算数 - 上越教育大学

算数
上越教育大学 中川仁
平成 27 年 5 月
皆さんは高校までに数学をたくさん勉強してきたと思います.高校の数学では
問題を解けることが優先され,意味がわからないまま,公式を覚えて何とか問題
を解けるようにしたけれど,期末試験や大学入試が終わるとすっかり公式も忘れ
てしまったという人はいませんか?例えば,関数のグラフで囲まれた図形の面積
がなぜ積分を使えば求められるか理解している人はどれくらいいますか?この講
義では,円の面積の公式,円錐の体積の公式,球の体積の公式等がどうやってで
てくるのかを予備知識がなくても意味が分かるように解説したいと思います.
1
自然数の和,平方数の和,立方数の和
1 から 10 までの自然数の和
1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 9 + 10 = 55.
1 から 100 までの自然数の和
1 + 2 + 3 + · · · + 99 + 100
は次のようにして求められる.S = 1 + 2 + 3 + · · · + 99 + 100 とおくと,
S = 1 + 2 + 3 + · · · + 99 + 100,
S = 100 + 99 + 98 + · · · + 2 + 1,
2S = (1 + 100) + (2 + 99) + (3 + 98) + · · · + (99 + 2) + (100 + 1)
= 101 × 100,
101 × 100
S=
= 101 × 50 = 5050.
2
n を自然数とし,1 から n までの自然数の和を Sn とすれば,
Sn = 1 + 2 + 3 + · · · + (n − 1) + n.
1
Sn = 1 + 2 + 3 + · · · + (n − 1) + n,
Sn = n + (n − 1) + (n − 2) + · · · + 2 + 1,
2Sn = (1 + n) + (2 + n − 1) + (3 + n − 2) + · · · + (n − 1 + 2) + (n + 1)
= n(n + 1),
したがって,
1 + 2 + 3 + · · · + (n − 1) + n =
2
+
+
+
n(n + 1)
.
2
+
(1.1)
=
図 1: 自然数の和の求め方 (n = 5)
練習問題 1. 1 から 30 までの自然数の和を求めよ.2 から 30 までの偶数の和を求
めよ.1 から 29 までの奇数の和を求めよ.これを一般化して,n を自然数とする
とき,1 から 2n − 1 までの奇数の和を求めよ.
1 = 12 , 4 = 22 , 9 = 32 のように,自然数 a の 2 乗として表せる数を平方数とい
う.また,1 = 13 , 8 = 23 , 27 = 33 のように,自然数 a の 3 乗として表せる数を立
方数という.n を自然数とし,12 から n2 までの平方数の和
Qn = 12 + 22 + 32 + · · · + (n − 1)2 + n2
や 13 から n3 までの立方数の和
Cn = 13 + 23 + 33 + · · · + (n − 1)3 + n3
を求めるにはどうしたらよいだろうか.
平方数の和 Qn を求めよう.k 番目の奇数を ak = 2k − 1 とおく.練習問題 1 に
おいて,1 から 2k − 1 までの奇数の和は
a1 + a2 + · · · + ak = 1 + 3 + · · · + 2k − 1 = k 2
2
3
+
+
+
=
図 2: 平方数の和の求め方 (n = 4)
3
であることをみた.これを用いれば,
Qn = 12 + 22 + · · · + k 2 + · · · + n2
= a1
+ a1 + a2
············
+ a1 + a2 + · · · + ak
·····················
+ a1 + a2 + · · · + ak + · · · + an
= na1 + (n − 1)a2 + (n − 2)a3 + · · · + 2an−1 + an .
この両辺に
2Qn = 2n2 + 2(n − 1)2 + 2(n − 2)2 + · · · + 2 · 22 + 2 · 12
を加えれば,
3Qn = na1 + (n − 1)a2 + (n − 2)a3 + · · · + 2an−1 + an
+ 2n2 + 2(n − 1)2 + 2(n − 2)2 + · · · + 2 · 22 + 2 · 12
= n(a1 + 2n) + (n − 1){a2 + 2(n − 1)} + (n − 2){a3 + 2(n − 2)} + · · ·
+ · · · + 2(an−1 + 2 · 2) + 1(an + 2 · 1)
= n(1 + 2n) + (n − 1)(3 + 2n − 2) + (n − 2)(5 + 2n − 4) + · · ·
+ · · · + 2(2n − 3 + 4) + 1(2n − 1 + 2)
= n(2n + 1) + (n − 1)(2n + 1) + (n − 2)(2n + 1) + · · · + 2(2n + 1) + 1(2n + 1)
= (2n + 1){n + (n − 1) + (n − 2) + · · · + 2 + 1}
n(n + 1)(2n + 1)
,
=
2
n(n + 1)(2n + 1)
.
6
よって,平方数の和 Qn に対する次の公式を得た.
Qn =
12 + 22 + 32 + · · · + n2 =
n(n + 1)(2n + 1)
.
6
(1.2)
次に,立方数の和 Cn を求めよう.平方数のときのように立方数 k 3 をうまく表
せないだろうか.その答えはかけ算の表にある.次の表はかけ算九九の表である.
4
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
2
3
4
5
6
7
8
9
2
4
6
8
10
12
14
16
18
3
6
9
12
15
18
21
24
27
4
8
12
16
20
24
28
32
36
5
10
15
20
25
30
35
40
45
6
12
18
24
30
36
42
48
54
7
14
21
28
35
42
49
56
63
8
16
24
32
40
48
56
64
72
9
18
27
36
45
54
63
72
81
カギの字 』の部分の数の合計は左上から順に
1 = 13 ,
2 + 4 + 2 = 8 = 23 ,
3 + 6 + 9 + 6 + 3 = 27 = 33 ,
4 + 8 + 12 + 16 + 12 + 8 + 4 = 64 = 43
となっている.これは一般に成り立つ.k を自然数として,左上から k 番目のカギ
の字 』の部分の数の合計を Tk とすれば,
Tk = k × 1 + k × 2 + · · · + k × (k − 1) + k × k
+ (k − 1) × k + (k − 2) × k + · · · + 1 × k
= k{1 + (k − 1)} + k{2 + (k − 2)} + · · · + k{(k − 1) + 1} + k 2
k−1
z
}|
{
2
2
= k + k + · · · + k 2 +k 2 = k 3 .
したがって,1 から n までの自然数 a, b の積の表をつくり,積の値をすべて合計す
る.これを左上からカギの字 』の部分に分割して合計していけば,
T1 + T2 + · · · + Tn = 13 + 23 + · · · + n3 = Cn
になる.一方,この表の積の値すべての合計は
(
)2
n(n + 1)
2
(1 + 2 + · · · + n) =
2
に等しい.なぜならば,例えば n = 4 のとき
(1 + 2 + 3 + 4)2 = (1 + 2 + 3 + 4)(1 + 2 + 3 + 4)
= 1 × (1 + 2 + 3 + 4) + 2 × (1 + 2 + 3 + 4)
+ 3 × (1 + 2 + 3 + 4) + 4 × (1 + 2 + 3 + 4)
= (1 + 2 + 3 + 4) + (2 + 4 + 6 + 8)
+ (3 + 6 + 9 + 12) + (4 + 8 + 12 + 16).
5
一般に
(1 + 2 + · · · + n)2 = (1 + 2 + · · · + n)(1 + 2 + · · · + n)
= 1 × (1 + 2 + · · · + n) + 2 × (1 + 2 + 3 + 4) · · · + n × (1 + 2 + · · · + n)
= 1 + 2 + ··· + n
(1 行目の和)
+ 2 + 4 + · · · + 2n
(2 行目の和)
+ ············
+ n + 2n + · · · + n2
(n 行目の和)
= 積の値の合計.
ゆえに,立方数の和 Cn に対する次の公式を得た.
13 + 23 + 33 + · · · + n3 = (1 + 2 + · · · + n)2 =
n2 (n + 1)2
.
4
(1.3)
すなわち立方数の和は自然数の和の 2 乗と等しい.
練習問題 2. 奇数を次のように三角形の形に並べる.第 1 行目には 1 をかく.第 2
行目には,3 と 5 をかく.第 3 行目には,7, 9, 11 をかく.このように奇数を順に
第 k 行に k 個の奇数をかいていく.以下の問に答えよ.
(1) 第 k 行にかいてある奇数の合計を Tk とする.T1 , T2 , T3 , T4 , T5 を求めよ.
(2) 1 行目から 5 行目までに全部でいくつの奇数があるか.
(3) T1 + T2 + T3 + T4 + T5 を求めよ.
1
3
7
13
21
5
9
15
23
11
17
25
6
19
27
29
2
放物線で囲まれる図形の面積
a > 0 とし,放物線 y = x2 と x 軸および x = a で囲まれる図形の面積を S とす
a
る.n を自然数とし,0 ≤ x ≤ a を n 等分して,h = , xk = kh (k = 1, . . . , n) と
n
おく.図 3 の中央の図のように,放物線上の点 (xk , x2k ) の左側に横の長さが h で縦
の長さが x2k の長方形をつくり,その面積を k = 1, 2, . . . , n について加えれば,
S < x21 h + x22 h + · · · + x2n h
である.同様に,図 3 の右側の図のように,放物線上の点 (xk , x2k ) の右側に横の長
さが h で縦の長さが x2k の長方形をつくり,その面積を k = 1, 2, . . . , n − 1 につい
て加えれば,
x21 h + x22 h + · · · + x2n−1 h < S
である.(1.2) より
x21 h + x22 h + x23 h + · · · + x2n h
= (h)2 h + (2h)2 h + (3h)2 h + · · · + (nh)2 h
= h3 (12 + 22 + 32 + · · · + n2 )
(
)
a3 n(n + 1)(2n + 1)
1
1
1
3
= 3
=a
+
+
.
n
6
3 2n 6n2
x2n h = (nh)2 h = a2 h =
a3
だから
n
x21 h + x22 h + x23 h + · · · + x2n−1 h
= x21 h + x22 h + x23 h + · · · + x2n−1 h + x2n h − x2n h
(
)
(
)
1
1
1
1
a3
1
1
3
3
=a
+
+
−
=a
−
+
.
3 2n 6n2
n
3 2n 6n2
よって,
(
)
1
1
1
a
<S<a
+
+
.
3 2n 6n2
1
n を大きくすれば,不等式 (2.1) の両側はともに a3 に近づくから
3
3
1
1
1
−
+ 2
3 2n 6n
)
(
3
(2.1)
1
S = a3
3
でなければならない.
練習問題 3. a > 0 とし,3 次関数 y = x3 のグラフと x 軸および x = a で囲まれ
a
る図形の面積を S とする.n を自然数とし,0 ≤ x ≤ a を n 等分して,h = ,
n
xk = kh (k = 1, . . . , n) とおく.図 4 の中央の図のように,y = x3 のグラフ上の
7
y
y
y = x2
y
y = x2
y = x2
S
a x
0
a x
0
a x
0
図 3: 放物線で囲まれる図形の面積
点 (xk , x3k ) の左側に横の長さが h で縦の長さが x3k の長方形をつくり,その面積を
k = 1, 2, . . . , n について加えた値を Tn とする.同様に,図 4 の右側の図のように,
y = x3 のグラフ上の点 (xk , x3k ) の右側に横の長さが h で縦の長さが x3k の長方形を
つくり,その面積を k = 1, 2, . . . , n − 1 について加えた値を Tn′ とする.Tn , Tn′ を
y
y
y = x3
y = x3
y
y = x3
S
0
ax
ax
0
0
ax
図 4: y = x3 で囲まれる図形の面積
求めよ.Tn′ < S < Tn だから,n を大きくすると Tn , Tn′ ともにある同じ値に近づ
く.その値は S である.S を求めよ.
3
円周率と円の面積
円の面積の公式について考察してみる.半径 r の円について,その周の長さを
L(r) とし,面積を S(r) とする.
n を 3 以上の自然数とする.半径 r の円に内接する正 n 角形について,その周の
長さを Ln (r) とし,面積を Sn (r) とする.
n = 6 とする.半径 r の円に内接する正 6 角形は 1 辺の長さが r の正三角形 6 個
からなるから,周の長さは L6 (r) = 6r である.
次に,n = 12 として半径 r の円に内接する正 12 角形の面積 S12 (r) を求めてみ
r
よう.図 5 のように,△OP1 P2 において,底辺の長さ OP2 = r, 高さ P1 H = だ
2
から,
r
1
1
△OP1 P2 の面積 = r × = r2 .
2
2
4
8
図 5: 円に内接する正 12 角形
したがって,
1
S12 (r) = 12 × r2 = 3r2 .
4
よって,S12 (r) と L6 (r) の間には,
1
1
S12 (r) = 3r2 = r(6r) = rL6 (r)
2
2
という関係式が成り立っている.同様にして,任意の n ≥ 3 に対して,正 2n 角形
1 Ln (r)
を 2n 等分した三角形の高さは,
であり,底辺の長さは半径 r だから,そ
2 n
の面積は
1
1 Ln (r)
r
×r×
=
Ln (r)
2
2 n
4n
であり,したがって,
S2n (r) = 2n ×
r
1
Ln (r) = rLn (r),
4n
2
1
S2n (r) = rLn (r)
2
という関係式が成り立っている.n をどんどん大きくしていけば,左辺の S2n (r) は
円の面積 S(r) に近づき,右辺の Ln (r) は円周の長さ L(r) に近づく.したがって,
1
S(r) = rL(r)
2
である.特に,r = 1 のとき,
L(1) = 2π
9
によって円周率 π を定義すれば,S(1) = π である.
半径 r の円に内接する正 n 角形と半径 1 の円に内接する正 n 角形は相似であり,
相似比は r : 1 だから,
Ln (r) = rLn (1)
であり,n を大きくしていけば,
L(r) = rL(1) = 2πr
となる.したがって,
1
1
S(r) = rL(r) = r(2πr) = πr2 .
2
2
以上,円周率の定義,円周の長さ,円の面積について説明した.それでは,円
周率 π の値はどれくらいだろうか?
明らかに,2π = L(1) > L6 (1) = 6 だから,π > 3 である.円に外接する 1 辺の
図 6: 円に外接する正方形
長さが 2r の正方形の面積は (2r)2 = 4r2 だから,
S(r) = πr2 < 4r2 .
したがって,π < 4 である.以上によって,3 < π < 4 であることがわかった.
円周率をもう少し詳しく求めるために,円の面積を上から評価する古代中国の
りゅう き
数学者 劉 徽(220 年頃–280 年頃) の方法を紹介する.図 5 の △OP1 P3 の部分を拡
大したものが図 7 である.ここで,四角形 P1 Q1 Q3 P3 は長方形であり,点 P2 は線
分 Q1 Q3 上にある.このとき,
△P1 P2 P3 の面積 = 四角形 OP1 P2 P3 の面積 − △OP1 P3 の面積
= 2 × △OP1 P2 の面積 − △OP1 P3 の面積
S12 (r) − S6 (r)
S12 (r) S6 (r)
−
=
.
=2×
12
6
6
10
したがって,
長方形 P1 Q1 Q3 P3 の面積 = 2 × △P1 P2 P3 の面積 =
S12 (r) − S6 (r)
.
3
図 7 から,
扇形 OP1 P3 の面積 < △OP1 P3 の面積 + 長方形 P1 Q1 Q3 P3 の面積
S6 (r) S12 (r) − S6 (r)
S6 (r) + 2S12 (r) − 2S6 (r)
+
=
6
3
6
2S12 (r) − S6 (r)
=
.
6
=
円の面積 S = πr2 は扇形 OP1 P3 の面積の 6 倍だから,
(
)
2S12 (r) − S6 (r)
2
= 2S12 (r) − S6 (r).
πr < 6
6
S12 (r) = 3r2 であった.一辺の長さが r の正三角形 OP1 P3 の面積は
√
√
1
3
3 2
r×
r=
r
2
2
4
だから,
√
√
3 2 3 3 2
S6 (r) = 6 ×
r =
r .
4
2
したがって,
√
√
3 3 2 3(4 − 3) 2
2S12 (r) − S6 (r) = 6r −
r =
r ,
2
2
√
3(4 − 3)
π<
= 3.4019 · · · .
2
同様にして,任意の n ≥ 3 に対して,
2
πr2 < 2S2n (r) − Sn (r)
が成り立つことがわかる.
n = 12 とすれば,πr2 < 2S24 (r) − S12 (r) である.S12 (r) = 3r2 であり,練習問
√
√
題 4 より L12 (r) = 6( 6 − 2)r だから,
√
√
1
S24 (r) = rL12 (r) = 3( 6 − 2)r2 .
2
よって,
√
√
πr2 < 2 × 3( 6 − 2)r2 − 3r2 ,
√
√
π < 6( 6 − 2) − 3 = 3.2116 · · · .
練習問題 4. 半径 r の円に内接する正 12 角形の周の長さ L12 を求めよ.これを用
いて,π > 3.1 を示せ.
11
Q3
P3
H
P2
Q1
O
P1
図 7: 劉徽の方法
4
円錐と球の体積,球の表面積
底面の半径 r,高さ h の円柱の体積は πr2 h であることを知っているとして,底
面の半径 r,高さ h の円錐の体積は
1
V = πr2 h
3
であることを示そう.
h
円錐を高さの方向に n 等分する.頂点からの距離が k であるような底面と平行
n
r
r
な平面で円錐を切ったときの切口の円の半径は k である.Vk によって,半径 k で
n
n
h
高さが の円柱の体積を表す.この円柱を切口の平面の上側に置いて,k = 1, . . . , n
n
について並べれば,円錐を含む空間図形が得られる (図 8 中央).また,この円柱を
切口の平面の下側に置いて,k = 1, . . . , n − 1 について並べれば,円錐に含まれる
空間図形が得られる (図 8 右).したがって,円錐の体積 V は次の不等式を満たす.
V1 + V2 + · · · + Vn−1 < V < V1 + V2 + · · · + Vn−1 + Vn .
ここで,
Vk = π
( r )2 h
πr2 h
k
= 3 k2
n
n
n
12
(4.1)
(4.2)
だから,平方数の和の公式 (1.2) を用いれば,
πr2 h 2
(1 + 22 + · · · + n2 )
n3
πr2 h n(n + 1)(2n + 1)
= 3 ×
n
6
2
2n
+
3n
+1
= πr2 h ×
2
6n
(
)
1
1
1
2
= πr h
+
+
,
3 2n 6n2
V1 + V2 + · · · + Vn−1 + Vn =
同様にして,
πr2 h 2
(1 + 22 + · · · + (n − 1)2 )
n3
πr2 h (n − 1)n(2n − 1)
= 3 ×
n (
6
)
1
1
1
2
= πr h
−
+
.
3 2n 6n2
V1 + V2 + · · · + Vn−2 + Vn−1 =
1
したがって,不等式 (4.1) の両側は n を大きくしていけば,ともに πr2 h に近づ
3
く.ゆえに,円錐の体積は
1
V = πr2 h
3
でなければならない.
底面の面積が S で高さが h の錐体の体積 V は
1
V = Sh
3
で与えられることも円錐の体積と同様にして示される.
半径 r の球の体積は
4
V = πr3
3
であることを示そう.
r
上半球を高さの方向に n 等分する.底面からの距離が k であるような底面と
n
平行な平面で半球を切ったときの切口の円の半径を rk とすると,
√
( r )2
rk = r 2 −
k
n
r
の円柱の体積を表す.この円柱を切口の平
n
面の上側に置いて,k = 0, 1, . . . , n − 1 について並べれば,上半球を含む空間図形が
得られる (図 9 中央).また,この円柱を切口の平面の下側に置いて,k = 1, . . . , n−1
である.Vk′ によって,半径 rk で高さが
13
V1
h
V2
V1
V3
V2
V4
V3
V5
V4
r
図 8: 円錐の体積の求め方 (n = 5)
V4′
V3′
V2′
V1′
V0′
r
r
図 9: 球の体積の求め方 (n = 5)
14
V4′
V3′
V2′
V1′
について並べれば,上半球に含まれる空間図形が得られる (図 9 右).したがって,
1
上半球の体積 V は次の不等式を満たす.
2
1
′
′
V1′ + V2′ + · · · + Vn−1
< V < V0′ + V1′ + V2′ + · · · + Vn−1
.
2
ここで,
Vk′
=
πrk2
r
πr
=
n
n
(4.3)
(
( r )2 ) πr3
2
r −
k
=
− Vk .
n
n
ここで,
πr3 2
k
n3
とおいた.この Vk は円錐の体積の計算において,h = r としたときの Vk である.
Vk =
Vk′ + Vk =
πr3
,
n
k = 0, 1, . . . , n − 1
だから,k = 0, 1, . . . , n − 1 について和をとれば,
′
(V0′ + V1′ + V2′ + · · · + Vn−1
) + (V0 + V1 + V2 + · · · + Vn−1 ) = πr3 .
また,V0 = 0 と h = r に注意すれば,円錐の体積の計算でみたように,
(
)
1
1
1
3
V0 + V1 + V2 + · · · + Vn−1 = πr
−
+
.
3 2n 6n2
したがって,
(
V0′
V0′ =
+
V1′
+
V2′
+ ··· +
′
Vn−1
1
1
1
= πr − πr
−
+ 2
3 2n 6n
(
)
3
2πr
1
1
3
=
+ πr
−
.
3
2n 6n2
3
πr3
だから,
n
V1′
+
V2′
+ ··· +
′
Vn−1
)
3
2πr3
=
− πr3
3
(
1
1
+ 2
2n 6n
(4.4)
)
.
(4.5)
2
(4.4) と (4.5) によって,不等式 (4.3) の両側は n を大きくしていけば,ともに πr3
3
1
2 3
に近づく.ゆえに,半球の体積は V = πr でなければならない.よって,球の
2
3
4πr3
体積は V =
である.また,半径 r の半球の体積と半径 r で高さ r の円錐の体
3
積の和は半径 r で高さ r の円柱の体積と等しいこともわかった.
15
図 10: 半球の体積 + 円錐の体積 = 円柱の体積
最後に,半径 r の球の表面積 S が
S = 4πr2
で与えられることを示そう.半径 r の球の体積を V (r) とすれば,
V (r) =
4π 3
r
3
であった.地球のように大きな球があると考え,地表から高さ h にある空気の体
積はおよそ Sh である.よって,h > 0 を十分小さいとすると,
V (r + h) − V (r)
≒ S.
h
V (r + h) − V (r) ≒ Sh,
ここで,
)
V (r + h) − V (r)
4π (
=
(r + h)3 − r3
h
3h
)
4π ( 3
=
r + 3r2 h + 3rh2 + h3 − r3
3h
)
4π ( 2
=
3r + 3rh + h2 .
3
これは h を 0 に近づければ,4πr2 に近づくから,S = 4πr2 である.すなわち,
dV
= S である (円の面積も半径 r で微分すれば,円周になる).
dr
A
平方数の和 (アルキメデスの方法)
平方数の和についてアルキメデスによる求め方を紹介しよう.n を自然数とす
る.k = 1, 2, . . . , n に対して,ak = k とおくと,
a1 + a2 + · · · + ak−1 = 1 + 2 + · · · + (k − 1) =
16
(k − 1)k
2
図 11: 球の表面積の求め方
である.アルキメデスのアイディアは平方数 k 2 を次のようにとらえることである.
k 2 = (1 + k − 1)k = k + (k − 1)k
= ak + 2(a1 + a2 + · · · + ak−1 ).
これを k = 1, 2, . . . , n について加えれば,
Qn = 12 + 22 + · · · + n2
= a1 + {a2 + 2a1 } + {a3 + 2(a1 + a2 )} + · · · + {an + 2(a1 + a2 + · · · + an−1 )}
= (a1 + a2 + · · · + an ) + 2 {a1 + (a1 + a2 ) + (a1 + a2 + a3 ) + · · · + (a1 + · · · + an−1 )}
= (a1 + a2 + · · · + an ) + 2(n − 1)a1 + 2(n − 2)a2 + · · · + 4an−2 + 2an−1
= (a1 + a2 + · · · + an ) + 2an−1 a1 + 2an−2 a2 + · · · + 2a2 an−2 + 2a1 an−1 .
ここで,a1 + a2 + · · · + an =
n(n + 1)
だから,
2
Qn = 2a2 an−2 + · · · + 2an−2 a2 + 2an−1 a1 + 2a1 an−1 +
この等式と
Qn = a21 + a22 + · · · + a2n−1 + n2 ,
Qn = a2n−1 + a2n−2 + · · · + a21 + n2
17
n(n + 1)
.
2
(A.1)
を加えれば,
3Qn = (a21 + 2a1 an−1 + a2n−1 ) + (a22 + 2a2 an−2 + a2n−2 ) + · · · + (a2n−1 + 2an−1 a1 + a21 )
n(n + 1)
+
+ n2 + n2
2
n(n + 1)
= (a1 + an−1 )2 + (a2 + an−2 )2 + · · · + (an−1 + a1 )2 +
+ 2n2
2
n−1
}|
{ n(n + 1)
z
n(n + 1)
2
2
= n + n + · · · + n2 +
+ 2n2 = (n − 1)n2 +
+ 2n2
2
2
n(n
+
1)(2n
+
1)
n(n
+
1)
=
.
= n2 (n + 1) +
2
2
Qn =
B
n(n + 1)(2n + 1)
.
6
平方数の和 (3S 法)
1
2
3
n
2
3
3
n
1
n
nn
n
+
1
+
3
3
n n
2
n
1
3
2
a
3
Qn
1
a a
a a a
=
n
n
3
2
3
(
a a
a
n
a = 2n + 1)
図 12: 平方数の和の求め方
まず,平方数 n2 = n × n を n を n 回加えたものとして表す.
n
2
1 = 1,
2
2 = 2 + 2,
2
3 = 3 + 3 + 3,
18
··· ,
z }| {
n = n + ··· + n.
2
3
3
2
2
1
これを用いて,平方数の和 Qn を
Qn = 12 + 22 + 32 + · · · + n2
n
z }| {
= 1 + (2 + 2) + (3 + 3 + 3) + · · · + (n + · · · + n)
と書き直す.これらの数を正三角形に並べる (図 12 左).それを 120◦ (図 12 中央),
240◦ (図 12 右) 回転させたものを作り,同じ位置にあるものを加えてその位置に書
くと,すべて 2n + 1 になる.実際,各三角形の上から k 段目,左から m 番目の数
はそれぞれ,
k,
n − (k − 1) + (m − 1),
n − (m − 1)
だから,これらの和は
a = k + n − (k − 1) + (m − 1) + n − (m − 1) = 2n + 1.
したがって,
3Qn = (2n + 1) × 1 + (2n + 1) × 2 + (2n + 1) × 3 + · · · + (2n + 1) × n
= (2n + 1)(1 + 2 + 3 + · · · + n) = (2n + 1)Sn
n(n + 1)(2n + 1)
=
,
2
n(n + 1)(2n + 1)
Qn =
.
6
C
立方数の和
練習問題 1 において,1 から 2N − 1 までの奇数の和は
1 + 3 + 5 + · · · + 2N − 1 = N 2
であることをみた.これは自然数の和と同様に次のように求められた.
S = 1 + 3 + · · · + (2N − 3) + (2N − 1)
とおけば,
S = (2N − 1) + (2N − 3) + · · · + 3 + 1
より,
N
z
}|
{
2S = 2N + 2N + · · · + 2N + 2N = 2N × N = 2N 2 ,
S = N 2.
よって,
1 + 3 + 5 + · · · + (2N − 1) = N 2 .
19
(C.1)
平方数の和を求めるときは,平方数 n2 を n を n 回加えたものとして表した.
n
z
}|
{
n = n × n = n + n + ··· + n.
2
今度は立方数 n3 を和の形に表して表すことを考えてみる.
13 = 1,
23 = 8 = 3 + 5,
33 = 27 = 7 + 9 + 11,
43 = 64 = 13 + 15 + 17 + 19
となる.右辺の和には 1 から 19 までの奇数が現れている.したがって,奇数を順
に,第 1 段に 1 つ,第 2 段に 2 つ,第 3 段に 3 つ,というように三角形の形に並べ
てみると図 13 のようになる.1 段目から n − 1 段目までには全部で
1
3
7
13
21
5
9
15
23
11
17
25
19
27
29
図 13: 立方数の和の求め方
1 + 2 + 3 + ··· + n − 1 =
(n − 1)n
2
(n − 1)n
+ 1 番目の奇
2
数である.N 番目の奇数は 2N − 1 だから,n 段目の一番左側の奇数は
(
)
(n − 1)n
2
+ 1 − 1 = (n − 1)n + 1 = n2 − n + 1
2
個の奇数がある.したがって,n 段目の一番左側の奇数は
20
である.1 段目から n 段目までには全部で
1 + 2 + 3 + ··· + n − 1 + n =
n(n + 1)
2
個の奇数がある.よって,n 段目の一番右側の奇数は
それは
(
2
n(n + 1)
2
)
n(n + 1)
番目の奇数であり,
2
− 1 = n(n + 1) − 1 = n2 + n − 1
である.したがって,n 段目にかかれている奇数の和を Tn とすると
Tn = (n2 − n + 1) + (n2 − n + 3) + · · · + (n2 + n − 3) + (n2 + n − 1)
Tn = (n2 + n − 1) + (n2 + n − 3) + · · · + (n2 − n + 3) + (n2 − n + 1)
n
z
}|
{
2Tn = 2n2 + 2n2 + · · · + 2n2 + 2n2 = 2n2 × n = 2n3 ,
Tn = n3 .
したがって,1 段目から n 段目までのすべての奇数の和は
T1 + T2 + T3 + · · · + Tn = 13 + 23 + 33 + · · · + n3 = Cn
n(n + 1)
とおけば,この和は 1 から n2 + n − 1 = 2N − 1 ま
2
での奇数の和である.したがって,(C.1) より
である.一方,N =
(
1 + 3 + 5 + · · · + 2N − 1 = N =
2
D
n(n + 1)
2
)2
.
面積による立方数の和の計算
中央に 1 辺の長さが 1 の正方形をおく (第 1 段階).次にそのまわりに 1 辺の長さ
2/2 = 1 の正方形を 8 個並べて 1 辺の長さが 1 + 2 = 3 の正方形を作る (第 2 段階).
同様に繰り返して,第 k − 1 段階までこの操作を行ったとする.次に,そのまわり
に 1 辺の長さが k/2 の正方形を 4k 個並べて 1 辺の長さが
1 + 2 + ··· + k =
k
(k + 1)
2
の正方形を作る (第 k 段階).第 n 段階でできた大きな正方形の面積を 2 通りに計
n(n + 1)
算する.1 辺の長さは 1 + 2 + · · · + n =
だから,その面積は
2
(
)2
n(n + 1)
2
21
である.一方,第 k 段階で付け加えた小さな正方形の 1 辺の長さは k/2 であり,そ
れを 4k 個並べたからそれらの面積は
( )2
k
× 4k = k 3
2
である.したがって,第 n 段階でできた大きな正方形の面積は,これらを k = 1 か
ら k = n まで合計して
13 + 23 + · · · + n3 = Cn
である.ゆえに,
(
1 + 2 + ··· + n =
3
3
3
n(n + 1)
2
)2
を得る.
図 14: 面積による立方数の和 (n = 4)
E
一般化できる計算方法
自然数の和の答え
n(n + 1)
2
から逆に出発して,これが 1 から n までの自然数の和になっていることを示そう.
Sn =
Sn − Sn−1 =
n
n(n + 1) (n − 1)n
−
= (n + 1 − (n − 1)) = n.
2
2
2
22
よって,
S1 − S0 = 1,
S2 − S1 = 2,
......
Sn − Sn−1 = n.
これらを加えれば,
Sn − S0 = 1 + 2 + · · · + (n − 1) + n.
S0 = 0 だから,
Sn = 1 + 2 + · · · + (n − 1) + n.
この考え方を用いて,平方数の和 Qn を求めよう.整数 n ≥ 0 に対して,
Tn =
n(n + 1)(n + 2)
3
とおくと,
n(n + 1)(n + 2) (n − 1)n(n + 1)
−
3
3
n(n + 1)
=
(n + 2 − (n − 1)) = n(n + 1)
3
= n2 + n.
Tn − Tn−1 =
よって,
T1 − T0 = 12 + 1,
T2 − T1 = 22 + 2,
.........
Tn − Tn−1 = n2 + n.
これらを加えれば,
(
)
Tn − T0 = 12 + 22 + · · · + n2 + (1 + 2 + · · · + n) .
T0 = 0 だから,
)
(
Tn = 12 + 22 + · · · + n2 + (1 + 2 + · · · + n) = Qn + Sn .
したがって,
n(n + 1)(n + 2) n(n + 1)
−
3
2
n(n + 1)(2(n + 2) − 3)
n(n + 1)(2n + 1)
=
=
.
6
6
Qn = Tn − Sn =
23
よって,平方数の和 Qn に対する次の公式を得た.
12 + 22 + 32 + · · · + (n − 1)2 + n2 =
n(n + 1)(2n + 1)
.
6
(E.1)
立方数の和 Cn についても同様にして求められる.整数 n ≥ 0 に対して,
Un =
n(n + 1)(n + 2)(n + 3)
4
とおくと,
n(n + 1)(n + 2)(n + 3) (n − 1)n(n + 1)(n + 2)
−
4
4
n(n + 1)(n + 2)
=
(n + 3 − (n − 1)) = n(n + 1)(n + 2)
4
= n3 + 3n2 + 2n.
Un − Un−1 =
よって,
U1 − U0 = 13 + 3 · 12 + 2 · 1,
U2 − U1 = 23 + 3 · 22 + 2 · 2,
.........
Un − Un−1 = n3 + 3n2 + 2n.
これらを加えれば,
(
)
(
)
Un − U0 = 13 + 23 + · · · + n3 + 3 12 + 22 + · · · + n2 + 2 (1 + 2 + · · · + n)
= Cn + 3Qn + 2Sn .
U0 = 0 だから,
Un = Cn + 3Qn + 2Sn .
したがって,
n(n + 1)(n + 2)(n + 3)
n(n + 1)(2n + 1)
n(n + 1)
−3
−2
4
6
2
n(n + 1)(n + 2)(n + 3) n(n + 1)(2n + 1)
−
− n(n + 1)
=
4
2
)
n(n + 1)
n(n + 1) ( 2
=
((n + 2)(n + 3) − 2(2n + 1) − 4) =
n + 5n + 6 − 4n − 2 − 4
4
4
n2 (n + 1)2
.
=
4
Cn = Un − 3Qn − 2Sn =
24
F
球の表面積についてのアルキメデスの定理
√
補題 F.1. 底面の半径が a で高さが h の円錐の側面積は c = a2 + h2 とおくとき,
πac である.
√
[証明] 展開図をかけば,側面は半径 c = a2 + h2 の円の長さ 2πa の弧に対す
る扇形だから,その中心角は θ = 2πa/c であり,したがって,面積は
1 2
c θ = πac
2
である.
補題 F.2. 底面の半径が a1 で高さが h1 の円錐から,その一部である同じ頂点をも
ち底面の半径が a2 で高さが h2 (a2 < a1 , h2 < h1 ) の円錐を除いた部分の側面積は
√
√
c = a21 + h21 − a22 + h22 とおくとき
π(a1 + a2 )c
である.
[証明] c1 =
F.1 から
√
√
a21 + h21 , c2 = a22 + h22 とおいて求める側面積を S とすると補題
S = πa1 c1 − πa2 c2 .
辺の長さが a1 , h1 , c1 の直角三角形と辺の長さが a2 , h2 , c2 の直角三角形は相似だか
ら,0 < t < 1 が存在して (a2 , h2 , c2 ) = (ta1 , th1 , tc1 ) が成り立つ.このとき,
S = πa1 c1 − πa1 c1 t2 = πa1 c1 (1 − t2 )
= πa1 (1 + t)c1 (1 − t) = π(a1 + ta1 )(c1 − tc1 )
= π(a1 + a2 )(c1 − c2 ) = π(a1 + a2 )c.
h2
h1
a2
c
a1
図 15: 円錐の一部の側面積
25
図 16 のように円弧 A1 EB1 を EF を軸として回転させて得られる曲面 (球面の一
部) の面積 S を求めよう.円の半径を r とする.円弧 A1 EB1 を 2n 等分したときの
等分点を A1 , A2 , . . . , An , E, Bn , . . . , B2 , B1 とする (図 16 は n = 3 の場合).Ai Bi の
中点を Ci とし,Ai Bi+1 と OE の交点を Di とする (i = 1, 2, . . . , n − 1).Dn = E
とする.C1 E = b とする.
直角三角形 Ai Ci Di と直角三角形 Bi+1 Ci+1 Di について,Ai Bi と Ai+1 Bi+1 は平行
だから,∠Ci Ai Di = ∠Ci+1 Bi+1 Di である.したがって,△Ai Ci Di と △Bi+1 Ci+1 Di
は相似である.円弧 Bi Bi+1 と円弧 Bi+1 Bi+2 の長さは等しいから,円周角の定理
によって △Bi Ai Bi+1 = △Bi+1 Ai+1 Bi+2 が成り立つ.したがって,△Ai Ci Di と
△Ai+1 Ci+1 Di+1 も相似である.よって,i = 1, 2, . . . , n − 1 について
Ai Ci
Bi+1 Ci+1
Ai+1 Ci+1
=
=
C i Di
Ci+1 Di
Ci+1 Di+1
(F.1)
が成り立つ.さらに,∠EBn F は直径上の円周角だから直角であり,円周角の定理に
より,∠An F E = ∠Bn F E = ∠Bn An E である.したがって,△An Cn E は △F An E
と相似である.よって,
An Cn
F An
=
(F.2)
Cn E
An E
が成り立つ.(F.1) と (F.2) により,すべての i = 1, 2, . . . , n − 1 について
Ai Ci
Bi+1 Ci+1
F An
=
=
C i Di
Ci+1 Di
An E
(F.3)
が成り立つ.したがって,
A1 C1 + B2 C2 + A2 C2 + B3 C3 + · · · + An Cn
F An
=
C1 D1 + C2 D1 + C2 D2 + C3 D2 + · · · + Cn Dn
An E
を得る.左辺の分母は C1 E であり,分子は A1 C1 + A2 B2 + A3 B3 + · · · + An Bn だ
から
A1 C1 + A2 B2 + A3 B3 + · · · + An Bn
F An
=
.
(F.4)
C1 E
An E
一方,線分 Ai Ai+1 を EF のまわりに回転させて得られる曲面の面積は補題 F.2 より
(
)
1
1
π
Ai Bi + Ai+1 Bi+1 Ai Ai+1
2
2
だから,折れ線 A1 A2 · · · An E を EF のまわりに回転させて得られる曲面の面積を
Sn とすれば
π
(A1 B1 + 2A2 B2 + · · · + 2An E)An E
2
= π(A1 C1 + A2 B2 + · · · + An E)An E
Sn =
26
である.これと (F.4) より
Sn = π
F An
C1 EAn E = πF An · C1 E
An E
を得る.C1 E = b であり,F An は n について単調増加で n → ∞ とすれば F An →
F E = 2r だから,Sn も n について単調増加で
S = lim Sn = 2πrb
n→∞
を得る.とくに,b = r とすれば,半球の表面積が 2πr2 であり,球の表面積は 4πr2
となる.
A3
A2
E
B3
D2
C2
B2
D1
A1
C1
O
F
図 16: 球面の一部の面積
27
B1