魚鱗癬

Disorders of keratinization
15 章
角化症
近年角化のメカニズムが次々と明らかになりつつあり,原因不明とされていた遺伝性角化症の責任遺伝子が同
定されてきている.しかし今なお原因不明な角化症が多数存在しており,今後のさらなる解明が期待される分野
の一つである.
角化症は遺伝性角化症(魚鱗癬,Darier 病など)と後天性角化症とに大別され,さらに後天性角化症は,炎症
を主体とし 痒などを伴う炎症性角化症(乾癬,扁平苔癬など)
,炎症を伴わない非炎症性角化症(鶏眼,胼胝)
に分類することができる.本章では,以上の分類をもとにして代表的な疾患について述べる.
A.遺伝性角化症
表 15.1 魚鱗癬の分類
遺伝性の魚鱗癬
a.魚鱗癬 ichthyosis
魚鱗癬とは,角層の剥脱機構に異常が生じた結果,全身の皮
尋常性魚鱗癬
伴性遺伝性魚鱗癬
水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
15
葉状魚鱗癬
道化師様魚鱗癬
内臓病変を随伴する魚鱗癬(魚鱗癬症候群)
膚が乾燥および粗造化して落屑を生じる状態のことをいう.魚
の鱗のようにみえることから名付けられた.皮膚の角化や脱落
過程に先天的な異常があり,遺伝性角化症に分類されるものが
大部分であるが,まれに後天的にこの症状を呈する場合があり,
悪性腫瘍に伴うことが多い.魚鱗癬は,臨床症状や遺伝形式,
Sjögren-Larsson 症候群
罹患部位などによって 10 種類以上に分類される(表 15.1)が,
Netherton 症候群
ここでは比較的よくみられる病型について,以下それぞれ述べ
KID 症候群
る.
Dorfman-Chanarin 症候群
Refsum 症候群
1.尋常性魚鱗癬
Rud 症候群
ichthyosis vulgaris
Conradi 症候群
非遺伝性の魚鱗癬
後天性魚鱗癬
Essence
●
常染色体優性遺伝で,皮膚の乾燥と落屑を特徴.
●
乳幼児期に発症し,主に関節伸側や体幹に魚鱗様外観,乾燥,
落屑.夏季に軽快.
●
治療は対症的,保湿剤など.
症状
出生時は無症状で,乳幼児期に発症して 10 歳頃まで進行性
である.青年期以降軽快することが多い.主に四肢伸側や体幹
において,皮膚が乾燥し粃糠様,小葉状落屑を呈する.とくに
下腿前面や背部に好発し,四肢関節屈側,腋窩,外陰や胸腹部
は侵されない(図 15.1).自覚症状はなく,まれに 痒がある
程度.夏季軽快し,皮膚が乾燥しやすい冬季に増悪する.アト
228
A.遺伝性角化症
229
ピー性皮膚炎を合併する例がある.
病因
原因遺伝子は同定されていない.表皮での保湿などを行う物
質であるフィラグリン(filaggrin)の産生が低下した結果,角
質脱落の障害,皮膚の乾燥や落屑などを生じる(1 章参照)
.常
染色体優性遺伝で,しばしば家族内発生する.
病理所見
角質の脱落遅延のため,角層の肥厚と顆粒層の減少ないし消
失が認められる.
検査所見・診断
皮疹および病理組織像,家族歴から診断する.特異的な診断
マーカーはない.
鑑別診断
他の遺伝性魚鱗癬では後述のとおり,出生時から発症し,四
肢関節屈側も侵されることが多い(表 15.2).ほかに,乾燥型
の小児湿疹では強い
痒,丘疹,アトピー素因などがあり,後
15
天性魚鱗癬では発症年齢や臨床経過,悪性腫瘍の検索などによ
って鑑別できる.
治療・予後
治療は対症的で,保湿剤外用,尿素軟膏,サリチル酸ワセリ
ンおよびビタミン D3 軟膏など.青年期以降は軽快する.
図 15.1 尋常性魚鱗癬(ichthyosis vulgaris)
皮膚は乾燥し粃糠様,小葉状落屑を呈する.
表 15.2 魚鱗癬に属する主な各病型の比較
尋常性魚鱗癬
伴性遺伝性魚鱗癬
水疱型先天性魚鱗癬様
紅皮症
非水疱型先天性魚鱗癬様
紅皮症,葉状魚鱗癬
道化師様魚鱗癬
頻度
しばしば
ときに
まれ
まれ
きわめてまれ
遺伝形式
常染色体優性
X 染色体劣性
常染色体優性
常染色体劣性
常染色体劣性
発症時期
乳幼児
生下時〜出生直後
生下時〜出生直後
生下時
生下時
全身
全身
全身
角質増殖が強い
潮紅,
細かい鱗屑〜暗褐色, きわめて厚い角質,
大きな鱗屑(葉状魚鱗癬) ひびわれ,眼瞼外反
皮膚症状
部位 四肢,体幹(背部>腹部) 腹部>背部
間擦部
間擦部
伸側>屈側
伸側=屈側
形態 細かい鱗屑
黒褐色,大きな鱗屑
病理組織
角質の肥厚と顆粒層の菲 角質の肥厚,顆粒層は 顆粒変性
ほぼ正常
薄化
病因
フィラグリン産生低下
ステロイドスルファタ ケラチン遺伝子
(K1/K10)の異常
ーゼの欠損
角質肥厚
(不全角化を伴うものと伴
わないものがある)
著明な角質増殖
一部はトランスグルタミナ 不明
ーゼの欠損
230
15 章
角化症
2.伴性遺伝性魚鱗癬
X-linked ichthyosis
Essence
●
ステロイドスルファターゼの欠損あるいは著明減少により,
角質の脱落遅延を起こして生じる.伴性劣性遺伝.
●
症状は尋常性魚鱗癬よりも重症.
皮疹は関節屈側も侵される.
症状
生後まもなく発症し,加齢により軽快しない.皮膚症状は尋
常性魚鱗癬よりも高度で,鱗屑は大きく暗褐色を呈する(図
15.2).半透明の薄膜で全身が覆われている状態で出生するこ
ともある(コロジオン児).四肢関節屈側も侵し,体幹では腹
部がより強く侵される.角膜混濁を合併しやすい.尋常性魚鱗
癬と同じく,冬季に悪化し夏季に軽快する.
病因
図 15.2 伴性遺伝性魚鱗癬(X-linked ichthyosis)
比較的大きな鱗屑を有し,尋常性魚鱗癬より症状が強
い.
15
X 染色体上にあるステロイドスルファターゼ(steroid sulfatase;
角層において細胞間接着に寄与する硫酸コレステロールを分解
する酵素)遺伝子の変異により,硫酸コレステロールが角層細
胞間に蓄積し,角質細胞が剥離遅延を起こすため生じる(1 章
参照)
.伴性劣性遺伝であるため,ほとんどが男児に発症する.
病理所見・検査所見
角層が肥厚し,顆粒層および有棘層は正常ないし軽度に肥厚
する.毛孔性角化はまれに認める.角層,末梢白血球,線維芽
細胞中のステロイドスルファターゼの欠損あるいは著減が明ら
かで,疾患をもつ胎児の母(保因者)では尿中エストリオール
の低下をみる.
鑑別診断・治療
尋常性魚鱗癬との鑑別にはステロイドスルファターゼの低下
を証明する.対症療法.尋常性魚鱗癬に準じる.
図 15.3 ① 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(bullous
congenital ichthyosiform erythroderma)
潮紅と厚い角化を伴う皮膚病変を全身に認める.
3.水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
bullous congenital ichthyosiform erythroderma;BCIE
症状
コロジオン児として出生することがある.乳幼児期はびまん
性の潮紅,水疱形成を繰り返すが,しだいに鱗屑が厚くなり学
童期には高度の角化が固定する(図 15.3).潮紅を伴う皮膚面
A.遺伝性角化症
231
15
図 15.3 ② 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
全身性皮膚の潮紅.手掌,足蹠に汚穢な色調の強い角化を伴う(とくにケラチン 10 に変異を有する症例に多い)
.
上の厚い角化性局面には特徴的な悪臭も伴う.関節屈側を含め
て全身が侵され,暗紅色調の紅皮症を呈する.生命予後は良好
である.
病因
有棘細胞の細胞骨格(中間径線維)はケラチン 1 と 10 によ
り構築されている.本症はケラチン 1 または 10 遺伝子の変異
の結果,ケラチン線維形成に障害が生じ,細胞骨格が乱れ,表
皮内水疱形成をきたし,続発性の角層肥厚を生じる(図 1.14
参照)
.常染色体優性遺伝.
病理所見
角層や有棘層の肥厚のほか,顆粒層から有棘層にかけて,ケ
ラチン線維の凝集,大型のケラトヒアリン顆粒をもつ空胞化細
図 15.4 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の病理組織像
表皮の顆粒変性を認める.
232
15 章
角化症
胞が特徴的にみられる〔顆粒変性(granular degeneration),図
15.4〕
.
鑑別診断・治療
とくに新生児期には水疱形成が著明であり,表皮水疱症や伝
染性膿痂疹と鑑別が必要.病理組織所見により鑑別する.エト
レチナート内服や保湿剤の塗布を行う.
図 15.5 Siemens 型水疱性魚鱗癬
水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症に比べて,比較的軽微な
臨床症状を呈する.潮紅と過角化を伴う.
付)Siemens 型水疱性魚鱗癬
ichthyosis bullosa of Siemens
水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の軽症型と位置づけられる.臨
床症状が水疱型魚鱗癬様紅皮症と類似しているが,臨床的に紅
皮症を伴わない(図 15.5).表皮顆粒層で発現するケラチン 2e
遺伝子の変異により,病理組織学的に有棘層のごく上層の一部
と顆粒層に限局した顆粒変性を認める.
4.非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
non-bullous congenital ichthyosiform erythroderma
15
症状
コロジオン児で出生することが多く,2 〜 3 日でコロジオン
膜が剥脱し全身のびまん性潮紅と落屑を呈する(図 15.6).屈
側を含めて全身が侵され,眼瞼外反をきたすこともある.季節
による症状の変動は少ない.10 歳頃まで進行性で,以後停止ま
たは軽快する.軽症から重症型まで臨床所見は多彩である.
病因
原因は多様で,複数の遺伝子が発症にかかわっていると推察
されている.常染色体劣性遺伝形式をとり,一部の症例はトラ
図 15.6 ① 非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(nonbullous congenital ichthyosiform erythroderma)
全身性のびまん性潮紅と細かい鱗屑を伴う落屑.水疱
形成はみられない.
ンスグルタミナーゼ 1(transglutaminase1)の遺伝子変異によっ
て生じるが,正常な症例も多い.トランスグルタミナーゼ 1 の
活性が完全欠損すると葉状魚鱗癬(次項)となり,活性が少し
残ると非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症を発症する.トランスグ
ルタミナーゼ 1 は,角質細胞の周辺帯(cornified cell envelope)
を形成するために必要なカルシウム依存性の酵素であり,これ
が欠損すると周辺帯は形成されない.本症は角質の物理的およ
び化学的強度が著しく低下して生じるとされる(図 15.7,図
1.16 参照)
.
A.遺伝性角化症
233
15
図 15.6 ② 非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
ロリクリン
インボルクリン
細胞膜
周辺帯
ケラチンパターン
拡
大
!
細胞膜
拡
大
!
層板顆粒
ケラトヒアリン
顆粒
核
周辺帯は,角層において角質細胞膜を裏打ちしており,角層の物理的・化学的強度を
高めるのに重要な役割を果たしている.
図 15.7 周辺帯(cornified cell envelope)の模式図
234
15 章
角化症
治療
エトレチナート(ビタミン A 誘導体)内服が有効.二次感染
を予防するため皮膚を清潔に保つ.
5.葉状魚鱗癬
lamellar ichthyosis
およそ半数の症例はトランスグルタミナーゼの欠損により発
症するが,活性が正常な症例もあり病因的にも多様な疾患であ
る.非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症と比べると臨床的に著しく
粗大,暗褐色,板状,葉状の大きな鱗屑がみられる点が異なっ
ている(図 15.8).しかし,両者の中間型もみられる.臨床症
状に加え,トランスグルタミナーゼ活性の欠損を同定できれば
確定診断される.
6.道化師様魚鱗癬
harlequin ichthyosis
同義語:道化師様胎児(harlequin fetus)
図 15.8 葉状魚鱗癬(lamellar ichthyosis)
暗褐色の大きな鱗屑が特徴.
出生時から皮膚がきわめて厚い角質で覆われ,皸裂(ひびわ
れ)しており,眼瞼外反や口唇突出,開口が著しく,生後 2 週
15
間以内に死亡する例が多い(図 15.9).ABCA12 遺伝子の変異
により発症することが 2005 年に日本人皮膚科医によって明ら
かとされた.ABCA12 は層板顆粒に存在する lipid transporter で
あり,本症では,層板顆粒の形成異常がある.常染色体劣性遺
伝.出生前診断の適応にもなる重症型遺伝性角化症である.
7.魚鱗癬症候群
ichthyosis syndrome
魚鱗癬の皮膚症状に加えて,一定の他臓器の先天異常を伴う
遺伝性疾患を総称して魚鱗癬症候群と呼ぶ.皮膚症状は非水疱
型先天性魚鱗癬様紅皮症の症状に似たものが多い.発生頻度は
いずれもきわめてまれである.以下に比較的頻度の高いものを
あげる(表 15.3)
.
① Sjögren-Larsson(シェーグレン・ラルソン)症候群
常染色体劣性遺伝.先天性魚鱗癬様紅皮症,痙性四肢麻痺,
精神発達遅滞を 3 主徴とする(図 15.10).fatty aldehyde dehydrogenase(FALDH)遺伝子に異常があり,FALDH が欠損する
ために生じる.
② Netherton(ネザートン)症候群
図 15.9 道化師様魚鱗癬(harlequin ichthyosis)
全身の著明な過角化を認める.眼部が赤いのは眼瞼外
反を呈しているためである.正常な眼球はその下に存
在している.
常染色体劣性遺伝.セリンプロテアーゼインヒビターをコー
ドする遺伝子(SPINK5)の変異が原因で生じる.皮疹はアト
ピー性皮膚炎様あるいは先天性魚鱗癬様紅皮症様(図 15.11),
235
A.遺伝性角化症
表 15.3 主な魚鱗癬症候群
その他の症状
皮疹
遺伝
病名
Sjögren-Larsson 症候群
常染色体劣性
非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
精神発達遅滞,痙性四肢麻痺
Netherton 症候群
常染色体劣性
アトピー性皮膚炎様,bamboo hair
アトピー素因
KID 症候群
常染色体優性
四肢・顔面の棘状過角化
聴覚障害,角膜炎
Dorfman-Chanarin
症候群
常染色体劣性
非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
白血球内の脂肪滴,脂肪肝,白内障,神経症状
Refsum 症候群
常染色体劣性
葉状魚鱗癬様皮膚
色素性網膜炎,多発性神経炎,小脳性運動失調,
内耳性難聴
Rud 症候群
常染色体劣性
非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
てんかん,精神発達遅滞,低身長,性腺機能低下
Conradi 症候群
常染色体優性または
常染色体劣性
非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症
骨格異常,白内障,骨端点状陰影,四肢麻痺
a
b
c
d
e
f
g
h
15
図 15.10 Sjögren-Larsson 症候群
先天性魚鱗癬様紅皮症様の皮疹を伴う.
毛は節をもった banboo hair で,短く折れやすい.
③ KID 症候群
常染色体優性遺伝.角膜炎(keratitis),皮膚過角化(ichthyosis),聴覚障害(deafness)を特徴とする.顔面や四肢を中
心に乳頭腫状〜棘状の角化性病変を生じる(図 15.12)
④ Dorfman-Chanarin(ドルフマン・シャナリン)症候群
a
常染色体劣性遺伝の中性脂肪代謝異常症で,トリアシルグリ
セロールがさまざまな細胞の細胞質内に蓄積し,脂肪滴を形成
b
c
d
f
g
h
図 15.11 Netherton 症候群
a:アトピー性皮膚炎様,先天性魚鱗癬様紅皮症様皮
疹を伴う.b :毛は節をもっており(banboo hair),
その部分で折れやすいため短毛である.
する.魚鱗癬のほか肝障害,難聴,精神発達遅滞,白内障,眼
振などを伴うことがある.脂質分解酵素の一種をコードする
CGI-58 遺伝子の変異が原因である(図 15.13,15.14).
⑤ Refsum(レフサム)症候群
常染色体劣性遺伝.葉状魚鱗癬様の皮疹に加えて,色素性網
膜炎による夜盲,小脳性運動失調,多発性神経炎,内耳性難聴
など.先天性代謝異常が原因で血中のフィタン酸(phytanic
acid)が増加する.
⑥ Rud(ラッド)症候群
常染色体劣性遺伝といわれているが,男児に多く孤発例が多
e
図 15.12 KID 症候群
i
236
a
15 章
b
角化症
c
ad
be
caf
g
db
eh
c
a fdi
b gej
c hkf
d igl
jh
em
f kni
g loj
hmp
k
i nql
j om
r
図 15.13 Dorfman-Chanarin 症候群
い.先天性魚鱗癬様紅皮症にてんかん,精神発達遅滞,性腺機
能低下,低身長などを合併する.
⑦ Conradi(コンラジ)症候群
非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の症状に加え,骨格異常,白
内障,四肢麻痺などを伴う.
8.後天性魚鱗癬
15
acquired ichthyosis
Essence
図 15.14 Dorfman-Chanarin 症候群の病理組織像
●
悪性腫瘍(リンパ腫など),サルコイドーシス,薬剤などに
続発.
●
遺伝性魚鱗癬に類似した経過をとるが,関節屈側を侵す.
症状
魚鱗癬としての症状は多様であるが,関節屈側も侵す(図
15.15)
.
病因
背景に主に以下のような疾患をもち,後天的に魚鱗癬の症状
を起こす.
a
b
ca
db
ec
fd
図 15.15 後天性魚鱗癬(acquired ichthyosis)
a:Hodgkin 病に伴う.b:菌状息肉症に伴う.
ge
pn
qo
j h
i g
k i
l j
mk
n l
o病)
m ,白血病,
(h if )悪性腫瘍〔悪性リンパ腫(とくに
Hodgkin
内臓癌,Kaposi 肉腫など〕
.
(ii)全身性疾患
(サルコイドーシス,甲状腺機能低下症,Hansen
病,結核,SLE など)
(iii)薬剤(ニコチン酸など)
病理所見
尋常性魚鱗癬と類似する.
rp
A.遺伝性角化症
237
検査所見・診断
皮膚症状や病理組織からでは尋常性魚鱗癬との区別は不可
能.臨床経過と悪性腫瘍の検索が診断に重要となる.
b.掌蹠角化症 palmoplantar keratosis
定義・分類
原発性,遺伝性に手掌や足底に高度な角質増殖をきたす疾患
の総称.臨床型や遺伝形式によりいくつかの病型に分類されて
いる(図 15.16,表 15.4)が,遺伝子変異は一部の症例でしか
同定されないものが多く,分類の正当性についても今後の検討
が必要.代表的な病型を以下に示す.
治療
いずれの型も根本的な治療法はない.エトレチナート(ビタ
ミン A 誘導体)内服やサリチル酸ワセリン,保湿剤の外用.
1.Thost-Unna(トスト・ウンナ)型掌蹠角化症
15
常染色体優性遺伝.乳児期から掌蹠に限局したびまん性の病
変を形成し,周囲に紅暈を認める.掌蹠は発汗過多を示すこと
が多い.病理学的には,角層および表皮の肥厚が観察される.
最近,ケラチン遺伝子(K1)に変異を認める症例が報告されて
いる.
2.Vörner(フェルネル)型掌蹠角化症
常染色体優性遺伝.臨床的には Thost-Unna 型と区別すること
が不可能であるが,病理組織で顆粒変性(granular degeneration)
を認めることで区別できる.約半数の患者でケラチン遺伝子
図 15.16 ① 掌蹠角化症(palmoplantar keratosis)
さまざまな程度の角化を掌蹠に認める.臨床所見だけ
で病型を決定するのは困難な場合が多い.
(K9)の変異を認める.
表 15.4 掌蹠角化症の主な病型
皮疹
発症時期
その他の症状
病名
遺伝
Thost-Unna 型
常染色体優性
乳幼児期
掌蹠に限局したびまん性角化病変.周囲に紅暈
掌蹠で発汗過多
Vörner 型
常染色体優性
乳幼児期
Thost-Unna 型に類似
病理所見で顆粒変性
Meleda 病
常染色体劣性
乳児期
潮紅を伴う角質肥厚,発育とともに手足背などに拡大
精神発達遅滞
優性 Meleda 型
常染色体優性
幼小児期
Meleda 病に類似するも角化,潮紅は軽症
長島型
常染色体劣性
乳幼児期
軽度の角化が手足背に及ぶ
線状掌蹠角化症
常染色体優性
幼小児期
掌蹠に線状,帯状,円形の過角化
点状掌蹠角化症
常染色体優性
小児〜老人期
掌蹠に硬い点状の角化様丘疹が多発
栄養障害性爪変型を伴う
場合がある