその弱点が浮き彫りとなりました。ユーロは崩壊す るのでしょうか。それともこの危機は欧州の未来のための機会 となるのでしょうか。そして日本への影響は?DJW理事長を務 めますGerhard Wiesheuが、英語で解説いたします。また、フラ ンクフルト開催の「DJW会」ではディナーを、「朝の会」では朝食 を、講演前後にお楽しみいただけます。 2012 年 4 月 20 日(金) / 場所: フランクフルト 予定:ハンブルク、ベルリン、ミュンヘン(日程未定。後日 DJW ウェブサイトにてご案内いたします。) ● フォーラム 「第 6 回日独経済フォーラム 日独経済フォーラム」 フォーラム」 世界のエネルギー需要の3分の2は都市圏で消費されてお り、二酸化炭素の総排出量も7割が都市圏から排出されていま す。それは、都市に地球温暖化を改善するポテンシャルがある ということも意味しています。当フォーラムでは、「メトロポリタ ン・ソリューション-日独の都市が抱える課題に対するインテリ ジェント・ソリューションとテクノロジー」と題して、当分野での日 独協力の強化について議論いたします。(日独同時通訳) 日時:2012年 年4月 月25日 日(水) / 会場: ハノーバーメッセ 発行: 日独産業協力推進委員会(DJW) 編集:平田佳子 発行責任者: DJW, Graf-Adolf-Str. 49 40210 Düsseldorf, Germany Tel./ Fax: +49(0)211-9945-9191 / -9212 ● ブレックファストセミナー 「DJW 朝の会」 の会」 Lufthansa Passage ドイツ営業部長の Uwe Müller 氏を迎 え、「異文化マネージメント」をテーマに、ルフトハンザ社の経験 をもとに、ご講演いただきます。セミナーは英語で行われ、講演 後には質疑応答の時間を設けております。 日時:2012 年 5 月 4 日(金) / 場所: デュッセルドルフ ● シンポジウム 「日独経済シンポジウム」 日独経済シンポジウム」 今年の日独経済シンポジウムは、「エネルギー政策転換にお けるチャンス-再生可能エネルギー・省エネルギー・エネルギ ー効率化・エコ建築」をテーマに、日独両国の最新動向を紹介 する基調講演の他、各関連機関、企業による実践例のプレゼ ンテーションが行われます。(日独同時通訳) 日時:2012 年 6 月 4 日(月) / 場所: デュッセルドルフ ● DJW 新刊 「自由貿易:日独の共同責任」 自由貿易:日独の共同責任」 昨年 9 月に、日本・EU 間の自由貿易協定をテーマに開催い たしました講演会「開かれた国境が豊かさをもたらす-今日も そう言えるのか?」、そして DJW 分科会「ドイツ学術交流会奨 学金プログラム OB 会」の運営セミナー「Globalisation 3.0」の 内容を収めました書籍(ドイツ語・日本語併記、一部英語)を、 近日発行いたします。価格は 10 ユーロです。ご注文、お問い 合わせは DJW まで([email protected])。 DJW ニュースはEメールで無料購読できます。 お申し込み方法:件名に“Newsletter J“とご記入の上 [email protected] までお送り下さい。ホームページ www.djw.de から直接ダウンロードもできます。 免責事項:DJW ニュース上の情報に関しては万全を期してお りますが、その内容の正確性および安全性を保証するもので はありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害につ いても、DJW 及び情報提供者は一切の責任を負いかねます。 2 日独産業協力推進委員会
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