Contents 001 003 005 プロローグ ネットワークから生まれる明日への期待 1 プログラムについて 007 取り組みのねらい 008 選定理由 009 概要 011 013 023 2 プログラムの歩み 年表 3 人材交流の実績 025 長期研修の実績 026 長期研修参加者の声 029 長期研修受入側の声 030 短期研修の実績 032 短期研修参加者の声 045 短期研修受入側の声 049 セミナー開催数 051 4 大学別の取り組み 053 筑波大学の紹介 054 筑波大学からのメッセージ 055 筑波大学のセミナー実績 066 東京大学の紹介 067 東京大学からのメッセージ 068 東京大学のセミナー実績 074 千葉大学の紹介 075 千葉大学からのメッセージ 076 千葉大学のセミナー実績 082 東京女子医科大学の紹介 083 東京女子医科大学からのメッセージ 084 東京女子医科大学のセミナー実績 091 自治医科大学の紹介 092 自治医科大学からのメッセージ 093 099 自治医科大学のセミナー実績 5 社会への情報提供 101 ホームページの充実 106 広報物の制作 109 発表の機会 113 メディアの活用 119 6 評 価 121 外部評価委員の評価 131 文部科学省の中間評価 132 その他の評価 133 7 シンポジウムの記録 135 第 1 回シンポジウム 174 第 2 回シンポジウム 213 第 3 回シンポジウム 256 第 4 回シンポジウム 292 第 5 回シンポジウム 331 8 エピローグ 333 取組を終えて 335 推進スタッフの紹介 プロローグ ネットワークから生まれる明日への期待 我が国の医療・医学を取り巻く背景は大きく変化しています。少子高齢化、 社会・疾病構造の複雑化に伴い、これらに対応するための医師をはじめ医 療人の養成は新たな局面を迎えています。地域医療の崩壊からの再生など 取り組まなくてはならない課題が多くあります。 そのため、医師養成機関として大学病院に課せられた使命は大きいものがあります。大学病院は、 教育・診療・研究・地域貢献・社会貢献・国際化など多くの社会的役割を有しており、それらを 充実発展させることが重要になっています。また、一つの大学病院だけでなく、地域ネットワー ク相互の連携による機能の強化が今後重要になってまいります。この結果として、地域医療の再 生の原動力になってゆくことなどが大いに期待されます。 このような中、文部科学省の支援を受けて、「東関東・東京高度医療人養成ネットワーク」では、 5年の補助事業期間、関東に立地する5大学が、今後の若手専門研修医に必要な幅の広い経験、 質の高い教育、自らの多様なキャリアパスの積み重ねなどを実現するために、国私立の壁を超え て取り組んでまいりました。そして、各大学の強みを相互に生かせるシステムの基礎が出来上が ろうとしています。この取り組みにより、医師教育において先導的な取り組みを進めてきました。 現在、「ライフイノベーション」「メディカルイノベーション」など、医療関連分野が注目され ています。こうした背景から、高度な医療の提供とともに、基礎と臨床の融合研究、医工連携の 推進など、医療人の活躍フィールドが広がっており、また、それぞれが複雑に連携してまいります。 これらを担う若手人材の養成への寄与も今後期待するところです。 本ネットワークのさらなる発展により、若手医師が自らのキャリアパスの実現のため、そして 新たな役割において活躍できる人材として成長できる環境形成の推進、地域からも信頼される資 質の高い医師の形成などが図れるよう願っています。 2013 年 3 月 筑波大学副学長(医療担当)・理事 筑波大学附属病院長 五十嵐 徹也 Advanced Clinical Training-network Report 003 1 プログラムについて 取り組みのねらい 「東関東・東京高度医療人養成ネットワーク」(本事業)は、東関東・東京に位置する 5 つの大 学病院が緊密に連携・協力し、それぞれの得意分野を生かした相互補完を図ることで、より完成 度の高い魅力ある研修プログラムを提供する事業として、平成 20 年度に文部科学省の大型プロジェ クトである大学病院連携型高度医療人養成推進事業(現大学病院間の相互連携による優れた専門 医等の養成プログラム)に採択されました。 本事業では、若手医師のキャリアアップ環境の改善を図り、効果的なキャリアアップと併せて 地域医療の充実に資するため、専門医のみならず臨床研究者の養成も視野に入れ、各大学病院が 連携して体系的な研修コースを構築しました。これにより若手医師の積極的な人材交流を図り、 もって各大学における専門研修に進む医師の増加を実現することを目的としています。 この目的のために、平成 20 年度から筑波大学附属病院総合臨床教育センターを中心に、東京大学、 千葉大学、東京女子医科大学及び自治医科大学の 5 大学でネットワークを形成し、各大学並びに 関連病院における後期研修プログラムの充実を図ってまいりました。 今後も、本補助事業で構築した資源やネットワークを生かし、本事業で導入されたシミュレー ター等の教育資源の活用、及び各連携大学の得意分野を生かしたセミナーやカンファレンス等の 企画も充実させ、専門的医療技術や知識の向上を担うとともに、国民の期待に応えられる良医の 養成に取り組んでいきたいと思います。そして、人材交流を通した高度医療人の養成及び大学病 院への若手医師の回帰を推進させ、医療の高度化、地域医療等の資質の向上を担ってまいりたい と思っております。 また、引き続きのご支援・ご指導のほどよろしくお願いいたします。 ACT-network 事業推進責任者 前野 哲博 Advanced Clinical Training-network Report 007 選定理由 (平成 20 年度「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」選定委員会より) 本プログラムは、筑波大学を中心とした東関東 5 大学による、相互補完・連携によって構想されているが、 構成する大学のバランスの良さもさることながら、全ての大学が首都圏にあることから交通の利便性もあり、 人材の移動と連携のしやすさでは、他の追随を許さない。 また、高い専門性と臨床能力を有するアカデミックマインドを尊重しながらのアカデミックレジデント制 度の導入も魅力的である。さらには、プログラムが多彩かつ豊富である点は高く評価できる。教育学的要素 を取り入れ、教育ツールの作成にも力を注いでいることも期待できる点である。 一方で、各大学間の連携については大いに評価するものの、具体的な方策については、目新しい提案がな されていないという弱点がある。 また、幾つかの大学の単独コースに、既存のいわゆる専門医研修制度と変わらない部分がある。 また、さらに卒前教育との関連の掲載に乏しく、総合診療能力を有する医師の育成枠を広げる必要がある。 さらに言うと、バランスの良い大学でありながら、その特徴を生かした役割分担や研修の到達目標への具 体性に難点がある。 008 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 概要 ●ロゴマークについて 東関東と東京に位置する 5 つの大学を(星)にたとえ、 その5つを結んだ星印をロゴマークとしました。 ●事業目的を達成するためのソリューション 連携運営・・・・・・・・・・・・・・・・ 合同会議の開催 コーディネーター会議の開催 事務局と各大学の情報共有 研修プログラムの整備・・・・・・・・・・ 5 大学の各療科の専門研修プログラムを Update 研修のアウトカムを明確化 若手医師に合わせた内容のプログラムを ホームページに公開 積極的な広報活動・・・・・・・・・・・・ 事業紹介パンフレット、ポスターの作成 ホームページでの情報公開 各種イベントの参加者募集 セミナー、合同カンファレンスの開催・・・ 専門研修医にスキルアップの機会を提供 指導医は FD として活用 シンポジウムの開催・・・・・・・・・・・ 年に一度、5 大学の診療科担当者が一堂に会し 本事業についての共通理解を図る 全体会議にて人材交流の計画を具体化する Advanced Clinical Training-network Report 009 2 プログラムの歩み ■ プログラムの歩み(年表) 平成 20 年度 H20. 7 ・平成 20 年度大学改革推進等補助金「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」選定が決定 7/18 ・第 1 回実務担当者会議 開催 7/25 H20. 8 ・Kick Off ミーティング 開催 8/ 7 H20.10 ・第 1 回合同会議 開催 10/ 3 H20.11 ・第 2 回合同会議 開催 11/ 7 ・自治医科大学「第 1 回学内説明会」 開催 11/11 ・自治医科大学「第 2 回学内説明会」 開催 11/12 第 2 回合同会議 ・自治医科大学「第 3 回学内説明会」 開催 11/13 H20.12 ・第 3 回合同会議 開催 12/ 5 20 年度 GP フォーラム ・筑波大学「第 1 回事業説明会」 開催 12/11 ・筑波大学「第 2 回事業説明会」 開催 12/15 H21. 1 ・『レジデントノート 2 月号』 事業広告掲載 1/1 ・第 4 回合同会議 開催 1/ 9 ・20 年度「GP フォーラム」ポスターセッション 参加、分科会 発表 1/12 H21. 2 ・第 5 回合同会議 開催 2/ 6 ・第 1 回シンポジウム 開催 2/11 ・第 2 回実務担当者会議 開催 2/26 H21. 3 ・第 6 回合同会議 開催 3/ 6 ・東京大学「東関東・東京 VR シミュレーターフォーラム 外科トレーニングの新たな潮流」 開催 3/19 第 1 回シンポジウム ・筑波大学「第 1 回 VIST セミナー」 開催 3/27 ・ACT-network 公式ホームページ 誕生 平成 21 年度 ホームページ誕生! H21. 4 ・第 1 回合同会議 開催 4/10 H21. 5 ・第 2 回合同会議 開催 5/1 ・千葉大学「後期研修プログラム説明会」 参加 5/30 H21. 6 ・第 1 回コーディネーター会議 開催 6/ 1 ・第 3 回合同会議 開催 6/ 5 H21. 7 ・第 4 回合同会議 開催 7/ 3 ・「東大病院まるごと探訪フェスティバル」 参加 7/18 VIST サマーセミナー ・筑波大学「第 2 回 VIST セミナー」 開催 7/31 ・筑波大学「第 1 回事業説明会」 開催 7/29 H21. 8 ・東京女子医科大学「心研小児科夏季セミナー」 開催 8/1-2 ・自治医科大学「九十九里地域医療夏期セミナー」 開催 8/1-2 ・筑波大学「第 2 回事業説明会」 開催 8/ 3 ・筑波大学「不整脈次世代研究部門医師向け教育プログラム 第 1 回アドバンストコース」 開催 8/5-7 ・東京女子医科大学「医療練士研修生募集説明会」 参加 8/15 ・筑波大学「不整脈次世代研究部門医師向け教育プログラム 第 1 回ビギナーコース」 開催 8/19 ‐ 20 女性医療に役に立つ メンタルヘルスの基礎知識 Advanced Clinical Training-network Report 013 ・筑波大学「第 3 回 VIST サマーセミナー」 開催 8/22 ・筑波大学「後期研修説明会」 参加 8/29 ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎 知識 前期」 開催 8/29 H21. 9 ・第 5 回合同会議 開催 9/ 4 ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎 知識 前期」 開催 9/5-6 ・東京女子医科大学「多断面 CT 画像・3D 画像作成研修プログ 第 2 回コーディネーター会議 ラム 冠動脈 CT 編」 開催 9/12 ・筑波大学「第 3 回 VIST セミナー」 開催 9/25 ・『月刊財界人 11 月号』 特集記事掲載 9/25 H21.10 ・『レジデントノート 11 月号』 事業広告掲載 10/1 ・第 6 回合同会議 開催 10/ 9 ・『臨床研修プラクティス 11 月号』 事業広告掲載 10/10 ・東京女子医科大学「多断面 CT 画像・3D 画像作成研修プログ ラム 冠動脈画像解析実習」 開催 10/17 コーディネーター FD ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎知識 後期 女性医療に必要な皮膚科学の知識とサイコダーマトロジー」 開催 10/17 ・筑波大学「がん治療セミナー ‐ 進行腎細胞癌の治療戦 ‐ 」 開催 10/18 ・第 2 回コーディネーター会議 開催 10/23 ・筑波大学 「第 5 回 VIST セミナー 冠動脈造影 CAG 及び冠動脈 インターベンション治療 PCI」開催 10/23 ・コーディネーター FD(筑波大学シミュレーター教育) 開催 10/23 H21.11 ・第 7 回合同会議 開催 11/ 6 ・『週刊医学界新聞』 事業広告掲載 11/9 ・筑波大学「不整脈次世代研究部門医師向け教育プログラム 第 2 回ビギナーコース」 開催 11/12-13 レジデントノート広告 H21.10 ・東京女子医科大学「ICLS 指導者養成講習会」 開催 11/14 ・筑波大学 第 6 回 VIST オータムセミナー 開催 11/28 H21.12 ・第 8 回合同会議 開催 12/ 4 ・第 3 回コーディネーター会議 開催 12/ 4 ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つメンタルヘルスの 基礎知識 後期摂食障害集中講座」 開催 12/5-6 ・第 4 回コーディネーター会議 開催 12/11 ・千葉大学「第 4 回神経内視鏡ハンズオンセミナー」 開催 12/12-13 ・筑波大学「読める心電図!心電図読影セミナー」 開催 12/19 H22. 1 ・平成 21 年度「GP フォーラム」ポスターセッション参加 1/ 8 第 7 回 VIST セミナー ・第 9 回合同会議 開催 1/ 8 ・筑波大学「第 7 回 VIST セミナー 冠動脈造影 CAG 及び冠動 脈インターベンション治療 PCI」 開催 1/15 ・東京女子医科大学「東京女子医科大学総合診療科/千葉大学総 合診療部 合同カンファレンス」 開催 1/15 ・千葉大学「腹部超音波スクリーニングセミナー」 開催 1/25 ・筑波大学「不整脈次世代研究部門医師向け教育プログラム 第 2 回アドバンストコース」 開催 1/27-29 014 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 21 年度 GP フォーラム ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎 知識 後期気分障害・不安障害集中講座」 開催 1/30-31 ・千葉大学「第 1 回ブタを用いた外科手術基本手技研修会」 開催 1/31 H22. 2 ・第 10 回合同会議 開催 2/ 5 ・千葉大学「ブタを用いた腹腔鏡下胃切除研修会」 開催 2/6 ・第 2 回シンポジウム 開催 2/11 ・平成 21 年度評価委員会 開催 2/11 ・筑波大学「第 1 回救急・蘇生セミナー AHA ACLS ‐ EP コース」 開催 2/2 ・自治医科大学「第 1 回脳死下臓器摘出シミュレーション 第1回外科手術基本手技研修会 セミナー」 開催 2/20 ・筑波大学「第 2 回救急・蘇生セミナー AHA ACLS ‐ EP コース」 開催 2/21 ・筑波大学「第 8 回 VIST セミナー」 開催 2/24 ・東京大学「第 1 回新生児 NCPR 講習会 専門コース」 開催 2/27 H22. 3 ・第 11 回合同会議 開催 3/ 5 ・筑波大学「第 9 回 VIST セミナー」 開催 3/5 ・千葉大学「後期研修プログラム説明会」 参加 3/30 ・ACT-network『筑波大学 学長表彰』 受賞 3/15 第 2 回シンポジウム 平成 22 年度 H22. 4 ・筑波大学「第 10 回 VIST セミナー」 開催 4/6 ・第 1 回合同会議 開催 4/ 9 ・筑波大学「第 11 回 VIST セミナー」 開催 4/20 ・東京女子医科大学「消化器内視鏡トレーニング・ ハンズオンセミナー」 開催 ・自治医科大学『ACT ☆ News』 発行 4/30 H22. 5 ・ACT-network 事業紹介動画 Web 配信開始 筑波大学 学長表彰 受賞 H21 評価委員会 ・自治医科大学「第 1 回学内説明会」 参加 5/ 6 ・第 1 回コーディネーター会議 開催 5/ 7 ・コーディネーター FD(自治医科大学医療技術開発 センター 鏡視下手術トレーニング) 開催 5/ 7 ・自治医科大学「第 2 回学内説明会」 開催 5/12 ・自治医科大学「第 3 回学内説明会」 開催 5/18 ・自治医科大学「第 4 回学内説明会」 開催 5/21 ・筑波大学「第 12 回 VIST セミナー」 開催 5/25 ・自治医科大学「教授総会」 参加 5/27 H22. 6 ・筑波大学「第 13 回 VIST セミナー」 開催 6/1 動画撮影現場 ・第 2 回合同会議 開催 6/ 4 ・第 2 回コーディネーター会議 開催 6/4 ・「筑波大学ホームカミングデー」 参加 6/ 5 ・千葉大学「後期研修プログラム説明会」 参加 6/ 5 ・千葉大学「第 2 回ブタを用いた外科手術基本手技研修会」 開催 6/12-13 動画バナー ・筑波大学「第 14 回 VIST セミナー」 開催 6/15 Advanced Clinical Training-network Report 015 H22. 7 ・第 3 回合同会議 開催 7/ 2 ・第 3 回コーディネーター会議 開催 7/ 2 ・東京女子医科大学「第 1 回救急集中治療医学セミナー」 開催 7/11 ・「東大病院まるごと探訪フェスティバル」 参加 7/17 ・東京大学「超音波下 腕神経叢ブロックハンズオンセミナー」 開催 7/17 ・筑波大学「第 2 回茨城臨床研修医のための腎セミナー」 開催 7/24 ・東京女子医科大学「若手医師のための夏季漢方入門セミナー 東 レジデントノート 8 月号 洋医学研究所」 開催 7/24-25 ・筑波大学「第 15 回 VIST セミナー」 開催 7/27 ・第 42 回日本医学教育学会大会「VIST を用いた脳神経血管内治 療のトレーニング」発表 7/31 ・東京女子医科大学「心研小児科夏季セミナー」 開催 7/31-8/1 H22. 8 ・『レジデントノート 8 月号』広告掲載 8/1 ・東京女子医科大学「医療練士研修生募集説明会」 参加 8/ 7 ・自治医科大学「地域医療セミナー in 筑西 2010」 開催 8/20-21 ・筑波大学「第 16 回 VIST セミナー」 開催 8/21 ・第 4 回コーディネーター会議 開催 8/21 ・東京女子医科大学「機能脳神経外科夏期セミナー」 開催 8/28 地域医療セミナー in 筑西 H22. 9 ・第 4 回会議合同会議 開催 9/ 3 ・第 5 回コーディネーター会議 開催 9/ 3 ・筑波大学「後期研修説明会」 参加 9/ 4 ・筑波大学「第 17 回 VIST セミナー」 開催 9/7 ・東京大学「関東小児外科症例検討会」 開催 9/20 ・東京大学「形成外科 手術見学・カンファレンス・光嶋 勲 教授 講義・抄録会」開催 9/1 ∼ 12/9 毎週水・木 ・筑波大学「第 18 回 VIST セミナー」 開催 9/28 H22.10 ・東京女子医科大学「5 大学総合診療部門合同カンファレンス」 開催 10/2 ・筑波大学「第 19 回 VIST セミナー」 開催 10/5 ・第 5 回合同会議 開催 10/ 8 ・第 6 回コーディネーター会議 開催 10/ 8 5 大学総合診療部門合同カンファレンス ・筑波大学「第 3 回救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース」 開催 10/9 ・筑波大学「第 3 回救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース」 開催 10/10 ・第 48 回日本医療・病院管理学会学術総会「医師不足解消のた めの大学病院を活用した専門医療人材養成に関するセッション」 発表 10/16 ・東京大学「第 1 回 Todai レジデントカンファ presents 青木 眞 先生 講演会」 開催 10/16 016 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 第 48 回日本医療・病院管理学会学術総会 ・筑波大学「医学セミナー 形成外科分野・歯科口腔外科分野」 開催 10/21 ・筑波大学「第 20 回 VIST セミナー」 開催 10/26 H22.11 ・第 6 回合同会議 開催 11/ 5 ・第 7 回コーディネーター会議 開催 11/ 5 ・筑波大学「第 21 回 VIST セミナー」開催 11/9 ・第 3 回シンポジウム「新しい時代のキャリアデザイン」 開催 11/23 ・自治医科大学「新生児蘇生法 専門コース」 開催 11/27 ・筑波大学「第 22 回 VIST セミナー」 開催 11/30 第 6 回合同会議 H22.12 ・第 7 回合同会議 開催 12/ 3 ・第 8 回コーディネーター会議 開催 12/3 ・東京大学「第2回 Todai レジデントカンファ presents 徳田 安春 先生 講演会」 開催 12/11 ・SAT テクノロジーショーケース 2010 出展 12/24-25 H23. 1 ・筑波大学「第 23 回 VIST セミナー」 開催 1/4 ・第 8 回合同会議 開催 1/7 ・第 9 回コーディネーター会議 開催 1/7 H23. 2 ・第 9 回合同会議 開催 2/ 4 ・第 10 回コーディネーター会議 開催 2/ 4 ・自治医科大学「第 2 回脳死下臓器摘出シミュレーション セミナー 肝臓編」 開催 2/5 ・千葉大学「第 3 回外科手術基本手技セミナー」 開催 2/6 第 3 回シンポジウム ・筑波大学「第 24 回 VIST セミナー」 開催 2/10 ・文部科学省「中間事業評価『A 評価』」 獲得 2/24 H23. 3 ・筑波大学「第 25 回 VIST セミナー」 開催 3/3 ・平成 22 年度評価委員会 開催 3/4 ・第 10 回合同会議 開催 3/4 ・第 11 回コーディネーター会議 開催 3/4 ・自治医科大学「第 3 回脳死下臓器摘出シミュレーション セミナー 膵臓・腎臓編」 開催 3/6 ・東京大学「新生児蘇生法 NCPR 講習会」 開催 3/5 ・東京大学「第 1 回腹部エコー講習会」 開催 3/10 第 2 回脳死下臓器摘出 シミュレーションセミナー 平成 23 年度 H23. 4 ・第 1 回合同会議 開催 4/8 ・筑波大学「第 26 回 VIST セミナー」 開催 4/19 ・筑波大学「第 27 回 VIST セミナー」 開催 4/28 H23. 5 ・筑波大学「第 28 回 VIST セミナー」 開催 5/10 ・コーディネーター FD(東京女子医科大学 TWIns 医工融合研 究教育)開催 5/13 ・第 1 回コーディネーター会議 開催 5/13 ・自治医科大学「学内事業説明会」 開催 5/18, 5/19, 5/27 H22 評価委員会 ・「e レジナビフェア -PREMIUM-2011 in 東京」 参加 5/29 Advanced Clinical Training-network Report 017 H23. 6 ・筑波大学「第 30 回 VIST セミナー」 開催 6/3 ・第 2 回合同会議 開催 6/3 ・「筑波大学ホームカミングデー」 参加 6/4 ・「レジナビフェア 2011」 参加 6/12 ・筑波大学「第 30 回 VIST セミナー」 開催 6/14 ・千葉大学「第 4 回外科手術基本手技セミナー」 開催 6/19 ・筑波大学「第 31 回 VIST セミナー」 開催 6/28 コーディネーター FD ・筑波大学「第 32 回 VIST セミナー」 開催 6/29 H23. 7 ・東京大学「第 3 回 Todai レジデントカンファ presents 寺沢 秀一 先生 講演会」 開催 7/2 ・第 3 回合同会議 開催 7/8 ・筑波大学「第 33 回 VIST セミナー」 開催 7/14 ・「東大病院まるごと探訪フェスティバル」 参加 7/16 コーディネーター会議 ・「レジナビフェア 2011 in 東京」 参加 7/17 ・第 43 回日本医学教育学会大会 「東関東・東京高度医療人養成ネッ トワークの現状と課題」発表 7/22 ・東京女子医科大学「若手医師のための夏季漢方入門セミナー 東洋医学研究所」 開催 7/23-24 ・筑波大学「第 34 回 VIST セミナー」 開催 7/26 ・筑波大学「第 35 回 VIST セミナー」 開催 7/28 ・東京女子医科大学「心研小児科夏季セミナー」 開催 第 4 回外科 手術基本手技セミナー 7/30-31 H23. 8 ・『レジデントノート 8 月号』 事業広告掲載 8/1 ・筑波大学「第 3 回茨城臨床研修医のための腎セミナー」 開催 8/6 ・東京女子医科大学「医療練士研修生募集説明会」 参加 8/6 ・東京女子医科大学「機能脳神経外科夏期セミナー」 開催 第 43 回 医学教育学会 8/20 ・東京女子医科大学『大学ニュース』 記事掲載 8/24 ・筑波大学「医学セミナー 形成外科分野」 開催 8/25 H23. 9 ・筑波大学「後期研修説明会」 参加 9/3 ・筑波大学「第 36 回 VIST セミナー」 開催 9/3 ・自治医科大学「地域医療セミナー in 筑西 2011」 開催 9/3 ・千葉大学「内視鏡的胃粘膜下層剥離術基本技術習得のためのハ ンズオンセミナー」 開催 9/4 地域医療セミナー ・第 4 回合同会議 開催 9/9 ・第 2 回コーディネーター会議 開催 9/9 ・東京大学「第 2 回新生児蘇生法 NCPR 講習会」 開催 9/17 ・東京大学「第 4 回 Todai レジデントカンファ presents 徳田 安春 先生講演会」 開催 9/18 H23.10 ・第 5 回合同会議 開催 10/7 ・筑波大学「第 5 回救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース」 開催 10/8 ・東京女子医科大学「5 大学総合診療部門合同カンファレンス」 開催 10/22 第 2 回 NCPR 講習会 018 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つ医学と健康学の基礎知 識講座 後期 1.」 開催 10/22 ・筑波大学「地域医療機関シミュレーター見学会」 開催 10/27 H23.11 ・第 6 回合同会議 開催 11/4 ・第 3 回コーディネーター会議 開催 11/4 ・千葉大学「心臓血管外科手術セミナー冠動脈バイパス術」 開催 11/6 ・自治医科大学「第 4 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミ 地域医療機関シミュレーター見学会 ナー」開催 11/10 ・筑波大学「第 37 回 VIST セミナー」 開催 11/15 ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つ医学と健康学の基礎知 識講座後期 2.」 開催 11/19-20 ・第 4 回シンポジウム「ACT-network は医療人養成プログラム のブランドに成り得るか」開催 11/23 H23.12 ・第 7 回合同会議 開催 12/2 ・『文教速報』 記事掲載 12/7 ・千葉大学「第 5 回神経内視鏡ハンズオンセミナー」 開催 12/10-11 第 4 回シンポジウム ・『週刊文教ニュース』 記事掲載 12/12 ・筑波大学「第 38 回 VIST セミナー」 開催 12/16 H24. 1 ・自治医科大学「新生児蘇生法 専門コース A コース」 開催 1/14 ・第 8 回合同会議 開催 1/6 ・筑波大学「第 39 回 VIST セミナー」 開催 1/12 ・筑波大学「第 40 回 VIST セミナー」 開催 1/24 ・東京女子医科大学「女性医療に役に立つ医学と健康学の基礎知識 講座 後期 3.」開催 1/28-29 ラヂオつくば出演 H24. 2 ・第 9 回合同会議 開催 2/3 ・千葉大学「第 5 回外科手術基本手技セミナー」 開催 2/12 ・千葉大学「第 6 回外科手術基本手技セミナー」 開催 2/19 ・『ラヂオつくば』 出演(ACT-network の事業紹介及び講演会 「よみがえる命を感じる日」)の宣伝 2/20 ・千葉大学「頸動脈エコーハンズオンセミナー」 開催 2/22 ・筑波大学 講演会「心肺蘇生と心血管緊急治療ガイドライン 2010 What’s New! よみがえる命を感じる日」 開催 2/25 ・東京大学「第 3 回新生児蘇生法 NCPR 講習会」 開催 2/25 よみがえる命を感じる日 ・東京大学「第 2 回腹部エコー講習会」 開催 2/29 H24. 3 ・平成 23 年度評価委員会 開催 3/2 ・第 10 回合同会議 開催 3/2 ・筑波大学「第 1 回モバイル VIST セミナー in 千葉大学」 開催 3/3 平成 24 年度 H24. 4 ・第 1 回合同会議 開催 4/6 ・千葉大学「第 2 回モバイル VIST セミナー in 千葉大学」 開催 4/7 ・東京大学「老年病科講演会 Geriatrics Medical Education in America」 開催 4/18 腹部エコー講習会 Advanced Clinical Training-network Report 019 H24. 5 ・東京大学「第 4 回新生児蘇生法 NCPR 講演会」 開催 5/12 ・第 1 回コーディネーター会議 開催 5/18 ・筑波大学「第 41 回 VIST セミナー」 開催 5/22 H24. 6 ・自治医科大学 講演会「今、医療に求められるプロフェッショ ナリズムとは」 開催 6/1 ・第 2 回合同会議 開催 6/8 H24. 7 ・第 3 回合同会議 開催 7/6 老年病科講演会 ・「東大病院まるごと探訪フェスティバル」参加 7/14 ・「レジナビフェア 2012 in 東京」 参加 7/15 ・筑波大学「Tsukuba High Speed Drill Hands On セミナー」 開催 7/22 ・第 44 回日本医学教育学会大会「ACT-network における 5 年 間の実績と今後の展開 」発表 7/27 講演会「今、医療に求められるプロフェッ ショナリズムとは」 ・東京女子医科大学「若手医師のための夏季漢方入門セミナー 東 洋医学研究所」 開催 7/28-29 ・東京女子医科大学「心研小児科夏季セミナー」 開催 7/28-29 H24. 8 ・第 12 回 VR 医学会学術大会「VIST を用いた血管造影・血管内 治療の教育」発表 8/25 ・東京女子医科大学「機能脳神経外科夏期セミナー」 開催 8/25 H24. 9 ・第 2 回コーディネーター会議 開催 9/7 ・東京大学「第 5 回 Todai レジデントカンファ presents ジョエ ル ブランチ先生講演会」 開催 9/8 ・自治医科大学「総合診療オープンセミナー」 開催 9/8 ・千葉大学「第 8 回外科手術基本手技セミナー」 開催 9/9 ・筑波大学「第 4 回臨床研修医のための腎セミナー」 開催 High Speed Drill Hands On セミナー 9/15 ・東京大学「総合診療オープンカンファレンス 機能する救急医 療」開催 9/17 H24.10 ・第 4 回合同会議 開催 10/5 ・筑波大学 「第 6 回救急・蘇生セミナー AHA ACLS-Provider コー 第 44 回日本医学教育学会大会 ス」 開催 10/6-7 ・千葉大学「第 9 回外科手術基本手技セミナー」 開催 10/14 ・東京大学「第 3 回腹部エコー講習会」 開催 10/31 H24.11 ・第 5 回合同会議 開催 11/2 ・千葉大学「第 2 回心臓血管外科手術セミナー 冠動脈バイパス 術」 開催 11/4 第 5 回 Todai レジデントカンファ ・東京大学「AMLS プロジェクト BLS/ACLS コース」 開催 11/10-11 ・東京大学「経食道心エコーセミナー」 開催 11/17 ・第 5 回シンポジウム「Sustainable な人材交流 ‐ 大学病院連携による 高度医療人の養成 ‐ 」 開催 11/23 H24.12 ・東京大学「AMLS プロジェクト AMLS プロバイダー」 開催 12/1-2 ・第 6 回合同会議 開催 12/7 ・千葉大学「外傷手術 SSTT セミナー」 開催 12/15-16 ・千葉大学「第 6 回神経内視鏡ハンズオンセミナー」 開催 12/22-23 H25. 1 ・第 7 回合同会議 開催 1/11 第 5 回シンポジウム 020 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ・筑波大学「小児・周産期専門教育分野 教育セミナー」 開催 1/11 ・東京大学「第 6 回 Todai レジデントカンファ Presents 徳田 安春 先生講演会」 開催 1/12 ・東京大学「AMLS プロジェクト ACLS インストラクター」 開 催 1/12 ・東京大学「AMLS プロジェクト ACLS プロバイダー」 開催 1/13 ・東京大学「AMLS プロジェクト AMLS インストラクター」 開 催 1/14 ・東京大学「AMLS プロジェクト AMLS プロバイダー」 開催 第 6 回神経内視鏡ハンズオン セミナー 1/26-27 H25. 2 ・第 8 回合同会議 開催 2/1 ・東京大学「心エコーセミナー」 開催 2/2 ・自治医科大学「第 5 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミ ナー」 開催 2/6 ・東京女子医科大学「5 大学総合診療部門合同カンファレンス」 開催 2/23 ・東京大学「第 4 回腹部エコー講習会」 開催 2/27 AMLS プロジェクト H25. 3 ・第 9 回合同会議 開催 3/1 第 5 回脳死下臓器摘出シミュレーション セミナー Advanced Clinical Training-network Report 021 3 人材交流の実績 ■ 長期研修の実績 年度 研修者 所属大学 研修先 研修期間 専門医等取得状況 東京大学 放射線科 筑波大学 放射線診断 IVR 科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) 東京大学 放射線科 自治医科大学 小児画像診断部 放射線腫瘍科 11 月 1 日∼ 3 月 31 日 日本医学放射線学会専門医 (5 ヶ月) 歯科・口腔外科医 卒後 9 年目 千葉大学 歯科・顎・口腔 外科 筑波大学 歯科・口腔外科 4 月 1 日∼ 11 月 30 日 (8 ヶ月) リウマチアレルギ ー内科医 卒後 3 年目 4 月 1 日∼ 東京大学 筑波大学 膠原病リウマチア アレルギー・リウマ 12 月 31 日 (9 ヶ月) チ内科 レルギー内科 放射線科医 21 卒後 4 年目 年 度 放射線科医 卒後 5 年目 日本医学放射線学会専門医 内科学会認定医 筑波大学 放射線診断 IVR 科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) 日本医学放射線学会専門医 東京大学 放射線科 自治医科大学 小児画像診断部 放射線腫瘍科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) 日本医学放射線学会専門医 消化器外科医 卒後 15 年目 千葉大学 食道・胃腸外科 筑波大学 乳腺甲状腺内分泌 外科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) 日本外科学会認定医 マンモグラフィ読影認定医 歯科・口腔外科医 卒後 7 年目 東京女子医科大学 東京大学 歯科口腔外科 歯科・口腔外科 10 月 1 日∼ 日本口腔インプラント学会専 門医 3 月 31 日 日本有病者歯科医療学会認定医 (6 ヶ月) 腎臓内科医 卒後 5 年目 東京大学 腎臓内分泌内科 東京女子医科大学 腎臓外科 4 月 1 日∼ 9 月 30 日 (6 ケ月) 移植学会認定医 消化器外科医 卒後 15 年目 千葉大学 食道・胃腸外科 筑波大学 乳腺甲状腺内分泌 外科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) 日本外科学会認定医 マンモグラフィ読影認定医 千葉大学 歯科・顎・口腔 外科 筑波大学 歯科・口腔外科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) なし 歯科・口腔外科医 23 卒後 8 年目 年 度 総合診療科医 卒後 5 年目 東京女子医科大学 水戸協同病院 総合診療科 総合診療科 6人 ECFMG(Educational Commission Foreign Medical Graduates) 米国で 臨床研修を受けられる資格 10 月 1 日∼ 内科学会認定医 日本プライマリケア連合学会 3 月 31 日 家庭医療専門医 (6 ヶ月) 10 月 1 日∼ 日本口腔外科学会専修医(申 請中) 3 月 31 日 日本有病者歯科医療学会認定 (6 ヶ月) 医(申請中) 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 なし (1 年) 6 月 1 日∼ 2 月 29 日 (9 ヶ月) 総合診療科医 卒後 9 年目 筑波大学 総合診療科 歯科口腔外科医 卒後 4 年目 東京女子医科大学 東京大学 歯科口腔外科 歯科・口腔外科 形成外科医 卒後 9 年目 筑波大学 形成外科 千葉大学 形成・美容外科 千葉大学 食道・胃腸外科 筑波大学 乳腺甲状腺内分泌 外科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) 日本外科学会認定医 マンモグラフィ読影認定医 千葉大学 歯科・顎・口腔 外科 筑波大学 歯科・口腔外科 4 月 1 日∼ 3 月 31 日 (1 年) なし 24 消化器外科医 年 卒後 15 年目 度 歯科・口腔外科医 卒後 8 年目 東京大学 老年病科 2人 なし 東京大学 放射線科 放射線科医 22 卒後 4 年目 年 度 放射線科医 卒後 5 年目 実績 6人 3人 Advanced Clinical Training-network Report 025 長期研修 参加者の声 【研修者】 東京大学 放射線科医 (研修時 卒後 4 ∼ 5 年目) 【研先】 筑波大学 放射線診断・IVR 科 【研修期間】 平成 21 年 4 月 1 日(水) ∼ 平成 22 年 8 月 31 日(火) 【研修内容】 General Radiology の習得を目指し、単純写真・CT を基本とし、3 ヶ月ごとに次の部門を順に回り、1 年間で放射線診断学の基礎的な力を身に付けた。 ① 超音波検査 ② 消化管造影 ③ MRI ④ 血管造影・IVR 【感 想】 各大学、施設による機器、患者層の違いがあるため、他大学で研修することによって幅広い勉強をする ことが出来た。 また、東京大学医学部附属病院内ではルーティンの教育課程には含まれていない、消化管造影、超音波 検査を研修することが出来、非常に勉強になった。 【研修者】 筑波大学 膠原病リウマチアレルギー内科医 (研修時 卒後 3 年目) 【研修先】 東京大学 アレルギー・リウマチ科 【研修期間】 平成 22 年 4 月 1 日 ∼ 12 月 31 日 【研修内容】 東京大学のアレルギー・リウマチ内科の後期研修医という立場で、9 ヶ月間の専門研修を行った。 (4 ∼ 6 月) 病棟入院患者の受け持ち医として診療。具体的には入院患者の全身管理・治療やカンファレンスで提示 するサマリー作成など。また、専門研修医として 5 月以降は東大病院の総合内科当直を月 1 回程度行った。 (7 ∼ 8 月,11 ∼ 12 月) コンサルトチームの一員として他科からリウマチ科に対してコンサルトのあった患者の診察を行い、回 答をする。また、救急で来院したリウマチ科かかりつけの患者の外来診療を行い、救急病棟に入院した 重症患者については受け持ち医として入院診療を担当した。 (9 ∼ 11 月) 病棟入院患者の担当医として診療にあたった。4 月∼ 6 月には初期研修医業務を主に担当したが、この 時期はチューベン補佐としてカンファレンスの進行や初期研修医への指導も学んだ。リウマチ科の医員 として東大病院の 7 科当直も月 1 度程度行った。 【感 想】 東大の先生方には非常に親切に指導していただき大変感謝しております。 専門研修医として所属大学以外の大学病院の診療システムや教育・研修システムの内容を知ることがで きたのは、今後自身の大学で専門研修医として働く際、また指導を行う立場になった時に非常に有用な ことであると思います。 同じ大学病院でも出身大学と比較し、CT や MRI などの画像撮影がスムーズであり救急外来・入院診療 にあたる上で非常にやりやすかった。電子カルテシステムも自分の大学と比較し利点・欠点があり、今 後機会があれば是非提言したいと思った。 026 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【研修者】 東京女子医科大学 歯科口腔外科医 (研修時 卒後 7 年目) 【研修先】 筑波大学 歯科口腔外科 【研修期間】 平成 22 年 10 月 1 日 ∼ 平成 23 年 3 月 31 日 【研修内容】 (10 月∼ 11 月) 外来診療:外来患者に対する処置(埋伏智歯抜歯、顎関節症、舌痛症等)や他科入院患者の診察(口腔 内のスクリーニング、口腔ケア等)を行った。 (12 月∼ 3 月) 入院管理:口腔外科入院患者の管理や全身麻酔下での手術(嚢胞摘出術、プレート除去術、上顎洞根治術、 頸部郭清術等)を経験した。 【感 想】 今まで他施設での診療経験が少なく、今回筑波大学での研修の機会があり半年間勉強させていただきま した。筑波大学も東京女子医科大学同様、歯科口腔外科は一般歯科と口腔外科の両方を行っていますが、 口腔癌症例や手術症例が多く、今まで以上に多くのことを経験することができました。また治療方法の 選択肢も増え診療の幅が広がった気がします。今回経験したことを日々の診療に活用していきたいと思 います。 【研修者】 東京女子医科大学 総合診療科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修先】 水戸協同病院 総合診療科 【研修期間】 平成 23 年 6 月 1 日∼平成 24 年 2 月 29 日 【研修内容】 総合診療科での病棟管理、夜間当直、医療者向けレクチャー 【研修を受けて良かった点】 これまで出身大学関連病院でしか研修していなかったが、研修を受けることで様々なスタッフに囲まれ て、学び刺激を受けることが出来た。 【研修における改善が必要な点】 研修当初、visiting resident としての立場が確立しておらず、悩むことがあった。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった B 2 指導医による建設的なフィードバックがあった E 3 研修により診療能力が向上した B 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった C A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない 6 後輩に本プログラムを勧めたいか B Advanced Clinical Training-network Report 027 【研修者】 東京女子医科大学 歯科口腔外科医 (研修時 卒後 4 年目) 【研修先】 筑波大学 歯科口腔外科 【研修期間】 平成 23 年 10 月 1 日 ∼ 平成 24 年 3 月 31 日 【研修内容】 外来診療3か月病棟診療3か月という内容で、外来では口腔外科小手術を主に行い、病棟では入院患者 の管理および手術執刀、助手などを行った。 【研修を受けて良かった点】 東京女子医大とは異なった症例や術式が多く、また症例数も多いことから幅広く口腔外科を学ぶ事が出 来、スキルアップにつながった。 【研修における改善が必要な点】 特にない。充実したシステムだった 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった A A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない 6 後輩に本プログラムを勧めたいか 【プログラムへの要望】 非常にいいシステムなので今後も継続して頂きたい。 028 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 A 長期研修 受入側の声 【担当医】 水戸協同病院 総合診療科 【研修者】 東京女子医科大学 総合診療科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修期間】 平成 23 年 6 月 1 日∼平成 24 年 2 月 29 日 【受入開始までのプロセス】 本人と筑波大学からメールで連絡があり、面接を行って、受け入れを決定しました。 【受入を行って良かった点】 総合診療科のチームの主力レジデントメンバーとして、患者ケアと研修医教育に貢献していました。 【受入における改善が必要な点】 当院で給与を支払うことになったが、地域の小病院の財政事情もあり、できれば大学病院から給与を拠 出してほしい。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた C 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった B 【プログラムへの要望】 できれば大学病院から給与を拠出してほしい Advanced Clinical Training-network Report 029 ■ 短期研修の実績 年度 21 研修者 11 月 16 日, 日本医学放射線学会放射線治 17 日 ,19 日 療専門医 放射線腫瘍科医 卒後 5 年目 筑波大学 放射線腫瘍科 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 11 月 24 日∼ 日本医学放射線学会放射線治 11 月 26 日 療専門医 脳神経外科医 大学院 2 年生 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 12 月 16 日 手術 放射線腫瘍科医 卒後 6 年目 筑波大学 放射線腫瘍科 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 1 月 18 日, 日本医学放射線学会放射線治 20 日 ,21 日 療専門医 脳神経外科医 大学院 2 年生 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 2 月 22 日 データ集積 日本脳神経外科学会専門医 脳神経外科指導医 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 2 月 22 日 データ集積 日本脳神経外科学会専門医 日本がん治療認定医 脳神経外科医 卒後 6 年目 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 3月3日 手術 日本脳神経学会専門医 日本脳卒中学会専門医 脳神経外科指導医 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 3月3日 手術 日本脳神経外科学会専門医 日本がん治療認定医 脳神経外科医 卒後 6 年目 筑波大学 脳神経外科 自治医科大学 小児脳神経外科 3 月 10 日 手術 日本脳神経学会専門医 日本脳卒中学会専門医 脳神経外科指導医 筑波大学 脳神経外科 自治医科大学 小児脳神経外科 3 月 10 日 手術 日本脳神経外科学会専門医 日本脊髄外科学会認定医 日本神経内視鏡学会技術認定医 東京大学 腎臓内分泌内科 東京女子医科大学 腎臓外科 7 月 1 日∼ 9 月 30 日 腎移植 内科学会認定医 12 月 14 日 なし 放射線腫瘍科医 卒後 3 年目 筑波大学 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 放射線腫瘍科 陽子線センター 心臓血管外科医 助教 自治医科大学 心臓血管外科 脳神経外科医 卒後 6 年目 筑波大学 脳神経外科 脳神経外科指導医 筑波大学 脳神経外科 23 脳神経外科指導医 筑波大学 脳神経外科 年 度 専門医等取得状況 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 年 度 研修期間 筑波大学 放射線腫瘍科 腎臓内科医 22 卒後 4 年目 030 研修先 放射線腫瘍科医 卒後 5 年目 年 度 所属大学 日本脳神経外科学会専門医 泌尿器科医 卒後 5 年目 自治医科大学 泌尿器科 病理医 卒後 4 年目 筑波大学病理部 内科医 卒後 3 年目 自治医科大学 内科 東京女子医科大学 腎臓内科 消化器内科医 卒後 4 年目 筑波大学 消化器内科 / 臨床腫瘍コース 東京女子医科大学 2 月 13 日 ∼ 化学療法・緩和ケア 内科学会認定医 2 月 17 日 科 脳神経外科医 卒後 9 年目 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 3 月 28 日 手術 10 人 2人 東京大学 4 月 1 日∼ 重症心不全治療開発 6 月 30 日 講座 6 月 27 日 東京女子医科大学 カ ン フ ァ レ なし 脳神経外科 ンス 日本脳神経外科学会専門医 6 月 27 日 日本脊髄外科学会認定医 東京女子医科大学 カンファレ 日本脳卒中学会専門医 脳神経外科 日本頭痛学会専門医 ンス 日本がん治療認定医 6 月 27 日 東京女子医科大学 日本脳神経外科学会専門医 カンファレ 脳神経外科 日本がん治療認定医 ンス 東京女子医科大学 10 月 4 日 ∼ 東医療センター なし 10 月 6 日 泌尿器科 11 月 14 日 千葉大学婦人科 カ ン フ ァ レ なし ンス 11 月 30 日 実績 内科学会認定医 日本脳神経外科学会専門医 日本脳血管内治療学会専門医 9人 24 年 度 卒後 13 年目助教 自治医科大学 循環器内科 東京大学 4 月 1 日∼ 重症心不全治療開発 6 月 30 日 講座 脳神経外科医 卒後 5 年目 筑波大学 脳神経外科 自治医科大学 脳神経外科 7 月 16 日 脳神経外科医 卒後 8 年目 筑波大学 脳神経外科 東京大学 脳神経外科 8 月 21 日, 日本脳神経外科学会専門医 8 月 23 日 脳神経外科医 卒後 11 年目 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 10 月 3 日 手術 日本脳神経外科学会専門医 がん治療認定医 脳神経外科医 卒後 5 年目 筑波大学 脳神経外科 東京女子医科大学 脳神経外科 10 月 3 日 手術 なし 神経内科医 卒後 3 年目 千葉大学 神経内科 東京女子医科大学 神経内科 1 月∼ 3 月 (週 1・火曜 日) なし 放射線腫瘍科医 卒後 3 年目 筑波大学 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 放射線腫瘍科 陽子線センター 7 月 27 日 なし 小児外科医 卒後 7 年目 筑波大学 小児外科 2 月 11 日∼ 日本外科学会専門医 2 月 16 日 日本移植学会認定医 自治医科大学 小児外科 なし 8人 Advanced Clinical Training-network Report 031 短期研修 参加者の声 【研修者】 筑波大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 【研修期間】 平成 21 年 11 月 16 日(月)、17 日(火) 、19 日(木) 【研修内容】 11 月 16 日:前立腺癌に対する高線量率照射、教授回診 11 月 17 日:病棟診療、放射線治療計画シミュレーション、強度変調放射線治療 11 月 18 日:外来診療、前立腺癌に対するシード治療 【感想】 今回、東京女子医科大学放射線腫瘍科で研修させていただき、いくつも貴重な経験をさせていただくこ とができました。 まず、筑波大学でも施行している一般的な X 線照射において、治療計画の仕方が一部異なっていること に関心をもちました。特に、まず二次元的に考えてから三次元的な CT 計画へ移行していくという考え 方が徹底されていることが非常に勉強になりました。そして、様々な先生方から、画像の読み方、がん の系統的な考え方、治療計画の考え方をお聞きすることが出来たことも光栄でした。 さらに、小線源治療では、これまで見たことがなかった高線量率照射を知ることができたことと、先生 方のご指導のもとにシード治療を施行させていただけたことが、貴重な経験になりました。実際に行わ せていただくことで、手で感じて初めてわかる感触を教えていただき、実感として知ることができました。 強度変調放射線治療については、一度にすべてを理解することは困難でしたが、いかに計画作成のみならず 検証も大切なのか、計画においての注意点が通常の X 線治療と異なってくるかを学ぶことができました。 今後、筑波大学において臨床の場に出るにあたり、これまでの診療に今回の研修で学んだ考え方を加えて、 がん治療でのベストは何なのか、放射線治療はどのようにするのが良いのかをさらに心がけて行こうと 思います。 【研修者】 筑波大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 【研修期間】 平成 21 年 11 月 24 日(火)、25 日(火)、26 日(木) 【研修内容】 11 月 24 日 AM:病棟ラウンド、外来見学、治療棟見学 PM:治療棟にて治療計画見学(食道、乳房、頭頚部 IMRT、前立腺 IMRT) 11 月 25 日 AM:外来初診見学 PM:IMRT 計画、位置合わせ、治療計画見学、症例検討会 11 月 26 日 AM:三橋教授外来見学 PM:前立腺小線源治療(永久刺入線源) 【感想】 当院(筑波大学)との違いと、それがもたらす特色について実感しました。 立地の違い:患者背景、疾病の割合、他院との連携のしやすさにも影響 設備の違い:文字で表すと同じ治療内容でも、実際の内容は施設によって様々 人員の違い:医師・技師とも人数は決して多くはないがベテラン揃いで、診療・治療がスピーディーか つ効率的 コメディカルスタッフも含め、皆さんお忙しい中本当に快く研修を受け入れて下さいました。 032 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 大学院 2 年生) 【研修先】 東京女子医科大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 21 年 12 月 16 日(水) 【研修内容】 研修にご理解とご協力いただいた 東京女子医大の先生と 覚醒下頭蓋内腫瘍摘出術の研修 大脳左半球言語野の脳腫瘍に対し、覚醒下管理にて患者に言語機能評価 task をおこないながら腫瘍摘出 をおこなう。患者の言語機能への障害を最小限にしながら最大限の摘出をおこなうことができる。 手術開始時の麻酔導入から、手術中に麻酔覚醒し、患者バイタルを維持管理する。 言語機能評価 task の器械やその手順、術中に脳機能マッピングをおこない安全な摘出を目指す。 以上を研修し、筑波大で覚醒下手術のプロトコール作成と実践に繋げる。 【感想】 麻酔薬は筑波大で使用しているディプリバン、アルチバ、フェンタニル、アナペインなど同じものである。 覚醒後の除痛維持管理に麻酔科の協力が必要であるが、患者自身に十分なオリエンテーションがされ状 況理解ができる方であることも重要な要素である。その点が問題なければ直接言語機能、麻痺の評価を その場でできるため、手術中の安全性はむしろ高いものと思われた。また状態が安定していれば覚醒の まま手術を終えることができるため、術後管理もスムーズであり有用性が高い。器械出しと外回りの看 護師、脳波と脳表刺激電極を管理する技師、手術ナビゲーションや言語 task をおこなう臨床研修医など の連携が完成されており、こうしたチームあってのものでもあると感じた。 【研修者】 筑波大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 6 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 【研修期間】 平成 22 年 1 月 18 日、20 日、21 日 【研修内容】 1 月 18 日:前立腺癌に対する高線量率組織内照射見学、病棟教授回診、外来・治療棟見学 1 月 20 日:IMRT(頭頚部,前立腺)治療計画,位置決め,治療の見学、子宮頚癌に対する腔内照射見学、 症例検討会 1 月 21 日:三橋教授外来見学、前立腺癌に対する密封小線源治療 【感想】 初めて前立腺癌の高線量率組織内照射を見学させて頂き、密封小線源治療では御指導のもと実際に一部 治療に関わらせて頂くというとても貴重な経験をさせて頂きました。 また頭頚部 IMRT の勉強を希望させて頂いたところ、様々な御配慮を頂いて、症例の診察、治療計画上 の検証、実際の位置決め・治療の流れ等も勉強することができました。その他の治療についても、方法 等の施設間の違いを実際に感じられ、とても興味深かったです。 お忙しい中、先生方、コメディカルのスタッフの方々に多くの時間を割いて頂き申し訳なかったのですが、 大変感謝しております。本当にお世話になり、ありがとうございました。 Advanced Clinical Training-network Report 033 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 大学院 2 年生) 【研修先】 東京女子医科大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 22 年 2 月 22 日(月) 【研修内容】 悪性脳腫瘍におけるテモゾロマイド併用治療の多施設共同研究の症例集積をおこなう。現在筑波大学が 6例、東京女子医科大学が4例に対し治療を施行しており、基本データーを抽出し、女子医大側と確認 をおこなう。 女子医大側は脳神経外科の丸山隆志先生、田中雅彦先生にご協力いただいた。ワクチン治療前後における、 血算生化学検査、頭部MRI画像、臨床経過などをチェックし、フォーマットに入力する準備をおこなっ た。経過の不明な点はその場で女子医大医師に確認していただき、もれのないようにした。解析後、4 月に中間審査会議をおこない、効果安全性と治療研究継続の可否について審議する予定である。 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 卒後 6 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 22 年 3 月 3 日(水) 【研修内容】 手術見学(9 時半 ∼ 17 時半) 右島皮質部神経膠腫(low grade)に対する開頭脳腫瘍摘出術 (MEP モニタリング /SEP モニタリング使用、非覚醒下手術) 術中 MRI 使用 【感想】 手術室内のレイアウトが術中 MRI に対応した配置となっており、また別室にいる医師がモニターで手術 状況を確認できるようなカメラが随所に配置されており当院との違いを感じた。実際の手術では開頭は ほとんどやり方が一緒だった。摘出については、シルビウス裂を十分に開放して島皮質表面を露出して から MRI を撮影した。特に Distal の Insular artery を損傷しないように注意すること、島皮質の腫瘍と 前床の境界を確認するのに出血の仕方や色調を見て判断すること、などを学習出来た。蛍光診断も使え ないので、どこまで摘出するか、出来ているかの判断は術中 MRI が非常に有用であった。 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 卒後 6 年目) 【研修先】 自治医科大学 小児脳神経外科 【研修期間】 平成 22 年 3 月 10 日(水) 【研修内容】 頭蓋縫合早期癒合症に対する手術・MACDO 法の見学 ・自治医大小児脳神経外科五味教授・形成外科菅原先生の手術見学 ・自治医大小児医療センターの見学 034 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【感想】 手術は従来の教科書で記されている一般的な治療とは異なるものであり見学はとても貴重であった。当 院でも今後同様な手術を行うに場合には、5 大学連携のバックアップは非常に有用になると思う。また、 近隣大学での高度な治療を当院に導入できるようになることは医師だけでなく患者にとっても様々な恩 恵がもたらされると思う。 また、脳神経外科専門医受験を前に、今まで経験したことのない疾患を見学できたことは非常にありが たかった。今後も同様な機会があればぜひ参加したい。 【研修者】 筑波大学 脳神経外科 指導医 【研修先】 自治医科大学 小児脳神経外科 【研修期間】 平成 22 年 3 月 10 日(水) 【研修内容】 頭蓋骨縫合早期癒合症(Apert 症候群)の 4 歳女児に対する頭蓋拡大形成術を見学した。 本疾患に対する術式は頭蓋骨延長器を使用するものが現在主流となっている。通常、直線状の骨延長器 を複数本装着する。自治医科大学形成外科菅原教授は新しい術式として MCDO 法という術式を提唱し ている。従来のものと比べて任意の方向に骨延長が可能であり頭蓋形態および頭蓋容積の改善度が高い とされている。従来法といわれる骨延長器を用いない方法、また現行の骨延長器の術式は経験があるが、 この MCDO 法は経験がなく今後筑波大学で治療を展開する上で参考とするため見学をおこなった。 【感想】 基本的な手術の進行に関してはこれまで経験してきた術式と大きな差はなかった。MCDO 法では頭蓋骨 の切開線がこれまでの術式と大きく異なるため、その理論的背景について菅原教授から直接指導してい ただき大変参考になった。 自治医科大学病院には附属のこども医療センターがあり半独立した組織として稼働している。センター 内を小児脳神経外科教授五味先生にご案内いただき、筑波大学での小児医療の展開について検討できた。 また北関東地域での小児脳神経外科合同カンファレンスの開催内容についても議論した。 【研修者】 東京大学 腎臓内分泌内科医 (研修時 卒後 4 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 腎臓外科 【研修期間】 平成 22 年 7 月 1 日 ∼ 9 月 30 日 【研修内容】 腎移植を中心とした腎不全関連(副甲状腺摘出術、シャント関連手術)の手術の見学、周術期の管理、 免疫抑制剤の使い方、術後合併症への対応 【感想】 腎代替療法は血液透析、腹膜透析、腎移植と3つありますが、腎臓内科医の知識不足により患者さんに 全てを提示できていないことが多いと言われています。そのことを問題視し、全ての治療法をそれぞれ の施設で研修し、よく理解することで患者さんにとってどの方法が一番適切で有益なのかを共に考えら れるようになるために女子医での研修を希望しました。女子医大の研修では、週 2 回の頻度で腎移植を 行っており症例数も豊富で、腎移植だけでなく腎不全関連の手術(シャント関連、副甲状腺全摘術など) についても学ぶことができました。期間は3ヶ月間と短かったですが、先生方がいつも親切に指導して くださり充実した研修になりました。 Advanced Clinical Training-network Report 035 【研修者】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 3 年目) 【研修先】 筑波大学 放射線腫瘍科 【研修期間】 平成 22 年 12 月 14 日(火) 【研修内容】 陽子線センター施設見学 8 時15分 X 線カンファレンス 陽子線カンファレンス 小線源治療(子宮腔内照射) 陽子線外来 12 時 30 分 陽子線センター施設見学(加速器など) 放射線治療外来 陽子線治療計画 病棟回診 【感想】 今回筑波大学で陽子線センターを中心に研修させていただきました。都内では陽子線治療を行う施設は なく、高度医療人養成ネットワークで研修できる機会を作っていただき、貴重な研修を行うことができ ました。つくばという地域的な特色もあり、肝臓癌など陽子線治療に対する需要も多く、陽子線治療の 必要性を身近で感じることができました。筑波大学は以前から陽子線の研究に取り組まれており、今回 の研修では陽子線の仕組みや治療方法など大変学ぶことが多く、自大学で学んだ放射線治療の知識を向 上させる大きな経験となりました。患者様に最善の治療を提供するため、また私達のような研修医の視 野を広げるためにも、このような他大学との交流が不可欠であると改めて感じました。 【その他】 大学から約1時間半で筑波大学に行くことができることを知り、都内と筑波大学との利便性の良さに驚 きました。 【研修者】 自治医科大学 心臓血管外科医 (研修時 助教) 【研修先】 東京大学 心臓外科 重症心不全治療開発講座 【研修期間】 平成 23 年 4 月 1 日 ∼ 6 月 30 日 【研修内容】 末期重症心不全患者に対する補助人工心臓装着、心臓移植を中心とした周術期管理から慢性期管理まで を学び、当院での補助人工心臓治療導入に向けての下地作りができた。 【研修を受けて良かった点】 補助人工心臓治療実施施設認定、施行医認定資格を取得するための最初の一歩であり、人脈作りも含め て非常に有意義であった。 【研修における改善が必要な点】 自治医大の身分を維持した状態での多施設での研修は評価できるが、集中的な研修を受ける際には収入 が激減した(研修先での宿泊、住居を自分持ち、バイトなどができない etc…) 。 これでは意欲のある方がこの ACT ‐ network を利用して研修先を得ようとならない。 036 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった B 2 指導医による建設的なフィードバックがあった B 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった E 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない D 【プログラムへの要望】 身分保障された状態での他大学への研修システムは非常に画期的なことと考えられるが、実際の 内情面は特に金銭的な面でサポートは不十分であった。100 万/ 3M 以上の持ち出しとなり、非 常にしんどい思いをした。せっかくのシステムであり今後利用者があらわれるためにも福利厚生 面での改善を期待したい。 【研修者】 自治医科大学 泌尿器科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修先】 東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科(骨盤機能再建科) 【研修期間】 平成 23 年 10 月 4 日 ∼ 10 月 6 日 【研修内容】 ・外来見学 ・病棟見学 ・検査見学 ( 膀胱造影、尿管カテーテル留置、ウロダイナミックス ) ・処置見学 ( 腎瘻交換、包交など ) ・手術見学 (TVM 手術、TUR-BT など ) ・腎泌尿器漢方セミナー 【研修を受けて良かった点】 実際の診療の初診から治療、術後と短期間のうちに見学させていただくことで、症状と診断の関連性、 検査の評価、手術の理論と実践の理解、診療に携わる人々の熱意など本だけでは決してわからない体験 をさせていただき、また専門性という言葉の大切さを教わりました。 【研修における改善が必要な点】 短期間の研修でしたが自分の疑問点、質問より 120%の気持ちと、新たな目標をいただくことができ大 変感謝しております。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった C 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した B 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった C 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない A Advanced Clinical Training-network Report 037 【プログラムへの要望】 研修直前に希望を申し上げたにも関わらず、短期間に多くの機会をいただき、ご指導いただきました巴 ひかる先生を含めた諸先方の方々には、大変感謝しております。 その熱意を自分の実践に変えていけるよう、日々の診療を積み重ねていきたいと思っています。 【研修者】 自治医科大学 内科医 (研修時 卒後 3 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 腎臓内科 【研修期間】 平成 23 年 11 月 30 日 【研修内容】 チャートラウンド参加、病棟 / 透析センター見学、教授回診、CPC 参加、膠原病科との合同カンファラ ンスへの参加 【研修を受けて良かった点】 他病院での回診・カンファランスに参加することができ、自分の病院の良い点 / 悪い点を客観的に見る ことができ、非常に有意義な一日でした。 【研修における改善が必要な点】 特にありません 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した C 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった A A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 【プログラムへの要望】 見学であったのにご丁寧に対応していただき非常に安心感があり感謝しています。ありがとうございま した。 【研修者】 筑波大学 消化器内科医 (研修時 卒後 4 年目) 【研修先】 東京女子医大 化学療法・緩和ケア科 【研修期間】 平成 24 年 2 月 13 日 ∼ 2 月 17 日 【研修内容】 回診、カンファレンスへの参加、外来業務の見学、病棟の見学、勉強会への参加、緩和ケアチーム回診 への参加、IC の見学 038 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【研修を受けて良かった点】 化学療法緩和ケア科で行われている医療のほとんどを見学でき、さらにどんな質問にも答えていただき、 視野が広がりました。他大学で行われている化学療法、緩和ケアと自身の大学との違いなど、実際に体 験することができ、今後自分が診療を行っていく上で参考になることが多かったです。 【研修における改善が必要な点】 電子カルテシステムが参照できませんでした。機密上問題があるのだとは思いますが、もし電子カルテ をみることができれば、さらに勉強になったと思います。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した B 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた B 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった A A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない 6 後輩に本プログラムを勧めたいか B 【プログラムへの要望】 受け入れの先生も当院のコーディネーターの方も丁寧に親切に対応していただき、ありがとうございま した。勉強になり、実りの多い研修となりました。 【研修者】 筑波大学 脳神経外科 (研修時 卒後 9 年目) 【研修先】 千葉大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 24 年 3 月 28 日 【研修内容】 非造影頸動脈ステント留置術 【研修を受けて良かった点】 手術手技の流れを直接体験でき、また他施設の手術手技をみて、今後の技術向上の参考になった。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった C 3 研修により診療能力が向上した B 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった B 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない B Advanced Clinical Training-network Report 039 【研修者】 自治医科大学 循環器内科医 (研修時 助教) 【研修先】 東京大学医学部 心臓外科 重症心不全治療開発講座 【研修期間】 平成 24 年 4 月 1 日 ∼ 6 月 30 日 【研修内容】 左室補助人工心臓 植え込み患者の病棟管理 【研修を受けて良かった点】 教科書にはまだ記載の少ない実際の管理方法をみれたこと。 【研修における改善が必要な点】 留学中の住居手当が不十分であること。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した B 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった C A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない 6 後輩に本プログラムを勧めたいか B 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修先】 自治医科大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 24 年 8 月 16 日 【研修内容】 自治医科大学で行われる英語の研修(JNEF 脳神経外科国際英語フォーラムの発表の演習、個人講習) に参加した。 【研修を受けて良かった点】 JNEF 発表の直前の演習ができた。 【研修における改善が必要な点】 とくにない。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた C 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった D A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない 6 040 後輩に本プログラムを勧めたいか 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 C 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 卒後 8 年目) 【研修先】 東京大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 24 年 8 月 21 日、8 月 23 日 【研修内容】 訪問先では、Amira というソフトを用いて、MRT・CT などの医用画像を元に、それらを組み合わせた 3D 画想を作成している。今後、同ソフトの導入を当院でも検討しているため、実際使用している状況、 画像作成、手術室での応用などを拝見した。 【研修を受けて良かった点】 導入しているソフトの使用方法やどのようなことまで作成できるかなど、見ることができ、また今後、 操作方法などをレクチャーして頂けるとの appointment をとれた。 【研修における改善が必要な点】 特になし。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった B 3 研修により診療能力が向上した B 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった A 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない A 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 卒後 11 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 24 年 10 月 3 日 ∼ 10 月 3 日 【研修内容】 島回神経膠腫の手術見学を行った。東京女子医科大学のモーニングカンファレンスおよび病棟回診に参 加後、手術室で研修を行った。手術終了後には先端工学外科学分野 FATS の見学も行った。 【研修を受けて良かった点】 今後当院で同様の手術を施行するにあたって、手術のコンセプトからピットフォールに至るまで詳細な 指導を受けることができた。 【研修における改善が必要な点】 特記事項なし。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった C A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A Advanced Clinical Training-network Report 041 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修先】 東京女子医科大学 脳神経外科 【研修期間】 平成 24 年 10 月 3 日 ∼ 10 月 3 日 【研修内容】 morining conference 参加、手術見学 【研修を受けて良かった点】 手術のはじまりから終わりまで通して見学できた。術中に解説していただきながら見学できた。 【研修における改善が必要な点】 記載なし。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった C 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない A 【研修者】 東京女子医科大学病院 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 3 年目) 【研修先】 筑波大学附属病院 放射線腫瘍科 【研修期間】 平成 24 年 7 月 27 日 【研修内容】 朝のカンファレンス 2 種類、婦人科の組織内照射 1 件、陽子線の加速器見学、陽子線治療風景、陽子線 治療の患者についてのお話、耳鼻科、消化器、脳外科のカンファレンス 【研修を受けて良かった点】 これまで本で見ていた治療が自分の目で見られたことで自分に現実感のある治療選択肢として挙がる きっかけになったと思います。また、今年入局したばかりですが、自分の大学の科には同期や近い学年 の医師がいないので、近い年代の医師の仕事ぶりを見て、非常に良い刺激が受けられました。同じプロ グラムで当院に来ていたという医師と話せたこともよかったです。入局してから他の職場を見られることは めったにあることではないと思いますので、身を置いたそれ一つでも経験の一つになると思いました。 【研修における改善が必要な点】 私はすべて手続等委ねていたので特にありません。 042 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった C 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない A 【プログラムへの要望】 終了の時期が近いそうですが、ぜひこれからもほかの科でもされるとよいと思います . 【研修者】 筑波大学 小児外科医 (研修時 卒後 7 年目) 【研修先】 自治医科大学 移植外科 【研修期間】 平成 25 年 2 月 12 日(月)∼ 2 月 16 日(土) 【研修内容】 肝移植手術と患者の術前・術後管理 肝移植の最先端の現場を見学し、筑波大学の移植医療水準の向上を目指す! 【研修を受けて良かった点】 多施設の方法・考え方を身近に学ぶことが出来た。 それと同時に当院の良い点も見えたのが良かった。 【研修における改善が必要な点】 自治医大の担当者が不明であった。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 指導医による建設的なフィードバックがあった A 3 研修により診療能力が向上した A 4 自大学で見られなかったことが見られた/経験できた A 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった A 6 後輩に本プログラムを勧めたいか A 勧める ← C どちらでもない → E 勧めない A 【プログラムへの要望】 このようなプログラムがあることをもっとみんなに知ってもらうべき。 自分も教授から言われるまで、このプログラムが適応されることを知らなかった。 Advanced Clinical Training-network Report 043 044 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 短期研修 受入側の声 【担当医】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 【研修者】 筑波大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修期間】 平成 21 年 11 月 16 日(月)、17(火)、19 日(木) 【研修内容】 東京女子医大放射線腫瘍科で特徴的に実施している、放射線治療内容・技術を中心とした研修を行なった。 11 月 16 日(月) 1)前立腺癌に対する高線量率腔内照射 当院での前立腺癌患者の治療適応決定法 高線量率腔内照射に関する理論背景、適応症例の実際 高線量率腔内照射の実際: 麻酔から経直腸エコー、術前プランニング、アプリケーター刺入、術中プランニング、 標的臓器への線量分布の決定法と危険臓器の線量制限、RALS による照射の研修 2)入院患者の症例検討:カルテ・画像所見を主体とした、カンファレンスの参加 11 月 17 日 ( 火 ) 3)強度変調放射線治療(IMRT)の理論と実際 代表的な疾患に関する治療計画:標的臓器の輪郭描出・危険臓器の線量制限、治療計画時の注意・ 確認事項 治療計画から線量検証、実際の治療の一連の流れ 4)前立腺癌に対する放射線ヨウ素永久挿入療法のポストプラン検証 11 月 18 日(水) 5)外来患者の症例の特徴:教授外来見学 6)前立腺癌に対する放射線ヨウ素永久挿入療法 放射性ヨウ素永久挿入療法線量率腔内照射に関する理論背景、適応症例の実際 放射性ヨウ素永久挿入療法の実際: 全身麻酔から経直腸エコー、術前・術中プランニング、線源挿入の研修 【担当医】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 【研修者】 筑波大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 5 年目) 【研修期間】 平成 21 年 11 月 24 日(火)、25 日(水) 、26 日(木) 【研修内容】 11 月 24 日(火) 1)強度変調放射線治療(IMRT)の理論と実際 代表的な疾患に関する治療計画: 標的臓器の輪郭描出・危険臓器の線量制限、治療計画時の注意・確認事項 IMRT 治療計画:頭頸部癌の計画の実際 11 月 25 日 ( 水 ) 2)外来患者の症例の特徴:教授外来見学 3)強度変調放射線治療(IMRT)の理論と実際(2) 代表的な疾患に関する治療計画: 標的臓器の輪郭描出・危険臓器の線量制限、治療計画時の注意・確認事項、線量分布作成。 Advanced Clinical Training-network Report 045 治療計画から線量検証、実際の治療の一連の流れ超音波を用いた位置照合の理論と実際 11 月 18 日(水) 4)外来患者の症例の特徴:教授外来見学 5)前立腺癌に対する放射線ヨウ素永久挿入療法 放射性ヨウ素永久挿入療法線量率腔内照射に関する理論背景、適応症例の実際 放射性ヨウ素永久挿入療法の実際: 全身麻酔から経直腸エコー、術前・術中プランニング、線源挿入の研修 【担当医】 東京女子医科大学 脳神経外科 【研修者】 筑波大学 脳神経外科 (研修時 大学院 2 年生) 【研修期間】 平成 21 年 12 月 16 日(水) 【研修内容】 症例数が少なく、かつ限定された施設でのみ治療が困難である、大脳優位半球言語領域に存在する腫瘍 に対しての見学である。覚醒状態導入∼覚醒時の管理、言語機能の術中評価方法、摘出方法、患者の神 経症状の推移に関してレクチャーとともに実地の見学を行った。また術中 MRI は国内でも限定された施 設のみしか導入されておらず、五大学中では当施設のみであるため、簡単な構造、実運用、および当施 設の成績などに関しても解説、見学を行った。 【担当医】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 【研修者】 筑波大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 6 年目) 【研修期間】 平成 22 年 1 月 18 日、20 日、21 日 【研修内容】 1 月 18 日:前立腺癌に対する高線量率組織内照射見学、病棟教授回診、外来・治療棟見学 1 月 20 日:IMRT(頭頚部,前立腺)治療計画,位置決め,治療の見学、子宮頚癌に対する腔内照射見学、 症例検討会 1 月 21 日:三橋教授外来見学、前立腺癌に対する密封小線源治療 【担当医】 東京女子医科大学 脳神経外科 【研修者】 筑波大学 脳神経外科医 (研修時 卒後 6 年目) 【研修期間】 平成 22 年 3 月 3 日(水) 【研修内容】 症例数が少なく、かつ手術難易度の高い腫瘍で、限定された施設でのみ治療が困難である島回に存在す る腫瘍に対しての見学である。摘出の手順、ピットフォールなどのレクチャーとともに実地の見学を行った。 046 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【担当医】 自治医科大学 脳神経外科 【研修者】 筑波大学 脳神経外科 (研修時 卒後 6 年目) 筑波大学 脳神経外科 指導医 【研修期間】 平成 22 年 3 月 10 日(水) 【研修内容】 疾患は、Apert 症候群で、典型的な合指症のある頭蓋骨縫合早期癒合症(尖頭蓋)です。 手術は、小児脳神経外科と形成外科の合同で行いました。手術方法は、MCDO( Multi-directional Cranial Distraction Ostegenesis) という手術方法で、この手術に用いる器具は、形成外科の菅原康志 教授がケイセイ医科工業と共同開発したものです。二人の先生は、手洗いはせずに、見学だけでした。 【担当医】 東京女子医科大学 化学療法・緩和ケア科 【研修者】 筑波大学 消化器内科医 (研修時 卒後 4 年目) 【研修期間】 平成 24 年 2 月 13 日 ∼ 17 日 【受入開始までのプロセス】 最初に筑波大学事務、次いで女子医大事務から受け入れ是非の連絡あり。 受け入れ OK と連絡すると、研修生から直接メールで連絡あり、研修前に詳細まで相談できた。 研修生の研修態度もきわめて真面目で熱心だったので、医局全員で対応した。 【受入を行って良かった点】 他大学の医師が研修生として存在することで、医局全体にほどよい緊張感が生まれ、各自が無意識のう ちに最善の医療を提供すべく努力しているようにみうけられた。 【受入における改善が必要な点】 当院では短期研修生は電子カルテへのアクセス権限がないため、自発的にカルテを開いて研修すること ができなかった。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった A 2 研修者へ建設的なフィードバックができた A 3 専門研修医の診療能力や手技が向上した B 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった B 6 今後も同じような研修を受け入れたいか A 受け入れたい ← C どちらでもない → E 受け入れたくない A 【プログラムへの要望】 当科への研修生はある程度経験をつんだ、意識が高い医師が応募することが予想されるため、一時的な カルテへのアクセス権を与えるべきである。 Advanced Clinical Training-network Report 047 【担当医】 筑波大学 放射線腫瘍科 【研修者】 東京女子医科大学 放射線腫瘍科医 (研修時 卒後 3 年目) 【研修期間】 平成 24 年 7 月 30 日 【受入開始までのプロセス】 事務局より受け入れ要請の連絡を頂いた後、科内でのスケジュールを確認し、受け入れ可能日を返答。 以後の手続きも事務局にお任せして無事当日を迎えました。 【受入を行って良かった点】 女子医大とは以前より交流があり、本年度も受け入れができたことは今後のためにも良かったと思いま す。女子医大からの見学者は大抵、陽子線に興味を持っておられるのでいつも陽子線中心に時間を使う ようにしています。 【受入における改善が必要な点】 特にありません。 【評 価】 A 良かった ← C ふつう → E 不足していた 1 研修期間は十分であった B 2 研修者へ建設的なフィードバックができた B 3 専門研修医の診療能力や手技が向上した C 5 コーディネーターや研修センターのサポートがあった A A 受け入れたい ← C どちらでもない → E 受け入れたくない 6 今後も同じような研修を受け入れたいか A 【プログラムへの要望】 人手不足な施設が多く、先方の負担になるのではと思うと、なかなか気楽に研修を頼むことができません。 もう少し積極的に人を送り出したりできれば良いなとは思うのですが、十分できていません。すみません。 048 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ■ セミナー開催数 筑波大学 開催数 種類 東京大学 参加人数 開催数 千葉大学 種類 参加人数 開催数 種類 参加人数 平成 20 年度 1 1 8 1 1 27 0 0 0 平成 21 年度 16 5 131 1 1 16 4 4 39 平成 22 年度 20 4 150 6 5 379 2 1 11 平成 23 年度 20 6 361 5 3 123 7 5 24 平成 24 年度 5 5 109 13 8 292 6 5 19 62 21 759 26 18 837 19 15 93 合計 東京女子医科大学 開催数 種類 自治医科大学 参加人数 開催数 種類 参加人数 平成 20 年度 0 0 0 0 0 0 平成 21 年度 9 5 176 2 2 20 平成 22 年度 6 6 306 4 3 38 平成 23 年度 7 5 263 3 3 26 平成 24 年度 4 4 193 3 3 62 26 20 938 12 11 146 合計 5大学合計 開催数 種類 参加人数 平成 20 年度 2 2 35 平成 21 年度 32 17 382 平成 22 年度 38 19 884 平成 23 年度 42 22 797 平成 24 年度 31 25 675 145 85 2773 合計 Advanced Clinical Training-network Report 049 4 大学別の取り組み 筑波大学附属病院 University of Tsukuba Hospital 筑波大学附属病院は昭和 51 年(1976 年)に筑波の地に開院して以来、筑波大学医学専門学群に おける医学生の教育病院及び茨城県の高度先端医療を担う中核病院として機能してきました。 つくば市は 2012 年に市制 25 周年を迎えたばかりの若い街ですが、研究学園都市としてのアカ デミックな雰囲気と常陸野の緑豊かな環境が調和した、大変暮らしやすい街であります。特に 2005 年につくばエクスプレスが開通して、秋葉原まで最短 45 分と首都圏へのアクセスも大変良く なりました。 筑波大学附属病院は国立大学病院で初めてのレジデント制度を開院当初から導入し、系統的な 卒後臨床研修制度を整備してきました。これまでに数多くの良質な臨床医を育成してきた実績は 全国的にも高く評価されています。関連病院は茨城県内の主要病院を網羅しており、関連病院を 体系的にローテーションすることで、先端医療から地域医療まで広範な領域をカバーした研修を 積むことが可能となっています。 今回は、この 5 つの大学病院が連携・協力して実施する高度医療人養成プログラムに参加する ことで、これまで不足している分野を補完して更に充実した質の高い臨床教育を行うことが可能 となりました。 これからも、意欲にあふれた専門研修医の参加を期待しています。 総合臨床教育センター 部長 前野 哲博 Advanced Clinical Training-network Report 053 若い時にはいろいろな場所にいって たくさんの友達、仲間を作ってほしい 筑波大学附属病院は、国立大学病院としては初めてのレジデント制度を開院当初から導入し、 今日に至っています。そのため各診療科をローテーションする研修方法についてかなり先進的な 役割を担ってきたとの自負があります。各診療科の垣根が低いと感じるのは、そうした歴史によ るところが大きいのでしょう。外科の医師が「ちょっと内科に聞いてみようか」という場面にお いて、他の大学では一歩踏み出しにくい印象を持つことは好対照だと思います。 今回の 5 大学連携事業の成功には、やはり診療科長同士のコミュニケーションが不可欠だと感 じました。研修を希望する側に風通しの良さを感じさせることが大切だと思います。 何か研修をする時に、あまり難しく考えない方がいいのではないでしょうか。これからも、若 い時にいろいろな場所に行って、たくさんの友達、仲間を作ってほしいです。その仲間ができれば、 放っておいても各個人の医療レベルは上がっていくと思っています。 筑波大学コーディネーター 中居 康展 阿久津 博義 054 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ■ 指導医の情熱 筑波大学セミナー開催実績 ●平成 20 年度 参加者数 2009/3/27(金) 第 1 回 VIST セミナー 13:30 ∼ 15:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 8人 ●セミナーレポート 第 1 回 VIST セミナー 血管内治療シミュレーター VIST に 関 す る ミ ニ レ ク チャーと、実際にそれを使 用してハンズオントレーニ ングを行った。 ●平成 21 年度 参加者数 2009/7/31(金) 第 2 回 VIST セミナー 18:00 ∼ 19:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 11 人 佐藤 明 (循環器内科) 椎貝 真成(放射線診断・IVR 科) 2009/ 8/19(水) ∼ 8/20(木) 2009/11/12(水) 不整脈次世代研究部門医師向け教育プログラム 2人 第 1 回∼第 2 回 ビギナーコース 第 1 回∼第 2 回 アドバンストコース ∼ 11/13(木) 2009/ 8/ 5(水) ∼ 8/ 7(金) 2010/ 1/27(水) ∼ 1/29(金) Advanced Clinical Training-network Report 055 2009/8/22(土) 第 3 回 VIST サマーセミナー 13:00 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 6人 小林 英一(千葉大学脳神経外科) 2009/9/25(金) 第 4 回 VIST セミナー 18:00 ∼ 19:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2009/10/18(日) がん治療セミナー 9:45 ∼ 12:00 ‐ 進行腎細胞癌の治療戦略 ‐ 2009/10/23(金) 第 5 回 VIST セミナー 18:00 ∼ 19:30 ‐ 冠動脈造影 CAG 及び冠動脈インターベンション治療 PCI ‐ 25 人 4人 12 人 インストラクター 佐藤 明(循環器内科) 2009/11/28(土) 第 6 回 VIST オータムセミナー 14:00 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 11 人 小林 英一(千葉大学脳神経外科) 2009/12/19(土) 「読める心電図!」心電図読影セミナー 19 人 9:00 ∼ 18:00 2010/1/15(金) 第 7 回 VIST セミナー 18:00 ∼ 19:30 ‐ 冠動脈造影 CAG 及び冠動脈インターベンション治療 PCI ‐ 14 人 インストラクター 佐藤 明(循環器内科) 2010/2/20(土) 第 1 回 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース 8:20 ∼ 18:00 第 2 回 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース 2010/2/21(日) インストラクター 安田 貢 (救急・集中治療部) 8:20 ∼ 18:00 水谷 太郎、高橋 伸二(麻酔科) 2010/2/24(水) 第 8 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/3/5(金) 第 9 回 VIST セミナー 18:00 ∼ 20:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 20 人 1人 6人 合 計 131 人 ●セミナーレポート 第 1 回・第 2 回救急 蘇生セミナー AHA ACLS ‐ EP コース AHA-ACLS プロバイダーコースの上位に位置する AHA − ACLS Experienced プロバイダー(EP) コースを実施した。NSTEMI、薬物中毒、重症喘息、アナフィラキシー、糖尿病性ケトアシドーシス、 偶発的低体温などや ACLS-EP コースの核となる 5 Quadrads アプローチの考え方を学んだ。 056 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース アンケート結果 1. 参加状況 参加者の所属は循環器内科、消化器内科・外科、脳神経外科、麻酔科、救急・集中治療部など 2 月 20 日(土)・・・10 名参加 初期研修医 1 名(東大) 専門研修医 8 名(筑波大 3 名、東大 1 名、千葉大 3 名、自治医大 1 名) 大学院生 1 名(筑波大) 2 月 21 日(日)・・・10 名参加 初期研修医 4 名(筑波大 1 名、東大 3 名) 専門研修医 4 名(筑波大 3 名、自治医大 1 名) 指導医 2 名(筑波大) 合計 20 名 (アンケート回収率 100%) 2. 研修に参加した理由 「興味があったから」といった回答が多数寄せられた。 上司にすすめられたから 14% その他(臨床に戻るリハビリ) 5% 同僚に誘われたから 5% 興味があったから 62% 手技の向上のため 14% 2. 研修に対する期待 期待度は非常に高かった。 あまりなかった 5% ややあった 29% 非常にあった 67% Advanced Clinical Training-network Report 057 3. 研修内容が今後に役立つかどうか 「非常に役立つ」といった回答が多く寄せられた。 やや役立つ 10% 非常に役立つ 90% 4. 研修の情報を得た媒体 ほとんどの参加者が学内及び病院内に掲示してあるポスターを見て申し込んだ。 その他(研修先の院内メール) 5% 口コミ 5% 掲示板ポスター 90% 5. 参加者から寄せられた感想 大変面白かったです、ありがとうございました。また、非常に意味のあるコースだと思いますの で是非続けて下さい。 90 分の区切りをもっと細かく分けた方が集中力が持続するのではと午後の 4 つ目の時に感じま した。お忙しい中ありがとうございました。 今回の研修を受講させて頂いたことで、これまでは専門医に任せてしまっていた部分をもう少し 自分でやってみようという気になりました。 特に ACS に関してですが、これまでは心電図や病歴から ACS に詳しければ静脈径を確保して、 後は循環器内科医が来てくれるまで待つといったスタンスでしたが、せめてへパリン静注位まで はやってみようという気になりました。 知識の整理になり、今後の臨床に活かしたいと思う。 実際に役立つことを多く知ることが出来てすごく良かったです。明日から活かしていきたいと思 います。病態生理含めて詳しく教えていただきありがとうございました。 やや難しかったが、とても勉強になりました。 058 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 申し訳ないことに、モチベーションが低いまま参加してしまいましたが、どれもためになるもの でした。中毒は難しくて理解しづらかったです。 テキストが厚すぎる気がします。シンプルにまとめたものがあるといいです。 外来で役立つ知識が沢山あってよかったです。 今後に大変役立ちそうな内容で良かったです。 疲れました。知識の整理になりました。ICU の管理に役立ちます。 非常に勉強になりました。 知識がまとまって非常に良かった。 大変良かったです。役に立ちました。今後に活かします。 ACLS/BLS の心肺蘇生のみならず原因検索について学ぶことができましたので、日常診療で復習 できるようにしたいと思いました。 中毒や喘息、アナフィラキシーについては、なかなか症例にあたらないと勉強できないのですが、 症例を用いてどのようなアプローチをしたらよいかを勉強出来て良かったです。 次回また他の範囲を含めてやりたいです。 受けて良かったです。 6. 今後企画して欲しいセミナー等 ACLS-EP のリニューアル 外傷や小児の救急 一般内科医のための心エコー教室のようなプライマリケアに関わるものに興味があります。 PALS-EP FCCS プロバイダーコース Advanced Clinical Training-network Report 059 ●平成 22 年度 参加者数 2010/4/6(金) 第 10 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/4/20(火) 第 11 回 VIST セミナー 13:30 ∼ 14:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 5人 3人 18:30 ∼ 19:30 2010/5/25(火) 第 12 回 VIST セミナー 3人 17:30 ∼ 20:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/6/1(火) 第 13 回 VIST セミナー 18:00 ∼ 20:00 インストラクター 椎貝 真成(放射線診断・IVR 科) 2010/6/15(火) 第 14 回 VIST セミナー 18:00 ∼ 19:00 インストラクター 佐藤 明(循環器内科) 2010/7/27(水) 第 15 回 VIST セミナー 15:30 ∼ 16:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/7/24(土) 第 2 回茨城臨床研修医のための腎セミナー(共催) 21 人 2010/8/21(日) 第 16 回 VIST サマーセミナー 11 人 13:00 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 14 人 12 人 3人 14:00 ∼ 18:00 小林 英一(千葉大学脳神経外科) 2010/9/7(火) 第 17 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/9/28(火) 第 18 回 VIST セミナー 13:30 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/10/9(土) 第 3 回 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース 8:20 ∼ 18:00 第 4 回 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース 2010/10/10(日) インストラクター 安田 貢(救急・集中治療部) 8:20 ∼ 18:00 武安 法之(循環器内科) 2010/10/5(火) 第 19 回 VIST セミナー 17:00 ∼ 18:40 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/10/26(火) 第 20 回 VIST セミナー 16:00 ∼ 17:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 6人 6人 10 人 5人 7人 18:00 ∼ 19:00 2010/10/21(木) 医学セミナー 形成外科・口腔外科分野 24 人 17:00 ∼ 18:00 060 2010/11/9(火) 第 21 回 VIST セミナー 14:30 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 3人 2010/11/30(火) 第 22 回 VIST セミナー 11:00 ∼ 12:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/1/4(火) 第 23 回 VIST セミナー 13:30 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/2/10(木) 第 24 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 15:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/3/3(木) 第 25 回 VIST セミナー 13:30 ∼ 15:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 6人 4人 4人 3人 合 計 150 人 ●セミナーレポート 第 16 回 VIST サマ―セミナー 千葉大学脳神経外科の小林英一先生を講師にお招きし、第 16 回VI STサマーセミナーを開催。第 1 部では、hands-on トレーニングを 個々で行ない、技術の向上を図った。第 2 部は「ステントを併用し た脳動脈瘤コイル塞栓術」について、症例検討を交えたワークショッ プを行った。 ●セミナーレポート 医学セミナー 形成外科・口腔外科分野 顎変形症・口蓋裂を中心に、当分野の第一人者である齊藤 力先生か ら、 「顎変形症・口蓋裂治療の現状と展望 ― 口腔外科の立場から ― 」 と題して、顎変形症の手術手技の要点・合併症回避のポイントの紹 介と口蓋裂治療と顎 変形症手術の違いや 長期成績についてご 講演頂いた。 Advanced Clinical Training-network Report 061 ●平成 23 年度 参加者数 2011/4/19(火) 第 26 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 15:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 20 人 18:00 ∼ 20:30 2011/4/28(木) 第 27 回 VIST セミナー 4人 14:00 ∼ 15:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/5/10(火) 第 28 回 VIST セミナー 16:00 ∼ 18:00 インストラクター 星 智也(循環器内科) 2011/6/3(金) 第 29 回 VIST セミナー 14:30 ∼ 15:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/6/14(火) 第 30 回 VIST セミナー 16:00 ∼ 19:00 インストラクター 星 智也(循環器内科) 2011/6/28(火) 第 31 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/6/29(水) 第 32 回 VIST セミナー 15:00 ∼ 16:30 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/7/14(木) 第 33 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/7/26(火) 第 34 回 VIST セミナー 15:00 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/7/28( 木) 第 35 回 VIST セミナー 15:00 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/8/6(土) 第 3 回 茨城臨床研修医のための腎セミナー 11 人 医学セミナー 形成外科分野 13 人 5人 5人 6人 4人 9人 5人 3人 5人 13:30 ∼ 19:30 2011/8/25(木) 18:00 ∼ 20:00 2011/9/3(土) 第 36 回 VIST セミナー 16:00 ∼ 18:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2010/10/8(土) 第 5 回 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-EP コース 8:20 ∼ 18:00 インストラクター 安田 貢(救急・集中治療部) 7人 6人 高橋 伸二(麻酔科) 武安 法之(循環器内科) 062 2011/11/15(火) 第 37 回 VIST セミナー 3:00 ∼ 15:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2011/12/16(金) 第 38 回 VIST セミナー 15:00 ∼ 17:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 6人 6人 2011/01/12(木) 第 39 回 VIST セミナー 4人 14:00 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2012/1/24(火) 第 40 回 VIST セミナー 14:00 ∼ 16:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 2012/2/25(土) 心肺蘇生と心血管緊急治療ガイドライン 2010 What's New! 13:00 ∼ 16:30 よみがえる命を感じる日 5人 228 人 講師 Marc D. Berg(アリゾナ大学 准教授) 2012/3/3(土) 第 1 回 モバイル VIST セミナー in 千葉大学 15:00 ∼ 18:00 インストラクター 中居 康展(脳神経外科) 9人 小林 英一(千葉大学脳神経外科) 合 計 361 人 ●セミナーレポート 心肺蘇生と心血管緊急治療ガイドライン 2010 What's New! よみがえる命を感じる日 筑波大学では、2010 年 10 月に更新された最新の救急心血管治療ガイドラインに関する知識を、日 本 ACLS 協会と共催で、全国の医師・看護師・救急隊員を対象に広く普及することを目的に、ま た、東日本大震災後の日本を勇気づけるためにも、アメリカ心臓協会(AHA)本部からガイドライ ン改変の関係者 Dr. Marc D. Berg を招聘し、新ガイドライン 2010 の内容に関して講演を行った。 当日は、228 名の参加者を迎え盛況のうちに終了した。 Dr. Marc D. Berg を囲んで記念写真 Advanced Clinical Training-network Report 063 ●平成 24 年度 2012/5/22(木) 第 41 回 VIST セミナー 3人 14:00 ∼ 16:00 インストラクター 星 智也(循環器内科) 2012/07/22(日) 第 1 回 Tsukuba High Speed Drill Hands On 14 人 第 4 回 臨床研修医のための腎セミナー 13 人 2012/10/06(土) 第 6 回 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-Provider コース 10 人 8:30 ∼ 17:30 インストラクター 安田 貢(水戸医療センター) ∼ 10/07(日) 大窪勝一朗(牛久愛和総合病院) 8:00 ∼ 16:55 高橋伸二(麻酔科) 2013/1/11(金) 小児・周産期専門教育分野 教育セミナー 18:00 ∼ 19:30 −新生児に対する脳低温療法の現状と今後の展開− 14:00 ∼ 18:00 2012/9/15(土) 13:30 ∼ 19:00 69 人 合 計 109 人 ●セミナーレポート 第 6 回 救急・蘇生セミナー AHA ACLS-Provider コース BLS を土台としたさらに高度な二次救命処置の コース。 心停止にとどまらず、重症不整脈、急性冠症候群、 脳卒中の初期治療を学ぶ。 当日は、小グループに分かれ、実際の現場を想 定した実技ステーションでアルゴリズムを用い ながら、除細動と薬剤を用いた蘇生、カルディ オバージョン、経皮ペーシングのやり方などを チームリーダー、記録係り等の役割を練習する ことを通して、緊急時の効果的なチームワーク のための知識と技術を高めた。 参加者の声 自治医科大学 総合診療科医 新しいガイドランを学べた。曖昧だった部分も 再確認できて良かった。細かい質問もできたの で良かった。 他病院の人から刺激をもらうことも出来た。 064 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●セミナーレポート 小児・周産期専門教育分野 教育セミナー −新生児に対する脳低温療法の現状と今後の展開− 鹿児島市立病院新生児科部長 茨 聡 先生に「新生児に対する脳低 温療法の現状と今後の展開」についてご講演いただいた。座長は 小児外科教授 増本幸二が務めた。 当日は、動物実験にて脳低温療法の安全性と有効性を確認して、 2000 年から、臨床において HIE に対して脳低温療法を施行して きており、その経験から得られた以下の知見について解説がなさ れた。 1)HIE 症例における鼓膜温の検討 ( 臨床例 ) 2)低体温療法の循環に対する影響(動物実験) 3)脳温の測定に関する検討(動物実験および臨床例) 4)脳低温療法の脳保護作用の検討(臨床例:glutamate, NSE, Protein S-100) 5)脳酸素摂取率の検討(臨床例) 6)脳波の検討(臨床例) 7)microdialysis 法を用いた生化学的モニタ リングの検討(臨床例) 8)脳低温療法施行例の予後 ( 臨床例 ) 9)脳低温療法施行例における予後と頭部 MRI 画像所見 ( 臨床例 ) 10)脳低温療法施行症例における血液凝固系の 検討 ( 臨床例 ) Advanced Clinical Training-network Report 065 東京大学医学部附属病院 The University of Tokyo Hospital 安政 5 年(1858 年)5 月、神田お玉ヶ池種痘所の設立に始まり、以来時代の変遷とともに変貌 を遂げつつ歩み続け、2008 年には設立 150 周年の節目を迎えた東京大学医学部附属病院は、病床 数 1210 と国内トップクラスの規模を誇る病院です。長い歴史の中で、国内及び海外での医学、医 療の先導的な役割を果たし続けてきました。 加賀藩江戸屋敷の名残である東京大学の本郷キャンパスは、都心にありながら緑に恵まれ、隣 接する東大病院から静寂な三四郎池周辺の森を眺望できます。春には桜、秋には銀杏と季節の移 り変わりを身近に感じられます。また、東側には上野公園及び各種美術館、博物館などがあり、 自然や文化を間近に感じられる地域でもあります。 東大病院の臨床研修の特徴は、基礎的な診療技術の習得と同時に高度先端医療の体験、習得 も可能であるという点にあります。指導医の質、量ともに大変充実しており、症例も common disease から専門的な疾患まで幅広く経験可能です。また多くの関連病院は、日本のトップクラス の医療を提供できる国内及び関東圏の医療拠点です。東大病院においても、関連病院においても、 充実した研修を行うことが可能であり、かつ希望に最大限お応えすることができると自負してお ります。これまでに、東大病院より国内の各大学、拠点病院に多くの教授、准教授や院長、科長、 また現場で活躍する多くの優れた医師を輩出してまいりました。 さらに、この「高度医療人養成プログラム」により、各大学の特色ある研修プログラムや得意 とする診療分野と相互補完することが可能となり、今後の日本及び世界の医療、医学を背負って 立つ若手医師のキャリアアップに大変ふさわしいものとなりました。 これからも高い志を持つ専門研修医の参加を心待ちにしております。 総合研修センター 総センター長 北村 聖 066 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 コミュニケーションの可能性を見つける 専門研修医の皆さんの当座の目標は、サブスペシャリティにおける専門医資格ではないでしょ うか。できれば専門研修を受けている期間に取得したいというのが、本音じゃないかと思います。 5 大学連携事業のメリットの一つは、そうしたサブスペシャリティの資格取得に必要な症例が 1 ヶ 所の大学で難しい場合、他大学でも経験できるという点にあります。 もう一つのメリットは、他の大学の知り合いをたくさん作れる点でしょう。身近な相談相手で もいいのですが、離れた知り合いに相談することも大切です。違った視点での見方が発見できる いい機会になります。 当院ではかなり専門性の高い病気を診ることができるので、そうした意味での臨床経験は最適 だと思います。症例数の非常に少ないケースでは、この連携事業により他大学のカンファレンス に参加できるので、そうした利用法もあります。いろいろなコミュニケーションが可能となる、 すぐれたシステムなので、たくさんの方に参加していただきたいです。 東京大学コーディネーター 堀田 晶子 Advanced Clinical Training-network Report 067 ■ きのうの自分に差をつける 東京大学セミナー開催実績 平成 20 年度 参加者数 2009/3/19(木) 東関東・東京 VR シミュレーターフォーラム 18:30 ∼ 20:30 ‐ 外科トレーニングの新たな潮流 ‐ 27 人 シミュレーターを使用したハンズオントレーニングの効果や可能 性について実際に機器を用いてデモンストレーションを行いなが ら説明した。 ●平成 21 年度 参加者数 2010/2/27(土) 第 1 回 新生児 NCPR 講習会 専門コース 16 人 9:00 ∼ 15:30 東京大学のみならず、筑波大学、東京女子医科大学及び自治医科 大学から専門研修医が参加した。 午前に講義を行い、午後は2グループに分かれて基本手技および ケースシナリオによる実習を行った。また、講習会終了後は、希 望者による小児科病棟の見学会が行われ、交流を図ることができ、 充実した講習会となった。 068 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●平成 22 年度 参加者数 2010/7/17(土) 超音波ガイド下 腕神経叢ブロックハンズオンセミナー 11 人 関東小児外科症例検討会 44 人 10:00 ∼ 12:00 2010/9/20(月) 10:00 ∼ 17:00 2010/9 ∼ 形成外科 187 人 (毎週水曜日、木曜日) 手術見学/カンファレンス/光嶋勲教授講義/抄読会 2010/10/16(土) 第 1 回 Todai レジデントカンファ Presents 14:00 ∼ 16:00 青木 眞 先生 講演会 2010/12/11(土) 第 2 回 Todai レジデントカンファ Presents 14:00 ∼ 16:00 徳田 安春 先生 講演会 2011/3/10(木) 第 1 回 腹部エコー講習会 77 人 43 人 17 人 17:30 ∼ 20:00 合 計 379 人 ●セミナーレポート 第 2 回 Todai レジデントカンファ 筑波大学 水戸地域医療教育センター 総合診療科の徳田 安春 先生をお招きした講演会。 レジデントが企画から運営を行った。 10 程度の症例提示と、それに関する discussion を小グルー プに分かれて 行 う 内 容 と、 模擬患者を用 いた診察手技 の講義を行っ た。 ●セミナーレポート 第 1 回 腹部エコー講習会 一般内科・一般外科など多くの医師がマスターすべき腹部エ コーの知識・手技を身に付けてもらうと同時に、参加者の交 流を図るために企画。 配布資料に基づき概要を説明したあと、患者役に入ってもら い、全員が実際にエコーを行った。 Advanced Clinical Training-network Report 069 参加者の声 筑波大学 総合診療科医 卒後 5 年目 腹部超音波検査の手技について、普段学べないような密着型の研修を受けることが出来た。短時間で はあったがとても有意義な講習会でした。心臓超音波についても同様のセミナーがあれば参加したい です。 ●平成 23 年度 参加者数 2011/7/2(土) 第 3 回 Todai レジデントカンファ Presents 44 人 15:00 ∼ 17:00 寺沢 秀一 先生 講演会 2011/9/17(土) 第 2 回新生児蘇生法(NCPR)講習会 29 人 2011/9/18(土) 第 4 回 Todai レジデントカンファ Presents 25 人 14:00 ∼ 16:00 徳田 安春 先生 講演会 2012/2/25(土) 第 3 回 新生児蘇生法(NCPR)講習会 10 人 第 2 回 腹部エコー講習会 15 人 10:00 ∼ 16:00 9:00 ∼ 12:10 2012/2/29(水) 17:30 ∼ 20:00 合 計 123 人 ●セミナーレポート 第 2 回・3 回 新生児蘇生法 NCPR 講習会 新生児蘇生に関わるスタッフが標準的な新生児蘇生法の理論と気管挿管や薬物投与などの高度な技術 に習熟することにより、病的新生児の救命と重篤な後遺障害の回避に効果が認められることが期待さ れる。 070 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●平成 24 年度 参加者数 2012/4/18(水) 老年病科講演会 27 人 18:30 ∼ 19:30 ‐ Geriatrics Medical Education in America ‐ 2012/05/12(土) 第 4 回 新生児蘇生法(NCPR)講習会 23 人 2012/09/08(土) 第 5 回 Todai レジデントカンファ Presents 28 人 15:30 ∼ 18:00 ジョエルブランチ先生講演会 2012/09/17(月) 総合診療オープンカンファレンス 13:00 ∼ 17:00 ‐ 機能する救急医療 ‐ 2012/10/31(水) 第 3 回 腹部エコー講習会 10:00 ∼ 16:00 36 人 9人 17:30 ∼ 20:00 2012/11/10(土) 東京大学 AMLS プロジェクト ∼ 11/11(日) BLS/ACLS コース 19 人 8:00 ∼ 19:00 2012/11/17(土) 経食道心エコーセミナー 22 人 2012/12/1(土)∼ 東京大学 AMLS プロジェクト 16 人 12/2(日) AMLS プロバイダー 10:00 ∼ 12:30 8:00 ∼ 17:00 2013/1/12(土) 東京大学 AMLS プロジェクト 8:30 ∼ 17:00 ACLS インストラクター 2013/1/12(土) 第 6 回 Todai レジデントカンファ Presents 14:30 ∼ 16:00 徳田 安春 先生 講演会 2013/1/13(日) 東京大学 AMLS プロジェクト 8:00 ∼ 17:00 ACLS プロバイダー 2013/1/14(月) 東京大学 AMLS プロジェクト 8:00 ∼ 17:00 AMLS インストラクター 2013/1/26(土) 東京大学 AMLS プロジェクト ∼ 1/27(日) AMLS プロバイダー 9人 24 人 12 人 9人 12 人 8:00 ∼ 17:00 2013/2/2(土) 心エコーハンズオンセミナー 36 人 2013/2/27(水) 第 4 回 腹部エコー講習会 10 人 17:30 ∼ 20:00 合 計 292 人 Advanced Clinical Training-network Report 071 ●セミナーレポート 老年病科講演会(アメリカの老年医学教育) アメリカにおける老年医学教育についての最新の知見を得ること を通して、日本の老年医学、老年医学教育の発展に尽くしうる人 材を養成することを目的とする。 <アメリカにおける老年医学教育の現状> 65 歳以上の成人が 2030 年までには 4000~7000 万人増大する と予測されている。老年病科 医師は 26,000 人の不足とな る。 ●セミナーレポート 経食道心エコーセミナー 東大病院麻酔科・痛みセンターの心臓麻酔チームの構成スタッフ による以下のショートセミナーを 4 題行い、心臓手術において今 やスタンダードなモニターとなっている経食道心エコーを実践す る上でのエッセンスを概説した。 1. 画像の出し方と基本のビュー 2. 誤りやすい正常構造物と アーチファクト 3. 僧房弁の評価 4. 印象的な症例 072 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●セミナーレポート AMLS プロジェクト このプロジェクトは ACLS インストラクターコース、ACLS プロ バイダーコース(インストラクターのモニターコースを含む) 、 AMLS インストラクターコース、AMLS プロバイダーの4つを包 含しています。 AMLS とは内因性障害のある患者の評価を進め、緊急度や病態を 判断し、状態の安定を図りながら、適切な初期診療を行うことを 目的にしています。共通の Assessment Pathway を用いて、患 者の状態評価、 緊急度・重症度を考慮した鑑別診断、迅速な処 置による安定化の手法を繰り返しトレーニングすることで臨床推 論の手法を習得します。 <医学生、初期研修医、看護師、救急救命士の事前学習にも効果 的です!> 参加者の声 東京大学 看護部 看護師 普段の業務では接することのない他施設の医師の方々や救急部の医師、他部署の看護師と意見交換す る時間が多く設けられており、楽しみながら学ぶことができました。医療機器に頼りがちになってし まいますが、まず患者さんをみて、 触れるという原点に立ち返ることの重要性を再認識する機会になりました。患者さんの一番近くにい る看護師だからこそ、日々の観察や情報収集を踏まえたアセスメントを行い、患者さんが急変する前 の小さな病状の変化を見落とすことがないようにしていきたいです。 Advanced Clinical Training-network Report 073 千葉大学医学部附属病院 Chiba University Hospital 千葉大学医学部附属病院は明治 7 年(1874 年)7 月に、地域住民の醵金で設立された共立病院 にその源流があります。その後、県立千葉病院、医学専門学校附属病院、千葉医科大学附属病院 を経て、1949 年 5 月に現在の名称に改称されました。本院は開院以来、医学生、看護師、薬剤師 等の教育病院として数多くの有能な医療者を輩出し、高度先端医療を開発、実践する基幹病院と して医学、医療の発展に貢献してきました。 千葉大学医学部附属病院は 138 年に及ぶ教育、診療、研究の伝統と先端的な診療、研修機能を 兼ね備えた医育機関として更なる発展を遂げようとしています。2008 年には新棟(ひがし棟)が 開院し、数年後には高度・多機能、且つ患者中心の医療を展開する新外来棟が竣工予定です。関 連病院は千葉県内の主要病院に留まらず他県の基幹病院をも網羅しています。関連病院を体系的 にローテーションすることで、プライマリケアから先端医療まで広範な領域の研修を積むことが 可能となっています。 今回は、この高度医療人養成プログラムに参加することで、これまで不足していた分野を補完し、 更に高度な質の高い臨床能力の修得が可能となりました。 これからも、意欲にあふれた専門研修医の参加を期待しています。 総合医療教育研修センター長 田邊 政裕 074 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 研修医間の情報格差の解決の一手に・・・ 新たな研修医制度の導入により、将来自分の診療科に入局する研修医、しない研修医、まだ迷っ ている研修医と様々な立場の医師を教育することとなり、指導医の意識も大きく変化してきてい ます。本事業のような 5 大学間のネットワークという大きな輪の中で人材交流を行い見聞を広め ることは、各医師のスキルアップだけでなく各診療科にとっても有意義であると考えます。 本事業のコーディネーターを行うに当たって、まず各診療科の指導的立場にいる医師に事業の 意義、メリットを十分理解していただく必要がありました。また人材交流を円滑に行うためには、 各大学・診療科の「セールスポイント」あるいは「自分の科に足りないもの」を互いに提示し、 大学間ですり合せていく作業が必要です。 近年、研修医の選択肢が広がったのは望ましいことですが、様々な情報が氾濫しており、研修 医間の「情報格差」が生じているように思われます。今後も本事業を通じて良質かつバラエティ に富んだ研修プログラムやセミナーを提供し、さらにその成果を適宜評価できるシステム作りを 考えていきたいと思います。 千葉大学コーディネーター 森野 知樹 Advanced Clinical Training-network Report 075 ■ ハンズオンの強み 千葉大学セミナー開催実績 平成 21 年度 参加者数 2009/12/12(土) 第 4 回 神経内視鏡ハンズオンセミナー 5人 9:00 ∼ 19:30 12/13(日) 9:00 ∼ 15:30 2010/1/25(月) 腹部超音波スクリーニングセミナー 24 人 12:00 ∼ 13:00 2010/1/31(日) 第 1 回 ブタを用いた外科手術基本手技研修会 7人 ブタを用いた腹腔鏡下胃切除術研修会 3人 9:00 ∼ 19:00 2010/2/6(日) 9:00 ∼ 18:00 合 計 39 人 ●セミナーレポート 第 1 回 ブタを用いた外科手術基本手技研修会 千葉大学 総合医療教育研修センター 清水 孝徳 医師がインストラクターとなり、実験用のブタを用 いた胃切除再建、脾摘、胆摘、腎摘、腸切除再建 などを通じて基本手技を学んだ。終了後には、施 設間の手技の違いについて議論した。 参加者の声 実際の手術では経験出来ない議論を交えた基本手 技訓練で、大変有意義でした。 ●平成 22 年度 参加者数 第 2 回 ブタを用いた外科手術基本手技研修会 6人 2011/2/6(日) 第 3 回 外科手術基本手技セミナー(ブタを用いた外科手術基 5人 8:30 ∼ 18:00 本手技研修会より改題) 2010/6/12(土) 15:00 ∼ 18:00 6/13(日) 9:00 ∼ 19:00 合 計 11 人 076 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●セミナーレポート 第 2 回 ブタを用いた外科手術基本手技研修会 第 2 回目の実験用ミニブタを用いた手術手技の研 修会。インストラクターは前回同様、千葉大学 総 合医療教育研修センター 清水 孝徳 医師が担当し た。 初日にドライラボで縫合、吻合などの技術講義を行 い、翌日にブタを用いて胃切除再建、肝切除、脾摘、 胆摘、腎摘及び腸切除再建などを行い、基本手技を 学んだ。 今回も、施設間の手技の違いについて議論した。 参加者の声 4 日後に肝切除の手術を控えており、本番の手術にかなり役立ちました。 ●平成 23 年度 参加者数 2011/6/19(日) 第 4 回 外科手術基本手技セミナー 4人 2011/9/4(日) 内視鏡的胃粘膜下層剥離術基本技術習得のための 3人 10:00 ∼ 13:30 ハンズオンセミナー 2011/11/6(日) 第 1 回 心臓血管外科手術セミナー 10:00 ∼ 12:30 冠動脈パイパス術 2011/12/10(土) 第 5 回 神経内視鏡ハンズオンセミナー 5人 第 5 回 外科手術基本手技セミナー 4人 第 6 回 外科手術基本手技セミナー 4人 頸動脈エコーハンズオンセミナー 2人 9:00 ∼ 19:00 2人 10:00 ∼ 17:30 2011/12/11(日) 8:00 ∼ 16:00 2012/2/12(日) 9:00 ∼ 18:00 2012/2/19(日) 9:00 ∼ 18:00 2012/2/22(水) 18:00 ∼ 20:30 合 計 24 人 Advanced Clinical Training-network Report 077 ●セミナーレポート 第 4 回 外科手術基本手技セミナー 外科手術基本手技のハンズオンセミナー。千葉大学 相田俊明 医師、千葉医師研修支援ネットワーク 顧問 清水孝徳 医師をインストラクターとして、①外科基 本手技 ②全身麻酔の導入・維持 ③手術の直接介助・ 間接介助 ④手術室におけるマナー・注意事項を習得 した。 参加者の声(「外科手術基本手技セミナー」アンケート集計結果より) (7 名回答、※内 3 名は ACT ‐ network 以外の参加者) 1. 全体の研修時間はどうでしたか。 長い(1 名)、丁度良い(4 名) 、短い(2 名) 2. 実際に自分が実習できた時間はどうでしたか。 丁度良い(3 名)、短い(4 名) 3. 参加人数はどうでしたか。 多い(5 名)、丁度良い(2 名) 4. 次回研修に参加する機会がありましたら、また参加されますか。 参加費を払ってでも参加する(5 名)、無料であれば参加する(2 名) 5. (1) 講師からの指導内容はどうでしたか。 充実していた(5 名) 、まあまあ充実していた(2 名) (2) また、その理由も教えて下さい ・千葉大の手法と同時にその他のやり方のメリット・デメリットを教えて頂けた。 ・まだ、外科を回っていないがいろいろ話が聞けた。 ・身近なことからいろいろと教えて頂けた。和気藹々とした雰囲気でとてもよかった。 ・多くの人がアドバイスを言うので少し混乱した。 ・知識がないけど教えて頂けた。 6. 今回の研修に参加した動機を教えてください。 ・外科志望だが通常のオペでは出来る手技が限られていて実際に練習したかったため。 ・将来、外科医を目指しており、その手法を学べる絶好の機会だと感じたから。 ・外科志望、手術手技実際にやってみたかった。 ・前回参加者の先輩に進められた。 ・上司に進められた。 ・手技の経験 ・貼り紙を見た。 078 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 7. 今回の研修に参加して良かったことをお書きください。 ・手技の経験 ・人でやった事のない術式をやれたこと。 ・術者になって初めて分かることがあると感じた。(視野の展開) ・外科手技の基本をいろんな先生方から教わることができた。 ・腸管吻合、その前立ちなど出来たこと。 ・他病院のドクターと交流出来たこと。 ・手術の基本から大変多くを教えていただき良い経験となった。 8. 今回の研修で不満だった点をお書きください。 ・自分の時間が少なかった。 ・もっと時間があれば良かった。 ・見学が多い。 ・人数が少し多い。 ・人数がやや多く実際に出来る時間が短い。 ・少し暑かった。 9. 医師経験年数、外科経験年数、現在の立場を教えてください。 ・医師 1 年目 外科志望 初期研修医 ・医師 2 年目 外科 8 か月 初期研修医 ・医師 2 年目 外科 2 か月 初期研修医 ・医師 3 年目 救命救急研修 1 年目 ・外科シニア 1 年目 ・シニアレジデント ・看護学部 3 年 10. 専門分野あるいは今後の専攻予定の科を教えてください。 ・心臓血管外科予定 2 名 ・消化器外科 2 名 ・一般外科 ・救命 11. 今後ブタを使った「手術手技セミナー」に参加するとしたら、どのような内容を希望されますか? ・今回と同じでよいが、密度を濃くしてほしい ・器械吻合手技、腸管吻合 ・血管吻合を含む手技 ・後期研修医と初期研修医に分けて行ったほうが充実して実習出来る。 Advanced Clinical Training-network Report 079 ●セミナーレポート 第 5 回 神経内視鏡ハンズオンセミナー 千葉大学 脳神経外科 佐伯 直勝 教授らを講師として、献体を使用し耳鼻科と連携した数少ない神経内 視鏡ハンズオンセミナーであり、日本神経内視鏡技術認定委員会が公認する講習会である。講義に加え、 第 3 脳室底開窓術法を含めた脳室内操作(硬性鏡、軟性鏡) 、血腫除去術のための基本手技(硬性鏡)、 経蝶形骨洞手術に必要な鼻腔・頭蓋内解剖と基本・応用手技(硬性鏡)などを行った。 参加者の声 筑波大学 脳神経外科医 卒後 7 年目 ホルマリン献体ではなく、凍結献体であり、生体に似た 組織で、実際の手術に似たトレーニングをすることが出 来た。 筑波大学 脳神経外科医 卒後 3 年目 普段はあまりさわる事もない内視鏡について基本的な操 作から実践を想定した動きまで習うことが出来て今後の 参考になった。 自分にとって何が不足しているのかを学ぶことができた。 ●平成 24 年度 参加者数 2012/4/7(土) 第 2 回 モバイル VIST セミナー in 千葉大学 2人 第 8 回 外科手術基本手技セミナー 2人 15:00 ∼ 18:00 2012/9/9(日) 9:00 ∼ 18:00 2012/10/14(日) 9:00 ∼ 18:00 (共催:NPO 法人千葉医師研修支援ネットワーク) 第 9 回 外科手術基本手技セミナー 3人 (共催:NPO 法人千葉医師研修支援ネットワーク) 2012/11/04(日) 第 2 回 心臓血管外科手術セミナー 13:00 ∼ 16:15 冠動脈バイパス術 2012/12/15(土) 外傷手術手技セミナー 9:00 ∼ 17:2 Surgical Strategy and Treatment for Trauma, SSTT 1人 8人 2012/12/16(日) 8:00 ∼ 16:40 2012/12/22(土) 第 6 回 神経内視鏡ハンズオンセミナー 3人 9:00 ∼ 19:30 2012/12/23(日) 8:00 ∼ 17:00 合 計 19 人 080 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●セミナーレポート 第 2 回心臓血管外科手術セミナー 千葉大学 心臓血管外科 助教の石田敬一 医師らを講師と して、心臓血管外科における冠動脈の血管吻合テクニック に関する講義を行った後、実際に実験用のブタの心臓およ び血管を用いて、1. 持針器の持ち方、運針(7/0 プロー リン)の方法、2. 血管の剥離:ビーバーメスを用いて血 管を剥離する方法、3. 血管吻合の手順(パラシュート吻 合)、4. 運針の方法など実際の血管吻合で注意すべき点を ふまえたブタの冠動脈吻合、5. 助手(前立ち) として血管吻合術の補助の仕方、を習得した。 参加者の声 冠動脈血管吻合は未経験であり、大変有意義 で、あっという間の 3 時間でした。 Advanced Clinical Training-network Report 081 東京女子医科大学病院 Tokyo Women's Medical University Hospital 東京女子医科大学は明治 33 年(1900 年)に創立された東京女医学校を母体として、1952 年に 新制大学として設立されました。現在、本院(東京都新宿区)のほかに東医療センター、八千代 医療センター、青山病院、成人医学センター、東洋医学研究所、膠原病リウマチ痛風センター、 女性生涯健康センター、青山女子医療研究所、青山自然医療研究所、遺伝子医療センターなどの 施設を有しています。本院で 36 診療科が毎日 4057 人の外来患者、1063 人の入院患者(2007 年度 の実績)の診療を担当する日本でも屈指の規模を有しています。そして特定機能病院として先進 的医療に取り組んでいます。 従来から本学では全国から若手医師を募り本学独自の「医療練士制度(5 年間) 」のもと、多く の専門医養成を行ってきた実績があり、高く評価されています。さらに現在「先進的、全人的か つ安全な医療の追求を通じて、ともに世界の人々の健康に貢献する人を育成する」ビジョン 2015 の目標を掲げ、努力を重ねているところです。 高度医療人養成プログラムは国として大学病院における専門医養成の充実を支援するものであ ります。本学もその趣旨に賛同して参画しました。 これからも、多くの皆さんが本学の専門研修で学び、この養成支援プログラムを利用すること を期待しています。 総合診療科 教授 野 村 馨 082 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 副都心のさまざまな患者様の要求に応え、 より高度な医療を目指す 当院は、副都心新宿に位置することもあって、いろいろな患者様が来院します。職業はもちろん、 人種においても多彩で、研修する方は患者様の層がたいへん厚いということを実感するでしょう。 こうした条件の中での臨床研修は得難い経験になると思います。 研修を終えて元の所属に戻った時、我々がどう評価されているのかは気になるところです。教 えたからにはそれなりのものを身につけてほしいという気持ちで指導に当たっています。 また、当院は医療についてよく勉強している患者様が多いのですが、そうした患者様の要求に 応えることによって、より高度な医療を目指していきたいと考えています。 東京女子医科大学は私立ということにあって、他の 4 大学とは異なる雰囲気を持っています。 この点については、互いにメリットがあるのではないかと考えています。私は、違うバックグラ ウンドを持つ人間同士が交流することによって生まれる可能性にこれからも期待していますし、 今回のプロジェクトの目標の一つにそれがあると思っています。 東京女子医科大学コーディネーター 齋藤 洋 Advanced Clinical Training-network Report 083 ■ 各診療科の特色を生かす 東京女子医科大学セミナー開催実績 ●平成 21 年度 参加者数 2009/8/1(土) 心研小児科夏季セミナー 140 人 13:00 ∼ 18:00 8/2(日) 8:30 ∼ 13:30 女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎知識 前期 3人 2009/9/12(土) 多断面 CT 画像・3D 画像作成研修プログラム 2人 14:00 ∼ 16:00 冠動脈 CT 編 2009/10/17(土) 多断面 CT 画像・3D 画像作成研修プログラム 8:30 ∼ 17:45 冠動脈 画像解析実習 2009/10/17(土) 女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎知識 後期 9:00 ∼ 17:00 ①女性医療に必要な皮膚科学の知識とサイコダーマトロジー 2009/11/14(土) ICLS 指導者養成講習会 1人 2009/12/5(土) 女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎知識 後期 2人 ∼ 12/6(日) ②摂食障害集中講座 2009/8/29(土) 2009/9/5(土) ∼ 9/6(日) 9:00 ∼ 17:00 8人 2人 9:00 ∼ 17:00 9:00 ∼ 17:00 2010/1/15(金) 東京女子医科大学総合診療科/千葉大学総合診療部 17:30 ∼ 19:00 合同カンファレンス 2010/1/30(土) 女性医療に役に立つメンタルヘルスの基礎知識 後期 ∼ 1/31(日) ③気分障害・不安障害集中講座 15 人 3人 9:00 ∼ 17:00 合 計 176 人 084 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●セミナーレポート 心研小児科夏季セミナー ●セミナーレポート 多断面 CT 画像・3D 画像作成研修プログラム 冠動脈 画像解析実習 実習内容 GE 社製画像解析ワークステーションの基 本的な操作方法の説明。 各処理法の利点・欠点や読影上のピットフォール、 アーチファクトや部分容積効果について、実際に 画像を示して説明した。 ・冠動脈 CT の画像解析(Tree VR、Curved MPR、Lumen view、Color map、 Angiographic view、Cross section)の操作方法の説明 ・臨床症例を使った冠動脈 CT の画像解析実習 ・臨床症状を参考に、所見の拾い上げ(読影)実習・画像解析のための注意点 Advanced Clinical Training-network Report 085 ●平成 22 年度 参加者数 2010/4 ∼ 8/ 消化器内視鏡トレーニング・ハンズオンセミナー 24 人 第 1 回救急集中治療医学セミナー 73 人 2010/7/24(土) 若手医師のための夏季漢方入門セミナー 22 人 15:00 ∼ 20:30 東洋医学研究所 (23 回開催) 2010/7/11(日) 9:00 ∼ 17:00 7/25(日) 9:00 ∼ 15:00 2010/7/31(土) 心研小児科夏季セミナー 100 人 13:00 ∼ 18:00 8/1(日) 8:30 ∼ 14:30 2010/8/28(土) 機能脳神経外科夏期セミナー 68 人 5 大学総合診療部門合同カンファレンス 19 人 8:55 ∼ 18:00 2010/10/2(土) 16:00 ∼ 18:00 合 計 306 人 ●セミナーレポート 5 大学総合診療部門合同カンファレンス 5 大学の総合診療部門が一堂に会し、各 大学の症例についてディスカッションを 行う。他施設での診断法を学び、知見を 共有することで総合診療医としてのレベ ルアップをはかる。また専門研修医同士 が交流することも目的の一つである。 086 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 5 大学総合診療部門合同カンファレンスに出席して 東京女子医科大学 総合診療科 齋藤 洋(ACT ‐ network コーディネーター) 平成 22 年 10 月 5 日、かねてから開催案はあったもののなかなか実現に至らなかった大学総合診療 部門の合同カンファレンスがついに実現した。内容は各大学が症例を持ち寄り、その症例の主訴から 鑑別診断を挙げ、確定診断に至るまでの臨床推論をディスカッションするというものである。他の施 設での診断方法を学び、知見を共有することにより総合診療医としてのレベルアップをはかることが 目的である。 世話人としては初めての経験であり手探りでの開催であったが、筑波大学 , 自治医科大学 , 千葉大学 , 女子医科大の教授 , 診療部長以下 , スタッフ , 後期研修医 , 初期研修医 , 医学生などが参加して盛会と なった。土曜日午後の開催であり、カンファレンス後の懇親会も企画していたので3大学(女子医大 , 自治医大 , 筑波大学)からの症例に絞って討論を行った。各大学の指導医が症例の情報を小出しにしな がら、他大学の後期研修医 , 初期研修医 , 学生と推論を進めていった。それぞれの大学の流儀なども垣 間見えて大変興味深いものであった。 症例は①プライマリーケアではしばしば経験するが、大学の内科臨床講義などでは教わらない HSV 1型による歯肉口内炎から始まり、診断困難な症例を症状や身体所見から推論を進めていった。②発 熱を伴わない CRP 高値症例(腸腰筋膿瘍)③原因不明の腹痛(大網梗塞)について討議した。 所属する大学の垣根を越えて、参加者全員が自由闊達に意見を述べた。参加者全員で推論を進め妥 当な診断にいたるのは総合診療カンファレンスの醍醐味であり、喜びであることが改めて強く感じら れた。カンファレンスの興奮さめやらぬなかで、場所を変えて懇親会が行われた。そこでは同じ総合 診療を専門とするものとしての共通の課題などで大いに盛り上がった。また大学間の交流としても大 変有意義な時間であった。 閉会時には、レベルの高い総合診療医養成のため定期的にこの合同カンファレンスを続けようと参 加者一致した意見が得られ、盛会のまま解散となった。 ●平成 23 年度 参加者数 2011/7/23(土) 若手医師のための夏季漢方入門セミナー 15:00 ∼ 20:30 東洋医学研究所 29 人 7/24(日) 9:00 ∼ 15:00 2011/7/30(土) 心研小児科夏季セミナー 120 人 13:00 ∼ 18:00 ∼ 7/3 1(日) 8:30 ∼ 13:30 Advanced Clinical Training-network Report 087 2011/8/20(土) 機能脳神経外科夏期セミナー 56 人 8:55 ∼ 18:00 9人 2011/10/22( 土 ) 女性医療に役に立つ医学と健康学の基礎知識講座 後期 9:00 ∼ 17:00 ①女性医療に必要な皮膚科学の知識とサイコダーマトロジー (精神皮膚科学) 2011/10/22( 土 ) 5 大学総合診療部門合同カンファレンス 31 人 16:00 ∼ 18:00 2011/11/19(土) 女性医療に役に立つ医学と健康学の基礎知識講座 後期 ∼ 11/20(日) ②摂食障害集中講座 9人 9:00 ∼ 17:00 2011/1/28(土) 女性医療に役に立つ医学と健康学の基礎知識講座 後期 ∼ 1/29(日) ③気分障害・不安障害集中講座 9人 9:00 ∼ 17:00 合 計 263 人 ●セミナーレポート 若手医師のための夏季漢方入門セミナー 東洋医学研究所 漢方医学総論・四診実習・講演 として女性と漢方・精神症状と 漢方・高齢者、虚弱者と漢方の 他、特別講師として松田邦夫先 生が「医の心」と題して、名医 達の医訓を通して医療あるいは 医師としての有り方を論じた。 また、講師全員によるナイトディスカッション、鍼灸師による鍼灸総論・鍼灸実習を行った。 参加者の声 筑波大学 総合診療科医 卒後 6 年目 (良かった点) 漢方医学の基礎について導入がスムーズにできた 指導者によるディスカッション時の漢方医学的な指導が受けられた (改善が必要な点)ディスカッションの時間がもう少し長くて良い。 四診の方法について標準化した方がわかりやすい (プログラムへの要望)日程上広く浅くなってしまうので、①総論②各論③四診実習、と パート毎に1日を割り当てたらよいのではないか。 実際の診療風景がみられるとよい。 088 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●セミナーレポート 女性医療に役に立つ医学と健康学の基礎知識講座 東京女子医科大学附属女性生涯健康センターが中心となって、 女性精神医学に関心のある医師を中心に女性外来短期型専門 家育成コースとして、日本総合病院精神医学会と共催にて開 催。 メ ン タ ル ヘ ル ス 編、 性 差 医 療・ 医 学 編、 皮膚科学の知識とサ イコダーマトロジー、 摂食障害・気分障害・ 不安障害について集 中的に学んだ。 ●平成 24 年度 参加者数 2012/7/28(土) 若手医師のための夏季漢方入門セミナー 28 人 心研小児科夏季セミナー 79 人 機能脳神経外科夏期セミナー 60 人 5 大学総合診療合同カンファレンス 26 人 15:00 ∼ 21:00 ∼ 7/29(日) 9:00 ∼ 15:00 2012/7/28(土) 13:00 ∼ 18:00 ∼ 7/29(日) 8:30 ∼ 13:30 2012/8/25(土) 8:50 ∼ 18:00 2013/2/23(土) 16:00 ∼ 18:00 合計 193 人 Advanced Clinical Training-network Report 089 ●セミナーレポート 機能脳神経外科夏期セミナー 機能神経外科の普及と最先端の知識、技術を習得すること を目的として、本領域を日々実際に行っている専門家によ り、明日からの臨床にすぐ応用できることを主眼として開 催した。 機能脳神経外科領域の手術、モニタリングなどにつき具体 的にどのように行っているかを各分野の専門家によって詳 しく講義し、本領域への理解を深めてもらった。また、睡 眠時無呼吸症候群、ハンガー反射、精神疾患への脳深部刺 激術の応用の可能性などについて話題提供の場を設け、盛 会であった。内容のさらなる充実のため学外より 3 名の講 師を招聘した。 090 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 自治医科大学附属病院 Jichi Medical University Hospital 自治医科大学は、全国 47 都道府県によって、地域医療の担い手になるべき高度な臨床能力を身 につけた人間性豊かな総合医を養成することを目的として設立された大学です。附属病院はこの 建学の精神を実現する場として 1974 年に河内郡南河内町(現下野市)に開設されました。JR 宇 都宮線自治医大駅から徒歩数分の場所に位置し、首都圏へのアクセスには大変便利です。また、 第二病院として埼玉県大宮市(現さいたま市)に 1989 年に循環器疾患を主体とする大宮医療セン ター(現さいたま医療センター)を開設致しました。 附属病院は、新臨床研修制度を先取りする形で、開院当初から研修医を全国から公募し、地域 における中核・特定機能病院としての機能を果たしながら、専門医療と同時に建学の精神である 総合医療精神を尊ぶ伝統を有しております。また、患者数においても年間の救急患者数は、約 3 万 4 千人、手術件数は約 9 千件余と全国トップクラスの研修施設であります。 近年、病院の全面的なリニューアルを行い、診療体制も循環器、呼吸器、消化器、脳神経、そ して腎臓センターが発足し、患者さん本位の診療一貫体制がとれるようになりました。また、血 管内治療や無菌治療、臨床腫瘍センター等の各部門を設立し、専門医療分野の充実を図っており、 2008 年度には、研修医を対象としたシミュレーションセンターの整備をいたしました。また、総 合診療部、救命救急センター、各臓器別センターやとちぎ子ども医療センターなどで、豊富な臨 床経験を積み、若い医師の実力を身につける環境が整備されています。 今回、5 大学病院が連携する高度医療人養成プログラムに参加し、今後も更に充実した高度の臨 床教育を核として高い専門性を併せもつ総合医の育成に努めます。意欲的な専門研修医の参加を お待ちしております。 病院長 安田 是和 Advanced Clinical Training-network Report 091 ほかの大学の門を叩いて積極的に学ぶ姿勢、 修行時代には必須でしょう。 若い時期には自分のやりたいことに正直であっていいと思います。ほかの大学の門を叩いて積 極的に学ぶ姿勢、特に修行時代にはそれが必須でしょう。5 大学連携による高度医療人養成ネット ワークは、そうした希望を持つ若手医師にとって、最適な場が提供されるシステムだと考えてお ります。参加している 5 大学はそれぞれの特徴を持っており、おそらく国内最強の組み合わせで す。さらに、大学だけではなく、関連病院での研修も含まれていますので、選択肢が豊富で、個々 の目的に応じた研修が実現できるでしょう。 当大学の卒業生は他の医療機関で臨床研修を受けるので全国の大学から研修医を公募するとい う仕組みになっています。これは、いろいろな文化が混ざり合いながら共通のものを身につけて いくということを意味しており、まさにこれがこの大学の最大の特徴です。病院では 1 次医療か ら 3 次医療までカバーしており、各診療科において豊富な臨床経験を積み重ねることができます。 高度な研修教育を実施するためのシミュレーションセンターも整備されています。 自治医科大学コーディネーター 三瀬 順一 092 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ■ 先端医療と地域医療 自治医科大学セミナー開催実績 平成 21 年度 参加者数 2009/8/1(土) 九十九里地域医療夏期セミナー 9人 12:00 ∼ 21:00 ∼ 8/2(日) 9:00 ∼ 13:00 2010/2/20(土) 第 1 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミナー 11 人 12:00 ∼ 17:00 合 計 20 人 ●セミナーレポート 九十九里地域医療夏期セミナー 参加者は、当初予定と異なり、医学生が多くなった。研修医の 参加を多くするため、広報の方法、日程等に工夫の余地があっ た。 フィールドワークには多くの地域住民と医療従事者の参加が あり、地域を見る目を養い、考察することにより、より深く 地域医療のありようを理解することができたとの感想が報告 や車座セッションにおいて、ほとんどの参加者から聞かれた。 モーニングセッションは、当初複数テーマからの選択制とし たが、人数が少なかったため、全員で1テーマを履修するこ ととした。いずれも参加者の学習ニーズに合致しており、す ぐに役立つ内容を含む秀逸なものであり、参加者の満足度も高かった。 ●セミナーレポート 第 1 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミナー 第一線で活躍されている藤田保健衛生大学 臓器移植再生医学 の 杉谷 篤 教授による講義と指導。少人数制で実験用のブタを 用いた臓器摘出の実習を行った。 参加者の声 東京女子医科大学 腎臓外科医 卒後 6 年目 基礎から日本の移植の先端技術まで教えて頂き有難うございま した。本当に良い経験ができました。 東京女子医科大学 腎臓外科医 卒後 12 年目 自治医科大学 先端医療技術開発センターの設備が整備されていて驚きました。実践的なセミナーで臨 床現場でも役立たせて頂きます。 Advanced Clinical Training-network Report 093 ●平成 22 年度 参加者数 2010/8/20(金) 4人 地域医療セミナー in 筑西 2010 13:00 ∼ 21:00 8/21(土) 8:30 ∼ 13:00 2010/11/27(土) 新生児蘇生法「専門」コース A コース 18 人 12:00 ∼ 17:00 2011/2/5(土) 第 2 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミナー 12:30 ∼ 19:00 肝臓編 2011/3/6(日) 第 3 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミナー 12:00 ∼ 17:30 膵臓・腎臓篇 5人 11 人 合 計 38 人 ●セミナーレポート 新生児蘇生法「専門」コース A コース 日本周産期・新生児医学会が設けた「新生児 蘇生法「専門」コース」。 講義、気管挿管や薬物投与などの基礎手技実 習、シナリオ実習、そして認定試験を行う。 講義を受けた後は、シミュレーターを使用 し、基本的手技の実習とシナリオセッション を行った。 インストラクターは、国際医療福祉大学病院 小児科の嶋岡 鋼先生。 参加者の声 新生児蘇生法の知識を正しく身に付けられ、勉強になった。 今後の診療や実習に生かしていきたい。 ●平成 23 年度 参加者数 2011/9/3(土) 地域医療セミナー in 筑西 2011 6人 第 4 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミナー 7人 9:00 ∼ 18:00 2011/11/10(木) 12:30 ∼ 17:30 2012/1/14(土) 新生児蘇生法「専門」コース A コース 13 人 12:00 ∼ 17:00 合 計 26 人 094 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●セミナーレポート 地域医療セミナー in 筑西 2011 医療崩壊の危機に直面し、再生しようとしている地域の住民、患者、医療者の考えを聞くことで、類 似する医療環境の地域で勤務する場合に医師に必要なことを学習し、家庭医、総合医としてのキャリ アを向上させることを目的として開催した。 セミナー当日は、地域探訪、講義、ワークショップ等地域医療提供の 状況を知るため、地域の医療機関を見学し、職員、医師らからこの地 域の医療提供の現状と課題を聞き取った。午後にはこの地域の基幹産 業である園芸農家の状況を知るため、ハウス農家とビニールハウス用 のビニール資材を作る工場を尋ね、住民の方から地域の経済、産業、 景気、生活状況などについて伺った。最後に市議会議員、市民、病院 職員などとグループワークを行い、この地域に必要な医療とはどんな ものかを議論した。それぞれの参加者が地域の実情を多面的に見て意 見交換することで求められる医療像や医師像を明確にするきっかけを つかむことができたと思う。 ●セミナーレポート 第 4 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミナー 脳死下臓器摘出に携わっている第一線の医師を講師として招 聘し、将来、消化器外科、肝胆膵外科、心臓外科、呼吸器外 科を志す若手医師らに対して、迅速で正確な手技が必要とさ れる脳死下臓器摘出手術を大動物モデルでトレーニングする ことを目的に実施される第 4 回目のセミナー。 自治医科大学 実験医学センターの國田 智 先生による動物倫 理講習の後、藤田保健衛生大学 医学部 臓器移植再生医学 の杉谷 篤 先生の講義を行った。その後、先端医療技術開発センターに移動し、実際にブタを使用して 臓器摘出を実習した。 Advanced Clinical Training-network Report 095 参加者の声 千葉大学 先端応用外科医 前回から連続して2回受講させていただいたこと で、理解がより深まった。 一般の手術にも生かせる手技、解剖がたくさんあ り良かった。 東京女子医科大学 消化器外科医 若い医師のみの参加で、色々手技を学ぶことがで きました。 自治医科大学 移植外科医 ブタを使ったシミュレーションにより、具体的な イメージをつかむことができた。 国立がん研究センター中央病院(東京大学関連病院) 外科医 移植外科の最前線に立つ杉谷先生の手術へのアプローチ、考え方を間近で学べたことが良かったです。 自治医大のたくさんのスタッフの皆様の御参加に心から感謝いたします。 ●平成 24 年度 参加者数 2012/6/1(金) 講演会「今、医療に求められるプロフェッショナリズムとは」 22 人 2012/09/08(土) 総合診療オープンセミナー 34 人 ① 10:00 ∼ 11:00 講師 徳田 安春 先生 ①講演 ②カンファランス 18:00 ∼ 19:30 ② 11:00 ∼ 12:00 2013/02/06(水) 第 5 回脳死下臓器摘出シミュレーションセミナー 6人 12:00 ∼ 16:30 合計 62 人 ●セミナーレポート 講演会「今、医療に求められるプロフェッショナリズムとは」 真のプロフェッショナルを養成することを目的として、卒後 3 年目∼ 10 年目くらいのシニアレジデ ント(後期研修医)∼中堅指導医くらいまでの若手医師を対象に、「医師としてのプロフェッショナリ ズムはいかにあるべきか、どのように実践されるべきか」 この問題について、プライマリケア医・病院総合医の実践 を通じて議論してこられた北海道大学病院・卒後臨床研修 センターの 宮田 靖志 先生 をお迎えして、最近の研究の動 向や、実践のあり方、ひいては若手医師や医学生への教育 をどうするかなど、多彩な観点からお話しいただいた。 096 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 参加者の声 自治医科大学 地域医療学 シニアレジデント 心に残りやすいキーワードが多く、自分の中で漠然 としていた部分において整理ができた。自分なりの プロフェッショナリズムを見直すきっかけになっ た。 Advanced Clinical Training-network Report 097 5 社会への情報提供 ■ ホームページの充実 研修コース一覧 本事業の根幹となる連携研修プログラムについて、専門研修医が進路を決める際の参考となるよう、 毎年アップデートし、ホームページに公開した。 Advanced Clinical Training-network Report 101 研修者の一言 参加機関への研修について、希望者への参考となるように、参加した医師の研修内容や感想を公開した。 102 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 News & Topics 各大学主催するセミナーやカンファレンスなどの情報を随時更新し、参加者を募集した。 クリックしてチラシのPDFを公開 セミナー終了後に 活動実績を広報 Advanced Clinical Training-network Report 103 事業紹介動画 各大学とそこに勤務する医師へのインタビューを行い、本事業のメリットを伝える動画を制作し、ホー ムページ上に公開した。 104 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 各大学のページへジャンプ ホームページついては、下記 URL をご覧ください www.5renkei-tsukuba.jp Advanced Clinical Training-network Report 105 ■ 広報物の制作 パンフレット (平成 22 年 12 月 3 日 50,000 部制作) 本事業が主催するセミナーや他大学の短期・長期研修プログラムに参加した専門研修医及び各大学の コーディネーターを取材し、本プログラムのメリットを宣伝した。 106 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ポスター 専門研修医向けのポスターを制作し、5 大学及び関連医療機関に掲示した。 平成 21 年度 (平成 21 年9月 1,000 枚制作) 平成 22 年度 (平成 22 年 7 月 500 枚制作) 平成 23 年度 (平成 23 年 8 月 ポスター 20 枚 チラシ 500 枚制作) Advanced Clinical Training-network Report 107 新聞の発行 自治医科大学では三瀬順一コーディネーターの執筆で『ACT ☆ News』を発行し、学内に宣伝した。 (平成 22 年 4 月 30 日発行) 108 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ■ 発表の機会 ● GP フォーラムへの参加 特色ある大学教育支援プログラムフォーラム(GP フォーラム)へ過去 2 回参加し、分科会やポスター セッションで事業の紹介を行った。また、他大学の GP 担当者と情報交換した。 平成 20 年度 GP フォーラム 分科会「大学病院連携型高度医療人養成推進プログラム」にて、筑波大学の松村 明(事業推進責任者) が、東京医科歯科大学、島根大学及び慶應義塾大学と共に事例報告を行った。 日 時 平成 21 年 1 月 12 日 16:00 ∼ 17:30 場 所 パシフィコ横浜 会議センター 3F 304 会議室 ACT ‐ network の事例報告 ポスターセッションにて事業の紹介 平成 21 年度 GP フォーラム ポスターセッションに出展し、事業紹介及び他大学と取組について情報交換を行った。 日 時 平成 22 年 1 月 8 日(金)10:00 ∼ 16:30 場 所 東京ビッグサイト 会議棟 1F 102 会議室 ACT ‐ network 紹介ブース 他大学との情報交換 Advanced Clinical Training-network Report 109 SAT テクノロジーショーケース in つくば 筑波大学の他の文科省大学改革推進等補助金事業と合同でポスターを出展した。 開催日 平成 22 年 12 月 24 日(金)∼ 25 日(土) 場 所 つくば国際会議場 ●学会発表 医学会及び社会に向けた広報として、学会へ参加し本事業の取組内容を積極的に発表した。 第 48 回日本医療・病院管理学会総会 開催日 平成 22 年 10 月 16 日(土) 場 所 広島国際会議場 演 題 パネルディスカッション「医師不足解消のための大学病院を利用した専門医療 人材養成に関するセッション」 110 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 松村 明(ACT ‐ network 事業推進責任者) がパネリストとして招聘された。 第 43 回日本医学教育学会大会 開催日 平成 23 年 7 月 22 日(土) 場 所 広島国際会議場 演 題 大学病院連携型高度医療人養成推進事業「東関東・東京高度医療人養成ネット ワークの現状と課題」 演 者 中居 康展(ACT ‐ network コーディネーター) 第 44 回日本医学教育学会大会 開催日 平成 24 年 7 月 27 日(金) 場 所 慶應義塾大学 日吉キャンパス 演 題 「ACT ‐ network における 5 年間の実績と今後の展開」 演 者 中居 康展(ACT ‐ network コーディネーター) Advanced Clinical Training-network Report 111 第 12 回 VR 医学会学術大会 開催日 平成 24 年 8 月 25 日(土) 場 所 千葉大学医学部附属病院 演 題 「VIST を用いた血管造影・血管内治療の教育」 演 者 中居 康展(ACT ‐ network コーディネーター) 112 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ■ メディアの活用 ●医学雑誌への広告掲載 羊土社『レジデントノート 2 月号』 (平成 21 年 1 月 1 日発行) 羊土社『レジデントノート 11 月号』 (平成 21 年 10 月 1 日発行) 文光堂『臨床研修プラクティス 11 月号』 (平成 21 年 10 月 10 日発行) 医学書院『週刊医学界新聞 第 2854 号』 (平成 21 年 11 月 9 日発行) Advanced Clinical Training-network Report 113 羊土社『レジデントノート 8 月号』 (平成 22 年 8 月 1 日発行) 羊土社『レジデントノート 8 月号』 (平成 23 年 8 月 1 日発行) 114 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ● ACT ‐ network の記事 財界人出版『月刊 財界人 11 月号』 (平成 21 年 9 月 25 日発行) 筑波大学の血管内治療シミュレーター VIST について中居康展コーディネー ターが取材を受け、シミュレーターの 活用方法を紹介した。 『大学ニュース 第 701 号』 (平成 23 年 8 月 24 日発行) 東京女子医科大学歯科口腔外科の 熊坂 士 医師が、筑波大学で行った 研修について報告した。 Advanced Clinical Training-network Report 115 官庁通信社『文教速報 第 7664 号』 (平成 23 年 12 月 7 日発行) 第 4 回シンポジウムについての記事 文教ニュース社『週刊文教ニュース 第 2167 号』 (平成 23 年 12 月 12 日発行) 第 4 回シンポジウムについての記事 116 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ●ラジオ出演 FM ラヂオつくば(84.2MHZ) 平成 24 年 2 月 20 日の番組『Wh@t's Tsukuba 本日のラインナップ』に出演 ACT ‐ network の 取 組 と 事 業 の 一 環 で開催した講演会「心肺蘇生と心血管 緊 急 治 療 ガ イ ド ラ イ ン 2010 What's New! よみがえる命を感じる日」につい て、筑波大学救急・集中治療部 副部長 の安田 貢 医師がインタビュー形式で紹 介した。 Advanced Clinical Training-network Report 117 6 評 価 ■ 外部評価委員の評価 平成 20 年度 外部評価委員 村岡 亮 厚生労働省 臨床研修審査専門官 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 1.キャリア支援センターの設置・拡充 4 2.事業推進委員会の設置 4 3.5 大学合同評価委員会の設置 4 4.シミュレータ等教育資源の整備 3 5.関連医療機関の整備 4 6.研修コースプログラム書の作成 4 7.参加者の募集・登録 4 8.FD(ファカルティ・ディベロプメント)の実施 3 コメント ・初年度であり、上記の項目について評価を具体的に行うことは困難である。 ・ 本事業以外の「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」との連携についても考 慮をお願いしたい。 ・ 茨城県のみならず、広く関東地区の広域地域医療計画における人材活用計画との 整合性に御配慮いただければと思います(もしそのような仕組みがなければ本事 業からの提言等含めて)。 平成 21 年度 外部評価委員 戸邉 一之 富山大学附属病院専門医養成支援センター センター長 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 1.主幹大学のキャリア支援センター(事務局)を中心とした連携運営の拡充 4 2.研修プログラム書の調整・整備、参加者の募集・登録 5 3.コーディネーター会議の設置 5 4.シミュレータ等教育資源の活用・拡充研修医・指導医の人事交流の促進 4 5.ホームページ、パンフレット等の広報活動 5 6.シンポジウム、全体会議の開催 5 Advanced Clinical Training-network Report 121 7.5 大学合同評価委員会の開催・FD の実施 5 8.関連医療機関の調整・整備 4 コメント 1.「主幹大学のキャリア支援センター(事務局)を中心とした連携運営の拡充」 について、筑波大学を中心にうまくいっていると思います。 2.「研修プログラム書の調整・整備、参加者の募集・登録」について、他の大 学の診療科をローテーションする理由をプログラム参加者に理解できように、 はっきりさせた方がよいかと思います。 3.「コーディネーター会議の設置」について、頻回に開催されていると思います。 4.「シミュレータ等教育資源の活用・拡充 / 研修医・指導医の人事交流の促進」 について、筑波大学におけるインターベンションセミナー、東大におけるスキ ルラボ、千葉大のクリニカルスキルスセンター(ドライラボ、ウェットラボ) 、 東京女子医大の復帰支援プログラムも充実していました。地理的に近い位置に あるので大学間の人事交流がもっと盛んでもよいのではないかと思います。 5.「ホームページ、パンフレット等の広報活動」について、セミナーに参加する 人数がもっと多くてもよいのではないかと思います。 6.「シンポジウム / 全体会議の開催」、よく organize されていると思います。 7.「5 大学合同評価委員会の開催・FD の実施」 、定期的に開催されており充実し ていると思います。 8. 「関連医療機関の調整・整備」について、関連病院との連携や教育を充実させ る試みをもっと企画して頂きたいと思います。 外部評価委員 廣瀬 昌博 島根大学医学部附属病院 病院医学教育センター センター長、准教授 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 122 1.主幹大学のキャリア支援センター(事務局)を中心とした連携運営の拡充 5 2.研修プログラム書の調整・整備、参加者の募集・登録 4 3.コーディネーター会議の設置 5 4.シミュレータ等教育資源の活用・拡充研修医・指導医の人事交流の促進 4 5.ホームページ、パンフレット等の広報活動 5 6.シンポジウム、全体会議の開催 5 7.5 大学合同評価委員会の開催・FD の実施 4 8.関連医療機関の調整・整備 3 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 合同会議やコーディネーター会議及び下位の委員会などの組織とその活動内容が コメント 明確に提示されており、それぞれの活動も定期的に確実に実施されていることは 報告書から、明らかである。また、上記の本年度の活動も過不足なく実行に移さ れていることから、いずれも高い評価結果である。 しかし、シミュレータによる活動が活発に実施されながら、本プログラムのなか のコースとシミュレータを活用したセミナーや研修会の位置づけが不明確で次年 度では、シミュレータ教育の位置づけを明確にすることが望ましいと考える。 また、他大学の大学病院間連携型プログラムでも同様のことが見受けられるとの 指摘もある。本プログラムにおいてもシミュレータの購入やシミュレータ研修に かかる経費が国民目線で納得のできる形で使用されることが望ましいと考えるが、 金銭面での報告書がないために評価はできない。 さらに、これも他の大学病院連携型高度医療人養成プログラム同様、本事業の目 的である地域医療の再生のために各関連病院との協力・連携をどのように維持し ていくのか、今後に期待したい。 いずれにしても、すばらしいシンポジウムや評価委員会であったと思います。シ ンポジウムでは5大学の多数の先生方がお集まりになり、成功裏に終わったので はないでしょうか?ただ、もう少しフロアからの意見があればもっと良かったか もしれません。このシンポジウムや評価委員会についてわたくしどもも大いに参 考にさせていただきたいと思います。 平成 22 年度 外部評価委員 戸邉 一之 富山大学附属病院専門医養成支援センター センター長 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 1.主幹大学のキャリア支援センターと各大学コーディネーターとの連携運営 5 2.連携研修プログラム書の整備の継続、積極的な参加者の増員 4 3.教育資源の拡充・相互活用による研修医、指導医の人事交流の促進 4 4.シンポジウム/全体会議の開催 5 5.関連医療機関の調整・整備 5 コメント 関東にあり高い求心力をもつ5大学の連携プログラムがどのように発展していく かは、今後の日本の医療の方向性を考える上でも非常に重要であり、評価委員と して意見を述べる機会を与えられたことは大変光栄です。実際、富山大学出身者 もこの5大学には合わせると 10 名近く、前期研修として参加しており、地方大 Advanced Clinical Training-network Report 123 学医学部出身者が地元に戻る際の受け皿になっており、これらの方々がどのよう に地域医療に貢献するのかは大変関心があります。 1.本GPの目的の一つは大学に残る専門医コース研修者を増やし、最終的に医師 不足の地域に派遣する医師を増やすことであります。本報告の中に各大学の専 門研修者(後期研修医、あるいは入局者数)の実数、大学病院にいる医師、関 連病院への派遣者数のデータが必要です。実態調査の意味合いもあり報告の内 に入れて頂きたい数字です。特に本プログラム参加者数のうち、関連病院への 派遣者数を大学で勤務・研究をしている数の比率(専門医コース研修者(A) 関連病院への派遣者数(B)とし、(B)を(A)で割った値)が年々増加し ていることを御確認下さい。 2.5大学の関連病院の中で、特に医師が不足している病院(何科の医師が何名位 不足)を具体的にあげて頂き、その病院への医師派遣について本プログラムが どのような役割を果たしてきたのか、そして今後果たしうるのかを示して下さ い。 3.スタートアップシンポジウムで「ある特定の病院を決めて、本プログラムに参 加している連携大学から派遣する」という提案があったと記憶しておりますが、 この件はどうなりましたか? 4.本プログラム参加者数は、3年目以降、大学病院に残った方のすべてが参加し ているのですか?本プログラムに参加しない方もおられる場合は、参加率を計 算して下さい。 5.指導者、特に各科の教授(科長)の大学連携プログラムや地域への派遣につい ての意識について、このプログラムの前後でどのような変化があったか初期の 段階でアンケートなどをとっておけばよかったのかもしれません。 6.「他大学での研修」について長期研修・短期研修それぞれどのようなメリット があったのか、参加者及び指導者(どんな技術を獲得しどんな点が成長したか) の意見をまとめられたら参考になります。作製いただいたパンフレットはとて もよくできていました。本年度の予定では交流者数は増加しているがどんな広 報活動を行なったのでしょうか。 7.大学院での研究はサポートされているのでしょうか? 外部評価委員 高崎 健 牛久愛和総合病院 病院長 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 124 1.主幹大学のキャリア支援センターと各大学コーディネーターとの連携運営 5 2.連携研修プログラム書の整備の継続、積極的な参加者の増員 5 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 3.教育資源の拡充・相互活用による研修医、指導医の人事交流の促進 4 4.シンポジウム/全体会議の開催 4 5.関連医療機関の調整・整備 4 コメント 1.予想よりも良好に進行している。 2.教室の壁を越えて自由な研修を実現するためには教授の理解が必要だが、同時 に専攻医の希望が優先されるような取り決めなども検討しては。 3.研修期間、研修項目など各学会の専門医研修単位として認められるように話は 着いているのか。それぞれの学会へ確認が必要。 4.研修を修めた専攻医からの評価もまとめておくことが必要ではないか。 5.研修項目と専攻医の経験年数などの適性についてはどのように考えるのか(高 学年では少しの経験でも収穫は大きい、しかし新人に高度の技術研修は意味が 無いなど経験年数と研修内容の適性があるのではないのか)。 6.今後とも継続できる形態を考えておく必要あり(研修期間中の給与問題など独 立した安定運営にも対応できるか)。 外部評価委員 高原 善治 船橋市立医療センター 病院長 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 1.主幹大学のキャリア支援センターと各大学コーディネーターとの連携運営 5 2.連携研修プログラム書の整備の継続、積極的な参加者の増員 4 3.教育資源の拡充・相互活用による研修医、指導医の人事交流の促進 4 4.シンポジウム/全体会議の開催 5 5.関連医療機関の調整・整備 4 5大学の関係者の努力と協力のもとに、セミナーの参加者が徐々に増加し、人的 コメント 交流も短期、長期も来年度は増加の見通しがあり、厚生労働省の中間評価でもA ランクとなり、本事業の意義と効果が認められます。今後もさらに充実を図って いただきたいと思います。 その中でまず第1点として、現在行われているイベ ントの多くがスキルアップを目指したものと思われます。高度医療人養成にはス キルも大変重要ですが、これと同時にリサーチマインドやアカデミックな考え方 を同時に身につけていくことが、将来にはもっと非常に重要になると思われます。 第二点としては長期的にこの事業を行っていくための方策も必要になると思いま す。現在参加している科が少なく偏りが認められます。各大学間でも差があるよ Advanced Clinical Training-network Report 125 うに思いますが、学内での教授会や科長会などで広く理解してもらうことが重要 になってくると思います。また、現在の日本医療の最も大きな課題の1つである、 この 10 ∼ 15 年に加速度的に進む高齢化社会に対する対応があげられます。この 観点から、高齢者に適した低侵襲治療や医療費の効率化を取り上げることも必要 かもしれません。最後には現在行われている事業を、各大学が地域の機関病院と も連携して行っていくことも、本事業が長期的に効果をだして行く上に大事な点 かもしれないと思います。 平成 23 年度 外部評価委員 戸邉 一之 富山大学附属病院専門医養成支援センター センター長 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 1.主幹大学のキャリア支援センターと各大学コーディネーターとの連携運営 5 2.連携研修プログラム書の整備の継続、積極的な参加者の増員 4 3.教育資源の拡充・相互活用による研修医、指導医の人事交流の促進 4 4.シンポジウム/全体会議の開催 5 5.関連医療機関の調整・整備 5 6.シンポジウム/全体会議の開催 5 コメント 【優れた点】 (1)高度医療人養成ネットワークにふさわしく、5 大学間で企画キャリアセンター 間および、専門医間においても積極的な交流が行われている。その研修の内容 においても、長期間にわたる専門研修から、短期間のセミナー、カンファ、ま た手技セミナーと多岐にわたり企画され、参加者の数から推測するに専門研修 医からも高い評価がなされているように思われる。5大学のコーディネーター が定期的に会議を開き、企画を行っている点は大学間の壁を打ち破る大きな一 歩になっていると思います。 (2)事業目的としてかかげられている若手医師の研修およびキャリアアップ環境の 改善という点では、上記で述べた内容が実施され、高く評価できる。 (3)シンポジウムの後の診療科ごとの分科会の開催は人材交流の上で非常に興味深 い取り組みと思います。 (4)広報活動も積極的に行っておられるようであり、関連医療機関への事業紹介、 セミナーのポスターなどの広報は重要な取り組みと考えられます。 126 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【問題点】 上記取り組みは大学間の長期研修、短期研修へ大きく関与していると思われ、大 きな成果をあげていると思います。一方で、研修プログラムの位置づけ、その効 果に関してははっきりせず、これがどの程度研修医の進路決定に関与しているか 知りたいところです。また地域医療の充実に資するための専門医並びに臨床研究 者の育成という観点からは、現在のプログラム参加している専門研修医のうちど れだけの人数が、今後数地域医療を担うべく地域の病院等で活躍するかの評価が 必要と思われます。 (2)本事業に関わる全ての大学病院にも問題となるが、これだけの規模の交流を今 後どのように維持しさらなる発展を考えておられるのかをお聞きしたい。 (3)専門研修医の交流は様々なレベルで工夫をされているが、多くの指導者が交流 し、スキルアップを図る FD がもう少しあればさらなるレベルアップが図れる 印象がある。 (4)大学院生の連携大学での臨床研究研修であるが、歯科の研修生であり、医科の 研修生にもこのような実績があると一層よいと思われる。また、これだけの規 模の内容であるのでアウトカムを明確に提示していただくとインパクトがより 一層強くなることが期待できる。 外部評価委員 高崎 健 牛久愛和総合病院 病院長 1.各大学ともにプログラムの内容も増え、充実してきているように思える。 コメント 2.実験動物を用いた技術トレーニングは有意義であり、今後とも推進すべき内容 と思うが、トレーニング方法など費用対効果なども考えた今後の進め方を検討 する必要があるように思う。 3.大学毎に「先進医療」として行っている医療内容は異なるであろうから、これ からの医療についての情報を共有するための臨床見学などは意義があるのでは ないだろうか。 4.上級の医師向けの研修では単に習うのではなく、自分の考え、やり方を披露し 合える形は研修として魅力が増すのではないだろうか。 5.単に医療技術だけではなく医療安全、医療倫理、医事法制、医療経済なども何 らかの形で取り込んでおくことは必要ではないかと思う。 6.長期の交流研修時の、安定した人件費対策の具体案を検討してはいかがか。 7.いずれにしてももう少しの努力と時間で新しい展開が見えそうに思える。 Advanced Clinical Training-network Report 127 外部評価委員 高原 善治 船橋市立医療センター 病院長 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 1.主幹大学のキャリア支援センターと各大学コーディネーターとの連携運営 5 2.コーディネーター会議及び FD の開催による教育環境及び指導体制の充実 4 3.連携研修プログラム書の整備の継続、積極的な参加者の増員 5 4.教育資源の拡充・相互活用による研修医・指導医の人事交流の促進 4 5.関連医療機関の調整・整備 4 6.シンポジウム/全体会議の開催 5 コメント 東日本大震災の影響がある中、多くの企画を行い、参加者の増加を計られたこと は大きな成果と思います。次回は経年的変化を提示していただけると更によくわ かると思います。各大学が行っているセミナーは特徴がでており、講演やカンファ レンス形式のものは参加者が多く、ハンズオンなどは少人数で行われているので、 大学間に参加人数の差が生じていると思われます。これらをうまく組み合わせる ことで更に各大学のセミナーの充実が図れるのではないかと思います。また昨年 度お願いした、リサーチマインドについても少し前進が認められ、今後更なる検 討を期待しております。関連医療機関の調整・整備については、各大学の事情が あると思いますが、特に指導医を含めた幅広い参加協力がまだまだ必要と思われ ます。 外部評価委員 村岡 亮 国立国際医療研究センター 医療教育部 副部長 5 段階評価 (よく取組んでいる ← 普通 → 改善が必要) 5 4 3 2 1 128 1.主幹大学のキャリア支援センターと各大学コーディネーターとの連携運営 5 2.コーディネーター会議及び FD の開催による教育環境及び指導体制の充実 5 3.連携研修プログラム書の整備の継続、積極的な参加者の増員 5 4.教育資源の拡充・相互活用による研修医・指導医の人事交流の促進 5 5.関連医療機関の調整・整備 4 6.シンポジウム/全体会議の開催 5 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 【総論】 コメント 平成 20 年度中途から開始された本事業であるが、地道な努力の結果として、5 大 学間の人的交流を触媒し、若手医師のニーズに沿った効果的な短期及び長期研修 を行うなど、平成 23 年度には前年度を凌ぐ成果が上がっている。平成 24 年度は 最終年度であり、平成 23 年度以上の成果が上がることが期待される。その成果 を踏まえて、文科省に本プロジェクトの継続意義(コスト効果)を説明し、平成 25 年度以降の予算措置に繋げたい。一方、医療人材育成には長期間を要すること より、本プロジェクトの真のアウトカムを見るためには、短期的評価のみでは不 十分であり、中・長期的な効果を測定するために有効な指標を設定することも必 要であろう。 【各論】 1.各大学医学部幹部および有力教授への浸透:当プロジェクトの理念及び活動内 容が一部の診療科にとどまらず、5 大学全てにおいて、幹部クラスにまで浸透し、 大学ぐるみの活動に拡大する事が望まれる。 2.研修修了者の長期フォローアップ:研修修了者のキャリアを継続的にトラック することにより、本プロジェクトの長期的なアウトカムやインパクトを測定す ることが必要(これは平成 25 年度以降の予算申請を行うための 1 つの論拠に もなり得る) 。このためには、修了者を登録し、長期的にフォローアップする 仕組みを動かすことが望ましい。 3.セミナーやワークショップ内容の電子媒体化:当プロジェクトを媒介として、 多くの "face-to-face" の交流関係が構築され、"hands-on" 研修によって有効 な技術移転がなされたことは評価に値する。今後、このような研修内容を標準 化し、例えば、e-learning の教材としてHPにアップロードすることによって、 研修内容が第 3 者に具体的に示され、経験が共有できるかもしれない。 4.研修者参画型のプロジェクト運営:当初、プロジェクト側から研修者に対して プログラムのメニューを示し、それに対して研修者が応募するという形を取っ ている。今後は研修者のニーズを吸い上げ、それを核に研修プログラムに形成 する、 研修者参画型のプロジェクト運営も考えられるのではないか。 5.現在進行中の専門医制度改革と同期しその将来像を見据えたプロジェクト運 営:現在専門医制度改革が進行中であるが、その中核は、学会と独立した、プ ログラム評価認定システムおよび専門医評価認定システム(試験制度)の改革 である。専門医資格取得に要する症例数及び多様性、指導体制充実(手技等を 教えることのできるスタッフ等)は医療の高度化に伴い、1 施設で完結するこ とが徐々に困難になっている。5 大学の診療科同志が相補的に機能し、上記の 条件をクリアすることができれば、1 大学で完結する専門医プログラムと比較 して遙かに魅力的な内容の専門医養成プログラムが出来上がることであろう。 Advanced Clinical Training-network Report 129 ■ 文部科学省の中間評価 取組概要及び中間評価結果 <総合評価基準> 評価 総合評価基準 件数 平成23年度補助 金額への反映 S 特に優れた取組を行っており、現行の努力を継続的に続けるこ とにより当初目的を十分に達成することが可能と判断される。 0件 該当なし A 順調に進捗しており、現行の努力を継続することによって当初 目的を達成することが可能と判断される。 5件 13.23%減額 B おおむね順調に進捗しているが、当初目的を達成するために は、留意事項を考慮し、一層の努力が必要と判断される。 10件 19.845%減額 (13.23%*1.5) 6件 26.46%減額 (13.23%*2) 0件 事業停止 C D 改善事項があり、このままでは目的を達成することは難しいと 思われるので、留意事項を考慮し、当初計画の大幅な変更が必要 と判断される。 特に重大な課題があり、今後の努力を持っても当初目的の達成 は困難と思われるので、補助事業を中止することが必要と判断さ れる。 注1)平成22年度予算:1,560百万円 → 平成23年度予算案:1,249百万円 注2)「平成23年度補助金額への反映」は、平成22年度補助金額に対する減額割合を示す。 なお、平成23年度予算案の審議状況により、割合は変更になる場合がある。 <総合評価結果> No 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 130 申請担当大学 北海道大学 東北大学 筑波大学 群馬大学 東京医科歯科大学 新潟大学 富山大学 山梨大学 名古屋大学 滋賀医科大学 京都大学 大阪大学 島根大学 広島大学 長崎大学 熊本大学 琉球大学 慶應義塾大学 大阪医科大学 徳島大学 九州大学 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 プログラムの名称 自立した専門医を育むオール北海道プラス1 東北高度医療人キャリアパス支援システム 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク 関東・信州広域循環型専門医養成プログラム 都会と地方の協調連携による高度医療人養成 NAR大学・地域連携「+α専門医」の養成 地域発信・統合型専門医養成プログラム 研修医の多様な要望に応える専門医養成事業 東海若手医師キャリア支援プログラム コア生涯学習型高度専門医養成プログラム マグネット病院連携を基盤とした専門医養成 大阪大学・大学病院連携型専門医養成事業 山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラム 山陽路・高度医療人養成プログラム 出島発、肥前の国専門医養成プログラム 中九州三大学病院合同専門医養成プログラム 多極連携型専門医・臨床研究医育成事業 地域躍動型専門医養成一貫教育プログラム 近畿圏循環型医療人キャリア形成プログラム 四国本州メディカルブリッジ高度医療人養成 北部九州における循環型高度医療人養成事業 総合評価 B B A A A B B B B C C C B C A C B B C B A 「大学病院間の相互連携による優れた専門医等の養成」の取組概要及び中間評価結果 整理番号 3 主 担 当 大 学 筑波大学 ( 連 携 大 学 ) 東京大学、千葉大学、東京女子医科大学、自治医科大学(計5大学) 取 組 名 事業推進責任者 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク 総合臨床教育センター部長/副病院長 松村 明 取組概要 平成20年度「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」で選定された、 「東関東・東京高度医療人ネ ットワーク」では、東関東・東京に位置する5つの大学病院が緊密に連携・協力し、それぞれの得意分野 による相互補完を図ることでより完成度の高い魅力ある研修プログラムを提供する取組である。 この 事業では、それぞれの大学病院における医師キャリア形成システムを充実させるとともに指導体制の強 化をはかり、お互いの人事交流を活発化させることで、若手医師が将来に希望を持ちながら安心して研修 に専念できる体制を構築するものである。 そして、本事業の特徴は、複数大学で支える地域医療連携拠点病院を置いて、各大学が緊密な連携を 取りながら戦略的に人事配置を行うなど、若手医師の効果的なキャリアアップと地域医療の充実を両立 させることを目的としたコーディネートを行うことで、国民の要請に応えられる質の高い専門医や臨床研 究者を数多く養成するとともに、地域医療に貢献することである。 中間評価結果 (総合評価) A 順調に進捗しており、現行の努力を継続することによって当初目的を達成することが可能と判断され る。 (コメント) ○「人事権における医局間・大学間の壁」を課題として認識し、それを乗り越えようと努力してい るので、成果を期待したい。 ○連携大学の組み合わせとしては、人の移動がしやすく、実績を上げつつある。 ○大学病院のセミナーに関連病院の研修医が参加できるように配慮している。 ○シミュレーターを利用した効果的な連携教育が頻繁に行われている。 ○5大学の連携により、希有な症例について、他大学での調査及び共同臨床研究が開始されてい る。 ○地域医療での「大学病院を基幹とした医師プール」の考え方は理解できるので、今後、集めた医師 を実際に地域に派遣して医師不足解消に貢献することを期待する。 一方で、 ●大学間循環型コースに実際に参画した研修医は多いとは言えず、長期・短期の大学間交流者が増 加しつつあるが、更なる増加が望まれる。 ●都会にある東京大学と連携するメリットを活かして、筑波大学のカリキュラムでは、積極的に東 京大学に行くということを明示してはどうか。 ●臨床研究者養成では、大学間連携が症例検討にとどまっているので、真の研究交流が望まれる。 Advanced Clinical Training-network Report 131 ■ その他の評価 筑波大学 学長表彰 筑波大学の教育の質の向上に貢献したとして、平成 22 年 3 月 15 日に「東関東・東京高度医療人養成 ネットワーク」が学長表彰を受けました。 筑波大学清水副学長より賞状を授与される事業推進責任者の松村 明 筑波大学 副病院長 132 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 7 シンポジウムの記録 Advanced Clinical Training-network Report 135 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク 第 1 回シンポジウム 話をするわけではないのですが。 これは次に話す村岡先生から頂いた教育課程のスライ ドです。 日時 2009 年 2 月 11 日(水)13:00 ∼ 17:00 高校 3 年が終わってから大学に入学して、6 年間教育し 場所 AKIBA HALL 富士ソフト秋葉原ビル 5F ます。主に最初は教養、あるいは基礎医学があり、4 年生 開会の挨拶 松村 明(推進代表者 筑波大学附属病院 副病院長) 始めさせていただきます。私は筑波大学の総合臨床教育 センターの部長をしている松村と申します。最初にこの事 業の代表者として、簡単にご挨拶をさせていただきます。 この事業は文科省で選定したもので、これまでそれぞれ の医局や教室で人材養成をしていたところを、もう少し広 く大きな枠でというものです。昨今、医療人養成が非常に 問題になっており、後で北村先生からも卒前と卒後の教育 についての特別講演、あるいは村岡先生から卒後臨床教育 研修についてもお話しいただきますが、そういう中で一つ の大きなグループとして、一つの小さな医局を抜け出した で共用試験(CBT、OSCE)があります。卒業後 2 年間研 ような形の、皆さんがそれぞれ Win-Win の関係になるよ 修があり、その後、今日の話題になる後期研修というよう うなことが構築できればと思いますので、ぜひ活用いただ に続いていきます。 ければと思います。 ここにいらっしゃる先生方はお感じだと思いますが、先 具体的なお話は第 2 部で私からお話しさせていただきま 生方が受けた教育とは随分変わりました。その変わったの すが、第 1 部はもう少し広い意味で、北村先生や村岡先生 をほとんどの先生はご存じだとは思いますが、その心を少 にお話しいただきたいと思います。第 3 部では分科会にて しフォロー、トレースしたいと思います。 皆さんに協議していただきます。今日はどこまでまとまる 最初にいつも出すのですが、東大は 150 年になり、ベル か分かりませんが、少なくとも 5 年のプロジェクトですの ツという人がドイツから来て医学教育を植え付けました。 で、その辺をじっくりと練り上げていただけるようなこと そのベルツの日記に「もともとドイツの教師は科学の樹を を推進者側、コーディネーターでもぜひやっていきたいと 育てる人になりたいと思っていたけれども、日本人は、そ 思いますので、本日はよろしくお願いいたします。 のときの果実を切り売りする人となってしまった。むしろ それでは早速、第 1 部の基調講演から始めたいと思いま 樹をしっかり育てる、あるいは科学の成果をもたらした精 す。初めは、皆さんもよくご存じかと思いますが、東京大 神を学ぼうとする、そのような教育をしたい」と彼は言っ 学医学部附属病院の北村総合研修センター長にお話しい て、そして去っていったのですが、今日のキーワードは ただきます。北村先生のお話は「大学病院に求められるも 「大学では何を教えるか」、それは高度医療人です。高度医 の―学部教育から生涯教育まで―」と、まさにこのプロ 療人とは何か。私は考える力を付けることだと思っていま ジェクトのフレームをお話しいただけるのではないかと す。言いたいことは最初に全部言おうと思っていますが、 思いますので、北村先生、よろしくお願いします。 第 1 部 基調講演 「大学病院に求められるもの―学部教育から生涯教育 まで―」 北村 聖(東京大学医学部附属病院総合研修センター長 /東京大学医学教育国際研究センター長) 松村先生、ありがとうございます。時間もないので早速 始めさせていただきます。 先生方、今日は全員が大学の人であるということで、非 常に話しやすいと思っています。大学の立場を強く主張し てみたいと思います。別に研修病院の人がいるときに違う 136 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 面接をやめた代わりに、自分などは高校へ行って、「医 者になりましょう。いろいろな仕事がありますよ。やりた いことがありますか。ぜひ優秀な人は東大の医学部を目指 して頑張ってください」というような出張講演をするよう にしています。 東大では人間性を豊かにするということで、 「医の原点」 という講義シリーズを 2 年生の後期を対象に行っていま す。これは 2003 年とちょっと古くて、亡くなった方もい ますが、安藤忠雄さんや小柴さんなど、有名人に来ていた だいています。 その次はコアカリキュラムです。100 年前のベルツも、 既に授業で負担過重に陥っている学生には「主要なこと、 有益なことのみを教えるべきであり、しかもこれを、自主 考える力を付ける。覚える、記憶力でやる医療・医学では 的な考察と研究を促すような形で教えるべきであります」 なく、自ら問題を解決する、考える力を付ける教育を卒前、 と述べています。100 年前の医学でそんなに教えることは 研修、卒後にしていくものだと思っています。 何があったのだろうと不安になりますが、100 年前からそ 医学教育の改革は、最初は 1996 年に文科省で懇談会が んなことを言っているのです。 開かれて、そのときに医学教育の改革が必要であると。な やはり医学というのは、例えば 100 年前に教えていたこと ぜ必要か。患者中心の医療にシフトしないといけない。先 が、この 100 年間で内科の領域でも 10 倍、100 倍になり、 端医療と生命の尊厳との調和が必要である。あるいは具体 外科の領域でも 10 倍、100 倍になり、その他の領域でも 的になるのですが、受験学力の高い者が医学部に進学する 10 倍、100 倍になっています。そうすると知識量というの ことが疑問である。知識の伝授のみが大学で行われ、 態度・ は、最初はピンポン玉のボールだったものが、バスケット 技能の習得が十分に行われていない。人間性豊かな、人間 ボールの大きさになり、大玉ころがしのボールの大きさに 性のある医療人を育てる必要がある。そのようなことが言 なってきています。それを決められた 6 年間で全部教える われました。 ことは無理だと言っていいと思います。やはりコアのこと そして 3 年後の 1999 年に改善の方向として、入学選抜 と今後につながるような新しいことを、考え方という形で 方法、入試を変える。あるいは人間性の教育、 コミュニケー 教えるべきだろうと思っています。 ションの教育をしなさい。少人数教育をしなさい。参加型 そこに出てきたのが、どこの大学でもされていると思い 実習にシフトすること。教えすぎることをやめてコアを教 ますが、チュートリアル教育、あるいは PBL(問題基盤 える。あるいは進級システムを充実するようにという改革 型学習)だろうと思います。グループの中でケースを見せ 案が出されました。今から約 10 年前です。その改革案に て、それを材料に自主的に勉強するというスタイルです。 従って、いろいろされています。 獲物を持たせるのではなく、獲物を取る網とその使い方を 言葉では言いませんが、スライドに星印があるのは、 教えて旅立たせるというような教育です。これは良い意味 言ってみれば臨床の先生方の教育負担が増えた項目です。 で、今後ますます発展させる必要があると思います。 「幾つ星が付くでしょう」というような感じです。 これも星が付いていますが、少人数ですので、教員の負 入学に面接を導入しました。東大の場合は前期には構造 担はかなり大きいものです。 化面接、後期には自由面接で 100 人の 3 倍、300 人くらい 東大の場合は普通の知識を PBL で教えるのではなく、 に面接をします。しかし去年から面接を廃止しました。有 用性が明らかでない、人的コストがあまりにも大きすぎ る、客観性が担保できない。 ストラクチャード面接というのは、聞く質問が決められ ていて、やっていても楽しくないのです。同じことをテー プレコーダーのように聞くと。それで、答えで 3 点、2 点、 1 点などと点数を付けているのだったら、ペーパー試験で やればいいではないかという感じになりました。 東京大学は 80 医科大学で面接をしていない唯一の学校 になりました。面接だと落ちるなという人が去年から東大 に集まっている様に聞いているので、どういう人が集まっ ているのか、不安に思っています。 Advanced Clinical Training-network Report 137 (Computer Based Test)と OSCE が毎年、ちょうど今ご ろ行われて、進級に使われています。コア・カリは六つの 分野に分かれていますが、それに臨床実習が入っていま す。チャンスがあれば、コア・カリの新しい本ができてい るので、ぜひ見ていただきたいと思います。 文科省から借りてきたスライドです。コア・カリを導入し ているのが九十数パーセントで、入っていないのは東大 1 校になりました。 それから共用試験(CBT 試験)を半数以上が進級の要 件としています。まだ要件でなかったのは、「利用せず」 の東大だったのですが、今年から「参考利用」するという ように 1 ランク上がったので、赤色はなくなりました。 OSCE に関しては先生方にかなり協力していただいて、 全大学で 6 ステーション以上が始まって、態度の教育がさ れています。実習に出てくる人たちの態度もかなり良く なったと思います。 ただ、試験をすれば技能が良くなるというものではな く、本来、日本人は手を取って教えていました。『菊と刀』 に書いてあるのですが、教師は学生の後ろに回って教えて いたのが、学生の前に回って試験をするようになってしま いました。本当の技能教育と違うのではないかと個人的に 思っています。 実はインドネシアへ行ったら、昔ながらの技能教育をし ていました。リンパ節の触り方を実習している学生の後 人間性を豊かにするような、解答のない課題、あるいは社 会が求めるような社会性のある問題等を課題にしていま す。 例えば「黄色いカード」という課題では脳死を扱ってい ます あるいは「顎下腫瘤」という課題では、抗がん剤の 量を間違えたという医療事故を扱って、事故をなくすには どうするのかということを話し合っています。 今年は、論文の捏造がばれてしまった、さあどうしよう と。ある大学のケースをフォローしていっているのです が、実際、その人は自殺しています。そのような話をして 学生に刺激を与え、その間に研究者倫理や出版倫理、その 他生命倫理なども考えてもらうということをしています。 ただ、こういう手間がかかることをすると、生きる力、 考える力というのは共感を呼ぶのですが、覚えることがい かにも悪いことのように映ってしまい、小学校の教育が ころっと変わってしまったように、やはり考えるだけでな く、覚えたりすること、つらい学習も必要だろうと思いま す。特に学ぶ側の主体性が強調されていても、学ぼうとし ない学生というのは必ずいるもので、こういう人たちに対 しても何らかの対応が必要だろうと思います。何が何でも PBL が一番いいとは決して思っていません。 それから、先生方はご存じだと思いますが、モデル・ コア・カリキュラムが 2001 年に出されて、全国の大学 に広まりました。その教育に対応して教養試験で CBT 138 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 なるのだ。臨床推論をするのだと。大学ではほとんど病名 が付いてきて、治療報酬も決まっていて、それで臨床推論 をどこでやるのかという話もあります。そういうことで、 参加型実習はなかなか浸透していません。 実習の改革は今叫ばれていますが、なかなか難しい面があ ります。 それから見学型は要らないのかという疑問です。最初に 見学がなければ参加もできないと思います。あるいは学生 の実習が全部シミュレーターで終わっています。今、女性 の内診はシミュレーターしかしたことがないという医者 がほとんどです。学生の間は全部シミュレーターでいい のかということもあります。それから、実習終了時にも OSCE をやりましょうという意見もありますが、教育がな ければ OSCE だけやってもいけないわけで、このような 問題を片づけた上で実習の改革が進むと思います。 ところが、参加型実習の実施状況を見ると、9 割くらいが 取り入れています。大学によっては 51 週以上参加型実習 でやっていて、半分でも 30 週以上が参加型でやっていま す。本当かと思いますが、そういう集計ができています。 ただ、やはり診療参加型臨床実習の充実が、研修につなが る上でも大事だろうと思います。 今週末に国家試験がありますが、何日間で何問かご存じで しょうか。3 日間というのはご存じでしょうが、何問だと 思いますか。国家試験の批判は多いのですが、何問やって いるか、知らない人の方が多いのではないかと思います。 必修、8 割取らなければいない問題が 100 問です。総論が 200 問、各論が 200 問です。このうち、すべての半数が臨 床問題です。病歴がずっと書いてあって、この病歴でこの 患者さんにどうしたらいいか、どういう診断をするか、ど ういう治療をするかという、結構臨床的な臨床推論の問題 で、決して重箱の隅をつつく問題ばかりではありません。 もちろん各論の中には聞いたこともないような病名も出 てきますが、かなり基本的な問題です。 例えば「面接者の態度として正しいのはどれか」。「『く よくよするな』と一方的な励ます」というのは良くないく ろで、「こうやって触る」と少し陰になっているのが先生 です。先生に触られたとおり、彼女はこの学生にしてい ます。残り 3 人くらいはそれを後ろで見て、 「こうやるん だ」ということをしています。本来、技能教育というのは 1 対 1 というか、手に手を取ってやるものだと思いますが、 OSCE をビデオで見て、試験だけして、それで技能を覚え たという風潮に行くのは、ちょっと悲しいところがあると 思います。 臨床実習は参加型に変えなさいと言われています。参加 型とは何なのでしょう。診療チームの一員として、学生が 働き学ぶ。学生が書くカルテは本物のカルテである。採血 など侵襲的な医行為もするのだと。でも患者の同意はどう Advanced Clinical Training-network Report 139 「森鴎外の作品で『高瀬舟』を知らないと医者になって はいけないのですか」と学生に聞かれたことがあって、 「や はり教養がないのではないですか」と答えたのですが、医 者になってもいいかもしれません。 国家試験の改革は、ぜひ国家試験を細かく見た上で、ど らい分かりますし、 「患者の訴えに慎重に耳を傾ける」。こ んな易しい問題が出ているわけです。 こをどう改革するのかというのを議論したらいいと思い ます。 今度は研修の問題ですが、これはこの後、村岡先生に細か く話していただけるので、私としては大学の立場から、大 学の研修はどう悪かったか、どう良かったかを考えてみた いと思います。 問題は、新研修制度になる前はほとんどストレート研修 でした。プログラムなどあってなきがごとしですし、アル バイトは当然行っていて、実際は都市部に集中していたと いえます。 「癌の治療方針にとって大事なのは何ですか」。「ADL」、 こんな易しい問題です。それでも落ちる人がいるのです。 これは地雷問題です。 平成 12 年に医師法が改正され、平成 16 年に施行です。必 修で、診療に従事する人は 2 年間の研修が必要ということ です。 その概念として、プライマリ・ケアをし、全人的に患者を 診ると。アルバイトをしない。彼らの給料は大学だと月給 で平均 25 万円ぐらいでしょうか。こういう給料をもらえ るという、いい点は今は無視されて、わいわい騒がれてい るように思います。アルバイトをしないで研修できるとい 倫理的に間違った問題、これを選んだ人は落としていい のではないかということで、実際に選ぶ人がいるのです。 ただ、こういう問題はどうか。 140 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 うのは、われわれとしては非常にうらやましい状況だと思 が大学病院ですが、ほとんど重なっています。多少重なっ います。 ていない面もあるのですが、骨折のような患者があまり 厚生労働省は経験目標、行動目標を決め、それを 2 年間 来ないところは少し差がありますが、概して差はなくなっ で達せるようにすると。 そして医療の現場の経験という て、どちらで研修しても実力はほとんど変わらないという ことで、救急の現場、保健所などで予防の現場、地域医療 調査結果が出ています。 の現場等を経験することを求めています。 大学の側からすると研修の教育にすごく頑張ったとい マッチングは病院の希望と学生の希望をコンピュー うことです。市中病院も、もちろん頑張って上がってはい ター上でマッチさせて決める制度です。 るのですが、大学の頑張りは素晴らしいものがあったと評 これにより、大学に 70%以上いた研修医が、制度が進む 価できると思います。 につれて約 50%になってしまいました。18 年度で底は打っ 今、医師不足が言われています。地域によって医者が不 た感じで、ここのところは少しいいのですが、大体 50% 足している、診療科によって医者が不足している、小児科 になってしまいました。地方大学の医局の崩壊が起きてお は特に夜間が不足していると言われています。 り、社会問題になっています。 どのようにしたら解決できるのか、答えはないのです ただ、大学の研修はすごく良くなっているというのを聖 が、今日の 5 大学のうち、人口当たりで一番少ないのは千 葉大学です。茨城と栃木も平均よりは多少少ない数字に なっています。 ということで、この 5 大学の連携で後期研修医が動くの が大変いいことだろうと評価されたのだろうと思います。 今年 3 月の入試から約 700 人の定員が増加して、過去最 高に比べてもまだ多いくらいの定員数になりました。た だ、教員数がどれだけ増えるのか、はっきりしていません。 予算もはっきりしていないので何とも言えないのですが、 ほとんど増えないと思います。 ここには星をたくさん付けたいくらいなのですが、ただ 人さえ増やせばいいというものではないので、粗製乱造に ならないようにぜひ要求していきたいと思います。 これも文科省から頂いたスライドですが、各県の高校 出身の入学者の割合は、全国平均で 30%であったものが、 昨年であれば 35%に増えていたということです。赤い系 統はどちらかというと各県の出身者が多い県で、例えば青 森県あたりも県内出身が増えてきて、福島県も増えてきま した。どういうわけか茨城県は真っ青ですが、そういう動 きがあります。 あるいは卒業者で県内に定着する人の割合です。従来は 57%ですが、研修の必修化が起きてから 50%ぐらいで、7 ∼ 8 ポイント減っています。これが流動化による動きだと 路加の福井院長が調査しました。ある手技ができる割合 を、CT が読めるか、MRI を読めるか、骨折に対応できるか、 妊娠の診断ができるか、眼底が分かるか、鼓膜が見られる かということを調査しました。新しい制度が入る前、市中 病院は赤色で、結構できます。緑色が大学病院です。この 差は歴然としていたわけです。例えば CT が読めるかとい うと、病院の人は 70%まで読める、大学の人は 55%しか 読めない。この差が学生をして市中病院の研修に走らせた のですが、導入後、調べてみると、茶色が市中病院、青色 Advanced Clinical Training-network Report 141 こそ人間性にあふれて、患者のことを思ってくれる医者 だ」と別の意味の質を求めており、大きな誤解があります。 専門医の試験は経験と技能であり、人間性まで試験してい るところはあまりなく、先端医療の試験をしているよう なところで、そこに社会とのギャップがあるかもしれませ ん。 今後、医師の層別化がされるのではないかと、みんな不 安に思っています。 大学の後期研修は、今までは「入局」という名の下で行 われていました。そうすると、医局人事の対象になる。プ ログラムが明らかでない。症例が十分でないことが多い。 バイトで生活するということで、人気のある場所ではな く、後期研修も市中病院でという人が多いようです。 大学の強みの一つは、博士号を出せる。研究ができる。 いうことなのですが、どう評価するかはまた別です。ただ、 高度医療ができる。時間に余裕がある。留学ができる。留 これも文科省のデータにありました。 学は、最近の学生は希望しない人が多いのですが。 こういうことで医者の数は足りないのですが、これは長 弱みとしては、入局、医局人事に入ってしまう、あるい 崎大学にいたポンペの言葉で、 「ひとたびこの職務(医師) は処遇が不適切、アルバイトをしないといけない、安い労 を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病 働力として扱われる、カリキュラムが不明確などの違いが める人のものである」。精神は確かにいいのですが、これ あります。 を若い人に言うことは無理だと思います。全員を国家公務 さらに専門医を取るのか博士号を取るのかというと、ほ 員にするしかありませんし、インドネシアもラオスも国家 とんどの人が今は専門医を取りたいと。昔からもそう言っ 公務員ですが、若い人たちのやる気がそれほど高いとは思 ていましたが、博士号を取って何の役に立つのかと言われ えません。やはり日本の社会の中で医師を適正に配置する ると答えに窮します。 にはどうするか、みんなで今から知恵を絞り合わないとい トップ 10 の論文だと、日本は 8 ∼ 9%で、国力に応じた けないので、 「もしそれを好まぬなら、他の職業を選ぶが 数の論文が出ています。 よい」というのは、今では暴論だろうと思います。 “Nature”に占める日本人の割合は 8%近くまでいっ 今からやる専門研修ですが、専門医は学会が決めている ています。 “Cell”“Science”もそうです。ところが青色 というのが日本の特徴です。ただ、専門医機構が一応 5 ∼ が“LANCET” 、 紫 色 が“NEW ENGLAND JOURNAL 8 年くらいで取れるようにしましょうと。厚労省は専門医 of MEDICINE”です。臨床系の論文では日本は国力に の広告をしていい、新聞にも載せていい、看板に書いても 合った分、出ていません。 “NEW ENGLAND”で 1.5%、 いいと言っています。 142 “LANCET”で 3%です。そういう意味で、臨床研究が弱 もう一つ大事なことなのですが、アメリカで専門医に求 いのではないかと言われています。 めるのは技術・技能です。人間性を求めていません。患者 文科省の一つの委員会で、大学院教育のあり方を考えよ さんが言うには、かかるなら一般医(ジェネラルフィジ うということで、井村先生を座長に医療系大学院のあり方 シャン)がいい、専門医は手術してもらうのがいい、会話 を考えました。批判としては、教育がちゃんとしていない。 しない方がいいというくらいなのです。日本では「専門医 教育目標が不明確。ただ論文を書けばいいのだと。それか 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ら知識、関心、能力の幅が非常に狭い。外国に比べても本 くのが重要だろうと思います。 当に狭くて、その教室が扱っていることだけをさっとやっ ご清聴ありがとうございました。 たら博士になれると。それ以外、多くの知識を広く取ろう とすると、なかなか博士になれない。それから挑戦をあま (座長)北村先生、どうもありがとうございました。まさ りしない。言われたとおりの大きなプロジェクトの一つの にこのプログラムの哲学というか、コアの部分に触れてい 歯車として働いた方が博士になれる。あるいはお金がない ただいたような気がします。 というような批判があります。 それに対して一応提案をしています。二つのコースを作 ろうということで、従来の研究者養成コースと高度専門 職養成コースです。臨床医で高度医療をやる医者、臨床 医としての活動を評価し、臨床研究に重点を置く。専門 医などの資格も大学院の間に取れる。そして卒業したら、 仮の名前として、単なるスペシャリストではなく Super Specialist とするという提言をしています。それにのっとっ て、各大学で研究科単位に教育者養成と高度臨床医養成を 作ってくださいという提言をし、実際、多くの大学ででき ています。これが今われわれが考えている後期研修とうま く合体することにより、後期研修の間に専門医は取れる し、臨床の博士号ももらえるという仕掛けがいいのではな いかと思っています。 最後ですが、一つの流れとしてとらえる。知識のみなら ず態度・技能を教え、考える力を付けさせます。そして大 学としては、臨床と研究のバランスをしっかり取り、臨床 研究という分野ももっと頑張って、大学の個性を出してい Advanced Clinical Training-network Report 143 (座長)第 2 番目に、今度は医師臨床研修制度ということ 「制度改善に向けての見直し」のお話しをしますが内容は で、昨今、初期臨床研修のことが話題になっており、今週、 まだ完全に固まっていません。来週 18 日に最終の検討会 来週あたりにまた動きがあると思いますが、それはさてお があり、そこでフレームが決まるということで、分かって き、今回は高度医療人養成ということで後期の方に目を向 いる範囲内でお話しします。 けて、将来に向けての展望について、厚生労働省の村岡亮・ まず概要なのですが、北村聖先生がだいぶお話しされま 臨床研修審査専門官の先生にご講演いただきます。村岡先 した。一言で言えば、初期研修についてきちんと法令で決 生、よろしくお願いします。 めたら、それに続く後期研修についても制度上不十分な部 分が目立ってきて、これもきちんと整備しなければいけな 第 1 部 基調講演 くなってしまったということがあると思います。 「医療臨床研修制度―将来に向けての展望―」 このスライドは一般教育から始まって医師の生涯教育 村岡 亮(厚生労働省 臨床研修審査専門官) (CME) まで時系列で示したものです。現在はこのような 図をみんなが共有しながら議論していくという、そのよう な機会も多くなって参りました。 皆さん、こんにちは。村岡でございます。 今日は「医師臨床研修制度―将来に向けての展望―」と いう題でお話しします。 自己紹介をすると、私は 1980 年に筑波大学を卒業して、 消化器内科医を専門にしています。5 年前、思いもかけず 突然医師臨床研修制度の立ち上げにかかわることになり ました。臨床研修審査専門官という肩書きを持つ医師が厚 生労働省の中に 7 人ほどいて、臨床をやりながら臨床研修 関連の行政に携わっています。私は関東信越地区の臨床研 修審査専門官で、かつ本省の医師臨床研修推進室スタッフ を併任しています。 では、最初のスライドですが、全体を3つに分けてお話 ししたいと思います。 最初に臨床研修制度の概要について少し触れて、次に、 144 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 今回、今までわれわれは最先端医療だけを目指してき それから社会の中での医療という位置付けを学んでく た、医療といえば高度先進医療だと。でも、そうではない ださい、またはコモンディジーズの初期対応についてきち だろうということが分かってきたわけです。お年寄りがど んとできるようにしてください、ということが書いてあり んどん増えて、やはり横断的な医療、全人的な医療につい ます。 ても卒後直ぐにトレーニングしなければいけないという 現在、研修病院は全国に 2400 あって、プログラムは ことが分かってきました。医療安全もそうです。それから 1500 ほどあります。その中から 研修医マッチング制度 コミュニケーションもきちんと取るということについて で研修医と研修病院がお互いを選んでいくわけですが、問 もトレーニングが必要です。 題はマッチング定員が約 1 万 1300 人であることです。医 そんなことを考えて、厚生労働省と文部科学省はピラ 学部卒業者数 8000 人との間に 3000 人ぐらいの差があっ ミッド型の、安定した医師の姿を描いたわけです。すなわ て、その分が都市部に集中しているという批判がありま ち、卒業してからすぐに 2 年間、コモンディジーズにきち す。 んと初期対応できるようしなければならない。その土台の 現行のプログラムはこのようになっています。1 年目は 上に立って、今日の会議の目的である専門医の教育をして 内科、外科、救急、2 年目は小児科、産婦人科、精神科、 いく。順序を踏んでほしいという願いも込めて初期臨床研 地域保健・医療が 1 カ月以上のいわゆる「スーパーローテー 修制度ができました。医師法等の一部改正については先ほ ション」で、残りに期間に選択科目をやります。これらが ど北村先生からお話があった通りです。 制度見直しによって大幅に変わります。それは後でお話し 理念それだけでは何も動かないのですが、理念はとても します。 大切です。 マッチングで、自由に自分の行き先を決めるようになり ここには四つのことが書いてあります。一つは、われわ ました。その結果が、このグラフなのですが、大学病院で れの人格に対するチャレンジですが、あながち 100%うそ 研修する人が一旦大幅に減少した後、平成 18 年あたりか でないところがまたとても残念なところです。 ら徐々に増加に転じているこの微妙なカーブにご注目く それから、将来どんな専門へ行くにしても生涯必要な、 ださい。これには二つの理由があると思います。一つは、 コアの部分を初期研修できちんとやりましょうというこ 大学の初期臨床研修は確実に良くなっていることと、それ とが書いてあります。 から二つ目には、今日も皆さまが集まっている理由なので Advanced Clinical Training-network Report 145 すが、大学というのは極めてパワフルな後期臨床研修シス ジョン」に基づいた再々見直しの議論が「臨床研修の在り テムを持っています。研修病院も後期研修のシステムを 方に関する検討会」で行われており、この議論の決着する 持っているのですが、後期のプログラムを立てただけでは のが来週の 18 日になります。 不十分で、その後の人事をきちんと回すためのシステムを もう一度整理すると、これは現行のプログラムですが、 持っていない場合が多いのです。後期研修から後ろの人事 今年 4 月から厚生労働省令の定期的見直し方針に基づく研 システムを持っているの大学の強みであるということが 修が全研修病院、大学病院で行われます。内容ですが、例 かなり認識されてくると、今後、この流れはもう少し加速 えば 2 年目科目を一部 1 年目に行って良いなど、運用に関 されるのではないかと思っています。 する細かいルールの修正にとどまっています。例えばスラ 制度改善に向けての見直しです。見直しの過程は非常に入 イドに示すように、小児科、産婦人科、精神科が 1 年目を り組んでいます。というのは、これは医学教育学的な内容、 入れる事などもできるようになりました。これと同時に、 必然性というよりも、むしろ政治的なマターで動いている 大学病院の本院のみでは「大学病院モデル事業」が始まり からです。すなわち、今回の見直しは予め計画された見直 ます。 しではなく、政治的な緊急見直しという側面を持っていま さらに、平成 22 年 4 月開始の研修医からは、現在検討 す。以下、この辺の事情についてできるだけ簡単に説明し をしている内容に基づいて臨床研修の大幅な見直し(緊急 ます。 見直し)の結果が適用される見込みになっています。緊急 まず、臨床研修省令の中に 5 年ごとに見直しをしなけれ 見直しの 1 つのきっかけは、今年の春ごろから地域医療崩 ばいけないと書いてあります。その見直しがすでに今年の 壊、または救急搬送の途中に患者の亡くなることが続い 初めに行われています。 て、地域医療崩壊の元凶は医師臨床研修制度ではないかと その定期的な見直しと同時に、さらに大学のみに対し いう議論が大きくなってきたことがあります。 て、医師派遣機能強化を見据えたプログラムの見直しが必 岩手医大の小川先生が「全国医学部長病院長会議」でこ 要だろうということで、大学における「プログラム弾力化 ういうことをおっしゃったわけですが、岩手医大は臨床研 モデル事業」が始まりました。見直しはこれだけではとど 修が始まってから研修医の数がかなり減ったのです。岩手 まらず、舛添さんがおっしゃる「安心と希望の医療確保ビ 県全体は増えているのに、ここだけは非常に減ってしまっ たということで、地方大学共通の危機感が制度緊急見直し の大きな原動力になっているわけです。 これは 7 月の読売新聞ですが、このような論調が幾つも 出てきたということから、いろいろなことが動いてきまし た。 要するにロジックとしては、研修医が大都市部に集中し た→主に地方の大学に若手医師がいなくなった→その地 域の関連病院へ派遣できなくなった→地域医療が崩壊し た、と言うことだと思います。確かにこのようなことが起 きている地域はありますし、一方、起きていない地域もあ ります。多くの関連病院の医師のポジションを埋められな いだけという側面も多分にあるのですが、現状はこのよう になっています。 昔からのストレート研修に戻したら医局に人が戻るの ではないかと大学の方々は考えられていることより、スー パー・ローテーションを見直して、研修期間を 1 年にして はどうかという話も出てきました。 ただ、今回の緊急見直しで初期臨床研修期間を 1 年に短 縮する話は恐らくないのではないかと思います。医師法と いう法律に基づいて、毎年 160 億円の予算で 2 年間の研修 が現に行われているので、今すぐに 1 年に短縮すること は、卒前臨床実習の質のバラツキがなくならない限り無理 があると思います。ただ、今回の緊急見直しの検討会では、 どのような医師像を想定して 2 年間研修をするのか、とい う本質的な議論が希薄になってしまっているのがやや残 念なところです。立ち上げまで 10 年間議論してできた今 146 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 回の新医師研修制度ですが、理念や目的についてあまり議 て、それを上回って県立病院群の研修医が大幅に増えてい 論されないまま拙速に見直しの議論を進めているとすれ ます。 ば、必ずしもベストのやり方ではないのではないかと、個 もう一つ、都道府県によって頑張ったところとそうでな 人的にはとても心配をしています。 いところと研修医数の増減に大差がついています。これを もう一つ、私は最下段の部分を強調したいのですが、研 見ると、マッチング制度導入によって研修を行う病院間で 修医が大学に残らないというのはそれなりの理由がある は、フェアな競争原理が働いていると言えると思います。 のはないかと思っています。大学の先生はみんなとても頑 もう一つ、この全国地図に出てこないデータがあるので 張っているのに結果が出ないとすれば、システムに改善す す。確かに初期研修医の偏在は問題かもしれませんが、ま べき点があるのかもしれません。私が内科研修医のとき さに今、このキックオフ・ミーティングでやろうとしてい に、血液内科では北村先生が東大からレジデントでいらっ る後期研修医のことですが、後期研修医の地域偏在という しゃっていていろいろと教わりましたが、今の北村先生の のは初期研修医の偏在よりずっと著しいものがあるので 東大での給料は、安いと言われている厚生労働省の医系技 す。現在、厚生労働省でも実態を把握するように頑張って 官の給料よりまだ安いのではないかと思います。臨床、教 いるのですが、感覚的にも大都市集中は初期研修医以上の 育、研究にと激務でしかも給与が良くない、若手の教育研 ものがあります。 修システムもまだまだ充実していないということがあり、 先ほど北村先生のお話で、医師には患者さんのために尽 若手医師の心が徐々に離れて大学に残る人が減少し、地方 くす公共的な使命があるとおっしゃいましたが、まさにそ 大学が疲弊していったのかもしれません。 のとおりです。今は自由競争原理で動いていますが、今後 ですから、こういう根本のものはあまりいじらず、制度 は、医師の強制配置という言葉は非常に嫌な言葉ですが、 の細部について修正を加えたところでどうなるだろうか 何らかのルールを持った上で、非常に高価な共有の社会的 ということは、もう少し考えた方がいいのかもしれませ 財産である医師を公平に、国民の皆さまが一番幸せになれ ん。 るように配分していくという考え方がどんどん強くなっ もう一つは、新医師臨床研修導入後に研修医の大都市集 てくる、世論もそうなってくるのではないかと思います。 中が起こったと多くの人が考えているようですが、とおっ 今まで行政というのは、医学部の定員については医師の しゃるのですが、大方の感覚的理解とは反対に、新医師臨 需給に関する検討会等で総数のコントロールしてきたの 床研修導入後 4 大都市について研修医集中が緩和されてい です。ところが医師の専門分野別、または地域別分布につ る事実があります。ただし、絶対値としては研修医の都市 いては学会または個人の自由であるということで、行政は 部集中はまだ続いているのですが、新制度が導入されてか 全くタッチしないという”Professional autonomy”尊重 ら大都市集中が始まったというのは正しくないと思いま のスタンスだったのですが、今後はそういうわけにはいか す。 なくて、ある程度流れをつくっていくことに関与せざるを この地図をご覧ください。これは平成 15 ∼ 20 年の間、 得なくなるのではないかと個人的に思います。 どの都道府県で研修医が増えたか減ったかについて色分 今回、東関東・東京高度医療人養成ネットワークについ けして示したものです。50%以上増えたところが赤で、一 て、これは私もいろいろ考えてみました。恐らくキーワー 番減ったところは濃い青で示してあります。 ドとしては、将来の地域医療のビジョンとこれからの人材 実は岩手県のある東北地方では総じて研修医は増えてい 育成をどのようにリンクさせるかということを考えてい るのです。例えば岩手県は赤で示されており、県全体で研 かなければいけないと思います。 修医が大幅に増えていますが、大学の研修医は少なくなっ 要するに医療人材の養成というのは非常に時間がかか ります。しかも、将来の医療のあるべき姿を非常に緻密に 想像し、シミュレーションした上で、今から準備しなけれ ばならないのではないか、と思うわけです。 もう一つ、今、集中化・重点化が言われていますが、患 者数、マンパワーが集中する地方の基幹的・中核的な病院 に人材育成機能をある程度オーバーラップさせてゆく施 策が必要だと思います。症例数があって指導医クラスの中 堅医師がいないところは、指導の配置と一緒に後期研修医 の定員を配置するという「合わせ技」も必要だと思います。 では、どうやって地域の中核的な病院を決めるのか、こ れは非常に難しいのです。今まで選挙の道具に使れたり、 いろいろ恣意的な基準で決まってきたことがあるとは思 いますが、今後何かの客観的な指標を基にして、みんなが Advanced Clinical Training-network Report 147 ディスカッションして決めていくという仕組みが必要か 院から有能な人材流出を食い止めない限り、恐らくいろい もしれません。 ろな手を打っても効果がないのではないかと思います。 どうやったらいいのか、私も答えを持っていませんが、 医師臨床研修必修化については、その導入によって、社 例えばこんな方法もあります。選択肢の1つが地図情報シ 会保障費が逼迫して医療現場がギリギリのところで踏み ス テ ム(GIS: Geographical Information System) で、 地 とどまっていたところに、最後の一撃を加えて背中を押し 図の上にポイント、ポイントでどのような医療資源がある たと言う感覚だと思います。 かということをプロットして情報を可視化した上でいろ 「大学病院モデル事業」についてはご存じだと思います いろなことを考えるたたき台にしようというシステムで が、2 年間の研修期間はそのまま、7 科目は全て履修する す。 ことが必要であるが、各科目の順序と期間については自由 GIS についての総論的なことは国土地理院のホームペー にしていいですよというフレキシブルなシステムです。た ジにいろいろ載っており、医療以外でも随分使われていま だし、2 年間の到達目標を達成することは必須となってい す。例えばコンビニを出店するときに損益分岐点はどの辺 ます。 にあるかということを見極めることにも使われています これは上に述べた「大学病院モデル事業」のルールに が、保健医療分野ではまだまだ活用されていません。 沿って実際に提出されたプログラムです。最初に小児科を これは茨城県の小児医療供給体制に関するもので、試し やり、それから関連科を回って、最後に小児科に帰って終 に個人的に作ってみたものです。小児病院が幾つかありま わるというプログラムです。 すが、そこにどのぐらい小児科医がいるか。それに対して、 こういう工夫もされています。全国で 124 プログラム、 例えば急患が発生した時、車でアクセスするときにどのぐ 40 大学が「大学病院モデル事業」に従ってプログラムを らいの時間がかかるかということをシミュレーションし 提出してきました。大学病院の本院だけで 400 名がプログ たものです。 ラムに参加しています。一番下に「眼科重点プログラム」 こういうものを基に地域医療計画を立て、その上でどう とありますが、これはいろいろな経緯があって申請が上 やったら地域住民の方々の命が助かるのか、どうやったら がってきたものですが、眼科の研修期間が 15 カ月という 外来通院される方が来院しやすいのか、どこが小児医療の ことで、到達目標の達成が可能かどうか、少々微妙なとこ 空白地点なのか、そういうものを見ながら、限られた医療 資源をどのように有効に配置していくのか検討する仕組 みが必要だと思います。かつ、その医療供給体制の上に OJT(On-the ‒job training) としての若手医師の教育研修シ ステムを構築していくことが必要になってくると思いま す。 すなわち、医師はその地域地域で育てていくという大前 提の中で、今まで大学医局単位でやっていたこと、都道府 県単位でやっていたこと、学会単位でやっていたこと、こ ういうものをもう少し機能的に統合することが必要です。 例えば都道府県単位で医療供給体制を構築しても、実際の 患者さんは都道府県の境を超えて受診するわけです。い い病院があれば遠くの病院でも、県外からいろいろいらっ しゃるわけです。そういうものを想定した上で地域のプロ グラムを組み立てていく、それに整合するようにトレーニ ングプログラムを作り上げることが必要だと思います。す なわち、広域地域医療を考えた上できちんと人材育成を考 えていくという長期的な視点が必要になってくると思い ます。だからこそ、今回の大学や行政単位をまたがった研 修の仕組みが必要なのです。 地域医療崩壊にはいろいろな原因があります。ただ、物 事の常として、何でも一番上流に位置するものが全体をコ ントロールするという鉄則があって、地域医療崩壊につい ても上流すなわち一番根底ににあるのは社会保障費の抑 制、すなわち医療費の抑制、特に病院に対して非常に薄い 予算配分というものがあって、そのために起こっている病 148 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ろがあります。 将来専門とする診療科についても、1 年で最初からやっ 「医師臨床研修制度のあり方に関する検討会」検討会で てはいけないという話があったのですが、今後はやってい すが、文科、厚労が合同でやっており、去年の 9 月 8 日が いようになると思います。ただ、これについては期間の上 第 1 回目で、第 6 回目、来週の 18 日をもって一応取りま 限は設定される可能性があります。 とめになります。その後は医道審議会という審議会があり 地域医療の研修は、恐らく 2 年目に 1 カ月以上というこ ます。法律を作るためには審議会の審議を経なければいけ とになると思います。 ないので、そちらに委ねられて、多分 1 ∼ 2 カ月で最終的 従来型スーパー・ローテーション研修、すなわち 7 科全 な形ができると思います。 科を回る研修ももちろん可能です。いろいろな人の話を聞 本検討会のメンバーは以下の通りで、高久先生がチーフ くと、臨床研修病院については、今までのスーパー・ロー を務めています。 テーションを続けるという意見がほとんどですが、大学病 2 月 2 日に最終まとめのたたき台が出ましたが、また 18 院については、大学によって随分違って、ストレートに近 日に変わると思います。私も毎週スライドを作り直してい い形に戻るところと、スーパー・ローテーションをやると る状況です。 ころと、両者を混在して行うというところと、三つぐらい 今日は「3. 見直しの方向」のところだけにスポットを当て に分かれています。 てお話ししたいと思います。 医師不足が顕著な診療科プログラムへの重点的対応は プログラムの弾力化について。必ず研修を行うべき診療 医師の診療科偏在対策ですが、これは恐らく後期研修で対 科については、前半に内科 6 カ月、救急 3 カ月というのは 応すべきことかもしれませんが、小児科や産婦人科につい 固いところだと思います。これに外科を入れるかどうか、 ては初期研修レベルで何らかの手当てを行う事になると 期間を設けるかどうかについては、現在検討をしている状 思います。 況です。 一番大切なのは到達目標をどうするかということなの 上記以外の診療科については選択必修ということで、例 ですが、これについては、当分は期間をフレキシブルにし えば 3 カ月ぐらいを想定して、小児科、産婦人科、精神科 た上で、到達目標を少し緩和した形で運用することになり あたりから少しやるということを義務づけるのか、または そうです。「臨床研修の到達目標」については、少し時間 全くフリーにするのか、その辺も未定です。 をかけて新しいものを作り直すということになると思い ます。 見直し前後の比較をイメージで示したものですが、左側 が今のシステムです。内科や救急は 1 年目、小児科、産婦 人科、精神科、地域保健・医療が 2 年目と。見直し後につ いては、1 年目と 2 年目のグラデーションは私の希望的観 測もあるのです。あまり期間を設けてしまうと、何のため の弾力化か分からなくなってしまうということから、今は 1 年目に内科、救急、6 カ月、3 カ月と言っているのですが、 「できれば前半に」ぐらいの柔らかい書き方をしていただ くと、現場はもっと助かるなと思っています。2 年目、後 半については、後期研修にスムーズにつながるように入れ ていくと良いと思います。ただ、これも内科と外科では違 Advanced Clinical Training-network Report 149 いますし、いわゆるマイナー科についてはステップワイズ この中でこのキックオフ・ミーティングに関して関連が にやっていくやり方と違うと思います。そこのところは科 あり大切なのは、地域社会に開かれた大学病院の医師派遣 の特性も合わせて組んでいく、できればストレートではな 機能です。これについても在り方委員会の報告書案で触れ く、将来の専門周辺領域の科目も想定したローテーション られています。 を組んでいただければと思っています。それに加えて、地 では今後、到達目標をどうするのかということですが、 域医療として医師の少ない地域に一定期間行っていただ 今の臨床研修制度は非常に制限、縛りが多いのです。期間 くという条件が入ってくることも考えられます。 の縛りも多いし、いろいろな規制がかかっています。でも、 いずれにしましても 18 日にどうなるか、全く予想がつ 全体の流れとしては、今後はなるべくそういうことではな きません。18 日の検討会は傍聴可能です。厚生労働省の く、カリキュラムの柔軟性を確保する方向で検討すべきで ホームページからアクセスして申し込みをしていただけ はないかと思っています。その代わり 2 年間、修了につい れば、実際に議論を聞くことができます。 てはきちんと公正な評価をしていきましょう、研修アウト あと、都道府県別の募集定員の上限を設定し、これに基 カムベースのシステムにしていきましょう、と言う方向で づいて全国マッチングをするという形になると思います。 変わっていくのではないかと思っています。すなわち、臨 それから病院ごとの定員についても上限を設けること 床研修制度によって良医が養成され、医療が良くなる、と も考えられます。では、都道府県内でどのように調整する いうような仮説に基づいてアウトカムを設け、それができ のかということについては、まだ具体的な法案は決まって ているかどうか評価し、絶えずチェックをしていくという いません。すぐにはできないので、恐らく現場が混乱しな 方向に変わってゆくのではないかと思います。 いように数年かけてやっていくようになると思います。 短期的な評価もありますし、中・長期的な評価も必要に もう一つ、管理型病院というのは、ある程度のインフラ なってくると思います。取りあえず今年 4 月から、臨床研 がなければいけないだろう、規模もなければいけないだろ 修のこれまでの評価と、将来大切になってくるアウトカム うということから、当初は大学側から大学病院の最小病床 評価をどうしたらいいかということについての方針を決 数である 550 床以上の病院に限って管理型病院にしてほし めるための研究班を立ち上げることになっています。 いという要望があったのです。これについては 550 床を切 これは医道審議会が一昨年に出した報告書で、常設の組 るといろいろな混乱があることから、もう少し緩くなって 織を設置し、到達目標を持続的に検討していく仕組みを構 いきそうですが、どのくらいのところに落ち着くか、まだ 築すべきだという内容を受けたものです。 分かっていません。しかし何らかの基準を設けて、これを もう少し突っ込んで解釈すると、意図はこういうことで 満たさないところについては、管理型病院から協力型病院 す。医学教育に関してよく知っている方、臨床のできる になっていただくということが、ここ数年のスパンで起き 方、臨床の視点から臨床研修をどうしたらいいかがよく分 てくるのではないかと思います。 かっている方に、継続的にこういうところに入っていただ 見直しには、今までやってきたことと随分違うので、一 いて検討していただく。考え方を共有し、自分たちで到達 定の期間を設けて混乱のないようにしていくということ 目標を作っていくと。トップダウンで決めるのではなく、 が書かれています。 現場から発想して到達目標を作っていく。みんなで作った それから、研修医の給与は高すぎると。1000 万円近く 到達目標ですから、これを絶対守ろうではないかというス の給与をもらっている人がいます。こういうことから、あ タンスでやっていくのが、これからのあるべき姿かと思い まり過度の場合には抑制していくことも考えられます。 ます。 共用試験の合格基準標準化は、臨床能力ということでい これは指導医講習会のカリキュラムプランニングで えば、M4 と M5 での共用試験、それから医学部卒業時、 行っている考え方のプロセスがかなり似ています。ニーズ 臨床研修の修了時、後期研修、ステップワイズに臨床能力 が上がっていくことを考慮してやってくださいというこ との一部です。 卒前のカリキュラムを充実し、特に診療参加型臨床実習 の内容が充実して卒前でかなりの基本的診療能力が担保 された場合、将来、初期臨床研修の 2 年間が 1 年間になっ て、一部の内容がカリキュラム上卒前の方に入っていくこ とがあるかもしれません。 後期研修のあり方については、診療科偏在について後期 研修医のレベルで是正していくことになると思いますが、 これは初期研修レベルで同じことをやろうとしてもやは り限界があるからです。 150 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 評価から始まり、目標設定、方略、評価ということで、こ れも同じような仕組みで動いています。ニーズについて は、やはり国民がどんな医療を求めているか、どんな医師 像を想定しているか。先ほど言ったような国全体、また地 域の医療計画・ビジョンが入ってきて、それに基づいて今、 大枠を検討しているわけです。従って、今後は目標を作っ ていけるし、ガイドライン等で方略を示しています。学会 等の作っている診療ガイドラインをどんどん取り入れて いくこともあっていいと思います。それをきちんと評価し た上で、また改善するというサイクルを回していくことに なります。 もう一つ、今の文脈と直接関係ない話題提供ですが、こ れは日本の臨床研修制度で行っている「指導医養成ワーク ショップ」を日本医学教育学会の協力を得てベトナムで現 地化して行っているものです。 このキックオフ・ミーティングは東関東・東京地区の後 期研修プログラムが中心ですが、そうであってもやはり国 際的な視野を持った上で、世界でも通用する医学教育・臨 床研修を行って欲しいと思います。具体的に言えば、この プログラムで履修したというクレジットが世界中に、途上 国・先進国を問わず通用するようになってほしいと思って います。 ご清聴どうもありがとうございました。 (座長) 村岡先生、どうもありがとうございました。初期 研修が変わるということで、専門研修(後期研修)のキャ リアデザインもいろいろ変わってくるかと思いますが、18 日以降に出てきた場合、専門研修をどうしていくか、われ われのプログラムの方も影響を受けるのではないかとい うことで、非常に内容に富んだご講演をいただき、どうも ありがとうございました。 この後、村岡先生にはパネルディスカッションにも入っ ていただきます。休憩後、第 2 部を始めたいと思います。 Advanced Clinical Training-network Report 151 第 2 部 パネルディスカッション 「5 大学連携専門研修医プログラム」人事交流、医師 のキャリア形成、地域医療への貢献 りしていると思いますので、少し端折らせていただきま す。 先ほどから出ているような医師の偏在、医療費の抑制と いう中で、われわれ大学病院は、どうしても高度医療、あ るいは最先端医療を担っていかなければいけません。そう 司会: 前野 哲博(筑波大学附属病院 総合臨床教育センター 副部長) いう中で、先ほど来出た臨床系大学院の研究者不足につい ても、医師の半分は臨床研修病院でそのまま育っていった パネリスト: 場合、どうしても臨床研究員が不足するということは目に 村岡 亮 (厚生労働省 臨床研修審査専門官・医療 見えてくるかと思います。 監視員) 北村 聖 (東京大学医学部附属病院 総合研修セン ター長) 田邊 政裕(千葉大学医学部附属病院 総合医療教育 研修センター長) 野村 馨 (東京女子医科大学病院 総合診療科 教 授) 三瀬 順一(自治医科大学附属病院 卒後臨床研修セ ンター 准教授) 松村 明 (筑波大学附属病院 副病院長) 従来は大学病院で卒前、初期、専門医をやりながら研究 もして、関連病院に人を出していました。そういう中には 当然、医師不足地域もあって、こういうところへ 1 年か 2 年行って、その後は研究に戻るというサイクルがある程 度、各医局単位ではできていたという事実があります。 そこが切れて、人が減って、卒業研修の必修化がきっかけ になったわけですが、自由に彼らが選べるようになって、 大都会や、努力している人気研修病院の集中化が起きてい るということで、相対的に大学病院の機能低下、あるいは 地域医療の崩壊、研究者の減少ということが起きてきたわ けです。そういう中で、大学病院の機能低下をいかにまた (司会) よろしくお願いいたします。まず、このパネル ディスカッションの進行ですが、最初に事業の内容につい です。 て筑波大学の松村先生に紹介していただいて、それから参 そういう中で何を行うべきかということで、北村先生も 加 5 大学の現時点での取り組み等について 5 分前後でプレ おっしゃったように、卒前・卒後のシームレスな教育・研 ゼンテーションをしていただき、残りの時間を質疑応答に 充てたいと思います。 では松村先生、よろしくお願いいたします。 「大学病院連携型高度医療人養成推進事業 東関東・ 東京高度医療人養成ネットワーク」 松村 明(筑波大学附属病院 副病院長) それでは早速、5 大学連携事業の概略についてお話しさ せていただきます。 ACT-network というように、東関東・東京の Advanced Clinical Training-network です。隣接する大学でやろうと いうのがきっかけです。今回のハンドアウトで資料をお配 152 持ち上げるかというのが今回の一つの大きなチャレンジ 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 マティックな構築をしていただきたいと思います。 まずは研修プログラムの共通化、あるいは見直しというこ とですが、これは皆さまに既にお願いしており、各診療科 で専門研修のプログラムを作っていただいています。 その下にもいろいろなサブ・スペシャリティ・プログラ ムがありますが、そういうのをまず、これからホームペー ジにアップしていこうということです。 5 大学が連携したプログラムの作成については、これま で推進者会議を毎月開いてきました。本日のキック・オ フ・ミーティングをきっかけに、本日は顔合わせになりま すが、今後は皆さま各診療科の担当の先生方が中心になっ て打ち合わせをしていただいて、平成 21 年度以降の研修 修、大学病院ならではの高度医療の提供。さらに将来、もっ と先に循環型の生涯キャリアデザインを提供できる機能 を有した方がいいのではないか。それから次世代の研究と いうことで、大学病院の特徴を生かした魅力ある研修プロ グラムを今回は作成していきたいということです。プログ ラムがなかなかない医局制度という中で、今回はそれを明 らかにしていこうということです。 今回の事業は、東関東・東京に隣接した 5 大学で、それ ぞれの得意分野による「相互補完」 、これが大事な言葉に なりますが、完成度の高い魅力ある研修プログラムを提供 して、できればなるべく一人でも多くの研修医をリクルー トしたいという目論見もあります。そういう中で千葉、茨 城、栃木、東京は隣接しているので、比較的交流しやすい、 人事交流も割合やりやすいというメリットがあります。 ほかにも、例えば東京医科歯科大学は秋田や島根と飛び地 でやっているようなプログラムもあります。ですからそれ ぞれのプログラムで、それぞれの条件を生かして、いいプ ログラムをこれから組んでいっていただければと思いま す。 課題としては、先ほど来出ているように、医局単位でプ ログラムが体系化されていないところがありました。これ からの専門研修プログラムは、専門医制度機構の中でも学 会にいろいろな圧力があって、これから学会でいろいろカ リキュラムを決めていくことになります。そういう中で一 つの医局では、例えば症例数の不足や偏り、得意分野、非 得意分野の存在があることは否めないと思います。そうい うことで大学病院全体としても、専門研修になってしまう と医局単位でお任せになってしまって、大学病院自体とし てのキャリア支援機能がまだ十分でないということもあ るかと思います。 そういうことで、今回三つのフレームがありますが、専 門研修プログラムをもう一度見直していただいて、きちん とこれを構築する、アウトカムをきちんと出すということ になるかと思います。それから大学間連携を取り入れて、 相互乗り入れで、ぜひ良いシステムを作っていただきた い。それから 5 大学の中に必ずキャリアコーディネーター の先生が配置されているので、そういう方を中心にシステ Advanced Clinical Training-network Report 153 計画の作成をぜひしていただきたいということです。 間で共通の認定証を発行しようかと思っており、それによ まず「魅力あるホームページの作成」ですが、これは今 り、ある程度のインセンティブは得られるのでないかと思 ちょうど作っていて、もうすぐ出来上がります。今の医学 います。今、各関連学会で、例えば技術認定や専門医のた 生や初期研修医は、研修先を選ぶ上でホームページは非常 めに単位やクレジットが出ている場合もありますが、この に重要な情報源となっているので、ぜひここにゴール設定 5 大学間でやるいろいろなワークショップについても、関 を明確にして、きちんとしたプログラムを載せることが重 連学会への働きをしていかなければいけないと考えてい 要で、こういうホームページが必須であるということが ます。それは皆さまのそれぞれの診療科で取り組んでいた ファーストステップになると思います。 だければと思います。 そういう中で短期研修型は、例えば今考えているのは 1 ∼ 3 カ月くらいをある違う大学病院に行って研修するとい うものです。これは今のそれぞれ皆さんの、例えば附属病 院の医員の定員は恐らく限られていて、費用が一番ネック になると思うのです。この GP 自体では人件費を出すこと ができません。そこまでの予算がないので、5 大学で今お 願いしているのは各大学で、各診療科の定員枠外で、ある 程度の予算を確保していただいています。従って「○○大 学から○○大学へ 3 カ月行きたい」というようなご要請が あったら、コーディネーターの方で、ある程度人数が限ら れているので優先度を協議いただいて、その中での派遣は 可能になるかと思います。 長期型は恐らく 1 年、2 年になると思います。人手不足 その次に実際の連携ですが、高度専門研修コース。例え の中で難しいと思いますが、それぞれの専門研修医を派 ば研修の中に他大学へ一定期間行くことを組み込んだプ 遣、あるいは受け入れて、できればトレード、1 対 1 で交 ログラム、合同のカンファレンスや人材交流を入れていっ 換すれば一番うまくいくのではないかと考えていますが、 ていただければと思います。あとは症例が非常に少なかっ 5 大学間で研修内容をある程度共有化して、専門研修医の たり、特殊な治療手技の場合には見学やワークショップの 流動性を高める。これについてはいろいろな教官の見方、 共催なども含めて、レベルアップを図っていただければと やり方も違うので、井の中の蛙にならないように、広い 思います。 目で研修専門医を育てていただくための一つの大きなフ もう一つは、先ほども出た臨床研究者の養成、あるいはア レームになるかと思います。 カデミックマインドを持った臨床医の養成は大学ならで まとめです。先ほどから言いますように、ワークショッ はということになるので、研修期間内に、研究や大学院進 プの共同開催。この大学間連携ではシミュレーターをそれ 学を組み込んだ交流などもぜひ考えていただければと思 ぞれの大学で購入しているので、それは後で各大学から出 います。 るかと思います。それから実験動物なども使える大学が幾 例えばワークショップ・セミナーの開催ですが、今回い つかあるので、そういうところで例えば内視鏡施術の動物 ろいろ予算を積んで、5 大学間でやる場合には、その 5 大 による実習などもできます。そのほかに手技や手術の見 学間の優先枠を確保して、参加費用の補助や使用機器・機 学、短期型研修、長期型研修ということになっていくかと 材の購入補助、それからこれはまだ検討中ですが、5 大学 思います。 ここからポンチ絵になりますが、これは一つの例になり ます。筑波大学を真ん中に置きましたが、例えばそこから 千葉大、自治医大、東京大学、女子医大、それぞれ研修人 材の派遣やワークショップの合同開催、それから診療科同 士の交流、例えば症例カンファレンス、CPC、CC、病理 カンファ、それについては現地でそれぞれに集合してやる もの、あるいは今、5 大学の中で共通のテレビカンファレ ンスシステムを整備していて、恐らく来年度にはしっかり 使えるようになると思いますので、5 大学共同でテレカン ファレンスなどをしていただくということも比較的容易 にできるのではないかと思います。最後に地域連携で、こ れは後でまたお話ししたいと思います。 154 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ここの真ん中は、これは例えば筑波大学ですが、千葉、 います。他大学の得意分野を利用した高度医療人養成で、 東大、自治、女子医大がそれぞれ中心になって、あくまで 筑波大学脳神経外科ではサブプログラムをこのように分 も人材、本籍はそこの大学にあるということです。ですか けていますが、その場合、ほかの大学でそこにしかないよ ら行ったら行ったきりということではなく、行ったら必ず うな、例えば東京女子医大でしたら術中 MRI、自治医大 元へ戻るというのが基本的ルールで、どこかに吸い上げら だと血管内治療の教室が別にあったり、千葉大だと内視鏡 れるのではないかとか、派遣するばかりになってしまうの 手術のキャダバーによるワークショップをして、非常にレ ではないかとか、そういうことはなしにしようというのが ベルの高い診療をしているわけですが、そのようにいろい 基本的なコンセプトになるかと思います。 ろな特殊なことをお互いに利用して高め合っていただけ あとは各大学にすべてないようなコースもあります。例 ればと考えています。 えば千葉大学の和漢診療科コースは非常に熱心にされて いますが、ほかの大学でそういうことを標榜していること 次に、地域医療のことです。この 5 大学プログラムでは 比較的隣接しているので、地域医療の維持が困難になって いるのですが、その背景として、単独の大学、あるいは単 独の自治体で派遣が困難になっていることがあります。提 案としては、地域連携拠点としてレベルの高い病院があっ たら、そこを複数の大学でサポートして、その病院に高い レベルの研修環境・医療を提供できる、マグネットホスピ タルと言ってもいいのかしれませんが、そういうのを複数 の大学で協力して構築できればと考えています。これは来 年度すぐというわけにいきませんが、中期以降のことでぜ ひできればと考えています。 そういうことで大学病院だけではなく、関連病院も含め た研修システムの再構築をして、大学の関連病院としての 価値観を統合して、その中で例えばどういう科が必要であ るか、どういう人数、インフラが必要であるかという明確 がない場合、ここを相互補完的に利用していただいて、千 葉大学の和漢診療の先生にお聞きしなければいけません が、一定期間の受け入れをするとか、あるいは逆に千葉大 からどこかの老年科や総合内科へ研修に出るなどという ことも可能かと思います。このように少し特殊な場合が幾 つかあります。例えば睡眠障害診療科や、歯科・口腔。保 健衛生というのは例えば精神衛生です。病理や、そのほか 老年科などいろいろあるので、そういうところはまたそれ なりに交流していただきたいと思います。それに関する コーディネートは、それぞれの大学のコーディネーターが 間に入って取り持っていきたいと考えています。 例えば、私は脳神経外科ですが、このようになるかと思 Advanced Clinical Training-network Report 155 的な作業について少しだけ触れておきたいと思います。 第 3 部では取りまとめ用紙を、今回は筑波大学の担当者 が取りまとめになりますが、そこで初期案を皆さんで話し 合ってまとめていただいて、今日のミーティングだけに終 わらず、次回以降のミーティングの日程、あるいはやり方 もある程度決定してもらって、今日は初めてですので、次 回までにそれぞれの大学へ持ち帰って、診療科内で意見を まとめてもらう、具体的な活動を企画、実行してもらうと いうことをお願いしたいと思います。筑波大学の先生方に は取りまとめ用紙をプロダクツとして事務局に出してい ただければ、事務局で保存、あるいはまた皆さんに返した いと思っています。 化も少し考えていって、単に派遣したり引き上げたりとい 本事業により提供できるリソースですが、先ほど言った うのではなく、レベルを保つための実態調査などもして、 ように、専門研修医の人件費まで出るほどの予算ではあり レベルをきちんと確保していきたいと思っています。 ません。ということで、少し限られてしまいますが、 「ワー これは生涯キャリアデザインをしていきたいということ クショップなどの開催の補助」 、これには消耗品、交通費、 で、今は医局単位で終わって、医局から離れるとその実態 講師謝礼などがあります。それから実際に実習を受ける も分からないということもありますが、このプログラムで 人たちの「見学、実技指導を受けるための交通費」。それ は生涯にわたるキャリアフォローアップなどもできたら から「短期までの専門研修医の給与」 、これは各大学から と考えています。その中で人材、あるいは指導医のことな の持ち出しになりますが、今のところ枠に限度があるの どもしていきたいと思います。 で、申し出ていただければコーディネーター同士での話し まとめですが、これは先ほどから言っているところで 合いで決定させていただきたいと思います。あと、「合同 す。 カンファのためのインフラ整備」 、テレカンファ、あるい は都内でやる場合の場所のセットアップなども考えてい 後でもう 1 回説明があると思いますが、分科会での具体 156 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ます。「ホームページ上へのコース紹介によるリクルート 活動」 、これは皆さまの診療科で一人でも多く全国からこ このプログラムに乗っていただきたいということを含め て、ぜひご活用いただければと思います。それからワーク ショップやシンポジウムをやりたいときのサポートなど も、この中でやれたらと思います。 最後に、ぜひお願いしたいことを書いてありますが、今 後平成 21 年度以降、ほんの少しでもいいと思いますので、 ぜひ具体的な活動を行っていただきたいということと、活 動内容については必ず記録に残していただければと思い ます。 一つの医局にとどまらない幅広い人材育成により、高度 な医療人を輩出していくことを目指していただきたい。そ れから、将来的に地域連携拠点病院を含めた専門研修の 場、整備の充実を図ることをぜひお考えいただきたいと 思っています。 今言ったようなことは、一つは、3 年目の平成 22 年、5 大学間連携が文科省の中間評価を受けるので、しっかりし た記録を残すこと、具体的な活動をしていくこと、地域と の連携をきちんとしてレベルの高いものを整備していく こと、その辺はその後の事業継続にかかわることですの で、ぜひよろしくお願いしたいと思います。 以上、簡単ですが、概略についてご紹介申し上げました。 (司会) ありがとうございました。 質疑応答は後でまとめてディスカッションで行うので、 続いて各大学の取り組みの紹介に移りたいと思います。最 初は東大の北村先生、よろしくお願いします。 Advanced Clinical Training-network Report 157 「東京大学の『後期研修』」 北村 聖(東京大学医学部附属病院 総合研修センター 長) 「INTERFACE の概要」ですが、一つだけ、内科に入ら ないで内科総合コースということで、幾つかの内科をロー テートするというコースを作って、総合研修センターが管 理しています。内科以外を専攻するけれども、内科の総合 東大の「後期研修」と書いてありますが、 「専門研修」 的な診療技能を習得したい人。内科に行くことは決めたけ について簡単にご説明させていただきます。 れども、内科のサブスペシャリティをまだ決めかねてい 東大の目標は、臨床分野におけるリーダーの養成、研究 る人。あるいは、例えば胸部外科というような専門科も決 能力を備えた臨床医の養成ということを掲げ、キャッチフ まっているけれども、今のところ 1 回内科をやりたいと。 レーズとして「東大病院はあなたのキャリアデザイン(人 そのような人に対して内科をいろいろ回るコースを作っ 生設計)を支援します」ということです。多様性のあるプ ています。 院内にいるコース、それから院外の病院に行 ログラムの提示、長期にわたる展望の提示、診療科を超え くコース、大学院に入るコースなどです。 たプログラムの提示を目標としています。基本的には従来 キャリアデザインと打ったために、外科系のところなの の入局と同じようなスタイルですが、プログラムがないと ですが、学会に入ったり、外の病院に行ったり、開業、あ いうのは良くないというので、プログラムを作って、それ るいは病院長になるまでに、こういう人生があるというこ を今はバインドしたというところです。ただ一つだけ、診 とを大きな円に描いていただいて、こちらは大学の役割で 療科を超えたプログラムを内科で作っています。 すが、こういう形で動くのだと示している診療科もありま 彼ら研修医たちに示しているのは、どんな人生でどんな す。 になろうと考えるのは自分たちであり、それをいろいろな ところで応援すると。大学院や留学やいろいろなことがあ るにしても、東大病院の先輩たちはいろいろな道で頑張っ ているので、その人たちをロールモデルとしていろいろな ことができるだろう、それを応援できるという概念でやっ ています。 あるいは循環器内科ですと、ここに示したように六つの コースを作り、半分は大学院でのコース。それぞれ、侵襲 的検査は心カテを表し、非侵襲的というのはエコーなどを 表しています。そういうコースを作り、プログラムとして 大学院に入って何年目がこうなるなど、これの移動は簡単 なのですが、自分はどのコースでどのように行くのかを宣 158 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 言してもらった上で臨床をやって、それから大学院に行く ということでやっています。もちろん、まだ最後までいっ ていないので、振り返って、このとおり動いたかというの はまた検証してみないと分かりません。 システムですが、応募者は希望する診療科を選択して、 当該診療科の研修担当者、あるいは総合内科は研修セン ターと相談して決めます。 入局と非常に似ている制度ですが、一応各診療科に採用 の権限をかなり与えて、責任を持ってもらって、研修セン 外科の場合だと、15 年まで一応書いていただいて、ど ターが後で追従するという形にしています。 こまでが後期研修あるいは専門研修というわけでもない 大学院は卒後 3 年以降、必修科研修が終わった後は随時 のですが、キャリアをこのように見て、そしてこれが一つ 可能であると。その当該診療科の担当者と相談の上決める の人生のモデルとして、自分で人生をクリエイトしなさい ということで、もちろん留学も随時可能としてあります。 と。 簡単ですが、以上です。 こんなポンチ絵のようなものをホームページにも載せ ていただいています。 (司会) ありがとうございました。続いて千葉大学の田邊 先生、お願いします。 Advanced Clinical Training-network Report 159 「専門研修のためのシミュレーション・センターの 設置」 らシミュレーション教育をしていくのですが、そういった 田邊 政裕(千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研 には千葉大の関連病院の先生方にもご利用いただくと考 修センター長) システムを 4 大学でご利用いただく、さらに千葉大の場合 えています。 まだこれからなので、それほど多くのメニューはないの 160 よろしくお願いします。 ですが、一応今考えているものは、ドライラボでは、卒前 千葉大学の話は北村先生と少し違って、東関東・東京高 の医学教育や卒後研修に関してはいろいろなマネキンの 度医療人養成ネットワークで千葉大がどんな役割を果た モデルなどがあるのですが、特に専門研修ということを考 せるのかということで少し考えてみました。 えると、鏡視下手術のシミュレーター、あるいは消化管吻 今回、千葉大としては、専門研修のためのシミュレー 合のシミュレーター、ヒューマン・ペイシェント・シミュ ション・センターの設置を考えています。皆さんご存じの レーター(HPS) 、さらには今回、先ほどもお話があった ように、医師が手技を習得する場合、いわゆる“See one, ように、各大学でかなり高額なシミュレーターをそろえる do one, teach one”というステップを踏んでいくわけです わけですが、千葉大としては超音波シミュレーターをそろ が、特に do のところが、従来、患者さんに直接手技をし えて、これをご利用いただくと考えています。 て結果的にいろいろな問題が起きたということで、現在は 千葉大の場合、さらにウェットラボというものをつくっ 患者さんに処置や手技を行う前に、まずシミュレーターを ています。自治医科大学さんのピッグセンターのような大 使って、基本的なところを押さえてから診療を行うという 掛かりなものではないのですが、ブタを使って腹腔鏡下胃 流れになっています。 切除術や外科手技のトレーニングなどが行えるようなシ 先生方はご存じかと思いますが、皆さん医療事故は研修 ステムがあります。さらには先ほど松村先生にも取り上げ 医が一番多いように思っておられますが、実は一番多いの ていただいたキャダバーを使って、脳外科における神経内 は卒業して 3 ∼ 4 年目です。その意味で、今後、このネッ 視鏡のハンズオンセミナーもしています。こういったもの トワークが専門医を育成していく場合、シミュレーショ をやって、最終的には臨床に行きます。さらに臨床に行っ ン・センターを充実させて、そういったところでトレー てからも、必要があればドライラボやウェットラボに戻っ ニングを受けて専門医になっていくというステップが必 てきてトレーニングするということを繰り返しながら臨 須だと思います。千葉大ではその観点からシミュレーショ 床能力を上げていくというのが、千葉大で今考えている企 ン・センターの設置ということで動いているわけです。 画です。 シミュレーション・センターはどこにあるのかと千葉大 あとは具体的な話になりますが、シミュレーション・セ の先生方は聞かれるかと思いますが、実はまだないので ンターのドライラボで目玉になるのが、今回導入させてい す。2 月から 3 月にかけてつくっていく予定になっていま ただく超音波シミュレーターの研修です。目標としては、 す。ですから 3 月末には「シミュレーション・センター」 専門研修医の基本的な超音波診断能力の育成ということ という名前のものが一応出来上がっている予定です。 で、いろいろな診療科が対象になっています。内科、外科、 シミュレーション・センターは千葉大の場合、ドライラ 婦人科、泌尿器科、それぞれモジュールをそろえなければ ボとウェットラボというものからつくろうと思っており、 いけないのですが、こういうものをそろえて各診療科の専 ドライラボの方がこれからできてくるわけですが、ウェッ 門医の育成に、専門研修医レベルでの基本的な超音波診断 トラボに関しては既にあるものを使っていくことを考え 能力の育成をこのようなシミュレーターを使ってやって ています。ドライラボ、ウェットラボを相互に活用しなが いこうと考えています。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 外科基本手技研修会。上の神経内視鏡に関してはキャダ バーを使わせていただいており、下の二つはピッグを使っ て研修を行います。 これが神経内視鏡のハンズオンセミナーで、これは千葉 大学の脳神経外科が 2006 年から年 1 回開催して、来年度 で第 5 回になるコースで、二日間で講義と実習のコースを 併設しています。 実際のキャダバーを使って内視鏡を入れて、具体的に詳 しくは分かりませんが、脳の中を見て処置をします。それ をする前に、モデルを使って基本的な手技をして、その後、 実際のキャダバーにこういったものを入れて処置をする ようなセミナー、あるいは実習です。 一応幾つかの項目があって、特に脳外科の先生にお話を 聞くと、内視鏡下の経鼻的経蝶形骨洞手術、かなり難しい 手術らしいのですが、そのトレーニングに使っています。 さらには内視鏡を使った脳室内操作、血腫除去術などもこ ういったセミナーでできます。これに関しては 5 大学の連 携で数人の枠を確保して、各大学から参加が可能だという ように、今、脳外科の先生の方からは言っていただいてい ます。 最後のスライドになりますが、ピッグを使った外科基本 手技研修会ということで、一応対象は卒後 3 年と銘打って いますが、厳格に 3 年目ということではありません。これ を通してどんな研修ができるかというと、かなりいろいろ なことをやります。全身麻酔、開腹、閉腹、胃切除、再建、 救 急 の 場 合 に も FAST(Focused Assessment with さらには腸切除、吻合。腸管は限りがあるので 3 回ぐらい Sonography for Trauma)といったもののために、循環動 しかできないということです。それから脾摘も脾臓が 1 個 態が安定していない患者さんに対しては緊急にエコーで、 しかないので 1 回しかできない。それから腎臓は二つある 例えば胸腔や心嚢などをチェックして診断していくと。救 ので 2 回と。肝切除も一応 2 回できる。1 匹のブタを使っ 急の研修をされている方にも、こういったシミュレーショ てこのようなトレーニングをすることを一応考えていま ン・センターでの超音波シミュレーター教育というのは有 す。 用ではないかと考えています。 あとは Human Patient Simulator をドライラボで設置し ていて、これも結構高いものですが、これも目標としては 専門研修医の基本的な救急対応能力を育成するというこ とです。救急部の後期研修医、あるいは専門研修医が対象 になると思いますが、多分そればかりではなく、全診療科 での例えば 3 ∼ 4 年目の研修医がこういうトレーニングを 受けることによって、基本的な臨床的に求められている救 急の対応能力を身に付ける必要があると思うので、診療科 からも要求があれば、こういうものを使っていただいて救 急対応のトレーニングをしていただく。かなりバラエティ に富んだシナリオを作れば、多分いろいろな診療科に対応 できると思いますし、その意味で Septic Shock や CPA な どのシナリオを作って専門研修をしていこうと考えてい まとめです。千葉大学としては 5 大学連携プロジェク ます。 トに対してシミュレーション・センターを設置し、シミュ ウェットラボの方ですが、現在、平成 21 年度として開 レーション教育を支援します。それからシミュレーショ 催予定の研修会はこの三つです。先ほどお話があった神経 ン・センターではドライラボとウェットラボを通じて、専 内視鏡ハンズオンセミナー、腹腔鏡下の胃切除術研修会、 門研修医向けの研修プログラムを企画しています。5 大学 Advanced Clinical Training-network Report 161 連携で他大学からも参加できるので、ぜひご参加いただき たいということです。 以上です。どうもありがとうございました。 (司会) ありがとうございました。続いて東京女子医科大 学の野村先生、お願します。 162 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 「東京女子医科大学病院」 野村 馨(東京女子医科大学病院 総合診療科 教授) ここにさらに高度医療人養成支援事業が加わって、さら にわれわれも後期研修生の今のプログラムのブラッシュ アップを図り、また人事交流をしたいと考えていますが、 東京女子医大は私立ですので、常に建学の精神という まだ始まったばかりです。 か、何のためにわれわれは医者になっているかということ そのほかにも今、女性医師のドロップアウトが問題に がベースになるので、そこから少しご説明します。 なっているので、これも文科省の支援を受けて、女性が医 1900 年に東京女子醫學校を吉岡彌生先生がつくられて、 学研究あるいは臨床医師に再びバックアップできるよう 1952 年に新制大学設立ということです。学則としては「医 な支援を行っています。 学の蘊奥(うんおう)を究め兼ねて人格を陶冶し社会に貢 ハード面になりますが、ちょうど 2000 年で 100 年たっ 献する女性医人を育成する」。 たので、5 年前に総合外来センターができました。この目 現在は時代が変わってきたので、 「ビジョン 2015」とい 的は、すべての診療科が一つの外来センターに集まって患 うことで、新たにどういうゴールを作るかを検討中です。 者中心の医療をそこで行うということで、精神科を除いた その具体化を進めていますが、現在は「先進的、全人的か 診療科が集まって、そこで皆さん協力して患者さんの治療 つ安全な医療の追求を通じて、ともに、世の人々の健康に に当たります。電子カルテでカルテの一元化、あるいは検 貢献するひとを育成する」ことが目的になっています。 査部門の統合により、いろいろな合理化が図られているの で、診療科同士の交流も始まっています。 現在の制度で医療練士制度というのがあります。これは 5 年間の期間を設けて、その中でそれぞれの診療科が責任 さらに、今建築中ですが、新しい病棟では診療科同士の を持って到達目標に達するということです。これは消化器 固定性というものをやめて、診療科がそれぞれいろいろ交 病センターが最初に始めたことで、今すべての診療科がこ 流しながら診療を行えるような体制に持っていく方針で の枠組みで後期研修を行っています。この間、お聞きした ビルが造られています。これが今進められているハード面 ら消化器病センターは今 42 期生を輩出しているというこ の改革です。 とで、だいぶ歴史の深いものです。これが終わると修了証 を渡して、この期間が終わるわけです。 2 年前に、全国医学部長病院長会議で出された資料を頂 これが今までの女子医大の後期研修生の枠組みでした。 いて持ってきたものですが、われわれの今の研修の対象に Advanced Clinical Training-network Report 163 なる患者さんプロフィールを紹介するということで、これ 悪性腫瘍の手術の件数ということで、女子医大もかなり は外来初診患者数で各大学のヒストグラムが出ています の症例を持っています。 が、オレンジが女子医大で、かなりの症例数があります。 高度先進医療は今度、後期研修生がやるところですが、こ これは病棟数です。 れは少人数で、また症例の数としてはかなりのものを持っ ています。 こういうことを女子医大で学んでいただければ幸いで す。 これから個々のコースについては診療科単位で進めて いただいて、そこでキャリアコーディネーターがバック アップするということになると思います。取りあえず人事 の交流はまだ具体化していませんし、恐らく平成 22 年度 から本格的になると思いますが、 平成 21 年度の短期トレー ニングの企画としては、現在、放射線科の企画で 3 次元の 画像処理をするようなプログラムがあるので、そこで血管 のインターベンションや腫瘍の深達度を評価するような、 そういうプログラムを使う研修コースを持っていこうと しています。 それから救命救急センターの企画ですが、女子医大は 3 次救急センターがあるので、そこでコースディレクターと いって、ICLS のインストラクターを養成する資格のある 人がいるので、ICLS インストラクター養成コースを平成 21 年に行いたいと思います。初期研修に ICLS が必須化さ れるということもあるので、今後いろいろな需要があるの ではないかと思います。以上です。 (司会) ありがとうございました。続いて自治医科大学の 三瀬先生、お願いします。 164 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 「自治医科大学の取り組み」 三瀬 順一(自治医科大学附属病院 卒後臨床研修セン ター 准教授) ただ、ほかの先生方と月に 1 回会って話していると、自 治医大への期待が結構あることが分かったので、それをア ピールすることにしました。すごく田舎にあるので、大型 の実験動物を解体する、それから非常に有名ないろいろな 自治医大の三瀬です。 研究や臨床の実践があります。また、地域医療(総合医) 自治医大は先ほどの地図には出ていませんでしたが、栃 の研修等も、いろいろなノウハウやサイトを持っていま 木の本院のほかに、さいたま医療センターに 600 床あり、 す。 全 43 診療科、部門、講座がある大学です。 そういうことで少し方針を転換して、ホームページを作 少し特殊な事情があって、出身大学で卒業生が研修でき るときに、今度の連携ではどの大学も連携事業に関係した ない、出身都道府県に帰ってしまうということで、臨床 ホームページを作るのですが、全部の科、後期研修、医局 研修医は全員ほかの大学から来ていて、昨年まで 100%の の広報・宣伝、連携事業のコース、そしてほかの大学の同 マッチをしていました。いわゆる後期研修、入局はほぼ同 じ科のところともリンクするような形のホームページを 数が確保されましたが、診療科によっては極端な人材難、 10 日後ぐらいには立ち上げたいと思っています。ほかの また規模が小さいグループのために、非常な実績がありな 大学の方にも、この大学のどこかに来ようと思っている方 がら、後期研修医または入局者をアピールする機会に恵ま にも役に立つ情報発信ができるのではないかと思います。 れないようなグループがあるという現状があります。 現在、自治医大から始まるコースは、5 大学で 180 のコー 今回の事業を内部的にどのようにやったか、ここまでの スがあるのですが、自治医大は当初 12 しか設定できませ 内情を少しお話ししたいと思います。最初は各診療科単位 んでしたが、今後各科の協力を得て追加したいと思いま で連携プログラムに参加しませんかと、コース設定を提案 す。 したのですが、自治医大の場合、比較的、単独で多彩な症 将来構想、これはすぐ実現できそうな話になりつつあり 例経験、多彩な分野の研修が可能で、連携したくても自前 ますが、千葉県か茨城県で地域医療を体験できるような夏 でやれるからというのが最初の反応だったので、説明の仕 季セミナーを開催します。また、教育資源、これはシミュ 方が悪いのかなと思って悲しい気分になりました。 レーション・センターが昨年、われわれの医局の部屋が Advanced Clinical Training-network Report 165 あったところにできて、われわれはほかのところに追い出 されたわけですが、いろいろな教育資源があるので、先ほ どプレゼンテーションがあったようなセミナーも開催可 能かと思います。 松村先生のお話にあったような中核的な病院、これは病 院ができて地域に貢献するということだけではなく、病院 自体が研修、経験、研究の場として利用できるというよう な潜在的な地域がたくさんあると思いますので、共同して 対処する、対応していくようなコンソーシアムがゆくゆく はできたらと夢見ています。以上です。 (司会) ありがとうございました。最後に筑波大学の紹介 をさせていただきます。 166 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 「筑波大学附属病院の後期専門研修」 前野 哲博(筑波大学附属病院 総合臨床教育センター 病院教授) いう名前のレジデントが 4 月、5 月、6 月、どの病院にい て、どこで何をしているかということをサンプルで持って きました。「○」は院内にいるという意味で、32 の養成コー スすべてが一覧表になっています。それが冊子になってい 筑波大学の特徴として開院当初からレジデント制を導 るので、何科の誰が今どこにいるということをわれわれは 入しています。その制度は 5 大学連携事業で求められて 全部把握しています。 いることとかなり近い部分があり、今日は時間も短いの 最後、チーフレジデントの修了のときには、教育セン で、そこを中心にご紹介したいと思います。診療科や内容 ターが中心となって修了認定を行っており、これもわれわ など、多分それはどこの大学も売りを持っていると思うの れの大きな特徴なのですが、外部評価を必ず行います。 「他 で、後で各論はそれぞれの診療科でお話しいただければと 大学の教授」と書いてありますが、期せずして、今は 5 大 思います。 学の先生にお願いしており、内科系は東大の北村先生、外 これからこの三つについてお話しします。 科系は女子医大の山本先生にお願いしているのですが、そ 最初にレジデント制であるということですが、われわれは れがちょうど明日と明後日にあります。そこで全員一人ず 昭和 52 年の開院当初からレジデント制を採用しています。 つ面接していただき、コメントを書いていただいて、最終 研修期間はシニア 2 年、チーフ 2 年の合計 4 年間です。 講座制ではなく、診療グループ養成コースという名前を 使っていて、それぞれどんな専門医を養成したいのかとい うことによってコースが分かれています。 「レジデント制である条件とは何ですか」とよく聞かれ るのですが、基本的にはカリキュラムがあって有期限性で あること、それから身分がきちんと担保されていることで はないかと思います。 カリキュラムはオープンにされているということで、こ れについてはまた細かい特徴をこの後にお話しします。管 理は総合臨床教育センターが初期研修と同様にしていま す。これは総合医コースのレジデント配置表ですが、何と Advanced Clinical Training-network Report 167 的に、奥に写っている病院長から修了証書が手渡されま したものを載せています。ですから入ってくるレジデント す。 は、6 年のチーフ修了時にはどこまでいけるのかというこ これが修了証書です。それから初期研修含めて 6 年間は、 とをイメージして進路を選ぶことができます。 ここに冊子があるのですが、「評価及び研修歴の記録」と こういうものもすべて、今回の大学病院間連携に非常に いうことで、ローテーションごとに評価された内容やコメ 近いものを先進的に以前から取り組んでいるということ ントが書かれたすべての研修の記録が修了式と同時に手 かと思います。 渡されます。そういう形で後期研修を行っています。 修了実績です。数字は別に意味があるわけではなく、誰 今はやはりゴールを示さなければいけないということ が何人、どこを修了したということを教育センターが一元 で、筑波大学で独自に、それぞれのコースでどこまで行け 的にきちんと把握しているというシステムが出来上がっ ばチーフが修了できるかを決めていただき、ホームページ ているということをお見せしたくて持ってきました。 上で公開しています。ただ、必修科後、6 年間で必ず専門 あとは細かいことですが、業務改善にも取り組んでお 医が取れなくなってきたということもあります。全コース り、レジデント横の会、レジデントの連絡会、真ん中のレ 一律 6 年間でいいのかという議論もあるのですが、あと 1 ジデント診療協議会というのは、レジデントの要望、病院 年で取れるところまでいけるとか、受験資格申請など、そ 体制をこうしてほしいとか、このサービスを取り入れてほ のような表現を使って、6 年間でどこまでいけるかを明記 しいなど、そういうものを聞くための会議が 2 カ月に 1 回 開かれています。副委員長、委員長として各部門から全員 参加して、例えば「売店の時間を遅くまで開けてほしい」 「このレントゲンを運ぶのを何とかしてほしい」など、そ ういうものに取り組んできています。 処遇の方は、 われわれのコンセプトとして、いわゆる「無 給医局員」や「無給で患者を受け持つ大学院生」は存在し ないということを守っています。処遇も毎年充実を図って おり、例えば週 5 日間の勤務で、実際は土日も来ているの ですが、当直週 1 回働けば 42 万円ぐらいはもらえること を確保しています。 大学院なのですが、基本的にわれわれはこれまで大学院 のキャリアとレジデントは重ねないという方針でやって きました。これはまた後で申し上げますが、取りあえず大 学院生で学費を払いながら病棟で患者を持っているよう というような状態はしないというコンセプトでずっと運 営しています。もちろん大学院に行くことは推奨している ので、レジデント修了後に行く人はたくさんいます。 ただ、その辺も少し柔軟に運用してお互いの相互活性化 を図ろうということで、こういった要望に対してアカデ ミックレジデント制を導入しました。これは後期研修の間 から大学院に入学します。ただし、ここの間は研修期間な ので、しっかりフルタイム働く。働く代わりに必ず給料を 全額出す。この 1 年間はリサーチ・イヤーとして研究に専 168 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 みなど、そういう人の雇用。それからメディカル・クラー クは主に病棟でレジデントの、いわゆる雑用を減らすため の業務ですが、そのような業務のコントロール等を行いま す。 あとは、ほかの病院で後期研修をしている人を対象にし た短期キャリアアップレジデント制度を独自に導入して おり、これは別予算で病院がお金を出すという形でやって います。 ですから、今回の 5 大学の人事交流も、われわれはこうい う素地があるので比較的スムーズに受けられるのではな いかと思っています。 シミュレーションの話が先ほどから出ています。われわ れもそれなりにシミュレーションラボの装置を持ってお り、あとは外科手技、鏡視下手術等のシミュレーションを 持っています。あと、この事業で購入したものとして、非 常に高価なものですが、血管内治療のシミュレーターを導 入しました。脳血管、それから来年はコロナリーのユニッ トも導入する予定なので、これを中心としたセミナーを積 極的に開催していきたいと思っています。 念する。この期間は給料を出さないし、レジデントの研修 年限にもカウントしないということでやっており、最終 的にこれまで 10 年かかっていたのが 7 年で両方取れると。 そして研究にもきちんと専念でき、臨床をちゃんとやる期 間はきちんと給料が出るという体制を確保しています。 これを支えているのが総合臨床教育センターです。昭 和 63 年に専任教員を置いた組織として国立大学で初めて 設置され、副院長、選任医師 3 名、事務 5 名という体制で コーディネートを行っています。具体的な業務内容は、例 最後です。われわれは平成 24 年に 600 床規模の新しい えばメンタルヘルスケア、うつ病になったレジデントの対 病棟を建てる予定です。そうすることによってさらにパ 応や、先ほどお話しした採用・修了認定もあります。あと、 ワーアップして、いい研修環境を提供していきたいと思っ たまにいるのですが、コースを代わりたいというのも、わ ています。以上です。 れわれが仲立ちに入ることでスムーズにいったりします。 あとはレジデント秘書、白衣のボタン付けやお金の振り込 Advanced Clinical Training-network Report 169 質疑応答 のがあれば素直に参加できるのでしょうが、それがないと やはり不安です。前例があるので。そういった点をしっか (司会) それでは質疑応答に移りたいと思います。 りしていただければとは思います。 (Q1) 東大の呼吸器内科の幸山と申します。このプログ (松村) 確かにこの 5 大学が始まるときに、お互いに受け ラムは厚労省のオリジナルだと思いますが、今まで厚労省 入れる方はいいけれど、派遣するのは絶対駄目ですよとい がされたことで、後期臨床研修医の話から始まって、いい う返答をいただいたと思います。そういうところは皆さん ことはなかったですよね。それで大学病院に人が集まらな 懸念を持っておられるのですが、お互いに高め合って、先 くなって、また厚労省からのプログラムが始まるのでしょ ほども言ったように本籍は自分の医局で、ある程度いいと うが、これがまたうまくいく可能性があるかどうかも分か ころへ行って戻ってきて、その地域で活躍するというよう らないのですよね。元の医局制度に戻してしまえば良くな に、ぜひ各診療科が自分の存在価値を高めていただけれ ることは予想できるのですが、そのような流れの中で、こ ば。ちょっと理想的なことかもしれませんが。 れを大学同士で 5 大学が進めていくことはもう決まってし もう一つ、先ほど三瀬先生がおっしゃった、ある地域へ まっているのでしょうが、例えば、私は今日この話を聞い 行けば、例えば大学では絶対自分では手術できないような たので、また帰って皆さんに聞くのですが、可能性として、 症例もそこにちゃんとした指導医がいて、ちゃんとしたサ われわれの医局だけ参加しないということはあり得るの ポーターがいれば、若い人でもどんどん手術ができる、い ですか。大学としては参加するかもしれませんが、われわ ろいろな手技ができる、そのようなことも含めて若い人が れだけは参加しないといった結論が出てもいいのですか。 どんどんキャリアアップできるような体制を少しでもつ くれればと。これも理想論かもしれませんが、今言ったよ (松村) 一つは、これは厚労省ではなくて文科省のプロ うに 5 年間のプロジェクトなので、あまり事を急いて、先 ジェクトなのです。だから大学や大学病院の復権という意 生が今おっしゃったようなことになってはいけないので、 味で、アンチ厚労省ではないのでしょうが、大学を盛り上 われわれとしても平成 22 年度から人材の交流、来年はこ げるということです。 ういうワークショップ。その先に何があるかというのはだ このプログラムに関してはもちろん温度差があるで んだん成熟していった中で考えられたら非常にいいなと しょうし、自分たちが一番いい研修をしていると思えば参 思います。 加するニーズは当然ないわけですから、それはそれで結構 ほかにコーディネーターの先生、何か意見があれば。 だと思います。ただ、今言ったような、例えばワークショッ プやカンファレンスなど、もしお互いに高め合えるような (司会) ありがとうございました。ほかにご質問はありま 部分があれば、それは利用していただくのは大いに結構で すか。もしくはパネリストの方の間で何かご質問、ご意見 す。予算もそんなにないので、皆さんが殺到されるとむし などあれば。どうぞ。 ろそれに応えられないくらい事業が立ち上がればいいの ですが、そういう意味で、恐らく世界一完璧な医局という (Q2) 東京女子医大の放射線科の三橋です。一分野に限 のはないと思うので、どこかで何かしら外から学べるとこ られてしまうかもしれませんが、がんプロとの関係はどの ろはあるのではないかと思います。そういうところをなる ようになるのでしょうか。 べくうまく探して、負担、重荷にならない程度に活用して いただければ。 (松村) がんプロは、たすき掛けではないですが、重ねっ ている部分と、そうでない部分があって、千葉と筑波はが (Q1) 実は若い先生たちには非常に魅力がある話だと思 んプロで一緒でして、自治は国際医療福祉、女子医大さん うのです。卒後研修制度のお話も非常に魅力があって、結 はまた別ですよね。ですから、例えば臨床腫瘍科や放射 局、都会に集まってしまったわけです。この話も、いろい 線治療で重なっているところも確かにあります。その辺 ろな先生方のパネルディスカッションを聞かせていただ は・・・。 いても非常に魅力ある話ではないかと思って、私だったら それに参加したいと思いますが、そうしたことで、もしか (Q2) チームということだけではなく、キャリアのとこ したら一つの大学病院に集中してしまう可能性が今度は ろで、例えば再教育のようなところは、がんプロの中で研 あるわけです。そういうことは全くないようにしていた 修コースができていますよね。そういうところと研修コー だければいいのでしょうが、それを多分、われわれの医局 スとの兼ね合いはどのようになっていくのでしょうか。 の先生たちも分かっていないでしょう。だからいきなりば 170 んと始めるのではなく、例えばモデルとして二つか三つの (松村) その辺は、またそれぞれの診療科で協議していた 科、二つか三つの大学でしていただいて、成功したという だくことになると思います。例えば e ラーニングのコンテ 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ンツなどは、がんプロの方から少しお借りするということ いうことで進めています。ですから、その病院の、例えば もできるのではないかと思いますが、その辺はまだ検討は 自治医大でしたら自治医大のほかのレジデントと同じよ されていません。がんプロも今、e ラーニングがどんどん うに雇用され、そういう規約で守られるということになる できつつありますね。 と思います。ですから、その数を幾つ受けるか。あとは大 学間によっては給与も処遇も微妙に違いますが、それは基 (Q2) それは同じ文科省の企画だから、文科省でその辺 の方針はないでしょうか。 本的に受け入れた病院に合わせるということからまず始 めようということでスタートしています。ほかにあります か。 (司会) この事業というのは事業予算ごとの企画です。で すから、予算を混ぜずにきちんと整合性をもって使ってい (松村) その話は最も、なかなか話が合わなかったところ ただければ、お互いのプロダクトを共有した方が、お互い で、例えば東京ですと家賃が高い、田舎ですと安い、レジ いいものができると思います。要するに文科省が事業を認 デントの宿舎が完備しているなどということもあります。 めた後に気にするのは、ちゃんと目的どおりに使われたか その辺はいろいろ違いがあるので、そこは診療科同士でう どうかだけなので、そこさえきちんと守っていただけれ まく話し合って、可能なものと可能でないものとありま ば、むしろ積極的に相互活用をしていただければいいので す。ただし、先ほど言った受け入れ側が支払いをするとい はないかと思います。 うときに、その病院の損害保険でカバーされるような身分 ありがとうございました。ほかにどんなことでも結構で を、送り先では無理なので、受け入れ先で保証しようと。 す、ご質問を。では田邊先生。 それから、研修といっても働くので、ある程度の診療報酬 は発生するということで、やはり長期の場合は受け入れ側 (田邊) がんプロとの関係で、一応われわれの場合、先ほ どのシミュレーション・センターの話なのですが、がんプ がカバーした方がいいのではないかという結論になった わけです。 ロの方で機器やシミュレーターをそろえるということが あって、そういったものは一応共有で使うように計画を立 てています。 (野村) 私の理解は、今までの議論は短期間、例えば 1 ∼ 3 カ月の場合はどちらかというと見学というニュアンスが 強くなるので、本籍のところが負担して、ただ、労働保険 (司会) ほかに何かありますか。どうぞ。 などはまた議論しないといけないと思います。また、1 年 ぐらいの長期になったときは、やはり研修先が労働力とし (Q3) 自治医科大学の矢野と申します。具体的なことを て使っているという面もあるので、そちらが負担すると。 教えていただきたいのですが、私どものところでも、どこ ただ、そこの仕切りはまだはっきりしていないという議論 か違う病院に研修医を派遣して研修を充実させたいとし であったように思いますが。 たときに、問題になるのが労働災害の問題と宿舎です。一 つキープしながら、もう一つ別のところを研修医が財政的 (司会)それについて整理したいのですが、受け入れた病 に二つ負担するのはすごく大変なことになるかと思いま 院が払うというのは、病院全体として 5 大学連携用の枠を すが、今回のプログラムでは、派遣される研修医本人の労 用意していただいたのです。診療科は多分、それぞれ点数 働災害の面と宿舎等々の掛かる費用に関しては、どんな感 というのをお持ちだと思います。その点数を食う形だと、 じなのでしょうか。 野村先生が今言われたように、見学中心で来る人のため に、自分のところのレジデントのトレーニング枠が取られ (司会) 基本的にこの事業には費用的に含まれていない るということになってしまうので、それはもう一段高いレ 部分なので、あとは参加した大学の合意ということで、こ ベルで、病院全体として用意していただこうと。ですから、 れまで合同会議で、それが一番焦点になった部分でした。 受け入れる診療科は自分の定数に関与することなく、病院 基本的に受け入れたところが出すか、送り出したところが が少しそれをカバーするような形で、今、議論を進めてい お金を持つかというのはいろいろ議論したのですが、結論 ます。ほかにありますか。 から言えば、受け入れたところが出すということです。そ こできちんと身分を与えて、労働災害も含めて、きちんと (松村) もう一つ、野村先生が今おっしゃった、見学や参 雇用を発生させようということです。ただし、その分は事 加、例えば心臓のカテーテルの非常に難しい操作、例えば 業費、いわゆる補助金以外、病院の持ち出しになるので、 毎週木曜日にアブレーションをしているからそこへ行く 大学によって受け入れ枠が異なってくるのはやむを得な とか、そういうところの交通費はこちらの事業でカバーし いと。ただ、一人分は最低でも確保しましょうと。ただ、 合おうということですね。当然見学ですので、人件費は発 そこに 3 人殺到した場合はコーディネーターが調整すると 生しませんが、少なくとも交通費などは持って、なるべく Advanced Clinical Training-network Report 171 エンカレッジしようというのは一致している意見だと思 ることはまずないと思います。その活動の度合いによって います。 は査定で事業予算を減らされたり、あるいは来年度もそう ですが、実際にやっている人が増えれば、3 年後にもしか (司会) ほかにありますか。どうぞ。 したら予算はかえって増えるかもしれません。そこはまだ 分からないと思います。 (Q4) 筑波大学の横山です。途中で平成 22 年の中間評価 があるという話でしたが、そこの時点で打ち切られるよう (司会) 予算は年度単位ですので、5 年予定ですが、実は なことはあるのでしょうか。あるいはこの事業は何年か、 この事業費は年間 1 億円できていたのですが、いきなり もちろん決まっていると思いますが、例えば地方の中核病 9000 万円にしろと向こうから一方的に言ってくるのです。 院をサポートするなど、そういうのは結構何年もかかるこ あとはほかの GP ですが、 3 カ月分出さないといきなり言っ とだと思います。事業が終わった後も、こういった 5 大学 てきたこともあるので、それは国の財政によって変わると の共同のことは継続していくように考えていらっしゃる しか言いようがないのですが、実績を出していれば基本的 のですか。 なサポートをしようと文科省は考えています。 (松村) 最初の文科省の説明では、一応卒業生の半分以上 (三瀬) ちょっと細かい点の訂正というか、卒業した人数 が参加するプログラムを作ってくれと。それでたくさん皆 の 50%以上に相当する人数をコースの総定員とするとい さんに出していただいて、実際にはそこが埋まらないよう うことですよね。われわれは卒業生が誰もいないのです な大きなプログラムを出したわけです。この 3 年間でそこ が、5 大学合わせて 500 名弱で 260 名以上の定員を設定し、 がどこまで埋められるかというのが一つの大きな目標に かつ、そのかなりの部分が、実際に人が動かないと先行き なるわけですが、そこが何も発生しないと切られることも 危ういと。先に補助金でシミュレーターを買ってしまって あるかもしれません。でも、ほかの大学の取り組みを見て いるというような、そういう事業であることをご理解いた も、そんなにぱぱっとはなかなかいかないので、少しずつ だきたい。 でも交流、あるいは長期・短期の派遣ができれば、切られ (司会) ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。以 上。 172 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 第 1 回シンポジウム 第 3 部 診療科ごとの分科会の様子 Advanced Clinical Training-network Report 173 174 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク 第 2 回シンポジウム ラムには含まれていませんが、受付でご案内するので、終 わった後、懇親を深めていただきたいと思います。今日は 女子医大の面接試験など、二次試験があって、病院長その 日時 2010 年 2 月 11 日(木)13:00 ∼ 17:00 ほかの先生がいませんので、いろいろ行き届かないところ 場所 東京女子医科大学 弥生記念講堂 もありますが、ご容赦ください。 では、高崎先生のご紹介をさせていただきます。高崎先 開会の挨拶 生は女子医大の消化器病センターの所長でいらっしゃっ 田邊 政裕(千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研 て、4 年前に退官なされました。ご経歴を簡単に紹介させ 修センター長) ていただくと、1967 年に千葉大学医学部を卒業しました。 この年はインターン闘争があって、初期研修をめぐってイ 東関東・東京高度医療人養成ネットワークの第 2 回シン ンターン制度をどうするかということでボイコット運動 ポジウムの開会に当たって、開催の挨拶を一言述べさせて などがあった非常に熱い、激しい時代です。高崎先生は多 いただきます。私は千葉大学医学部附属病院で、この事業 分そのころからいろいろ医者を育てるということを考え の推進代表者を務めさせていただいている総合医療教育 ておられたと思いますが、その後、女子医大の消化器病セ 研修センターの田邊と申します。よろしくお願いします。 ンターに。それは内科・外科が一つになって消化器病に取 本事業は昨年度からスタートして、筑波大学、東京大学、 り組むというセンター制度だったのですが、そこでは同時 東京女子医科大学、自治医科大学、さらに千葉大学と、こ に医療練士という、教室として専門医を育てるというはっ の 5 大学の附属病院がそれぞれの得意分野を生かして連携 きりしたコンセプトがあって、高崎先生はそこの第 3 期生 し、非常に魅力ある専門医養成プログラムを作り上げて、 ということです。それから 35 年ぐらいたちますが、随分 そこに研修医に参加していただいて、今までより質の高い 昔からそういうことが行われていました。 専門医を育成し、最終的には彼らが地域医療に貢献してい 現在は牛久愛和病院の院長として、ちょうど東関東・東 ただくことを目指しています。 京の中で病院長を務めておられますが、今日ここにお招き 昨年の第 1 回は最初ということもあって少し手探り状態 した一番の理由は、日本専門医制評価・認定機構の理事と だったのですが、第 2 回に関しては、第 1 部で日本専門医 いうことです。特に制度評価委員会の委員長をなさってお 制評価・認定機構の理事の高崎健先生に、わが国の専門医 られて、専門医制度がどうあるべきか。学会主催、あるい 制度についてお話しいただき、その後、第 2 部として、大 は大学で、いろいろ専門医制度が出てきていますが、国と 学病院が連携して専門医を育成するプログラムについて して、あるいは社会としてどのように専門医制度を位置付 ディスカッションしていただきます。第 3 部では、既にそ けるかという、いわばその要のところでご尽力なさってい ういった取り組みがスタートしていて成果を上げておら るということで、今日のご講演をお願いしました。 れる島根大学の廣瀬先生にご報告いただく予定になって 先生、どうぞよろしくお願いいたします。 います。 今回は第 2 回ということで、昨年よりも増して、より高 (高崎) 今日は専門医制評価・認定機構の立場でお話し い成果が得られるようなシンポジウムになることを期待 させていただきます。私自身を少し紹介させていただく しているので、16 時までと結構長い時間ですが、ぜひ最 と、最後のインターンをやりまして、研修医制度につい 後までご協力いただければと思います。よろしくお願いし て、どういうあり方がいいかということを盛んに学生時代 ます。 やりました。それで卒業してから、中山外科に入りたいと いうことで女子医大に移ってきたわけです。その中山先生 第 1 部 基調講演 が 40 年前に、日本に専門医制を根付かせようということ 演題 「専門医制度を評価する立場から見た専門医 養成システムのあり方」 で、学術会議でだいぶ長いこと活動されたのですが、結局 演者 高崎 健(日本専門医制評価・認定機構 理事 / 子医大の中で専門医制度をつくろうではないかというこ 牛久愛和総合病院 院長) 座長 野村 馨(東京女子医科大学病院 総合診療科 教授) うまくできませんでした。それで女子医大にいらして、女 とで医療練士制度をおつくりになったのです。私はその 3 期生ということで入ってきました。中山先生が女子医大全 体の中に医療練士制度というものをつくり、後期研修です が、きっちりした形で専門医を育てようということをされ 皆さん、こんにちは。お忙しいところをどうもご参加あ てきました。 りがとうございます。 そんな関係で、私も専門医に非常に関心があったのです 最初に少し事務的なご連絡をさせていただきますが、今 が、この機構の前身で 10 年近く仕事をしてきて、今は各 日は最後に病院長主催の懇親会を設けているので、プログ 学会の専門医制度を評価する評価委員会の委員長として、 Advanced Clinical Training-network Report 175 176 制度の指針づくりをずっとやってきたという立場で、少し の間で話があったわけですが、今後は専門医を広告すると お話しさせていただこうと思います。 いう形できちんと国民に表示できるようにしていく方向 専門医制評価・認定機構の役割というのは、各学会が独 がいいのではないかということになってきたわけです。 自につくられた専門医を、いかにして社会的に認知される これは平成 20 年に改定されたので今は違うのですが、 かということを機構としてサポートする役割です。日本の これが自由標榜制で、これだけの診療科に限られたのです 各学会がつくった専門医をいかにして社会に認知させる が、どんなドクターでも勝手に自分がどれかを選んで標榜 かという活動を行うということが、まず大事な役目です。 すればよかったのです。標榜する人もご自分の責任でやっ そのステップとして、各学会が独自につくられた制度を ていけばよいことで、質は誰も保証していなかったわけで 整合性が合うように調整しようということです。その調整 す。 した上で、各学会の制度をきちんと評価し、この制度であ そうすると、国民の立場から言うと、本当にその人がそ れば、きちんとした制度だから質を保証できるような専門 の診療科の専門医なのかどうか、よく分からない。しかも 医がつくれるでしょうということで、学会の制度を認定し 一つだけではなく、幾つでも標榜できましたから、何の専 ようと、そんな活動をしてきています。 門の先生か分からないということで非常に混乱があった 最初に、日本の医師は専門性をどのように表示してきた わけです。 かというと、日本はずっと以前から自由標榜制です。今で そこで各学会が努力して、各学会が自分たちできちんと も結局、自由標榜制です。ですから、医者は誰でも自分が 制度をつくり、自由標榜であっても、各学会が専門医をつ 思ったように、自分勝手にいろいろ標榜していくことにな くっていこうではないかということになっていきました。 ります。その標榜名だけが国民に医師の専門性を表示する 最初に麻酔科専門医ができたわけですが、それ以来、ど 方法だったわけです。 んどんいろいろな学会が苦労してできました。それは独自 それには限界があり、標榜といっても、厚生省としては に作られたのですが、あまり独自だと形が整わないので、 それをいじるのは大変だということで、自由標榜制はその 主だった学会が集まり、お互いに協調しながら専門医をつ ままにしておいていいから、そういう診療をどういう専門 くろうということになり、協議会というのができました。 医がしているということを表せばいいではないかという それで専門医を育成するような足並みをそろえたわけで ことで、専門医広告にいこうではないかと、機構と厚労省 す。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 そしてその学会が認定したものに対しては、医学会、医 できるということです。このような概略ができたわけで 師会、認定医制協議会の三者が追認するような形で、三者 す。 この学会を認定する条件が問題になりました。 承認という形で動きだしました。 これが認定する大まかな条件です。法人格を持っている。 各学会の協調の上で三者承認という形で、たくさんの専 会員数が 1000 名以上で、8 割が医者。その学会として 5 門医ができるようになったわけです。これは学会がきちん 年以上の活動実績があること。あとは外部からの問い合わ と試験をするなどしてやろうという形で動きだしました。 せができる、専門医の条件を公表、5 年以上の研修、適正 ちょうどそれが動きだしたころに国が専門医広告を認 な試験、このようになっています。 可してくれました。これは厚労省が勝手にやったと言われ これはほとんど外形基準であり、結局質は問われていな ていますが、実際には、厚労省としては協議会が一生懸命 いわけです。だから学会の活動がきちんとしていて、この やっているから、それをサポートする意味で専門医広告を ような形で専門医を認定するなら、あなたの学会は専門医 許そうではないかということだったと思います。現実には を育成する学会として認めると。これは規模だけあれば簡 国が認定した学会の専門医については広告ができるとい 単に専門医を認定できるということになってしまいます。 うことで、勝手に学会がつくった専門医を届け出さえすれ 質は全く保証されないということになってしまうので、こ ば広告できるような形になってしまったのです。 こで一斉に各学会は法人格を取り、しかも会員を増やした このときの「広告できる専門医」は、実際は規制緩和の り、いろいろ苦労があったようですが、たくさんの学会が 一環としてやられたわけです。 専門医をだっとつくられたということになります。 最初は厚生労働省告示 158 号 26 号、 平成 14 年 3 月です。 厚労省も一方的に悪かったわけではなく、厚労省の最初 これは国が専門医を直接認定するわけではなく、専門医を の認可の条件の中に、 「認定に際しては学術団体の意見を 認定してもよいという学会を認定するということです。だ 聴取」というのが入っていたのです。しかし、これがあま から認定された学会が専門医を育成すれば、その専門医は り有効に働かなかったので、外形基準だけで学会を認定し 専門医であるということを広告してもいいということで てしまったということになってしまいます。ここが悲劇な す。それについては専門医を認定する学会の条件が決めら のです。 れていました。この条件に合えば認めるということで、認 「学術担当の意見を聴取」が何を意味しているかという められれば学会の専門医として名乗って広告することが と、専門医機構と医師会がしっかりと評価をしてくれれ Advanced Clinical Training-network Report 177 178 ば、そちらが「うん」と言ってくれれば厚労省も認定する はっきりさせなければいけません。これは当たり前のよう という形を含んでいたのです。しかし、学術団体がきちん に思われていますが、今 52 学会のうち、この医師像が明 とした意見をできるほどの組織になっていなかったので 確に出されているところは実際にはほとんどないのです。 す。そのころ機構はまだそれほどの力を持っていなかった どういう医者で、どういうことまでやれるということが ということになってしまいます。ですから、機構の意見を しっかりと分からないと、国民に説明もなかなか難しいの 一応述べましたが、厚労省がそれを聞いてくれなかったの ですが、はっきりしていない、まだ薄ぼんやりとしている で、結局、外形基準だけで、たくさんの学会が認められて というところです。 きてしまいました。 それから誰が見ても、この制度の下でやられていれば信 その結果、去年 9 月で 52 の専門医が広告できるようになっ 用していいだろうというような、社会に耐えるような制度 て、大混乱になってきたということです。 をつくらなければいけません。これは大事だと思います。 9 月の段階でこれだけの専門医が広告していいというこ この制度をつくるという意味では、今日、こういう組織が とになっていましたが、これは分からないし、しかもこれ できて検討されるということは非常に意義あることだと だけたくさん乱立してきて何が何やら分からないという 思います。 ことで、国民の方も名前が挙がってもあまり重視しない もう一つは専門医をつくっても、専門医が勝手に自分は と。施設認定など、いろいろことで効いてくるので、実際 こんなのができると言うだけではなく、やはり社会に対し には意味があるのですが、国民としてはそれほど当てにし て役割を果たさなければいけません。それは国民に平等な ていないという状況になってしまいました。 医療の提供体制をつくらなければいけないので、これは専 そこで、もう少し社会が認めるようなきちんとした専門 門医が社会に出て、われわれは専門医であるということを 医にしなければいけないということで、あらためて認定機 問う代わりに、責任も果たさなければいけないということ 構がきちんとした働きをしようということになってきて、 です。それは結局、専門医があまり偏在するということで 機構としては専門医の質を評価するというところを重視 はなく、専門医の数と適正配置が非常に大きな問題なので しなければなりません。外形基準だけでやるとどんどん増 す。あまり都市部に専門医が偏在していると、国民に平等 えてしまいますから、その中でしっかりとした質が保証で の医療を提供することはできません。適正配置をするため きるというものをどのように見極めていくかという作業 には学会として、あるいは組織として、相当の力で人を配 に入ってきたのが現在の状況です。 置しなければならない、そのような仕組みをつくっていか 続いて大事なところ、今日お話しできるところはこの辺 なければいけません。これは現在でも全くできていませ です。専門医制度の整備、社会が認めるような専門医制度 ん。専門医制度は本当に緒に就いたところです。 をつくらなければいけないということです。学会がしっか どういう制度にしなければいけないかということで、各 りしたものをつくりましたと言っても、社会としては第三 学会が独自におやりになったのですが、それをなるべく統 者的なところがきちんと評価して、この学会がつくった専 一的なものにして、しかも社会の評価に耐えるようなもの 門医なら大丈夫ですよと保証するような機関がなければ にしていかなければなりません。せっかくつくっても、社 ならないので、専門医機構はそういう役割を果たしたいと 会が認めないようなものではいけないので、機構として専 いうようになって、現在に至っています。 門医制度をつくるのだったら、このような形で整備してく 社会的な評価に耐えるような制度とはどういう要素が ださいという目標を作っており、今回第 3 版になりました なければいけないかというと、まず各学会が専門医をつく が、だんだんと内容を深めてきています。 りますが、それはどういうことができる専門医なのかを 概要の中に要求していることはかなりたくさんありま 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 す。こういう細かなことをずっと要求していって、それが いうことを強要するのかというと、結局、こういうことを 実現できてこないと、なかなか社会が認めないでしょう。 やりなさいという目標は立てられていますが、大事なのは 「研修制度の整備」では、「研修方法・内容」の一つ一つ 研修の結果、その目標に達したかどうかで、制度があって を明確にしていかなければいけません。相当考えていただ も達成度の評価がなければ意味がないのです。その目標に きたいと思いますが、専門医機構としては初期臨床研修に 達したという、その達成の評価は指導医がしていかなけれ はあまりタッチしていません。後期研修だけです。ですか ばなりません。指導医にはかなりの役割があるのですが、 ら「初期臨床研修を含む 5 年以上の研修」ということで、 達成度評価をするという意味で、指導医の下でしなければ おおまかなことにしています。 いけません。 それから、研修に入ったという開始登録はほとんどされ それから、学会としていろいろカリキュラムがあります ていません。しかし、専門医の数を調整したり、適正配置 が、研修を行う個々の施設の中で、それぞれをこなすため を考えていったり、認定施設を考えるときには、専門医に の施設としてのカリキュラムがなければいけません。これ なろうという人がプログラムに入っていることが分から などもぼつぼつできてきていると思います。 ないと調整がつかないので、専門医研修に入りましたよ、 それから、これもあまりできていません。認定施設と、 今、何人ぐらいのドクターが専門医を目指しているという それに付随した関連施設がたくさんあります。基幹施設で ことが分からなければなりません。これはやってほしいと も幾つか連携しているところもあるようです。基幹施設 機構としては言っているのですが、まだ完全にできていま 間、あるいは関連施設間で研修プログラムがうまく組まれ せん。 ていなければいけません。このプログラムがあった上で、 「認定施設で指導医の下での研修」が必要で、指導医が 基幹施設と連携施設が話し合いを持って、カリキュラムを どういう指導をするかということです。これも内容が十分 達成できるような方向にならないといけませんが、このプ にできなければいけません。指導医になる人はどういう人 ログラム制もまだほとんどできていません。頭の中では考 なのか。今、実際指導医になれる人が本当にいるのかと思 えられているようですが、こういうものを考える上で、今 います。ですから、指導医をどのように育成するか、まず 回のプロジェクトは非常に意味があるのだろうと考えて この辺の問題からはっきりしてもらおうと思っています。 います。 指導医がいて、その指導医の下での研修。これはなぜこう それから、到達目標がはっきりしていかなければいけま せんが、そのときに研修方略を明示しなければいけない、 これがまだできていないのです。こういう研修を目標にし ているということが言われていますが、その目標達成のた めに、どういう方法でこの目的を達成しますかというと、 まだ明記されていません。昔から医局の中で伝統的にやら れてきた方法でやるということでは、社会はなかなか認め ません。研修方略をどういう形でやります、あるいは学会 が責任を持って「この物に対しては学会の中で研修をやり ます」 「講習会の中でやります」でもいいのです。「この面 に関しては指導医がやります」など、はっきりと研修の目 標が決められているので、その個々の目標を誰がどういう 形でやるかという方略が示されないと絵に描いたもちに なってしまっています。 試験の実施はされていると思い ます。 今、機構の中で立てている目標で、大体このようになる だろうと思います。当初、数年前にこれを出したときに も、各学会ともそうだろうなということで了解してくださ いました。しかし実際に重んじられているのは、診療技術、 手術、治療技術などでした。こういうものこそ専門医の仕 事であるという意識が非常に強かったと思います。ですか ら医療倫理や医療安全、IC の実施、人間関係の構築、医 療問題などもきっちりと身に付け、理解している人でない と認めない、これは各学会のカリキュラム、プログラムの 中に書かれていたかもしれませんが、実際には実行されて いません。今でもそうではないかと思って心配しています Advanced Clinical Training-network Report 179 るとき、先ほどお話ししたように、試験をして更新ではな いので、しっかりとした研修をしなければいけません。5 年の間に講習なり、何かあったときに身に付けていただか なければならないのは、常にその医療分野の最新情報を得 るような企画を実行しなければいけない、それから医療倫 理に関するものは必須である、それを重視していただきた いと思います。 内容が伴っていれば、学会の中でしていただいてもいい ですし、どこでもいいと思います。学会の中でおやりに なっても構わないし、講習会を開いても構わない、どこで しても構わないけれども、単位制にしていただいて、少 なくとも年間 10 時間以上の研修受講は最低ではないかと が、こういうものがきっちり教育されたり、実施されてい 思って提示しました。しかし、これについては理事会の中 ないと、社会の評価にとても耐えられないと思います。 でも意見が多少違っているのですが、10 時間というのが それから、日本で今やっている専門医のシステムは 5 年 指針の中に出たり消えたりしているあたりが多少問題で ごとの更新になっていますが、その 5 年ごとに試験をして す。 更新していくというのが一番よいと言われます。しかし実 これは社会の意見、マスコミの意見など、いろいろあり 際に 5 年ごとに試験をするというのは、現実的にはあまり ます。最低 10 時間ぐらいの研修はしていらっしゃると思 意味がありません。そこで試験よりは生涯教育の仕組みを うのです。ですから、それを何かの形できちんとやりまし しっかりとして、卒後、医療をやりながら常に研究マイン たよと言っていただけさえすればいいと思うのです。それ ド、または勉強をしていって、それで資格を確保できるよ には、ただ学会に参加しようなどというのでは誰も全く信 うな単位を取って、更新が行われていくという方が内容的 用しません。参加賞で単位をあげるなどという仕組みには にはいいだろうと思っており、現在、日本の専門医制度の 全くできないのです。ですから集会の中で受講しなければ 中では 5 年ごとに試験をする必要はないと思っています。 いけないプログラム、シンポジウムを受講したことがきち 試験はやらなくていいけれども、しっかりとした生涯教育 のプログラムを確実にこなさなければいけない、これはな かなか難しい問題ですが、一応そのようになっています。 試験は今、大体このようにされています。しかし筆記試 験では、先ほどありましたが、到達目標のどこを筆記試験 でやろう、どこを口頭試問で仕上げよう、これができてい ないのです。特に医療倫理の問題、医療安全を試験してい くというのは非常に難しいだろうと思うのです。しかし、 どこかでしなければいけません。医療倫理を筆記試験でや ろうといっても、多分できないのです。医師会で暗記物の ような試験をしても全く意味がないと思います。それより は口頭試問をきっちりしてもらいたいとお願いしている のです。 しかし、口頭試問は試験する方も大変だと思います。医 療倫理には正解などないのです。だから試験といっても、 正解など要らないわけだから、あまりにひどいことだけ チェックできればいいというぐらいの試験だったらでき るのではないかということでお願いしています。これはぜ ひやってもらって、ここがしっかりしないと、技術はいい かもしれないが人間性が駄目、考えがおかしいような専門 医では駄目だと思います。社会はそのように見るので、そ れに耐えられないだろうということで、試験も明確なもの にしていただいて、しかもこの辺がきっちりできる試験を していただかなければいけません。 資格を取ってから 5 年ごとに更新するのですが、更新す 180 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 んと確実に証明できるようなものでなければなりません。 ればいけないときに、他の専門医に委ねるべき診療内容に これはかなり行われてきました。卒後セミナーや学会の教 適切な判断を行える。これは専門外であると思ったら、適 育講演などが特別企画になって、それを受講すると、そ 切な専門医にタッチすることができる、送ることができ れで初めて点数が取れると。その受講も入り口と出口で る、そういう判断ができる人を基本診療領域専門医としよ チェックしたり、非常に厳しいことをしておられるところ うということです。 もありますが、それぐらいのことをしないと、学会の参加 これは一般の方の専門医の認識とは違っているのです。 証には意味がないことはマスコミの方もよくご存じです しかし、厚労省が最初にやろうと言ったのはこれだったの から、それではとても駄目だなという時代になっていま です。今までは自由標榜だったから勝手にしていたので す。それで、せめて 10 時間やってくればいいということ す。それを、こういうことができるような人だと、きちん ですが、今、ここに達しているところはないのです。 とやることになりました。 今後の問題としては、結局アウトカムで、治療なりを もう一つは特定診療領域専門医です。これは特定の疾 どのように公開していくかということです。更新に当たっ 患、特定の病態、あるいは特定の診療技術、検査技術、治 て、その人の診療実績なり、外科で言うと申請時期などが 療技術、そういう特定の能力を持った優れた専門医という はっきりしているので、そういうものをどのように公開し ことです。一般の方はこれを専門医と呼ばれます。一般の ていくか、これはまだとてもそこまでいかないということ 方が専門医というと、あるものに対してものすごい能力を になっているのですが、考えていかなければいけない問題 持った人、これを専門医というような印象が非常に強いの で、避けては通れないと思います。 です。 もう一つは、どういうときに資格を停止、剥奪するのか、 しかし、医療レベルをきちんと上げて、自由標榜を少し これはなかなか難しいです。学会が認定した専門医の資格 でも良くしようとすると、まず基本の診療領域をきっちり を剥奪する、自分のところで認めておいて、自分のところ するのがよいだろうということで、これを国民の人に十分 で剥奪するというのは、学会としてはできないかもしれま 理解していただかなければいけないと思っているわけで せんし、どうしても甘くなってしまうかもしれません。そ す。 こで、ほかの組織をつくって、どういうことをしたときに 領域も広いですから、この数は当然限られてきてしまう 資格認定取り消しをするか。実際は機構もまだ十分できて のですが、今は基本になるような専門医の領域を考えてい いません。一応規定にはなっていますが、十分な形には なっていないので、その辺はまだ問題ですが、ぼつぼつそ の辺ができてきたということです。 今、情けないことに機構で一番行き詰まっているのは専 門医の医師像です。各学会もそうでしょうが、機構として 専門医の医師像をきちんと出すことがあまりできていな いのです。専門医の医師像がなぜできていないのかという と、専門医の区分がなかなかできないのです。 今、われわれがこれがいいだろうと考えているのはこう いうことです。基本的な診療の領域専門医を考えましょう と。これはその領域の診療全般にわたる最新の医学知識と 標準的な診療を行える能力。また、他科の診療を受けなけ Advanced Clinical Training-network Report 181 て、具体的にはこれが基本的な診療領域の専門医です。日 本には大体これくらいの専門医の人がいます。 この辺は非常に問題があって、この辺のちょっとした問 題がなかなか解決しないためにクリアできておらず、実は 「機構は何をしているのだ」としかられているところはこ こなのです。これが基本であるかどうかという問題でもめ てしまって、情けない話です。 ですから、これだけの専門医が日本にいるのですよと。 さらに、この人たちの中で非常にスペシャルな専門技術を 持った人が特定の資格者で、これがたくさんいらっしゃい ますよと。それは一つ一つの基本になるような診療領域の 専門医の資格を持った人が、さらに上の資格、副次的な資 格としていろいろな資格を持っていらっしゃる。しかし基 本になるのはこれなのですというものをきちんと決めな いと、整理ができないのです。 そういうことで言うと、たとえばアレルギー専門医とい うのは基本医療の範疇に入らないのです。今、耳鼻科の先 生、アレルギーの専門医がいらっしゃるとまずいかもしれ ませんが、例えば耳鼻科の方、眼科の方でも、アレルギー を専門にしている方がおられます。それから呼吸器など でも、ぜんそくの疾患を持っている方がおられます。そう するとアレルギー全般を専門にしている方が果たしてい らっしゃるのか、そういうものが本当に適切かなというこ 182 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ともあるのです。アレルギーはもっと広い領域で横断的に りやすいと思います。これは一般外科的なものをする専門 関係しているので、基本ではないでしょう。アレルギーと 医と、それからさらに四つの細かな部分に進む専門医もお いう特定の病態に対する特殊な才能を持った先生で、基本 られます。だから外科専門医も四つです。外科系の基本的 的には耳鼻科の先生がアレルギーの専門知識をトレーニ な診療専門医としては、今は五つを考えています。 ングしましたという形に分けていって、そういう基本にな 内科の場合は元から認定内科医がありますが、それがな るものと、もう一つ、ある特定の診療技術になるものと、 い代わりに、内科専門医というのを総合内科専門医という その二つを分けていかないと、それを一まとめにしては分 形に変えていただきましたから、それで形がすっきりした 類できないだろうと思います。この分類がなかなか決まら ということです。 ないのですが、今年の 5 月には確実に、何が何でも決めよ こんなことで現状は来ているわけですが、今お話しした うとしています。 ように、形は何となくできてきましたが、研修試験の細か 内科の領域なども今はこうなっています。初期臨床 2 年 なところをどのようにしていくか。構造、形ばかりできて で、大学へ行って、内科医 2 年で、そこで認定内科を取っ きて、研修の方法、プログラムの作り方、実際の現場でど たらサブに行く。この人たちが内科領域の基本的な診療領 のように指導して研修をしていくか、一番大事なところが 域の専門医という形になります。 ほとんどまだできていません。しかし、その細かいところ けれども、この中にリウマチや感染症などが入ってきて までを機構が決めるべきではないと思います。機構は概略 しまっています。歴史的にもなかなか難しいので、この辺 の枠を作って、ここから先は各学会なり各大学なり、ある は仕方がないかと思っています。本当は分類の中にそぐわ 組織なりがしていただくべきだろうと思って、機構として ない部分もありますが、これが日本の基本的な専門医とい は「もう少し詰めてください」とお話しします。できてき うようにしたいと思います。 た段階でそれを見せていただいて、 「これならいいですね」 外科の専門医も同じです。内科は認定内科医ということ という評価をさせていただきますが、機構の方からこうし で、これは専門医ではありませんから、標榜の意味もあり なさいと、そこまではなかなか言えないと思ってとどまっ ません。ただ、外科の場合は、 「外科専門医」というのが ており、あとは制度が充実してくるのを待っているという ありますが、これはできれば「総合外科専門医」や「一般 状況です。 外科専門医」という名前にしていただいた方が本当は分か ついでに私は外科ですから、外科のことを少し述べさせ Advanced Clinical Training-network Report 183 ていただくと、外科というのは内科と違って技術研修があ るので、少しやりにくいところがあります。 手術、技術指導、資格認定をするわけですが、外科の場 合、手術の訓練をどのようにするかということが非常に問 題になってきます。何となくやっているというのではなか なかうまくいかないので、要素としては、その人に合わせ て手術をどのように設計するか、どのような手順で、安全 にきちんとやっていくか。その一つ一つの技術、こういう ものをつくっていきます。 これは家を建てる設計屋さんが設計図を引くようなも のです。 工程を管理する人たちは、どういう手順でやれば安全で あり、しかも無駄がなくできるかという役割です。 もっと詰めていただいて、それで日本中に広めていただく 他に実際に大工さんがかんなを削るような技術の役も と、この制度は、枠はできましたが、その中身、どのよう あります。 に実際にやっていくかというところが身に付いてくると、 これを分けて訓練していく、評価するようなことを考え 制度も本格的になってくるのではないかとして期待して ないといけないだろうと思います。その一つ一つに研修方 います。 略がなければいけないのです。 ありがとうございました。 これは座学で、こういうものを勉強しなければいけませ ん。自分で勉強しなければいけないものもありますし、学 会が指導しなければいけないものもあります。それはどこ かできちんと明確にしなければいけません。 質疑応答 (野村) どうもありがとうございました。時間も迫ってい もう一つは、プロセスについてもあまりはっきりされて るのですが、幾つかご質問を受けさせていただいてよろし いません。どのように訓練するかということです。トレー いですか。どなたか忌憚のご意見をおっしゃってくださ ニングの方法は研修方略として示されていません。 い。どうぞ。 指導医の下での実地技能訓練となっていますが、ではど ういう形で実技を指導するか、これもできていません。 (Q1) 千葉大の田邊です。非常に興味深いお話をありが もう一つは、手術に限らず、ほかのものもそうですが、 とうございました。1 点だけお聞きしたいのですが、現在、 標準化しなければいけないということです。 外科医で、正式な一般外科医や総合外科医という名称の方 結局、外科医に限らず、自己裁量の部分があるので流儀、 は日本にはいらっしゃらないですよね。先生のおっしゃっ 伝統、教室の方針などが標準化を非常に邪魔しているの ている総合外科医というのは、実際に、具体的に臨床の場 です。けれども、これを何とかクリアしないと、いつまで でどのようなことをどのレベルまでやれる、あるいはやる も自己流でしていたのでは許されません。それにはきっち ことを想定されているのでしょうか。 りとした、サイエンスに基づいたアートでなければいけな いというように、言葉では盛んに言われます。どうも日本 184 (高崎) 総合外科医の医師像ということですか。これはど はアートの部分が非常に多くて、サイエンスの部分が。た こかできちんと線を引かなければいけないと思いますが、 だ、外科の医療というのは、エビデンスベースドになりに 日本が非常に特殊なのです。消化器外科というのが独立し くいところがあって難しいのです。しかし、難しいと言っ ているところが非常に厄介になっており、アメリカですと ていては駄目で、そこをクリアしなければいけないと思い 一般外科医(ジェネラルサージェリー)の中に消化器外科 ます。 も消化管もほとんど入ってしまっているのですが、日本は もう一つ、ほかの訓練と実地訓練との違いというのは、 そこが分離してしまったので、そうすると一般外科は何を 結局、失敗が許されないことです。ほかの分野と相談して やるのかということになってしまって、はっきりしていな も仕方がないと思うのは、失敗が許されないからです。 「失 いということもあるのです。 敗を恐れず挑戦すること」などというトレーニングは成り 総合外科といったときには、今までの一般外科とは多少 立たないということは、ほかの分野にもよく伝えてあげな ニュアンスが違って、いわゆる第一線の外科をやるような ければいけません。だから外科は難しいのです。従いまし というニュアンスになるのではないかと思いますが、はっ てどのようにできるかなと思っています。 きりはしていません。外科学会も、外科の専門医の医師像 外科にはまだこんなに問題があって、全然片づいていな というのを出してくださいと何回もお願いしたのですが、 いと思います。これは各分野同じだと思いますが、さらに なかなか出てこないのです。 「これは一般外科医を想定し 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ている」という形でしか言ってくださらないので、分から として持っておられるという形で育つのではないかと想 ないのです。 定しているのです。頭の先からつま先まで、すべての疾患 ただ、現実的には、小さなけがを処置したり、アッペ、 を漢方だけでやるという方がたくさんいらっしゃるとい ヘルニアをやる人がいないのです。消化器外科はアッペ、 うようになれば、また変わってくると思いますが、現実は ヘルニアをやらなくなってしまっているのです。そうする そうではないのではないかと思ってやっているわけです。 と誰がやるのかというと、確かにいらっしゃらないので す。それから、いろいろな場面で外科が対応する場面はま (Q2) 確かにわれわれの学会でも、基本領域の認定医な だまだあるのではないかと思いますし、現実には、地方に いし専門医を取った後の専門医制度をつくっているので、 たくさん病院があったとしても、消化器外科、循環器など 先生のおっしゃるとおりだと思いますが、私が聞きたかっ があっても、一つ一つを専門医でそろえていくというのは たのは、サブ領域の中に漢方が入っていなかったので、機 ものすごく人数が要ることなのです。そうするとスタッフ 構ではそれを考えておられるのか、考えていないのかとい のメーンになる人が専門医を取っていればいい。兵隊さん うことが気になったので質問した次第です。 ではないのですが、そこで動く人は、それらのすべてのも のをトレーニングしたジェネラルサージェリーが、実際に (高崎) 今日出した表の中でですか。あれは機構として、 はアシストしてやるというような意味合いになるのでは 第一段の基本的な診療領域の中には入っていないのです ないかと思っています。 が、まだまだたくさんあります。今、70 くらいの機構に 加盟しておられる学会がありますが、その中の 30 ぐらい ですので、まだまだ今から増えていくと思います。 (野村) まだまだあると思いますが、時間なので終わらせ ていただきたいと思います。 このプロジェクトの一つの大きな目標が、それぞれの大 学、あるいは関連したところで後期研修医を育てるための カリキュラムを、お互いの刺激によって充実させていくと いうことですので、今日の先生のお話はそれに関係してい る皆さんの大きな参考になったと思います。どうもありが とうございました。 (田邊) ぜひそういった外科医が育っていただければと 思います。どうもありがとうございました。 (高崎) ぜひ私たちも知りたいところなのです。 (野村) あとお一人の方。どうぞ。 (Q2) 東京女子医大東洋医学研究所の佐藤と申します。 機構の考え方を示していただいて、ありがとうございまし た。ただ、われわれが関係している漢方専門医のことがサ ブ領域の中に出ていなかったので、漢方の専門医に関し て、機構ではどのように考えておられるのかをお聞きした かったのです。 (高崎) 漢方の専門医も特殊治療の専門医ということに なってしまっています。いわゆる需要にももちろん関係し てくるだろうと思いますが、内科のいろいろな領域の方が 漢方を取り入れてやっておられます。ですから、基本的に は内科を基本として持っておられる方が漢方の技術も副 Advanced Clinical Training-network Report 185 第 2 部 パネルディスカッション「専門医研修 の取り組みと大学間連携」 会に、また患者さんに提示したらいいかということに尽き 司会: 偏在と言われている、例えば診療科の偏在、地域偏在など 前野 哲博(筑波大学附属病院 総合臨床教育センター もかなり根本的解決ができるということで、地域医療の将 副部長) るのですが、専門医制度を整理すると副次的にも、二つの 来のあり方と絡めて、専門医制度も考えた上で整備すると パネリスト: いうことで、厚労省の専門医制度に対する受け止め方が変 村岡 亮(厚生労働省 臨床研修審査専門官) わってきました。 廣瀬 昌博(島根大学医学部附属病院 病院医学教育 一つの理由は、初期臨床研修医の見直しで、いろいろ地 センター長) 中居 康展(筑波大学附属病院 事業推進コーディネー ター) 原 一雄(東京大学医学部附属病院 総合研修セン ター 講師) 清水 孝徳(千葉大学医学部附属病院 総合医療教育 研修センター 特任講師) 齋藤 洋(東京女子医科大学病院 総合診療科 助 教) 三瀬 順一(自治医科大学附属病院 卒後臨床研修セ ンター 准教授) 域医療のことが問題になったのですが、初期の臨床研修で それを解決するということについては、かなり限界がある ということがみんな分かって、興味はどんどん後期研修に 移っています。 もう一つは総合医です。病院総合医、総合診療医、また は家庭専門医については、臓器別専門医とはまた違うエン ティティして、これを特に地域医療のファーストラインと して認知し、これを整備するということについて、少し動 きが出てきたと思います。大きくその 2 点についてお話し したいと思います。 それから現専門医制度の根本的な課題として、まだまだ 臨床能力本位でなく、アカデミック偏重の認定基準が特に (前野) 第 2 部のパネルディスカッションを始めます。今 内科系にあると考えられます。 回のパネルディスカッションは「専門医研修の取り組みと さらに付け加えて、後期研修レベルでは、初期研修レベ 大学間連携」と題し、これまでの事業の展開、今後の取り ルで見られる以上の若手医師の都市集中が見られますが、 組み等についてディスカッションしていきたいと思いま 先ほどの話にあったように、数値データはまだはっきりし す。今日は時間も大変限られており、できるだけたくさん ていません。この辺のところのエビデンスをきちんと固め のパネリストの先生方にご発言をいただきたいと思って ることが課題だと思っています。 いるので、こちらの方でテーマを設けました。一つは専門 一番下が国家試験合格者で、約 8000 名です。それから 医の養成について、一つは大学間連携について、その意義 初期臨床研修定員が一万数百名です。ところがその上にな と現状、および今後に向けてのディスカッションをしてい ると、スペシャリティ、サブスペシャリティを見ても、定 きたいと思います。 員という概念、プログラムの内容が全く不明です。従って、 最初に、第 1 部で高崎先生にご講演いただきましたが、 何人が研修するのか全く分からないのです。このことがポ 厚生労働省の立場から村岡先生にご発言いただきたいと イントです。 思います。よろしくお願いいたします。 (村岡) 村岡でございます。よろしくお願いいたします。 高崎先生から包括的な素晴らしいお話があったのですが、 厚労省の中でもいろいろなことが起きており、そのことを かいつまんでお話しいたします。 どうしてかと申しますと、1.5 倍医師を増やせという話 があるのですが、結局、いくら増やしても二つの偏在問題 については全く解決しないわけです。なぜかというと、医 師というのは自由裁量で働き場所を決めるので、仕事が余 りきつくなくて、そこそこお金の入るところに医師が移動 結局、専門医の質の担保、ならびにそれをどのように社 186 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 してしまう可能性があります。ですから、この二つの偏在 問題を、若手医師が自分の定着先を考える時に考慮に入れ これが健全に機能すべきだということは変わらないので る専門医研修レベルで解決していかないと、どうしても偏 す。厚労省もきっかけを作ろうと、二つほどお節介を焼い 在は解決できないと思います。 ています。 1点目は情報提供です。今、初期臨床研修制度ですべて のプログラムの内容は公開されています。それと同じレベ ルで後期研修の情報公開を始めました。問題は、現在は都 市部に形の整った後期研修プログラムが集中しているの で、現状でプログラムをフルに公開してしまうと、都市部 だけのプログラムを紹介してしまうということになり、都 市集中を助長する可能性があるのです。 ただし、後期研修プログラムの明文化と情報公開は大切 で、例えば 2 年間の初期臨床研修が終わった後、自分のプ 基本的に今でもこれは変わりません。国はプロフェッ ログラムを探すときに、研修医2年生は病院単位で探すの ショナルな団体が”Professional autonomy”で自己コン ではなく、専門分野単位で探すのです。例えば、小児科、 トロールしてほしいと思っていますが、いろいろ難しい問 産婦人科、精神科、全国でどんなプログラムがあるかとい 題があります。 うことで探すので、それに応える形で情報提供のシステム を管理していくことが大事です。 2 点目は、日本専門医制評価・認定機構に対する財政的 な支援です。学会全体を横断的に統括して専門医制度を改 善しようとしている、高崎先生のいらっしゃる機構に対し て強力にバックアップをしています。この機構の年間予算 はもともと 2000 万円だったのですが、厚労省は今年度さ らに 2000 万円を付け加えて、倍の 4000 万円で統合的な動 きをバックアップするように支援しています。 今後の台風の目は、病院総合診療医、家庭医療専門医など の総合医という専門性の取扱いです。これも三つの学会 先ほど高崎先生がお話しなさったと思いますが、学会は に分裂していましたが、今は統合的に、一つの流れになっ 本当に美しい心で自分の学会を大きくしようとします。本 て、統一的な専門医制度創設へ動いています。厚労省も将 当に日本人の美しい心でみんな自分の学会をもり立てよ 来的には、こういう専門性を持った方々が地域の一線で活 うとするのです。ところが全体を見るとこれがうまくいっ 躍して、医学部を卒業した何割かはこういう専門医の資格 ていないというのが現実だと思います。だからこそ専門医 を取っていただくということを想定しているようです。以 制度に対する期待が大きいわけです。最近世論が高まって 上です。 きて、厚労省も何とかしなければいけないということで、 最初の流れを作る部分のイニシアティブを摂るように、だ んだん態度が変わってきたわけです。 ほかの先進国の様子を見ても分かるように、”Professional Autonomy”ということが尊重されなければいけないし、 (前野) ありがとうございました。厚生労働省の最新の動 き、および要点についてお伺いいたしました。 これから大学連携についてお聞きしていきたいと思い ますが、廣瀬先生には第 3 部でまた詳しくご説明いただき Advanced Clinical Training-network Report 187 たいと思いますので、5 大学のそれぞれの取り組みについ があります。要は勉強したいというオープンなマインドを て、大学間連携の実情および意義について、お一人ずつご 持っていれば、どんな境遇にあってもそこから学ぶことが 発言いただければと思います。 できるということで、他者と交わることで今まで想像もつ まず中居先生からお願いします。 かなかったような事柄を習得することができ、それが将来 のキャリア形成につながっていくというような理論があ (中居) 筑波大学で事業推進コーディネーターをしてい るそうで、まさにこういう会も、そういう機会があってこ る中居と申します。まず、大学との連携事業というのはや そ、初めてチャンスがそこかしこで生まれていくことが期 る意義があるのか、いろいろ聞かれることがあるのです 待できるのではないかと思います。 が、私はすごく大事な、やる意義があると考えています。 実際に私の経験では、こういう機会があって、初めて筑 私自身の少ない経験ですが、全く違う施設、違うところで 波大学の前野先生をお招きして、東大病院でセミナーを行 同じ釜の飯を食う経験というのはものすごく重要で、極端 いました。何が言いたいかというと、東大病院は総合診療 なことを言うと、私の専門は脳外科医なのですが、手術の 的なマインドを持った方はかなりいらっしゃるのですが、 ときの布の掛け方、メスの持ち方、箸の持ち方から違うと 総合診療を専門にするという方の数は少ないわけです。前 いった環境に身を置いて、実際の自分の育ってきた環境を 野先生は総合診療を専門とされており、東大病院も今後、 もう一度見直すことはものすごく良い経験になりました 総合診療医を養成するプログラムを予定しているのです し、その中で良いものを持って帰ってくる。その中で、も が、その中に筑波大学や自治医大、千葉大、女子医大の先 ちろんこれはまねしてはいけないという経験もありまし 生方とも連携していく機会をつくれればと思って期待し たし、そういったものをすべて統合した状況で、その人な ています。 らではの、自分としての良い医療を模索していくという点 それから、短期的にも長期的にもそうなのですが、交流 で、このような取り組みが行われるというのは非常にいい することで他者が入ってくると、それなりに緊張感を持つ ことだと思います。 というか、最近、指導医や研修医の評価というのは、360 今、十数年前に戻って、こういった取り組みがあるなら 度評価や他者評価が大事だと言われているのですが、自分 ば、ぜひよその経験、自分の経験があるという認識のとこ のところの診療科だけでやっていると、なあなあというこ ろで、5 大学の中には非常に良い施設、指導医がたくさん とはないと思いますが、そこに他の大学からやって来る人 おられるので、そういった先生のところで、いわゆる手術、 がいることで非常に緊張感を持って、お互い評価するとい 国手の技を見てくる機会は、今からでも行ってきたいぐら うことにも意義があると思っています。 いですが、そういった経験が得られればと思っています。 ただ、休日もこのように集まって、先生方の貴重なリ 実際に筑波大学の方では、この事業を通して血管造影の ソースを使ってまで効果のあるところまで持っていける シミュレーターを共有し、昨年から特に脳外科、循環器科、 かどうかというのは、今後の努力次第だと思っています。 放射線科といった科で共同で運用しています。千葉大学の 以上です。 脳外科の先生に講師していただいたりして講習を行って おり、非常に良い結果が出ています。 (清水) 千葉大学でこの事業のコーディネーターをして あとは短期的な交流が少しずつ進行しているので、実際 いる清水と申します。私の専門は消化器外科です。今年度、 には歯車がやっと一つぐらい動いたところなのですが、来 千葉大で行った本事業の中身ですが、私が主催して、特に 年度以降はぐるぐると回っていくようになっていけば非 外科系のセミナーが多く、その中の一つにブタを使った切 常に素晴らしい企画になるのではないかと考えています。 開方法なども含めた、外科の基本手技をいろいろな大学の 若手の外科医の先生に集まってもらって行いました。 188 (原) 東京大学の総合研修センターの原と申します。私は 交流の意義ですが、私の外科もそうなのですが、歴史 この話を聞いたときに、正直、リアリティがどのくらいあ がある外科教室などは一挙手一投足に非常に決まり事が るのかと疑問を持っていたのですが、最近ようやく意義が あって、それが何十年と続いてきている歴史であり、それ 少しずつ分かり始めてきました。この事業の趣旨として はそれで非常に大事なことだと思いますが、どこの病院に は、各大学、大変高名な先生、その道では権威の先生が多 出ても自分の科の先生たちだけ手術しているというのは、 いと思います。ただ、その中でも得意・不得意があるの 時代に即した進歩はなかなか難しいという側面がありま で、相互の得意・不得意を補完しながら、うまくキャリア す。そういった他施設の手技を見るということも、外科医 をデザインしていくようなプログラムを作れれば非常に にとっては非常にためになるのではないか。 いいのではないかという絵が描かれて、まさにそのとおり 実際にそのセミナーには自治、女子、千葉の新人 1 年目 だと思いますが、それはこれからの課題として、そこまで の外科医が 3 名ずつ集まりまして、同じ外科を中心に、み いかなくても、最近のキャリア形成の理論として、クラン んなで執刀者、前立ち、助手というのが他大学で交ざって ボルツ先生が言っている Planned Happenstance というの やったところ、やはりいろいろな議論が出ました。「うち 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 はこうやっていないけれども、どうしてそうやるの」など、 す。 今まで自分は当たり前だと思っていたことを否定される というか、違うやり方があると言われると、ちょっととま (三瀬) 自治医科大学の三瀬と申します。人的交流の意義 どうのです。 「どちらがいいのだ」「これはケース・バイ・ として、外科系では、他人の釜の飯を食うというような技 ケースで、いいことも悪いこともある」 「われわれの方が 術の交流などがあると思いますが、私の関係しているとこ いいのだ」とか、いろいろ考え直す機会がありますし、手 ろで申しますと、総合診療や地域医療などでは、今もお話 技という面で、外科では交流に非常に大きな意義がある があったように、ローテーションすればできるというわけ と、あらためてセミナーを通じて感じました。 ではなく、十分条件ではないのですが、必要条件になると あとは単純に、ほかの施設に自分の同期の知り合いがい 思いますので、そういうときに互いの大学病院の各科、関 るというは、ほかの学会に行って顔を合わせたりする機会 連病院を教育研修、試験で相互利用できるのは非常に魅力 がその後ずっと続くわけですし、やはり心強いし、情報交 的です。幸い 5 大学、われわれは少し遠いのですが、ほぼ 換の場にもなるので、その意味では比較的早い時期に他大 通勤圏内で、ちょっと頑張れば短期間ローテーションだっ 学の友達をつくるという意義もそのときに感じました。以 たら通勤できないこともないと思いますので、相互交流は 上です。 非常に意義があると思います。 さらには、かなり個人的な意見ですが、自治医大のある (齋藤) 東京女子医科大学の総合診療科の齋藤洋です。女 栃木県は、千葉大学や東大からから来ている方が結構多い 子医大でコーディネーターをさせていただいています。ま 地域ですし、診療圏として 3 分の 1 ぐらいは茨城県西部で ず他大学へ行く意義に関して、私は内科系の医者ですが、 す。そういうところで各大学の先生方とお会いすることも 例えば専門医、サブスペシャリティを取るときに自分の症 ありますし、共同で病院を支えていることもあります。そ 例が足りないので、ほかの大学にそれを補いに行くという ういうところがかなり危機に陥ったりしているところも パターンもあると思います。5 大学、どちらも大学病院な あるので、各科、地域の病院を支えるようなコンソーシア ので、専門領域の症例が足りないということはあまりない ムにつながるような将来性があるのではないかと思いま とは思います。ただ、大学の同じ診療科であっても、得意・ す。以上です。 不得意はあると思います。例えば各診療科のホームページ をのぞいても、どこも「うちは症例豊富で」と書いてあっ (前野) ありがとうございました。このような 5 大学の現 て、弱点のようなところはホームページ上からでは見当た 状と取り組み、コメントを踏まえて、廣瀬先生、村岡先生 らないのです。ですから、この後皆さんでお集まりいただ にコメントいただきたいのですが、よろしいでしょうか。 く分科会などでは、「うちはちょっとこういうところが足 りない」 「少ない」というところを率直に言い合っていた (廣瀬) 島根大学の廣瀬と申します。どうぞよろしくお願 だいて、自分のところで少ない症例を補える、それが一つ いいたします。今回の大学病院連携型の事業は、一つには、 の意義かと思います。 私どもの大学のある島根県のような地域での大きな問題 あとは 5 大学の地域的な分布としても、患者さんの層が である医師不足が、この事業の始まりと考えています。後 かなり違うのではないかと思っており、女子医大のこの辺 のところでまたお話しさせていただきますが、昨日も今日 に住んでいる方と筑波や自治の辺りに住まわれている患 も、新聞紙の一面、あるいは社会面に医師不足の問題があ 者さんでは層が違いますし、持っている病気も違うと思い りました。実は島根県は東西に非常に長い県であり、今、 ます。そういう意味でも、普段診ていない患者さんを診ら 西部の方では脳神経外科医がいないという状況が起きて れるという点でも意義があると思います。 います。そういったことで、東関東・東京の 5 大学の連携 あとは単純に人脈という意味です。私も女子医大で研修 が抱える問題と、島根県や鳥取県のような山陰地域での問 医のころ、3 カ月ずつローテートするのですが、3 カ月間 題は、また少し違うような感じがしています。 お世話になった先生には今でも何かあったらすがりつこ そういう意味では、この連携の意義も若干変わってこよ うなどと思っていますし、他大学に人脈ができるというこ うかと思いますが、実は島根大学の前身の島根医科大学 とは非常に大きいと思います。 は、昭和 48 年から始まった新設医科大学のうちの一校で 具体的に女子医大が今までやったのは、セミナーとし す。新設医科大学はたくさんできましたが、その検証をし ては循環器小児科、あとは女性生涯医療センターのセミ たという話を聞いたことはありませんし、当時は医師不足 ナー、それから総合診療部が千葉大学と合同でカンファレ の解消ということで新設医科大学ができたはずですが、以 ンスをしています。また、救命救急の ICLS の講習会。実 前よりも増してひどくなっているような状況にあると考 際に人が見学、研修に来ていだいたものとしては、脳外科 えます。 の手術、放射線腫瘍部への見学、そういったものが今のと そういうことを踏まえると、この連携は医師不足を支え ころ、われわれのしたこととして挙がっています。以上で るものでなければならないのです。私も実は元外科医なの Advanced Clinical Training-network Report 189 ですが、新設医科大学では症例数がない、あるいは大きな のような仕組みが必要なのか、今後どのように進めていけ 外科の病院を関連病院として持たないといったことが原 ばいいのか、そういうことについて各大学のコメントをい 因で外科トレーニングができないということで、後のとこ ただきたいと思います。 ろでもご説明しますが、私が外科の医局を辞める理由はそ では、中居先生からお願いします。 こにあったのです。そういったことで、本事業の意義は非 常に大きいのではないかと考えています。症例数の不足等 (中居) 実際にこういった事業をしていることを若いレ を解消できるように、この事業が推進できればいいかと思 ジデントの先生たちにお話しすると、それだったらぜひ います。 行ってみたいという感触をいただくことが多いのです。実 もう一つ、5 大学の先生方からそれぞれ現状をご報告し 際には、ではどれくらい行ってみたいのかと聞くと、2 カ ていただきましたが、大学病院連携型の推進事業は、全国 月、3 カ月で行っても見学で終わってしまうから、その場 的に見ると、大学病院連携という大学病院間の医師の交流 で何かを学んでくるのだったら半年以上行きたいという が十分できているとは聞いていません。一見、島根大学の 話を聞くわけです。 場合、大学病院間で昨年度と今年度を合わせて 23 名が一 ただ、大学に戻ってくる前までは、大学には人がたくさ 応動いているわけです。その数は少ないように思います んいて、さぞかし人の余裕があって暇なのだろうと思った が、全国的に見るとまずまずの数と聞いています。そう ら、そんなことは全然なく、実際には研修医の教育や学生 いったことで、今日はその対策、方策をこちらでお話しす の指導など、臨床以外の仕事が膨大にあって、人を送る余 るようにという宿題をいただいています。以上です。 裕があるのかというと、この人を出したら今度はその穴埋 めをしなければいけない、その穴埋めをどうやって出すか (前野) 村岡先生、お願いします。 など、人を出すことに関して非常にたくさんのハードルが あることが分かってきました。 190 (村岡) 今、5 人の方のお話を聞いており、キーワード ですから、簡単に人の交流などと言うけれども、人を一 は、やはり他流試合や人脈の形成ですね。相互に依存して 人動かすだけで、その人のいろいろなものがあります。も いるという話でして、廣瀬先生がおっしゃったように、今 ちろんやる気がなければ駄目ですし、外に出すのが恥ずか はかなり大きな大学でも、単一の大学だけで症例数を確保 しい人を送るわけにもいかないという気持ちもあります。 する、またはバラエティを確保することはできないわけで もっと現実的なことを言うと、例えば今度所帯を持ったか す。そういう意味で、先ほど高崎先生のお話にあったよう ら遠くへは行きたくないとか、経済的にもいいところへ行 に、プログラムを確立するという意味では、そういう裏打 きたいなどと言っていると、切りがないわけです。最終的 ちを持った上でプログラムをやらなければいけないわけ に、やる気のある人がいて、上の方もぜひ回したいと思っ ですから、ぜひそういうものが相互に依存し、かつ相互依 ていて、その相互の利害関係をうまい具合に調整するとし 存しなければならないような形でプログラムを組んでい たら、ある部分では研修医たちの能動的な行動ももちろん ただければと思います。 必要ですが、最終的にはトップの行動がどうしても必要不 もう 1 点は、関東のこの広い地域において、今、医療は 可欠になってくるのではないかと思います。 都道府県の行政単位を越えて動いています。先ほど茨城県 それらをどうやってなだらかにうまくコーディネート の 3 分の 1 は自治医大の方に医療圏がシフトしているとい していけるかというのが今後の課題ではないかと思いま うお話がありましたが、機能的医療圏と行政的医療圏はか すし、今回参加していただいている先生方と、各診療科の なりずれています。そうすると専門医制度を考える場合、 トップの先生方たちにも、ぜひ交流の橋渡しを考えていた 専門医を配置は、すなわち地域医療のことを根本から考え だいて、より良い研修。自分がレジデントや後期専門医を ることですので、ぜひこのプログラムを考える上でも機能 持ったときに「こんな研修だったらぜひ受けたい」という 的な地域医療、症例の集まり方を考えた上で、プログラム 研修を組んで、それを考えていくのがわれわれの仕事かな を組んでいただきたいと思います。以上です。 と考えています。 (前野) ありがとうございました。どの大学も意義を感じ (原) まず、短期の研修やセミナーなどで交流をもっと活 ていて、やりたいと思っているということです。この事業 発化して、ボトムアップ型でやっていくということ。それ も 2 年目が終わろうとしていますが、現実には、様々な研 から何カ月以上ということになると、人事の問題があるの 修会、能動的な交流が始まっているのですが、例えば数 で、どうしてもトップダウンの仕組みでは無理だと思いま カ月や 1 年単位で行って研修するような本格的な人的交流 す。これまで、いろいろなシミュレーターを購入しており、 は、まだまだ実績としては乏しいというのが現状です。そ 例えばシミュレーターの講習会をやると非常に評判が良 れには各大学の事情が大きく関係していると思いますが、 くて、若い先生が嬉々としてやるのです。今度、新生児の これから大学病院間連携事業を進めていくに当たって、ど 心肺蘇生のシミュレーターも買ったのですが、募集をかけ 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 たところ、学内だけではなく、5 大学から応募が殺到する また、女子医大は診療科ごとに横のつながりが乏しいと という状況なので、時流に乗った魅力的なプログラムをや 言われています。むしろ、こういう会があるので、隣の医 れば、短期の講習会ではいくらでも人材交流が活発化でき 局よりは、ひょっとしたら隣の大学の方と交流できるので ると思っています。 はないかと思っています。以上です。 問題は数カ月単位で行く交流です。こちらはそれなりの 責任が持てるような立場のところに働き掛けていかなく (三瀬) 自治医大でもキャリア支援がまだまだ弱いこと ては駄目で、正直に言うとまだそこまでいっていないので は同様です。先生方が指摘されなかったことを付け加えて すが、今後は数カ月単位で、その枠をどういう形でつくる みたいのですが、一つは身分の調整のことで、3 カ月ぐら かということについて考えていきたいと思っています。 いのときは、そのときの給料をどちらが持つか、給与関係 諸経費がありますし、年金などは途切れ途切れになってし (清水) 交流がなかなか進んでいかないポイントとして まうのではないかなど、いろいろ細かいことがあります。 は、今お話があったように、トップの先生方の認識があま こういうことを解決するのに、事務の方には裏方で非常に りつくれていない、それから手を挙げる下の若い医師たち 苦労していただいて、5 大学で顔を突き合わせてやってい にも情報が十分伝わっていないという、この二つが非常に ただいています。そういう調整の中で、定員のほかに受け 大きいと思いますので、来年度 22 年度はトップの先生方、 入れる余裕ができるなど、そういう新しい仕組みや枠組み 5 大学、5 人の教授の先生方がお集まりいただくような席 を事務レベル、人事レベルでつくっていただけると、われ を設けるようなことができればと思っています。 われは動きやすいし、これに乗れば短期間、身分が保障さ 具体的には、学会の終わった後、30 分くらいの時間を れて行けますよということが言えるかと思います。本日は 頂いて、ここにいるコーディネーターが出掛けていって、 医者ばかり並んでいますが、事務の方の調整力は結構大き 顔を合わせて認識を深めていただくと。 いかと思っています。以上です。 それから新人の医者、例えば耳鼻科なら耳鼻科に今年入 局した人たちが 5 大学で、学会で一席設けて懇親会のよう (前野) ありがとうございました。では、このような 5 大 なものを開いたらどうか。そのようにして横のつながりを 学の取り組みをお聞きになっていただいて、また廣瀬先 トップ、そして下の方でも深めていけば、その交流の中か 生、村岡先生からコメントいただければと思います。 ら、どこそこに半年行ってみたいというニーズが初めて生 まれてくるのではないかと。ほかの大学では何をしている (廣瀬) 5 大学の先生方のお話を聞くと、われわれが当初 という情報も入ってこないうちは、なかなか手も挙げづら 考えていたこととほぼ同じです。要するに診療科のハード いと思いますので、友達の輪をつくっていくことでニーズ ルが高いとか、多施設に行ったときの給料はどうなるの も出てくるのではないかと考えています。それを来年度は か、バイトが途切れて生活ができなくなるなど、そういっ 何とか始めていければと考えています。 たことをわれわれも一つずつクリアしてきました。それは 次の話の中で詳しいことは言えないかもしれませんが、ま (齋藤) 女子医大では 5 大学連携事業をいかに知ってもら うかということに苦慮しており、初期研修の場合は初期研 た情報交換会があるというお話ですので、そういったとこ ろでもご紹介したいと思います。 修センターが一括して研修医をまとめていろいろなアナ ウンスをしているのですが、女子医大だけではないと思い (村岡) やはり手を挙げて実際にプログラムに参加する ますが、後期研修医、専門医研修というのは各医局にすべ 行く先生に対して、正確かつ不安のない情報の提示が必要 てを委ねているので、私の口から各専門研修医に、こうい と感じます。もう一つは学部長、病院長、診療科長など、 うネットワークがあるのだよと話す機会はあまりないの トップマネジメントに対する投げ掛けを通じたトップの です。ちょうど 3 年目に各診療科に入局するときに、女子 本プロジェクトに対する組織コミットメントということ 医大では二日間みっちりガイダンスをしているので、今年 に尽きるのではないかと思います。それは具体的にどのよ からは私もその場に参って、こういう事業があるという宣 うにしてやっていったらいいかということを、具体的かつ 伝をして、それで研修医側の方にはこの事業を認識しても 緻密に詰めていくことが必要だと感じました。 らいたいと思っています。 あとは診療科によって、5 大学の事業に関心のあるとこ (前野) ありがとうございました。今日ご列席の皆さま方 ろと全く関心を示してくださらないところがあるのです にも、コーディネーターを中心として 5 大学事業の運営側 が、本日、女子医大からは医局長レベルの先生なども大勢 は何とか人事交流を実現したいと思っています。もし各大 参加されているので、主任教授に近く話ができるような医 学で、これなら可能かもしれない、あるいは今日この後の 局長の先生にもこの事業について、人事交流のことを考え 分科会でできそうというものがあれば、先ほどお話があっ ていただければ促進できるのではないかと思っています。 たように、事務的な手続きも含めてコーディネーターを中 Advanced Clinical Training-network Report 191 心に対応するので、各大学のコーディネーターに申し出て 例について掘り下げた臨床経験が得られるのではないか いただければと思います。 と思います。もっともそれは、首都圏でも地方でも、恐ら 今日はこのようなテーマで議論を進めていますが、今度 く変わらないかもしれません。 はパネリスト同士で何かご発言、ご質問等はありますか。 ただ、先ほども触れましたが、それでも症例が不足する 廣瀬先生。 場合がありますし、大切なのは指導医の資質ですね。この 先生はこのオペが得意だ、この部分は少々弱いというのが (廣瀬) 5 大学のコーディネーターの先生方は皆さん、患 ありますから、まさにこのネットワークが担う責任だと思 者さんを持っていらっしゃいますか。持っていらっしゃる いますが、お互いの病院の良い点は生かして、かつ弱いと 方、手を挙げてください。やはりこれが重要だと思います。 ころはほかの施設で補っていくという機能的連携を持っ 実は私は患者を持っておらず、体はちょっと重いのです た上で、きちんとプログラムを形にしていき、ゴールを描 が、フットワークは軽い方がいいかと思います。 いていく、そういう構図が今後必要になっていくのではな いでしょうか。それとともに、地域医療の将来のあるべき (前野) ありがとうございました。なかなか忙しい臨床 で、マンパワー的にも余裕がない中で、それにパワーを注 姿をそれにオーバーラップさせることができれば理想的 だと思います。 ぐというのも難しい中で頑張っているわけですが、ほかに 何かご質問は。 (前野) ありがとうございました。ほかに、パネリストの では、今度はフロアからご意見を伺いたいと思います。 方でも結構ですが、もし何かご発言があれば。では清水先 ご質問やご意見等がある方はマイクの前へお進みくださ 生。 い。どんなことでも、質問でも結構です。ありませんか。 どうぞ。 (清水) 実際に私がコーディネーターをしていて、外部の 大学から受け入れをコーディネートしてくれと言われた (Q1) 東大病院総合研修センターの堀田と申します。一 ときに、先ほどからお話が出ている給料の面が非常に大き つお伺いしたかったのは、専門医研修制度と地方の医師不 な壁としてあって、余裕があるときには受け入れができる 足に関係したことなのですが、先日、専門研修医に話を聞 けれども、例えば来年度など、われわれの定員はいっぱい く機会があって、非常に興味深いことを言っていました。 になってしまって、給料の捻出が非常に難しくなると。 その人は現在、東大病院で専門研修をしているのですが、 最初のころの取り組みで、短期だったら送り出す側が 1 年目、2 年目の初期研修を福岡県の某有名研修病院でし 払って、長期になったら受ける側が払うというお話があっ ていたそうです。ところが、専門研修医で大学へ戻ってき て、ほかの大学間連携でもそのようにしているという話を てしまいました。理由を聞くと、やはり向こうで専門研修 聞くのですが、短期と長期の差も非常にあいまいですし、 医は、症例数や専門技術などで大変厳しかったということ そういう取り組みよりも、むしろ期間を限定せずに送る側 なのですが、専門研修を地方に根付かせるには、そういっ がずっと持つというように一律決めてしまった方が、交流 たところの整備というか、地方でも専門研修をしていけ の意義をこの 5 大学でしっかりとご理解いただけるなら る、専門医が取れるシステムが必要なのではないかと思い ば、送って何かを得て帰ってきたところには必ず、そちら ますが、このことについて何か展望があったらお聞かせい の方が利益があるのかもしれませんし、そういう意味で、 ただければと思います。 送る側が給料を持つと決めてしまう方が、交流としてはス ムーズになるのではないかと思っています。 (前野) 特にどなたに対しての質問でしょうか。 (Q1) 村岡先生にご意見を。 ほかの方々のご意見を聞きたかったのですが。 (前野) 今の議論は、制度の設計のときに大変議論したと ころなのですが、大学によって事情も違いますし、清水先 192 (村岡) 行政がこういうことに対して対処しだしたのは 生は今、千葉はいっぱいとおっしゃいました。ということ 最近で、基本的には学会に任せたいというところが本音で は、千葉大で外へ行きたいという人は、逆に千葉大が予算 す。私見も交えて言うと、地方でも患者さんは同じように 的にブレーキをかけるということにも、千葉大では予算枠 病気になるわけで、症例はたくさんあるのです。病院の集 がもういっぱい、予算がないということは、千葉大のレジ 中化・重点化という言葉があると思いますが、ではどこの デントがどこかへ行きたいと言っても、千葉大がブレーキ 施設にそのような症例が集積しているのだろうか。集積し をかけることになりかねないと思うので、それは大変難し ただけでは教育にならないので、教育的機能を持たせるた い問題だと思います。ただ、聞いてみると、大学病院間連 めには、ではどこに専門医(指導医)を配置するのかとい 携事業はいろいろなところでやっているのですが、ルール うことを考えます。そうすれば、地方でもかなりの数の症 はネットワークによって違うようなのです。その辺は廣瀬 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 先生、いかがでしょうか。 (廣瀬) 島根の 4 大学プログラムの場合、研修は最低 3 カ 月ぐらいは必要だろうということで、当初 3 カ月という期 間を決めました。特に 6 カ月を超えた場合には、そちらの 方で就職してもらった方がいいのではないかと。それで 6 カ月未満の場合には、所属の大学が給与を支払うというこ とを 4 大学で決めています。ただ、6 カ月でも、3 カ月行っ て 1 日帰らせて、もう 3 カ月というパターンも一度ありま した。そういった取り決めを 4 大学で行っています。 (前野) ありがとうございます。何となくわれわれの議論 と同じような議論をされたのかなという印象を持って聞 いたのですが、この話はこれまで何時間もしてきて、多分 また何時間もやるのではないかと思うので、またいろいろ 議論していきたいと思います。 フロアから何かこれだけ言っておきたいというご発言 はありますか。では松村先生。 (松村) コーディネーター側から、先ほどの清水先生のお 話もあるのですが、野球でも 1 対 1 トレードや金銭トレー ドなどがありますが、1 年間派遣するとなると、そこで働 く人材になるので、今日来ておられる各診療科の先生に は、できれば若い人、例えば 5 年生同士が半年間交代で行 くとか、1 年間交代で行くというのが、金銭的には大学の 持ち出しがなく、大学病院の中でも話が通るのではないか という議論もあったということだけ付け加えさせていた だければと思います。 (前野) ありがとうございました。それでは時間になった ので、ディスカッションを終わりにしたいと思います。今 回は、第 1 部の高崎先生の講演を受けて、5 大学事業につ いての取り組み、あるいは今後の方向性について、実際の 実務を担当しているコーディネーターを中心に現状と今 後について紹介していただきました。第 3 部では、われわ れも大変楽しみにしているのですが、先行事例というか、 先進的な取り組みを続けておられる廣瀬先生よりご講演 をいただきたいと思っています。どうもありがとうござい ました。 Advanced Clinical Training-network Report 193 第 3 部 特別講演 くお願いいたします。 演題 「『山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラム』の (廣瀬) 松村先生、ご紹介いただきまして、どうもありが 取り組み」 演者 廣瀬 昌博(島根大学医学部附属病院 病院医学 教育センター長) 座長 松村 明 (筑波大学附属病院 副病院長) とうございました。 初めに、このネットワークの関係者の方々にお礼を申し 上げたいと思います。松村先生から今ご紹介があった安倍 フェローとは何かと思っていらっしゃる方が多いかと思 いますが、実は安倍晋太郎外務大臣のときに、平成 4 年に なりますが、日米関係が悪化したときにできた日米交流の フェローシップでアメリカに行かせてもらいました。 それでは始めさせていただきます。 今回は宿題をいただいています。人材交流の現状、人材 交流を促進するための方策、人材交流による効果・変化が あったかどうか、この三つのことを東関東・東京のネット ワークで応用したいということをいただきました。今日は この三つを含めてお話しさせていただきます。 (アナウンス) 座長は東関東・東京高度医療人養成ネット ワーク事業推進責任者である筑波大学の松村明先生、お願 いいたします。 (松村) それでは第 3 部を始めさせていただきます。第 3 部は、私たちがしてきたネットワークの中で人材交流がな かなか進んでいないという話も先ほど出ましたが、廣瀬先 生のところでは「『山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラ ム』の取り組み」ということで、23 名という、かなり人 材交流の実績があるということで、そういうことについて もいろいろ教えていただければと思います。 最初に廣瀬先生のご略歴を紹介させていただきます。廣 瀬先生は 1985 年に愛媛大学を卒業されて、先ほどもご自 分でおっしゃったのですが、外科医として 17 年間臨床に 携わられました。その後、京都大学大学院の社会健康医 学系専攻の医療経済学分野に大学院生として入学され、 DPH(公衆衛生学博士)を授与されています。その後、 すぐに安倍フェローシップというもので、ハーバードのス クール・オブ・パブリック・ヘルスに、これは医者で初め てということですが、留学されて研鑽を積まれています。 その後、聖マリア病院の救命救急センターなどにも勤めら 194 れ、2008 年から島根大学の附属病院に新設された病院医 まず、なぜ交流が必要か。先ほどのシンポジウムの中で 学教育センターに就任され、医療安全管理や感染対策な も若干ご意見が出ていましたが、皆さん是か非かというと ど、組織横断的なコーディネートしておられて、現在はセ 是の方だったと思いますが、その理由。それから、私ども ンター長をされておられます。 の 4 大学プログラムの内容、実績、活性化のための対策、 医療経済から安全、卒後研修、いろいろなことを横断的 一番必要なのは何かということを申し述べさせていただ に幅広くされている先生で、われわれも今日はお話を非常 きたいと思います。 に楽しみにしています。それでは廣瀬先生、どうぞよろし まず、なぜ交流が必要かということです。島根県は東 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 京・関東からすると陸の孤島です。飛行機ですとわずか 1 に全部出ていくわけです。 時間半ほどですが、例えばここから東京に車で行くとした そういったことで考えてみると、県民所得は東京が第 1 ら、恐らく十数時間はかかるのではないかと思います。そ 位ですが、島根県、鳥取県、秋田県は下位の方になってし れか、新幹線もありませんし、中国山地を越えるのは非常 まっています。このような事情もあって、医師不足、いわ に大変です。 「やくも」という特急がありますが、岡山か ゆる医療の地域間格差が非常に広がっていると言わざる ら 3 時間 20 分程度かかります。 を得ないと思います。本来平等であるべき医療が、地域に それから東西に非常に長いことと、島根県特有のことと よって不平等になるというのは、やはりおかしな話ではな して、医療圏が東部に集中にしています。松江が二十数キ いでしょうか。そういったことでも交流が必要であると考 ロほど離れたところにあり、そういったことで医者が東部 えています。 に集中しており、西部の方が非常に医療過疎になっている その証拠を幾つかお見せしたいと思いますが、これは地 という現状があります。 域別の臨床研修修了者の帰学状況で、中国地域、四国地域 2 月 1 日と 2 月 4 日の新聞の切り抜きですが、 「西部医 というのは帰学者率が非常に悪いという結果です。 療を助けてくれ」ということです。こういったことで、新 設医科大学の医師不足の目的は達成できたのかと考える と、そうではないように思います。 島根県の各観光地ですが、私どもの病院は出雲市にあり ます。 先ほど厚生労働省の村岡先生ともお話ししたのですが、 「島根がつぶれるようでは日本がつぶれるのではないか」 と、私どもは非常に危機感を募らせています。 それを考えていただくときに、転入超過率というのを見 ていただきたいと思います。東京、兵庫、わたくしども島 根大学を含めた 3 大学プログラムの関係している秋田県、 島根県、鳥取県です。私どもの 4 大学プログラムは、兵庫 県の兵庫医科大学、神戸大学、鳥取県の鳥取大学、島根大 学が主管大学ということで、それから東京医科歯科が主管 をしているプログラムというのがあって、秋田、島根とい う 3 大学プログラムが同時に動いています。 これを見ると、やはり島根県、鳥取県、秋田県は非常に 転入が少ない、出ていくばかりです。 そういったことで、転入超過率ということもあるのです が、これを考えてみると、島根県から毎年 2700 人程度の 卒業した高校生が大学に進学するというときに、東京ある いは大阪等の首都圏に出ていくわけです。学費や生活費な ど年間 300 ∼ 400 万円を使うことになろうかと思います が、そういったお金も一緒に島根県から東京などの首都圏 Advanced Clinical Training-network Report 195 平成 20 年度の勤務医師の実態調査を見てみると、医師 の充足率において非常に悪化している状況が続いていま す。 島根大学における初期臨床研修医の推移を見たいと思 います。昨年マッチングが出ましたが、本学では 22 名と いうことです。下から数えた方が早いのですが、そういっ た状況が今も続いており、地域医療の格差の解消、医師不 足の解消をするために、大学病院連携型の推進事業をぜひ どんどん進めていけたらと思っています。 私は先ほどご紹介したように、元外科医です。平成 13 年 2 月 16 日に 74 歳の女性の結腸右半切除を最後に手術は していません。ご紹介がありましたが、京都大学で医療経 済、医療管理、医療安全などを学ばせていただいて、日本 の医療制度、特にこういったことをするきっかけになった 外科の修練システムについて考えてきました。幾つかの外 科系の学会でシンポジウムに参加させていただきました が、京都で行われた日本消化器外科学会の中で、特別企画 で発言させていただきました。そのほかに臨床外科学会で 2 回ほど発言させていただきましたが、これは新設医科大 学を卒業した医師の悩みです。そういったことで、やはり 外科研修には手術が必要だということで、どんなシステム を考えたらよいかということで発表させていただきまし た。 その中で、第 57 回の消化器外科学会総会の京都国際会 館で行われたものについて少しご紹介したいと思います。 ご存じのように新設医科大学は昭和 48 年からできてい ますが、その以前に秋田大学は昭和 46 年にできています。 いわば秋田大学も新設医科大学の一つと考えてもよいか もしれません。 大学病院を三つの群に分けています。いわゆる旧帝国大 学、新設医科大学、その他ということですが、新設医科大 学の手術症例数が非常に少ないというのがご理解いただ 196 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 けるかと思います。ただし、これは発表が 2000 年ですので、 平成 12 年のデータです。 愛媛県の主だったところの外科認定、あるいは消化器外 科の認定施設です。数えてわずか 14 しかありません。そ の上に、当然のことながら、愛媛大学は新設医科大学です から、実は瀬戸内海近辺は岡山大学の第一外科が病院のほ とんどを取っているような状況が続いていました。 そういった中でわれわれは外科の研修をしていかなけ ればならなかったのですが、これは私が 2000 年までに修 練をした実績です。恥ずかしくて見せられないのですが、 こういう現状を分かっていただかないと、外科の修練シス テムが必要だということが分からないと思いますので、あ えて出させていただきました。医療法人がほとんどです し、私は大学に在籍していたのはわずか 2 年です。2000 年までで、15 年ではありますが、実は大学院の 3 年間が あるので、12 年でたったこれだけです。 当時、臨床外科の方でこれを紹介したときに、山形か秋 田かのある先生が「あなたのところの教授は何をしていた んだ」というような質問をされて、全然答えられなかった ことを思い出しますが、こういったことが現状です。 それで卒後臨床研修センター等々を利用して、足りない 症例数を克服するためにほかの病院へ行って研修を積む Advanced Clinical Training-network Report 197 ことを考えました。 それで「都会と地方の協調連携による高度医療人養成」 それで日本消化器外科学会へ提案したのですが、 「マッ というのが東京医科歯科大学を主管大学として、秋田、島 チングプログラムを適用する」「修練を一貫性、継続性を 根を含む 3 大学プログラムとして今も進んでいます。 持たせ」、最後に「医師国家試験を合格した者すべてに過 不足のない修練プログラムを作成し、学会の責任において 文科省大学病院支援室の小林室長から頂いたスライド 修了させること」を提案させていただきました。 ですが、高度医療人養成システムは、皆さんご存じのよう に、お互いに得意分野で相互補完をすることで医療人を育 この学会終了後に即座に消化器外科学会の方に論文を提 てていこうではないかというのが趣旨です。ですから、得 出しましたが、こういう結果でした。今まで論文を書いた 意な分野で相手方の大学を助けるということです。 中でリジェクトされたのはこの 1 編だけです。「時期尚早 この図を見ていただくと、先ほどの消化器外科で提案さ である」 「コンセンサスが得られていない」ということで、 せていただいた図とよく似ているように思いますが、この 掲載できないという通知をいただきました。 ようなことを文科省も考え始めたということです。 こういったことで、交流が必要だと考えています。 昨年は大学病院連携型の推進事業で 21 拠点が採択され 今日の本題の 4 大学プログラムの内容に入りたいと思い ています。 ます。この交流についても、実は女子医大の方で、上塚先 生が会長をされて、日本医療・病院管理学会が昨年の 10 私どものところでは島根大学を主管大学として、神戸、 月 17・18 日と行われました。そこで 4 大学プログラムを 鳥取、兵庫医大というところで、「地域医療と高度先進医 紹介させていただきました。 療の融合による新たな教育システムの構築」というサブタ イトルで「山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラム」を実 初期臨床研修で東京医科歯科大学、島根大学は既に相互 施しています。 乗り入れをしていたわけです。これが今回の文部科学省の 198 推進事業のモデルになったという話も聞いていますが、こ 何度も繰り返しますが、相互補完を図り、魅力的な専門 のような相乗りのプログラムを実施していました。 医・臨床研究者養成プログラムを策定・実施することで、 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 地域医療も活性化していこうということが趣旨です。 質の高い専門医、臨床研究者、大学病院の機能強化、地 域医療へ貢献というのが趣旨です。 本プログラムは、それぞれの大学の中で地域連携を行う ことを推進していくということです。 私はこの中で 4 大学のプログラムコーディネーターとし て動いています。 このプログラムの実績について今からお話しさせてい ただきます。 4 大学プログラムのプログラム参加者です。登録者とい うことですが、われわれ島根大学は 60 名で、208 名。と ころが 3 大学は、東京医科歯科大学が 470 名で、全部で 565 名ということで、東京医科歯科大学は研修者の人気が 非常に高いということが数字に表れています。 われわれのところで実際に人材交流がどれだけできた かをお示ししたいと思います。 最初に島根大学から鳥取大学の皮膚科で交流が始まり ました。これが一昨年の 11 月です。それから島根から兵 庫医大の消化器内科、あるいは整形外科、それから兵庫医 大から鳥取大学、今年度は島根から整形外科、あるいは島 根から神戸ということで、小児科、循環器内科、それから Advanced Clinical Training-network Report 199 神戸から鳥取大学の小児科へ病理 3 名、逆に第 3 内科から 2 名と、このようなことで、全部で 23 名の人材が交流し 「今後の医師としてのキャリア形成にとても役立った」と いうポジティブな意見をいただいています。 ています。 では、どうしてこのようなことができたかということを そういった交流をしていただいた人たちの結果、皆さん非 お話しさせていただきます。 常に良かったというのが本当のところです。 平成 20 年度の活動です。プログラムの採択が 2008 年 7 島根大整形外科から兵庫医大、それから島根大小児科か 月に行われたわけですが、コーディネーター会議を 4 回、 ら神戸大小児科ということです。 フォーラムは 4 大学全体ですが、FD を 1 回、評価委員会 を 1 回、同一診療科間の交流会を 2 回、岡山で平成 21 年 200 研修者の声としては、「経験できない貴重な疾患や症例 度に第 1 回のコーディネーター会議、こういった活動を を経験できた」「他大学のスタッフと人的交流ができた」 行っています。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 既に五つほどやっているのですが、第 1 回目を昨年 4 月に 福岡で外科学会総会を、6 月に耳鼻科、8 月に消化器内科 等々の交流会を実施しています。 それから海外研修を開始することで、研修者のモチベー ションをより上げる、指導医の研修も必要ではないか、指 導医の中でもある程度実力のある先生についても短期研 修等で実力をより高めていこうという研修が必要ではな いかということになりました。 そのようなことで今まで交流してきたのですが、ここの ところで少し考えなければいけないことがあります。 これは平成 20 年度の研修医対象のアンケート調査です が、推進事業は皆さん知っているのです。ところが「コー 平成 20 年度に自治医科大学の梶井教授を委員長に、合 同評価委員会が行われました。 本プログラムの活動について、検証しなければいけない ということですが、その中で出てきたことは、プログラム に対する全体評価は良い評価をいただきましたが、その中 で問題点が幾つか出てきました。 研修前訪問は可能か、学術評価の研修方法の検討、ある いはコーディネーター間の交流方法等々の問題点が出て きました。 先ほどのスライドにも出てきましたが、同一診療科間の 交流が非常に有効であることが分かってきました。これは Advanced Clinical Training-network Report 201 202 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 スに参加したいものはありますか」というところで「ない」 という人が 6 割になっているのです。それから「この事業 をどのように知りましたか」というと、やはり説明会をし なければいけないことが分かります。 それから学生はどうかと見ると、これは 5 年生だけの回 答ですが、 「コースで参加したいものはありますか」とい うところでは 5 割近くになっています。しかし「いいえ」 も 4 割近いのです。もう一つ大事なことは何を重視するか ということで、 「指導の手厚さ」が 82%にも達しています。 もう一つは「研修内容の充実」と、「研修環境の充実」が 挙げられました。 平成 21 年度に指導医を対象にアンケート調査をしたと ころ、 「本事業に参加しましたか」は 4 割になっています。 「それはどのように決定されましたか」ということですが、 研修に参加させたい者がいたということと、研修者の方 から申し出たというのが回答で大きくなっています。しか し、中には医局内で仕方なく出したというところもありま す。 参加した印象はどうかというと、7 割近くの人が「良かっ た」という意見でした。中には参加できない場合がありま すが、 「該当者がいない」、それに次いで「医局の医師が不 足」が挙げられています。 「今後、研修の参加を検討されますか」と聞くと、 「はい」 と答えたところが 8 割近いということです。 こういう結果を見ると、やはりいろいろなことを考えて いかなければということです。 ここから実績を少し追加したいと思います。コーディ ネーター会議、合同 FD、病院内での FD もしましたし、 同一診療科間の交流会もしています。このようにいろいろ なことを試みてきました。 研修者の中には海外研修へ今年 20 名ぐらい行ったと思 いますが、島根大学は WWAMI というプログラムを引き 継いで研修を取り入れることで、診療科、指導医、研修者 のモチベーションを上げて人事交流に参加してもらうと いうことも開始しています。 その他の対策として、大学間交流に関する研修について 直接、教授のところへお願いに行きました。それから学会 の参加ですが、先ほどのシンポジウムのところであったよ うに、アンケート調査の場合には日時を書いていただかな いと、終わってからみんなで集まるということは皆さんな さらないと思います。ですから、空いたところに 30 分間 隔で丸印を入れてもらって、参加していただくということ をしました。 それから研修者とのインタビュー、交流済みの大学間で 意見交換をするということもあるかと思います。 結局、本プログラムによる交流は必要ではあるのです が、各診療科では医師が不足しているために行けないとい Advanced Clinical Training-network Report 203 いるかどうかということと、忙しくても医師や学生を指導 する熱意を持っていることが一番大事ではないかと感じ たところです。 この対策が皆さんにお役に立てたらよろしいのですが、 結局はこの研修、人事交流だけではなく、日本の医療全体 がレベルアップしないことには、この事業もうまくいかな いのではないかと思っています。 以上です。ご清聴どうもありがとうございました。 質疑応答 (松村) 廣瀬先生、どうもありがとうございました。島根 大学の取り組み、あるいは日本の全体の状況、それから研 修医の声ということでお聞かせいただきました。 それでは会場からご質問やコメントをいただければと 思います。 最初の取っ掛かりでちょっと質問させていただきます。 23 名交流されたということですが、今日は各大学の診療 科のそれぞれの責任者の先生にお越しいただいています が、どのレベルで決まるというか、教授同士の話し合いで 決まるのか、医局長同士の話し合いで交流が決まるのか、 その具体的なところはどうなのですか。 (廣瀬) やはり教授、あるいは診療科長間で話が決まると 思います。医局長では最終の決定権がないので、実は教授 不在の担当者会議というのも行っています。担当者会議で は医局長レベルの人が集まってきていて、皆さん、出した いのは出したいのですが、最終決定件はやはり教授にある ので、教授の意向が大きな壁になっていると思います。 (松村) 例えば耳鼻科で札幌でやったというのは、学会で 教授同士が集まったということですか。 (廣瀬) そういうことです。先ほどの札幌で耳鼻科の交流 会がありましたが、この交流が始まったのは、実はある教 授が、4 大学の中でも同じ分野、同じ診療科であっても、 顔も知らない場合があるということで、交流しようにも うのが本当のところだと思います。先日、研修医の大募集 取っ掛かりがないわけです。そうすると、その取っ掛かり をするためにプロモーションビデオを作ろうという話が をつけるためにわれわれコーディネーターが動くべきで 出たのですが、そこに参加していた研修者、臨床研修医、 はないかと考えて、それぞれの診療科で、主だった学会の 学生 5 年生・6 年生に聞きました。そうすると、プロモー 中で参加する時間、日時のアンケート調査を行いました。 ションビデオは必要ないという意見がありました。という それを返していただいて、その情報を 3 大学に送り、会う のは、学生時代に診療科を回っていて、診療科の内容をよ 時間を 1 時間程度つくっていただいて、そこにわれわれ く分かっているから、診療科のプロモーションビデオを見 コーディネーターと事務の方が出掛けていくという形を ても魅力のない医局には入りませんという意見が大半で した。 204 取っています。 (松村) ありがとうございました。大変参考になりまし ということは、結局、研修医も学生も実情を知っている た。 ので、各診療科がしっかりとした修練プログラムを持って 何かご意見やご質問ありませんか。会場に来ておられる 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 方も、われわれ手探りなので、お聞きすることがおありだ と思いますが、コーディネーターの中で、今のお話で何か ご質問はありますか。 (廣瀬) 松村先生、ちょっとよろしいですか。先ほどのパ ネルディスカッションの中で、患者を持っていないからと いう話が出ましたが、実は私は、安全管理、感染対策、医 療倫理、病院職員の研修・講習といったことを担当させ ていただいています。ですから、患者を持っていないから フットワークが軽いわけではありません。フレキシブルに 予定を作れるということですので、そこは勘違いなさらな いようにお願いしたいと思います。 (松村) ありがとうございます。ほかにありますか。 この後は筑波大学の説明もありますし、引き続き情報交 換会、懇親会にも少し出ていただけるということですの で、また後でいろいろなことをお聞きいただければと思い ます。 先生、今日は本当にどうもありがとうございました。 Advanced Clinical Training-network Report 205 (アナウンス) 引き続き、本事業の筑波大学コーディネー ターである阿久津博義先生より「 『東関東・東京高度医療 人養成ネットワーク』の取り組み」と題して、本事業を紹 介いただきます。 事例紹介「『東関東・東京高度医療人養成ネットワーク』 の取り組み」 阿久津 博義(筑波大学附属病院 総合臨床教育センター 病院講師) (松村) この発表では、今日来ていただいている担当の先 生方に、本事業のご理解と、来年度に向けてどのようにし ていったらいいのか、その辺のテキストも含めて具体的な ことをお話しいただければと思います。それでは、よろし くお願いします。 先ほど廣瀬先生から、連携事業に関する概念や概要はお 話しいただいて、当事業でも共通していることがあるので すが、5 大学の東関東・東京に位置する大学病院で連携し て、得意分野を相互補完し、それを利用して研修を充実さ せていくことが目的になっています。 初期研修が終わった研修医がそれぞれの大学病院に 206 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 入って、通常ですと自分の大学の関連病院、大学病院と ローテーションしながら最終的な専門医、卒後生涯教育に つながっていくのですが、その中で五つの大学が連携し て、ほかの大学も研修できるようなことが現実になればい いというのは、皆さまも既にご理解いただいていることか と思います。 実際、セミナーに関してはかなり動きだしてきたという 実感もあって、人的交流はなかなかうまくいっていないの ですが、取りあえず現状をお話しできればと思います。 まず、運営体制を整備する。それから研修プログラムの 正確な情報を研修医、後期研修医に公開し、周知する。3 番目としては、セミナーの開催。それから人的交流。これ はまだ始まったばかりですが、幾つか交流ができ始めてき ているので、その辺の現状をお話しして、あとは広報活動 り、それをインターネットで公開したことが一つの実績と ということで報告させていただきます。 して挙げられます。 こちらも先ほどの廣瀬先生のお話と同じなのですが、こ 実 際 の ホ ー ム ペ ー ジ で す が、5 大 学 ネ ッ ト ワ ー ク の の事業はコーディネーターを中心として、各大学の中のま ACT-network となっています。例えば「研修コース一覧」 とめ役をすると同時に、五つの大学の中の情報共有や橋渡 をクリックすると、5 大学すべてのコースが載っています。 し役というような役割を。私を含めたコーディネーターが 脳外科のところをさらにクリックすると、筑波大学があっ 担っていて、セミナーの企画や人的交流の情報共有のよう て、その下に 5 大学のコースがすべて載っているのですが、 なものをコーディネーター会議で行い、その後、最終的な まず「専門医コース」をクリックすると、大学病院とその 意思決定を合同会議で推進代表者や事務担当者も交えて 関連病院、どのようなところで研修できるかが分かるよう 決定するという形で運営してきました。 になっています。 実際にコーディネーターが、例えば人的交流の場合にど のようにかかわっていくかというと、これはホームページ にも載せてあるのですが、まず専門研修医から違う大学で 研修をしたいという希望があった場合に、当然所属してい る科の所属長の許可を得て、その後にコーディネーターに 相談していただきます。実際に今までも、恐らく研修医か らほかの大学へ行ってみたいというような希望はあった と思いますが、どうしても医局の壁のようなものがあって 教授になかなか言いだせないところがあるのですが、研修 医が教授に行ってみたいと言うきっかけにこの事業がな ればいいのではないかと。 さらに診療科長同士が、もともとそういったコネクショ ンのようなものがないと今までは難しかったのですが、そ のときにコーディネーターが橋渡し役になって、それを調 整するというような役割ができればいいのではないかと いうことで動いてきています。 大学間でコーディネーターが調整して、それから研修が 終わったら、研修医は元の大学に戻ると。研修中にもメン タルヘルスや研修のフィードバックなどでサポートがで きればいいと考えています。 先ほどの情報を公開するということです。研修プログラ ムを公開することは非常に大事なのではないかというこ とで、今まではそれぞれの科で特別のプログラムはなかっ たと思いますが、今回は連携プログラムということで、実 際に研修医がどういうことができるのか、もしくは専門医 取得にどのようにかかわれるのか、各科の中でコースを作 Advanced Clinical Training-network Report 207 ほかに救急専門医コースというのがあるのですが、この場 合、例えば既存の関連病院以外に東大や自治医科大学のよ うにほかの大学を回って最終的に救急専門医を取る、キャ リアアップにつながるというような情報を公開していま す。 実際にどのようなセミナーをしてきたかというと、まず それぞれの大学で、筑波大学でしたらインターベンション のシミュレーショントレーナー、東京大学は内視鏡手術、 それから超音波、画像解析、ワークステーションなどをこ の事業で購入して、それを使ったセミナーを行ってきまし た。 あとは自治医科大学さんのピッグセンターのような非 常に優れた、ブタを使ったセミナーができるようなところ は、そういったものも利用させていただいています。 それから、これはすべての大学がそうなっているわけで はないのですが、一つの大学のラボを 5 大学の研修医が自 由に利用できるような、限られたリソースを共用できるよ うな試みもしてきています。 実際にセミナーを 21 年度は 33 回行い、20 セミナーで 431 名が参加したということです。 いろいろなセミナーのパンフレットを各大学、関連病院 にも配付しています。 一例として、筑波大学のものになりますが、血管イン ターベンションシミュレーショントレーナーセミナーで す。かなり現実に近いような形でカテーテル操作ができる シミュレーターがあって、循環器内科、脳神経外科、放射 線科の先生方が参加したわけですが、参加人数は 79 名で、 年に 6 回行い、5 大学連携を活用して千葉大学から指導医 に 2 回ほど来ていただきました。また、ほかの大学の参加 者もあって、それから大学病院だけではなく、地域の医療 機関とも連携してやりました。医師だけではなく、看護師 や放射線技師といったコメディカルの方にも参加してい ただきました。 開催予定のものですが、救急・蘇生セミナーということ で、こちらは 2 回予定されていますが、AHA の修了証が 208 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 もらえるということでかなり人気があり、幅広い大学から 参加の応募が来ています。 はないかと思いますが、実際に今年度行われたものとして は、筑波大学から女子医科大学の放射線腫瘍科に行き、筑 波大学にないような治療を学んできたと。それから女子医 人的交流ということで、こちらが今後克服していかなけ 科大学の方に覚醒下腫瘍摘出手術を見学に行ったという ればいけないところですが、現況は長期と短期で分けてい ことです。 て、長期というのは難しいのですが、東京大学から筑波大 そのほか、筑波大学と自治医科大学の小児脳神経外科の 学の放射線の方に一人来られています。 合同カンファレンスということで、こういうことも一つの もう一つ、来年度の予定になりますが、筑波大学から東 交流としてはいいのではないかと考えています。 京大学の方へ研修が一人内定しています。いきなり長期と それから皮膚科の方では 5 大学の皮膚科間で手術予定を いうのはいろいろな意味で難しいと思うので、手っ取り早 共有して、手術見学が行きやすいよう、ナースのメーリン く始めていくには、短期の 1 日でも構いませんし、3 カ月 グリストなどを使った情報共有も行われています。 ぐらいまでのものが取っ掛かりとしては入りやすいので 実際の長期研修の方の感想をお聞きすると、東大から筑 Advanced Clinical Training-network Report 209 波にいらして、一般的な放射線科を幅広く回ったというこ とですが、施設による機械や患者層の違いがあるので、ほ かの大学で勉強したことは非常に良かったということで す。あと、東大の方ではルーチンの教育課程に含まれてい ないような消化管造影や超音波検査を研修できたという ことで、非常に有意義な研修になったということでした。 短期研修の一例としては、筑波大学から女子医科大学 に、覚醒下腫瘍摘出術というのは、筑波大学の方ではあま り行われていなかったのですが、そちらを勉強してきて、 実際にこの研修の後、筑波大学の方では女子医科大学の指 導医の方に来ていただき、同じような手術をしたというこ とで、研修医のみならず指導医、それから大学自体の医療 レベルの向上という意味でも非常に有意義なものだった のではないかと考えています。 あとは放射線腫瘍科の先生の感想ですが、筑波大学で はしていない治療を実際に見られたというのが非常に良 かったと思いますし、短期研修をきっかけにして人的なコ ネクションができると、今後長期研修などの人的交流に役 立っていくのではないかと思います。 広報活動としては、先ほどのホームページのことや、あと は合同フォーラム(GP フォーラム)などで発表したり、 研修医向けの雑誌に広告を載せたりしてきました。 今後、皆さまに全体会議の分科会ということで、各科の 先生方にお集まりいただくことになるわけですが、既に配 付している取りまとめ用紙に基づいて、何でもいいと思い ますが、いきなり 1 年行くというのはなかなか難しいと思 いますので、今提示したような手術見学など短期のもので も結構ですので、何かまとめていただくと。それから、あ とはミーティングの日程を決めていただき、とにかく意見 をまとめていただくということです。 こちらから提供できるものとしては、短期研修の場合、 数日間でしたら 5 大学間の旅費です。それから 3 カ月間の 場合は、筑波大学に関しては来ていただいた方の人件費を 負担することも可能です。 長期の場合ですと、出身大学の方にカンファレンスで行 く場合の旅費など。あとは、これはなかなか難しいところ があり、大学によって違うのですが、各科の定数とは別に 交流枠を確保している大学もあるので、この辺は事務方も 通じて、何とかサポートしていければと思っています。 基本的な考えとして、交流した後戻ってこないというの を非常に心配されている診療科長の先生もいらっしゃる と思いますが、必ず戻るというようなルールは守ってもら うようにすることが大事だと思います。その辺はご心配な く、とにかく交流をどんどん深めていくという方へ進んで いければいいかと思いますので、ぜひよろしくお願いしま す。 210 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 閉会挨拶 (アナウンス) 東京女子医科大学病院病院長の挨拶です が、本日は野村馨先生よりご挨拶をいただきます。 (野村) 永井院長の代わりに、ここで中締めというか、全 体会議、どうも皆さまお疲れさまでした。 この事業も 2 年目で、22 年度から 3 年目になり、いよ いよ中間評価を受ける年ですので、今よりもさらに一歩二 歩進んだ形で来年度の成果を上げていただきたいと思い ます。そのために、ぜひ分科会で意見交換をしていただい て、前へ進んでいただければと思います。その後、院長主 催の懇親会、意見交換会を設けているので、ぜひたくさん の皆さんのご参加を期待しています。以上です。 Advanced Clinical Training-network Report 211 第 2 回シンポジウム 第 3 部 診療科ごとの分科会の様子 212 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 Advanced Clinical Training-network Report 213 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク 第 3 回シンポジウム り道をしながらキャリアをつくっていくような気がして います。1 年 2 年 3 年ときれいに積み重ねるだけがキャリ アではないので、いろいろな経験をしながら、ぜひとも医 日時 2010 年 11 月 23 日(火)13:00 ∼ 17:00 師のキャリアを続けて、その中でいい医療人の連携を取っ 場所 東京大学鉄門記念講堂 ていただきたいと思います。また、若いだけではなく、50 歳を過ぎるとまた別の医者のキャリアというものがある、 開会の挨拶 専門医とはまた違ったようなものも、どこかでお考えいた 山田 信博(筑波大学学長) だければと思います。 それから、よく海外の人とお付き合いしていて非常に強 皆さん、こんにちは。休みの日の午後に、このように多 調されることは、キャリアの中でおのおのの先生方のモビ 数、東関東・東京高度医療人養成ネットワークの第 3 回シ リティ、単純に言えば、とにかくいろいろなところを移動 ンポジウムにお越しいただきありがとうございます。私自 しています。その移動しているということを、ある意味で 身、この東関東・東京高度医療人養成ネットワークの立ち は評価するということです。実際に移動して評価するため 上げに関与した一人として、このようにネットワークが活 には、今回は 5 大学が連携していますが、連携したおのお 発に活動していることを大変うれしく思います。 のの施設の、ある意味では質の保証が大変重要になってく 目的としては、皆さんよくご存じのように、医療にかか ると思いますが、ぜひとも移動することを怖がらずに、そ わらず、現在いろいろなものの情報量がますます増えてい れがまた皆さんのキャリア評価につながっていくのだと ます。そのスピードも速くなって、そして高度化して複雑 いうことをぜひお考えいただきながら、議論していただき になっているという中で、一つの組織だけで十分に、これ たいと思います。 からの若い研修医を医療人材として育てていくことに十 いろいろなキャリアは、実は紆余曲折して空白のときも 分応えていけるのかということが、問題意識としてありま あるかもしれませんが、人生の中で無駄な部分はほとんど した。その中で恐らく、これらの大学が協力することに ないと思います。学ぶすべてが経験になりますし、世の中 よって、あるいはいろいろな病院と協力して連携を深める の患者さんにとっても、医者としての深さというものを感 ことによって、なかなか一つの組織ではできないような意 じることになってくると思います。 義の深いことができるのではないかと期待しています。 そんなことを私の雑感としてお話しさせていただきま 実際に始めたときには、言うは易し、やってみるのは大 したが、今回のシンポジウムを通じて、皆さんがぜひ一緒 変かなというご意見がありましたが、お話を伺うと、少し に、大いに良い連携を深めることを期待して、私の挨拶と ずついろいろな連携が各部で始まっているようですし、ま させていただきます。どうもありがとうございました。 たこれからどんどん増えてくるというお話を伺っていま す。私自身、このような連携をするときには、特に情報量 (アナウンス) 山田先生、ありがとうございました。 がどんどん増えていって、複雑化して、そして資源の少な これより第 1 部基調講演に移ります。京都大学医学研究 くなっている時代には、お互いにあるところではハートを 科薬剤免疫学分野教授、川上浩司先生より「医学部卒業生 一つにして、協力を優先するということが大変重要ではな のためのキャリアデザインの多様性」と題してご講演いた いかと思っています。それがこの 5 大学の中でお互いに、 だきます。座長は東京大学医学部附属病院総合研修セン ハードルというものをまた少しずつ理解し合いながら進 ター講師、原一雄先生にお願いいたします。 み始めていることを大変うれしく思っています。 今日はキャリアということに話が進んだと伺っていま す。私自身、後期研修医、専門医のキャリアというところ 第 1 部 基調講演 には、従来は専門医認定、各学会が大きく関与しているわ 演題 「医学部卒業生のためのキャリアデザインの多様 けですが、もっと地域、病院、あるいは大学が意見を出し ていいのではないかと思っています。それはちょうど大学 で学位を取るのと同じように、若い人たちにとっては専門 医は大事なキャリアで、それに関して大学が当然質の保証 をしていくということも、ぜひ皆さんにお考えいただきな 性」 演者 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科 薬剤疫 学分野 教授) 座長 原 一雄(東京大学医学部附属病院 総合研修 センター講師) がら、議論していただきたいと思います。 キャリアというのはあまり急ぎすぎてもいけないかと 214 (原) それでは、恒例によりまして川上先生のご経歴を紹 思っています。実は私もつくづく感じるのですが、国際化 介したいと思います。 ということにも関係して、海外の若い人たちはもう少し長 川上先生は 1997 年に筑波大学をご卒業され、1999 年 い、いろいろな紆余曲折、あるいはいろいろなところに寄 に FDA(Food and Drug Administration)の生物製剤評 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 価研究センター、FDA のコアの部分かと思いますが、そ ゆる生物製剤、血液製剤、ワクチン、僕の専門は遺伝子治 こで審査官、研究官をされて、2004 年に東大、2006 年に 療や治療用ワクチンの行政審査と評価が仕事でした。 は京都大学と、各大学の医学部の教授を歴任され、2007 そういうことを IND reviewer というのですが、その後、 年より独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略セン 2004 ∼ 2006 年まで、東大の 22 世紀医療センターという ターの臨床医学副統括として活動されています。 講座で助教授を 1 年半ぐらいさせていただいて、その間に FDA の審査官と申しますと、昨今ではインフルエンザ 「シンガポールに来ないか」と言われて、シンガポール大 ワクチンや、日本でもドラッグラグやデバイスラグなど、 学に月に 1 回講義に行って、グリーンカードまで取らされ いろいろな問題があって、そういった問題に取り組むのは てやっていました。そうこうしているうちにお声が掛かっ 大変重要なお仕事だと思いますが、今日は臨床以外のキャ て、京都大学に移って、はや 5 年目になります。今年は先 リアパスという観点から、それからわれわれ臨床医にとっ 月から、京都大学全体の理事補に選任されて、大学全体の ても非常に興味深く聞かせていただけるのではないかと 運営のようなことにも携わらせていただくことになりま 思います。 した。 それでは川上先生、よろしくお願いします。 ご紹介ありがとうございます。京都大学の川上でござい ます。私はちょっと場違いな気もするのですが、今日お招 きいただいたことを大変感謝しています。 たくさん話したいのですが、30 分ということで、もと もと早口で、駆け足になってしまいますが、自分自身の キャリアというか、今までの経験、どういう研究をして、 どういうことを大事だと思っているかということを簡単 にお話しさせていただこうと思います。 私は 1997 年に筑波大学を卒業しており、それから、実 家が横浜市内だったので横浜市立大学大学院、耳鼻咽喉 科・頭頸部外科にすぐ入りました。その 3 年後に FDA に 留学することになり、そこで最初はポストドクター、その 後「おまえは非常に優秀だから、もっと残ってたくさん論 文を書け」と言われて、国家試験というか、FDA に入省 するための試験を受けたら何とか受かったので、アメリカ 国民の健康向上のために働いていました。 先ほどご紹介がありましたが、FDA はアメリカ健康省 (Department of Health and Human Services)の中で医薬 品を扱っているところで、8000 人ぐらいの審査官を抱え ており、僕がいたところは上から四つ目の CBER(Center for Biologics Evaluation and Research)、CBER、CDER、 CDRH と、2、3、4 番目がコアセンターなのですが、いわ Advanced Clinical Training-network Report 215 日本ではどういう分野を多くやっているのかと聞かれ、 自分でもよく分からないのですが、どのように研究や活動 をしているかというと、上から四角の五つ目、日本臨床試 験研究会という学会があり、来年、臨床試験の学会の大会 長を務めさせていただきます。 あとは、今日は話しませんが、レギュラトリーサイエン スというような新興領域の研究や活動も行っています。 今どのようなことを研究しているかというと、二つの大 きな興味を持っています。 一つは、Dry Research と僕は呼んでいますが、臨床疫学、 薬剤疫学、医療機器疫学です。後でもう一度出ますが、い わゆる HTA(Health Technology Assessment)という考 え方の中で、二つの柱があります。一つはいわゆる EBM、 臨床疫学の研究。もう一つの領域が経済研究、CER とい う領域があるのですが、そういったことの研究をしていま す。 もう一つは Wet Research といって、いわゆる細胞・動 物を用いた基礎研究です。 われわれはハイブリッドペプチドという登録商標も 取っており、そういった抗がん剤、1 型、2 型というハイ ブリッドペプチドなのですが、40 本ぐらいのアミノ酸を 人工で合成し、例えば EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)なら EGFR にくっつくような moiety を持つア ミノ酸の配列と、秘密のリンカーがついており、後ろ側が 216 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 いくのか、非常に重要な研究テーマというか、誰かがしな ければいけないテーマだと思っています。 去年の政権交代前、内閣府が、この国は科学技術基本計 画というものを標榜しています。その中で科学技術創造立 国というのが基本にあるのです。科学技術創造立国と知的 財産立国、観光立国、文化立国、四つの立国化をこの国は 標榜しており、その中で科学技術基本計画は 5 年間で 25 兆円を、第 3 期、税金を投入してきました。そういった中 で第 4 期科学技術基本計画が来年から始まります。その第 4 期を、税金を投入して行うというときに、何をジャスティ ファイするべきか、国民は何を本当に求めているのかとい うことについてアンケートしたわけです。 最先端の研究プロジェクトで国民が一番期待している lytic、細胞膜を 10 分ぐらいで溶かすような配列です。 のは、医療・健康ということになっています。これは 20 こういうわずか 40 個のアミノ酸が次世代の抗がん剤と 世紀と 21 世紀では大きく疾病構造が変わっていますから、 して使えるのではないかということで、開発のための会 感染症対策が進んだことで世界中が長生きしていますよ 社、Upstream Infinity という会社を浜松町に設立して、 ね。長生きをすると増える病気は二つあって、一つががん 京都大学からファンドを頂き、開発型の研究も行っていま で、正常細胞がインモータライズしていくということで す。 す。もう一つがアルツハイマーのような神経性疾患で、ア 去年の年末には日経産業新聞の一面に、スズキとフォル ルツハイマーは 5 年間長生きすると、インシデンスが 2 倍 クスワーゲンの提携よりも大きな扱いで「アップストリー に増えていきます。どうしても寿命が長くなると患者さん ム」と、いかにも大きそうな会社に見えるのですが、ここ が増えていくわけです。そういうところに対して何が解明 が京都大学のシーズということで新しい抗がん剤の開発 できるかというのが、世界中同じですが、国民として一番 をしているという記事が出ています。 興味を持っています。 今年 3 月にバイオビジネスコンペ JAPAN というものが オバマ政権が去年 2 月に成立した後に米国景気対策法案 あり、セミファイナリストに選んでいただいたり、登録商 を出したわけですが、米国景気対策法案の目玉は医療でし 標も特許庁からつい最近下りまして、 「ハイブリッドペプ た。 チド」という名前に商標登録を名乗っていいということも 右上の円から見ていただくと、景気対策法案で予算 いただいて、こういった実験系の研究のところも見ていま が計上されるうちの実に 50%、46.1%は NIH(National す。 Institutes of Health) 予 算 で す。 そ の 上 部 組 織 の HHS Dry の方の研究はどういうものかというと、科学技術は (Department of Health and Human Services)が 3%です 人類を幸せにするかというのがテーマのひとつです。簡単 から、全体の 50%が、景気対策のカンフル剤として医療 に言えば、科学技術は人類を幸せにします。例えば携帯電 やライフサイエンス研究をしようということになってい 話の発明とか、テレビが薄型になったおかけで皆さんお茶 るのです。 の間の様子が変わったり、携帯電話がないと生きていけま ちなみにその 1 年前はどうだったかというと、2008 年は、 せんよね。ところが医学という科学は、実は医学が進歩し 左側の DOD(Department of Defense)と書いてあるとこ ても人類が幸せになるかどうかは分からないというジレ ンマを抱えています。 これは皆さんあまりおっしゃらないのですが、私が思っ ているのは、例えば私が、降圧薬として血管を拡張するよ うな物質を発見したとします。 「こんないい発見、これは すごく血圧を落とすだろうからぜひ開発しよう」と言って 開発しても、誰も幸せにならないのです。なぜなら、現在、 降圧薬というのは薬のクラスがそろっていて、これ以上薬 は要らないわけです。これ以上下げると、人間は血圧が下 がりすぎて不幸になってしまうということなのです。です から、実は科学技術の進歩と医学の進歩は完全にイコール ではなく、医学の進歩というものが社会に対してどうイン パクトを与えて、どういうことをフィルターとして考えて Advanced Clinical Training-network Report 217 スの話ですが、今の日本の人口は左側です。団塊の世代が いて、その子どもたちの世代、僕は今 38 歳ですが、その 世代がいるという二層性です。 ところがこれがこのまま行くとどうなるか。今、1 億 3000 万人の日本人がいるのですが、30 年後にどうなるか というと、今の予測では日本の人口は 9500 万人になるそ うです。しかもキノコ型になるわけです。 そうすると、キノコの形をした人口構造になったときに 考えなければいけないことは三つあります。一つはキノコ の重い部分、かさの部分をどうやって支えていくかという ことです。高齢者が多いわけで、そのために一つのポイン トは、柄を強くすることです。柄を強くするには何をしな ければいけないかというと、一つは基幹産業を育てること です。トヨタの自動車が 30 年後にも世界で売れていると は誰も思ってはいません。どうしてもコンペティションが あり、すべて栄枯盛衰があります。ですから、そういう産 業をどう考えていくか。 2 番目のポイントは、強い人材養成をすることです。み んな同じように、均てん化したディシプリンを持って人を 育てるという時代は明らかに終わらなければいけません。 つまり、好きなことをする。今日のテーマはダイバーシ ティだと僕は思っていますが、多様性を持った人材育成、 あるいはエリートを教育すること。 僕は将来、いつかお金持ちになったら大学を買い取ろう と思っているのです。立命館あたりの大学を買い取って、 ろが 50%のパイになっていました。ですから軍事予算の 僕の大学を出た人は日本で就職してはいけない、世界でど パイがそのまま健康予算に移ったというのが非常に大き んどん働いて、戻るところをつくらずに、外貨を稼いでき な特徴で、全く逆のことになったのですが、政権交代がど ていただこうと思っています。そのようなことを考えなけ れだけ予算構造にインパクトを与えているかということ ればいけないほどの危機感を日本は持つべきなのです。 です。 ちなみにもう一つの方向は、いわゆるぴんぴんころり、 アメリカや日本だけではありません。世界中が今、医薬 かさの部分を出すという考え方もあるのですが、これでは 品や医療機器というものを開発して、しっかりと社会に還 文明に逆行することになります。 元していこうという方向を考えています。しかし右側を見 われわれの分野では、臨床研究全般を対象とした研究を ていただくと、残念ながら日本の場合、家電産業や自動車 しています。臨床研究というのは人を対象とした、あるい 産業、あるいは米国は軍需産業、あるいは次世代牽引、こ は人から出てきたものを対象としたことを研究するもの れは宇宙開発事業などですが、こういうものは IT、環境、 で、過去の人道的に反するような行為から、ヘルシンキ宣 ナノテク、バイオという技術分野に投資をすると、しっか りと産業化できる、回収ができる、マーケットを形成す ることができるとされています。こういうものをイノベー ション・エコ・システム、あるいはバリューチェーンとい います。 ところが医薬産業、日本の製薬会社が頑張っていないわ けではないと思いますが、研究しても横に線が出ていって しまって、全くマーケットをつくれない、これが日本の医 薬産業の特徴だと言われています。私が勝手に言っている のではなく、経済産業省の産業構造審議会で出た認識で、 政府の認識です。これをこれからどのように解決していく かが非常に重要なのです。 もう一つ考えなければいけないのが、今日はキャリアパ 218 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 言というものが採択されて、常にアップデートされてい ますが、その中で倫理的科学的な統制を持って、ICH-E6、 GCP といいますが、それをもって研究しましょうと世界 的に決められています。 二つの領域があります。一つは観察研究(Observation Study) 、もう一つは介入研究(Intervention Study)です。 観察と介入の違いは何かというと、観察研究というのは、 今、通常のエビデンスレベルを持って行われている医療プ ラクティスを、あるがままを対象として研究することで す。介入研究というのは、今行われているというコンベン ショナルなプラクティスに上乗せして、本当にいいかどう か分かっていない部分があった場合、そこに対して介入 を行って評価します。A と B を比べ、コホートをつくっ て介入してみる、医薬品の場合は Clinical Trial という言 葉を使います。このようなことはどのように行われて、ど ういう制度を持っていて、どのように開発して、どのよう に医療、エビデンスをつくるための研究につなげていくの か。こういうことがわれわれの研究で、こういう研究をし ているところは日本にはあまりないのです。 もう一つややこしいのは、日本語で臨床研究というと、 人材的には二つの領域があります。皆さんが臨床研究と いうと、日本人の医者の 7 割ぐらいが想起するのは、TR (Translational Research)といわれるものです。ところが、 もっと重要な領域があって、われわれは両方やっています が、医者の数として 3 割ぐらいの人しか強く言いません 人材養成が必要だと思います。 が、基本的な作法、プロトコールを作る、クリニカルクエ ところが、日本の場合は大きな問題があります。これを スチョンをどのように構造化して研究を行うのかという 言うとお医者さんに嫌われてしまうのですが、日本は医者 ことを行う臨床疫学(Clinical Epidemiology)という領域 が大体 28 万人いて、その特徴は、医学部は職業訓練校と があります。似て非なるところもあるのですが、両方とも 同じで、医学部を出ると臨床医にならないと、日本の崩壊 しっかりと教育して、医療の貢献に結べる、あるいは薬品 していく医療を支えられません。ですから多様性があまり や医療機器の開発にもつなげる、非常に重要なのです。 ないのです。もっと言うと、法学部の人、経済学部の人と 最近こういう本を 3 カ月ぐらい前に作りました。臨床応 いうのは、法学を学んでビジネスをする、政治家になる、 用研究をどのように進めるかという日本の実例集です。こ 弁護士になる、職種と学校の学部、ファカルティがつな れは評判が良かったので、 『はじめての臨床応用研究』と がっていませんよね。何学を学んで何をするかというのは いうものを先々週ぐらいに出させていただいたのですが、 別だというミッションを僕は持っています。ですから医学 このような分野はこれから勃興するところで、ぜひ多様な を学んで医療に携わる、それは絶対しなければいけないこ Advanced Clinical Training-network Report 219 とですが、医学を学んで何で社会に貢献するのかというこ のり」と、一見「医学のあゆみ」とは関係ないのではない とを本当は考えなければいけないと思うのです。 かという気もするのですが、こういう特集も組ませていた 例えば厚労省のようなところに行かないで WHO に行く だきました。 とか、国連に入るとか、僕は FDA でしたが、最近僕はア 9 月には慶應義塾大学、千葉大学、京都大学の 3 校で、 メリカの AHRQ とか、シンガポールとかに行けと学生に 治験と臨床研究の制度改革のシンポジウムをさせていた けしかけているのですが、そういうところに行って、取り だいたということもしています。 あえず自分にインベストメントしてみることが大事です。 最後の話題は医薬医療費の伸び率とテクノロジーアセ あと、EBM 研究、アウトカムリサーチといいますが、 スメントの話で、先週もバルセロナで講演してきたのです こういった臨床疫学研究、トランスレーショナル研究を が、これは今、OECD 加盟諸国における医療費や薬剤費 したいと思っていても、日本の場合には学ぶところもない の伸び率を示しているグラフです。日本はこんなに伸びて し、みんな朝から晩まで働いて、研究などをする状況もな いません。抑え込んでいます。こんなに抑えているのに、 いと。しかも日本の抱えている保険制度との兼ね合いで、 まだ削減しようとしているのです。これをどうやって解決 「エビデンス―診療ギャップ」という言葉があって、簡単 220 するかということを考えなければいけません。 に訳すと、エビデンスがあるにもかかわらず、そのとおり 今、世界中を襲っている波は、日本だけの問題ではあり にしない日本の医者たちと言われているのですが、エビデ ません。アメリカも、オーストラリアも、そもそもスウェー ンスがあるとしても、各行為の成績とか、自分たちの医療 デンのような国では、薬が安全で有効なだけだったら承認 はこういうことをしているということで、エビデンスどお されないのです。安全、有効で、かつ費用対効果があるこ りにしないことがあるのです。これをどのように解決して とを実証しなければいけません。 いくのかということも、実はわれわれが抱えている主題の こういうものを HTA(Health Technology Assessment) 一つです。 というのですが、医療分野における科学技術の進歩がどの このような FDA や薬の行政、臨床疫学、臨床研究の考 ように社会にアダプテーションするかという研究領域で え方は、日本でもしっかりとオーソリティボディをつくっ す。 てやっていかなければいけないという機運が高まってお 例えば、これは世界の抗がん剤の売り上げトップ 15 で り、今年 8 月の「医学のあゆみ」で「日本版 FDA への道 す。1 位がリツキサン、2 位がハーセプチン、3 位がアバ 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 スチンとありますが、mab、mab、mab なのです。要する なっています。 にモノクローナル抗体薬です。世界中の抗がん剤の売り上 例えば一番進んでいるのがイギリスです。去年 5 月に、 げベースで、ここ 10 年間で 7 割以上が抗体薬に変わって National Institute for Health and Clinical Excellence とい います。 う役所が出したリコメンデーションは、アバスチン、セツ これは何が世界で起きているかというと、抗体薬、ある キシマブ、ネクサバール、スーテントという世界中で使わ いは分子標的薬というのは、当たり前ですが、効いている れまくっている抗がん剤に対して、多くの場合の臨床使用 分子、標的がある人しか効かないのです。例えば僕が大腸 において、保険で推奨できないということを言いだしまし がんで、隣の佐藤さんが大腸がんになってアバスチンとい た。これは実はイギリスだけではなく、国民皆保険をやろ うものを使ったおかげで、数百万円掛かったけれども、3 うとはしていますが、民間保険制度を敷いているアメリカ カ月間長生きすることができて、生まれそうだった孫の顔 ですらも、こういうことが問題になっています が見れて死ねてすごくよかったと。 「先生、私にもアバス 1997 年、クリントン政権時にできた AHRQ(Agency チンを処方してください」と言うわけです。そうすると「残 念ながら川上さん、あなたの大腸がんは生検したところ、 VEGFR(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor) という標的が出ていないのです。だから残念ながらあなた は使えません」と言われるわけです。 この話は何を言いたいかというと、国民皆保険制度を 持っている国では、みんな自分が病気になるその日を夢 見て保険を払っているわけです。ところがいざ病気になっ てみると、分子標的という名前の下で、もっと言うとオー ダーメード医療はこの国で成立しないのですが、その恩恵 を受けることができる人と、できない人がいるわけです。 不公平ですよね。これをどのように社会がアクセプトする のか、制度設計をするのかということで世界中で議論に Advanced Clinical Training-network Report 221 入れるわけですが、Chromoendoscopy というものがある と。ところがコンベンショナルではない。NBI(Narrow Band Imaging)というものがありますよね。これが実際 どのぐらいの効果があるのか、信頼精度があるのかという ことを、メタアナリシス、系統的レビューを使って研究し ました。 NBI というのは青くフィルターがかかっていて、血管の Hypervascular のところが浮き上がるということで、がん を認識しやすいのです。ですから食道がんで適用が取れて います。 ところが、技術があるとみんな使いたがるのですが、大 腸がんというのは Hypo-vascular です。ですから本当にこ れがいいのかどうかというのが、決着がついていなかった というのが彼のリサーチクエスチョンです。 メドライン、コクランレビューの世界中の論文から、1300 本の論文を引っ張ってきて、過去 30 年間の拡大内視鏡と NBI の論文の適切なものを選択して、グループ分けをし て、適切な患者さんにどの程度適切な診断能力があるのか ということを調べました。 実際やってみると、この内視鏡と NBI は Specificity も Sensitivity も両方とも同じなのです。ということは、技術 の進歩が医療上貢献しないという例になります。ですか ら、これは別に保険点数を付けてあげる必要はないですよ ね。こういう研究領域があり、最近われわれはこういう HTA をしているということです。 最後は宣伝ですが、こういうことのために、私どもは「医 薬品政策・行政」 「医薬品の開発と評価」 「臨床試験の計画、 解析と審査」というコースを持っていて、さらには医者 向けの、M.D. が 1 年間京都にやって来て、統計学、疫学、 臨床試験学、行動学、倫理学というようなものを学んでい ただいて、1 年たつと医局に戻って活躍する。このような Mastered Clinical Research というコースが非常に好評を 博しており、われわれが手弁当でやっています。 キャリアデザインの話を少しだけすると、とにかく多様 性(ダイバーシティ)が重要で、個人にとっての多様性 と、社会がその個人を見るときの多様性の両方が大事で す。個人としては、とにかくいろいろな世界、社会を知る 222 for Healthcare Research and Quality)という役所の予算 こと。医者が医者のことを議論しても誰も認めてくれませ が莫大に増えていて、1000 億円ぐらい、NIH の中堅どこ ん。もっと言えば、いろいろな人と付き合い、どういう人 ろと同じぐらいの予算規模を持っていて、ここが多くの疫 がどういうことを考えているのか、あるいはどうして議論 学研究、いわゆる HTA、費用対効果というか、比較効果 が起こるのかということです。人種や性別や年齢差を超え 分析や EBM の研究や、臨床疫学研究をしています。こう てお互いを知り合うというのは非常に重要なことです。コ いうことをしないと、社会と医療というものを科学的に結 ミュニケーション、あとは自由な発想。今までにないもの び付けられないということに皆さんが気付いているとい があったら、どうやってそれを生み出していくのかという う波が今、世界で起きています。 こと。 われわれの研究室でやった最近の研究の例を言うと、彼 あと、若い人たちによく話すのは、二つ大事なことがあ は消化器内科というか、大腸ファイバーを入れるのが専門 り、一つは野心です。野心なき成功はないということわざ の昭和大学のドクターなのですが、彼のリサーチクエス もあるくらいです。あとはモチベーションをどう維持する チョンというのが、そもそも大腸内視鏡を毎日患者さんに かということも大事ですし、あとはチャレンジです。僕の 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 チャレンジの定義は、A と B があったら、成功確率が低 与えて四角くしようとします。つまり、丸いものは丸いま く、得られるものが多い方を選ぶことをチャレンジと定義 まだと転がっていくから角をつけるのだよというわけで しています。7 割と 3 割の成功確率のものがあったとき、 す。これは正しくて、子どもたちはどう思うかというと、 3 割のものを選ぶ人生を送ろうと僕は決めて今まで生きて 丸だったら四角にまとまろうとします。ところが、本当に います。 しなければいけないのはそうではなく、丸があったら、そ あとは「キラボシ」です。今の若い人たちは、どうせう の周りに四角を作ることなのです。そうすると面積が全然 まくやっても、先輩を見るとみんな疲れてしまっていて大 違うでしょう。つまり、一つの丸くなった荒削りのものが 学病院にいたくないと思うわけです。SD 値を超えて変わっ あったときに、そこをどう枠にはめるかではなく、枠から たことをやっている人たちが成功して、みんなからすごい はみ出せるようにディシプリンを与えるのが大事だと僕 と思われるロールモデル、あるいは「キラボシ」というも は思っていて、われわれの学生や研究者たちは、僕よりも のがこの国には必要だと僕は思っています。 年上の人も結構いるのですが、こういうことを考えた教育 あと、褒める文化がすごく必要で、日本はあまり表彰状 デザインをしています。 を乱発しないのですが、やればいいのです。われわれの研 これは京都大学の川上研のメンバーです。樋之津先生と 究室などでも、毎年 1 回飲み会のときに、今年頑張った賞 いう准教授の先生は、筑波大学の泌尿器科からいらしてい を二つぐらい出して、CV(Curriculum Vitae)に書いて ただいた先生です。 いいよと。履歴書に書くことが増えますからね。京都大学 ということで、ちょっと長くなったかもしれませんが、 薬剤疫学○○賞を取ったということで、みんな CV に書く 私の話を終わらせていただきます。ありがとうございまし わけです。このようなことを応援する文化は非常に重要 た。 で、みんなが褒められて、本人も多様性を知って行動して いると、Winner's Effect が起きます。勝ち続けるギャン ブラーは勝ち続けるのです。そういうことが起こるので、 Winner's Effect は非常に重要です。 僕たちが本当に気を付けなければいけないのは、よく大 質疑応答 (原一雄) 川上先生、ありがとうございました。まだお時 間があるので、フロアからご質問がありましたら。 人たちがやることというのは、丸いものにディシプリンを (Q1) 非常に面白いお話をありがとうございました。東 京大学小児科の香取と申します。 うちに高校 1 年の息子がいるのですが、何を間違えたか、 医者になると申して、やめろと言っているのですが。「医 者は大変だぞ」と言うと、 「僕は医者になるつもりはない」 と。よく分からないのですが、ITS と引きつけて、それを 研究すると言うので、それなら理学部でも行けばいいでは ないかと思ったのですが、 「医者の免許を持っていないと 将来大変だ」と言うのです。 日ごろ医者の研修などを見ている側とすれば、特にわれ われの大学などは「何でおまえ、医学部に来たんだ」とい うような連中もいるので、臨床の実習とかにあまり出たが らない人もいて、そういう連中が医学部に来ると、なかな か難しいなと思うのです。 前置きが長くなりましたが、先生は最初、脳外科を修了 されて・・・。 (川上浩司) 頭頸部外科を出ました。 (Q1) 失礼しました。その後、疫学など、そちらの方へ 進まれたということになるのですが、医者の免許を持って いるということ、今は実習が、研修が 2 年延びてしまった わけです。僕などはこの 6 年間医学部に行って、最後 2 年 間、研修までして、免許証の裏にサインをもらってという 具合だから、4 年で理学部を出て、4 年で博士号を取って Advanced Clinical Training-network Report 223 とかでいいのではないかと思ったりもするのです。うちに お考えを教えていただきたいのです。 いる学生などもそういう人がいたりして、そういう連中に どのようにアドバイスすればいいのかとか、こういうもの (川上浩司) ありがとうございます。僕は学生のころ、ほ をどう受け入れて、臨床実習をしてあげればいいのかとい とんど授業に出たことがないので、あまり偉そうなことは うことを。 言えません。たまに出た授業でイムノトキシンというもの が最近はあるのだよという授業を受けて、そのおかげでハ (川上浩司) ちょっと難しすぎて。個人的には医学部定員 イブリッドペプチドを着想しています。あと、筑波山のが をもっと増やしてもいいと思っています。皆さんからは大 まの油というものがあるのですが、あれは油ではなくアミ きな反対をいただくと思いますが、その方が多様性とコン ノ酸です。カエルがハエを食べて生きていくのですが、ハ ペティションが生まれるので、いいと思っているのです。 エが飛んできたときにぺろっと食べますよね。あれは汚い 今のご質問だと、私はもともと医者の免許を取って思っ ではないですか。なので、自分がアミノ酸の抗菌ペプチド たことは、医者で耳鼻咽喉科として訓練をして患者さんを を腸管粘膜から分泌しているのです。その筑波山のがまの 助けると。自分が死ぬまでに、80 歳ぐらいで死ぬとして、 油と、たまたま出た授業で聞いたイムノトキシンのコンセ 助けられる患者さんの数というのは 1000 ∼ 2000 人ぐらい プトが僕の研究の発想になっているということはあるの なのではないかと思いました。それから基礎研究をするよ です。 うになり、薬を作るような仕事を始めると、抗がん剤、も もう一つは、僕は筑波に行って非常にありがたかったの し Magic Bullet を作ることができれば、それで何百万人 が公衆衛生の授業で、3 回生と 4 回生が阿久津君と一緒に の人が助かる可能性があると。 公衆衛生の実習に何とか村に行って、1 日中いろいろな話 その次に、役人になって思ったことは、制度の改革、あ を聞いて、夜は宴会をしたりしたのですが、ああいうこと るいは適切な社会資源の分配としての医療、あるいはヘル が非常に重要で、京都大学はしていないのです。ああいう スケアというものの制度、行政を見つめ直すことで、場 社会を見て、実際に保健所や行政、あるいはほかの医薬品、 合によっては何億、何十億の人が助かるのではないかと アイスクリーム工場を見に行って、GMP とは何かという 思ったのです。実際、国連や FDA もそうですが、M.D. と ことを知ったことが、今の仕事に非常に役立っています。 MPH(Master of Public Health)を持っている人が大体 何が言いたいかというと、教育はいろいろなチャンスを 長官になります。 与えるような設計をするべきだと僕は思っています。た そういうことはリーダーシップだと思いますので、医学 だ、これは難しく、先生も実際はお忙しいですよね。「チャ 部に入っている人はそういう自覚を持って、目の前の患者 ンスを与えたいけれど、おれだって欲しいよ」とみんなが さんを助けることもそうだけれども、将来的にはそういっ 思っているわけで、その中でどうやっていくのか。医学教 たインパクトがあるということを、学生はあまり多分理解 育は医者の免許を取らせてマッチングさせることだけで していない。それどころか「先生みたいにはできないから はなく、多様性をどうやってエクスポーズするかというこ な」と言われてしまうのですが、やればいいのですよ。野 とにも努力していいのではないかと思います。 心を持ってやればいいのではないのということで、応援し すみません、あまり答えになっていないかもしれません てあげてください。称賛してあげるということが大事なの が。 ではないかと思います。 (原一雄) ほかにいかがでしょうか。 (Q2) 筑波大学小児外科の小室といいます。大変面白く てためになる内容でした。 (Q3) 自治医科大学の矢野と申します。大変興味深いお 先生のお考えに非常に感銘しました。今の 5 大学連携と 話をどうもありがとうございました。ちょっとお伺いした 関係があるのですが、医学生の教育に関してです。先生が いのは、多様性を受け入れる機関というか、空間配慮とい おっしゃるように、多様性や自由な発想を求めようとする うかは、大変難しいと思うのです。というのは、画一平等 と、今の医学生を見ていて、昔なら冬休みなどは授業をサ 主義のようなものが小学校からずっと続いていて、それに ボってスキーに行ったり、そういう時間があったと思いま 関して先生が取り組まれてきていて、常識をくつがえされ すが、今はいろいろ方向性が定められて、授業が詰め込ま ないといけないと思うのですが、そこについて教えていた れて、かわいそうな気がするのです。そういう中で、チュー だければと思います。 トリアルといっても、何となく解答の方に導くようにされ 224 ていく教育で、多様性や自由な発想というものとどのよう (川上浩司) 初等教育は大事だと思います。基本的なお作 につながっていくのかなと。例えば先生の学生時代を思い 法というのは大学になって教育しても遅いのです。京都府 出していただいて、現状とその辺をどのようにしていくの 内と大阪府内の幾つかの私立の小学校と提携して去年し が一番いいのかなといつも悩んでいるのですが、その辺の たことは、小学校 2 年生と 3 年生に糖尿病というものを教 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 えるのです。そうすると、その人たちが 30 年後に、教え られていない学年をコントロールに置いたときに、糖尿病 の発症率が低い。ポテトチップなどを食べ過ぎてはいけな いのだよとかを聞くことによって。そういうことができな いかなと思って、実際には親の意識調査ぐらいで終わって しまったのですが、そういうことをしていったり。 もう一つ考えたというか、勉強になったのが、京都はポ ストゆとり教育で、京都はだしの文化、イノシン酸とグル タミン酸の昆布と鰹だし、そのだしの文化があって、外国 からたくさんお客さんが来られるので、少し京都の話題が ないといけないと。ということで、小学生に料理の授業を するのです。料理を作らせるのではなく、大体小学校に行 くと、学年に一人ぐらいのお父さんは料亭の板前さんとか 経営者だったりするので、そこに行ってまず魚をさばくと ころを見て、魚は切り身で売っているのではなく、首を落 としたら命が止まるのだというところから始まって、そこ からだしを取って、このだしというのは健康に良くて、朝 にみそ汁を飲むことがどれだけ重要かということを教え たりするのです。 これは京都のモデルだと思いますが、いろいろなところ で自分たちの得意なところを学ばせるのを、小学生レベル でもっとやっていっていいのではないかと思っています。 僕が大学を買い取った暁には、小学校のいい学校で、そう いうことをやろうと思っています。 (原一雄) それでは時間も押しているので。川上先生、ど うもありがとうございました。 (川上浩司) ありがとうございました。 Advanced Clinical Training-network Report 225 (原一雄) 続いて筑波大学大学院人間総合科学研究科乳 外来も 90 ∼ 92%が常に女性患者で、産婦人科の 100%に 腺甲状腺内分泌外科教授の原尚人先生より、 「様々なキャ 比べると少ないかもしれませんが、圧倒的に女性が多く、 リアデザインを目指す医療人をいかに受け入れるか」と題 女性医師の希望者が年々増えてきて、現在私どものグルー してお伺いします。 プでは 3 分の 2 が女性医師になりました。 恒例により、原先生のご略歴をご紹介いたします。1984 いろいろな進路相談で、女性医師、学生も女子学生が非 年に筑波大学をご卒業され、同年、東京女子医科大学の内 常に相談に来ます。今の 4 年生、5 年生ですね。私ども筑 分泌外科で研修されました。その後幾つか病院を移られ、 波大学では医学部 4 年生の夏から臨床実習が始まります。 91 年に米国シカゴ大学外科に客員研究員として 2 年間ご また、マッチングは 6 年生になるとすぐに決まるので、今 留学され、94 年に筑波大学にお戻りになって、現在、筑 の学生は 4 年、5 年生でかなり進路のことを真剣に悩んで 波大学大学院人間総合科学研究科の教授をされています。 います。 ご専門は乳腺内分泌腫瘍、鏡視下手術です。私ももともと 内分泌が専門で、日ごろお世話になっているので、非常に 親しみがあるのと、ワークライフバランスという、今最も ホットな観点からのお話がいただけるのではないかとい うことで、興味深く聞かせていただきたいと思います。そ れでは先生、よろしくお願いします。 演題 「様々なキャリアデザインを目指す医療人をいか に受け入れるか」 演者 原 尚人(筑波大学大学院人間総合科学研究科乳 腺甲状腺内分泌外科教授) 原先生、ご丁寧なご紹介をありがとうございました。筑 波大学の原でございます。このような機会を与えていただ いて、関係者の皆さまに厚く御礼申し上げます。 本日の話の内容ですが、最初に、私は今もご紹介があっ たように外科医で、キャリアデザインは全くの素人です。 なぜその私がこのような場にいさせていただくのか、自 分でもよく分かっていないのですが。この後お話しします が、私どもは患者さんもグループ医も女性が多く、子育て を中心にいろいろやっているので、その辺の話をしろとい うことではないかと思っています。 まず私どもの科の背景ですが、乳腺甲状腺内分泌外科と いって、患者の代表的な疾患がこのような形です。ご存じ のように、乳がんは 99%以上が女性で、甲状腺疾患の 8 ∼ 9 割が女性で、入院患者、手術患者、ほとんどが女性です。 226 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 たまたま機会があり、筑波大学の女子学生、4 年生の意 こういう二つの要素でかなりデザインが決まったような 見、出産等についての不安という、ピックアップされたも 形がしますが、現在はこれにいろいろな環境整備という問 のがあるので、ちょっとご紹介します。今の 4 年生はこん 題があって、まず子育てです。女性医師の子育ては当たり な形で考えています。 前のことですが、今はやりの言葉でイクメン、育児をする 産む前から、タイミングはいつがいいか、どの科がいい 男性、男性医師による子育て。それから子づくり。また、 か、実家の近くでバックアップを受けた方がいいのではな これは私どもが今そうなのですが、親の介護。こういう いとか、産んだ後、これが今日の話になるかと思いますが、 様々な取り巻く環境が、いろいろとプレッシャーになって 子育てをするとキャリアアップに支障がないか。子どもが います。 いたら転勤もできない、もし働きたいのであれば、子育て そうは言っても、やはり今われわれが一番かかわってい はあきらめた方がいいのではないか。産後、育休を取って、 るのは子育て問題なので、今日は子育て支援について少し その後復帰はしづらくならないか。子どもの面倒を見たい お話しさせていただきます。 けれども、仕事もやりたい。パートナー、ご主人がやはり 医師だと忙しくて子育てができないのではないか。子ども がかまえなくて、子どもがぐれてしまったらどうしよう。 子どもが急に病気になったらどうしよう。 まとめると「子どもを産めるのでしょうか。産んだら 子育てはどうしましょう」 「やはり頼れるのは親だけです。 実家の近くで就職しなければいけないのですか」。これは どきっとするのですが「結婚・妊娠・出産をするのなら、 選択できる診療科が限られてしまうのですか。ある科を選 ぶと、結婚すら許してくれない」。このようなことを医学 部の 4 年生は考えているようです。 4 年生、5 年生からも結構進路相談が来ますし、当然、 卒後 1 ∼ 2 年目の初期研修医も、後期研修で最終的に科を 選ぶために、かなりいろいろ相談が来ます。 もちろん私たちのグループ医からも産休・育休の相談が しょっちゅう来ます。おめでたいことなのですが、私たち の科は結婚・出産ラッシュで、この 1 ∼ 2 月は産休・育休 が 3 人重なって、結構大変な思いをしています。 そういうこともあって、筑波大学附属病院における女性 医師看護師キャリア支援協議会の委員を仰せつかって、い ろいろこのようなことをしています。それから通常の大学 院進学や専門医取得の相談も受けるので、こういう経験を 話せということかと思って、本日は参りました。 前置きが長くなりましたが、本題です。キャリアデザイ ンに対してはいろいろな要素があります。 私どもが卒業してすぐのころ、キャリアデザインを考え るに当たって、まず二つのこと、臨床と研究があります。 臨床をしていく上に、大学病院ではより深い専門領域を 研鑽します。一般病院ではコモンディジーズを中心とした 広い領域の研鑽をしていこう。そして目指すは、まずは専 門医。基礎領域、私どもであれば外科の専門医。さらに次 の段階、私どもであれば乳腺専門医、内分泌甲状腺外科専 門医、こういうものを取ってさらに次に勉強を進めてい く。 もう一つの大きな柱は研究で、大学院に行くか行かない かとか、留学をして勉強するか、大学でいろいろな基礎研 究を続けていくか。皆さんはもちろん学位というものも一 つの大きな問題だと思います。 Advanced Clinical Training-network Report 227 今、筑波大学では子育て支援として、女性医師看護師 キャリアアップ支援というシステムを立ち上げて 3 年半に なります。 なぜ女性医師支援なのか。これは言うまでもないと思い ますが、今、若い世代では女性医師の割合がどんどん増え ています。産婦人科では 30 代以下が 7 割で、先ほど言っ たように当科でも 3 分の 2 が女性医師です。 これも新聞等で話題になっていますが、女性医師が何と か離職しないように、今働いていない人は復職していく。 ただ、現場、選ぶ方としては、常勤での勤務はフルタイム しかないわけです。それから、やはり環境の問題。バック 228 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 きています。 では、この仕事を続けていくための支援、どういうこと が大事かということをアンケートで点数化しています。上 が大事なこと、下の方はあまり大事ではないという順番で すが、予想どおり、トップ 3 は、保育所や学童保育の充実、 それからご主人やご両親だと思いますが「家族の理解と協 力」、これは当然の結果だと思います。 逆にドクターバンクとか、学会や講演会に必ず行けると いう環境はそれほど重要視していなくて、やはり代診や必 ず定時に帰れるような業務が確保される、こういうものが 結構ポイントが高いということが浮かび上がってきまし た。 実際のキャリアアップ支援システムの概要ですが、ポイ ントは、コーディネーターが 1 人付いて、1 対 1 でコーディ ネーターが相談に乗り、プランやメンタルヘルスケア、よ ろず相談までやって、それに並行しながら環境整備をぐる ぐる回して、一体となってやっていることです。 看護師にもしているので、看護師には看護師、女性医師 には子育て経験豊富な女性医師が専用教員として 1 対 1 で プランを作ったり、いろいろな相談に乗るというシステム です。 さらに具体的に、まず環境整備ですが、ポイントはパー トタイム常勤であることです。常勤で雇いながら、勤務時 間は 20 ∼ 30 時間、コーディネーターと相談しながら自分 で設定できます。もう一つのポイントは、小学校 3 年生ま でということです。この手の支援は 6 歳までということが 多いと思います。ところが実際には、小学校低学年は結構 手が掛かるので、やはり 3 年生までこの支援をやろうとい うのがポイントです。 それから現有人員に追加した人事で、われわれとしては これが非常に大きなポイントです。例えば前線の働き手が 2 人だったとします。2 人のうちの 1 人がこの支援を受け ている、つまり極端な話、半分しか働けない形になります。 そうすると 2 人が 1.5 になるため、もう 1 人にすごく負担 が掛かるのです。長続きしない、不満も出ると。ところが この場合は、現員 2 人に対して、たとえ 0.5 でもプラスです。 つまり 2 人が 2.5 人になるので、受ける側の 2 人は自分た ちの仕事が楽になるわけですからウエルカムですし、実際 アップするシステムや、キャリアの保証、こういうものが にこのシステムを受ける側も、プラス人員ということで定 ちゃんとしていないとやはり難しいという問題がありま 時に帰りやすい、負担がないということで長続きする、不 す。 満も多少少なくなるということがポイントです。 このシステムの立ち上げに前もって、筑波大学医学専門 あとは、しばらく職場から離れていた人などのために、 学群の女子卒業生によるアンケート調査が行われました。 e-learning を中心とした教材を使ったり、研修会や講演会 対象は卒業してある程度たった年齢で、約 223 人、半分近 などでバックアップをしていく。また、従来の保育所は 7 くの回収率で、診療科も臨床にとらわれず、基礎、行政も 時から 21 時までやるようになりましたが、それだけでは 含めて、多岐にわたっています。 全然足りなくなって、院内の託児所もできましたし、さら その結果ですが、67 人、3 割の方が常勤で仕事をしてい に保育所が増えました。また、院内のあちこちに搾乳ス ない。または 12 名、5.4%の方が全く勤務をしていないと ペースなどもできています。 いう、非常にもったいないなという結果が浮かび上がって 実際に参加した人のアンケートで、ポイントはここで Advanced Clinical Training-network Report 229 す。今日の題にもあるように、「キャリアアップを目指し た大学病院での研修」 、キャリアアップをしたいという人 がこういうシステムに参加するのです。あと、短時間勤務 ということで、満足度は結構高いのです。 もう少し具体的に見ると、短時間勤務があることと、も う一つはコーディネーターがいて、カウンセリングをして くれることがありがたいというのが浮かび上がっていま す。 自由記載でも、勤務調整が自分でできることと、もう一 つは公言してこのシステムに入っていることで周囲の理 解が得られやすい。それから、これは看護師も多かったの ですが、同じような立場の人と情報交換して支え合うとい うこともポイントが高いのです。 今後の取り組みとしては、このシステムは 3 年で終了し たのですが、今後もずっと長く続けてくださるということ で、延長になりました。 あとはいろいろ、介護の問題、男性医師の参加というよ うな意見が出てきました。 まとめると、女性医師支援のあるべき姿というのは、一 つのポイントとして、個人個人の事情に合わせた研修プロ グラムが結構皆さん必要だと感じています。周囲の人の理 解は当然なことだと思います。 今後の取り組みとして、今問題になっているのは病児保 育です。大学病院で小児科の先生は、病児保育をすること に対してやぶさかでないのですが、やはり大学病院とい うことで、免疫不全を抱えているお子さんはコンタミネー ションということがあるので、現在は院外の別の施設に委 託という形でやっています。あと、学童保育の方はまだま だ施設が少ないというのが現状です。 このプランの参加医師ですが、様々な科が参加してい て、私どもの科も既に 2 人、お世話になっています。 1 人目はベテラン医師で、私どもの大学の科のレジデン トを修了し、近隣の病院に一人医長として勤務していまし た。そのときに結婚と出産を迎えたのですが、一人医長と いうことで手術が非常に大変で、出産日近くまで手術をし ていて、何と手術中に破水してしまったという、非常にか わいそうなことをしてしまいました。そこで大学に呼び戻 して、このシステムでまず病院講師で、本人も講師でス テップアップをしたいという意欲があったので、診療講師 になって、今頑張ってくれています。 これが彼女のプランなのですが、一応パートといいなが ら、外来や検査はもちろん、手術もバリバリしてくれてい ます。それから日中、いろいろな会議や委員をしてくれた ので、私どもにとっては非常にありがたかったです。 2 人目は若い先生で、卒業してすぐ結婚し、翌年、初期 研修 2 年目で出産して、産休・育休を半年取りました。と いうことで半年遅れて初期研修を修了し、その後、後期研 修として、このプログラムで私どものところで頑張ってい ます。 230 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 もうベテランで、現在は講師で、卒業して、大学院も留 学も経て、専門医・学位あらゆるものを取って講師として うちに来てくれたのですが、その後に結婚・出産して、1 番目のお子さんのときは半年休んでもらって、また復帰し た後、2 番目のお子さんができて、今度は 3 カ月休んで、 休んだ後はバリバリと、中心になって頑張ってくれていま す。 今度はその他の要素です。 私は勝手にイクメン外科医と呼んでいるのですが、非常 にユニークな人材で、卒業してから内科の先生と結婚し て、3 児をもうけ、埼玉の一般病院で外科医として勤務し ていました。奥さまが私どもの大学院のすぐそばの病院に 就職したので、一家で引っ越してきて、それを契機に、今 まで勤めていた病院を休業、実際には辞めてしまったこと になるのですが、1 年間、専業主夫と育児に専念しました。 つまり全く医師をしないで、1 年間、家事と育児に専念し ていたのです。 このような形で働いているのですが、実際にはご主人や 保育園の都合が良かったりすると、5 時半ではなく、ずっ と遅くまで自分がやりたい仕事をやっていくことも結構 あります。土曜日も結構出てきて、自主的に働いています。 ただ、このシステムは 5 時半に帰れということではなく、 5 時半に帰ることを保証するということで、もちろん自分 今度、奥さんは 4 人目の妊娠・出産ということで、奥さ がしたい仕事は続けてもいいわけです。ただし、本人に言 んが休まなければいけない、本人が働かなければいけない わせると、やはりご主人の都合や保育園の都合、それから ということで、この会がマネジメントしてくださって、千 調子が悪いときなど、間違いなくこの時間に帰れるという 葉大学からわれわれの科に来てくださって、今は大学病院 保証があるのは非常に心強いと言ってくれています。 に勤務しながら 4 人のお子さんの育児を両立しています。 このシステム以外でも、私どもにはこういう例がありま まさにイクメン外科医です。 す。 あと、子づくりの問題もあります。子づくりをしている Advanced Clinical Training-network Report 231 人はなかなか別居しづらい。本人もそうですし、パート なっており、その大学院の間 4 年間は原則的に臨床ができ ナーも移動が難しい。不妊治療をしているときは、時間的、 ないというシステムでしたが、そうすると大学院、学位を 経済的、精神的に負担がありますし、子育て支援といって 取るのが早くても卒後 10 年です。この間臨床ができない も、本人は子づくり支援もしてほしいと思っているので ということは非常に問題になってきます。 しょうが、なかなか周囲には言いだしにくい、不妊治療を そして新しい制度ができました。アカデミックレジデン していると難しいという問題もあります。 トというものも選べる。つまり、臨床研修をしながら大学 院に行けるために、学位も早く取れますし、臨床から離れ ずにいられる。これが利点で、大学院の方になびいてくれ るというシステムができています。 こういう形で今いろいろなデザイン、お勧めするプラ ン、こういうことをしてはどうかというものを自分たちで 作って、学生や初期研修医等に配って、うちに来てくださ いという形で宣伝材料に使っています。 最後に、いかにこういう人たちを受け入れるかというこ とです。 様々なバックグラウンドがある人、それぞれをすべて公 平に扱えるかというと、すべて公平は無理だと思います。 では、不公平だったら不満は出ないのか。不満はあると思 います。ただ、その不満のでこぼこを少しでも解消しよう 親の介護はまさに私どもの世代が真っただ中で、実は私 という努力は必要ではないかと思います。 もこの春、父が倒れて半年間入院しています。半年入院し 例えば私が考えているのは、先ほどの産休・育休が重 ている間に、今度は介護している母親が脳梗塞で倒れて、 なってくると、いわゆる男性外科医、奥さんが専業主婦の 2 人とも入院してしまって、どうしましょうと。何とか 2 人などにしわ寄せがどっと行きます。そうした人たちが頑 人とも元気になってくれて、今後は大変だなと思っている 張っていくことになってしまうですが、産休・育休という のですが、社会全体も今後ますますこの問題は深刻化する のはばーっとみんなが取れば、逆に一斉に復帰もしてくれ と思います。実はこの問題は私どもの世代だけではなく、 るわけです。そうすると、わっとある時期に人が増える。 若い人にも結構浸透しています。 そういうときに、頑張ってくれた人に、最も自分がやりた 少子化に伴って、いわゆる一人っ子の場合、親の面倒を いとか行きたいというところに優先的にやらせるという 見なければいけないのではないかというプレッシャーを 形で、多少でも不満を解消しようということを考えていま 感じている人もいます。そのために、わざわざ最初から実 す。 家の近くに就職しようかと。殊勝なことですが、そういう その具体的な例ですが、A 医師はクリニカルフェロー ことを考えている学生や研修医も出てきています。 で大学院に通っている、先ほどのアカデミックレジデント という立場なのですが、背景は娘さんが一人で、奥さんが 専業主婦なので、子育ては奥さんがしてくれる。産休・育 休が重なってしまうと、全部彼に負担が行く。病棟・外来・ 手術と、日中はそれに振り回されて、さらに手術が長引い たら、また緊急手術になったら夜も、夜中、朝の呼び出し、 ちょっと毛色が違うのですが、これは私どものシステム で、アカデミックレジデントというキャリアデザインから 来たものがあります。従来、私どもの大学院の制度は、臨 床研究の 6 年間が終わった後、一応大学院に行くことに 232 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 うことで、同じクリニカルフェローの A 医師、B 医師で すが、どのように区別するかということで、昼間の実験や バイトと、それから夜のバイト、時間給などで収入や条件 を変えて、少しでも不満をなくそうということです。 本人たちに聞くと、A 医師は、朝や夜でたまにきつい こともあるのですが、とにかく昼間、集中して確実に実験 できるようになったことはハッピーだと言ってくれてい ますし、収入も少し上がったということです。B 医師に関 しては、とにかく子育てが頭の中で一番ですから、定時に 帰って子育てができる。収入に関しては若干少なくなるの ですが、奥さんのバイト等、その辺も考えているのではな いかと思います。このような例があります。 ただし、先ほど言ったように、すべて公平というのは無 理ですし、先ほどの不満はあると思います。何とか工夫し て、少しでも不満や公平、不公平を解消したいと思ってい るのですが、やはり現実には非常に難しいのです。 最後は精神論です。私どもは非常に小さなグループなの で、常にキャッチフレーズになっているのですが、われわ れ医局員は小さな仲良し家族なのだと。だから誰かに何か あったときにはみんなで助け合えばいいではないかとい う形で、みんなで何とかやりくりしている状況です。 病棟患者の呼び出し、救急の呼び出し、すべてしなければ いけません。 彼は頑張り屋で非常に優秀なので、それはいいのです が、やはり問題点は、大学院生であるにもかかわらず、実 験する時間がないというので困っていたわけです。ここに 例のイクメン外科医が入ると、こんな形になりました。 イクメン外科医は 8 時にお子さんを保育園に送ってい き、ちょっと遅れて参加します。ここで申し送りというか、 一緒に回診とか、情報交換をしながら、ずっと彼が日中は 病棟を中心にがっちりやってくれて、夕方は回診をしなが ら帰っていきます。そうすると、従来どおり夜とか夜中は A 医師が頑張らなければいけないのですが、彼としては 昼間が急に楽になってきた。それを利用して、確実に自分 の実験計画がきちんとできるようになってきた。さらに余 つたない話で申し訳ありませんが、ご清聴ありがとうご 裕が出てきたためにバイトも増やせるようになったとい ざいました。 Advanced Clinical Training-network Report 233 上の者はこうやりましょうと、女医のいい点を伸ばすため にいろいろな環境をつくってきたつもりなのですが、や はり疲弊して壊れかけているのが若い研修医から医員ク ラスの男性医師です。当直も倍になるし、夜などの負担が あって、結構それがほかの研修医や学生にも伝わっていま す。眼科は女医ばかりで男性が大変だというのをすごく今 痛感しており、どうしたらいいのかなと思っていて、先生 のいろいろなやりとりを見てすごいなと思ったのですが、 何かもう一つアドバイスがあれば。精神論でもいいのです が、今そこで行き詰まっているので、教えてください。 (原尚人) 幸か不幸か、私どもは人数が少ないで、何とか みんなに目が届く。つまり、一番苦労を掛けている男性医 質疑応答 (原一雄) どうもありがとうございました。フロアから何 か。 師などにしょっちゅう話を聞いて、何をやりたいか、何に 困っているか、もし暇になったらどうしたいかということ を常に情報交換しています。 先ほどの例では、彼は実験をしたいということが常に あったので、「人が増えたらすぐ実験をやらせるから、今 (Q1) 千葉大眼科の菅原です。大変ためになる話をあり は我慢してくれ」というような形で。人数の多い大きな医 がとうございました。 局だとなかなか難しいと思いますが、今、明らかに全体を われわれも女医がとても多く、千葉大のわれわれの主任 見回して一番つらいなと思う人に、いろいろ不平不満とい の山本は、日本眼科学会の女性医師支援の部長を熊本大 うか、希望などを聞くコミュニケーションに尽きるのでは 学の先生と一緒にやっているぐらい、4 年ぐらい前から女 ないかと思います。 性医師支援と。われわれも関連病院を入れると半分が女性 で、スーパー女医、手術もできる女医もたくさんいて、そ (原一雄) ほかにありますか。やはり最後のモットーとい ういう方たちが 9 時 5 時でやってということを始めていま うところと、原先生のお人柄で、うまく回っているような す。今、われわれもおめでたがいっぱいあって、われわれ 印象がありました。 それでは原先生、どうもありがとうございました。 234 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 第 2 部 パネルディスカッション「医療人養成 に必要なキャリアデザインとは」 すが、僕は、大学はほとんどいませんでしたし、海外留学 の経験もありません。でも、医者全体から見ると、僕のよ うな医者の方が多いのではないかと思うので、そういう立 司会: 場から、一生懸命やってきたというところをご説明しま 北村 聖(東京大学医学部附属病院 総合研修セン す。 ター長) まず私のキャリアデザインですが、その前に、心臓血管 パネリスト: 外科医というのは、ほかの部門、特に基礎の先生や内科の 高原 善治(船橋市立医療センター 病院長) 先生とはだいぶ違うと思うのです。外科医の中でもかなり 川上 順子(東京女子医科大学 第一生理学教室 教 エキセントリックなところがあります。 授/女性医師再教育センター長) 軍神 正隆(東京大学医学部附属病院 救急部 副部 長) 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学分 野 教授) 原 尚人(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 乳腺甲状腺内分泌外科 教授) 理想的な心臓外科医はどうかというと、これはどの部門 でも同じだと思いますが、まずスキルが非常に大切になっ てきます。これを充実させたことにより、心臓血管の専門 医というものが取れるのですが、専門医を持っている方が 全員素晴らしいスキルを持っているかということは、まだ 疑問があるところです。 一番大切なのは、やはり高度な外科的技術です。「あの 医者が手術をすれば助かるけれど、ほかの医者では助から (アナウンス) 「医療人養成に必要なキャリアデザインと ない」というところが心臓外科ではあります。 は」と題してパネルディスカッションを始めます。パネリ また、いくら技術が良くても、患者さんからは「何だ、 ストは、船橋市立医療センター院長である高原善治先生、 あいつは威張っている医者だな」というのは困ります。外 東京女子医科大学第一生理学教室教授であり、女性医師再 来でもにこやかにコミュニケーションが取れる医者でな 教育センター長である川上順子先生、東京大学医学部附属 ければいけません。同じようなことはパラメディカルに対 病院救急部副部長である軍神正隆先生、第 1 部の演者であ しても言えると思います。体外循環の技師を怒鳴ったり、 る川上浩司先生、原尚人先生です。 看護師に文句ばかり言っているようではまずいと思いま 司会は東京大学医学部附属病院総合研修センター長、北 す。総括して、円滑な外科チームが組めることが、技術だ 村聖先生、お願いいたします。 けではなく、心臓外科専門医として必要なスキルだと思い ます。 (北村) よろしくお願いします。後半は「医療人養成に必 ほとんどはそれで終わると思いますが、やはり私は学術 要なキャリアデザインとは」ということで、5 人の先生と 的なこともちゃんとやっていなければいけないと思うの パネルディスカッションをしたいと思います。2 人の先生 です。スタートは M.D.、Ph.D だったりするのですが、基 には基調講演でお話しいただいたので、残る 3 人の先生に 礎的な研究、臨床的な研究、特に専門医を取ってからは臨 は、10 分間で日ごろ思っていること、あるいは先生ご自 床研究が多くなりますが、そういうことをちゃんとやる。 身のキャリアデザイン、あるいはお仕事など、一人 10 分 ということは、学会発表して、論文を書けということで 間でお話しいただいて、それからパネルディスカッション す。基礎医学の先生、また内科の先生などはかなりインパ に移りたいと思います。時間が短くて恐縮ですが、よろし クトファクターのある論文をたくさん書かれます。大学で くお願いします。ご経歴はお手元のパンフレットで見てい なく、われわれの病院でそういうことをするのはなかなか ただくということで、演者の先生にもご了解いただきたい 大変ですが、ちゃんと目標を置いてやっていくことによっ と思います。最初に高原先生、よろしくお願いします。 「心臓血管外科医養成に必要なキャリアデザインとは」 高原 善治(船橋市立医療センター 病院長) 船橋市立医療センターの高原です。本日、このような会 議にお呼びいただきましたネットワークの皆様、および座 長の労をお執りいただきました北村先生にお礼を申し上 げます。 私は心臓血管外科医なので、その立場からお話しします が、今日、演者の皆さん方はほとんど大学の先生方、かつ 皆さん海外留学をされていて、立派なご経歴を持っていま Advanced Clinical Training-network Report 235 て、自分たちもレベルアップすることになります。 150 ∼ 199 件のところにありますが、非常に多い施設もあ もう一つのメリットは、例えば一つの難しい症例があっ ります。 て、自分がうまく治療できたとすると、その恩恵はその患 現在は心臓血管外科専門医になれるコースというのが 者さん一人にあるわけです。ところがそれを学会で報告す 考えられています。今は初期研修が入ってきて 2 年間、こ ると、そこで聞いていた人みんなが分かるわけです。それ れは義務づけられています。その後いきなり心臓外科では を日本語の論文で書くと、日本人の心臓外科医がみんな読 なく、一般外科の研修が必要になってきます。それが終 んでくれる、英文にすると世界の人が読んでくれる、たっ わって心臓外科の研修をして、心臓血管外科の専門が取得 た一つの症例でも世界の人の役に立つという観点からも、 できるのですが、これは大体卒後 8 ∼ 10 年、年齢だと早 そういうことは必要だろうと思います。 くて 30 歳台の前半からです。こういうこと(一般外科研修、 最後は人間性です。社会人として、医者には変なやつが 心臓血管外科研修)が必要になってきます。 多いと言われることを考えなければなりません。もう一 いったん資格を取ったら、一生懸命手術をするわけで つは、常に後輩や周りの人たちの先頭を切ってエデュケー す。専門医だぞということで多くの手術をする経験でどん ションしていかなくてはいけない、教育者としての素質が どん自分のスキルが伸びます。また、質の高い学会活動が 必要だと思います。 できるようになり、自分の手術を評価するようなスタッフ 日本の心臓外科医は他国の心臓外科医と違って、特徴的 ができるのです。これが早い人で大体 30 歳台後半から始 なところがあります。このスライドはアメリカと比べてい まるわけです。 ますが、人口を見ると日本はアメリカの約半数よりすこし それがどんどん進むと「あいつは優秀だから、大学の教 少ない。心臓外科の専門医の数はほとんど半分です。施設 授に来てくれないか」 「うちの部長にぜひ来てくれないか」 数は半分以上なのです。手術の総件数は面白くて、これは ということで、チームリーダーやエデュケーターというポ 民族の差だと思いますが、日本は成人だけで 4 万 8000 件、 ストが回ってくることがあります。これは年齢がいろいろ アメリカでは 28 万件あります。それを施設数で割ると、 あるのですが、40 歳ごろからで、このころは手術もどん 日本は年間 100 件ぐらいやっている施設が平均で、大きな どん行い、チームのリーダーとして活躍を始めます。もっ 顔をしていられますが、アメリカへ行くと 300 件以上やっ とすると、「おまえは組織の管理者をやってくれ」と言わ ていないと認められないレベルがあるわけです。こういう れる方もいます。 ことを念頭に置いておいていただきたいと思います。 従って、日本で研修するよりも、欧米で腕を磨いた方が チャンスが多くなるという状況が現在はあります。 日本の心臓血管外科の施設、胸部外科学会の関係施設で 登録されている施設数と年間手術数の表ですが、手術件数 0 件つまり昔やっていたということで登録されている施設 もあります。それから年間 24 件以下が 53 施設、25 ∼ 49 件が 101 施設ありますが、学会ではここは研修施設から外 そうとしています。 将来的には年間 50 ∼ 100 件まで盛ってあげたいのです が、これがかなり問題です。50 件以上だと大学病院でも 落ちるところが出てきてしまいます。われわれの施設は 私は公務員になってしまったので、実際はこういう Surgeon のものとも少し違いますが、今は大体こういう コースが考えられています。 実際、私はどうだったかというと、私は千葉大学の肺が ん研究施設、肺外科、呼吸器外科に入局して 1 年半いまし た。ここは研究施設で、肺がんの発がん実験、肺の機能な ど、いろいろな研究を先輩がしていたので、それに一緒に ついて、基礎の研究の歩み寄れる部分、臨床的には麻酔、 一般外科。心臓外科も、肺外科をするのに必要だろうとい うことで研修しました。 ところがここで心臓外科の方に取り込まれて、関連病院 236 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 の鶴舞病院に医員として赴任しました。鶴舞病院医局の医 まえ、好きなものを持ってこい、それでいいから」という 員になって、肺外科はやめてしまったということです。 ことで取得して、講師にしていただきました。 山の中の小さな施設だったので、もう少し大きな施設で そして 44 歳のときに、船橋市立医療センターに新しく 研修したいという希望があったところ、ちょうど大阪の国 心臓外科部門ができました。この病院は、今でもですが、 立循環器病センターが創設されて 2 年で、スタッフを募集 422 床の総合病院で、第 3 次救急までやっており、現在は していました。千葉の先輩がいて、 「おまえもやりたいな 心臓血管外科、循環器内科も含めて、非常に盛んなところ ら来い」ということで、すぐはせ参じまして、ICU、術後 です。そこの部長として赴任して、2004 年に心臓外科の 管理を 1 年、それから心臓外科の先天性、後天性を 1 年、 専門医制度ができ、指導医があるので無試験というか、書 血管外科を 1 年。 「もっといてもいい」 と言われたのですが、 類登録とお金を払うだけで専門医にしていただきました。 鶴舞病院の方が「早く帰ってもらわないとうちがつぶれて そして最近ですが、2007 年に「そろそろ病院管理もし しまう」と。うそか本当か、引き戻しというか、私も帰り なさい」と言われて、診療局長になりました。最初はあま たいと思ったので、帰ってきました。このときに、めでた りやる気はなかったのですが、 「おまえもそろそろ手術は く医長にしていただきました。32 歳のときです。 いいだろう」と言われ、今は病院長を一生懸命やっていま 32 歳のときは、まだ一人前の Surgeon ではなく、まだ す。 書生の身でした。それから一生懸命覚えてきたことを研鑽 外科医、特に心臓外科医で一番大切なのは手術の数で して、36 歳のときに胸部外科学会の指導医になりました。 す。これを調べて見てみました。ちなみに日本の心臓血管 当時はまだ専門医というシステムがなかったので、指導医 外科の専門医は 5 年に 1 回更新するのです。その手術数の イコール今の専門医と考えていただいて結構です。指導医 条件が、5 年間で 100 例執刀していれば専門医として続け だった者が、専門医制度ができたときに自動的に専門医の ていいよとなっています。 年間 20 例やっていればいい 称号も持ったのです。 というような国は世界でもないと思いますが、日本ではそ ここでますますむちを当てて、頑張って、部長にしてい うなっています。それは最初に言った、全国各施設の年間 ただいたのですが、42 歳のときに千葉大学で心臓外科医 手術数の平均が 100 件だということにも表れてくるので が外科の教授になり、「おまえが来てしっかり指導してく す。 れ」と言われて、2 年半在籍し、このときに博士号も「お スライドのブルーが術者、赤いのが助手、助手といって も、第一助手いわゆる前立ちです。1986 年までの前立ち は一生懸命教えてもらう方、後半は後輩に教える方です。 国立循環器病センターでは術者や第一助手をすること は少なくなく、鶴舞病院に帰ってきて研鑽を積んで、ここ で指導医を取ったわけです。それから一度(1992 ∼ 1994 年) 落ち込みますが、これは大学医局に呼ばれたときで、大学 病院というのはやはり数が少なかったです。しかも総合外 科の教室で、心臓外科専門の教室はなかったので、消化器 などいろいろなこともしており、他にたくさんやる手術が あってできませんでした。それで船橋に赴任して、手術件 数を増やしていたのですが、院長になってからはどんと少 なくなってしまいました。 Advanced Clinical Training-network Report 237 やはり心臓外科医としては、私の例でみると 1982 年か も国立循環器病センター、当時では日本で一番多くの症例 ら 1990 年の若い時期に件数を伸ばしていく、このカーブ を扱っているところに勤めさせていただいて、たたき込ま は非常に必要だと思うのです。また Surgeon(専門医)に れました。 なってからも手術を行っていかないと伸びないと思うの です。 もう一つは学術論文です。これはここにいらっしゃる多 くの先生方に比べると非常に乏しい数なのですが、どんな に臨床に行って、夜中の救急で呼ばれている中でも、論文 だけはちゃんと出そうと思いました。多いのは国立循環 器医療センターのときで、人数が、レジデントを入れる と 20 近くいました。それ以降は 4 人ぐらいのグループで、 これだけのことをしていました。 学会発表は、胸部外科、心臓血管外科、血管外科、脈管、 心臓病学会などのシンポジウムや教育講演の数ですが、最 初の方はほとんど共同演者で、だんだん自分でも発表する ようになりました。 そういうことがあったので、ハイボリュームセンターを 最後になります。心臓外科だけではないと思いますが、 一度短い期間でも経験することは役立つことだと思うの キャリアデザインに考慮することは、やはり基礎はしっか です。理由として一つは短い期間で多くの臨床が経験でき りしなければいけません。基礎はしっかりした施設でやっ るということと、ハイボリュームセンターでは非常に多く た方がいいのではないか。もちろん臨床もそうです。特に の医師がいます。特に国立循環器病センターは全国から人 研究は、私は幸いに千葉大学の肺がん研究施設にいて、香 が集まってきますから、そういう方と一緒に付き合える、 月教授という恩師からたたき込まれたので、どこで行って 若いころは一緒に酒を飲んだり、いろいろな話をしていま もそういう目で見られるようになりました。それから臨床 したが、今になっても電話一本で「こういう症例はどうし ましょうか」など、困ったら病院の問題でも相談ができま す。僕は行っていないのですが、海外に留学された方は、 それが世界レベルでできるのでうらやましいと思って、友 達などの話を聞いています。 もう一つ、外科医は手術して治してなんぼと思うのです が、やはり学会活動もしっかりやっていかないと、世の中 では認めてもらえないというのが僕の意見です。 以上です。ご清聴どうもありがとうございます。 238 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 「新しい時代のキャリアデザイン」 川上 順子(東京女子医科大学 第一生理学教室 教授 /女性医師再教育センター長) 観の多様性が出てきたと思うのです。そういう価値観をま とめてキャリア教育をしていくというのは、一体どのよう なことを考えたらいいのか、すごく難しくなってくるので 東京女子医科大学の川上です。今日は自分のキャリアを す。ただ、こういう多様性の中でも、医学部のキャリア教 お話ししてもあまりお役に立たないのではないかと思い、 育として最低限必要とされるものがあるのではないか。そ むしろ私が今までかかわってきた学生や、センタ−の女性 の共通の価値観を守ることが必要なキャリア教育ではな 医師たちと話し合った中から、こんなことを考えていると いかと私は考えています。 いうことを見て頂き、キャリアデザイン、キャリア教育に それは何かというと、やはり医者というのは、社会に貢 ついてお話しさせていただきたいと思います。 献するという認識がその土台に必要だろうと考えます。生 まず、初期臨床研修が義務化されてから急に医学部、 涯医者を続けていくわけですが、そのときの価値観の中に それと研修医にとってキャリア教育というものが大事に 「社会貢献」という言葉を上段に据えていただきたいと思 なってきたと言われているのですが、医学部でのキャリア います。 教育は一体どのようなことが大事なのか。そして、それは 私なども昔のことを思い出してみると、若いころは本当 4 年制の大学でいうキャリア教育とだいぶ違っているので に目先のことに一生懸命で、走り回っているだけで、一番 はないかと、私は最初から思っていました。 大事な患者と向き合うということもなかなかできなかっ 最初に川上浩司先生のお話にあったように、4 年制の大 たと思います。そのときに何を学んだかというと、やはり 学というのは非常に広い選択肢があって、その中でいろい 自分の上司がどのように仕事をしていたのか、あるいは ろなキャリア教育を考えなければいけないのですが、医学 部の場合は、医療にかかわるということは全く同じで、そ どのように患者さんに接していたのかということを見て、 「なるほど、このようにするんだ」という「気がつき」が こは変わりないのです。では一体、キャリア教育に何を求 すごくあったと、今にして思います。 めればいいのかということがあります。 医療界においては、キャリア教育を考えるときにロール モデルが大事だろうと思います。女性であろうが、男性で 一方、時代が最近非常に大きく動いていると思います。 あろうが、医者としてのロールモデルは変わりがないと思 その中で、医学部で一番感じるのは、価値観の変化、価値 うのです。その中で価値観というものが植え付けられてい くということが大事だろうと考えます。 ここで少し、大学の宣伝をさせていただきたいのです が、東京女子医科大学は今、全国で唯一、学部長が女性、 病院長が女性です。両方とも女性だからなったわけではな く、両方ともプレゼンテーションして、何人かの候補者の 中から決められてきた院長であり、学部長です。ですから、 決して女性だからという意味でなったわけではありませ ん。こういう人材を輩出することができたというのは、や はり大学としてのサポートがいろいろあったからだろう と思います。 今、女子医大にどれぐらいの女性医師がいるかという と、大体 37%が女性です。1429 人のドクターのうち、521 Advanced Clinical Training-network Report 239 人です。それからファカルティのうちの 25%が女性です。 240 われわれが目指す女性医師のキャリア教育は、 「将来展 ということは、これは近い未来の日本の医療界における割 望のある医療人としての女性医師の育成」 、つまり将来ど 合にほぼ等しいのではないかと考えます。 のようにあるべきなのかということが一つ。将来の女性医 こんな中にわれわれがいるわけですが、今日の私のミッ 師としての生き方を考える教育。自分がどういう女性医師 ションとしては、女性医師のキャリア教育ということだと になっていくのか、どういう生き方をしていくのかという 思いますので、どういうことが大事なのかということを ことが一つ。 ちょっとお話しさせていただきます。 もう一つは、自分は一人でやっているわけではなく、先 キャリアの教育あるいはキャリアデザインを考えると ほどお話ししたように、社会貢献として考えていかなくて き、私は女性医師たちと話をしていて、二つ方向性がある はいけません。社会貢献というのは、何も国境なき医師団 と考えています。 に入ったり、災害時にどこかに出掛けたりということでは 一つは大学病院、あるいは大きな病院でポジションを得 なく、患者と真摯に向き合うということ自体が一つの社会 るために頑張っている女性。それはキャリアを追求してい 貢献だと考えます。 くところは男性と全く変わりがないので、それなりの支援 そういうことを生涯続けていくためにどうするかとい は必要ですが、ここも大事だと思います。 うことと、日本の将来の医療における女性医師の役割はど もう一つの生き方としては、やはりいろいろな意味で続 ういうものなのか、どういうものを担えるのか、二つの柱 けられなくなったり、続けにくくなったり、先ほどの原尚 をぜひ考えていただきたいと思います。 人先生のお話にあったようなケースが結構あります。その 教育される側に伝えること、つまり受ける方の学生側、 ためにはセーフティネットとしての女性医師の支援をし あるいは研修側ですね。女性というのはライフイベントが なければいけないということで、両方ともキャリアを続け すべて仕事に影響してきます。そこが男性医師とすごく違 させるためには、やはり支援が必要です。その支援の土台 うところです。すべてのライフイベントが仕事のことに対 は育児支援、保育支援ということに尽きると思います。そ していろいろな障害になったりするのです。そのたびに自 れはあって当たり前のことであって、それがあって初めて 分の価値観が揺らぐと思います。その揺らぐことは当たり 女性のキャリア教育、キャリアデザインが考えられるのだ 前だということをまず受け止めていただきたいと思いま と思います。 す。そのとき、それをどうやり過ごしていくのか、どう乗 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 せんが、「これができないなら辞めます」ということでは なく、 「だったらこれができるのではないか」という形で、 あきらめない姿勢を育成していただきたいのです。 育てる方の側も、自ら価値観の多様性を持って、そうい う女性医師たち、あるいは男性医師かもしれませんが、そ ういう人を教育していっていただきたいと考えます。先ほ ど申しましたように、ロールモデルは決して女性医師に とって女性だけではありません。医師として、人間として は、男性もロールモデルの対象になり得るということをよ くお考えいただいて、いいロールモデルにそれぞれなって いただきたいと思います。 以上です。ありがとうございました。 り越えていくのかを考えるということです。 それから、柔軟性を持ってそのことを考えてもらいたい と思います。今一番やりたいことは何なのか。具体的には どうすれば今の自分の困難を乗り越えていくことができ るか、考える力、具体化する力を養うことが大事です。 それから、極端から極端への発想をしないこと。つまり、 これができなかったからもうやめてしまうというのでは なく、これはできなかったけれども、これとこれをつない でいけば何とかここはできて、いずれ元に戻ることができ るかもしれないという、柔軟な発想を持ちながら、極端か ら極端へ移らないということが大事です。 多分、今日ここにおられるのは、教育する側にいらっ しゃる皆さんだと思いますが、ぜひお伝えして、お願いし ておきたいことがあります。女性のキャリアデザインを作 るとき、あるいはキャリアの教育をするときに必要なこと は、先ほどから言っていますが、価値観に揺らぎがあるこ とをまず知っていただきたいと思います。そういった問題 に対して解決すべきなのは個々の女性医師ですが、周囲の 理解が必要です。ぜひ話を聞いてあげてください。話を聞 くだけでも解決することが多いのです。このことをぜひお 願いしたいと思います。 それから、あきらめない姿勢を育成していただきたいで す。先ほどの極端から極端の話と同じになるかもしれま Advanced Clinical Training-network Report 241 「新しい時代のキャリアデザイン」 軍神 正隆(東京大学医学部附属病院 救急部 副部長) 東京大学から参りました、救急部の軍神と申します。よ ろしくお願いします。 私からの話の内容ですが、テーマをいただいて、新しい 時代のキャリアデザインということです。私自身、合衆国 で救急医としての勤務の経験があります。その過程で、卒 後研修医として合衆国で研修をする上で、いろいろな視点 で、日本とは違う文化の中で、目標を持って臨床医として の形を形成するという流れを経験したので、その過程の中 で気付いたところをお話しさせていただきます。 まず、テーマの「新しい時代」なのですが、どういうこ とだと思いますか。残念ながらこういったことだと思いま す。10 年前、20 年前と違う時代の背景、まさしく医療崩 壊の時代と言われています。実際に医療者として合衆国と 日本で私自身勤務していますが、果たして医療は崩壊して いるのかという命題があると思います。 今後のキャリアデザインをしていく上で、大学の使命と しては、教育、研究、臨床、社会貢献の四つが大きな柱と なっているので、現時点で時代のニーズが何かを知ること はキャリアデザインの上で非常に大事になると思います。 この命題を含めて現状を考えていきましょう。 今の医療・医療人の現状、問題点です。 現在の医療の現状、問題点ですが、卒然・卒後の医療人 教育、いわゆる医学教育に系統的な急性期疾患の教育プロ グラムが存在していません。あとは入院患者管理のための 専門医養成に、医療人教育の重点が置かれています。まさ しく臓器別、疾患別、検査データの読みに医療人教育の重 点が置かれています。医療人にとって、急性期の患者診療 に携わる機会が極めて少ないというものが、特に大学病院 の特徴としてあると思います。 どのようにそういう環境が影響するかというと、正確な 診断をつけることに、医療人教育の重点が置かれていま す。すなわち最初に検査、臨床的見立てなしの検査の絨毯 爆撃、自然と流れてくるこういった思考回路が結果的に何 を誘発するかというと、静的診断学、臨床的時間軸の軽視 につながります。重症の患者さんで、症状、疾患が出来上 がった患者さんの診療に関しては一切間違いは起きない のですが、これから重症に至り得る過程にある患者さんを 検査中心で診断をつけようと思うと、擬陽性、陰性、特に 擬陰性という状態が起こり得るので、診断につながらない ことがあります。すなわち、検査中心で診断を組み立てる その思考過程でいくと、最終的には、正しい診断はついた けれども患者は死亡したということも十分にあり得ます。 こういったシステムが誰に影響するか。患者さま側に関 しては、正しい診断と専門科が決まらなければ適切な急変 242 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 時の診療と治療を受けることができないことが多々あり ます。たらい回しの事例があるなど、様々な問題が生じて いる状況が存在します。医療者にとっては、急変時に自分 の専門科を超えた診療を行うことに明らかに限界が生じ ます。行政側は、高額な検査や専門医療を社会保障制度で 維持することが明らかに困難です。 こういう問題を改善に導くために何が行われているの か。 まず患者側からいきます。マスメディアにより、いろい ろな特集が組まれています。早急な日本の医療、特に救急 医療改革の必要性が報道されています。 医療者側からのポイントとしては、大きな変革が 2004 年にありましたが、各専門科ローテーションによる 2 年間 の新初期必修研修プログラムが導入されています。 行政の視点では、医療費削減に取り組みます。国民皆保 険制度を診断重視から管理重視へ既に移行させています。 「救急科」「総合科」が基本診療科へ。総合救急医・プライ マリーケア医の養成を重視する流れに移行しています。施 設によっては、ER 型救急外来の設置を試みる動きへ。入 院医療から外来医療へのシフトへの努力が行われていま す。 こういった新たな改善策が行われているのですが、実は ほかの要因が潜んでいます。医療人としては、2004 年か らのローテーションシステム、各科をローテーションす るとすごくいい流れがあるのですが、結果的には視点が変 わっていないという可能性があります。臓器別、疾患別、 データ中心のローテーション研修は、特に先ほど言った重 症度の高い疾患に関しては、診断上のミスは起こりませ ん。重症に至る過程にいる患者さんにとっては、特に急性 期疾患、急変時の患者の診療においては、残念ながら無力 かつ有害になります。 では、現状の新しい時代、医療崩壊の時代、果たして医 療は崩壊しているのか、再検討してみます。 医療は存在していますが、崩壊はしていません。ポイン トは、医療・医療人自体は崩壊していないのですが、国民 のニーズを満たしきれていないために、多大な弊害が生 じているということが明らかです。今は 10 年前と違って、 患者さま自身で医療自体、あるいは医療知識を含めて検索 ができます。すべての情報を自分自身で得ることができま す。 あとは重症になる前に、命を失う直前になるまで診断が つかないよりも、命を失う危険があれば、命を失わない軽 症の段階で治療するという状況があります。そのもの自体 が一つのニーズだと思いますが、そこの欠陥がまだ存在し ています。 では、どうすればいいか。新しい時代、医療崩壊の時代、 それを医療再生に導く鍵は、大きく分けて二つあると思い ます。一つは「より機能する医療人」の養成、あと一つは「よ り機能する医療」の構築、これが考えられると思います。 Advanced Clinical Training-network Report 243 では、どういった場所がまさしく、さらに機能する医療 人育成に最適なのかということを考えます。 医療人が多くの様々な急性期疾患の診療に携わること ができる場。あとは多くの様々な一般的疾患の診療に携わ ることができる場所、臓器別ではない一般外来、まさしく それは救急外来そのものを指すわけです。 東京大学自体も、ここ 2 年、3 年かけて、救命救急セン ター化に向けて、東京大学において、東京大学病院におい て、地域住民の意向に沿う形で、現在救急外来を充実させ ています。ポイントは、救急外来が救急医の医療施設、医 療の場所でなく、病院総出で、病院の機能として各科の医 師あるいは医療関係者が救急外来診療に従事できる、その 中で教育が構築できるシステムを当大学として今立ち上 げています。 あとは先ほど言いましたが、臓器別ではない症状、兆候 群で診療の切り口を新たな学問として立ち上げる、あるい は教育のエッセンスとして、後進の指導に当たる必要があ るのですが、基本は、すべての急変事例というのは、この 44 症状・兆候、これ自体で各鑑別疾患、あとはそれ自体 の初期治療のポイントが押さえられれば、あらゆる場所、 あらゆる状況で対応できると言われています。ここ 10 ∼ 20 年、救急科診療、救急科というのは一つの臨床疫学の 関係で、学問として形成されています。特に欧米、北米で 立ち上がっています。基本、これは実証されていますが、 この 44 症状・兆候に対応できる医師、あるいは教育のソ フトを確立できれば、うまくいくことが証明されていま す。これは UCLA で実証されています。 特にそれぞれの症状ですが、年齢・性別によって、一般 的な鑑別疾患が五つ、起こる可能性が高い診断が五つ。あ とは可能性が少なくても致死的で絶対に見落としてはい けない疾患が五つ。計 10 個、必ず当てはまるようなシス テムです。そういった医療体系、思考を養成する必要があ ります。 機能する医療人の養成のために何ができるのか。これま での医療人養成の議論に関しては、必ず言うのですが、産 物(患者ケアの質、患者の予後)よりも過程(医療人の満 244 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 足度)を評価することが多かったのです。これは間違って 今までに論じられること、医療人養成に関しては特に はいけないのですが、基本はエンドポイントを明確に持つ 医学知識と手技能力の二つだけに焦点が絞られていまし ということで、より機能するエンドポイントです。 た。より機能するための医療人養成には何を到達目標にす 真のエンドポイント、すなわち医療崩壊を医療改善ある るか。特に最初の五つです。ここにそれぞれ指導力におい いは医療再生に導くエンドポイントというものは、この七 て、医療人を養成する上で定期的にフィードバックをして つに集約されます。臨床判断力、日常診療からの実践学 いく必要があると思います。 習と改善、これは生涯教育ということです。コミュニケー あと、医療再生に向けて機能する医療の構築という話があ ション能力、プロ意識、医療資源の有効活用能力、医学知 るのですが、変動する重症患者さんの治療を目的としてで 識、手技能力、これが到達目標になります。 きた、あとは決定論としての医療を完成するためにできた 「仮想の臓器別診療」を行う日本の臨床・診療スタイルに、 新たに「実存の全人診療」のエッセンスを加えることで、 さらにより機能する医療人養成につながると思います。 もちろん、現存の臓器別診療に関しては今お話ししたと おりです。そこにエッセンスとして、プラスアルファで、 症状・兆候中心、患者中心の急性期疾患に対する医療人養 成。そのための方法論としては、基本的にはレクチャー。 あとは実際のシミュレーションを含めた、オフジョブとい う概念を聞きますが、患者さんに接する前に人形、あるい はイメージトレーニングで、実際の診療、あるいは手技自 体、判断力を養うということ。 最後に、今日の講演の演者の皆さんのキーワードにも 入っているのですが、ロールモデルを明確に提示するとい うことが大事です。すなわち、診療の中でベッドサイド・ ティーチング、指導によるロールモデル。具体的には先ほ ど言った七つの到達目標を含めて、身に付けたロールモデ ルとして、診療のベッドサイドでティーチングをする。こ れは明らかに効果的です。 あとは国から言っていることに対応する、まさしく費用 対効果、あるいは副作用対効果を含めて、価格を基にした 急性期疾患に対する医療、医療人養成。結果的には、医療 というのも社会医学につながる必要があります。最終的に はバランスのいい新たな視点、到達目標の下で、医療体制、 まさしく新しいデザイン、理想とされるキャリアデザイン につながると思います。以上です。ご清聴ありがとうござ いました。 Advanced Clinical Training-network Report 245 (北村) ありがとうございました。 のを食べていたり、車まで同じ色の小さいものに乗ってい それでは、最初の基調講演のお二人も含めて、5 人の先 たり、ロールモデルが見つかるというのはとてもいいこと 生方の登壇をお願いします。 だと思います。 ロールモデルをキーワードにご意見を。いかがでしょ う。 (高原) 自分自身の経験でも、かっこいい、腕のいい先生 がいると、同じように口調まで似たりすることがありまし たが、基本的にはその人がどのようなことを考えているか ということを、下の人間はやはり結構見ているようでし た。 あと、タイプの問題もあると思います。外科医などは特 にロールモデルは必要だと思います。そういう人にめぐり あった外科医は、一つの財産を得たと思うのです。 (北村) 外科医はそうですね。ムンテラのしゃべり方も本 今日のパネルディスカッションの前に、お昼を食べなが 当にそっくりですね。内科医から見ると本当にそうです。 ら下打ち合わせをしていたところ、キャリアデザインとは 筑波大学の研修医は 6 年制なのですが、内科の研修医の修 何だろうと。私の独断と偏見で定義付けをして、東大の研 了の面接試験官を私は何年かしており、そのときに必ず 修には、キャリアデザインを単に人生設計と訳しています 「あなたのロールモデルはこの 6 年間で見つかりましたか」 が、医療者においては、キャリアデザインというのは生涯 と質問するのです。「見つかりました。○○病院の○○先 学び続ける人生を設計する。医療人は生涯学び続けなけれ 生です」と言えるのは大体 6 割です。4 割ぐらいは「私の ばいけないので、その環境や姿勢を教えるというか、そう ロールモデルは、そういえばいません」という感じでした。 いう人生を設計するという点について、先生方にお話を ロールモデルを見つけようとしない人というか、見つから ちょうだいします。 ない人にはどういう対応をしたらいいでしょうか。原先生 まず、今の 3 人の先生を含めて、5 人の先生にご質問や はいかがですか。 ご意見はありますか。 高原先生は心臓外科医としての専門、あるいは専門医の (原尚人) ちょっとずれるかもしれませんが、日ごろ考え 育成。川上順子先生は価値観の多様性の中でも社会貢献す ていることで、ロールモデルと言っていいか分からないの る医者。これは軍神先生と相通じて、軍神先生の方にご質 ですが、今、学生や若い研修医が見ていろいろ情報を得た 問はありますか。 いのは、すぐ上の学年、1 年や 2 年上の先輩なのです。私 あるいは、こういうことでパネルの皆さんにお聞きした が常日ごろ若い人たちに言っているのは、 「もっと 10 年先、 いという、質問ではなく、キャリアデザインの上で、ある 20 年先の人のキャリアを見なさい」と。そうしないと自 いはここの先生方はむしろ研修医、あるいは専門研修医に 分が 10 年後、20 年後をイメージできないのではないかと。 対して教える立場でしょうから、こういうときはどのよう でも、一番関心があるのはすぐ上の先輩なのです。難しい に指導していったらいいのかというご意見がありました のは、10 年ぐらい上の先輩と接することは確かに少ない ら。 のではないかということで、今の先生のご質問からいく では、今お聞きして、ロールモデルというものが一つの キーワードでありました。医学教育では、チューターと ロールモデルというのは違うので、チューターというのは 自分が言えるのです。 「私は君のチューターをやっている、 よろしく」 。ところがロールモデルは、若い研修医に「君 のロールモデルは僕だ」とは言えないのです。ロールモデ ルというのは、研修医なり学習者が選ぶのです。私の人生 のモデルはこの人だということで、選ばれないと駄目なの です。逆ロールモデルもあります。 「あの先生みたいには なりたくない」と。逆にロールモデルを見つけた学習者は 強いですね。何でもまねするのです。仕事だけではなく、 お昼の時間からメニューまで、そのロールモデルと同じも 246 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 と、そういう機会をいかにつくるかということだと思うの みんなそれぞれがうまく有機的につながらなければいけ ですが。 ないわけですよね。とは言っても、原先生がおっしゃって ちょっと蛇足ですが、私はアイスホッケー部の OB 会長 いたように、屋根瓦方式の教育というのがあって、世代が もしていて、その OB 会のときに、参加するのはやはり卒 近い人同士が、お作法を教えて、それを実践することには 業したての人が多いのですが、なるべく卒後 10 年ぐらい 一番適しています。ただ、概念的な、コンセプチュアル した人にたくさん来てくれと言っているのです。そうする なものは、近いような世代はライバル視してしまうので と、そういう OB 会を通して、10 年後ぐらいの人と卒業 す。お父さんと子どもがいがみ合うのもテストステロンの したての人たちが話し合って、そういうイメージが少しで ためだと誰かが言っていましたが、そういうことがあるの もできないかなと考えています。 で、世代を超えてコンセプチュアルを学ぶ機会、学ぶとい うか、知る機会、謦咳に接するという方法もあります。 (北村) フロアの先生、いかがですか。臨床教育センター の前野先生、どうですか。 僕はよく若い人と食事に行ったりしますが、70 歳を超 えているような人たちとご飯を食べることも非常に多い のです。今回も、一昨日までバルセロナとベルリンに講演 (前野) 筑波大学の前野です。ご指名ですので。確かに難 に行っていたのですが、そのときも 60 歳を超えた人たち しいなと思うのは、個人的な意見になってしまいますが、 と一緒に行動していました。それは楽しいのです。「ああ 先生が今言われたように、ロールモデルというのは大学が いうときはこういうことがあって、先生の世代とは違うか 計画して割り当てるものではないのです。逆に今、先生が もしれないけれど」と、グループは同じ人、コンセプトや ご指摘の 4 割が見つけられなかったというのは、ちょっと 底面に流れるものは同じなのに、非常に学ぶことが多いの プログラム的にも残念だなと思っているのですが。 です。 ただ、今日は大学の集まりですので、大学の先生という 医療の人たちは生涯教育が必要だというお話だったの のは、ある意味でロールモデルになりにくい部分があるの ですが、僕はそうは思わないのです。世の中の人たちはみ ではないかと思うのです。特に内科系の先生方というの んなそうなのです。教育をずっと高める、アウェアネスが は、病棟に月曜日から金曜日まで、朝から晩までずっとい ある人というのは、例えばロールモデルになったとして るわけではなく、どちらかというと管理業務をしていた も、「僕はあんな人になりたい」と思ったとしても、5 年 り、研究や教育をされている部分があると思うのです。も 後に自分がいざなってみると、その人はもっと変わってい ちろんそういう教育や研究という意味でのロールモデル るわけです。ですから、絶え間のない変化のようなものが になり得る機会は多いと思いますが、実際の臨床のロール 必要なのだと思いました。すみません、とりとめがなくて。 モデルは、大学ではむしろ探しにくい側面もあるのではな いかと思います。そうするとキャリアデザインの中で、濃 (北村) もう一人の川上順子先生、多様性で。 厚に接して、朝から晩まで一緒に臨床をするというような 期間も意識して、体系的に組織づけていかなければいけな いのかなと思いながら話を聞いていました。 (川上順子) 女性医師にとって多様性は非常に重要な キーワードだと思います。先ほど申し上げたように、ライ フイベントで変わっていかざるを得ない。キャリアデザイ (北村) ありがとうございました。外科の先生はロールモ ンを持っている場合、多様性がなければ対応できないと思 デルがほとんどいらっしゃいますが、内科は確かに、特に います。私は学生には「医師免許を持ってできる仕事は何 大学は難しいということです。何かこのようにしてロール があるか」とよく書かせるのです。どういうものが考えら モデルになろうと努力しているとか、こういう部分がある れるか、考えられるだけ出せと聞くと、なかなかいろいろ とか、ありますか。 なものが出てくるのです。その中で自分がどれを選択して それではまだ少し時間があるので 5 分延長して。もう一 いくのか、取りあえずその場で考えてもらいます。それが つ出てきたキーワードは多様性で、今の医学教育はコンパ 駄目だったとき、次のものをどう選んでいくかというのを クトに決まったことを勉強し、ひたすら専門医に向かって 与えられること、柔軟性と多様性がどうしても必要だと思 いきますが、人間の多様性を認めないというか、学生、研 います。 修医たちにあまり多様性がないというような話もあった 実は先週の木曜日にわれわれの大学で WHO のマーガ ように思います。多様性をキーワードに、川上浩司先生、 レット・チャン先生の講演があって、そのときに、実はマー どうですか。 ガレット・チャン先生はリベラルアーツを最初はしておら れて、それを卒業されてから医学部に入ったということ ( 川 上 浩 司 ) 多 様 性 に は Cultural Diversity、Racial Diversity、Individual Diversity というキーワードがある で、非常にアクティブにキャリアを変えて行かれたという か、そういう柔軟性が大事だと思います。 のですが、社会の多様性、文化の多様性、個人の多様性、 Advanced Clinical Training-network Report 247 (北村) 日本の医学部は確かにいろいろな経歴の人が 多様性に対しては、確かに先生がおっしゃったように、 やって来るのではなく、多くは 18 歳の受験戦争で勝った 僕らの時代はほとんど最初、一般外科に行って全部やっ 人が来ています。 て、虫垂切除術も何もかもやって、心臓外科に行っていま 今の川上先生の話を聞いて思い出したのですが、東大の す。そうすると自分の患者さんが「おなかが痛い」と言っ 入試に面接があったとき、今はないのですが、そのときの たときに、すぐ「消化器外科呼んで」「消化器内科呼んで」 問題に「医師免許を持ってやれる仕事の種類を述べよ」と ではなく、まず自分で診察してということで、あらかじめ いうのがあり、五つ以上言えたら 3 点だったのです。2 ∼ 方向性を付けられるのですが、今の若い人たちはそれがで 5 個の間が 2 点で、一つか二つしか言えなかったら 1 点だ きなくて、すぐ他科受診に出してしまうのです。それはあ と試験官がずっとやっていて、多くの人が高校生ですか まり良くないと思います。ただ、自分もそれほど自信がな ら、せいぜい三つですね。臨床医と基礎医学者と、病理医 いので「じゃあ他科受診させろ」と言ってしまうのですが、 など。公衆衛生とか、その他いろいろ、作家などと言う人 それがかなり問題で、どのようにしたらいいのかというの はほとんどいませんでした。高校生のときからある時点 は、またほかの先生のご意見を聞きたいと思います。 で、ほとんどの臨床医とか、せいぜい基礎医学ぐらいしか イメージがないのではないかと思います。 (原尚人) おっしゃるとおりの質問だと思います。私も同 そこで多様性ということで、教育をしていて、こういう じように感じており、今、若い学生、研修医、とにかく頭 面白い話があるとか。 の中は専門医のことばかりという人が非常に多いと思い ます。そのためにほかのものが随分消されています。 (Q1) 川上先生がおっしゃったように、広い意味での多 どうしてかと考えると、ちょっと極端かもしれません 様性ではなく、医者の中でももっといろいろなものができ が、今の若い世代は物心がついたときは不況の真っただ中 なければいけないと思ったのですが、私は 10 年ぐらい専 でした。われわれはバブルを経験しているのですが、今の 門医機構のところでやってしまって、専門医をつくったの 世代は大体、物心がつくと不況の真っただ中で、いわゆる ですが、これは絶対に良くないことをしてしまったと思っ 生活に追われているような社会環境で育っているので、ま ているのです。それは、全く画一的な専門医を、みんな目 ず現実的に資格など、そういうものがすごく頭にあるとい 標にしてしまったのです。その結果、いわゆる研究マイン うのは、ある程度は仕方がないことなのかなと日ごろ考え ドが必要だとか、ジェネラルな教育が必要だと先生方は ています。 おっしゃいましたが、やはり今、専門医を取ろうとしてい 対策としては非常に難しいのですが、極端に言うと、や る人は誰もそうではないのです。研究マインドを持ってい はり観念論でいくと、今の若い世代は志や夢などを感じる る人は本当にいなくなってしまいました。ジェネラルの教 ことが非常に少なくなったなと感じています。観念論とし 育も必要だと言われているけれども、本人は受けたいと てはそういうものをいかに植え付けるかが一つのポイン 思っていませんよね。資格を取るために仕方なくやるけれ トなのですが、現実的な対策として、アカデミックマイン ども、本当に自分が必要だと思っていないのです。 ドをあれするためには、専門医制度でもう少し論文数の敷 その辺をどのように、 「研究は必要なのだ、このように 居を上げたり、そういうものが必要かなとも考えていま しておかないといけない。研究マインドではなく、本当に す。 研究をしていく人が必要なのだ」「ジェネラルの教育をき ちんとやることが本当に必要なのだ」ということを、も (島田) 自治医科大学の島田といいます。ジェネラリスト う少し本人たちに認知させないと、いくらいいデザインを ということで、私も 20 年近く自治医大におり、その前は 作っても、本人たちがその気にならないと、どうにもなら 高知医科大学にいましたが、それぞれの大学の特徴があ ないという気がしてしまうのです。そういう研究マインド りました。ジェネラルという言葉は様々なものを含みます やジェネラルの教育というものを本人たちに認知させる が、今日、米国で学んだような先生方が言ったような、い には、どうしたらいいかと考えられているか、ちょっと伺 わゆるジェネラルなバックグラウンドというような枠を いたいのですが。 作ってという部分と、日本の場合のジェネラルというの は、先ほど高原先生がおっしゃったように、消化器も内 248 (高原) 難しい問題ですが、研究マインドに関しては、先 視鏡もやって、いろいろな部分のことを全部やって、それ ほど僕が言ったように、一つの症例でも世界に出すことか だけではないというような、いわゆる専門をたくさん学ん ら始まると思います。後期研修の心臓外科の連中が来るの だということです。日本の場合はどちらかというと、おっ ですが、ある程度強制的に年に最低一つはノルマとして しゃるように専門が幾つもあるという形のジェネラルが ペーパーを書けと指導しています。一つ書くことによって 非常に多いと思うのです。 何十編の論文を読むので、そういうくせをつけてやるしか そういう意味でのジェネラルが一番身に付くとは思え ないと思うのです。 ないのです。自治医大のシステムを見ると本当によく分か 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ります。要するに、そのように身に付けておかないとでき ないような仕組みを作っておく。自治医大の人は卒業する と何年か後に必ず様々なことをしないといけないと思い ますが、モチベーションがあるので、どこで研修しても、 大学の学生のときにも、かなり熱心にいろいろなことをす るのです。基本的に、様々なことを。ですから、ものすご く乱暴に言ってしまうと、今、いろいろな意味で、医師の 偏在などがあるのだったら制度的に、例えば卒後何年間、 1 年間ぐらいは必ずしないといけませんよというようにす ると、恐らく熱心にそういうことをやりだすのではないか と思うのです。 ただし、そのジェネラリストというのは、今の北米型の ジェネラリストではなく、日本型のジェネラリストという ものだと思うので、その辺は医療の体制をどうするかとい うのが非常に大きな問題だと思いますが、仮に自治医大の 経験からいくと、そういうことかなと思います。 (北村) ありがとうございました。全国の大学はほとん ど、過半数の大学で地域枠を作ってしまって、その地域枠 があるのなら、自治医大に存在意義はないのかなと悪口を 言う人もいるのですが、島田先生が今おっしゃったよう に、地域医療に従事する人の教育のモデルとして、伝統が あり、見識があるので、そういう意味で今から自治医大に 学ぶところは非常に多いのではないかと思います。 逆に女性が、すべての大学で 3 ∼ 4 割が女性で、その中 で女子医大の存在意義があるのかと思っていたのですが、 やはり川上先生がおっしゃるように、女子医大として、女 性教育に関してモデル的なこと、先進的なことが分かる、 そして病院長や学部長も女性がなっていて、それは多くの 大学が学ぶところがあると思います。 実はもう時間が来てしまったので、最後に用意した言葉 があって、COP10 という生物の多様性を考える会議があ り、そのときに聞いた話です。 「神様が生物を多様につくっ たのは、争わせるためではなく、協力させるためである」 ということです。この 5 大学、最初に山田信博先生がおっ しゃったように、協力するというのは、違う日本の大学が 競うだけではなく、競うのも大事でしょうが、協力するた めに存在しているのだろう、このコンソーシアムがそのよ うになるのだろうと私は思っています。 今日は 5 人の先生方、どうもありがとうございました。 時間がなくて申し訳ありませんでした。 Advanced Clinical Training-network Report 249 (アナウンス) パネリストの先生、座長の北村先生、あり 大学でそれぞれバックグラウンド、設備も違うので、限ら がとうございました。 れた資源を有効に使っていくことが目的になっています。 次に、本事業の筑波大学コーディネーターである阿久津 具体的に、卒前、卒後となっており、大学病院のみなら 博義先生より「東関東・東京高度医療人養成ネットワーク ず、それぞれの大学の関連病院まで含めて、最終的にはそ の取り組み」と題して、本事業を紹介していただきます。 の関連病院レベルでの交流も視野に置いているのですが、 そうは言っても最初は、全く違う大学で研修をするとか、 事業報告 われわれが研修医のころは話題にも上らないような状況 阿久津 博義(筑波大学附属病院 総合臨床教育センター でした。医局の壁なども非常に高く、最初はどこから手を 病院講師) 付けたらいいか分からないということで、まずは大学病院 間での交流を始めてきているわけです。 250 皆さま、本日はお休みのところをお集まりいただいて、 具体的な成果と事業内容です。運営体制、研修プログラ 誠にありがとうございました。私からは、せっかく本日集 ムの整備・公開。一番大きなものが専門研修医を対象にし まっていただいた皆さま方に、われわれがこの 1 年間でど たセミナーです。最終的には人材交流が目的になっていま のようなことをしてきたか、できてきたか。それから今日 す。 お集まりいただいた方には、一つの大きな目的でもあるこ 先ほどちょっと申しました医局の壁というものが非常 の後の分科会で、来年度、もしくはそれ以降の人事交流を に大きくて、実は私は立ち上げのときはいなかったのです どう活性化していただければいいかということをお話し が、何から始めたらいいか分からないと。まずは大学ごと させていただければと思います。 にコーディネーターを配置して、大学間の連絡をスムーズ 本日初めての先生方もいらっしゃると思いますので、簡 にいきやすくする。そしてコーディネーター間でまず意見 単に概要をお話ししますが、この東関東・東京に位置する 交換をして、それをそれぞれの大学に持ち帰って、それか 比較的近い五つの大学病院が連携して、それぞれの得意分 ら具体的な人材派遣の予定などを決めていくという形の 野を相互補完しながら、質の高い医師の教育をしていく 運営体制になっています。 と。一番の大きな目的は教育で、先ほどのキーワードにも コーディネーターの役割ですが、かつてはほかの大学で 出ている多様性を持った教育をしていくことに加えて、各 研修したいというとき、昔は教授に「ちょっと違う大学に 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 行きたいのですが」と言うこともはばかられるような状況 部分や職場環境を整備したり、宿舎や給与などを含めたサ だったと思いますが、今は 5 大学の連携事業ができたので、 ポートをしていくというのが役割です。 昔に比べるとそういったことが相談しやすくなったとは どのようなことを実際にしているのか、ほかの大学の情 思いますが、そうは言っても直接ほかの大学とやりとりし 報は今までほとんど閉ざされていて分からなかったので てしまうといろいろな問題が生じるので、まずは所属科長 すが、それをウェブ上で公開するようにして、それぞれの の許可を得てもらいます。 科でコースを設定してホームページに公開したり、動画の その後、大学間の連絡というところで、コーディネー ようなものを作ってイメージ的に分かるような形でやっ ターの調整が役立ってくるのではないかということで、大 てきています。 学、医局の壁を越えての研修手続きを円滑にするというの 実際にウェブ上で診療科をクリックして、見ていくと具 がわれわれコーディネーターの役割です。 体的にどのようなプログラムが組まれているかというこ その間、慣れない環境での研修ということで、精神的な とが研修医にとって分かりやすくなっています。 まずセミナーですが、その前に教育資源として、それぞ れの大学でシミュレーショントレーナーというものを購 入しています。昨今、直接研修医が患者さんに治療を施す ことが難しくなってきているので、シミュレーションでの トレーニングが非常に重要になってきていると思います が、それぞれの大学で、血管や内視鏡、超音波、画像解析 ワークステーションなどを購入して、それぞれのセミナー で各大学の研修医が参加できるような形になっています。 平成 21 年度はセミナーを 1 年間に 33 回やりました。参 加者総数は 431 名で、今年度は今までに 22 回、参加者総 数が 450 名、さらにあと 23 セミナーが予定されているの で、合計で 45 回ということです。これはほかの大学間連 携事業の中でもかなり充実して、数も多く、参加者数も非 常に多いということで評価をいただいています。 その際に、参加研修医の旅費や参加費をサポートしてい ます。 具体的にはこのような形でセミナーや講習会が行われ て、特に自治医科大学ではピッグセンターというものが あって、ブタを、実際に人を手術するような非常に充実し た環境下で、臓器移植のシミュレーションのセミナーがで きました。あと、千葉大学では腹腔鏡下の、これもブタを 使ったトレーニングができるような設備ができています。 実際に参加された方の感想を聞くと、もちろん医療技術 の習得も大きな成果なのですが、ほかの大学の先生方と触 れ合うきっかけができたと。それから、設備がものすごく 充実していて驚いた。ぜひ機会があったらこういうところ で研修してみたいということで、今後の人事交流につなが るような、ほかの大学での研修の動機付けとしても役立っ ていることが分かりました。 総合診療部門では 5 大学の合同カンファレンスをされて いて、各大学で症例を持ち寄って、その症例の鑑別診断な どをディスカッションします。これは大学の垣根を越えて 自由に意見を述べられるということで、意外とこういうも のは今までなかったのですが、この授業をきっかけにして できるようになりました。いろいろなほかの大学のやり方 や知見を学ぶことができて興味深かったということです。 このようなことは非常に容易に導入可能ですので、しか も交流も深まって、その後の人材交流のきっかけになるの Advanced Clinical Training-network Report 251 252 ではないかということで、積極的にほかの科でも行ってい 短期型の場合は 1 日の、単なる手術の見学も含めるわけ ただけるといいのではないかと思います。 ですが、それから 3 カ月程度の、比較的短い研修になりま 一番大事な人的交流の促進という部分になりますが、長 す。この場合は派遣先に就職という形にはならないので、 期型のものと短期型のものに分けています。長期型研修は その間の人件費は派遣先がそのまま出します。ただ、3 カ 6 カ月から 1 年、この場合は派遣先に就職という形になり 月と比較的短いので、欠員が出ないということで導入しや ます。問題としては、やはり派遣する方に欠員が出てしま すいものではないかと思います。 うので、人に余裕がないと派遣ができません。ですから出 実際の成果ですが、長期型研修に限って言うと、昨年度 して、要するにトレードという形が理想的ですが、なかな は黒丸ですが、これは 1 人だけでした。今年度はそれが 4 かうまくいかない場合が多いです。こちらの研修も少しず 人になっています。リウマチアレルギー、歯科口腔、乳腺 つですが増えてきて、今後もっと増えてきてくれるといい 甲状腺内分泌外科、放射線科ということで、予定のものも のではないかと思っています。 少し入っていますが、少しずつ研修が増えてきていること 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 が見て取れるかと思います。 が、あまりそういうことで精神的に負担が掛かってしま 実際に研修された方の意見を聞いてみると、所属先で人 うと、研修自体の実りが少なくなってしまうこともあるの 間関係、要するに医局を辞めなくてもほかの大学で研修で で、オリエンテーションなども含めたサポートをもう少し きるということが非常に素晴らしいとおっしゃってくれ 充実させなければいけないのではないかと思います。 ています。治療方針が違うなどということで、それを勉強 あとは、1 カ所でしばらく臨床を経験して、あまり目的 できるというのは、先ほどのキーワードにも出ていた多様 意識が不明確のうちに行っても仕方がないというのは当 性を持ったキャリア形成にも寄与するのではないかと思 然です。また、こういったシステムがあること自体、まだ います。 知らない方も多いので、もっと各大学のコーディネーター 問題点として、こういうことを今後解決していかなけれ がそれぞれの大学で各診療科に周知していくことが必要 ばいけないのですが、ほかの大学のシステムに慣れるのに なのではないかと思います。 時間がかかるということです。当然のことではあるのです 短期型も、昨年は 2 件しかなかったのですが、今回、手 術見学やデータ集積の 2 件に加えて、3 カ月という短期で すが、東大から女子医大の方に 3 カ月の研修ができたとい うのが非常に画期的で、今後もこのようなケースがどんど ん増えてきてくれるといいのではないかと思います。 これは具体的な例で、手術見学です。筑波大の脳外科か ら自治医大の方で、頭蓋形成術を自治医大でやっておられ る先生がいて、これを実際に見に行って非常に勉強になっ たと。こういうことはそれほど特別なことではないのです が、人材の損失もないですし、ぜひもっと気軽に行ってい ただいて、ただ行くだけではなく、その報告をしていただ ければ、実績がどんどん増えることになるので、今後も もっと進めていただければと思います。 この後は全体会議になるわけですが、この会議に先立っ て、人材交流にかかわる調査票を各大学の診療科に配付し て、その調査を事前に出しています。こちらを見ると、5 大学全体で、40 の診療科で派遣ができるというお答えを いただいています。 また、受け入れに関しては 122 ということで、ほとんど の診療科は、受け入れに関してはあまりどこも問題はない ということです。ただ、派遣する場合に、人手不足で不可 能という回答が多かったです。人材が不足しているところ に関してはどうしようもないので、少なくともそういった 希望が出ているところは、受け入れを漏れなく進めていっ て、実は昨年も給与や宿舎の面で、希望はあったけれども 受け入れができなかったというケースがあったので、その ようなことを極力なくして、せっかくの希望の芽を摘まな いようにしていくことが必要かと思います。 今まで関連病院でのこういうテーマはなかったのです が、そろそろ関連病院、特に非常に症例が多い病院などの 交流も進めていっていいのではないかと思います。 派遣希望があった診療科に関しては、派遣先の大学コー ディネーターが受け入れを打診していた科もあるかと思 いますが、診療責任者の意向が決まっているようなところ は本日中にも決めていただいて、来年度の人事交流の実現 化に向けて、事務手続きは早速始めさせていただきたいと 思います。もし受け入れと希望が重なった科の先生がい らっしゃいましたら、近くにいるコーディネーター、もし くは最後に、紙に決まった事項を記入して置いていってい Advanced Clinical Training-network Report 253 際の、現時点における専門医養成、あるいは専門医のキャ リア、それから女性医師のことについても、様々な情報が 交換でき、有意義ではなかったかと思います。プレゼン テーターの方々、どうもありがとうございました。 このプロジェクトは大学病院同士が共同しようという ことで、最初は医局はなしに、大学病院がおのおの機能的 にやっていくということまで、最初は思ったようなプロ ジェクトだったのですが、実際にふたを開けてみると、結 局は各大学のおのおのの体制の中で、交流が第一だろうと いう形になっているようです。 そもそもこのプロジェクトの最初のきっかけは、大学に たくさんの研修医を増やそうということではなかったか ただくので、一声掛けていただけると、その後スムーズに と思うのです。ですから一番の目的は、5 大学の研修医の 手続きを進められると思いますので、よろしくお願いしま 数が以前より増えたかどうかが非常に大事なことで、この す。 5 大学は、恐らく研修医は割と減っていないというか、お あと、この事業に関する質問や、具体的に分からない点 のおのを見ても、結構大学に研修医が来ているところでは があれば、近くにいるコーディネーター、もしくは事務担 ないかと思いますが、さらに、最後に事務局の方からご紹 当者にご質問いただければと思います。 介があったように、もっと魅力ある研修の機会を大学が協 以上です。ご清聴ありがとうございました。 力しながらつくり上げて、様々な情報を提供し、日本の今 の医局体制にうまく適合するような形で、なおかつ実際の (アナウンス) 阿久津先生、ありがとうございました。 結果として人的交流が進めばいいという形で、正式にしよ 最後に自治医科大学附属病院の病院長である島田和幸 うとされていると聞いて、これはある意味でよかったな、 先生よりご挨拶をいただきます。 成果が上がっているなと感じた次第です。 これから分かれていろいろとお話し合いがあるようで ご挨拶 す。たくさんの方がおいでになっているので、あと 1 時間 島田 和幸(自治医科大学附属病院 病院長) ぐらい、もう少し交流を深めていただければと思います。 どうもありがとうございました。 このプロジェクトにプラスして、今日はセミナーを開き ましたが、新しい時代の良質なキャリアをデザインすると いうことでした。要するに今、日本が直面している医師の キャリアをどのように組み換えていくのか、今現在、もっ と目を見開いて、様々な多様性のある医師の教育を発揮で きるようなシステムをつくらなければいけないのではな いか、あるいは機能していないものが機能するような、現 実に機能できるようなやり方、いずれもどちらかというと アメリカ型のような発想で、そういうことを聞くと、われ われは本当にそうだなと。しかも、発表されている方は非 常に卒後、どちらかというとお若い方でやっておられると いうのを聞いて、われわれとしてもしっかりと考えなけれ ばいけないなと思います。 例えば韓国や中国では結構そういうシステムを導入し ながらやっているかもしれないと思ったりもするので、負 けてはいられないと思いますが、同時に日本型の問題も あって、どうやって本当に機能し、本当に多様性のあるも のにしていくかということは、これからの非常に大きな問 題だと痛感した次第です。 同時に、そういった次の時代を見据えた話とともに、実 254 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 第 3 回シンポジウム 第 3 部 診療科ごとの分科会の様子 Advanced Clinical Training-network Report 255 256 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク 第 4 回シンポジウム ACT-network は医療人養成プログラムのブラン ドに成り得るか 日時 2011 年 11 月 23 日(水)13:00 ∼ 17:00 場所 東京大学鉄門記念講堂 ディスカッションをし、われわれは何を努力し、何が強み かというようなことが話し合われるものと思っています。 甚だ簡単ですが、今日は半日よろしくお願いしたいと思 います。どうもありがとうございました。 (アナウンス) 北村先生、ありがとうございました。 これより第 1 部基調講演に移ります。初めに、八戸市立 市民病院副院長、救命救急センター・臨床研修センター所 (アナウンス) ただ今より東関東・東京高度医療人養成 長、今明秀先生より「救急医師であふれかえる病院の秘密」 ネットワーク第 4 回シンポジウムを開会いたします。開会 と題してご講演いただきます。座長を、自治医科大学附属 に当たり、東京大学医学部附属病院総合研修センター総セ 病院卒後臨床研修センター准教授、三瀬順一先生、お願い ンター長、北村聖先生よりご挨拶をいただきます。 いたします。 開会の挨拶 第1部 北村 聖(東京大学医学部附属病院 総合研修センター 基調講演Ⅰ 総センター長) 演題 「救急医師であふれかえる病院の秘密」 皆さま、こんにちは。ご紹介いただきました東京大学の 演者 今 明秀(八戸市立市民病院 副院長・救命救 北村と申します。本日は祭日で、また、いわゆる行楽日和 急センター所長・臨床研修センター にもかかわらず、お集まりいただきまして本当にありがと 所長) うございます。 この東関東・東京高度医療人養成ネットワークは、平成 座長 三瀬 順一(自治医科大学附属病院 卒後臨床研 修センター 准教授) 20 年度の文科省の GP で採択されたものです。幾つかの 大学が連携して研修を終わった後の 3 年目以降のいわゆる (三瀬) 皆さん、こんにちは。今日は「救急医師であふれ 後期研修、あるいは専門研修を有機的にネットワークでつ かえる病院の秘密」と題して、今先生に来ていただきまし なぐことによって、ひいては地域の医師不足の解消、ある た。略歴は 1983 年に自治医科大学卒業とご紹介するとこ いは高度な医療人の養成という目的を達するために作ら ろですが、パンフレットに紹介しましたので、それをご覧 れたものです。われわれが相談して、筑波大学の強いリー いただきまして、早速、基調講演Ⅰを始めていただきたい ダーシップの下、自治医科大学、千葉大学、女子医科大学、 と思います。先生、よろしくお願いします。 そして東京大学の五つが連携して、今までいろいろな取り 青森県八戸市立市民病院、今です。よろしくお願いしま 組みをしてまいりました。 す。今回 ACT-network のこのようなシンポジウムで非常 毎年シンポジウムをやっておりまして、今年は第 4 回で に緊張しておりますが、一生懸命やらせていただきます。 す。今年のテーマは、ACT-network、Advanced Clinical よろしくお願いします。 Training-network の 略 で す が、 「ACT-network は 医 療 人 「救急医師であふれかえる病院の秘密」、今日はこのお話 養成プログラムのブランドになり得るか」ということで をいたします。 す。疑問形になっているのはそれを考えた松村先生の謙虚 救急医療を実践するには若い医師の力が必要です。それ な性格だと思うのです。もちろん日本最高のブランドにな らを獲得することを目的としています。 ると私は個人的には信じております。今日のシンポジウム 若手救急医を集めるにはブランドにならなければ駄目 が終わったら、やはり「ブランドになった」と、疑問形の なのです。中身だけでは駄目なのですね。見栄えも大事な クエスチョンが取れるものと信じております。 のです。響きも大事なのです。 本日の第 1 部では、八戸市民病院のカリスマ救急医の今 ブランド化には、 「唯一」 「頂点」 「先駆者」の三つのキー 先生にお越しいただきまして、救急のお話をしていただき ワードでいろいろ活動しています。これら三つの商品を ます。私自身も今先生の職場を一度訪問したことがありま もって、これらを広報して、認識されるようになる。これ す。非常に感銘を受けました。もう 1 人の方は、この前ま がブランド化だと思っています。このブランド化の商品と で厚生労働省の政務官をされていた足立信也先生で、医療 なるものを開発しなければいけないのです。 人を含めて人材を養成するということについてお話をい まず「唯一」です。私どもの救命救急センターは国内の ただきます。 普通の救命センターと決定的に違うことがあります。全部 2 部では、文科省の中間評価において A ランクであっ やっています。市民教育、病院前出動、ER、ICU、二次救急、 た群馬大学ならびに長崎大学の取り組みを含めてパネル 一般病棟、リハビリ、解剖、診療所支援、これらすべてを Advanced Clinical Training-network Report 257 全部救命救急センターがやっています。これはほかに国内 ではありません。 「頂点」です。平成 21 年度病院機能評価の救急医療機能 けれども、これを「劇的救命」と訳しました。これが実 は診療の質の評価に用いられます。 「サンダーバード作戦」 「劇的救命」という名前を聞いたら八戸救命が思う浮かぶ 分野で 4 項目中 3 項目に通信簿の 5 をいただきました。こ というような仕組みになればいいなと思っています。 れは国内で最良です。 そして、これらの商品を広く国内に広報します。 新しいこともしなければいけません。ドクターヘリとド 広報の方法ですが、学生、研修医が読む雑誌への論文に クターカーの同時出動を「サンダーバード作戦」と呼んで 「劇的救命」 「サンダーバード作戦」の用語を頻回に載せま います。国内でこれを同時にやって、同時に出動している した。研修医向け救急講習会を開催して、全国から受講生 ところはまだありません。文献検索をしましたが、世界中 を募集しています。「劇的救命 .jp」のブログを載せていま にも例がありません。予測救命率が 50%未満の重症外傷 す。 「サンダーバード作戦」 「劇的救命」の用語を医学用語 を救命する unexpected survivors は大変なことなのです として今、使い始めています。 私たちの八戸救命のブランドメッセージは「劇的救命」 です。 救急の講習会で集まった研修医に対して「劇的救命」と いう言葉を連発して、それまで使ったことのない研修医に 覚えてもらいます。例えば difficult airway 講習会、ER ト リアージ & アクション講習会、外傷講習会、中心静脈穿 刺講習会、産科救急講習会、さらに ACLS、ICLS という ような講習会に全国公募で受講生に来てもらい、彼らに 「劇的救命」という言葉を印象づけます。 なぜ青森県の八戸は、北の外れなのに救命救急医師が集 まるのでしょうか。 若者は全部やる八戸救命を経験してみたい。経験できる のは国内で唯一です。 258 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 所の経験が必要だと思います。 まず、若い医師には最初に ER をマスターしてもらいま す。また、同時に研修医から上がってきた若い医師は ER をやりたいのです。研修医から上がってきた若い医師は ER が救急だと思っています。ですから、まず ER です。 救急医と研修医を同時に集めることをしております。こ れはどういうことかというと、実は ER は救急医だけでは うまくいかないのです。ER には研修医が必要なのです。 研修医と救急医が ER を担当します。研修医は ER で勉強 したいのです。若い救急医はそこで研修医に教えながら逆 に助けてもらいます。救急医は研修医に教えることがすな 八戸救命救急センターは、一次医療圏が 25 万人、二次 わち自己学習になります。ですから、ER をうまくやるに 医療圏、三次医療圏を併せて 67 万人です。584 床の総合 は研修医の存在が必ず必要なのです。 病院です。一次から三次救急まで全部扱っています。救急 ER 型救急では週 2 回の日中 ER 当番があります。実は 車は 5000 台です。 患者数はそんなに多くないので、一人一人じっくり診るこ 病院前、初期治療、リハビリ、解剖まで救命救急セン とができます。細菌検査は救急室でできます。緊急処置も ターで行っています。救急 ICU は 30 床、救命一般病棟が たくさんあります。ER 当直は月 4 回です。人口 25 万人 43 床あります。現在、救命救急科の入院受け持ち患者数 の町なので、医師会の協力もあり、そんなに疲弊しません。 は 100 名です。 医師会の診療所の機能がとても大事です。 救急医師当直は 1 日 2 ∼ 3 名で、翌日は休みにしていま ER をマスターすると、若い医師は次に病院前救急に興 す。日勤帯ドクターヘリ当番 2 名、日勤から準夜までドク 味を持ちます。例えばドクターヘリでこのような場所に自 ターカー当番 1 名を配置しています。 ら出動します。 どうして八戸市内で救急がうまくいっているか。それは ドクターヘリはテレビドラマで大活躍しました。若い医 医師会の存在です。医師会の夜間救急診療所で年間 2 万人 師は自分が山 P になりたいと思っているのです。 の一次救急を診てくれています。八戸救命救急センターで 私たちはドクターヘリをはじめ、さらにその先にロンド 2 万人です。ほぼ同数を医師会で診てくれることになりま ンを目標として、Rapid response car を始めました。ドク す。ここの関係があるので、私たちのマンパワーが疲弊し ターヘリは基本的には天気のいい日や日中にしか出動で ないで済みます。 きないのです。夜間は出ないのです。吹雪の日も出ないの 救急の後期研修では、彼らに達成感を味わわせることに です。補うようにして、Rapid response car を町に走らせ しています。ER 救急だけでは達成感が低いのです。ICU ます。 を入れることで充足します。救急総合診療を入れることで Rapid response car には 3 年目の医師から乗せます。ド 臨床力が向上します。特に多発外傷、脳梗塞患者を受け持 クターヘリの方は救急専門医になってから乗せることに つことは手技を覚えるとてもいいチャンスです。 しています。 ヘリコプター救急、ドクターカー救急、災害出動は今、 Rapid response car は年間 800 件出動しています。患者 若い救急医があこがれるところです。 を乗せる設備を持っていません。普通自動車にサイレンを さらに、大きな病院で救命救急をやっていると、偏った 付けただけです。医師を現場に緊急に運ぶだけです。専 医師になるのではないかと思っています。ですから、優し 属ドライバーは消防 OB を採用しています。午前 8 時から い心を持った救急医になってもらうためには田舎の診療 23 時までの運行です。現在 Rapid response car の要請か ら出動まで 3.5 分という短い時間で病院を出発することに 成功しています。内訳は外傷、内因性、心肺停止です。 救急車同乗実習を行っています。病院前救急に興味を 持ってくれた若い医師は、ドクターカー、ドクターヘリだ けではなくて、救急車にも乗っています。八戸消防に火曜 日と金曜日の午後 6 時から 11 時まで待機してもらい、全 119 番通報に出動します。 昼も夜も現場に多くの医師が出られる機会を提供して います。日中、準夜帯、さらに深夜帯から早朝まで、この ような仕組みでいろいろなものを使って医師が現場にい つでも出られるようにしています。 Advanced Clinical Training-network Report 259 病院前のこと、それから ER のことだけでは片手落ちで 朝救急勉強会(AKB)もあります。 す。やはり医師として大事なのは入院治療です。入院治療 「サンダーバード作戦」と「劇的救命」という用語を国 は、救急総合診療、二次救急、三次救急を組み合わせてい 内に今、広めようとしています。これに関しては先駆者だ ます。 と思っています。 救急総合診療です。内科救急入院患者を受け持つこと 医師が現場に出動する。あるときは空から、あるときは で、総合内科のトレーニングができます。指導は総合内科 陸から、また、あるときは同時出動。2 隊同時出動するこ 専門医です。いろいろな内科の手技を覚え、いろいろな内 とを「サンダーバード作戦」と呼んでいます。 科の疾患患者を受け持ちます。 ICU 型救急です。東京都内の三次救命救急センターが ***ビデオ上映*** 主にやっていることですが、30 床の救急 ICU を持ってい ます。そこで集中治療が展開され、そこではたくさんの重 サンダーバードの響きを聞いて、なつかしいなと思って 症の患者さんを受け持ち、また、手技も多いです。例えば いる人も今日はいますね。いつも研修医と学生に話をする 経皮的心肺補助装置(PCPS)です。どんどん年間の数が と、みんなちんぷんかんぷんなのです。今日は何人かいる 増えて、今年になって 9 月までで 27 件の PCPS を救命救 ようです。このイギリスで作られた「サンダーバード作戦」 急センターで回しています。 は、少年時代に私はテレビを見てよく知っているのですけ 外傷外科です。多発外傷、重症外傷を受け持って手術し れども、まさか大人になってから、自分が「サンダーバー ます。外傷ガイドライン(JATEC)を実践し、外傷手術 ド作戦」を決行できるとは夢にも思いませんでした。 (Damage Control Surgery)を理解します。現在、外傷症 八甲田山を越えたところでドクターヘリに無線が入り 例登録施設は東北で 4 カ所しかありません。そのうちの一 ました。ちょうど青森市に出動していて、八戸市までは空 つです。私たちはバイタルサインと損傷部位からパソコン の距離で約 70 キロあります。青森市から八戸市に帰る途 を使って予測救命率を計算し、その予測救命率を見て、う 中のドクターヘリに、八甲田山の上で「八戸から南の岩 まくいきそうだとか、無理かも分からないということを考 手県の県境の近くに出動してほしい」と無線が入りまし えながら治療しています。 た。この距離だとちょっと無理です。そこで、先に Rapid 脳卒中です。実は ER には意識障害の患者さんがたくさ response car のドクターカーが出ることになりました。も ん来るわけです。その中の一部分が脳卒中です。通常の病 ちろんドクターヘリも空から向かいます。現場で医師 2 名 院では、脳卒中と分かると神経内科や脳外科に行ってしま が合流しました。現場では Japan Coma Scale200、痛み刺 うのですけれども、そうではなくて、ほとんど受け持ちま 激で目が開きません。気管挿管し、人工呼吸を現場で開始 す。脳卒中は現在救命救急で年間 450 例を受け持ちをして しています。 います。救命病棟ではこれらに対してリハビリまで対応し ています。ドクターヘリ、ドクターカーでわれわれが現場 ***ビデオ上映*** に行き、そこから脳卒中治療を開始しています。 260 たくさんの患者さんが救命救急センターで亡くなりま この患者さんは結局、脳梗塞で、治療して、t-PA で対 す。また、たくさんの患者さんが ER に心肺停止で運ばれ 応して、社会復帰しています。 てきます。亡くなって終わりではありません。亡くなった 「劇的救命」の言葉に若い医師は感動するわけです。何 後に、私たちは病理解剖を積極的に勧めています。昨年度、 のために医師になったのか。命を救うためです。難しいと 救命救急科で病理解剖を 47 体行いました。私たちは病理 思う患者さんの命を救うことが若い医師にとってすごく 解剖を病理医と一緒にしたり、もしくは病理医が都合が悪 感動することなのです。この「劇的救命」を若い医師に見 いときはわれわれ単独で病理解剖をすることもあります。 せます。また、 「劇的救命」を自ら若い医師が経験します。 基本的には主治医がメスを握ります。 Probability survival Score が 50%未満のような予測救命 教育に一番課題なのはカンファランスなのです。救急指 率が低い重症外傷患者の救命は Unexpected survivor(予 導医と内科専門医はカンファランスを指導します。朝のカ 想外の救命)です。予想外の救命ができれば、これを「劇 ンファランスでは前日入院、大体 1 日 5 人から 10 人の入 的救命」と言っています。 「劇的救命」の患者数が多ければ、 院があるのですが、それを研修医、または後期研修医がプ それは高い質の外傷診療を意味します。 レゼンします。ゆっくり時間をかけます。1 日大体 90 分 26 歳、 男性です。軽自動車と大型トレーラーの事故です。 カンファランスに時間をかけています。「早く指示出しを 午前 2 時 55 分に医師 2 名が現場に出動しました。こんな してほしい」と看護師から文句が来ます。教育が第一で、 感じで軽自動車とトレーラーがぐちゃぐちゃになってい その次が病棟と思っていますので、カンファレンスは相変 ます。気道、呼吸、循環、意識すべてに患者さんは異常が わらずたっぷり時間をかけています。そのほかにリハビリ ありました。119 番通報から病院まで運ぶのに 1 時間半も カンファがあります。死亡症例カンファがあります。また、 かかっています。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 病院到着時が午前 4 時 18 分、血圧 68、心拍数 120、呼 吸数 32、サチュレーション 88%、Glasgow Coma Scale が 7 点、昏睡状態です。緊急開頭手術を行っています。 予測救命率が 24%、Unexpected survivor、「劇的救命」 です。このような状況に医師が現場に行き、初期治療し、 手術まで持っていき、リハビリをして、社会復帰させると いう流れを見ると感動するわけです。 ブランドになるための商品を広報します。実は青森県八 戸というところはとても無名なのです。ただの田舎なので す。大体、読める人が少ないのです。「はっと」とかいう レベルです。では、有名にすればいいのです。そして、も しうまくいって有名になったら、さらに今作っているブラ ンド商品を広報すればいいのです。 うまく広報がいき、学生見学では 1 年で 130 名が救命救 急センターに全国から来ております。八戸救命を学生に見 入を得ています。病院全体も昨年度から黒字になり、新病 てもらいます。彼ら研修医が他施設で研修中、もしくは研 院創業以来、初めての黒字となりました。私どもの救命救 修が終わった後に 2 度目の見学に来てもらいます。残念な 急科だけではないのですが、当然我々の伸びが黒字経営に がら 130 名の学生のうち、2 度目の見学に来るのは 15 名 つながっているのではないかと思います。黒字経営になる です。この 15 名が後期研修の候補になります。学生のう と、多くの医師、また救急医を採用でき、たくさんの診療 ちに記憶を植え付けます。 機材を買えます。また、ドクターカーも手に入ります。い 研修医に八戸救命を一流だと思わせます。例えば研修医 ろいろなことがいいサイクルに入ります。 が読む「レジデントノート」などの雑誌、もしくは「日経 考察です。これら救命救急のブランドを作ることに努力 メディカル」などに毎月のように論文、文章を出します。 していますが、ブランドというものは作れるのでしょう これは苦しいです。苦しいのですけれども、ただでできる か。船井総研のものをインターネットで引っ張ってきただ 広報です。例えばめまいの診療、例えば外傷診療、例えば けなのですけれども、ブランドを作るための取り組みは大 敗血症の話、例えばドクターヘリのような材料で医学論文 きく二つあると言っています。ブランドメッセージの策定 を研修医向けに出すわけです。 とブランディング広告の実行です。 ブログの宣伝効果です。ブログは「劇的救命 .jp」です。 ブランドメッセージの策定は、どこを目指しているの 私どもの書いているブログを見てみましょう。これはブロ か、何を大事にしているのか、何を伝えたいのか。これ グアクセスランキングですけれども、東方神起という芸能 をはっきりと提示して、さらに顧客をぐっとひきつける 人のランキングが 1 位ですが、実は私どもの「青森県ドク キャッチーな言葉を開発します。例えば「劇的救命」、例 ターヘリスタッフブログ」が 5 位です。今は 9 位なのです えば「サンダーバード作戦」です。このような言葉と行動 けれども、最高 5 位まで上がっています。つまり、多くの がまず必要なのだということです。 市民、もしくは学生、研修医が見てくれています。今まで 広告です。安価な新聞広告や雑誌広告での広告です。特 に 73 万人が見ています。 に私たちが持っている最大の媒体は医学雑誌です。商業雑 2004 年に私は 1 人で八戸に赴任しました。仲間がどん 誌には論文をただで載せられます。ただで載せられるどこ どん増え、今は 18 人まで増えています。 ろか、原稿料がちょっとだけ入ってきます。これを使わな 仲間が増えてくると、やることが、また、できることが い手はありません。うんと論文を書くのです。イコール広 たくさんあります。よく「救急は赤字だから」 「救急は金 告になります。安価どころではないですね。無料の広告で 食い虫だ」というようなことを言われるのですが、これは す。これを使います。 少ない人数で救急をやっている、もしくは中途半端な救急 さらにブログです。ブログは「劇的救命 .jp」 の商標を取っ です。がつんとやる救急を、昼も夜も深夜帯も、さらに病 ていますので、それにはちょっぴりだけお金がかかってい 院の外まで出ていってやれば、日勤帯単独よりも 4 倍収入 ますが、それも安いものです。このような高い広告料では が増えます。当たり前のことです。救急室だけで昼間だけ なくて、安い広告で十分実行できるのではないかと船井総 仕事をするのではなくて、真夜中まで仕事をし、さらに病 研が言っていますので、まさにそのとおりだと思っていま 院の外でも仕事をします。 す。 われわれの救命救急科の入院収入の内訳です。平成 18 まとめです。医療資源の乏しい地方なのに研修医が集ま 年度は外科や循環器よりも明らかに低かったのですが、昨 るのは、ニューブランドを目指しているから、救急が充実 年度は外科、循環器を引き離して、年間 21 億円の入院収 しているから、夜も救急専従医が 2 名以上で指導している Advanced Clinical Training-network Report 261 から、大規模講習会を月 1 回はやっているから、手技もで ディカルコントロールを取って、救急救命士が気管挿管 きるしレクチャーも充実しているからです。 する場合に、 「やれ」という一言で瞬時にオーケーなので、 救急医が北の外れに集まるのは、田舎だから仕事がある いいです。ただ、軽症の患者が多いので、医学的な効果は のです。田舎だけれども学術的です。ER を展開しても、 あまりよくないのですが、双方のコミュニケーションとわ 東京のようには疲弊しないのです。重症患者治療もできま れわれが現場に出ていくという練習には十分なっている す。病院前に出ていくし、リハビリまで全部完結する達成 と思います。 感が味わえます。収益が良いので、病院が救命救急のこと を応援してくれます。ニューブランドを目指しています。 (Q1) すみません、あと 2 点ゼネラルな質問です。われ 結論です。 「医療の原点は救急にあり」、院長の言葉です。 われも ER と ICU のドッキング体制は当初からやってい この言葉で最大の応援をもらっていますので、のびのびと て、ソフトの充実にも日夜励んでいるのですが、お話を できます。医療の原点は救急にあります。地域を守る鍵の 伺っていて、われわれの場合、とにかく広報が下手くそだ 一つは救急医療を制することです。医師不足は地方が原因 と思っているのです。それに関して具体的なお話もいただ ではありません。ブランド化で地方病院に救急医師は集ま いたのですけれども、特にこういうことを注意していると りました。若手医師で今、地域の救急医療を確保していま いうか、クローズアップしているということがあったら教 す。 えていただきたいということです。 メッセージは「劇的救命」です。ご清聴ありがとうござ そ れ か ら、 そ れ と そ ん な に は 関 連 し な い の で す が、 いました。 ちょっと聞きにくい質問なのですけれども、後期研修医が これだけたくさん集まってきてくれている、その中でス 質疑応答 タッフとして病院の救命で残ってくれるような人数、パー センテージはどのくらいなのでしょうか。 (三瀬) 今先生、ありがとうございました。若干時間があ りますので、せっかくですから、ご質問を受けたいと思い (今) まず ER と ICU の活動についての広報のことです ます。いかがでしょうか。挙手をお願いしたいと思います。 が、先ほどお話ししたように、論文ですね。研修医向けの 論文です。つまり、マニュアル的なものです。さらに内容 (Q1) 千葉大救急の渡邉です。大変面白いお話をありが は簡単なものです。研修医の 1 年目が読むような内容の論 とうございます。3 点ほど質問があるのですけれども、ま 文を、1 年目の研修医が読む雑誌に念入りに投稿すること ず、細かい質問です。医師の救急車同乗実習というのが です。そうすると、彼らはそれを読むのです。読むと、例 あったと思うのですけれども、それに対しての外来コスト えば私と読んでくれた研修医が友達のような錯覚に陥る です。同乗するとなると、手を出さざるを得ない状況には のです。どうしてかというと、しょっちゅう読んでくれて なってくると思うのですが、そのやれる範囲とかをどう定 いるからです。私の出身地まで研修医は知っています。そ めているかということと、やった場合のコストや、万が一 のぐらいのフレンドリーな関係に論文を通してなってい のときの場合の補償や保険のことをどのようにされてい ます。そこまで来れば、多分広報は成功ではないかと思い るのかを、大体で結構なのですけれども、教えてください。 ます。 ブログに関しては、ブログを上手に管理してくれる人間 262 (今) ご質問ありがとうございます。救急車同乗実習のこ の存在が必要なので、すぐにはまねできないと思うのです とです。まず、救急車同乗実習は消防署と病院が書類で取 が、私の病院にはブログに関して上手な人がいるので助 り決めをしています。万が一の事故が医療事故も含めて かっています。 あった場合は、病院の勤務の延長と考えて病院が補償して ですから、どの施設もまねできるとすれば、研修医の読 くれます。交通事故に関しても、医療事故に関してもです。 む雑誌にしょっちゅう投稿する、しかも簡単な文章で投稿 救急車の中では当然のように医療行為をします。躊躇しま することです。専門医が論文を書くと、なぜかどんどん難 せん。その医療行為のコストは、私どもの病院に患者さん しくなって、どんどんページ数が増えます。それを 2 割方 を運んできた場合は保険請求します。例えば点滴代、気管 ページ数を減らして、行間を空けて、さらに色の付いた図 挿管代などです。私どもの病院以外に運んだ場合は無料で 表を載せて、難しい文章は単語を全部簡単にするぐらいの す。サービスです。 ことが必要です。若手の研修医向けの文章は、いったん論 それから、診療の範囲は、やれること全部です。医師に 文を書いてから書き直す作業が必要なのです。10 年目医 よって範囲が違います。また、走る時間ですね。うんと病 師向けの文章と違うのです。それを分かっていないと、読 院に近いとできないことも、遠いとできるとか、そういう んでくれません。 ことはあります。おおむね救急隊員は好意的です。私た それから、次に後期研修医が集まっていて、彼らが病院 ちが救急車に乗ることで救急隊は勉強になるし、また、メ にどれくらい残ってスタッフになってくれるかですが、私 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 が八戸に来てから、まだたった 8 年です。8 年しかたって ですが、閉鎖までは行かないにしても、相当パワーが落ち いません。つまり、1 人ぼっちで来て、ようやく 18 人ま ています。腎臓内科はいません。血液内科はいません。膠 で増えていますが、その中からまだ卒業生が 2 人しか出て 原病内科もいません。神経内科が 1 人になりました。麻酔 いません。後期研修が終わった人間が 2 人しか出ていませ 科専門も 1 人になりました。呼吸内科も一時期は 2 人にな ん。来年また 3 人ぐらい出る予定です。残念ながら、私 りました。そういう病院です。 たちの病院で完結できるとは思ってはいませんので、一 そういう病院で、去年まではできていたけれども、今年 時期、私どもの病院にいてもらって、例えば東京の病院 からできなくなったところがあるわけです。例えば神経内 に行って修業するというサイクルでいいのではないかと 科は脳梗塞が診られなくなりました。パーキンソンは診る 思っています。ただ、スタッフが必要ですので、まれに残っ けれども、脳梗塞は無理です。泌尿器科は、腎臓のがんの てくれる人が 1 人でも 2 人でもいればうれしいです。別に 手術はするけれども、真夜中に来る尿管結石は無理です。 一生涯残らなくていいのです。つまり、卒後 8 年ぐらいで 多くの診療科が無理、無理、無理と言いました。それを全 私どもの病院から卒業していく人と、卒後 11 年ぐらいま 部をもらってきます。全部もらってくると、最初は診療が でいてくれる人が混ざり合っているだけで、十分機能する 下手くそなのですが、だんだんと上手になります。年間 のではないかと思っています。まだ歴史がありません。 450 人も脳梗塞を診ると上手になります。今では神経内科 また、ずっと何十年も医師が同じ病院にいて、いい効果 の医者が 2 人増えたのですが、神経内科から「脳梗塞です。 が出るかどうか私も分かりません。私自身も今まで 6 年以 入院治療をお願いします」とわれわれに来ます。今では泌 上同じ病院にいたことがないのです。今回は 8 年目を迎え 尿器科から「尿管結石です。複雑性尿路感染症ですので、 ています。人生において最長不倒距離に入っているので 救命でお願いします」という関係になりました。 すけれども、これでいいのかどうか。私自身も、このま ですから、最初は専門診療科が嫌がっている分野をうん ま 10 年目、11 年目と八戸にずっと残っていいのかどうか。 と診ました。今は上手になったので、専門診療科から比較 それは自分でも疑問です。今はいますけれども。ですから、 的頼られる感じで、うまくいっています。ただ、摩擦のあ ずっと先のことを考えや戦略などは残念ながら何も持っ る診療科もあります。それはしょうがないことです。でも、 ていません。考えているのは、若い医師が勉強目的に来る 1 日 100 人も入院患者さんを持っていますが、その中でぎ サイクルの中に自分がいる、そして町がもしくは病院がそ すぎすした関係になる瞬間は多くないです。少なくとも前 れを応援してくれるという今の体制は上手にできると思 にいた病院に比べるとずっと少ないです。うまくやってい うのですが、うんと先のことは分かりません。 るところだと思います。そんなことで、いいでしょうか。 (三瀬) ありがとうございました。あと 1 分ぐらいですが、 (三瀬) ありがとうございました。ご意見を伺いたいとこ どなたか。では、あちらの方です。どうぞ。 ろですが、時間ですので、フロアの方に戻していただきた いと思います。申し訳ありません。今日は、今先生、どう (Q2) 今先生、ありがとうございました。自治医大附属 もありがとうございました。 さいたま医療センターの菅原です。先生のところでは、ほ ぼすべてのことを完結してやっておられることはよく分 かったのですけれども、八戸市民病院の他の診療科との関 係はどのように築いておられるのでしょう。患者さんとの やり取りなどです。よろしくお願いします。 (今) 分かりました。幅広い分野でいろいろな活動をする ことによって起こるほかの診療科との摩擦のことだと思 いますが、前に赴任していた病院がすごい摩擦だったので す。いっぱい手を出して、摩擦がありました。そこで学び ました。どうすれば摩擦を減らせるか。日本語が上手にな ればいいのです。けんかしないような日本語を選んで話を すると、まず何とかなるのではないかと思います。 それから、どうして八戸救命がこんなにたくさんできる かというと、東北地方、特に青森県は医師不足で、病院の パワーが落ちています。それは多分、青森県だけではなく ても、例えば銚子の病院だって閉鎖になったり、北海道の 病院が閉鎖になっているところがたくさんあると思うの Advanced Clinical Training-network Report 263 (アナウンス) 続きまして、参議院議員、筑波大学客員教 授、足立信也先生より、「成長戦略・ライフイノベーショ (松村) では、お話はプロですので、よろしくお願いいた します。 ンとその人材」と題してご講演いただきます。座長を筑波 大学附属病院副病院長、松村明先生、お願いいたします。 基調講演Ⅱ 演題 「成長戦略・ライフイノベーションとその人材」 演者 足立 信也(参議院議員・筑波大学客員教授) 座長 松村 明(筑波大学附属病院 副病院長) (松村) それでは早速、基調講演のⅡを始めさせていた だきたいと思います。本日は参議院議員の足立信也先生 に「成長戦略・ライフイノベーションとその人材」という ことでご講演いただくことになっています。略歴はパンフ レットの方に入っていますので、詳しくは申しませんけ (足立) 松村先生、お招きいただきましてありがとうござ れども、足立先生は筑波大学の医学部専門学群を卒業さ います。今先生の勢いのある話の後になかなか話しづらい れて、20 年以上臨床の外科医として働いてこられました。 のですけれども、やはり政府側や与党側になると頭を下げ また、大学でも研修医、学生の指導を行われた方です。そ ることが多くて、あまり勢いのある話にはならないかと思 の後に参議院議員を 7 年お務めになられているということ いますけれども、ちょっと準備ができるまで。 で、現在は政策調査会の副会長や税制調査会副会長、それ 実は 5 大学の今年 4 年目になるネットワークがございま から、先ほどもありましたように、厚生労働大臣の政務官 すが、私が大学の学生時代に準硬式野球部の 3 学対抗戦、 ということで、日本の医療についていろいろグランドデザ というのがありまして、東大と千葉大と筑波大というとこ インをやられています。本日はそういう観点から、地域医 ろからスタートしました。私は、松村先生からご紹介があ 療での人材不足や医療崩壊、このプロジェクトもそうです りましたけれども、消化器外科とともに卒後臨床研修部で けれども、人材交流について国の観点、政府の観点から広 したので、卒後臨床研修の必修化に向けて、全国医学部長 くお話しいただけるということをお願いしてあります。具 病院長会議の分科会に出席して、当時は、国立大学の中で 体的な先ほどの今先生のお話とは随分離れるかと思いま 日本で初めてレジデント制を導入したのが筑波ですし、筑 すが、また違った視点でぜひお話をいただいて、皆さんの 波モデルということでかなり主張したのですけれども、実 お役に立てればと思っております。 際に出来上がったものはかけ離れたような形になってし 足立先生と私は結構、一緒に研究もしたり、それから、 まって、大変残念な思いをしました。その話し合いの場が 個人的にも子どもが同級生であるなど、そういうつながり 東大の研究棟だったのを思い出します。 もあったりして、大変お忙しい中を来ていただきました。 今日の話は「高度医療人養成ネットワーク」ということ 足立先生は今 TPP の方でものすごくお忙しくて、スライ ですけれども、国の政策が今どこに向いていて、どの分野 ドも今なかなか出ないようですけれども、スライドもスト が狙い目といいますか、どの分野を考えるべきだというよ を起こしているぐらい本当にお忙しいということです。 うなことで、少しでも皆さん方に参考になればと思って用 意してまいりました。ですから、大変魅力的な話や、この (足立) ちょっと何か話していましょうか。 分野ですと具体的に指し示すよりも、感じ取っていただけ ればなと思っています。 まず、ちょっと失礼な言い方ですが、私は 7 年前に突然 出馬要請があってなったわけですが、私自身は医者ばかで 終わりたくないなという気持ちがずっとあり、世の中のこ とがほとんど分からなくなってきているというような感 じで、自分自身、恐ろしいなという気がしていました。 最初に出したのは、日本は GDP が世界で第 3 位だ、非 常にお金持ちだと。しかし、教育、あるいは医療、福祉分 野などにお金を全然使わないではないか、国の支出が圧倒 的に少ないではないかと、どの分野の人もおっしゃるので すね。そのことの説明にまず出しました。 これは 28 カ国ですけれども、OECD の中での対 GDP 264 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 比をみると今、日本の GDP は 480 兆です。残念ながら です。10 年前が 78 兆です。20 年前が 47 兆です。ぐんと 1992 年と同じです。20 年間増えていません。480 兆のう 増えていて、特に年金のところが一気に増えているという ちの政府の支出の割合はビリから 5 番です。ところが、もっ 現状です。 と問題なのは国の収入です。対 GDP 比で、メキシコに次 これは一般知識みたいなもので申し訳ないのですが、給 いでビリから 2 番です。ビリから 2 番で、ビリから 5 番の 付といわれると、財源としては保険料と税金があり、税金 支出をしているということをまず認識していただきたい といっても、国と地方があるわけです。この色分けは税金 のです。どの分野にしても国が旗を振って、やりたい分野 部分と保険料部分で分かりやすくしたところです。例えば が山ほどあるけれども、ビリから 2 番の収入であるという 厚生年金や共済年金は全部が保険料です。生活保護は全部 ことを、まず前提にお聞き願いたいと思います。 が税金という形になっています。黒い部分が税金の部分 ちょっと繰り返す形になりますが、これは今日の時点で で、かつ国の部分が黒く塗っているところです。こういう の 0 歳から 80 歳までを縦割りにして、負担するお金と給 階段状になっています。 付のお金を出しているところです。黒線から下が負担で これは短期のことで申し上げます。一つの例です。少子 す。医療費自己負担や保険料など、いろいろありますね。 高齢社会でどういう変化が起きているか。これは平成 19 それから、この線から上が給付です。給付というのは、保 年の自己負担を除いた社会保障の割合の中で、保険料が 険料や税金から出されます。 65%、税金が 35%でした。ところがわずか 3 年で、保険 圧倒的に大きいのは、若いころは教育費ですけれども、 料が 61%、税が 39%になりました。去年は 60%と 40%、 医療、そして介護、ぐっと増えてくるのが年金です。これ つまり、社会保障といいながら、税金の割合がどんどん増 は上下全く同じ縮尺で書いていますから、面積を比べてい えていっているのです。なぜか。少子高齢社会が来たから ただければ先ほどの順番が理解できると思います。圧倒的 です。稼ぎ手、働き盛り、現役そのものが減っているとい に給付が多く、負担が少ないのです。面積をざっと比べて うことです。それだけの変化が起きています。 ご覧になればお分かりになると思います。 なのに、国の先ほどの収入になりますが、平成 2 年の国 私の専門である社会保障分野はどうなっているかとい 税の収入が 60 兆、22 年が 37 兆ですから、20 年間で 23 兆 うのが、この図です。今年度予算で、社会保障分野という 円減っています。社会保障の負担の中で税金の割合がどん のは年金、医療、介護、福祉の部分ですけれども、108 兆 どん増えているのに、国の収入、税収は 20 年間で 23 兆減 Advanced Clinical Training-network Report 265 それで、2015 年にしたかったわけですけれども、消費 税を 2010 年代の半ばまでに段階的に 5%上げるというこ とになったわけです。5%上げる部分でプライマリーバラ ンスの赤字部分を半分にしたいという考え方です。5%の 使い道は、消費税が上がるということは物価も上がってき て、支出が増えてきますから、国の支出も増えてきます。 その分で使う部分が 1%です。機能を維持して、さらに発 展させて、年金の財源、高齢化に対応する部分が 4%とい う計算で 2015 年を想定しながら、どれだけ増やしていく かということに決めたのが 6 月です。 ですから、これから待っているのは、さらに 2015 年の 姿を目指した具体像と、それに見合うというか、そのため の収入として 2015 年に消費税を 10%にするための法案が という事態です。端的に言うと、足りないということです。 来年度の通常国会に提出されます。それを決めるのが、こ そんな中で、これはちょっと細かいのですけれども、税 の 12 月という道筋に今なっているわけです。 収の変化を見ているものです。青が所得税です。赤が法人 税です。緑が消費税です。当然のことながら、所得税ある いは法人税は景気によって変動が激しいです。ところが消 費税は、1989 ∼ 1996 年は 3%時代、1997 年から 5%時代 ですが、景気に関係なくほぼ一定です。社会保障は景気に よって左右されることはあり得ない制度です。つまり、安 定的な財源がないと維持できないのが社会保障です。安定 財源の確保と法律的に、あるいは国会論戦で言うと、ほぼ イコール消費税ということの理解になってきます。 もう一つ大事なことは、先ほど GDP が 480 兆で、1992 年と同じだと言いましたが、昨年中国に抜かれたのはご 存じだと思います。けれども、1 人当たり GDP で見ると、 日本は世界第 17 位です。特にこれは就業率に連動してい るわけですけれども、男性の就業率が 2 位で、女性の就 業率は 15 位です。1 人当たりの GDP は世界第 17 位です。 かつ、少子高齢化が進んでいて、合計特殊出生率が 1.39 まで上がりましたが、それでも減りますから、2020 年ま 今どれだけのものが国に入っているか簡単に言うと、所 得税が 13.5 兆、法人税が約 8 兆、消費税が 10 兆、地方分 が 2.5 兆ありますから、10 兆ということです。このように なっています。 結論として先ほどのマイナスを打開する安定財源とし ては、まずは消費税しかないだろうということになってい るわけです。それと同時に、国の借金が 900 兆など、ご存 じでしょうが、要するに、税収が 40 兆で 90 数兆の予算を 組んでいるわけですから、新規国債は 44 兆です。政権が 変わって、新しい国債の額は一切増やしていませんけれど も、赤字であることは間違いなく、これを何とか 2010 年 代のうちにゼロにしようという目標があるわけです。 266 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 でに労働力人口、現役世代が 530 万人減ります。つまり、 1400 兆円といわれています。この部分は、将来が不安で 人口が減少する中で 1 人当たり GDP をぐっと上げていか あるからです。がんになったらどうしよう、病気になった ないと、GDP そのものもぐんぐん下がっていくというこ らどうしよう、寝たきりになったらどうしよう、1 人暮ら とです。これも先ほどの話で、国として使うための原資に しになったらどうしよう。将来不安があるがために、家庭 なるものをどう確保するかということです。 内の眠った貯蓄が 1400 兆円あります。ここを、将来の安 そこで出てきたのが、去年 6 月の新成長戦略という今日 心設計で使っていただくようにする。ここがスタートだと の話につながっていくわけです。先ほど今先生が「救急は 思っています。それによって新たな雇用が創出されて、そ 金食い虫だ」とおっしゃいました。そういう概念がありま れぞれの就業率を上げ、さらにイノベーション等で外資か す。同じなのです。税金を使うことで、 「社会保障も金食 らの収入も上げられ、海外への展開も進んで経済成長につ い虫だ」とずっと言われていたのです。しかし、健康寿命 ながっていくという考え方です。 世界一の日本が世界から注目されていて、どういう取り組 もう一つの原資は、余剰貯蓄といわれていますけれど みをしてきたのか、これからさらに少子高齢化社会でどう も、亡くなった後、相続税等が終わった後に、使い切れず いう取り組みをするのかと期待されています。ここは私た に残るお金が 150 兆といわれているのです。その分野も日 ちとしては、うって変わって新成長戦略の中心に据えるべ 本の将来の成長のための原資としては使い切れずにいる きであるということを提案してきたわけです。1 人当たり 分野ではなかろうかと思っています。 GDP を上げるためにはどうすればいいか。まず就業率を そこで、どういう分野が期待されるかというのは、ここ 上げることです。しかも若者、あるいは女性、あるいは元 に「医・食・住」と書きましたけれども、当然高齢社会で 気な高齢者、あるいは障害を持った方それぞれの就業率を すから、医の分野は先ほど申し上げたように新たな成長戦 上げます。そして新しい雇用を創出します。生産性そのも 略の中心になり得ます。 のを上げるというもののために医療のサービスの質を変 それから、食の分野です。市町村合併等がありました。 えていきます。そしてイノベーション、そして海外展開と 家と家の距離が非常に離れる状態になってきて、かつ高齢 描いたわけです。 者単独の世帯が増えてきています。そこに新たな食サービ これも細かいですが、七つの戦略分野と 21 の国家プロ スというものが当然必要になってきます。 ジェクトということで出させていただきました。メインは それと同時に住宅も、過去に公団や住宅団地などできて 環境で、エネルギー分野のグリーン・イノベーションとラ きたものが順番にゴーストタウン化していくというよう イフ・イノベーションの二大イノベーションだという戦略 な状況の中で、高齢者が住みやすい住宅をまた作り直さな を立てさせていただいて、2020 年までに環境分野では 50 ければいけません。この分野も当然これから必要とされる 兆円、雇用として 140 万人、ライフ、健康分野では同じく 分野ですし、そこに多世帯で共同で住めるまちづくりとい 50 兆円、284 万人の雇用創出という計画を立ててやってい うものが必要になってくるのではないかと思います。 るわけです。 もう一つの大事な日本の資源としては観光だと思いま すけれども、大震災、そして福島原発をはじめとして、こ の観光分野を取り戻せるかということも日本が直面して いる課題の一つだと思います。 これは、初期の投資をどこに求めるか。消費税の議論 は 2015 年、今年から来年になりますが、家庭内貯蓄が今 次の項目の「生産性を上げる」は、直接皆さん方にかか わりがある分野かもしれません。特徴のある取り組みとし て私が挙げているのは、機能分担・連携強化は当然のこと で誰でも考えつくことですが、民主党らしいなと言われる こととすれば、本人や患者、家族の意思をいかに尊重して いくかという取り組みと、チーム医療の推進と、予防医療 Advanced Clinical Training-network Report 267 の推進だろうと思っています。そこが少しずつどういう形 しょう。介護施設は 92 万∼ 131 万という推計をしている で表れるかということをこれから説明していきたいと思 ということです。 います。 そこで必要になってくるのが、連携を図るための人で まず機能分化と連携の強化のことですが、一般病床が す。今ネットワークの話をしましたけれども、これからは、 107 万床、療養病床が 23 万床、そして介護施設が 92 万人 在宅ももちろん必要ですし、後方支援の病院、そしてまた 分あります。これをピラミッド型にしていく必要があると 救急病院、その間の連携を図る司令塔といいますか、コー いうことです。高度急性期、一般病棟といわれるものの中 ディネーターの人材が必要だろうと思います。 でも急性期と亜急性期、それから、これから必要になるの その場所も必要です。在宅医療の連携拠点として在宅療 は私は長期療養だと思っています。後方支援という役割も 養支援病院、あるいは在宅療養支援診療所というものがあ 当然あります。 りますけれども、結構、名ばかりで、病院などで本当に看 それから、終の棲家としての介護施設も当然、今よりは 取りをやっているところは半分ないというデータが出て 必要になってきます。それと同時に、すべての方が、患者 います。これから地域で完結するためにはこういうものの さん本人、あるいは家族の意思で本来の住まいでも医療や 存在が必要になってくる、重要になってくると思います。 介護が受けられるようにすることが必要です。それが機能 強化、連携の強化ということにつながっていくのだろうと 思います。 本人、家族の意思決定とチーム医療についての具体例で す。これがいわゆる特養、老健、そして介護医療型医療施 設ですが、特養に入っている方の 3 割が医療機関に搬送さ 具体的に計画を立てているのは 2025 年のシナリオです れます。亡くなる方は 63%いるわけです。介護というの けれども、高度急性期、一般急性期、亜急性期のところで は特に終の棲家なわけですから、亡くなる人が多いのは当 退院患者としては 125 万人、今、107 万ベッドですが、こ 然ですが、この 63%のうち、半分以上の 37%は病院に行っ このところを高度急性期、一般急性期、亜急性期それぞれ て亡くなっているという事態です。医療機関と介護施設と 25 万人、82 万人、12 万人としていきます。私はこのプラ いうものの住み分けができていないし、私はかなり本人の ンを推奨していますので、この説明をします。 意向、あるいは家族の考えとは関係のないところで、最終 しかし、日本は恐らくこれから、いわゆる都会と過疎地 に無理やりに近いような形で医療機関へ搬送されている 域に二極化するのだと思います。日本中で進んだ市町村合 方が非常に多いのではないかと思います。試算ではこの部 併で合併をしたところも、やはり中心部とそのより多くの 分、必要のない転送といいますか、転院という表現を使わ 辺縁部という形になってきました。ネットワークをもとも れる方がいらっしゃいますが、1 兆 5000 億という金額を と作れるところは医療機関や介護の施設がいっぱいある 抱えています。 ところです。それをネットワークでつなぐということは極 同じように老健の方も医療機関に搬送されるのが 46% めて重要ですが、本当の過疎地といわれるようなところ です。介護療養型医療施設であっても、医療機関に搬送さ は、コンソーシアムのように保険から、救急医療から、療 れるのが 36%です。本人、家族の意思、そして看取りの 養から、介護、そしてまた福祉まで一体に取り組めるよう 問題ということがこれから重要な問題になってきます。生 な、一体感のあるといいますか、割と近接したところを作 まれる人よりも死ぬ人の数が多い日本になったわけです らなければいけないのです。そうなっていくのだろうと思 から、いかに看取りを考えていくか。この部分でも、医師 いますので、そういう形の病院、地域一般病床というもの として、あるいは医師以外の臨床哲学といった部分での考 がまた必要になってくるのだろうと思います。 え方を持てる人間が必要なのでなかろうかと思います。 療養病床は今は 23 万ですが、計算上 28 万必要になるで 268 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 一番多かったです。あとは看護師や薬剤師、その他のコメ ディカルとの業務の分担に取り組むことができたという ような調査の結果が出ました。 その中でも特に例に挙げたのが、呼吸ケアチームと栄養 サポートチームの設置に特別に点数を付けたことです。そ れによって、医師の人工呼吸器の管理にかかる業務が減っ たということと、栄養管理の部分でやはり医師の業務が 減ったというような評価を得ています。これはチーム医療 の推進ということで、今後も分野ごとに進めていかなけれ ばいけないと思っています。 今チーム医療の話をしましたが、ここでも必要となって くるのがまさにリーダーです。チーム医療全体として予防 保健から最後の看取りまで、あるいはその後も含め、全体 を工程としながら、そしてまた、その研修ができるような 人がこれから必要になってきます。予算の話に触れました が、これは来年度要望額に書いているのですが、既にそ ういう取り組みが進んでいます。先ほどの予算は 31 億円、 今回のところは 3.2 億円というような形で、この分野が必 要とされていると思います。 昨年の診療報酬改正で私が目指したことは、10%収入が 増えるところと、5%増えるところと、自然増が 1.5%だか もう一つ、予防医療の話をしましたが、私が政務官時代 ら 2%増えるという 3 段階を作ろうとしました。2000 年以 に WHO が推奨して、日本でまだ行われていない、あるい 降のマイナス改定で、病院あるいは大きなところで人が辞 は法的に定められていない予防接種が 7 種類ありました。 めざるを得ない、人が少なくなってきました。少なくとも まずその 7 種類の費用対効果を経済学者を交えて全部分析 人を以前のように増やせるぐらいの原資がなければ病院 してもらいました。その結果、三つの Hib と小児用の肺 はやっていけないと思いましたので、救急、あるいは産科、 炎球菌と子宮頸がんのヒトパピローマウィルスのワクチ 小児科、外科等、人が少なくなってやっていけなくなって ンは、2 年間の期限付きでしたけれども、今、助成事業に くるところを厚くしようという思いで改定をしていった して、9 割助成の形でやっています。けれども、最も必要 わけです。 対効果の高いのは成人用の肺炎球菌ワクチンです。年額で そんな中で勤務医の負担軽減というものがありました。 約 5000 億円以上の医療費削減につながるということです。 報酬改定によって効果があった取り組みで、まず一番多い のがこれです。医療クラークというものを導入して、医師 の負担を少なくしていったという取り組みが結果として これは別の分析研究ですが、65 歳で成人用の肺炎球菌 ワクチンを打った場合は、この研究では 4700 億円の医療 費減につながりました。75 歳では 4000 億円、85 歳で打っ Advanced Clinical Training-network Report 269 た場合は 650 億円というような結果が出ていて、ぜひとも 来年から 65 歳で肺炎球菌ワクチンは予算事業としてやり たいと思っています。 もう最後になってきますが、イノベーションと海外展開 です。 ではありますけれども、日本政府として医療イノベーショ ン、ライフ・イノベーションというものを推進していくの だということです。まずは日本発の革新的医薬品・医療機 器を作り出して、デバイス・ラグ、ドラッグ・ラグの解消 を行います。 そのために臨床研究中核病院の創設ということも挙げ 今までは省庁単独でやってきましたけれども、私が政 られていて、全国で 15 カ所です。治験 GCP と、設備ある 務官のとき、それから、その後、文部科学省、厚生労働 いは仕組みがしっかりしているところは、治験という承認 省、経済産業省が一緒になって予算を取るというような取 のための新たな研究、あるいは治験よりもその前の段階の り組みをしています。それがライフ・イノベーション分野 皆さん方が普段の研究とかで取り組んでいる臨床研究の でやったことで、今年度予算としては 300 億円です。具体 データを承認のための治験のデータとして使えるような 的な施策は当然のことながら文部科学省は基礎、厚生労働 ところで、そこの時間短縮のためになるような拠点病院を 省は安全性の確認やトランスレーショナルな部分、そして 経済産業省は産業化ということを一貫してやろうとして いるわけです。再生医療の実現や次世代がん医療の実現と いったテーマごとに予算を今年は付けています。 厚生労働分野だけで言わせていただきますと、これは厚 生労働省の中の分野でのお金ですけれども、例えばドラッ グ・ラグ、デバイス・ラグの解消、あるいは新たな世界初 の機器や薬の創出といったような段階があります。その段 階ごとに 3 省が共同してやっていくというようなことを予 算付けしたわけです。 そして、内閣府に医療イノベーション推進室というもの を作りました。ライフ・イノベーションの中の一つの分野 270 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 全国 15 カ所、毎年 5 カ所ずつ 3 年で増やしていこうとい う計画です。 復習みたいになって申し訳ないのですが、日本にはド ラッグ・ラグ、デバイス・ラグには三つ大きな要因があり ます。承認審査前の段階での申請ラグと、審査そのものの 審査ラグ、そして、日本の場合は国民皆保険で保険診療で すから、保険が適用とされるまでの保険ラグがあります。 この三つをすべて解消していかないと、ドラッグ・ラグ、 デバイス・ラグの解消はできません。ここにもまた人が必 要になってくるという話をしたいと思います。 私どもが政権与党になる 3 年前までは、一般的に申請前 のラグが 18 カ月で、申請の間の承認ラグが 12 カ月、合わ せて 30 カ月のラグがあるといわれていました。そのとき には保険適用の問題はあまり問題にされなかったのです。 しかし、今は申請前のラグが 1 年になりました。そして審 査ラグは今年度中にゼロになる予定です。今のところ、去 年では 3 カ月です。そこまで短縮されました。 これがそれぞれの取り組みです。大事なことは、保険適 用ラグは今まで手がなかったのですけれども、海外で認め られていることは公知申請という形で、申請を出すと同時 に認められれば保険適用になるということをしたのが去 年です。そのことが非常に大きいのだろうと思います。 世界上位 100 品目の中の 11 品目中、既に 6 品目が特許切れ、 残りの 5 品目も間もなく数年で特許が切れるという状況で す。 私も薬価維持特例等々を改正して、日本の製薬業界に力 を付けてもらいたいということでやりました。今、産業別 の納税力(税金を納める能力)は、医薬品業界が日本では 自動車を抜いて今トップです。そして、日本から多くの研 究所が撤退しました。日本はこの分野に冷たいということ で撤退していきましたけれども、今、製薬業界として応援 する立場に私はありますので、一度海外に出ていた製薬業 今、申し上げた中で、申請前のラグの 1 年がやはり残っ 界の研究所がまた日本に戻ろうという動きがあります。こ ているわけで、産学官連携で大学発のシーズを産業化、あ るいは申請に結びつけるための産業界の協力という場を 作りました。この部分がワークすれば、申請前のラグもほ とんどなくなるという計画を立てています。その次に日本 発のものを作り出そうということです。 これは、6 月の医療イノベーション会議での 4 原則と今 後の方向性というものを出させていただきました。 次にちょっとだけ薬と機器のことを申し上げます。医薬 品を創出できる国はアメリカとイギリスと日本、あとはフ ランス、ドイツ、いろいろありますが、ほぼこの国に限ら れています。 しかし、日本の製薬産業というものは、どんどん輸入が 増えて、輸出はあまり増えずに、そして日本が持っている Advanced Clinical Training-network Report 271 の部分はぜひとも押していきたいと思っています。 出るような形になります。これから具体的に決まっていく もう一つはロボットです。産業用ロボットとサービスロ わけですが、一つ、東北大学を中心に出してきたのが東北 ボットというものがありますけれども、これが次世代ロ メディカル・メガバンク構想というものです。これは主に ボットといわれるものです。 データベースで、全ゲノムの解析センターが中心になって いると思います。この提案がありますが、これがそのまま 認められるかどうかというのはこれから先の話です。 このロボット産業の将来の市場予測です。今は 1 兆円で すが、2020 年には 3 兆円、2030 年には 7 兆円とうなぎ上 りに増えると予想されています。 これが世界から人を呼び込んでいくというブレイン・ どういったロボットが期待されるかというと、移動作業型 サーキュレーションです。私は前文部科学副大臣の鈴木寛 ロボット、あるいは体に装着するロボット(「HAL」など)、 さんと一緒に人材科学技術イノベーションプロジェクト それから、乗り物です。こういったものがこれから増えて チームを立ち上げていますけれども、世界との交流を目指 いくと思います。 していかなければいけないという思いは同じです。 さらに日本の中小企業のものづくり技術です。例えば、 これは松村先生が強くかかわっていらっしゃると思い 安全で使用しやすい喉頭鏡、テイラーメイド型人工膝関 ますが、つくばが国際戦略総合特区に選出されています。 節、ステントグラフトと書いていますが、これは全部中小 総合特区や復興特区は何が違うかといいますと、金融面で 企業が作り出したものです。痰の自動吸引装置というもの も有利な低金利で貸してくれて、税制も優遇があって、税 が中小企業庁長官の賞を取りましたけれども、これも中小 金も少なくて済み、財政上の補助という支援も得られる、 企業が開発に 10 年以上かかったものです。こういったも 極めて有利なものです。しかも今までは日本全体でという のを推奨していきたい。そのためには、今、機器に関する 感じが非常に強かったですが、そこに拠点を作ろうという 承認のシステムが日本は非常に弱いです。審査官も非常に ことです。その場所に限って税制上、財政上、金融上の優 少ないです。ここにぜひとも力を入れたいと思っていま 遇措置を取ろうという仕組みで、極めて後押しの強いもの す。 です。そんな中でつくばから出てきたのは、ライフ・イ ノベーションとグリーン・イノベーションの二大イノベー ションを連携させたものです。 具体例を申し上げます。三次補正予算が一昨日通りまし た。復興特区という形で被災 3 県には極めて多額のお金が 272 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ナノテクというものがありますが、TIA つくばでやら 最後の国際戦略ですが、TPP の関係で APEC(アジア れている、経済産業省が非常に推している「つくばイノ 太平洋経済協力)が 2020 年までに FTAAP という自由貿 ベーションアリーナ構想」も含めて、あるいは石油に代わ 易圏を作ろうということがもう決まっているわけです。合 るオーランチオキトリウムをはじめとするオイル産生の 意事項なのです。そのアプローチとして、東南アジア + 藻、あるいは今のロボットがありました。生活支援ロボで 日中韓の ASEAN+3、あるいはそれにニュージーランド、 す。そして、中性子線の捕捉療法、松村先生のところです オーストラリア、インドが加わる ASEAN+6 と今回 TPP けれども、次世代がん治療です。こういったようなものを というものが出てきて、この取り組みは前々からあるので 連携させた取り組みをやろうとしています。 すが、会議が進んでいないのです。ところが、TPP はア メリカの思惑もあって、どんどん会議が進んでいくという ことで、ここのゴールは変わらないのですが、本当の議論 は、どのアプローチがいいかという議論だったわけです。 私はどれも正しくて、どれも必要だと思います。ご案内の ように、TPP に交渉参加のために協議に入ると表明した ら、中国も動き始めて、ASEAN+3、ASESN+6 も頑張り ましょうというようになってきて、今、私はむしろいい効 果を及ぼしていると思います。 これはそれぞれの学問で、皆さんご存じだと思いますの で、あまり触れないようにしますけれども、取り組みがあ ります。 EPA、FTA は、経済連携、自由貿易という意味ですけ れども、日本が 1 対 1 で組んでいる率は 17.6%で、ほかの 国に比べると圧倒的に少ないのです。 これからは 1 国では生きていけない時代ですから、グ ルーピングがどんどん進んでいます。日本はここだけで 孤立するわけにはいきませんし、どのグループに属する か。私は、EU にも目を向けなければいけないし、当然 ASEAN にも目を向けなければいけないし、環太平洋それ Advanced Clinical Training-network Report 273 ぞれの取り組みでも日本はそこに目を向けていかないと うに考えているのかということを伺いたいし、もし考えて いけないと思います。 いないのだとしたら、そこを変えてもらわないとどうにも 世界一の健康長寿国ですから、ASEAN の国の方々は日 ならない気がするのですが、伺いたいと思います。 (足立) ありがとうございます。先生がおっしゃるとおり です。私が政務官になったのが 9 月です。まずやったのは、 連携してやるべきだということで、10 月から経済産業省 と 10 個のプロジェクトチームを立ち上げたのです。その 数カ月後に文部省が入ってきたのです。ですから、これは この輪を広げていくしかないのだろうなと思っているの です。そこで一番大事なのが、引っ張っていく人間なので す。政務三役の大臣、副大臣、政務官が 1 年でころころ変 わっているようでは引っ張っていけないですね。とはいい ながらも、去年政務官を辞めた後に今年度の予算について はかなり中心でやりました。 政府全体にそういう思いがあるかどうかということな 本を見ています。日本を参考にしたいと思っています。ア のですが、そういう思いの人間がある反面、それも原点で ジアに今 500 万人以上住んでいる都市は 33 あります。こ すけれども、全く反対の立場の自分たちが属しているとこ の健康分野は、医療も介護も福祉も含めてです。私は日本 ろを守りたいという人間もいるのは確かです。ですから、 がそこにフラッグショップ、あるいはそこの拠点となるよ 先ほど冒頭に申し上げたように、頭ばかり下げるような感 うなところまで協力するぐらいの人材が将来必要になっ じだと言いますが、説得することだと私は思っています。 てくると思っています。 理解を求めるのが先決ではなかろうかなということを考 以上が私のプレゼンテーションです。どうもありがとう えています。先ほど今先生のお話の中で私が一つさらにす ございました。 ごいなと思ったのが、あれは公立病院なのですよね。公立 病院でこういうことができたというのは、恐らく首長さん 質疑応答 の卓見もあったのではないかと思いますけれども、あとは やはり 1 人の情熱の持っていき方ですね。 (松村) 足立先生、どうもありがとうございました。非常 大学病院の問題ということで今おっしゃいましたが、基 に幅広い分野からお話しいただいたと思います。時間も押 本的に文科省対厚労省の戦いというのはずっとあるよう していますけれども、もしよければ、お一人だけご質問を な気がしていますので、まず役所の中から一緒にやろう 受けます。陳情は受け付けないと思いますけれども、ご質 ではないかということをやれたのが一つの進歩だろうと 問を。高崎先生。 思っています。本来は、明治のときに文部省をつくり、厚 生行政は内務省が行っていたわけですね。それが給料が高 (Q1) 大変ありがとうございました。われわれは認識の かったから文部省で行ってしまったわけですよね。そこは 不足のところが随分あることが分かりました。先生が今 再編も将来あり得るべきことだと思います。ちょっと意見 やっていらっしゃる活動の中でお話しになりましたが、果 がばらばらしてしまったかもしれませんけれども、そのよ たして日本の政府、各省全部が同じように考えてやってい うに感じています。 るのかなという考えが非常にあるのですね。日本がそのよ うに考えているとはちょっと思えないというところがま (松村) ありがとうございました。この GP は、卒後の方 ず第一で、行政の立場から伺いたいと思います。 での専門医養成を文科省から出してきたというのは、やは もう一つは、先ほどの今先生の話にもありましたが、あ り大学病院に期待するところが非常に多いのではないか あいう施設でどのようにして医者を育てるかということ と思いますけれども、それはこの次のセッションでもう を考えたときに、今先生のああいう施設ができればいいの ちょっと具体的にディスカッションしていきたいと思い ですが、医者を育てるのはやはり大学が中心でないと、現 ますので、取りあえず第 1 部はここで閉めさせていただき 状では大学がかかわり合っていなければ駄目です。ところ たいと思います。今先生、足立先生、どうもありがとうご が、文部省の管轄にある大学でああいうことができるかと ざいました。 いったら、できないのです。ですから、医師を育てるとい うことに対して、厚労省は考えていらっしゃるかもしれな いけれども、文部省など、ほかのところが果たしてそのよ 274 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 (アナウンス) 演者の先生、座長の先生、ありがとうござ いました。 第 2 部 パネルディスカッション 「持続可能な事業システムの構築 ―専門研修医をひきつけるシステムを維持するには どうしたらよいか―」 先生方からのご質問もお受けしたいと思っています。 それでは、まず初めに、群馬大学の菊地麻美先生、よろ しくお願いします。私から、菊地先生の簡単なご紹介をし ます。菊地先生は、関東・信州広域循環型専門医養成プロ グラムの中心としてご活躍されています。平成 7 年に群馬 司会: 大学医学部を卒業、その後、第二外科(現臓器病態外科学) 齋藤 洋 (東京女子医科大学病院 本事業コーディ にご入局されました。専門は外科・乳腺外科です。現在は、 ネーター) 群馬大学大学院医学系研究科医学教育センターの講師、な パネリスト: らびに群馬大学医学部附属病院卒業臨床研修センター副 菊地 麻美(群馬大学医学部附属病院 臨床研修セン 室長をされています。また、3 人のお子さんと、小学校の ター 副センター長) 小畑 陽子(長崎大学院医療教育開発センター 医師 育成キャリア支援室長) 中居 康展(筑波大学附属病院 本事業コーディネー 教員をされているご主人、さらには、この 5 月からおうち に被災犬をお引き取りになって、ドクター、そしてお母さ まとしてパワフルに働かれている先生です。 では、菊地先生、よろしくお願いいたします。 ター) 「関東・信州広域循環型専門医養成プログラム」 (アナウンス) これより第 2 部「持続可能な事業システム 菊地 麻美(群馬大学医学部附属病院 臨床研修センター の構築」と題して、パネルディスカッションを始めます。 副センター長) パネリストは、群馬大学医学部附属病院臨床研修センター 副センター長の菊地麻美先生、長崎大学病院医療教育開発 ただ今、ご紹介いただきました群馬大学の臨床研修セン センター医師育成キャリア支援室長の小畑陽子先生、筑波 ターの菊地と申します。本日は、私どもの関東・信州広域 大学附属病院本事業コーディネーターの中居康展先生で 循環型専門医養成プログラム(愛称 GDNSS) について、日々 す。 試行錯誤しながら取り組んでおり、至らぬ点が多々ありま 司会は、東京女子医科大学病院本事業コーディネーター すのでお恥ずかしい部分もありますが、概要と現状につい である齋藤洋先生にお願いします。 てご報告申し上げたいと思います。 開発途上のプログラムですので、後ほど、フロアの先生 (齋藤) 東京女子医科大学で本事業のコーディネーター 方からも、ご意見をいただきまして、プログラムに反映さ をしている齋藤洋と申します。これからパネルディスカッ せていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいた ションを始めたいと思いますが、テーマとしては、持続可 します。 能な事業システムの継続、構築をどうしたらいいかという ことについて話し合っていきたいと思います。今回は、群 私どものプログラムの特徴は、スライドにお示しさせて 馬大学と長崎大学からお二人のパネリストをお招きしま いただきましたが、取り立てて目新しい内容ではないかと したが、このお二人は、私たちが行っている事業と同様に、 思っています。 専門研修医を育成するプログラムを中心となってされて しいて申し上げるならば、連携する五つの大学病院が、 いる先生です。われわれもそうですが、昨年の文部科学省 関東・信州地域に近すぎず、遠すぎずという形で隣接して の中間評価で A 評価を得られたところの先生をお呼びし おり、それぞれの地域性なども含めて、特色ある医療分野 ています。医療人養成のプログラムやネットワークは全国 を相互補完しながら、スムーズに交流ができるところでは で 21 事業ありますが、この A 評価を獲得したのは、われ ないかと思っています。 われを含めて五つの事業のみとなっています。代表校は、 われわれの筑波大学、長崎大学、群馬大学、それ以外には 東京医科歯科大学と九州大学が A 評価を獲得しています。 これから、専門医をひきつけるようなシステムを維持す るにはどうしたらいいかということを話し合っていきた いと思います。まず、パネリストの先生に、先生方が担当 されている事業について概略や特徴を 5 分ずつお話しして いただき、その後にパネルディスカッションを開始したい と思います。第 1 部で基調講演をいただいた今先生、足立 先生にも、コメンテーターとしてパネルディスカッション にご参加いただきたいと思います。また、最後にフロアの Advanced Clinical Training-network Report 275 年から行われており、おかげさまで順調に症例数も増えて きているところです。もう一つの例は「大学院の学位と 専門医資格を取得する臨床研究者養成のためのコース」で す。それぞれの診療科の大学院のコース沿って、臨床試験 部で学ぶことが可能です。 このようなコース整備などの取り組みを行って参りまし たが、事業開始 2 年目の平成 21 年の交流実績については、 残念ながら、指導医の先生も含めて 3 名という非常に寂し いものとなりました。そこで私たちは、交流が進まない原 因について明らかにするために、平成 21 年に連携する 5 大学の、卒後 3 ∼ 5 年目の専門研修中の医師 848 名を対象 としたアンケート調査を行いました。その際に、 「GDNESS について知っていますか」と聞いたところ、80%以上が あまり知らない、または全く知らないという結果で、非常 に衝撃的に受け止めました。具体的にどのようなことでメ リットがあるのかしっかり宣伝してもらわないと誰も行 かないのではないかという意見などをいただきましたが、 これらのご意見で一番多く要望としてあったのは、情報提 供をしてほしいということでした。 特色ある診療科・コースの例ということで、もちろん五 つの大学病院すべてが、通常の診療に加えて、教育・研修 の分野でも頑張っているところではあり、あえて特色のあ るというのもなかなか難しいのですが、今回、新しいパン フレットを作る際に、各大学がこういうところがうちの特 色だといったものを、スライドにお示ししました様にあえ ていくつか例として掲載させていただきました。今日は 276 せっかくの機会ですので、群馬大学の例をとりあげて少し これを受けて、私たちは交流促進に向けてまず、自身が ご紹介をさせていただきます。群馬大学の専門医養成にお お互いの大学を知らなければいけないということで、連携 ける特色あるコースの一つは放射線治療医コースです。国 大学が一堂に会しお互いに訪問し合う相互評価を実施す 内初の小型普及型の重粒子線照射装置を使った診療が昨 ることとしました。それぞれの大学の特徴などをより理解 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 したうえで、研修医への情報提供・交流促進を行っていこ 発行やホームページの更新など、泥臭いような取り組みを うということです。これは先週の月曜日の 21 日に埼玉医 少しずつ行っていましたが、何といっても一番 PR 効果が 科大学にコーディネーターが全員集まって行った相互評 あったのが、今回中間評価で A をいただいたということ 価です。さらに、診療科ワーキンググループという、診療 だと思っています。 科別に行う情報交流の場を企画いたしました。これは先週 このような中で、平成 22 年度の交流は、指導医の方が 行われた放射線腫瘍学会の学会期間中に五つの大学すべ 何名か行ってくださいましたが研修医が少なく、平成 23 て集まって各科の診療科長と指導医が交流を深めていた 年度になって、研修医の方が、まだ短期研修の方が多い だき、まずは指導医、その次に研修医という形で実際の交 のですが、徐々には増えてきていますので、これを将来的 流を行っていただく。これらを取りまとめるコーディネー にはより多くの長期の専門研修に結びつけていきたいと ター会議を、遠隔画像カンファレンスシステムを活用し 思っています。今後の課題としては、今、申しましたよう て、これまでに 17 回行っています。その他、総合医検討 なネットワークの維持/発展、さらには専門医の育成を通 部会の設置や、関連病院/施設に関する現状調査は日本大 じて地域の医療を支える体制の構築を考えています。 学が中心になって行っていただいています。研修医/指導 先ほどご紹介いただいたわが家の被災犬ですが、わが家 医の処遇調査は獨協医科大学、女性医師支援やシミュレー に来てからちょうど 5 カ月です。最初は本当に不安な思い ション教育に関するシンポジウム等の開催は埼玉医科大 もあったのでしょうか、なかなか慣れませんでしたが、5 学が中心になってくださっています。 カ月たって、何とか家族の一員になってきています。この GDNSS もまだ 3 年ちょっとということで、まだ生まれた ばかりのプログラムです。あと 1 年半と時間は少なくなっ て参りましたが、この新たな「絆」による 5 大学の連携を、 さらに例えば臨床研修や卒前教育などについても拡大さ せ、発展させていきたいと考えています。以上です。ご清 聴ありがとうございました。 (齋藤) 菊地先生、ありがとうございました。 これは参考ですが、先ほどの今先生の話ではありませ んが、事業内容に関する広報がやはり妥当ではなかった のではないかということで、ニックネームを公募しよう という企画が出て、9 個のニックネームの応募がありまし た。Goodness という優しさや思いやりをイメージする英 単語のつづりに、交流する五つの大学の頭文字と専門医 の養成をイメージする五つの単語を交えた理念を重ねた 「GDNSS」が採用されました。他にも、ニュースレターの Advanced Clinical Training-network Report 277 続いて、 「出島発、肥前の国専門医養成プログラム」から、 本プログラムの特徴としては、長崎、佐賀は地域柄、へ 小畑先生、お願いします。小畑陽子先生は、平成 12 年に き地や離島が多いということもあるので、各県の自治体に 長崎大学医学部を卒業され、その後、長崎大学第二内科に も参加していただき、連携を取りながら、地域全体で専門 ご入局、その後、平成 17 年には、長崎大学大学院医歯薬 医を育成し、最終的には西九州地区への専門医の定着を目 学総合研究科を卒業されました。専門は、腎疾患、血液浄 指すことを心掛けています。 化療法です。現在は長崎大学病院医学教育開発センター医 また、伝統的に国際性豊かな土地柄としても知られてい 師育成キャリア支援室長としてご活躍です。では、小畑先 ますので、国際医療や熱帯医学を中心とした感染症医療を 生、よろしくお願いします。 コースの中に組み入れているところも特色として挙げら れると思います。 「出島発、肥前の国専門医養成プログラム」 小畑 陽子(長崎大学院医療教育開発センター 医師育 成キャリア支援室長) 齋藤先生、ご紹介ありがとうございました。長崎大学病 院の小畑です。本日は、このような発表の機会を与えてい ただき誠にありがとうございます。私からは、当大学が取 り組んでいる「出島発、肥前の国専門医養成プログラム」 についてご紹介させていただきます。 われわれが本プログラムを推進するに当たり、心掛けて いることとして、ABCD 戦略というものがあります。A としては、まず若手が働きやすい雰囲気づくり、B として は、基礎となる教育基盤づくり、C としては、これらの情 報を明解に発信することで変革を行っていくというよう な取り組みです。そして、最終的に地域全体で「専門医を まず、組織図と概要です。もともと長崎、佐賀両県は歴 育てる」ということを若手医師や地域、社会へ向けて宣言 史的にも関係が深く、長崎大学病院と佐賀大学病院を中心 していくという流れを取っています。 に、その他、全国のいろいろな連携大学を循環させること で、若手医師を育成し、キャリア形成に努めていくことを 目的としています。そして、若手医師へのキャリア形成支 援を担う部署として、長崎大学病院内病院長の直下に、単 独の独立した部署として医師育成キャリア支援室を設置 しています。 まず若手が働きやすい雰囲気づくりを目的とし、若手医 師のための業務軽減を行いました。また、女性医師の復帰 支援ということで、院内保育園の整備や、時間短縮労働制 の導入などを行っています。精神面でのサポートに関して は、臨床心理士を導入し、サポートを行っています。 278 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 次に、臨床教育システムの基盤づくりです。60 の専門 参加者からは、この人材交流により、お互いの大学の優れ 医コースを設置し、他大学との研修連携を積極的に行うよ た分野での相互補完的な研修が可能であり、有意義であっ うにしています。また、コース登録者に関しては、専門医 たという感想が寄せられています。 取得という目標達成に向けた研修状況の把握・評価・管理 また、実力アップセミナーに関しては、これまで 12 企 を行うシステムをウェブ上に立ち上げて運用していると 画に 503 名が参加しています。さらに若手医師を対象にし いう実情です。 た業務軽減プロジェクトを実行した結果、70%の医師が働 さらに、本 GP で新たに開設したシミュレーション室を きやすくなったと評価しています。 有効利用して、実技を中心とした実力アップセミナーを定 期的に開催したり、長崎大学病院の指導医が県内関連施設 に出向いて出張セミナーを行ったり、指導医講習会を定期 的に開催するといったことで、若手医師や指導医の育成を 心掛けています。 今後の課題としては、いろいろありますが、本 GP 終了 後も構築した専門医育成システムを継続して機能させる ための運営方法の検討や、基礎研究者養成コース、地域総 合医育成コースなどの、現在不足しているといわれている ようなコースのプログラムの内容の充実、改善などが挙げ さらに広報としては、これらの大学病院の取り組み、先 られます。 輩ドクターのこれまでの歩み、キャリアパスの提示、各医 今後もいろいろ課題はあるかと思いますが、夢は長崎か 局の専門医取得状況や指導体制などを広く公開し、ホーム ら、肥前の国で専門医を育て、定着させるという志を持っ ページやブログ、新聞などを用いてタイムリーに情報を発 て取り組んでまいりたいと思いますので、皆さま、今後と 信していくことを心掛けています。 もご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。ありが こちらは、これまでの本プログラムの成果をお示しする とうございました。 スライドです。現在までにコース登録者は 495 名に上って います。大学間の人材交流は長期、短期を含めて 40 名で、 (齋藤) 小畑先生、ありがとうございました。 Advanced Clinical Training-network Report 279 それでは最後に、東関東・東京高度医療人養成ネット 優先枠を確保して機材の購入補助を行い、まず、ここから ワークから、中居先生お願いいたします。中居康展先生は、 交流を開始していこうということです。 平成 5 年に筑波大学医学専門学群を卒業され、その後、筑 その上で、短期型研修、長期型研修へ進めていければい 波大学脳神経外科にご入局、専門は脳血管障害、脳神経血 いというようなビジョンで、高度医療人を連携して養成す 管内治療です。現在は筑波大学医学医療系講師と本事業の るということで、各大学とのネットワークを使って、最初 立ち上げ期からのコーディネーターを兼任されています。 は症例の研究等やワークショップ、シミュレーターといっ 中居先生、よろしくお願いします。 た交流から、さらに研修人材への派遣、そして、もっと進 んでいくと各大学の関連病院、地域医療連携というような 「東関東・東京高度医療人養成ネットワーク」 中居 康展(筑 波 大 学 附 属 病 院 本 事 業 コ ー デ ィ ネ ー ター) 流れです。これは 4 年目に突入しましたが、この状況で作 れたのかということを、この先のパネルディスカッション でぜひ検討していきたいと思っています。 広報活動としては、一生懸命やってきたつもりですが、 よろしくお願いします。お二方の先生に引き続きという ことになりますが、現時点での現状と課題についてです。 現状については、この後、阿久津コーディネーターが解説 してくださるので、こちらではあまりお話ししません。 概要です。東関東・東京に隣接する五つの大学病院が緊 密に連携・協力して、それぞれの得意分野による相互補完 を行うということで本事業は開始されています。 研修プログラムを共通化して、ホームページを作成し、 キックオフミーティング、各診療科の打ち合わせなどを行 い、今までこの事業を行ってきました。 この研修システムの構築で、最初にわれわれが取り組も うと考えていたのは、ワークショップ、セミナーなどから 280 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 すべての情報をホームページに集約し、パンフレットをリ ニューアルするというところで進めてきました。今先生の プレゼンテーションなどを見せていただくと、まだまだわ れわれはやるべきことがあるかと思っています。 教育資源に関しては、各大学でシミュレーターを中心と した医療機材がかなり充実しました。 これによって、シミュレーターを利用したセミナーおよ び講習会、また、自治医科大学、千葉大学でのウェットラ ボでの講習会等を進めていき、これらに関しては非常に好 評をいただいており、参加者も多くなっています。ですか ら、最初に企図した交流に関して言うと、当初の目的は達 成されつつあるのではないかと思っています。 この後、パネルディスカッションで、ぜひ検討させてい ただきたいと思っている項目をざっと挙げてみました。明 らかとなってきた課題です。お手元の資料にありますが、 5 大学とその関連病院の立地の良さを生かしてセミナーを 開催して、これまでに 85 企画、927 名と、開催されたセ ミナーの数と参加者は多くなり、広報活動としてはなかな かいい結果が得られているのではないかと思っています。 また、シミュレーター等の関連機材、ウェットラボから、 このような豊富な教育資源を生かしたさまざまな企画が 開催されています。これについても、うまく進めていけて いるのではないかと思っています。 ただし、得意分野を生かすといったことは、完全に生か し切れていません。そして、大学間の人材交流は、長期研 修 6 名、短期研修 15 名と着実に増えてはいますが、まだ 満足できる数ではないと思っています。やはり今後の課題 は、さらなる人材交流の活性化にはどうしたらいいのかと いうことで、各事業、この場にいらっしゃる先生方とも、 この次のパネルディスカッションでぜひご討論をさせて いただきたいと思っています。以上です。 (齋藤) 中居先生、ありがとうございました。 Advanced Clinical Training-network Report 281 それでは、3 人の先生にご登壇をお願いしたいと思いま れないといったような悩みもあるかと思いますが、いかが す。早速パネルディスカッションを始めさせていただきま でしたか。 す。 まず、今までのお話のように、各大学とも、やはり人材 (菊地) まず、平成 21 ∼ 22 年の当初については、どう 交流を最大のテーマとして取り組んでいらっしゃると思 しても申請校、代表校となっている群馬大学が中心となっ います。人材交流をして何がいいかというと、これはもう て、いろいろな企画をさせていただきました。例えばコー 一言で言い表せないぐらいのメリットがあるかと思いま ディネーター会議も、議事等は群馬大学が取り仕切って すし、ほかの大学の文化を見にいくだけということでも、 行っている状況でした。しかし、せっかく五つの大学が連 得られるものが非常にあると思っています。その人材交流 携している中なので、それぞれの得意分野を生かしてサ に関しては、残念ながら、われわれ東関東・東京高度医療 ポートしていただけるといいのではないかということと、 人養成ネットワークでは、当初予定していたような人材の コーディネーター会議そのものを活性化させたいという 派遣が十分できていません。受け入れも派遣もどちらとも ことがありました。連携 5 大学の中でも、国立大学と私立 不十分な数となっています。もちろん、これまでに人材交 大学が混合となっており、臨床研修センターの体制や事務 流に取り組んでいただけたところもありまして、そういう 職員の数等の体制がまちまちですので、なるべく各大学の ところには非常に好評を得ており、その後も人事交流が定 ご負担にならない範囲で各課題を割り振らせていただき、 着しているという診療科もあります。 それぞれの進捗状況をコーディネーター会議を通じて確 認しながら、5 大学が連携していく体制を取りました。 一番目に見えて変わったのは、コーディネーター会議の 際に、ほかの大学の先生方が活発に話をしてくださるよう になったということです。その後、例えば診療科ワーキン ググループを開催したいということになっても、今度うち の大学でこういう学会をするからということで積極的に お話をいただけるようになりました。当初はお願いをする ことに正直、若干不安もありましたが、結果的に非常に、 良かったのではないかと思っています。 (齋藤) ありがとうございます。 では、小畑先生、長崎大学では専門医の養成を、医局単 なぜ人事交流が活性化しないのかということを考えて 位任せから、病院長直属の専門部署として設定していると みました。やはり一つは人事の問題です。医局員が少ない いうことを伺っています。これは医局の壁を取るには、か と、受け入れはできるけれども、人を送ることはできない なり大きな出来事だと思いますが、これは一体どのような という医局が多々あると思います。それから、研修医を外 経緯で病院長直属の部署になったのかということをお聞 に出すとなると、身分の保証、保険などの問題、それから かせ願いたいです。 生じる人件費の問題が非常に引っかかってきます。そし て、これら人件費のクリアなどに当たっては、われわれの 事業も調整などを行ってきています。 養成が任されている部分もあり、人事や医局の事情によっ もう一つ大きいのは、いわゆる「医局の壁」というもの て、どの医師がどの専門医を取っていっているのかという です。これもいろいろなものがあると思いますが、やはり ことも十分把握ができていないという現状がありました。 教授、医局長の理解を得た上で、研修医の希望の大学病院 に行かせてあげるというのが一番いい方法だと思います。 しかし、それがなかなか簡単にはいかないのが現実です。 これらの事項を念頭に置いていただいて、パネリストの 先生方には、医局の壁を越える工夫をどのようにされてき たか伺ってみたいと思います。まず、群馬大学の菊地先生、 先生のプログラムでは、5 大学がそれぞれのテーマを中心 として受け持って、その五つのエンジンで事業を回してい るというところがあります。このテーマ分担はどのように して決められたかということと、あるいは、テーマを決め ても大学によって温度差があって、あまり活発にやってく 282 (小畑) これまで本 GP が始まる前は、医局ごとに専門医 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 その弊害としては、適正な人材配置にもかかわってくると います。本日も分科会を設けてあって、各診療科ごとに集 思いますし、また、長崎の地域性から考えても、離島、へ まって実際の人事交流について話し合いをしていただき き地が多いということで、回る病院によって症例数に偏り たいのですが、やはりここ 3 ∼ 4 年、いくら院内で医局長 が出たということもありました。そこで、本 GP が始まる 会議や教授会などで、こういうシンポジウム、分科会があ のをきっかけに、先ほど ABCD 戦略に出しましたが、D るというお話をしても、全く見向きをされない科もありま の部分に当たる宣言ということで、病院長が「若人が集う す。全部の科に周知徹底して、このような会にもいらして 病院づくり」ということで、大学病院を挙げて取り組むと いただくというのは、なかなか難しいという気がしていま いう姿勢を、まず全医局に示しています。 す。 その結果、直属の部署として、現医師育成キャリア支援 続いて、専門研修医をこの事業にいかにして参加させて 室というところを開設し、その部署が専門医の取得状況や きたかという、こつというか、専門研修医をこの事業に集 研修状況、育成研修の取得に必要な症例などがどれぐらい める工夫をどのように行ってきたかを伺いたいのですが、 の程度で毎年進んでいるかということを、本人と、関連病 例えば菊地先生のところでは、お手元のパンフレットによ 院に入れた場合は直下の指導医、そして各コース責任者に ると、本年度中の研修予定者が 28 人もいらっしゃるとい は医局長レベルの医局を統括するような先生方の三者に うことです。これは、例えば教授がトップダウンで命令し かかわっていただいて取り組むことで、専門医取得に向け てこれだけの人数になったのか、あるいは、ボトムアップ た状況がかなり明確に把握できるようになってきていま で希望者をどんどん吸い上げていったのか、その辺はいか す。ですので、そういう取り組みに関しては、医局に対し がでしょう。 てのメリットが大きかったのではないかと考えています。 (菊地) 「両面です」と申し上げたいところですが、現状 (齋藤) ありがとうございました。 は、やはり指導医からの働き掛けがないと、研修医から声 中居先生、われわれの事業では、壁を越える工夫はどの を出すというのは、まだ難しいところがあるかもしれま ようにやってきたでしょうか。 せん。特に一番効果的であったのではないかと思っている のは、診療科ワーキンググループの開催です。これによっ (中居) 先ほどのプレゼンでも言いましたが、一つには、 て、診療科長クラスの先生が集まってくださると、必ず中 小さい水鉄砲でも、やっていけば壁がうがてるのではない に 1 人ぐらいは、「関東・信州広域循環型専門医養成プロ かということで、セミナーレベルの交流や、短期研修をと グラムって何なの?」とおっしゃる教授がいらっしゃるの にかく積極的に行える環境を作ろうということでやって ですが、その機会に交流を深めていただくと、 「じゃあ、1 きました。水鉄砲でも、やはりかなり打ちましたので、認 週間ぐらいなら行かせてみようか」という話に大抵なりま 知度はだいぶ上がってきたのではないかと思っています。 す。まず指導医の先生が交流していただいて、良かったと とはいえ、診療科同士の温度差があったり、この後に全体 いう話になれば、研修医も旅費が出るなら行ってみたいと 会議などがあって、放っておいても回る科も実際にありま 言ってくれることも非常に多いので、このような取り組み す。ただ、どんどんドライブをかけて発破を掛けていかな が地道に各診療科に広がっていって、今年は自分から行き いと、いつの間にか流れ流れになってしまうという科もあ たいと言ってきてくれた若手医師も何名かいますが、その ります。それらの科に、実際にこのような研修、連携を使っ ようなことにさらに広がっていけばいいと思っています。 ていろいろな大学を回っていくということのメリットの アピールがまだ足りないのではないかということを今、痛 (齋藤) ありがとうございます。診療科の先生同士で話し 感しています。 合っていただいて、少し交流ができかけた後は、結構コー 今日も二つの連携事業の先生方のお話を聞いて、われわ ディネーターの働きが重要なように思います。放っておく れはここでも、まだいろいろ取り入れなければならないこ と、そのまま熱が冷めて元に戻ったりすることもよく経験 とがあります。また、同じ悩み、同じ迷いというか、同じ します。コーディネーターとしても、われわれは頑張って ことを共有するところもあるということで、非常に参考に いきたいと思います。 させていただいています。1 年半しかないので、それをど 小畑先生、例えば長崎大学では、佐賀大学と非常に緊密 こまでわれわれのところでフィードバックできるかとい な交流をされていると伺っていますが、これはこの事業が うことはありますが、例えば各大学で事業を五つに分ける 立ち上がる以前から非常に緊密であったのか、それとも事 というような群馬大学のやり方などは、今からでもできる 業立ち上げ後に、さらに何かいろいろな会議を設けて緊密 取り組みではないかと思います。 さを増していったのか、その辺はいかがでしょう。 (齋藤) ありがとうございました。 病院の中でも、診療科によっては温度差を非常に感じて (小畑) もともと長崎と佐賀は地理的に接しているので、 関連病院が共通するところが多いということも、本事業が Advanced Clinical Training-network Report 283 始まる前の時点での特色として挙げられるとは思います。 ですが、例えば、先生の赴任当初から医療系の雑誌にどん その後、GP が始まって取り組んだこととしては、さらに どん文献を載せていかれたのかなど、その辺の立ち上げ時 関係を連携していくために、先生が先ほどおっしゃったよ の苦労などを、具体的にあれば教えていただきたいのです うに、各医局だけでなく、専門のコーディネーターと事務 が。 を長崎大学と佐賀大学に置いています。医局間で話が出た ときに進めるという形の第三者がいる、お互いの大学の窓 (今) 最初は 1 人で始めましたが、恐らく数年、もしく 口になるような部署がきちんと設置してあるということ は 10 年も 1 人の可能性があるのではないかと思いました。 は大きかったのではないかと考えています。 地方の救命救急センターは 1 人や 2 人でやっているところ もあるので、そういうことを予想しましたが、いろいろな (齋藤) 長崎大学では、パンフレットによると、人材の交 雑誌に論文を積極的に書いたところ、反響が大きかったの 流実績が今まで、短期ですが 39 名と非常に多くていらっ で、もしかしたらこの方法でいけるのではないかと思って しゃいますが、これは具体的に短期間に何か特色ある医 積極的にやりました。結果的にはうまくいったのではない 療機関に行かせるなど、そのようなものはあるのでしょう かと思います。 か。 今日、皆さんのお話を拝聴して、広報ではなくて、説 得ではないかと思うのです。私の広報というのは、目に (小畑) 短期交流の場合、お互いの大学病院間を行き来す 見えない相手に対して、つまり 1 学年 8000 人の医学生や、 るだけでなく、地理的に分かる方がいらっしゃるか分かり 1 学年 8000 人の研修医に向けての広報でしたが、大学で ませんが、ちょうど県境に嬉野医療センターという大きな これからやろうとしていることは、大学にいる 50 人とか 病院もあるので、そこにお互いの研修医が集って、1 週間 100 人近い後期研修医に対する広報というよりも、医局の 診療に携わってみるというようなことも行っています。 代表者、例えば 15 個の医局があって 15 人の教授がいたら、 15 人に一人一人説得するのが最初であって、それで成功 (齋藤) ありがとうございます。 したら、次に 100 人の後期研修医に広報するのではない 中居先生、われわれの事業では、研修医を何とかこの事 かと思います。その説得が多分あまりうまくいっていなく 業に参加させようと頑張ってきたつもりですが、そのやり て、先ほど壁とおっしゃいましたが、壁でうまくいってい 方についてご解説願えますか。 ないので、その次の広報もなかなかうまくいっていないの ではないか。ですから、先ほどの病院長の直轄の施設とい (中居) まず、金で釣るという言い方はちょっとあれです うこともありましたが、そういう病院長や学長という何か が、セミナーや短期研修に関しては交通費を支給すると 圧力を利用した説得からうまく始められたらどうかと、聞 いった形で、比較的隣接している県と、交通機関などをう いていてそう思いました。 まく使うと、都内の大学と筑波、千葉、自治医大はそんな に遠くありません。ぜひそういうものを使っていただきた (齋藤) どうもありがとうございました。 いということで、レジデントのお部屋に、こういう事業を われわれの事業も本年度は 4 年目を迎えました。この事 知っていますかという、かなり大きな広告を張ったりし 業は言ってみれば、高度医療人を養成するために 5 大学が て、交通費等のサポートが出る、セミナーへの参加は無料 協力して、お互いいつでも利用し合えるようなシステムを である、また、一部参加費を取るようなセミナーなどでも、 作っていこうというものです。基調講演でもお話しいただ とにかく優遇的に受講できるような措置をすることで交 いた足立先生にお伺いしたいのですが、先生は長らく臨床 流を図るようなことをやってきました。実際にそれがただ の最前線でも活躍され、かつ医局にも長い間、属されてい だから、お金が出るからということがきっかけになってい たということで、医局の壁などに関しても非常に精通され るのかどうかは分かりませんが、一番大事なのは、やはり ていると思います。先生から、この連携事業をご覧いただ いいソフトだと思います。いいセミナーであれば、もちろ いて、印象というか、どのように見えたかということをお ん身銭を切って行くと思いますが、その背中を押してくれ 伺いしたいのですが。 る少しの役には立ったのかなと思っています。 (足立) 中居君が言っていましたが、恐らく人材交流の活 284 (齋藤) ありがとうございました。中居先生も広報の重要 性化がお三方共通の課題だったと思います。答えは、事業 性を非常に感じられていると思いますが、基調講演でお話 の継続性だと思います。今のところは有期限でやられてい しいただいた今先生は、7 年前に 1 人で八戸に救急医とし る。そのことは定着性の問題があります。これは松村さん ていらっしゃって、わずか 7 年のうちに、18 名もの救急 に聞いた方がいいのかもしれませんが、国のやり方として 専属医を擁するような日本有数の救急センターを作られ は、まず構造特区という形で、それを全国展開しようと ました。やはり最初はいろいろご苦労があったかと思うの 思ってやらせるのです。これもそういう確証があれば、間 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 違いなく広がっていきます。イメージとしては、連携大学 また、長期にわたる研修の場合は、研修医の身分保証の 院が今ほとんどのところに広がっています。これは研究所 問題、給与の問題が生じてくるので、その辺はあらかじめ ももちろんそうですが、そこに属している人間同士の移動 ご相談いただければ、こちらで何とか調整できるように努 も起きているだろうと思います。これは連携大学院の連携 力いたします。 卒後臨床研修版だという考え方が定着していって、それが それでは、フロアから、このことは聞いてみたいなど、 永続性のあるものだと思えば、私は進んでいくことだと思 ご質問等あればよろしくお願いします。 います。恐らく今は試行段階だという認識が強くて、なか なか進まないというところなのではないかと思っていま す。 (Q1:高崎) あちこちで広がってきているということは 非常に楽しみだと思いましたが、ただ、文部科学省は本当 に臨床の専門医を育てる気があるのかということを、私は (齋藤) 足立先生にもう一つお伺いしたいのですが、国の まだ疑問に思っています。そういうシステムなのだろうか 政策から見て、例えばわれわれの高度医療人養成事業で ということです。私は今、専門医認定制評価・認定機構で は、どのような医療人を作っていってほしいという、先生 いわゆる理事というものをやっています。ところが、どう からのご希望はありますか。 いう専門医を育てるつもりですかというところは、学会も きちんとした返事をよこしません。特に文部教官である文 (足立) 先ほど最後の方で駆け込み的に申し上げました 科省の教授などは、どんな専門医を育てようなどとは思っ が、やはり健康寿命世界一を達成したこの国の人材は世界 ていません。文科省なのですから。 が求めているのです。さらにそこで大事なのは、マネジメ ですから、そこのところを先ほども伺いましたが、文科 ント力のある人間も必要だということです。その分野分野 省と厚労省は、本当にどういう医者を作ろうと思っている の専門家だけではなくて、それが見えているということ のかというところがないと、せっかく皆さんがやっても駄 は、マネジメントする力のある人も育っていってもらいた 目だと思うし、今の段階で、専門医資格取得ということが いし、恐らく世界中が期待している分野ですから、そうい 目的に入っていましたが、この形は専門医取得のためのシ う目で見てもらいたいです。 ステムにはならないと私は思っています。それではとても もう一つ大事なことは、人口が減少している社会の中 できません。これは専門医など関係なく、自分の専門技術 で、そこにずっと定住する人口は増えないわけです。です を生かすためにいろいろ回ろうという方向に変えないと、 から、交流するしかありません。どの分野においても人が 専門医取得を目的としてこれを使いましょうというのは 回っていけるような仕組みを作らなければいけないし、そ 絶対にうまくいかないと私は思いましたが、どうですか。 れができれば、ある地域だけでなく、世界に皆が広がって いけるように、夢を抱きながら、そうあってほしいと私は 思っています。 (齋藤) 貴重なご意見をありがとうございました。 (齋藤) 筑波大の前野先生、いかがでしょうか。急に振っ てしまって申し訳ありません。 (前野) おっしゃるとおりだと思いますが、そもそも人材 それでは、時間もせまってきましたが、この事業は平成 を育てて社会に貢献していくという大きな目標は、文部科 20 年度に採択されてから、5 年間の中で、事業の開始、定 学省も厚生労働省もないのではないかと思っています。で 着、それから今後継続していけるような体制を作らなけれ すから、人材を養成するというだけでなく、最終的には社 ばなりません。本日のシンポジウムのテーマにも挙げさせ 会的な貢献というものがある。それと同時に、そのように ていただきましたが、ブランドになり得るかというのが研 貢献しようと思うモチベーションを持って育つためには、 修医をひきつけるテーマにもなってくると思います。この その人にとってもキャリアイメージというものがすごく 5 大学は、単発で各大学でもそれなりのブランド力はある 大事だと思うので、そういうイメージを与える。そして、 かと思いますが、5 大学が協力して一つになったことをブ 今日の足立先生の講演で、私も視野が狭かったと思うので ランドとしてアピールすることが今後は重要になってく すが、それは広い意味で、日本のためだけではない。それ るのではないかと思います。 をアジアや、いろいろな世界にも発展していくのだという あと 1 年 5 カ月は文部科学省のサポートが得られます。 ような大きな目標が見えていた方が、いろいろなものが一 ですから、この 1 年 5 カ月の間に先生方には、ぜひ医局か 本の方向に向かっていくのではないかと思います。すみま ら他大学に人を出していただいたり、あるいは受け入れて せん、いきなり振られたので個人的な印象ですが。 いただきたいと思っています。交通費などは予算が尽きる まで、こちらから何とか努力して出したいと思いますの (齋藤) 前野先生、ありがとうございました。 で、1 人でも 2 人でも、最終年度に向かって人事交流の研 修医をぜひ出していただきたいと思っています。 (中居) すごく話が広がっていって、夢の話はもちろんあ Advanced Clinical Training-network Report 285 るといいと思いますが、私としては、個人的には、大学間 (齋藤) 松村先生ありがとうございました。 連携事業をうまく使っていただいて、ぜひ一つの大学では なく、ほかの大学にもたくさん友達を作ってほしいと思い (足立) 高崎先生のお話と、今の松村先生のお話はつなが ます。そういうきっかけになっていただければいいと思っ るところがあると思います。これは省庁の壁ごとに言って て、研修医の人にはもっと気軽にこのシステムを使ってほ いても駄目です。ですから、3 省共同のプロジェクトとい しいと思います。 う形で今進めています。これは文科省、厚生労働省、経産 専門医取得というのは目の前のニンジンですが、そうで 省がこのような取り組みが必要なのだということで、一体 はなくて、友達を作りにいろいろなところに行ってみたい 的に予算を組んで取っていくということが非常に大事だ という気持ちをかなえてあげるというのが、研修医たちを ろうと私自身も思っていますので、努力させていただきた 送り出していく、勉強させにいくということで、われわれ いと思います。 が考えていかなければいけないことではないかと思いま す。 (齋藤) 力強いお言葉をありがとうございました。 それでは、時間になりましたので、これにてパネルディ (齋藤) ありがとうございました。松村先生。 スカッションを終了したいと思います。パネリストの菊地 先生、小畑先生、中居先生ありがとうございました。また、 (松村) 筑波大学の松村です。この事業を最初に立ち上げ るとき、一番問題になったのは、人事交流の資金です。各 だき、ありがとうございました。 大学はそれぞれ医師を雇用するのに、やはり限界がある。 それでは、パネルディスカッションを終了させていただ それぞれの大学が、2 ∼ 3 カ月の短期間は、自分のところ きます。ありがとうございました。 から給料を出して外へ送るということまでは合意できま したが、長期となると、1 年分の雇用はなかなか難しいと いうことで、トレード制度のように出して受けるとか、雇 用のお金が余っているところはそこで受けるというよう な形になりましたが、実際にはなかなかそこの壁が高いで す。いろいろな診療科の先生方が来ていますが、診療科の 壁が高いというよりも、やはり資金面での制約も結構ある と思いました。 そういう観点から行くと、足立先生がまだおられるの で、ぜひ要望を挙げたいと思います。今日は陳情の会では ないと言ったのに、自らそういうことを言ってしまうの ですが、今、例えば大学院の国際交流のグローバル 30 や、 いろいろな大学院で海外に行くといった資金がものすご く今、潤沢になってきています。ところが臨床医に限って は、それは駄目、臨床医は働いている社会人だから国際的 に行くのは駄目である、あるいは研究交流でもそういう資 金がなかなか出ない、あるいは臨床研修の中でもそういう 資金が出ないというような状況です。先ほど足立先生が、 日本は科学技術とおっしゃいましたが、われわれ臨床も高 度医療人であって、一つの社会的なニーズがあるわけで す。そこにも今やっている科学技術の国際交流や、人材交 流など、特に若手の人に対する交流を文科省でも結構やっ ていますが、そういうところを臨床の医療にも応用できる ようなスキームにしていただけるといいかと思います。 また、今回来ていただいた 3 グループは、必ずしもこの 5 大学に固まる必要はありません。それは全国的に、5 年終わっ た後に展開していけるような、さらに大きなものができる と、先ほど高崎先生がおっしゃったような普遍的なシステ ムになっていけるといいと思います。ぜひその辺はよろし くお願いしたいなということで、一言申し上げました。 286 基調講演に引き続き、今先生、足立先生、コメントをいた 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 (アナウンス) パネリストの先生方、座長の齋藤先生、あ 38 回で 884 名です。平成 23 年度には、今のところ 25 回、 りがとうございました。 合同のセミナーを行って、401 名の参加者がいます。残り 次に、本事業の筑波大学コーディネーターである阿久津 の期間で、合計 35 回のセミナーが予定されています。こ 博義先生より、 「東関東・東京高度医療人養成ネットワー のようなことが人材交流のきっかけになればいいのでは ク」の事業報告をします。 ないかと考えて、このような研修医の旅費、参加費をサ ポートしています。 事業報告 阿久津 博義(筑波大学附属病院 本事業コーディネー ター) 私からは、この後の分科会に向けて、今日お集まりの先 生方にどのようなことを話し合っていただいて、人材交流 やセミナーを含めて、今後の話し合いをどのような形に 持っていっていただけるかということにつながる報告に させていただきます。 今年度の事業の報告ということで、広報が先ほども話題 に上っていますが、その一つとして、日本医学教育学会と いうところで、私どもの中居が取り組みや今後の課題など 具体的には、それぞれの参加者の声から、研修医にどの を発表してきています。 ようなニーズがあるかということが伝わってきます。これ まず、この事業はセミナーと人材交流の二つに集約され は筑波大学の救急・蘇生セミナーです。参加者の声からは、 るわけですが、私どものこの事業はセミナーが非常に充実 手技のみならず、その背景も勉強できる、また、ただの救 しているということで、それは評価の際にもいわれていま 急ではなく、心臓以外の全般のことにも注意が向くように す。平成 21 年は 33 回、参加者総数が 431 名、次年度は なった、それから、実際の現場でいかに考え、行動するか Advanced Clinical Training-network Report 287 というようなことを学べたのが良かったという声が出て います。 それから、東京大学で腹部エコーの講習会をされていま すが、やはりこのような普段学べないような手技を実際に できる、また、心臓超音波などのセミナーがあればまた参 加したいという声もあるので、関係者の方には、このよう なセミナーも考えていただければいいのではないかと思 います。 このセミナーでは、ウェットラボという手術の演習とい うか、実際の手術に近いような形の研修ができるというの も非常にいいことです。やはり術者でなければ分からない ようなことが実際に学べるということです。また、人で経 験したことのない術式を、ブタですので、いろいろできま す。そういうものは研修医にとっては非常に良かったとい うことで、このようなセミナーは、今後、金銭的なサポー トがなくても継続的に続けていけて、参加者も集まってく るのではないかと思っています。 東京女子医大では、総合診療部門で合同カンファレンス も昨年に引き続き行われています。このようなものは、特 にあまりお金がなくてもできる交流の一例です。実際の参 加者も、昨年度は 19 名だったのが 31 名に増えて、非常に 議論が盛り上がって良かったというような感想がありま す。このようなものは、事業が終わった後も続けていって いただければいいと思います。 288 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 それから自治医科大学の脳死下臓器摘出シミュレー てきています。ただ、本来の予定では、昨年のこの後の話 ションセミナーというもので、これは自治医科大学に非 し合いの段階では 10 名だったのですが、震災の影響など 常に充実した施設があるからできるセミナーです。3 年目 でなくなったりというものもあります。予定が実現できな ですと、普通、手術を自分でするなどという人はありませ かったという部分は、コーディネーターを含めて、体制を んが、そういうものが体験できた、それから、セミナーだ もう少ししっかりしていかなければいけないし、話し合い けでなく、懇談会で指導医の先生方とも交流できたという の内容をきちんと実現するようにしなければいけないと ことで、研修医には非常に評判が良かったということでし いう課題だと思います。 た。 短期の方は、10 人、2 人、6 人ということで、こちらも これがメインのテーマでもある人材交流の方です。人材交 実際には、昨年の話し合いの直後では 14 名が予定されて 流は長期型(半年∼ 1 年)、短期型(3 カ月以下)という いましたが、これも、ちゃんとニーズがあったのに実現で ように二つに分けています。長期の方は、まず筑波大学 きなかったということで、これも来年度の課題ではないか から東京大学へ老年病科の先生が行かれています。それか と思います。 ら、東京女子医大から筑波大学に歯科口腔外科の先生が行 かれていて、歯科口腔外科では、非常に良かったというこ とで、継続的に人を派遣してくださるような体制が出来上 がっていて、非常に結果が実っているところだと思いま す。 それから、水戸共同病院は筑波大学の関連施設という か、大学が入った関連施設ですが、そこの総合診療科に 1 人行かれていて、地域の医療にも貢献できているのではな いかと考えています。 千葉大学から筑波大学へ、やはり歯科口腔外科と乳腺甲 状腺・内分泌外科の先生がいらっしゃっています。それか ら、東京女子医大から東京大学に腎臓外科の先生が行かれ ています。 もう一つは、大学院は今まで臨床の交流がメインでした が、このような基礎というか、研究の分野での交流も出 てきたということです。恐らく昔からこういうものがあっ たのだとは思いますが、単に医局のつながりだけではな く、このような事業をきっかけとした研究の交流も出てき たということは、非常にいいことではないかと思っていま す。 短期の方は、今シーズンは少なかったのですが、自治 医科大学から東京大学へ、心臓血管外科で、短期とはいっ ても 3 カ月なので割とちゃんとした交流だと思います。自 分のところにない人工心臓治療の導入に向けての下地づ くりができたということで、非常に有意義な研修だったと おっしゃっています。 それから、筑波大学と東京女子医科大学で、自家腫瘍 これから全体会議で皆さまにお話ししていただきます ワクチンの共同研究のミーティングにただ参加しただけ が、事前にメールベースで、人材交流が来年度どれぐらい ですが、このようなところに専門研修医を連れていって、 できるかというものを去年に引き続き調査した結果です。 その雰囲気を味わわせたりするだけでも十分人材交流に 5 大学全体 186 診療科の中で、27 の診療科で派遣は可能だ なるので、各科の先生方もあまり堅苦しく考えないで、 ということでした。受け入れの方は 95 の診療科というこ ちょっと見にいく、手術を見学するなどでも十分です。ま とで、昨年もそうですが、受け入れはいくらでもいいので た、来シーズンにもっと盛んにこの制度を利用していただ すが、派遣をするのはなかなか難しい。当然、人が足りな ければいいのではないかと思います。 いということです。ただ、そんな中でも、8 件、受け入れ 各年度ごとの推移は、1 年目は 2 人、2 年目が 5 人、3 と派遣が既に成立しそうな結果をいただいています。これ 年目が 7 人ということで、長期の人材交流に関してはまだ はぜひ来年度の実現に向けて今日の話し合いで決めてい 少ないですが、少しずつ広がってきているし、認知もされ ただければと思います。 Advanced Clinical Training-network Report 289 そういうわけで、これから話し合いをしていただいて、 な面からのアプローチが非常に大事だということを教え この場で決まったものに関しては、随時コーディネーター ていただきました。 および事務局の者に言っていただければ、事務的な手続き それから、足立先生のご講演に関しては、先生方はご存 はすべてこちらでやりますので、積極的に人材交流を進め じかどうか分かりませんが、アメリカで来年 AAMC とい ていただければと思います。 う全米医科大学協会のミーティングがあります。これは学 ご清聴ありがとうございました。 生の集まりから始まって、上は各医科大学のディーンの集 まりまで、あらゆる階層の人たちが集まって、1 週間近く (アナウンス) 阿久津先生、ありがとうございました。 にわたっていろいろなディスカッションをする学会とい 最後に、千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修セン うかカンファレンスです。ここに毎年、上下両院の医療政 ター長の田邊政裕先生よりご挨拶をいただきます。 策に関係する議員の方がいらっしゃいます。この議員の方 のご発表、ディスカッションが毎年ありますが、そこはい ご挨拶 つも満員で、特に大学あるいは医科大学が自分たちの政 田邊 政裕(千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研 策、教育をやっていく上で、そのような情報がいかに重要 修センター長) かということが、そこで示されています。今日の足立先生 のお話を聞いて、まさにそのような情報をわれわれに与え 今日はお休みのところ、ご参加いただきましてありがと てくださったのだと感じました。ダイレクトな、これをす うございました。時間がなくなっていますが、一応 10 分 ればいいというものではありませんが、国の政策をこのよ いただいてるので、今日のお話について、私の感想と併せ うに具体的に示していただけると、われわれ医学教育者、 て、今後のことについて少しお話をさせていただきたいと あるいは実際の診療をする者にとっても、今後の指針を 思います。 作っていく上で非常に有用なお話だったと思います。 最初に、今日は基調講演で今先生と足立先生から「救急 足立先生のお話の大事なポイントとしては、就業率を上 医療であふれかえる病院の秘密」と「成長戦略・ライフイ げる、また、マーケットや雇用の創出、生産性を上げてい ノベーションとその人材」ということでご講演をいただき くというようなお話でした。特に生産性を上げていくとい ました。その後に、 「持続可能な事業システムの構築」と うことで機能分化、さらに機能分化をしながら、今度は連 いうことで、群馬大学の菊地先生、長崎大学の小畑先生、 携を強化していくという取り組みが必要だということで 筑波大学の中居先生から、各取り組みについてお話をいた す。その対象としては、在宅医療、それから訪問診療、訪 だきました。各先生方のご講演、ご発表、さらにディスカッ 問看護といった、われわれが大学病院で往々にしてかなり ションは非常に示唆に富む内容で、これから特にわれわれ 欠けている分野ですが、実際の社会のニーズは、大学で 5 大学でやっていく上でも有用な情報を得ることができま やっている診療、研究とは少し違うところにあるのだとい した。 うようなご指摘だと思います。そのような意味では、われ その内容について簡単に振り返らせていただくと、最初 われもそういったニーズに応えられるような人材の育成、 の今先生の「救急医療であふれかえる病院の秘密」につい 質の向上を今後やっていかなければならないということ ては、非常にインパクトのある内容で、はっとさせられる でした。 ようなことが幾つもあり、インスパイアされました。今後、 さらにイノベーションということで、これに関しては、 千葉大といってしまうと、また 5 大学の中で孤立してしま 大学は研究をやっているところなので、当然、イノベー いますが、いろいろな教育や研修をやっていく上で非常に ションについても大学の研究開発の中で生み出していか 参考になる内容でした。 なくてはいけません。当然、患者さんを診るということは 特にブランド化ということで、大事なポイントとして 非常に大事なポイントですが、このようなイノベーション は、「唯一」 「頂点」 「先駆者」といった三つのファクター をご提示いただきまして、それをいかに具体化していくか ということでお話がありました。特に「劇的救命」といっ たフレーズは、研修医や学生をとらえる上で、現在の学生 気質、研修医基質をうまくつかんでいます。そのような取 り組みは、本来、医師、あるいは教育者は単に教えればい い、あるいは診療すればいいというだけでやってきました が、今後はそれだけでは足りなくて、このような取り組み がぜひ必要なのだという感じを受けました。 最終的には、原点は救急にありということで、救急医療 の重要性について最後にご説明いただき、やはりそのよう 290 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 に関しても、大学という研究開発機関としての役割を果た 参加した研修医に付けられるかということです。アウトカ していかなくてはいけないのだというような感じを受け ムが求められているので、あと 1 年半を残すだけとなりま ました。 したが、今後、各大学あるいは各大学コーディネーターの それから、A ランクを受けたパネルディスカッション 先生と協力しながら、最終的にここに参加した、あるいは の各大学のご発表では、各取り組みそれぞれご苦労がある 参加する予定の先生方の臨床能力を、具体的な形で、目に ということが分かりました。ただ、やはり共通しているの 見える形で高められるような取り組みをやっていかなけ は、人材交流のところがなかなかうまくいっていないとい ればいけません。さらに、やっていった結果をうまく広報 うことで、そういったことが報告されたと思います。群馬 して、その有効性を皆さんに知ってもらって、さらにそれ 大学のグループが GDNSS、長崎大学のグループが ABCD によって次につなげていく、あるいは継続性を担保してい 戦略、筑波大学のグループが ACT ネットワークというこ くということを今後やっていかなければいけないと感じ とで、先ほどの今先生のお話ではありませんが、キャッチ ました。 コピー的なものを打ち出して、そのようなものを使いな 雑ぱくな内容でしたが、今日はお休みの中、ご参加いた がら事業を展開しています。最終的には、高崎先生もおっ だきまして本当にありがとうございました。この後、分科 しゃっていましたが、単に専門医を取るのではなく、専門 会があると思いますので、よろしくお願いします。どうも 医としての力をいかにこのような事業展開の中で、ここに ありがとうございました。 第 4 回シンポジウム 第 3 部 診療科ごとの分科会の様子 Advanced Clinical Training-network Report 291 292 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク 第 5 回シンポジウム 演題 「Let the Scales Fall from Your Eyes」 演者 松村 明(前事業推進責任者 筑波大学附属病 院 副病院長) 「Sustainable な人材交流―大学病院連携による 高度医療人の養成―」 座長 田邊 政裕(千葉大学医学部附属病院総合医療教 育研修センター長) 日時:2012 年 11 月 23 日(金)13:30 ∼ 17:30 場所:東京女子医科大学弥生記念講堂 (田邊) ただ今ご紹介いただきました千葉大学の田邊で す。本日は基調講演の座長をさせていただきます。 (アナウンス) ただ今より、東関東・東京高度医療人養成 先ほどご紹介がありましたように、この基調講演は、も ネットワーク第 5 回シンポジウムを開会いたします。開会 ともと筑波大学の堀原一先生が予定されていましたが、ご に当たり、東京女子医科大学病院病院長、立元敬子先生よ 都合が悪くなりまして、急遽、松村先生にお願いすること りご挨拶をいただきます。 になりました。松村先生のご略歴に関しましては、既にハ ンドアウトに記載されていますので、省略させていただき 開会の挨拶 たいと思います。 立元 敬子(東京女子医科大学病院 病院長) そ れ で は、 演 題 名「Let the Scales Fall from Your Eyes」、目からうろこを落とそうというようなことで、内 皆さん、こんにちは。勤労感謝の日で、お天気も悪いと 容はよく存じ上げませんが、非常に興味の湧くタイトルで ころをお集まりいただき、ありがとうございます。病院長 す。ぜひよろしくお願いしたいと思います。では、松村先 として、一言開会のご挨拶をさせていただきます。 生、よろしくお願いします。 ACT-network ということで、卒後の研修医、特に後期 研修医の 5 大学における相互乗り入れによる研修の 5 年間 ただ今ご紹介にあずかりました松村です。演題の「Let の総まとめを、本日、女子医大でさせていただくことがで the Scales Fall from Your Eyes」は高飛車すぎたかなと きて、大変うれしく存じます。研修医にとっては短い時間 思って、今、非常に反省しております。ご容赦ください。 であっても、他大学で全く新しい研修、教育指導を受ける 本日は、堀原一先生にご講演いただくことになっていま ことは、一種の武者修行のようなものだと思います。研修 したが、急遽ご用事ができたということです。私は準備不 に行かれた先生、それを受け入れた施設は、お互いにメ 足ですが、堀先生の言われたことをたどって、5 大学連携 リットが心の中に必ず残り、次のステップに進む上での大 に役立つキーワードが少しでもピックアップできればと きな役割を果たしているのではないかと思っています。 思い、用意してまいりました。また、自分自身の交流の体 今回、人材交流のプログラムが一つの節目を迎えます 験なども最初にご紹介して、皆さんの目からうろこを落と が、タイトルにあるようにサステナブルになっていくよう すことができればいいなと思っております。 に、女子医大病院としても引き続き貢献していきたいと まず、自分自身の臨床研修についてです。私は卒業して 思っております。そういった意味で、本日のシンポジウム 5 ∼ 6 年目で西ドイツのゲッティンゲン大学附属病院に行 が明日につながる成果を残せるよう、心から期待しており きました。ドイツでは日本の医師免許でフルに臨床研修が ます。どうぞよろしくお願いいたします。 可能で、手術の術者まで行うことができます。向こうで日 本の医師免許を認定してもらえます。そのような制度もあ (アナウンス) 立元先生、ありがとうございました。 これより第 1 部の基調講演に移ります。本日は ACT- り、筑波大学にとどまっているのではなくて、脳から脊髄、 末梢神経まで非常に幅広い手術を、日本の 10 倍ぐらいの network の前責任者で、筑波大学附属病院副病院長の松村 明先生より、「Let the Scales Fall from Your Eyes」と題 してご講演いただきます。座長を、千葉大学医学部附属病 院総合医療教育研修センター長の田邊政裕先生にお願い いたします。 なお、当初は元日本医学教育学会会長で、筑波大学名誉 教授の堀原一先生にお話しいただく予定でしたが、都合に より変更になりましたことを了承願います。 第1部 基調講演Ⅰ Advanced Clinical Training-network Report 293 症例数を 1 年で経験することができました。武者修行とい 中から医学生の最終学年あるいはレジデントが来ていて、 うか、これは非常に良い自分の体験になっています。 そういう人たちと知り合って友人になれたこともメリッ トでした。病院のあちこちでいろいろなレクチャーやカン ファがしょっちゅう催されていて、そういうところに数多 く参加することができました。このようなことがあり、筑 波に戻ってきても、私の後輩にはなるべく外に出ていくよ うにとも言いましたし、今回の 5 大学連携でもそういうこ とを勧めたいと考えていました。 これは 1984 年ですが、ドイツでは既にドクターヘリが 全国半径 50km で全部カバーされていました。夜にも飛ぶ ドクヘリがあったり、アウトバーンの上に降りたりする こともあり、日本の医療システムとの違いが非常に大きく て、自分としては「目からうろこ」が落ちました。ただ、 逆に日本の良い点も認識できました。海外で臨床をしたこ とのある先生はよくご存じだと思いますが、向こうは分業 化が非常に進んでいて、患者さんをトータルで診る、ジェ ネラルで診ることはあまりありません。細切れで、パーツ、 パーツで患者さんを診ていくので、そこでは日本の医療の 良い点も非常に感じました。 ゲッティンゲンはドイツのちょうど真ん中にある学園 都市ですが、文化的に「目からうろこ」というか、驚いた ことがありました。私が最初に1984年に行ったときに は、ゲッティンゲンには東西ドイツの壁としての国境があ り、その先は地雷地帯で緩衝地帯になっていて、東ドイツ の監視塔がありました。これは一番上の娘と写っている写 真です。 その後、ドイツ留学の帰りに英国のロンドンの Queen Square にある National Hospital for Nervous Diseases の Postgraduate Neurology Training Course に 3 カ月間、こ の 5 大学連携で言うと短期派遣のような形で行きました。 ただし、これは 3 カ月で 100 万円の授業料を取られました。 それプラス生活費だったので非常に苦しかったのですが、 それなりに役に立ちました。一番よく覚えているのは、や はりお金を払っただけあって、外来あるいは病棟での体系 的教育法、teachingmethod が非常にシステム化されてい て、それなりに得るものがありました。教員が教育手法を 非常に習得していて、よくトレーニングされていて、世界 294 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 1997 年に研究でもう一度留学したときには、国境には 何もなくなっていて、東西の道が続いていました。パラダ イムシフトというか、 「目からうろこ」というか、地続き の国の国境の問題の難しさも感じた次第です。 2回目にドイツ留学したときには(1997年)行った ときにはこのような感じで、国境の監視塔自体が観光地に なっていて監視塔に登れるようになっていました。そのよ うな経験をしました。 私は MRI の研究をするために2度目にドイツへ行っ たのですが、これも異分野との交流です。MRI の研究は 2003 年にノーベル賞を取ったのですが、私は 1983 年から MRI の研究をしていて、その後にドイツに行きました。 この写真はゲッティンゲンの Max-Plank 研究所です。 写真にあるようなチームで研究を行っていましたが、赤丸 のボスは物理学者ですし、お医者さんが 3 ∼ 4 人いて、数 学者や機械工学の専門家などがいて、国もばらばらです。 会場にいらっしゃる先生方は、そういう経験をされている またベルリンの壁もそうですが、2 回目に行ったときに 方がもちろん多いと思いますが、異文化、異分野の人との はもう自由に通れる状態でした。この写真に写っているの 共同作業や共同研究も非常に自分のためになるというこ も一番上の娘です。 とで、若い人にはそういう機会があるといいなと考えてい ました。 Advanced Clinical Training-network Report 295 Functional MRI は今は当たり前ですが、手を動かすと 脳が光るとか、しゃべると言語野が光るという研究をして いました。 科大学の田中雄二郎先生の対談記事が出版されまして、そ の中の発言を少し抜粋してきました。新しい医学教育の原 点ということで、筑波大学創設期の思い出のスライドが 3 枚あります。まず運営についてです。このときは、東大と 東京医科歯科大と千葉大の三者で筑波大学の医学専門学 群を立ち上げました。それに関して教員は 1 つの大学から 教員数は 3 分の 1 以下にして、他大学からもたくさんの人 材を入れるということで、学閥をなくそう、あるいは自由 度を増そう、交流を増そうという方針だったと思います。 それから、学部・講座制をやめる。当時、筑波大学がで きるときの非常に大きな問題が、講座制と教授会だったら しいのですが、今ではその点はだいぶ違っていると思いま す。ただ、堀先生のご発言によると、当時は「これまで 講座間の連携もなければ協力もない。小さな講座の中で 人材交流などもしない。人をただ回しているだけ」とおっ しゃっておられます。ということで、今回の 5 大学連携で ここからは、堀先生のピンチヒッターということで、最 も講座の壁、あるいは大学の壁を取り払って人材交流をし 初に堀先生が挙げていた題名をここに挙げております。 て、いい研修をしていこうというのが目的だったと思いま 「医学教育の Festina lente(ゆっくり急げ)」、急がば回れ す。 ということかもしれません。堀先生がどのようなことを言 そういう経緯で、筑波大学では臨床の医局をやめる。医 われたかったのかは分からないのですが、堀先生の発言あ 学部では医局講座制・学部をなくし、教授会をなくすとい るいは発表の軌跡をたどって、この 5 大学連携のことを考 うことをこの中で発言しておられます。 えていきたいと思います。 堀先生は 1954 年に東大をご卒業され、その後 MGH に 行かれたりして、東京女子医科大学の心研の理論外科の教 授をしておられました。私も医学部の 1 年生のときに、堀 先生のおられた東京女子医大の心研の地下でイヌの人工 心臓の実験のアルバイトなどもさせてもらったことがあ り、ここ東京女子医大とは非常に縁が深いのですが、その 後、堀先生は筑波大学に榊原謙先生と一緒に赴任されまし て、教授・副学群長、1988 年には専門学群長、1992 年に は副学長、その後、名誉教授ということで、多数の医学教 育関係のお仕事をされ、つい先日までは日本医学教育学会 の会長をしておられました。 それから、教育についてです。対談の論文の中には医学 今年の「医学教育」の第 43 巻で、堀先生と東京医科歯 296 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 教育のスパイラルモデルの絵もあったのですが、印刷が 悪くてよく見えないので持ってきませんでしたが、まず り前のようにやっていることです。 goal(教育目標)を設定して、それに対して strategy(教 さらには、筑波大学の医学教育は、幅の狭い医師をつく 育方略)を立てて、goal に向かって教育を行い、その間 るのではなく、ゼネラリストを養成することを目標とした に evaluation(教育評価)をしていく。goal できたらフィー と堀先生はおっしゃられています。これはレジデント制度 ドバックをして到達度を測定するということで、最初に必 にも通じており、開院当初から2年間のスーパーローテー 要なのは goal 設定です。後期研修もどこに goal を置くか、 ションを行って、3 年目から診療科にフィックスするとい そのためにはどういう戦略を立てるかがやはり大事で、5 うことで、こういうことも診療科間の連携の中で幅を広げ 大学連携の中でもいろいろなセミナーやワークショップ、 るという意味での一つの方略だったと思います。ただし、 人材交流をやりましたが、それがこれからどう展開してい 大学ですから、研究もある程度重視し、新医学専攻という くかによって、より良い研修、あるいは goal が見えだす コースをつくって、少人数でもいいので研究者養成も目指 のではないかと思います。 すということが、カリキュラムの中に入れられています。 また、筑波大学の医学カリキュラムとしては、開学当初 から統合型カリキュラムを採用し、それぞれ解剖や生理な どの継投授業はなく機能別で分けており、循環器系なら循 環系の中の、基礎医学、臨床医学、社会医学。もちろん内 科も外科も一緒にして、一つのインテグレーテッドコース を設けて、そこで教育していくということでした。これも 5 大学連携の中で、例えば、腎臓内科の先生が泌尿器の移 植のことを研修に行ったり、循環器内科の先生が補助心臓 の研修に行ったりということで、クロスオーバーしてやっ ていくことにもつながるのではないかと思います。 それから、「後期研修先をどう選ぶ?」という対談記事 が、2005 年の「週間医学界新聞」にありました。堀先生 と群星沖縄臨床研修センターの宮城先生、聖路加国際病院 の福井先生のお三方で、ちょうど初期研修が始まったばか りのときの対談です。その中から少しキーワードをピック アップしてみたいと思います。 それから、臨床については、筑波大学附属病院では筑波 大学は最初からレジデント制度があって、無給医局員は置 かない、アルバイトはさせない、100 名中 30 名しか採用 しないということで、100 人中 70 名は卒業してすぐに外 の病院へ出されました。実際に出ていった人は大勢いて、 途中で医局に戻ってきた人もいますし、ずっとその病院で 働いている方も多いということで、これも今の人材交流と 少し通じるところがあるのではないかと思っています。 また、6 年生は 1 学期に全員、院外臨床実習を行ってい ました。私も東京の病院や茨城県の病院など、いろいろな 卒後研修全般について。堀先生はこのときに「『後期研 ところをぐるぐる回った思い出があります。今は当たり前 修』については未整備という状況であり、多くの研修医・ になってきているのですが、当時は非常に珍しがられた思 医学生が困惑しているのではないかと思います」とおっ い出があります。それから、海外実習でのクリニカル・ク しゃっています。今、初期研修制度が始まって確か 9 年ぐ ラークシップも開学当初からやっていて、非常に多くの筑 らいになると思いますが、ようやく今、専門医制度認定機 波の医学生が海外に行きました。今はどこの大学でも当た 構などを含めて後期研修あるいは専門医の制度ができつ Advanced Clinical Training-network Report 297 つあります。 宮城先生は、「研修医本意の教育を行うということは、 後期研修の中身についてですが、福井先生のご発言では 本来、軸を一にするものです。そのような医療・教育を 「病院ごとに独自にやらざるを得ない状況で、施設ごとに しっかりと行っていれば、大学であろうと研修病院であろ 差が出るのは避けられません」と発現されています。ここ うと、研修医は必ず集まってきます」とおっしゃっていて、 にお集まりの 5 大学の先生方の中でも、1 大学だけで最高 大学連携を通していいプログラムを提供することが、多く のプログラムを提供することはできないと考えておられ の研修医を集める一番のメリットですし、方略になると思 ると思いますので、やはり大学間で交流を持って、お互い います。 に学び合えるところは学び合うという姿勢が必要ではな いかと思います。福井先生は「全国的なガイドラインのよ うなものを出した上で、マッチングを導入することを目指 した方がよい」ということまで言っておられまして、この 辺は今後、専門医制度認定機構等でどのように進めていく のかは分かりませんが、ある程度、適材適所に人材を振り 分けるようなことになっていくのかもしれません。最後に 福井先生が言われているのは、クオリティコントロールの ことです。後期研修では専門医を取るというのが一つの目 標になりますが、その中でのクオリティコントロールが、 今後すごく大事になるのではないかと思います。 それから、宮城先生はこの時点で沖縄で 11 の病院と既 に後期研修アライアンスを組んでいて、それが今後の日本 のモデルになっていくと思っているというご発言ですが、 われわれは大学人ですので、大学院をどうするかという これはまさに今私たちがやっている大学間連携ともつな ことが一つの課題で、このときの堀先生のご発言では「従 がる思想ではないかと考えております。 来の研究者養成の大学院と並列して、高度専門職業人(高 度臨床医)としての、リサーチマインドを持った臨床医を 養成する大学院を」と言われています。法科大学院や教職 大学院と同じように、臨床医大学院をつくってはどうかと いうことで、リサーチマインドと研究能力を持つ臨床医を 養成する機関が必要だろうというご発言でした。 このあたりは恐らく今、各大学でいろいろ取り組まれて いて、昼夜開講制や早期取得なども考えられていますが、 制度としての臨床大学院はまだ本当にはできていないの ではないかと思います。医学統計や臨床研究のことを学ぶ 短期修了型の大学院ができてはいますが、そのような制度 がもっと発展するといいのではないかと思っています。堀 先生のお考えは、2005 年の「JAMA」にもう少し詳しく 書かれています。 実は日本脳神経外科学会では、5 年ほど前に研修医制度 を変えました。今までは、例えば、筑波大学が一つのプロ グラム、ある病院が一つのプログラムということで、専門 医を取るまでに後期と初期を合わせて 6 年間で、7 年目に 試験を受けるわけですが、全国に 400 ∼ 500 もの後期研修 プログラムがありました。つまり、小さな病院にずっとい て、偏った症例しか経験していなくても専門医を受験して て取れたのですが、それをがらりと変えて、新しい制度で はは 108 のプログラムに集約しました。全国の 80 大学プ ラス非常に大きなナショナルセンター等を 20 ∼ 30 入れて 108 のプログラムになりました。その中で、それまでは子 どもの症例や脊髄の症例、機能的脳神経外科の症例は必ず しも多く経験しなくてもよく、例えば、極端な例ですと脳 298 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 動脈瘤のクリッピング術の経験を 100 例近く提出して、こ ありましたが、できれば生活を保障して受け入れができる れだけやったということで試験を受けられたのですが、そ 体制整備が、これからの課題ではないかと思います。 ういうことをやめて、今言ったような特殊な小児や脊髄、 逆に送り出す方は、派遣したいのだけれども関連病院の 機能的脳神経外科も必ず 3 ∼ 5 例診なければいけないとい 維持なども含めて人材の余裕がないということですが、今 うプログラムにして、各大学が基幹病院になって、教育目 回のような5大学連携のシステムを続けていくことによ 標を持った、きちんとした研修プログラムを作り上げまし り、より多くの研修医が集まってきて、その中で余裕を た。そのことにより、研修プログラムが 108 に減りました。 持って人材を派遣できるような形で、ブラッシュアップで 今回の 5 大学連携では、このプログラムが始まってから きればと思います。 非常に高価な血管内治療シミュレーターを整備して、これ を 5 大学共有で使用してトレーニングコースをやったりし ています。実物は筑波大学に置いてあるのですが、それ を千葉まで運んでいってモバイルシミュレーターコース をやったりしておりまして、数の少ない高価なシミュレー ターを有効利用させていただいています。また、千葉大で はクリニカルトレーニングセンターにおける cadaver を 使ったトレーニングコースが充実していまして、そこで毎 年、cadaver を使った神経内視鏡のトレーニングコースを 5 大学の研修医も入れていただいてやっているということ で、この事業を通して人がぐるぐる動いて交流していま す。また、女子医大ではセミナー、自治医大でもミニブタ を用いた手術トレーニングなど、それぞれの大学が自分の 特長を生かしていろいろな研修を提供しており、非常にま もう一つは、今回の事業では合同セミナー、ワーク とまりが出てきた気がしています。 ショップ、カンファレンスが非常に活発に行われました。 メリットとしては、高額な教育機器(シミュレーター等)、 あるいは施設を共有化して、それぞれの大学で持っていな くても、質の高いセミナーが開催できることでした。それ から、他大学の研修医との交流による異文化体験で、考え 方の違い、文化の違いを体験できるということは非常にい いのではないかと思います。 課題としては、5 大学は関東の中では割合近い方なので、 それほど大きな問題はないと思うのですが、ほかの大学間 連携 GP では、例えば秋田と東京、秋田と島根などいろい ろあって、日程や距離の問題で忙しくてなかなか参加でき ないというような問題があります。それはこれから解決し ていかなければいけませんが、本事業をさらにシステム化 することによって研修医が大手を振って他大学の研修や 本プロジェクトの目指すところは、医局の壁を取り払っ セミナーに参加できるということは、大きなメリットにな て人材交流を推進することが大事で、その中で診療方針や るかと思います。それから、次年度以降は文科省の補助金 技術の違いを学ぶことにより、研修医の能力や考え方の幅 がなくなるわけですが、費用の工面も一つの課題ではない が広がることにあります。また、自分の大学にない分野は かと思います。 外に行って勉強できる機会がシステムとして整備されて おり、正式なルートとして他大学に行って研修できるとい 最後のまとめです。本事業は 5 年間で終わるものではな うメリットもあるかと思います。 く、短期も長期も含めてサステナブルな人材交流をどのよ それから、他大学に出たことにより、自分の大学のい うにしていくかを今後とも考えていかなければいけない いところも悪いところも見えてきて、自分のアイデンティ のではないかと思いますし、セミナーやワークショップも ティーの確立もされるのではないかと思います。 同じだと思います。その中で、システムとしては事務体制 ただし、課題としては今後も続く問題かもしれません のサポートがないとできませんし、資金のサポート体制も が、長期派遣の場合に受け入れる側の人件費の工面が難し ないとできないと思いますので、それは後のセッションで い。無給医局員は取らないということが堀先生の発言にも 恐らく議論になるかと思います。 Advanced Clinical Training-network Report 299 り書かれていて、何を勉強しなければいけないのかそこに 全部書かれていたので、やらなければいけないことは非常 に明確でした。ただ、私がそれをやったかどうかは全くの 別問題で、とても到達できなかったと思います。 われわれのカリキュラムで一番違ったのは、解剖学の系 統講義がなく、神経系であれば神経解剖をまずやって、そ の次に神経生理をやって、それから臨床が入ってきて、内 科、外科、最後に社会医学の講義が入るというインテグ レーテッドな形だったので、ある意味、教科書を全部並べ ておいて、そのチャプターを横にくし刺しするような形で 教科書を読まなければいけないという苦労はありました。 そういう中で、例えば神経系全体を包括して見られるとい それから、やはり大学病院ですので、大学病院ならでは うことではよかったのではないかと思っています。 のプログラムを今後もう一つ構築していった方がいいの ですから、卒後も、一つの科で縦割りではなくて、いろ ではないかと思います。例えば、臨床研究や基礎研究も含 いろな科を経験して、その中で最終的に幅の広い視野を めて、5 大学の中でそういう研究交流のプログラムができ 持った高度専門(医療)人になることが大事なのではない ていくと、さらに幅の広いプログラムになるのではないか かと考えています。 と考えています。 GP 終了後も自立できる体制の構築を、ぜひ今後ご議論 (Q1) 島根大学の廣瀬です。実は私は、第 2 回のシンポ いただければと思います。以上です。どうもありがとうご ジウムで、高度医療人の養成プログラムが重要か必要かと ざいました。 いうお話をさせていただいたのですが、そのときは松村先 生に座長をしていただきまして、どうもありがとうござい 質疑応答 ました。 今日のこのプログラムで重要なことは、松村先生にご紹 (田邊) 松村先生、ありがとうございました。松村先生ご 介いただいたとおりだと思うのですが、ただ、5 大学の中 自身の留学体験を通して、目からうろこのお話を最初にい で筑波大学と自治医科大学が抱えている問題の提起が、ス ただきまして、その後、堀先生のご業績というか、筑波大 ライドの中になかったように思います。私は、東京医科歯 学でのいろいろなお仕事のご紹介を通して、筑波大学の医 科大学・秋田大学・島根大学の連携と、島根大学・鳥取大学・ 学教育についてご紹介いただきました。最後にこの事業の 神戸大学・兵庫医大学の 4 大学の連携との、二つのプラグ 目指すところということで、ぜひ今後ともこのような事業 ラムを持っています。もちろん質の高い専門医や研究者育 を続けていきたいというご紹介だったと思います。 成ということが大きな目的ではあるのですが、それを通じ 少し時間がありますので、松村先生のご講演に関してご て地域医療への貢献という課題が、実はわれわれのところ 質問やご意見等がございましたらお願いしたいと思いま では課せられていたわけです。 すが、いかがでしょうか。 松村先生の大学がある北関東の方では地域医療の問題 私も先ほどご紹介いただいた「医学教育」の雑誌に 3 回 点があり、それをどのように解消していくのかということ にわたって掲載された田中先生との対談を読ませていた で、水戸協同病院と地域の中核の連携センターのようなも だいたのですが、非常に見にくい写真でしたが、スパイラ のを設置されて問題を解決していったという経緯があり ルにカリキュラムがつくられるという写真がありました。 ます。私どもも、その例に倣ってそういうセンターを地域 先ほども、まず goal を設定して、それを基にしてカリキュ の病院につくったのですが、そこのところが議論の中には ラムをつくっていくというお話がありました。私はあれを なかったように思っております。そのあたりのお考えをい 見て、今トレンドになっているアウトカム基盤型教育が、 ただければと思います。 まさに堀先生の下で実践されているということで非常に 感銘を受けたのですが、実際に先生がまさにその教育をな (松村) そのあたりについては私よりもむしろ三瀬先生 さった、あるいは受けられた経験として、実際にどのよう から、今回の 5 年間の取り組みについてご発言いただけま な教育だったのか、簡単にご紹介いただけますか。 すでしょうか。三瀬先生はずっと地域医療のセミナーをや られていましたので。 (松村) ご質問ありがとうございます。私はあまり優秀な 300 学生ではなかったので、堀先生の教えを守れたとは思って (Q2) 自治医科大学の三瀬です。この事業を通じて、最 いませんが、各コースのシラバスに GIO、SBO がきっち 初に文科省が事業の目標として掲げていたことは確かに 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 おっしゃるとおりで、その部分ができたかどうかという と、なかなか忸怩たるものがあります。ただ、行く先々で この 5 大学の人たちが交流して、女子医大から筑波に行っ た人と一緒に勉強する機会もたくさんありましたし、人的 な数で数えられない交流というか、お互いに顔見知りに なって次に踏み出そうという根っこは、かなり強化された と思っています。私たちコーディネーターも、最初に会っ たときは知らない同士でしたが、いろいろなことを一緒に 話し、情報交換が盛んにできるようになりました。 5 年という期間が結果を見るために適切な長さだったか というと、少し短いような感じはしますが、シニアレジデ ントから助手ぐらいの人たちが外に出て、主要な地位を占 めるころには、お互いに顔が見える関係で、さらに活発な 交流ができる元はできたのではないかと思っています。こ れをもう少し続けていく必要があるのではないかと思い ます。具体的に 5 年後に大学に後継者が戻ってきて人が増 えて、医療過疎地域に盛んに人が派遣できるようになった ということであれば美しかったのですが、残念ながらそこ まではいっていませんが、行く道筋はできたのではないか と思っております。ありがとうございました。 (松村) 追加しますと、最初にこの 5 大学連携事業を始め るときに、三瀬先生は、地域の病院に 5 大学のどの大学か ら人を出して、一つの大学の関連病院というのではない病 院の支え方も、地域の中でしたいという話はしていたので すが、この 5 年ではなかなかそこまでたどり着きませんで した。地域が近いこともあるので、お互いの大学が一つの 病院に人材を出して、いい研修先をつくっていくことが、 今後の課題の一つかとは思います。 (田邊) ありがとうございます。現状を見ると、地域医療 に貢献していく上で、このような大学間の連携は今後必要 になってくるのではないかと思いますので、ぜひそういっ たことも検討していただきたいと思います。 そのほかによろしいでしょうか。では、まだ少し時間は ありますが、これでこの講演を締めさせていただきたいと 思います。どうもありがとうございました。 (アナウンス) 松村先生、田邊先生、ありがとうございま した。 これより約 15 分間の休憩となります。第 2 部は 14 時 25 分の開始となります。 Advanced Clinical Training-network Report 301 第2部 座談会「行ってよかった!?他大学での研修―人材 交流の本音に迫る―」 司会: 北村 聖 (東京大学医学部附属病院 総合研修セン ター 総センター長) ゲストスピーカー: 三木 春香(筑波大学附属病院 膠原病リウマチアレ ルギー内科 医師) 塚本 真貴(東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌 内科 医師) を本日はお話しさせていただきたいと思います。 簡単に略歴を紹介させていただくと、私は筑波大学の医 学類を卒業し、その後すぐ、初期研修をそのまま筑波大学 三澤 吉雄(自治医科大学 心臓血管外科 教授) 附属病院で、スーパーローテーションで 2 年間行いました。 林 和 彦(東京女子医科大学 化学療法・緩和ケア そして 3 年目に、筑波大学の膠原病アレルギー内科に入局 科 教授) 森野 知樹(千葉大学 ACT-network コーディネー ター) することを決めたのですが、筑波大学では研修せずに、こ の大学連携のプログラムを使って、東大病院のアレルギー リウマチ内科で後期研修を 9 カ月間行いました。 (北村) まず、ゲストスピーカーの先生に 10 ∼ 15 分、ス 研修の内容としては、後期研修の 1 年目でしたので、一 ライドを使っていただいて、この ACT-network で経験さ 般的な後期研修医の業務として、アレルギーリウマチ内科 れたこと、その感想、あるいは今後に向けてということで での後期研修医としての業務をこなしました。ここに書い ご発表いただき、5 人の先生方が終わった段階で登壇して たとおり、一般的な業務なのですが、病棟患者の受け持ち いただいて、メーンイベントの「行ってよかった!?他大 や、東大病院ではコンサルトチームと病棟とで数カ月間の 学での研修」ということで座談会、フリートークをしてみ ローテーションだったので、コンサルトチームでの緊急外 たいと思っております。 来の対応や救急病棟の患者の受け持ち、他科からのコンサ それでは早速ですが、三木先生、よろしくお願いいたし ルテーションへの対応など。それから、後期研修の方が行 ます。 う東大病院の内科当直、内科の病棟当直などもしました。 また、外勤で、東大病院から派遣されて、群馬の病院に泊 302 (三木) 筑波大学附属病院膠原病リウマチアレルギー内 まりがけで当直に行くこともありました。この 9 カ月間に 科の三木春香と申します。本日はこのような会でお話をさ 東大で経験した症例で、症例報告論文の作成をさせていた せていただく機会を与えていただき、ありがとうございま だいたりと、充実した研修を行わせていただきました。 す。 研修後・現在までについては、9 カ月間の研修を 12 月 私は一昨年の 2010 年 4 月からの 9 カ月間、東大病院の に終えて、1 月からは筑波大学に戻ったのですが、3 月か アレルギーリウマチ内科で後期研修をしました。その経験 らは産休を取らせていただきました。ちょうどこの写真の 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ときには妊娠 7 カ月で、これは東大病院の最後の 12 月に す。 撮った写真です。現在は筑波大学大学院の 2 年次に在学中 それから、実際に行かせていただいての感想としては、 で、専門外来を週に 1 回、筑波大学と外勤先で行っていま 同世代の先生方とよく一緒に働かせていただくのですが、 す。 そういう若手同士のつながりは、専門科が同じなので、こ の研修が終わってからも、学会に行くたびにそういう先 生方と顔を合わすことができたり、困ったことがあったら メールで相談したりできる、つながりがずっと続いていく ということが、私の中では一番よかったことだと思ってい ます。 そのほかでは、私は筑波から東大に研修に行ったので、 筑波大学だと都内の勉強会やセミナーに参加したくても、 時間の問題があって、夜に電車で出ていったりするのがな かなか難しいこともあるのですが、東大病院にいた 9 カ月 の間は、病棟業務が終わってからすぐに東京でやっている セミナーや勉強会に参加することがすごくアクティブに できたので、それはとてもよかった点だと感じています。 デメリットとあえて書かせていただいて、あまりデメ 座談会でお話しする機会もあるかと思うのですが、ここ リットとは感じてはいなかったのですが、私の場合は筑波 で大学を超えて研修することに関して、私の感想を少し先 に家を残していて、9 カ月の間に筑波に何度も帰ることが に述べさせていただきたいと思います。 あって、東大の近くでも住居を借りていたということで、 まず、なぜこの大学連携でのプログラムを希望したかと 東京で住居を借りるに当たっての金銭面での負担は少し いうことですが、筑波大学出身で、初期研修もそちらで 大きかったかなというところです。ただ、交通費などに関 行って、筑波大学で後期研修もしたいと思っていたのです しては、このプログラムでセミナー代や交通費などは支援 が、出身大学以外の病院でも一度、研修をしたいというの していただいているということはありました。 が正直な希望の動機です。私は初期研修が終わってから、 期間について、私は 9 カ月間でした。本当は 1 年行くは 膠原病リウマチアレルギー内科にすぐに、3 年目に入局し ずだったのですが、妊娠・出産があり、産休に入るに当たっ たいと思っていたのですが、私の初期研修のプログラムは て、9 カ月という少し短い期間になってしまいました。個 スーパーローテーションで、最初の 2 年間のプログラムを 人的には、6 カ月を過ぎてようやく業務に慣れて、後期研 あまり自由に組むことができず、内科研修がほぼ初期研修 修医として同じ病院でやるには、1 ∼ 2 年ぐらい同じ病院 の 1 年目に、大学病院で 1 カ月半ずつで終わってしまって にいられれば理想だったと考えるのですが、筑波大から いて、内科の知識が不足していると感じていたので、専門 も、1 年も 2 年も行かせていただくというのは医局として の科に入局する前に、もう少し内科の知識を増やしたいと も非常に厳しいことだと思うので、私は 9 カ月行かせてい いうこともあり、筑波大学以外の病院で内科の知識を増や ただいたことで満足しています。 しつつ専門研修もできる病院ということで、少し探してみ 今後の展望について、私はアレルギーに興味があり、現 ました。 在もアレルギーの基礎研究をしていますので、アレルギー 東大病院は、アレルギーリウマチ内科の中に呼吸器グ の専門医とリウマチの専門医を取得したいと考えていま ループや腎臓グループ、アレルギーグループなどの専門グ す。また、今回の 5 大学連携のプログラムで他大学に行く ループがあり、各分野で一般内科的知識と専門的知識をよ ことや、他施設に行って研修をさせていただくことがすご り深く学ぶことができるということで、東大病院に行くこ く勉強になりましたので、今後、アレルギーの方での海外 とを決めました。 留学や、国内のアレルギーをたくさんやっている施設に国 市中病院に行きたいとも考えていたのですが、市中病院 内留学をしたりと、ほかの施設でもまた同じように勉強さ では、フレキシブルに数カ月間、内科の研修だけをするこ せていただく機会があればと考えています。 とがなかなか難しいということもあり、教授から東大病院 簡単になりますが、これで略歴紹介を終わらせていただ を勧めていただき、こちらに行くことにしました。 きます。 研修に行かせていただいた側から言うと、私のように出 身大学を離れたくなくて、ただほかのところでも研修して (北村) 後で総合討論をしますが、ここで特別に何か質問 みたいという場合に、大学所属を離れずに、他大学である がございましたら、一つ、二つどうぞ。 程度長い期間研修できるという大学間の行き来の垣根が 金銭面と書いてあるのですが、給料と交通費と住宅費は 低くなることが、一番のメリットではないかと感じていま それぞれ、全部この事業から出たのですか。 Advanced Clinical Training-network Report 303 (三木) 給料に関しては、東大病院の後期研修医として 扱っていただいたので、研修医のお給料が出ました。住居 と交通費に関しては、私は個人的に筑波にも住居を残して おいたという理由なので、それは個人の負担でした。 (北村) この事業から何が出たのですか。 (三木) 大学で戻らなければいけない公の会などがある ときの交通費は、こちらから出していただきました。 (北村) つくばエクスプレスのお金が出たということで。 逆にサステナビリティーから言うと、そんなにこれにはお 金がかからないということですね。東大に入局した人との と、東大はマンパワーが多いということもあると思うので 区別や差別は感じませんでしたか。 すが、学位を取るときに 3 年間ベッドフリーになり、研究 に集中できることにも魅力を感じて選びました。 (三木) それは全く感じずに、後期研修医のマンパワーと して、本当に平等に扱っていただいてやりました。 2010 年 5 月∼ 2011 年 3 月までの約 1 年間は私が望んだ 研修で、その中に今回のプログラムを利用させていただい た腎移植研修が入っています。なぜ私がこのローテーショ (北村) マンパワーとして平等に扱っていただいたとい ンを選んだかですが、腎不全になったときに、今、日本で う微妙な言い回しなのですけれども(笑) 。ほかに質問は 可能な腎代替療法は、腹膜透析と腎移植、それによく知ら ありますか。では、先生、どうも。後で存分にやりましょ れている血液透析です。腎移植は、腎不全の代替医療の中 うか。 でまだ少なく、1 ∼ 2%といわれています。それに対して 血液透析は 95%です。腎臓内科医であっても、腎移植に (三木) ありがとうございました。 関する知識が十分でない医者が多いというのが現実です。 私は、それは患者さんにとって、きちんと腎移植を提示で (北村) もう一人、参加された、現在、東京大学の塚本先 生。 きずデメリットになると思いました。今回こちらのプログ ラムを知って、この 1 年間は無給になるのですが、それで も得られることが多く、患者さんに還元できると思い、志 望しました。 その後は大学に戻り、1 年間は腎臓内分泌内科医として 病棟業務をやりましたが、現在は大学院で研究をしていま す。 (塚本) よろしくお願いします。私は今、東京大学医学部 附属病院の腎臓内分泌内科に所属していて、現在は大学院 の 2 年生で、臨床を離れて研究メインの生活になっていま す。 304 私の今までのバックグラウンドなのですが、出身は昭和 現状と今後のキャリアプランです。現在は大学院で 大学です。昭和大学から 2009 年に東京大学の腎臓内分泌 Acute Kidney Injury(急性腎障害)に関する基礎研究を 内科に入局し、東京大学のローテーションでこのように 主に行っていますが、ICU の患者さんを対象にした AKI 回ってきました。なぜ昭和大学から東大に行ったかという に関連する、クレアチニンの前に早期に腎障害が分かるバ 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 イオマーカーでの臨床研究もしています。この写真にある ように、海外の学会でもそのデータを発表しました。 大学院卒業後は、基礎研究を続けたいかどうかで留学な どの選択肢があります。臨床では今回、女子医大の腎臓外 (塚本) もう期間は 3 カ月と決まっていたので、そういう ものだと思って研修していました。 (北村) この期間はどうですか。自分にとって、もっと あった方がいいとか、3 カ月で十分だとか。 科で研修させていただいて、腎移植医療に腎臓内科医が積 極的にかかわっていく重要性を感じましたので、腎移植内 (塚本) 本当であればもう少し長い方がいいとは思うの 科医に興味があります。 ですが、現職の腎臓内科医に早く戻りたいということもあ 東大の腎臓内分泌内科にはいくつかの研究室があり、そ りますし、大学院も将来の進む道であったので、3 カ月集 れぞれの研究室のボスが取り仕切っています。私の研究室 中してしっかり勉強させていただいて、私は十分だったと のボスである野入に、このような場で発表させていただく 思います。 という話をしたところ、「私たちの研究室は基礎だけでは なく、クリティカルケア・ネフロロジストの養成を目指し (北村) はい。では、ほかにご質問等はありますか。はい。 ており、臨床も重要視している研究室ですので、もし興味 のある方がいらっしゃれば、ぜひ声を掛けてください」と (Q1) 東京女子医大の野村です。先生が今、所属してい 伝えてほしいと言っておりました。ちょっと宣伝も入って る教室ではあまりやられていないことをほかの大学で学 しまったのですが、よろしくお願いします。 ばれて、先生にとって非常によかったと思うのですが、先 簡単ではございましたが、ACT-network を通して、私 生が元の教室にお戻りになって、それがフィードバックで は女子医大の腎臓外科で非常に貴重な 3 カ月を過ごさせ きるのか、あるいは可能性が非常にあるのか、そこはどう ていただきました。研修が終了しても人間関係が続いてい いうふうにお考えになりますか。 て、それによって患者さんに還元できることも多く本当に 感謝しています。ありがとうございました。 (塚本) 確かに、先生のおっしゃるように、医局にフィー ドバックするためには、研修で学んだことや免疫抑制剤の (北村) ありがとうございました。何かご質問等はござい 使い方、実際の症例報告などをした方が良いと思いまし ますでしょうか。 た。私からもはたらきかけるべきだったと思います。教授 このプログラムに乗っているときは無給だっ にこのようなアドバイスをいただいたことをご報告する たのですか。 ようにいたします。ありがとうございます。 (塚本) はい。 (北村) よろしいですか。確かに一人の経験にとどまる可 能性は大きいかもしれないとは思います。教室全体のメ (北村) お金を全然なしで。 リットになるかというのは難しいかもしれません。 ほかにご質問等はどうですか。では、どうもありがとう (塚本) そうですね。医局からはなかったですね。 (北村) 先生の発表で大変よかったということと謝辞が ございました。 (塚本) ありがとうございました。 あったのですが、強いてこの事業のデメリット、あるいは 不便なところを言うと、どういうところでしょうか。 (北村) 今度は医局の預かる立場から、まず自治医大の三 澤先生に、若手を派遣することのメリット・デメリット等 (塚本) 私はあまりデメリットは感じませんでした。若い 先生たちは金銭面での保障を重要視する傾向もあるので、 をお話しいただければと思います。よろしくお願いいたし ます。 無給というのはデメリットになると思うのですが、腎臓外 科でも気を使ってくださって、医局の外勤先などを提示し (三澤) 自治医科大学心臓血管外科の三澤です。循環器セ ていただいたので、困りませんでした。実家が東京という ンター長とも書いてありますが、当センターでは、内科と こともあったので、私は特にデメリットは感じませんでし 外科が同じ病棟で、同じ部屋に内科の患者さんもいれば、 た。メリットの方が多かったです。 外科の患者さんもいるという状況で 10 年経過いたしまし た。10 年たつと、内科と外科の間のつながりも非常によ (北村) 期間は自分で決めたのですか。それとも、この事 業からして 3 カ月が限度ですみたいに言われたのですか。 くなってきて、今、非常に機能的にできて、効率的な治療 もできているという状況です。 Advanced Clinical Training-network Report 305 合病院に 6 カ月間行きました。かなり昔の話で、今となっ てはとんでもないことですが、二日間外来を見学させてい ただいて、三日目からは外来をやるというような状況でし た。 医者としては 3 年目に飯綱病院に行きまして、そこでは 外科系の総合診療が中心で、外科もやり、整形もやり、在 宅医療もやり、健康診断もやりと、いろいろなことをやり ました。もちろん田舎ですし、当時は麻酔は自分でかける という状況でした。 義務年限が 9 年ありますが、その間に自治医科大学附属 病院の胸部外科学教室へ、呼吸器外科の研修に 4 カ月間行 きました。この理由は、当時、気管支鏡ができる人間が飯 綱病院にいなかったものですから、4 カ月間、呼吸器外科 へ気管支鏡の研修に行きました。 私は心臓外科をやるつもりは全くなかったのですが、義 務年限が終わるころに、当時の胸部外科の教授から「母校 へ帰ってこい。心臓をやれ」といきなり言われて、 面食らっ たのですが、しばらく考えて、いろいろな方と相談して、 医者としては 11 年目で大学に行きました。それで心臓血 管外科をやり始めて、現在に至っております。 この間、留学は 41 ∼ 42 歳のときにカナダの McGill 大 学へ行きました。補助循環の研究で、細かいことは割愛さ せていただきますが、当時はリサーチをするレジデントの 3 年目、4 年目ぐらいの若い人たちと一緒にイヌを使った 実験をしました。私は留学をするにはかなり高齢者の部類 まずは自己紹介ですが、私は昭和 53 年に自治医科大学 に入っておりました。 の 1 期生として卒業しております。自治医科大学では、ま ず出身県に戻って研修をして、かつ、出身県で、最近では 地域医療という言葉を使っていますが、医療に恵まれない 地域で仕事をしなければいけません。このため大学の方針 として、当時はあまりなかった多科ローテート形式の研修 をせよという学長の強いご意見がありました。その中には 小児科と産科も入っております。それを信州大学を含めた 長野県内の大きな病院でできるかどうか、大学 3 年生のこ ろから県庁と話をして探っていたのですが、長野県内では 一切受け入れる病院がないということでしたので、母校で ある自治医科大学附属病院で 2 年間の初期研修をいたしま した。 その後、長野県に戻り、2 か月間長門町病院という小さ な田舎の病院で、健康管理センターに勤めながら、胃の上 306 部内視鏡の技術習得などもいたしました。 教室の宣伝もせよということですので、ここで教室の宣 その後、飯綱病院というところへ派遣されることになっ 伝をさせていただきます。私は 2001 年から心臓血管外科 ていたのですが、飯綱病院自体が、実は新築移転に際して を担当することになりました。グラフは、そのときからの 理事者と当時勤務していた医者がけんかをしまして、新築 心臓手術と胸部大動脈の手術の件数です。今年(2012 年) 移転する際に常勤医者がゼロになっていたためしばらく は 6 月までの半年間のデータです。数年前から心臓、胸部 病棟や外来を閉めておりました。新築移転後飯綱病院では 大動脈の手術は年間 300 件を超えていて、腹部大動脈など 外科医一人、内科医も一人来る予定だったのですが、田舎 を含めますと、昨年から 600 件を超えています。 では非常に整形外科の需要が多いのですが、整形外科医が こういうふうに増えてきますと、それまでなかなか医局 いないので、私が整形外科の研修をすることになり浅間総 員が入らなかったのですが、2010 年からは毎年 1 ∼ 2 名 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 の新規入局者が出てきています。 次の大きな課題は、人材の流出です。これはぴんと来な 私の方針としては、とにかく若い人から術者になってい いかもしれませんが、実は ACT-network の事業を利用さ ただくことです。移植は当院ではやっていませんので、10 せていただいた教室員が、今、引き抜きにかかっておりま 年目までには移植を除いた全ての心臓・大血管の手術を術 す。本人も希望しているので笑顔で送り出したいと思いま 者として経験できるようにという方針でやっております。 すが、こういうことが重なることは、こういった事業を行 う上で非常に問題があるのではないかと思います。明文化 することはできないかもしれませんが、紳士協定という形 で相互に理解が必要ではないでしょうか。循環器内科の教 授ともそういった意見を共有しています。 以上です。ありがとうございました。 (北村) ありがとうございました。何かご質問は。 今からディスカッションをしますが、出す方のメリット とデメリットをまとめていただきました。行って帰ってか ら 1 年間以上、自分の医局にいなければいけないというよ うなルールは決めていなかったのですか。 (三澤) 聞いてはおりませんで、まさかそういう事態が起 さて、今回のシンポジウムの本題になりますが、教室員 こるとは予測していなかったところです。 を派遣する側から見たメリット・デメリットです。もちろ ん、私たちが遅れている分野、先端を走っている分野に行 (北村) むしろそちらの方が大きいですよね。1 年間で かせていただきますので、新技術導入ということでは非常 100 万円の負担よりも、医局員がいなくなってしまうとい にいいことです。 うのは大変なことだと思います。 人事交流ももちろんできますので、非常にいいことで す。私たちは助教を派遣いたしました。40 歳をちょっと 過ぎた助教です。もちろん心臓血管外科専門医の資格を (三澤) 本人にとっては喜ばしいことですので、喜んで出 したいと思いますが、忸怩たるものがあります。 持っております。それから、先ほど循環器センターとして やっていると申し上げましたが、循環器内科の方からは、 (北村) ご質問はよろしいでしょうか。では、後ほどよろ 40 歳ちょっと手前の助教を同じ目的で東大病院に派遣し しくお願いいたします。 ております。それも補助循環、補助心臓のために、今年度 今度は、受け入れた、医局員をお預かりした立場という 4 月から 3 カ月間は内科医を派遣し、去年 4 月から 3 カ月 ことで、東京女子医大の林先生、よろしくお願いいたしま 間は外科医を派遣して、今、チームを組んで、人工心臓を す。 付けた患者さんの管理をしているわけです。非常に重要な ポストにある人間を派遣いたしますので、やはり彼らが出 ている間は人手が不足します。つまり、残った教室員の負 担が増加するということです。 先ほどからお金の問題が出ておりますが、補助循環をや るという事柄上、やはり東大病院の比較的近くに住まなけ ればいけません。栃木県から通うわけにはいきませんの で、住居を借りなければいけません。 実際に給料はどうかといいますと、私たちの病院から基 本給のみ支給されております。東大病院からは、実際に働 いた分のお金は一切出ていません。それから、先ほどもあ りましたが、ACT-network からは交通費程度は出ていま すが、この 3 カ月間で、住居費などでそれぞれ持ち出しが 100 万円前後になっています。特に家庭持ち、40 歳前後の (林) 東京女子医大の林と申します。私は受け入れる側で 医者ですので、ACT-network の場合には住居費などへの して、今回、化学療法・緩和ケア科という抗がん剤の治療 何らかの担保がないと、今後、続けていくのはちょっと難 と緩和を主として担当している診療科の部長をしていま しい点もあるかと思います。 す。あと、女子医大の中でがんセンターという横並びの横 Advanced Clinical Training-network Report 307 断的な組織をつくっておりまして、そこの病院部門長を 化学療法をやって、緩和をやってと。がんというテーマ やっているということで、診療部長でありながら、学内連 の下に、自分自身がずっと過ごしてきたような感がありま 携あるいは研修もそれなりに一生懸命やってきたつもり す。 ではおります。 今回、こういうところでお話しさせていただくとする と、そういった中で得てきたもの、あるいは後進に伝えて いかなければならないことが幾つかあります。治療に関し ては、大学あるいは病院の顔ですから、圧倒的に患者さん からの信頼を得て、存在感がなくてはいけないと思ってい ます。もちろん口だけではどうにもなりませんから、普段 からの患者さんとのコミュニケーションもしかりですし、 患者さんに信頼されるような医局の雰囲気などもつくっ ていく必要があると思います。 お手元のパンフレットにも、あえてたくさん、専門医、 移植医とか書かせていただきましたが、資格を取ることが 尊いのではなくて、その資格を取るためにする臨床的な経 験・努力みたいなことが資格につながる。なってみて思っ たのですが、これを字にするだけで患者さんから「先生っ 308 自己紹介ということで、経歴どうのこうのよりも、私自 ていっぱい資格があるのですね」と言われたりします。そ 身が大学教授として普段心がけていることをお話しさせ れは別に、資格が独り歩きすることなく持っている分に ていただこうかと思うのですが、大学教授になって今、3 は、悪くないのではないかと思っています。 ∼ 4 年目になります。やはり大学であるという特殊性をど それから、大学人は同時に研究者でもあります。自分で うしても自覚しなければいけない。大学は診療と研究と教 研究しないと、とても後進の指導はできません。やはり大 育という三つの歯車のいずれが欠けても、大学としての存 学人は研究者であるべきだと思います。 在価値がなくなっていくのではないかと常に考えていま 私は遺伝子の研究や臨床研究などに傾注してまいりま す。とかく今、先ほど専門医、指導医という話もされてい したが、その中でもいまだに、例えばインターネット等を ましたが、専門医指向が強くなって学位がおろそかになっ 通じての最新の情報収集は毎日 1 ∼ 2 時間は必ず行ってお ているというような悩みが、われわれ教育側としては少し りますし、それから研究の指導も行っています。やはりこ あるのですが、そういった中でどうしたらいいか、どう ういう分野ではキャッチアップしていないと、すぐに何も いった研修がふさわしいかということが、大きな悩みでも 教えられなくなってしまうので、そこが一番の悩みの種で あります。 す。 私自身は実はもともと消化器外科医で、外科の研修をし ただ、そういう中で、例えば学会の評議員になったり、 ていて、食道を専門に、食道の外科医を専攻していたので ガイドラインの作成委員、あるいは学術委員などを担当し すが、がんという大きなテーマがあり、それをきちんと治 てますと、その中で最新の情報を得ることもできるし、そ すには早期診断かなと思って内視鏡に少し力を入れたこ れが医局員、最終的には患者さんにもフィードバックでき ともありましたが、やはり早期診断をしても治らないがん るということで、そういった研究者としての活動も決して はたくさんあります。 無駄にはならない部分があります。 そうなると、今度は放射線や抗がん剤かと思って抗がん それからもう一つ、女子医大は女子だけの教育になって 剤の仕事をするようになり、そこからアメリカのロサンゼ しまうので、少し特殊かもしれないのですが、やはり教育 ルスの UC に留学して、がんの研究を始めました。そこで も非常に重要だと理解しています。今はもう教育者も学生 がん遺伝子などをやりながら、がんは広くいろいろな分野 側から採点されたりして、昔のように一方的な教育など の知識がないとやっていけないと感じ、化学療法もしっか できない状況になりつつありますが、授業中は一人でしゃ りやろうかと思って、日本に帰国してからは化学療法に専 べるのではなく、できるだけインタラクティブな相互フォ 念してまいりました。 ロー制の授業を心がけておりますし、あるいは、言葉は悪 ただ、固形がん化学療法はしょせんいまだに緩和医療な いのですけれども、どうすれば学生受けするかという教授 のです。治すこと自体はほとんどできません。そうすると、 法なども自分なりに勉強しています。 もう緩和的な考え方や緩和的な手法がどうしても必要に そんな中で、学生の評価は非常に気にはなります。別に なってくるので、そこまで手を出しています。 いい先生だと言われたいわけではなくて、自分のやってい 結局、うちの患者さんなどに言わせると「全部中途半端 ることが意味があるのかどうかということです。経験とし だ」と言われるのです。外科をやって、内視鏡をやって、 て一つ言わせていただくと、診療科ができて 2 年なのです 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 が、診療科ができる前は、例えば緩和ケアの授業というも んが、1 週間来ていただいただけで感じたことがあります。 のは大学にありませんでした。今もきちんと講座があるわ 「筑波大学から腫瘍内科の研修医の先生が来るよ」と けではないのですが、人間関係教育という部分で、年に 2 言った瞬間に、医局の中にやはり微妙な動揺が走るので 時間、2 コマだけ授業をいただいています。その教育をす す。そんな立派な大学からうちみたいなところに来てくれ るようになって、その人たちが卒業した 1 年目に、うちの て、大丈夫かな、ものすごくできる人だと教えられない 大学では前期研修医で選択授業を選べるようになってい のではないかとか、 「何を言えばいいのですか」と聞かれ るのですが、それまではゼロだったのが一遍に 9 人も来て たりしました。そんな中で、いらっしゃる前から各自が くださって、私はびっくりして「どうして来てくれたんだ」 ちょっと準備していたところもありました。そういった意 と全員に聞いてみたのですが、その全員が、たった 2 時間 味で、今までなかった刺激を受けたのではないかと感じま の授業で興味を持ったと言ってくれました。それは私に した。 とっては非常に勇気づけられる出来事で、やはり教育はす 実際に来ていただいて、1 週間だけだったのですが、そ ごく大事だと思いました。 の先生はとても真面目ないい先生で、非常に積極的に医療 に参加してくれるだけではなく、医局会や症例研究会で、 非常に積極的に感想を発言してくださる。そうすると、ふ んふんと聞いていただくときもあるのですが、 「こんなこ とまで考えていらっしゃるのですか」とか、いろいろなお 褒めの言葉もあずかったりしました。そうすると、それが すごく励みになったり、あるいは「これはうちだったらこ ういうふうにします」と言われて、「ああ、うちはそうい うことはできていませんね」というような客観的な評価 が、1 週間の間にできた感はあります。 そういう外部からの刺激によって、私たちは中からずっ と一緒にやってきた仲間で成り立っていましたので、自 うちの科の宣伝もということで、皆さんに目標を知って 分の目指す方向性を各自がもう一度考えるきっかけには いただこうかと思います。まず、全人的ながん医療を提供 なったのではないかと思います。 する。それから、プロですから、事故があってはならない デメリットに関しては、先ほど言いましたように、1 週 し、こういった診療科ですから、横断的な立場を常に心が 間来ていただくだけで、われわれにデメリットがあるはず ける。それから教育で、医者だけではなく薬剤師や看護師 もありません。こういった形ならば、いくらでも受け入 に至るまで、がんのチーム医療に必要な人材の育成を、科 れてとは思います。ただ、1 週間という期間は、ただ知り として、科を挙げて積極的に図っていく。そして、研究と 合いになるという期間でしかなくて、できれば今後、もう いうものを決して忘れてはいけない。研究をしながら臨床 少し長期の研修を担当させていただければと思います。た も頑張るという方向でやっております。 だ、長期になりますと、先ほどのような金銭面のことや医 局の人材の問題など、その辺に関してはまた別の問題が出 てくるかもしれません。以上です。 (北村) どうもありがとうございました。何かご質問はご ざいますでしょうか。 本音で言うと、何週間いれば、先生の医局の診療活動を 後期研修医にひととおり学んでもらえそうですか。 (林) 何週ではなくて何カ月と考えますね。例えば、一定 のことを伝えるには、3 カ月という単位が必要ではないか と最近は思っています。 今回の研修受け入れのメリット・デメリットということ (北村) 最低でも 3 カ月ということですね。一番最後に、 だったので、ちょっとまとめてみました。実際のところ、 後でご報告があると思いますが、この事業でどれだけの人 私のところは筑波大学から 1 週間だけ、腫瘍内科を目指す が交流したかというのが出るとは思いますが、確かに短い 先生に来ていただいただけですので、この研修事業に関し ものは 1 週間からだったと思います。 て大きなことを言えるような立場にはないかもしれませ ほかにご質問はありますか。お金は? Advanced Clinical Training-network Report 309 (林) もちろん私どもも持ち出しはありませんし、あちら の先生はつくばエクスプレスで通っていただいたようで す。その交通費は私持ちではないですね。 (北村) 事業から出たのかもしれません。よろしいでしょ うか。はい。それではまた後ほどのディスカッションでよ ろしくお願いいたします。 それでは、今度はセミナーを極めてたくさんやっていた だきました千葉大学の森野先生から、セミナーを運営する 上での苦労話、あるいはメリット・デメリットをお願いし たいと思います。よろしくお願いします。 を行っていないので少し立場は違うのですが、専門研修医 の皆さんが感じていらっしゃることと同じようなことを 私も感じておりました。医学知識に関しては講演会や教科 書のようなものである程度、各自の努力次第で得られると 思うのですが、実技・手技に関してはなかなか実践する機 会がありません。そうかといって、大変申し訳ない言い方 をすると、患者さんでいきなり試すわけにもいかないの で、いかにしてスキルアップしていくかということを悩ん でおりました。現在の研修医たちも恐らくそういうことで 悩んでいる面があるのではないかと思いましたので、そう いう研修医たちのニーズに応えられるような研修プログ (森野) 千葉大学の ACT-network コーディネーターを務 ラムやセミナーなどを企画して、それらを提示するのが、 めさせていただいております、森野と申します。よろしく われわれコーディネーターの仕事ではないかと考えて、実 お願いいたします。 際に行ってきました。 私の経歴は必要ないかと思ってスライドには起こさな 特に千葉大学では幸いなことに、私が所属している総合 かったのですが、お手元のパンフレットにも掲載されてお 医療教育研修センターを中心としてシミュレーターなどやア りますので、そちらをご参照いただくこととして、簡単に ニマルラボ、アナトミーラボなどを有する大規模なシミュ 口頭で述べさせていただきます。 レーションセンターがあります。そちらを駆使して、さま 私は 2003 年 3 月に千葉大学を卒業しました。現在の新 ざまなハンズオンセミナーを開催させていただきました。 臨床研修制度が始まる前の最後の年の卒業でしたので、直 接、循環器内科に入局しました。最初の 1 年は大学病院で 次からが実際に行ったセミナーなのですが、一番回数が 内科ローテートという形で 4 カ月ずつ、循環器内科・消化 多かったのが外科手術基本手技セミナーで、先ほどお話し 器内科・代謝内科で研修を受けさせていただき、その後、 したアニマルラボ(動物実験棟)を用いて、実際に生きた 医局の人事で関連病院で研修を積みました。医者 5 年目と ブタに麻酔をかけて外科手技をハンズオンで学ぶという なる 2007 年 4 月に大学病院に帰ってくると同時に、大学 形です。こちらは計 9 回行いました。 院に入学しました。私は学位を臨床研究で取りましたの そのほか、松村先生のご講演でも触れていただきました で、臨床医として働きながら臨床研究を進めるという形を が、cadaver を用いた神経内視鏡のハンズオンセミナー、 4 年間行って学位を取りました。 あるいは同じくブタの心臓と血管を使って行う心臓血管 そのころに、当大学の循環器内科の教授である小林先生 外科のセミナー。 から、本事業のコーディネーターの後任を探しているとい う話を受けまして、私が就任いたしました。そして現在ま それ以外に模擬患者の方にご協力いただいての腹部超 でコーディネーターの仕事を行っております。 音波のセミナーや、心臓超音波のセミナー、あるいはシ ミュレーターを用いた腹腔鏡下の胃切除術のセミナーや 310 私は今回の座談会では、一応、事業側として、特にセミ 内視鏡的胃粘膜下層剥離術のセミナーなどを行いました。 ナーを企画した者ということで呼ばれたようですので、そ あと、頸動脈エコーや、筑波大学から機器をお借りしてモ ちらに関して話をいたしますが、私はスーパーローテート バイル VIST セミナーも行いました。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 また、人材交流などともつながりますが、同世代のほか の大学の研修医の先生方と交流できて、連絡先なども交換 していたようなので、つながりが続いていくという形でメ リットを感じていただけたようです。 さらに神経内視鏡ハンズオンセミナーの方は、当大学の 脳外科が主体で、われわれは共催という形でしたが、こち らも同様に、粘膜の状態が生体と似ていてよかったといっ た意見や、手技の難しさが実際にやってみて分かった、あ るいは、実際にセミナーの中で企画された距離感を認識す るようなゲームのアイデアが素晴らしかったなどのご意 見をいただきました。 実際にセミナーに参加していただいた専門研修医の 方々のご意見・ご感想なのですが、総じて好評な感想をい ただきました。 特に、例えば外科セミナーですと、セミナーや人材交流 の最大のメリットである、当大学のやり方とそれぞれが属 している大学のやり方の違いやそれぞれのメリットやデ メリットなどが実際に肌で感じ取れたということや、もち ろん若手の先生ばかりですので、まだやったことがない術 式を実際にブタでやれた、さらに生きているブタであった ために、実際の手術のような臨場感があったなどの意見を いただきました。 さらに心臓血管外科の冠動脈吻合のセミナーでも、貴重 な体験で外科としてのステップアップにつながった、模型 でやるよりも実際に生体に近いもので行ったということ でやりがいがあった、疑問に思っていたことで実際の手術 中には聞けないようなことをその場ですぐに聞けたので よかったということ。あとハンズオンセミナーですと、機 器や講師の先生方の人数などに制限がありますので、どう しても小規模な、数人から多くても 10 人程度のセミナー になってしまうのですが、そういう形でやると講師の先生 とのマンツーマンのような形でセミナーを受けることが できるので、細かいことまでいろいろ聞くことができて、 Advanced Clinical Training-network Report 311 濃密な時間を過ごすことができたというご意見もいただ くて 1 日限りですので、参加者の行き帰りの交通費や、既 いています。 存のコースなどで参加費が必要なセミナーなどは、できる 限り当大学枠で参加している方の参加費も含めて、事業費 から出させていただきました。 (北村) 千葉大にピッグハウスがあるのですか。 (森野) いいえ、ありません。実験動物を専門に扱ってい る業者から購入するという形をとっています。ただ、動物 実験棟でしばらくの間、飼育もできますので、事前に購入 して、セミナーまで飼育しておりました。 (北村) 質問はございますでしょうか。それでは、どうも。 (森野) ありがとうございました。 最後に、これから当大学で開催予定のセミナーです。 (北村) それでは、これから総合討論に移りますが、いま 今度は救急部の先生主体でお願いしておりますが、外傷 一度、確認したいと思います。サステナブルな人材交流を 手術手技セミナーという形で、既存の SSTT(Surgical 目指して、この 5 年間、5 大学が連携してやってきた事業 Strategy and Treatment for Trauma)コースというもの をいま一度チェックし、良い点・悪い点、あるいは今後進 があるそうなので、そちらを開催させていただきます。ま める上での課題、もっと伸ばすべき点等を今から議論し た、先ほどの話にも出てきましたが、神経内視鏡ハンズオ て、ぜひ次の 5 年、あるいは次にずっと続けていきたいと ンセミナーの次回開催を予定しています。また、それ以外 いう趣旨です。シンポジウムではなく座談会になっており にもシミュレーターなどを使ったセミナーなどの開催も ますので、できるだけ自由にご発言いただきたいと思いま 検討しています。 す。また、フロアの先生方からも、どうぞご自由に発言し 簡単ではありますが、私からは以上です。ご清聴ありが ていただきたいと思います。 とうございました。 司会者からは、サステナブルという言葉にちょっとこだ わってみたいと思うのですが、サステナビリティーには二 (北村) どうもありがとうございました。苦労話みたいな つの意味があって、環境用語と国際協力用語の二つがある ものはありますでしょうか。やったけれども誰も集まらな のです。環境用語がむしろポピュラーかと思うのですが、 かったとか。 例えば魚が 100 匹いる池で、年間 10 匹魚が増える。そこ で捕る魚が 1 年間に 10 匹以内であれば、その池は永遠に (森野) そうですね。私は途中から後任という形でコー 魚を供給できます。ところが、その池で毎年 20 匹ずつ魚 ディネーターを始めたのですが、前任のコーディネーター を捕っていけば、その池からはいずれ魚が消えます。環境 の先生がセミナーの企画の概略、あるいは各部署への連絡 用語では、この地球をサステナブルに、永遠に持続する地 や周知をある程度済ませておいてくださったので、そうい 球であるという意味で使っています。 う意味ではスムーズに始めることができました。 国際協力の言葉でいうと、日本が援助をして、お金がな 苦労としては、当大学にいる専門研修医全ての方にセミ くなって日本が帰ってしまった後、その開発途上国に残し ナーを告知するのは現実的に無理なので、各診療科や部署 たものが、自立的にきちんと発展していくのがサステナブ などの担当の方にお願いして公示していただくという形 ルな国際協力といわれています。日本が去ってしまった を取っているのですが、その認知の程度に差があります。 ら、もう何も使われていない、誰もそんなものは使わない 全ての方に同様のレベルで周知していただくことがなか ということはサステナビリティーがないということです。 なか難しかったので、本来は参加したかったけれども、こ 今日使っている言葉には両方の意味があります。永遠に のセミナー自体を知らなかった研修医の方々もたくさん この 5 大学が、初期も含め、後期研修医の人材教育におい いたのではないかと考えております。 て、連携してより良いものをつくっていけるようなしかけ は何なのかということと、後半の意味で言えば、文部科学 (北村) 参加者の旅費や宿泊費は事業から出たのですか。 省の補助金がそんなには続かないので、なくなった後も自 立してつながっていくにはどうしたらいいかということ (森野) はい。基本的にわれわれのセミナーは長期ではな 312 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 と、両方の意味を込めて、この事業がサステナブルである ためにどうしようということです。 (林) がんの分野は、どちらかというといくらでもネット 前置きはこれくらいにしまして、まず、人材交流のメ ワークで、インターネットで世界中の全ての人に最新情報 リットをいま一度整理したいのですが、先ほど、ほかの大 が行き渡っているような状態で、むしろがんの医療は今も 学の先生と知り合えたり、ほかの大学のやり方がセミナー うかなり成熟してきていて、正解がないようなところもあ で分かったなどがありました。5 大学が連携する意味、メ りますので、いろいろな見方が必要になってくる部分があ リットをほかに何か言っていただけませんでしょうか。 ります。 そうすると、とかく例えば診療部長やあるいは担当医、 (塚本) 先ほどもお話ししたように、研修が終わった後も 主治医など、みんなに正義がありますから、その正義が本 続く人間関係もそうですが、それぞれの大学に得意な分野 当にどうなのかということをあらためて考え直すには、や があり、例えば女子医大は腎移植で有名だと思うのです はり客観性のある方に見ていただく、意見を言っていただ が、そこで研修できるというメリットがあると思いまし くことが、とても刺激になっていいのではないかと考えま た。各大学の強い部分を研修できるという点で、このプロ す。 グラムはとても魅力的で若い先生たちも興味をもつので はないかと思いました。 (北村) セミナーの方ではどうですか。ほかの大学の先生 が来るというのは、友達になるという意味も大きいです (北村) ありがとうございます。それぞれの大学の強い点 か。 を学ぶという。多分、教授の先生は、そうは思いにくいの ですね。常に競争だから、ライバルの強い点を素直に認め (森野) そうですね。参加してくださった先生方のご意 にくいとか、そんなことはありませんか(笑) 。先生、い 見にもありましたとおり、まずは資材・設備やシミュレー かがですか。 ターなどの機械もそうですし、そういうものに制限がある ので、自分の大学ではできないようなセミナーを、ほかの (三澤) 私はそんなにあそこに負けたくないという気持 大学に行って受けるということがすごく勉強になるので ちはありません。手っ取り早く知識や技能が手に入るの はないかと思うのと、私は結局のところセミナーも人材交 ですから、患者さんのことを考えれば、そんなことで突っ 流の一環だと考えています。 張っても仕方がないと思います。 実際に参加してくださった先生方の様子を見ても、もっ それから皆さん方がおっしゃったように人事交流の効 と言うならば講師をしてくださった先生方の反応を見て 果が非常に大きくて、当院でも 1 例目を入れるときに、東 も、知らなかった別のやり方などに関して情報交換ができ 大の西村智先生が翌朝から外勤に行くにもかかわらず、夜 て、そこでできたつながりを更に今後に生かせるというと 中に来て手術を手伝ってくれました。この研修をしていれ ころに一番魅力を感じてくださっていたのではないかと、 ば、さっさと来てくださったり、何かあったときにはすぐ コーディネーターをしていて感じました。 に相談に乗っていただけるので、そのメリットは非常に大 きいですね。 (北村) 交流することのメリットというのは、本当に人間 (北村) 学会で遠くで見るくらいではなく、実際に一緒に と人間が友達になるということが、何にも増して一番だと 患者さんとも働いて、友達という仲ではないにしても、よ 思います。また、今、多くの先生方が言われたように、新 く知った仲になるということが非常にメリットが大きい しい技術や違うやり方を学ぶ、それぞれの大学の強い点が と。 学べるというようなことがあるように思います。 先生方にもメリットがありますか。若い人で、ほかの大 このプロジェクトは、文部科学省が 5 年前につくったプ 学の人と知り合いになるという。 ロジェクトで、われわれはこの 5 大学ですが、ほかにも全 国に幾つかできてきています。東京大学で言えば、富山大 (三澤) 特に栃木県の中では大学が二つしかなくて、しか 学のグループに入れていただきましたし、琉球大学のグ も周りは畑・田んぼですので、都内まで出てきたり、学会 ループにも入れていただきました。富山大学からは戸邉一 等で出かけたりしない限りはなかなか知り合う機会があ 之先生がいらっしゃっていると思うのですが、戸邉先生の りません。今回の研修のように一緒に仕事をすると親密な グループで、メリットなどをディスカッションされたこと 付き合いができますので、今回行った彼も非常に喜んでい はありますでしょうか。多分、富山大学が一番多いかと思 ます。 うのですが。20 大学ぐらいありますか。 (北村) 林先生はいかがですか。 (戸邉) うちはかなり一生懸命交流をやっていて、非常に 短期のものから、半年とか 1 年のものまでありますが、教 Advanced Clinical Training-network Report 313 授の専門以外のところに非常にメリットが大きい。専門の に人的な交流、それから、島根の方はどうしても患者数、 ところに関して言うと、うちでやればいいのではないかと 症例数等が不足するということもありますし、まれな疾患 いうことになるのですが、ちょっと外れるとついていけな を診るという意味では、やはりこういった研修がとても役 くなる分野がたくさんあるので、そういうところにはどん 立ちました。以上です。 どん派遣しています。 それから、手技系なども、1 週間ぐらい行っただけで勉 (北村) お二人の先生、突然ご指名して申し訳ありません 強できてしまう。あるいは、長いものですと 3 カ月ぐらい でした。デメリットもご紹介いただきましたが、メリット のものもありましたが、割合簡単に教えてもらえるので、 に関してはもう間違いなくあると。今までのように、大学 非常にメリットが大きかったです。 にしっかり閉じこもって、その医局で、その教授の得意な ただ、こちらも派遣すると人が減るので、1 カ月とか 3 ところだけをやっていることがむしろおかしかったので、 カ月とかとなるとアルバイトの工面などの面では、医局長 近隣に限らず、いろいろな遠くへ学びにいくというシステ は結構大変だったようです。 ムがあることは、いいに決まっているということでよろし (北村) もう一つ、先ほどおっしゃった島根大学は二重に いかと思います。 あって、東京医科歯科大学・秋田大学・島根大学という社 もう出てきましたが、今度はデメリットの方をもう少し 会的にも結構有名になったプログラムがあります。医科歯 整理して考えたいと思います。一つは出す方として、外勤 科から何人、秋田と島根に行くのだろうなどと見ていたの の手当てやマンパワーの低下なども大変ですし、三澤先生 ですが、島根の先生、いかがですか。 からは、行ってしまって引き抜きに遭ったというお話もあ りましたが、先生からデメリットを幾つか整理していただ (廣瀬) はい、私です。島根大学の廣瀬と申します。 けますか。 私どものところは、東京医科歯科大学が主幹となってい る 3 大学と、島根が主幹となっている 4 大学がありまし (三澤) 特に私どものところは内科医も外科医も、専門医 て、残念ながら東京医科歯科大学の方は、人数的にはそれ という資格を取って、ある程度、病棟、外来で中堅どころ ほど多くありません。5 年間で 20 名ぐらいだと思います。 で働いている人間ですので、そういう人間を 3 カ月間出す 秋田と島根の関係があまりなかったのです。東京医科歯科 というのは、労力的には、残った人間に対しての負荷は大 大学は、都会にあって、やはり先進的なものもあるのです きくなるという点です。ただし、3 カ月ですから、我慢で が、島根と秋田はどちらかというと地域医療あるいは総合 きない期間ではありません。 医療学部で、家庭医というような話もありますし。 ですが、後半の方にちょっと申し上げました、引き抜き もう一つ、4 大学のメンバーである神戸大学・兵庫医科 に遭うというのはちょっと予想もしていなかったので最 大学・鳥取大学・島根大学で組んでいる方は、5 年間で全 初はどきっとしましたが、本人のことを思えばそこで引き 部で 60 名ぐらいが交流したかと思います。ただ、問題が 止めるわけにもいかず、こういうものは紳士協定しかない 幾つかありまして、どうしても山陰側から阪神側に流れて と思います。文書上で止めることは難しい内容ですので、 いく状況が、かなり多かったということがあります。それ こういったリスクも背負わなければいけないのかなと考 でも、このプログラムが皆さんに周知されていくにつれ えるようにしております。 て、神戸大学、兵庫医科大学の方でのご理解が進みまして、 特に神戸大学からは、3 年目ぐらいからかなり他大学への (北村) 林先生は引き抜いたことはないと思いますが、 派遣もありました。 「ここに移籍したい」などという人が来たらどうしますか。 先ほど、富山の先生も問題点等を挙げられましたし、今 までもありましたが、私どもは当初、期間として 3 カ月ぐ (林) もう大歓迎してしまいますよね、どうしても(笑)。 らいを予定していたのですが、やはりその間にマンパワー ただ、バーターというのはありかなと思うのです。連携 が落ちるということで、1 週間ということもありました。 校の間で必ず 1 と 1 でやり合う。お互いに引き抜き合戦も しかし逆に、東京医科歯科大学の方を使ったものでは半年 ありかなと。逆にそういうのはむしろいい方向に働く場合 ぐらいのものもありました。 もあるかなと思います。 ただ、そのように長期にいたしますと、これは島根大学 から神戸大学に行った例で、小児科なのですが、3 カ月・ (北村) 引き抜き合戦をしますと、多分、東京が勝ちます 314 3 カ月で計半年行ったのですが、男性の医師が神戸の方に よね(笑)。生活の便利さ、先生のおっしゃっていたセミ 奥さんができまして、この 3 月で辞めてしまいました。そ ナーなどの催しも多くて、大した催しではないのだけれど れ以来、小児科からは出してもらえないということもあり も何か行ってみたいと思ってしまう。そういうことがあっ ました。 たりして、引き抜き合戦には賛成できないかもしれませ ただ、そういった研修で、先ほどから出ておりますよう ん。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 若い先生の方はどうでしょう、デメリットは。 れやすい状況にはあるかなとは思います。ただ、今の発表 でもありましたように、筑波の方で研修というのはそんな (三木) 先ほど自分の発表でも申し上げたのですが、一番 大きかったのは金銭面です。家庭も持っていたので、筑波 に数が多くなかったので、あまりそういう実績が残せな かった部分はあります。 の方の住居と東京の方の住居と二重の生活でした。東大に も一度、初期研修医が住めるレジデントの住居が空いてい (北村) 大学の足並みがそろわないことのゆがみがあっ るかということも聞いてみたりしたのですが、そのような て、実際に若い先生方が苦労したということが現実にあっ 補助や、住みやすい住居を斡旋していただけるとか、空い たようで、これはぜひ次のステップでは改善しなければい ていればレジ部屋に入れていただけるなどの配慮があれ けない、大学の運営の方で定員を決めてでも、給料と宿舎 ば、もう少し行きやすいかなと思います。 は用意する方向でいかないといけないだろうと思います。 筑波大にも確認したところ、筑波大では、外国人のレジ ほかにデメリットと感じたところはどうでしょうか。森 デントの空いている住居に、必要があれば紹介して、安く 野先生、セミナーをやって、これを改善したらということ 入っていただくことはできるという話は聞いたのですが、 はありますか。 もう少しそういうものがあればよかったなとは思います。 (森野) セミナーを企画するに当たっては、大きなデメ (北村) 金銭的なところで、今回のプログラムは人数が割 リットはあまり感じなかったのですが、一つは、もともと ときちんと決まってはいないので、各大学で用意しにく セミナーだと一日限り、あるいは二日にわたっていても一 かったと思うのですが、もし例えば 10 名と決まっていて、 回帰ってまたあらためて翌日出直すという形で来ていた 10 名のレジデントハウスと、10 名× 1 年分のレジデント だくことになるのですが、参加者の先生方も働いていらっ としての給料を各大学が用意するという約束で始めれば、 しゃる病院でのお仕事がありますので、セミナーを開催す お互いさまなのでうまくいくかとは思うのですが、そうす る時間が、平日なら夜遅くか、週末になります。確かにこ ると 11 名来たら困ってしまうとか、あるいは 8 名しか来 の 5 大学は、関東圏内で比較的近いとはいっても、それで ないとせっかく用意したのに空き部屋ができてしまうと もセミナーに一日がかりで参加するためには、朝早く出 か、なかなか難しいところはあると思います。 て、帰りも夜遅くになってという形で、日々の忙しい診療 東大の研修医のレジデントは随分充実していたので、部 の中で少し負担をかけてしまったのかなということは少 屋は大丈夫だと思いますが、お金は予算に組み込まないと し感じておりました。 駄目なので、初めから人数が決まっていないとなかなか難 ただ、だからといってそれを解決する策がなかなかなく しいと思います。筑波はどうですか。 て、特にセミナーなどは独自性を出して、各大学にしかな いものを使ってやっていますので、別の場所で開催すると (前野) 筑波大学の前野です。このことは、この事業の初 年度のときに大変議論したのです。3 カ月だった場合、派 なると、それはそれでまた別の問題が出てきて、難しいか なと考えています。 遣する元が出すのか、受ける方が出すのか。それが長期 だったらどうするのか。全大学が一致したのは、お金を払 (北村) 講義のセミナーではなくて実技のセミナーなの わなくてもいいならいくらでも受けるということで、これ で、なかなか東京の会場でやるというわけにはいかないた は誰も異論がなかったのですね。 めに、どうしても不便になると思います。そうかといって、 それで、いろいろ議論したのですが、5 大学が対等な立 常に女子医大でやるというようにすると、女子医大の先生 場で組まなければいけないとなったときに、この大学とこ の負担は大きくなるかもしれませんね。講師はみんなで替 の大学は出せるけれどもこの大学は出せないということ わり持ちにしてということにしても、東大や女子医大だけ になると、ある大学は来ても払うし、出しても払うという でやるというわけにもいかない。自治医科大学には PEG ことになってしまうし、ある大学は来ても出しても払わな センターがありますが、そこを使ってやるとしても、また いということになってしまうので、足並みがそろえられな 交通の問題が出てきますし。 い。そうすると、どうすればいいかというところが大変大 ほかに、フロアの先生はどうでしょうか。派遣したり、 きな問題になりました。 受け入れたりして、ここを改善しないと続けてやっていけ 結局、それぞれの大学でやれる範囲でということになっ ないなとか、あるいはほかのプログラムの先生もいかが てしまうと思うのですが、筑波大学に関して言えば、今、 でしょうか。いろいろな大学へ行くのはメリットなのです 三木先生が言われたように幸い宿舎は何とかなる。それか が、なかなか手を挙げてもらえない現実があったように思 ら人件費も、少なくとも 1 年とか半年なら、短期でも長期 います。いいセミナーなのに出てくれない。それはなぜで でも、筑波は何とかなると五十嵐先生に言っていただける すかね。若い人には情報がないからですか。 と思っておりますが、そういう意味では割と筑波は受け入 Advanced Clinical Training-network Report 315 (三木) 一つ自分が感じていたことがあって、私が東大病 して、それでもなかなか浸透しないという現実がありまし 院で研修したことを後期研修の同期や周りの先生に言う たので、これに関しては、ちょっと大変だなと感じており と「5 大学って何?」と言われることがとても多くて、個 ました。 人的な意見かもしれないのですが、筑波大学病院の場合、 初期研修医や後期研修医レベルで 5 大学の存在というか、 (北村) 今ごろになって言うなよと言われるかもしれな 連携ができるということを知っている人もあまり多くな いのですが、ACT-network の周知は確かに問題だったと いような印象があります。せっかくいいセミナーがあって 思います。何か工夫された大学はありましたか。東大だけ も、あまりそれを知らないで、機会を逃しているとか、と が駄目なわけでもなさそうなのですが。田邊先生、千葉大 てもやる気のある研修医は大学病院でも多くて、そういう はどうやっていましたか。 希望も強いのですが、あまりその存在を知らないという か、ポスターが貼ってあったりはするのですが、あまり目 (田邊) それについては機会があるごとに医局レベル、研 に止まらなかったり、ほかの大学に何カ月も行けるような 修医レベル、後期研修医レベル、あらゆる階層でそういっ 研修システムがあるということ自体があまり知られてい た情報を流したのですが、それは多分、東大と同じような ないような感じなので、すごくもったいないと思います。 感じで、結構、人事が動いたり、実際に参加した人たちか 自分がその経験を話したりすると、とても興味を持ってく らのフィードバックがあまりなかったということもあっ れる同期や後輩が多いのですが、その点については、せっ て、結果的にはあまり広まらなかった。 かくのシステムなので、もう少し周知していただければい 森野先生、追加はございますか。 いなとは思いました。 (森野) 田邊先生がおっしゃったとおりで、例えば年に 1 (塚本) 私の先輩たちが毎年、女子医大の腎臓外科で 3 カ 回とか 2 回、機会があるごとには、おそらく周知されてい 月研修していました。充実した研修をできましたし、途絶 るのです。そして周知された瞬間には聞いてくださった先 えさせたくないプログラムだと思っているので、教授にも 生方の記憶に一度はとどまるのですが、それ以降、続報が 伝えてぜひ周知していきたいとは思っております。 ないと記憶は薄れていってしまいます。それで実際に自分 が興味のあるセミナーが開催されるときには、もう忘れて (北村) 5 大学の ACT-network を知っていましたか。周 りに周知されていましたか。 いる。先ほど自分のプレゼンのときにもお話ししたのです が、研修医一人一人に「今回、こういうセミナーをやる よ」ということを伝える方法がないのですね。ですので、 (塚本) 正直に言うと、ちょっと知られていなかったです ね。ポスターが貼ってあるのは見たのですが。 どうしてもポスター掲示であったり、各診療科が使ってい らっしゃるメールなどで周知していただいたのですが、例 えばポスターでしたら見なかったら知らないということ (北村) クリアファイルもあったのですが(笑)。この 5 で終わってしまいますし、そういうところでなかなか、継 大学で、例えば東大以外でいろいろなセミナーをやるとい 続して常に何かこういったセミナーに参加したいとか、研 う情報は、先生に伝わってきましたか。ほとんど伝わって 修プログラムに参加したいと思ったときに、まずは ACT- いない。 network という名前が挙がるぐらいの意識付けはできてい なかったのではないかという印象を受けております。 (塚本) 伝わっていないですね。すみません、私がいけな いのかもしれません。私がその情報をキャッチできなかっ たのかもしれませんが。 (北村) 東大でもそれなりにはやったのですが、東大の担 当の堀田先生、何かコメントはありますか。 (北村) そうすると、どうすればよかったですか。個別に メールが欲しかったとか。 (塚本) 私は、各科の教授の先生などにちゃんと伝えても らうように、例えばカンファレンスなどで告知するといい のではないかと思うのですが、いかがですか。 (堀田) セミナーのあるときは、なるべく院内のホーム ページとか、各診療科の研修担当の先生方を通じてお知ら (北村) 各科の教授とか、上の・・・。 せするようにはしていたのですが、何せ皆さん、日ごろ、 恐らく業務が多忙ということもあって、なかなかそういう 316 (塚本) はい。研修医の子たちに聞くと、研修センターな ところにまで目がいかない。 どからたくさんメールが来るようで、流してしまう子も多 あるいは、東大も人事の入れ替えがかなり激しいので、 いみたいでした。サマリーや日常の業務に追われているの 入れ替わるたびにまた「こういうものがあります」と周知 で仕方ないと思うので、声に出して人から人に伝えていく 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 方がいいのかなと思いました。 るのですか(笑)。 (北村) 口コミがいいと。 (廣瀬) あります。むしろ多いかもしれません。 (塚本) 口コミがいいかなと思います。 (北村) 海外研修というのは本当にいいアイデアだと思 います。ただ、マンパワーが減るということが、それで増 (北村) ただ、教授に伝えるのもまた大変なのですよね。 何か忙しそうですからね。何かいいアイデアはないです 幅されそうですね。ほかの大学へ行って、さらに海外研修 に行くとなると。 か。 (三澤) 後期研修ぐらいの年齢であれば、あまり大した影 (三木) 同じ病院内での研修医同士の横のネットワーク、 初期研修 1 年目、2 年目のメーリングリストがあったり、 響はないかと思いますが、助教、講師になると影響はだん だん大きくなると思います。 その情報にはしっかりつながりがあると思います。例えば (北村) ほかにデメリットなどはないでしょうか。ないと 研修部屋に直接、連絡を掲示するとか、セミナーに関して したら、時間はまだありますが、本題中の本題で、この仕 は若い方、後期研修医レベルで行きたい方が多いと思うの 組み、この 5 大学ネットワークをぜひ今後とも続けていき ですが、研修医向けとしては病院から 5 大学を押し出す形 たいと思っておりますが、それに向けて、こういう点を改 で、直接、研修医に向けての案内をしてくださればありが 善していくべきであろう、あるいは、こういう新しいしか たいということはあります。 けをつくったらいいだろう、こちらの方にも手を伸ばした ら面白いのではないですかなど、今後に向けてご意見をい (北村) 何かいいアイデアはないですか。後期研修医の先 ただきたいと思います。 生がこういうものに参加するのに、クレジットというか、 ポイントを付けて、10 点集めないと後期研修が終わらな いとか、半強制にするとか。はい、どうぞ。 (林) 継続性に関しては、こういう文科省の事業は、終 わったら終わりというのはとても切ないですよね。政府の やり方はみんなこうですが、それに少しあらがうというの (廣瀬) たびたび申し訳ありません。この事業が始まった はどうですか。事業ではなくて、本当に必要なら文科省で ときに、私どものところの病院長は小林祥泰といって、い やるべきことなので、事業でも通常の予算が付くべきこと ろいろとあちこちでうわさの多い先生ですが、あの先生 だという主張に切り返す必要もあるのではないでしょう が「このプログラムは研修者をたくさん出さないといけな か。そうしないと、各病院で、われわれも資格で再三、免 い」ということを言われまして、私どもコーディネーター 許一つ幾らというところでやっている中で何百万円とい は、一番最初、各診療科の科長の皆さんお願いに行きまし うお金を出していくのはなかなか難しいと思いますし、も た。 し本当にそれだけの教育的価値があるならば、国が率先し それから、研修医の人たちには、インセンティブとして てやるべきだと私は思います。 海外研修を付けました。海外研修には 5 年間で 40 名ぐら い行っております。そういうことで、それなりに島根大学 (北村) 医学教育課の人は来ていないのですか。ぜひコメ では出る先生が多くなったということです。 ントをと思ったのですが。必要な事業にはやはりお金を付 今のは皆さんに周知するということですが、ほかに今ま けていただいた方がいいと。もし医学教育課に言ったら で言ってきた中での対策をちょっと二つほどお知らせし 「必要な事業は大学は行政法人なり私立大学なので、自分 ておきますと、交通費等はそれぞれの大学で枠を取って、 で準備してください」と言われそうですが。必要であれば そこから皆さんに研修に行ってもらっていました。住居費 自分で準備していいと思うのですが、お金がなくても続く は、島根大学ではレオパレスを使って、各大学の近くのレ というやり方を考えるのが一番現実的かもしれないです。 オパレスにお願いをして、それで例えば 1 カ月、3 カ月と ほかに、今後続ける上でどんなことをやればいいか、何 いう形で住居を借りておりました。東京で借りると神戸の かありますか、若い先生方から。 2 倍とか島根の 3 倍とかという値段になるのですが、そう いう形でやっておりました。 (三木) 研修医の立場として発言させていただきたいの それから、引き抜きはやっておりません。紳士協定で、 ですが、私はこういうとても貴重な経験をさせていただい 来た人を引き抜くなという暗黙の了解がありました。長く て、これからも後輩たちも同じようにシステムを使って、 なりましたが、以上、解決策を幾つかご紹介しました。 いろいろな大学に研修に行ったり、セミナーに参加したり ということがどんどん増えれば、この 5 大学連携のネット (北村) ありがとうございます。出雲にもレオパレスがあ ワークも続いていきやすくなると思います。あとは、大学 Advanced Clinical Training-network Report 317 病院に残る研修医のメリットになると思います。今は市中 持って伝わらない部分があるのではないかと思うのです。 病院に初期研修で出てしまう人も結構多いのですが、東京 先ほど塚本先生から口コミというお話がありましたが、今 の方がアクティブにいろいろなことを学べるとか、いろい 日のお二人のような話、行ってみてどうだったという実話 ろなセミナーに参加できるとか、手技が早く学べるという が、一番インパクトのある周知になっていくのだろうと思 理由が多いと思うのです。この 5 大学連携は、それを補う います。 形で、大学病院にいてもいろいろなセミナーに参加できた そうすると、5 年たってできたこの流れは、時間と共に り、ほかの病院で何カ月か研修したりといったアクティブ 加速度的に増やしていくことができるのではないか。行っ なことができるのは、大きなメリットだと思います。大学 た実話があって、では、次に行ってみようという人がいる。 病院に研修医を残すためというか集めるためにも、5 大学 そして、またそれが口コミで広がるということで、ある意 連携ネットワークを続けていくためにも、若い世代にもこ 味で成果はこれからなのかなと思っております。それがう のネットワークの事業について、よく周知というか、また まくいけば、北村先生がおっしゃったような共同で関連病 教えていただいて、発展させていっていただければいいな 院のというようなこともできるのかもしれません。 と思いました。 ほかの大学の事情を細かく存じ上げているわけではな いのですが、現状では、自分のコアの病院を守るのに精 (北村) ありがとうございました。一番若い先生に言われ いっぱいで、それすら撤退せざるを得ないような状況の中 てしまったという感じがします。大学が初期研修医レベル で、共同で持つ余裕はないというような感じで、そういう で、マッチングレベルで、また今年もポイント以下の数値 空気ができるところまでいけなかったというところは反 とはいえ、研修病院は増えて、大学病院での初期研修医は 省点としてあるのかなと思っています。 パーセントを下げたわけですが、こういう傾向を大学から よく見て、むしろ大学にもっと魅力あるものをつくるため (北村) 先生方のような経験談が、若い人には一番リアリ には、学生にもこういう連携を周知徹底し、また当然、初 ティーを持って受け入れられるので、おじさんが作ったパ 期研修にも後期、あるいは専門研修に来ればこういう動き ンフレットよりもよっぽどいいだろうということで、ぜひ もできるということを、見せていかなければいけないとい 伝道者になって、 「あそこがよかった」とどんどんしゃべっ うことです。確かに、こういうことをやっているとお知ら ていただきたいと思います。 せすることが、あまりにも少なかったような気がします。 次につなげる上で、何かほかにアイデア等はございませ 特に初期研修医には全然教えていなかったような気がし んでしょうか。はい。 ます。 ほかに何かありますか。例えば後期研修などで、各大学 (三瀬) 自治医科大学のコーディネーターの三瀬と申し の関連病院に隣の大学から行くというようなことは可能 ます。文科省の事業でセミナーをやると、ほかの団体や企 なのですか。東大の研修医が、筑波の関連病院の水戸協同 業、自治体の資金と共催や協賛、それから利用料を払って 病院に半年間行ってくるということは可能ですか。 使ったり、利用料を取ったりすることの制限が非常に厳し くて、不自由なところを幾つか感じました。 318 (前野) まず、もともとの 5 年前の事業計画の最終形は、 うちの Pig センターといわれている先端医療技術開発研 まさに北村先生がおっしゃった形だったのです。また後の 究センター、最近やっとすらっと言えるようになった名前 プレゼンテーションで少し申し上げますが、もともとこれ のところですが、利用料金が対外的な利用料金、対内利用 だけのお金が付いたのは、最終的には地域医療を守るため 料金、それから寄附してくださった方がいらっしゃるので に大学の力を付けようという趣旨だったわけなのですが、 それに準じた料金と、いろいろなものがあって、対外的に その一つの形として、ドミノ倒しといいますか、一人辞め 利用する場合の料金体系などは、新しく今回の事業があっ るとどんどん辞めていく。辞めた人に負担がかかってもっ て初めて構築したようなところがあったのです。 と辞めていく。一つの大学だと、みんなが疲弊せずにやれ ただ、そのときにほかの寄附や参加費を取ることができ るだけの人数はとても出せない。複数の大学で、例えば 5 れば、もっとスムーズに広報もでき、対象者も広げること 人いれば 24 時間体制を組めるとすれば、こちらから二人、 ができたのですが、若干、制限がありました。制限がなく こちらから二人、こちらから一人、それでみんな疲弊せず なったので、ほかの協賛とか共同(コラボレーション)で にやるというモデルをつくりたいという思いがあったの やったり、それから範囲も、ジュニアレジデント(初期研 は事実です。一言で言えば、5 年間ではそこまでいけなかっ 修医)からそれこそ 15 年目ぐらいまで、教員でもいいと た。 いうように広げることができれば、もっと参加者が多く 先ほどのお話に戻るのですが、周知が足りなかったこと なって、目的としている人事交流の幅が広がったり、事業 は、われわれも真摯に反省すべきだと思いますが、どんな がしやすくなったりするのではないかと思うので、少し期 にビラをまいても、どんなにメールを送っても、現実味を 待しております。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 (北村) そうすると、自由度が増したら、製薬メーカーそ 先ほど前野先生から言葉がありましたが、この 5 大学の の他、財団など、いろいろなところから寄附や応援をいた ネットワークは、これから専門医制度が変わってまいりま だいて、もっと安く提供できるかもしれない。利便性を上 す。平成 29 年度ぐらいにはもうがらりと変わっていると げられるということはあるということですね。みんなで積 思うのですが、どう変わっていくかというと二つ変わりま 極的にそういうものも勧誘したらいいと思います。ただ、 して、一つは今は学会主導の専門医制度なのですが、それ 程度問題もありますけれども。 がプログラム中心になっていきます。機能的にプログラム を組み立てて、それを何年かやった後、その試験を受ける。 (前野) 筑波大学の前野です。多分、当人の方々はなかな ですから、そのプログラムが明らかになったときに、いろ か自分から言い出しにくいだろうと思うので。 いろな病院群を組んでいくということがあります。病院群 このネットワークがうまく動くのは、何といってもコー を組んでいくというのは、今はどの一つの大学であって ディネーターが頑張っておられるからだと思います。実 も、専門医研修の内容を完結することはできないのです。 際、この 5 大学の事業費は、かなりコーディネーターの人 いろいろなことを考えますと、バラエティーと数を確保す 件費として使われている部分がありまして、やはりセミ るために、どうしても群を組まなければいけない。そのと ナーやハードではなくて、人だと思うのです。一応、私 きのポイントは、一つの病院だけで完結しないで、いろい が聞いているところでは、来年度もそれぞれコーディネー ろな関連病院を入れていくということもあるのですが、関 ターの方は、今度はそれぞれの大学で人件費を負担してい 連病院だけでも完結できないのです。そうしますと、やは ただいて、同じ枠組みで事業が続くと聞いております。多 りほかの大学と一緒に組んでいかなければいけない。 少、事業費が減ってやりにくくなる部分はありますが、今、 ただ、先ほどコーディネーターの話もありましたが、そ 三瀬先生が言われたように、逆に制約が取れる部分もあり こでコーディネーターがかなり力を発揮して、コーディ ます。 ネーターの方がマネジメント力を発揮した上で、自分の大 ですから、この 5 年間の補助事業が終わった後、もちろ 学のメリットを生かしながら、ほかの大学を巻き込んでい ん国が続けてくれれば一番いいわけですが、続けてくれな くということが必要になってきます。それがあると非常に くても、貴重な財産である人と、こうやってできたネット 魅力的なプログラムになっていく。 ワーク、相互交流があれば、むしろこれから発展させてい そのときに、先ほど三木さんと塚本さんの話がありまし くポテンシャルが十分にあると思っています。 たが、その過程で、プログラムの機能単位をつくる中で、 そういう意味で、各大学それぞれの負担になりますが、 内容をオープンにしていくということがあると思います。 コーディネーターをそれぞれ置いていただいて、事業継 これも、その大学の地域だけではなくて、全国的にプログ 続に関して決断していただけたことは大変ありがたいと ラムの内容をこういうところでこう組んでいくので、ここ 思っておりますし、また、各大学が決断するだけのアウト ではこういうことができます、ここではこういうことがで カムをきちんと示してこられたからではないかと思って きます。その上で全体としてのメリット、強みは何かとい います。それがあれば、あとは心がけ次第といいますか、 う話が多分できていくと思います。そういう形で回ってい それを生かすも殺すも本当にわれわれのそういった気持 くと、恐らく人と人との関係がもう少し広がって、日本の ちに懸かっているのではないかと思います。 医療全体の中での人と人との関係が濃密になって、それで ちゃんとした力が発揮できるという形になってくるかも (北村) コーディネーターの方々の状況、あるいは技術職 しれないですね。 員等も、東大は引き続き雇えることが決まりましたし、ほ それが一つともう一つは、その上で、それを終わった かの大学もそういうことになったと先ほどお聞きしまし 方々が、今度は試験を受けるのですが、ボードもだいぶ変 たが、そういうソフトの面では一安心できたということだ わってまいります。これも学会から離れて、学会が自分の と思います。 インタレストと離れてやっていくということになりまし 残りの時間が少なくなってきたのですが、5 大学中 3 大 た。それでクオリティがかなりシビアに評価されていくこ 学の院長先生がいらっしゃるので、その先生にご感想、こ とになります。 れからの意気込みを聞いて終わりにしたいと思います。 ですから、こういうものが一つのいい例になって、今幾 その前に、厚生労働省の村岡亮先生がいらっしゃるの つもシードができているので、それをモデルとして生かし で、場所は違いますが、厚生労働省から見た感想でも何で ながら、そういうふうに 5 年間育てられた方々が、今後、 も一言。 専門医制度について、ある程度、意見を言っていくという 形がもしできれば、この事業はかなりお金がかかっており (村岡) 厚生労働省というよりも、国立国際医療研究セン ターの研修担当という立場で一言述べさせていただきた ますが、やったかいがあったといいますか、関係の方々が 報われるなと思いました。以上です。 いと思います。 Advanced Clinical Training-network Report 319 (北村) ありがとうございました。突然ですみませんでし 負ってくれるという形を取ってくれれば、非常にありがた た。専門医制度も変わって、プログラム中心になるとすれ いなと思います。私としては、専門医機構という立場では ば、この 5 大学のタッグは、多分、日本最強のタッグにな なくて、大学病院ではないけれども病院の病院長としての るでしょう。あるいは、ほかのチームの模範というか、規 立場から言うと、そういうふうにして育ててくれるところ 範になるぐらい強力なタッグを組んで、ぜひ壊さないよう ができればと思うわけです。 に続けていきたいと思います。 これは人件費の問題など関係ないですよ。各病院はその 日本専門医制評価・認定機構の高崎先生がお見えですの 人を育成しなければいけないのですから、病院が負担して で、高崎先生、一言。 もそういうところで研修させてもらうと思うのです。私な どは、そういう仕組みにこれをぜひ生かしてほしいと希望 (高崎) 今、お話があって、学会から離れてということが します。 ありましたが、実は私はそう考えてはいないのです。それ それから、学年が大事です。私はここで専門医を育成す では絶対にうまくいかないと思いますよ。やはり評価とか るのかなと思っていたのです。だけど今の話を聞いている レベルというのは学会がある程度きっちりしないと、プロ と、専門医より、専門医を取った人がさらに上の医療を獲 グラムだけで各大学が独創でやっていてもできませんか 得したいというときの方が、今のこの状態ではよく動きそ ら。ただ、評価や認定はもう学会から離れなければと思い うな感じがします。そうすると、もう専門医を取って、い ます。その辺はまだ今からだと思いますが。 よいよ自立するぞというぐらいの人が研修に行けば、もの ただ、いずれにせよ、プログラム中心になることは確か すごく役に立つと思いますし、それはそんなに長い期間行 なのです。今の制度でもプログラム中心にやってくださ く必要はないと思うのです。ある程度、自分自身で医療と いとなっているのですが、それができていないのですよ いうものに対する知識があって、技術もある人がほかの ね。各施設はプログラム中心で専門医教育をやらなければ 人を見れば、1 週間見学しただけで、もう新しいものを全 いけないことになっているのですが、それが現実にできて 部吸収できると思うのです。それが 2 年生、3 年生が行け いない。各病院のプログラムの中に、このネットワークの ば、1 年いなければ分からないということになると思うの ローテーションが現実としてどのように組み込まれるの です。だから、その辺を分けたらどうかと思うのです。こ かなと思って、私はそれを楽しみにしてこれを聴きに来て の辺のものを研修したいのなら、半年いなければいけない いたのですが、一向にそれが達成されないですね。 けれども、もっと高度なものならわずかでいいということ 周知されるということではなくて、各教室なり各病院の だと思うのです。 プログラムの中に、こういうネットワークを通じた研修が 外科でもそうだと思うのです。いろいろな手技がありま 組み込まれなければいけないと思うのです。プログラムが す。ある程度、一般的な外科ができるような人間が行けば、 各病院でどのぐらいつくられて、達成されているかという 1 週間そこで見学すれば、ほとんど分かってしまいますよ。 評価は、今もう始まっているのです。今年も今から行きま そうではないですか。だから、外科でそんなに長いこと訓 す。自治医大にも行きますし、筑波大学も今年の冬から来 練する必要はないのです。それは若い人間だったらそうな 年にかけて始まります。行ってみれば分かると思うのです のです。だからその辺を区別すれば、ものすごく生きるな が、プログラムが全然できていないところもあります。プ という感じが至極しました。以上です。 ログラムができていないのに、どうやって研修医を募集す るのですかという話にもなってしまうと思うのですね。そ (北村) ありがとうございました。突然指名しまして、本 の辺ができていないので、もう少しそこはつくってもらい 当に恐縮です。 たい。 それでは、順不同ですが自治医科大学の安田病院長、お もう一つは、この 5 大学はもういいですよ、レベルが高 願いします。 いですから。標準的なものはどこでもできると思うのです よ。5 大学の中で標準的な専門医がつくれないような大学 320 (安田) いろいろな先生方のオーバービューを非常に印 は、大学の価値がないですよ。それはお互いにやればいい 象深く拝聴しました。 のです。 自治医大に限ったことかもしれませんが、病院の、ある そうではなくて、それよりもう一段下がった一般病院で いは大学のといいますか、先ほど教授というお話がありま 研修医をどう育てるかというときに、この 5 大学がうまく したが、科長の先生方にも 5 大学の事業の意義が十分理解 機能してくれれば、私は非常に助かります。ですから、こ されていないのではないかと感じています。 の 5 大学全体の中の関連病院を下にたくさんぶら下げてほ 先ほど周知の問題がありましたが、一つは病院の、ある しいと思ったのです。その関連病院が、そこで育てる研修 いは大学の執行部がこの事業の意義を十分に認め、かつ寛 医で、どうしてもそこで研修できないこともたくさんあり 容の精神を持って若い人たちを双方に交流させるという ますから、この 5 大学連携の中のどこかでその部分を請け ことがなければ、こういう事業はなかなか発展しません。 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 人は皆、自分の欠点を認めたくないということはあるの ば意味が少ないのではないかと。北村先生がいみじくも東 ですが、どの大学でも完璧ということはありませんし、ど 京が一人勝ちになってしまうでしょうとおっしゃいまし の診療科も完璧ということはありませんので、交流するこ たが、場合によっては東京を外した想定を考えて、地方大 とによって若い人たちの自由な向上心を失わせないよう 学、特に首都圏の周りの大学で、それぞれ得意技を持って、 な教育をしていくことが、私は非常に大事だと思います。 全部そろうと東大に負けないとか、そんな仕組みだってあ 今の高崎先生のお話に集約されておりましたが、専門医 り得るわけです。いろいろなことを考えて、これから大学 のありかたなど、現在いろいろな問題がありますが、結局、 連携を工夫していかなければいけないだろうと思ってい 昔は大学病院で、ほぼ教科書に書いてある領域を教育する ます。 ことができたのですが、例えばがんの医療を大学病院は重 特に深刻なのは、ついこの間、大学のミッションの再定 視しなさいということですと、コモンディジーズの教育は 義を求められたかと思います。その中で、今後、特に病院 地域の病院にお願いしないといけません。 も含めて大学が国民に理解されて、あり続けるためには何 ですから、大学だけではなく、大学の関連病院、さらに をしなければいけないか。それを考えたときに、何とな 地域の教育病院も巻き込んで運営されれば、素晴らしいも く育成するという話では済まされない話であって、かなり のができるのではないかと思いました。 しっかりとしたプログラムをつくってきっちり結果を出 す。そのための有効な策を見える形にする。それがすごく (北村) それでは、筑波大学の五十嵐徹也病院長。 大事な作業だろうと思っております。どうぞよろしくお願 いいたします。 (五十嵐) 筑波大学の五十嵐です。びっくりしたのです が、実は高崎先生のお話と全く同じことを言おうと思って いたのです。このシステムがクローズドな大学の中だけで (北村) ありがとうございました。最後に東京女子医科大 学の立元先生。 使われているのは大変もったいない話で、より広い医療人 を育成するという観点からは、高崎先生が言われたよう (立元) ありがとうございました。私も五十嵐先生と同じ に、何も関連病院に限らなくても構わないと思います。専 ように、高崎先生の言われたことを言おうと思ったら言わ 門医を取りたがっている方々が取りやすくなるような仕 れてしまったなというところなのですが、先ほど、地域医 組みをつくって、オープンにして、場合によってはプロ 療をいかに支えていくかということがこのプログラムの フィタブルな仕組みにしていってもいいのではないかと 一つの大きなミッションだということを伺って、大学病院 思いました。 で研修を受けることなく、ずっと地域医療に従事されてい それから、いろいろデメリットの意味で、人材のシフト る先生方もたくさんいると思うのですが、その先生方が一 のことが若干言われたのですが、実はこれはここ数年、国 時、がんを勉強したいとか、何か新しい知識を勉強したい 立大学附属病院長会議でもずっと議論してきました今後 というときに、大学に属していないけれどもこれにアプラ の国立大学病院の在り方、 「国立大学附属病院の今後のあ イして、3 カ月でも何カ月でもその大学がちゃんと引き受 るべき姿を求めて」という冊子が今年の春にまとまったの けて、研修の場を提供するという役割は、大変大事だと思 ですが、その議論の過程でも、地方大学にとっては大変深 います。 刻な問題として、数多くそういう話がされました。 そして、そこで勉強してまた地元、地域の病院に帰れば、 しかし一方で、今日はたまたま厚労省の方がおられるの その地域の病院での、その部門でのリーダーになれる。そ であれだったのですが、どなたかが言った話を文科省の方 うすれば、病院としての性格付けがより明確になって、関 から聞いたのですが、厚労省的には、どこに人が行こうと、 連病院だけれども人が来ないとかと言っているような病 医療全体からしてマイナスになるのではないから構わな 院でも、この病院にはこういう専門家がいるといったこと いではないかという議論もあるわけです。ただ、偏在とか、 になれば、また若い先生も地域により積極的に行ってくれ 地域医療という観点からは若干問題には当然なりますが、 る、そんなふうに私自身も考えました。 間違いなく一人一人が育成されれば、日本の医療全体から このシステムを 5 大学だけで終わらせるのではなく、ぜ すればマイナス面は全くない。 ひ地域、また場合によっては、養成ネットワークというも それから、いろいろなプログラムや各大学が努力され のが島根や秋田などあちこちにもあるというお話があっ て、いろいろなプランを出していますが、あくまでもこれ たと思うのですが、そちらとこのネットワークをリンクさ は受け取る側の医局、あるいは診療グループの視線ではな せて、またお互いに人材をやりとりするということも、大 く、トレーニーの視線からプログラムづくりをしていか 変日本中のグローバルな、広い人材交流につながる話にも なければいけないということで、各大学が一生懸命頑張っ なるのではないかと思いました。 てつくってくれていると思います。それをせっかくネット 大学病院としては、人材育成というのは重大なミッショ ワーク化するのですから、ある意味では、補完性がなけれ ンですので、これについては、どこの大学病院もしっかり Advanced Clinical Training-network Report 321 やっていこうという覚悟は、皆さん持っていると思いま す。やり方を模索している部分はあるのですが、こういっ たプログラムは、そういう意味では、われわれの一つの方 向性を示してもらえたような気がして、大変勉強になりま した。ありがとうございます。 (北村 ) どうもありがとうございました。病院長先生から の決意表明をいただいたような気になりました。ちょっと 予定した時間を超えてしまいました。大変申し訳ありませ んでした。パネリストの先生方、本当にどうもありがとう ございました。それでは、これでこの座談会を終わらせて いただきます。どうもご協力ありがとうございました。 (アナウンス) ゲストスピーカーの先生方、北村先生、あ りがとうございました。ここで、約 10 分間の休憩となり ます。 322 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 総括「5 大学 ACT-network の進むべき道」 発表者:前野 哲博 (ACT-network 事業推進責任者) 中居 康展 (ACT-network コーディネーター) (前野)最初に、本事業の背景と経緯についてお話しした いと思います。 従来、医師のキャリアコーディネートは、大学が中心と なって行っていました。医師は卒業後、大学の医局に所属 して、いろいろなセッティングをまんべんなく経験できる ようにコーディネートされていました。 ところが、皆さんご存じの通り、平成 16 年度の卒後臨 床研修制度の必修化を契機に医師の配置が流動化して、こ のキャリア循環が回らなくなってしまい、医師が都市部に 集中して医師不足、医師の偏在化が大きな問題になってき ました。 そこで、大学でのキャリア養成機能をさらに強化させる ために、大学と言ってもオールマイティではなく、それぞ れに強いところと弱いところを持っていますから、大学を 超えて連携してそのいいところを共有することでさらな るパワーアップを図り、もって高度な専門的能力の修得と 地域医療の充実を両立させようということで、文科省の補 助事業である「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」 れが連携をしながら、そのメリットを地域にも還元してい がはじまりました。そして、地理的に近い東関東・関東の く。これが完成形です。5 年間でできたこと、できなかっ 5大学が集まって、本事業がスタートしたわけです。 たことを真摯に振り返り、これからも事業を進めていきた 具体的には人材養成能力の向上ということで、高度医療 いと思っております。 技術のシミュレーションや短期研修など、さまざまなメ ニューを用意して始めました。5 年間の成果は、これから (中居) 筑波大学コーディネーターの中居と申します。今 中居からご説明申し上げますが、無事といいますか、来年 回はこれまで 5 年間の歩みについて、総括という形でご報 度、取りあえず継続すると。今回の事業に参加した全ての 告させていただきたいと思います。 5 大学が前向きにとらえてくださって、今の枠組みのまま 5 大学の連携運営としては、主幹大学と各大学のコー 継続するということが決まっているということだけ申し ディネーターを中心に、テレビ会議等も含めて 47 回、合 上げておきたいと思います。 同会議を行いました。 目指す最終形は、このように 5 大学が連携して、それぞ Advanced Clinical Training-network Report 323 今回は最後のシンポジウムという形になりますが、各診療 部門の分科会として全体会議を開催して、これが短期交流 や長期交流、人材交流のきっかけになったことも多かった と思います。この全体会議は非常に大きなきっかけになっ たと考えております。 人材交流の推移ですが、最初は短期が多かったのです が、長期の方がだんだん増えてきています。24 年度もずっ と右肩上がりにいきたいと思っています。まだ年度半ば で、24 年度が終わったわけではありません、これからま だ 4 カ月ありますので、ぜひ頑張って、長期交流、短期交 流の実績を増やしていただきたいと考えております。 大学別交流数も、各大学で、全ての枠で埋まっていけば いいのですが、なかなか全体の方で全て枠が埋まるという ことはありませんでした。 ただ、ご覧になって分かりますように、ほとんど全ての 大学と双方向の交流が進んでおりまして、着実に交流は進 んでいると考えております。 参加者の声です。歯科・口腔外科での研修をしていただ きまして、非常に治療の選択肢が増えたといったコメント もいただきました。 また、同年代の先生からも非常に刺激を受けたとか、自 大学とは異なった症例、術式、症例数の多さ、こういった ところからスキルアップにつながったといった声もあり 324 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 ました。 やはり行ってみないと分からない、空気を感じてみない と分からないといったこと。また、本では分からない診療 にかかわる人々の熱意といった非常にポジティブなご意 見をいただきました。 救急・蘇生セミナーも 6 回開催しました。 また、心肺蘇生法ガイドライン改定に係る内容の講演会に は、全国から 200 名を超えるドクター、看護師及び救急救 命士に参加していただきました。 セミナーの開催に関しては、5 大学全体で、非常に多く のセミナーと、あと参加者の人数も非常に多く、延べ数千 人規模のセミナー参加者が来られています。こちらに関し ての旅費や参加費をサポートさせていただきました。 東京大学では、東大レジデントカンファなど、新たな知 識が身に付き、臨床の役に立つ「きのうの自分に差をつけ る」ようなセミナーが数多く企画されました。 それから、腹部エコー、新生児蘇生法といった講習会を 筑波大学では、「指導医の情熱」などとキャッチフレー 開催しました。 ズを付けさせていただきましたが、シミュレーターのセミ ナー等を計 41 回開催させていただきました。 Advanced Clinical Training-network Report 325 千葉大学は、先ほどの座談会で森野先生にお話しいただ きましたが、 「ハンズオンの強み」ということで、これも 大変に手間のかかるセミナーです。アニマルラボでミニブ タを用いた手術手技のトレーニング。 もしくは、日本では数少ない cadaver を用いた神経内 視鏡ハンズオンや、ブタを使った心臓血管外科セミナーと いったハンズオンを開催していただきました。 東京女子医科大学では、各科の伝統あるセミナーの参加 枠を 5 大学の若手医師にも広げていただいて、機能脳神経 外科セミナー、漢方入門セミナー、女性医療のセミナーといっ た非常に特徴的なセミナーを開催していただきました。 326 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 自治医科大学でも、先端医療技術開発センターというシ います。 ミュレーションラボがありまして、先端医療としては「脳 プログラムに関しては、ホームページの充実、研修プロ 死下臓器摘出シミュレーションセミナー」 、そして「地域 グラムのアップデートを毎年行いました。見ていただいた 医療セミナー」という非常に特色的なセミナーを開催して 研修医の方も多いのではないかと考えています。 いただきました。 また、 『レジデントノート』への広告掲載や、研修医へ「お 先ほどもお話がありましたように、大学病院の機能を強 トクなお知らせです」というキャッチコピーで「交通費の 化して地域医療に還元するといった点で、当事業はこの 5 サポートがありますよ」と説明した広報も有効だったので 年間で全てのところを網羅できたというわけではなかっ はないかと考えています。また、本事業の業績に関しては、 たのですが、事業の紹介、セミナーのチラシ等で、女子医 医学教育学会で私が発表させていただきました。 大の専門研修医の先生に水戸協同病院で研修していただ 文部科学省の中間評価は、総合評価 A をいただき、 「医 いたり、関連医療機関への広報を通して、地域の医療水準 局間・大学間の壁を課題として認識し、それを乗り越えよ の向上に少しでも役に立っているのではないかと考えて うと努力している」というコメントをいただきました。こ の乗り越えられたということに関して言いますと、まだま だ不十分な点はたくさんあると思います。 もう一つは、この事業は 5 年間の補助金事業ですので、 本年度(平成 24 年度)をもちまして、文科省の補助金と しては終了となります。 今回のシンポジウムのテーマでもありますがサスティ ナブル、これを維持・継続できるかということに関しては、 5 大学の連携そのものは継続するといった方向が機関決定 されております。さらなる交流を続けていきましょう。 今後の運営につきましては、筑波大学の総合臨床教育セ ンターが主管を継続させていただき、東京女子医科大学で Advanced Clinical Training-network Report 327 実務の方でいろいろ携わらせていただきました。5 年間 ありがとうございました。これからもよろしくお願いしま す。以上です。 (アナウンス) 最後に、自治医科大学附属病院、病院長の 安田是和先生よりご挨拶をいただきます。 ご挨拶 安田 是和(自治医科大学附属病院 病院長) ご出席の皆さん、長い間のご議論、ご苦労さまでした。 は業務管理課、千葉大学は総合医療教育研修センター、自 またありがとうございました。この 5 年間、この会を本当 治医科大学は卒後臨床研修センター、東京大学は総合研 に支えてくださったコーディネーターの方々のご努力に、 修センターということで、窓口は各大学の臨床センターに 真摯なる謝意を表します。 なっております。セミナー開催情報の共有、また、今まで 補助金が切れるという財政的な問題はありますが、5 大 補助金で行っておりました旅費に関してのサポートは、各 学が共同してこれからもこの事業を続けていくという合 大学の実情に合わせてサポートするという形になってお 意は得られたと考えておりますし、私たちも執行部として ります。 予算を獲得し、各大学がそれぞれに努力してこの会をさら 今後、5 大学 ACT-network といった通称で継続してい に盛り上げていきたいと思います。この会のさらなる発展 きたいと考えております。 を願いまして、私の挨拶とさせていただきます。本日はど 引き続き、合同カンファレンス、勉強会をぜひ開催してく うもありがとうございました。 ださい。手術の研修・見学、関連病院への派遣といったこ とにつながっていければと思います。 (アナウンス) 安田先生、ありがとうございました。これ で講演プログラムは終了となります。本日はご参加いただ き、誠にありがとうございました。 ここからは、第 3 部「全体会議 診療科ごとの分科会」 となります。 328 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 第 5 回シンポジウム 第 3 部 診療科ごとの分科会の様子 Advanced Clinical Training-network Report 329 8 エピローグ 取り組みを終えて 関 東を代表する5大学を股にかけた本事業の旗振り役を、結局 5 年間務めさせて頂きました。思い返 せば、その道のりは決して平坦ではありませんでした。まず事業の広報、各大学・診療科の研修プ ログラムを整理、ホームページの作成、シンポジウムの企画を行いました。シミュレーターなどの教育機器 を用いて、多くのセミナーを企画しました。大学・診療科の壁、補助金事業の制約など、多くの障壁があり ました。正直言って臨床業務の合間にこのような仕事を続けるのはきつく、思うように事業が進まない焦燥 感にかられることもありました。それでも各大学コーディネーターや事務局の皆さんの協力で、この事業を 実りあるものに育てることが出来ました。自分自身もこの事業を通して多くの仲間を作り、臨床以外の多く のことを学ばせて頂きました。本事業は形を変えてこれからも続いていきます。若き医師が多くの仲間を作 り、より大きな連携の輪へと続くことを期待しています。 筑波大学コーディネーター 中居 康展 年間で参加 5 大学の専門(後期)研修医の相互交流を進めていくという本事業,当初は半ば右往左往, 5 半ば半信半疑でスタートしたのですが,取り組んでいくうちに次第に相互交流の潜在的希望があるこ とに気づき,セミナーの参加大学への周知・開放から始まって,短期交流,長期交流へと進んでいったのは 大きな収穫だったのではと思います。 今後,本プログラムで築き上げたことを生かして,専門研修医のみならず,幅広い年代,ポジションの医 師が,相互交流を通して自己研鑽,若手医師の教育,施設間の連携の強化など,「高度医療人」としてご活 躍くださることを期待いたしております。 東京大学コーディネーター 堀田 晶子 千 葉大学コーディネーターを務めさせて頂きました、森野知樹と申します。 私は循環器内科医となって約 10 年になりますが、本事業のコーディネーターに就任するまでは日進 月歩の医療の世界で自分自身を研鑽することに精一杯で、その場その場の簡単な指導はともかく研修医の本 格的な指導・教育に携わる機会がありませんでした。そのため就任当初は右も左も分からず、この仕事を現 在まで続けられたのも偏に諸先生・スタッフの方々のご指導ご協力を頂いたからだと思っております。これ から専門医として羽ばたいていく後輩の先生達の指導や専門領域に限らないセミナーの企画などを行ったこ とで、自分自身を見つめ直す良い機会にもなりましたし、また多くのことを学ばせて頂きました。 本当にありがとうございました。 千葉大学コーディネーター 森野 知樹 Advanced Clinical Training-network Report 333 コ ーディネーターを 4 年間務めさせて頂いた。専門医取得のため他大学病院で研修をするということは、 当初とてつもなく高い壁のように思えた。しかし、強い目的意識があれば意外にもその壁は乗り越 えられるものだと分かった。 当院のあらゆる診療科が他大研修(受け入れ、派遣とも)に適しているとは思わない。「そこで研修するこ とによってこれが得られる。」ということを明確にしたうえで、より特色のある診療科で 5 大学連携を持続 させていきたいと思っている。その一方、病院は違えども診療科でやっていることは同じという事も多々あ る。そのようなところでの研修の意味はないかというと私はそうは思わない。所属元では得られなかった刺 激や自分の実力を客観視する機会を得ることが出来る。人手不足 , 人件費の問題や宿舎の未整備などまだま だ課題は多い。一つ一つ解決して行きながら 5 大学連携をさらに強化して行きたいと思う。 東京女子医科大学コーディネーター 齋藤 洋 医 師のキャリア形成に必要なものは、優れた指導者、洗練された研修プログラム、十分な経験ができ る施設、若手医師の成長を心から喜んでくれる患者と住民たち、適切な労働環境と法的規制などで ある。加えて、彼ら自身が、人々の救命・障害予防・症状の緩和・自己実現という、医師の存在意義を理解し、 決意と矜持を持たなくてはならない。 これは、ある種の忠誠を要求する古い体質の医局制度とは矛盾する。だから、優れた医局のトップは、古く からその危険を知り人材交流に努めていた。 当事業は、人材交流と教育資源の相互利用を通じて若手医師のキャリア形成を支援しようとした。この4年 余りは、十分な成果を得るには短すぎ、地域医療の充実強化という究極の目的に向かって踏み出すことはで きなかったけれども、5大学の指導医が行き来したことは無駄ではないと思う。 種は蒔かれた。これからもずっと人事交流や教育資源の相互利用をしていけば、いずれ研究・診療等でも協 働するチャンスが巡ってくるだろう。事業関係者各位に感謝しつつ、これから先の息の長い取り組みを続け たいと思う。 自治医科大学コーディネーター 三瀬 順一 334 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 推進スタッフの紹介 事業推進代表者 山田 信博 筑波大学 学長(平成 20 − 24 年度) 事業推進責任者 松村 明 筑波大学附属病院 副病院長(平成 20 − 23 年度) 前野 哲博 筑波大学附属病院 総合臨床教育センター 部長(平成 24 年度) 推進代表者 前野 哲博 筑波大学附属病院 総合臨床教育センター 副部長(平成 20 − 23 年度) 瀬尾 恵美子 筑波大学附属病院 総合臨床教育センター 副部長(平成 24 年度) 原 一雄 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 講師(平成 20 − 22 年度) 田邊 政裕 千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研修センター センター長(平成 20 − 24 年度) 野村 馨 東京女子医科大学病院 総合診療科 教授(平成 20 − 24 年度) 島田 和幸 自治医科大学附属病院 病院長(平成 20 − 23 年度) 安田 是和 自治医科大学附属病院 病院長(平成 24 年度) コーディネーター 中居 康展 筑波大学附属病院 脳神経外科 講師 (平成 20 − 24 年度) 阿久津 博義 筑波大学附属病院 脳神経外科 講師 (平成 21 − 24 年度) 堀田 晶子 東京大学医学部附属病院 特任助教 (平成 20 − 24 年度) 清水 孝徳 千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研修センター 特任講師(平成 20 − 22 年度) 井上 雅仁 千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研修センター 特任講師(平成 22 年度) 森野 知樹 千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研修センター 特任助教(平成 23 − 24 年度) 齋藤 洋 東京女子医科大学病院 総合診療科 助教 (平成 21 − 24 年度) 三瀬 順一 自治医科大学附属病院 卒後臨床研修センター 准教授(平成 20 − 24 年度) 事務スタッフ 須藤 英世 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 課長補佐(平成 20 年度) Advanced Clinical Training-network Report 335 柴 貞重 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 課長補佐(平成 20 − 22 年度) 岡島 隆治 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 課長補佐(平成 22 − 24 年度) 秋山 光一 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 専門職員(平成 20 年度) 野口 健司 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 専門職員(平成 20 − 24 年度) 林 登 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 専門員 (平成 24 年度) 三上 智之 筑波大学附属病院 病院総務部経営企画課 専門職員(平成 20 − 24 年度) 池田 一郎 筑波大学附属病院 病院総務部経営企画課 専門職員(平成 20 − 24 年度) 永吉 和成 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 一般職員(平成 20 年度) 串田 宏 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 一般職員(平成 21 年度) 平井 理心 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 一般職員(平成 20 年度) 小池 朱美 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 一般職員(平成 20 − 24 年度) 菊池 晃子 筑波大学附属病院 病院総務部総務課 一般職員(平成 22 − 24 年度) 瀬戸山 澄 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 係長(平成 20 − 21 年度) 佐藤 知之 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 係長(平成 22 年度) 飯塚 昭義 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 係長(平成 23 年度) 高橋 浩幸 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 副課長(平成 24 年度) 朝長 真由 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 事務補佐員(平成 21 年度) 生井 沙耶佳 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 事務補佐員(平成 22 − 24 年度) 江黒 清文 東京大学医学部附属病院 総合研修センター 技術補佐員(平成 22 − 24 年度) 鶴岡 拓司 東京大学医学部附属病院 管理課研究支援チーム(平成 20 − 24 年度) 有賀 昭彦 千葉大学医学部附属病院 総務課総合医療教育係 係長(平成 20 年度) 野田 和宏 千葉大学医学部附属病院 総務課 課長補佐(平成 20 − 22 年度) 小島 安利 千葉大学医学部附属病院 総務課 副課長 (平成 23 − 24 年度) 矢代 健一 千葉大学医学部附属病院 総務課総合医療教育係 係長(平成 21 − 23 年度) 先崎 弘美 千葉大学医学部附属病院 総務課総合医療教育係 主任(平成 20 − 22 年度) 佐瀬 紀子 千葉大学医学部附属病院 総務課総合医療教育係 主任(平成 22 年度) 川村 玲子 千葉大学医学部附属病院 総務課総合医療教育係 係長(平成 24 年度) 多田 幸敏 千葉大学医学部附属病院 総務課総合医療教育係 係長(平成 24 年度) 岡 美穂子 千葉大学医学部附属病院 総務課総合医療教育係 事務補佐員(平成 23 − 24 年度) 鈴木 伸一 千葉大学医学部附属病院 管理課経理係 係長(平成 20 − 21 年度) 鈴木 篤志 千葉大学医学部附属病院 管理課経理係 係長(平成 22 年度) 麻生 久和 千葉大学医学部附属病院 管理課経理係 係長(平成 23 年度) 秋葉 稔 千葉大学医学部附属病院 管理課経理係 係長(平成 24 年度) 336 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク報告書 時岡 一啓 東京女子医科大学 研究支援部 部長(平成 20 − 24 年度) 小林 秀夫 東京女子医科大学 病院事務部 次長(平成 20 年度) 伊藤 義幸 東京女子医科大学 病院事務部 次長(平成 21 − 22 年度) 板垣 吉晃 東京女子医科大学 病院運営室 課長(平成 23 − 24 年度) 遠藤 ひろみ 東京女子医科大学 倫理・知財・産学連携課 課長補佐(平成 22 年度) 川村 正行 東京女子医科大学 倫理・知財・産学連携課 課長(平成 23 − 24 年度) 戸塚 顕雄 東京女子医科大学 教育・研究資金課(平成 22 年度) 谷 正隆 東京女子医科大学 教育・研究資金課(平成 20 − 21、23 − 24 年度) 塙 建夫 自治医科大学 地域医療推進課 参事(平成 20 − 24 年度) 神谷 努 自治医科大学 地域医療推進課 主事(平成 20 − 21 年度) 加納 玉江 自治医科大学 地域医療推進課 主任(平成 21 − 23 年度) 長谷川 雄樹 自治医科大学 地域医療推進課 主事(平成 22 − 24 年度) 仁平 朱美 自治医科大学 地域医療推進課 主事(平成 24 年度) 岡佐 康代 自治医科大学附属病院 卒後臨床研修センター 事務補佐員(平成 20 年度) 館野 典子 自治医科大学附属病院 卒後臨床研修センター 事務補佐員(平成 21 − 22 年度) 淀川 郁美 自治医科大学附属病院 卒後臨床研修センター 事務補佐員(平成 23 − 24 年度) Advanced Clinical Training-network Report 337
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