日本の養鹿-全日本養鹿協会の活動から(7) - AgriKnowledge

日本の養鹿-全日本養鹿協会の活動から(7)
誌名
畜産の研究 = Animal-husbandry
ISSN
00093874
著者
辻井, 弘忠
巻/号
61巻7号
掲載ページ
p. 799-804
発行年月
2007年7月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
799
日本の養鹿一全日本養鹿協会の活動から
7.鹿の生産技術の確立に向けて一調査と研究(3)
鹿肉と鹿肉料理
辻井弘忠*
1 鹿 肉
1.はじめに
表1鹿肉(アカシカ)の成分
成分/1009
ロース モモ
タン六ク質(g) 24.7
23.8
日本国内の野生鹿の被害は,年々増加傾向にあり
脂肪(9) 3.3
3
各地で鹿の森林に及ぼす被害が報告されている。し
水(9) 70,8
71.2
かし。暖冬化,ハンター人口の高齢化・減少のなど
ミネラル(g) 1。4
で鹿の捕獲数を超えた繁殖のため被害を食い止め
ることが出来ない状態である。最近は鹿の食害から
エネルギー価(kj) 545
519
コレステロール(mg) 66
74
樹木が枯れ,降雨のたびに侵食が進み,さらに森林
カルシウム(mg) 5
3
の表土が流失し,斜面の崩壊が始まり,水道水源林
マグネシウム(mg) 25
29
にも被害が及んできている。
ナトリウム(mg) 51
鹿の生産物は,鹿肉(ベニスン),鹿茸(ベルベッ
カリウム(mg) 352
47
367
ト),鹿皮,角など捨てるところが無いといわれる
銅(μ9) 190
ほど利用価値が高い動物である。ニュージーランド
は野生鹿を利用して高価格の鹿肉,鹿茸,鹿皮の輸
出国で鹿産業の方が緬羊産業より高収益をあげて
いるのが現状です。最近,・各地で野生鹿の肉を利用
1.9
216
鉄(μg) 3820
3900
亜鉛(μg) 2820
2510
セレニウム(μg) 2.2
2.2
平均ト体重69.4kg(n=10)
(Drew&Semen1987年より引用)
した料理や加工品のソーセージや缶詰などが販売
されるようになっているが,もっと鹿肉を見直して,
野生鹿の肉の利用を考えてみる必要がある。
2.鹿肉の栄養価
3.鹿肉の歩留まり
鹿肉の枝肉歩留まりは60%に対してメンヨウは
46∼47%,枝肉における脂肪の割合は,ニホンシカ
他の獣肉に比べ,脂肪やコレステロールなどが少
6.0%に対してメンヨウは22.0%である。鹿肉は赤
なく,タンパク質や,鉄分を豊富に含んでいるので
み主体で,筋肉内脂肪が少ない癖の無い柔らかな肉
健康食品として推奨されている(表1)。その他,生
である。鹿肉の中で1番うまいとされているのがダ
活習慣病の予防になるカルニチン(肥満予防),共役
マシカ,次いでニホン・シカ,エゾシカ∫アカシカの
リノール酸(抗酸化・抗ガン作用),カルノシン(抗酸
順であるといわれている。
化作用),アンセリン(抗酸化作用),ビタミンB群
(抗疲労効果),ヘム鉄(貧血予防)などを含む機能性
4.食肉処理
食品・健康食品である。高齢者向けの肉としても市
狩猟で獲た野生鹿場合は,衛生的に行うよう心が
場性が高いと思われる。
ける。迅速な血抜きと内蔵の摘出を行い。さらに,
腹部に雪を一杯詰め込んだり,冷たい山の湧き水で
洗浄したりしてト体の体温を出来るだけ早く下げ
“信州大学農学部(Hirotada Ts可沿
0369−5247/07/¥500/1論文/JCLS
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畜産の研究 第61巻 第7号 (2007年)
る工夫をして運搬する。飼育していた鹿の場合は,
健康状態をよく観察後,可能な限り暗い揚所で安静
にして誘導路から鹿の保定器(宙吊り状態)で保定
、
ス ネ
野菜と蒸し煮
する。電流または打撲等で失神させたのちに,頚動
脈を切断あるいは心臓を刺し,直ちに後肢をフック
モ モ
モ モ
に掛けて放血する。はく皮刀を用いて胸腹部,四肢
から切開して背部に向かってはいでいく,後肢にガ
ンプレスチックを通して吊り下げ,内臓を徐去する。
とくに胃や腸の内容物が漏れ出さないように注意
深く取り除く。四肢端および第一頚骨から頭部を切
り落とし,骨切鋸で左右に二分割にする。冷水また
鑓一ス
ンチ
リブロース
ト毛バフ
カ タ
は温水で枝半丸の表面を洗浄する。取り出した消化
器系の内臓物は内容物を除いて水洗する。腸は裏返
して粘膜を取り除いてソーセージ用のケーシング
として利用する。死後の筋肉代謝は温度に依存する
カタロース
野菜と蒸し煮
カ タ
1
ノ
!
ノ
ウ デ
ノ
ため,出来るだけ速く冷却するように心がけ,0℃
の冷却室に入れる。枝肉の中心温度が1∼2℃になる
よう温度・湿度を調整する。0℃の冷却室で約10∼15
時問程度を必要とする。冷却中に枝肉表面から水分
が蒸発し若干の乾燥と肉のしまりを与えるが,過剰
の水分の蒸発を防ぐため湿度は90%前後が望ましい。
5.枝肉の分割
鹿肉の分割法は図1に示した。カタ,ロース,ヒ
レ,バラ,モモの5分割にする。分割した枝肉を除
ク ビ
カタ肉をサイコPに切る
図1鹿の枝肉の分割(Nichola Fletcherより引用)
油
外、c
叉d
く三\
B 、
A
、
鳶
畠
骨する(図2)。小さなナイフを用いて,的確に骨の
○
位置を把握して行う。ロースは図2のように裏返し,
図のA線のように背骨の両側に切込みを入れ,Bの
D
肉のみを肋骨からはずし,C肋骨の下と周囲を切る。
さらに注意深くDまで切る。再びひっくり返し,丸
めてたたいて整形する。モモは図3の切り方で行う
ンチ
図2鹿のロースの骨抜き(Nichola Fletcherより引用〉
のが良い。モモの中央は1本の骨しかないので,ナ
イフを肉と骨の間に切り入れ,骨の周囲を切り,肉
を取り出す。他の部位も同様に骨を取り除く。モモ
の上部は骨盤の骨があるので少々難しいが根気よ
く骨を取り除く。カタは図4に示したように,Aの
肩甲骨を先に取り除く,切り身の中に肩甲骨の1部
しかない場合は非常に楽である。Bの表面の肉を壊
メ鮮論
上部切開
㌔グ
中部切開
下部切開
さないように注意して取る。Cの指骨問接を引き抜
く。D肋骨の見えている所から骨をたどり,肋骨の
間や下から肉を切り取る。これらの肉は直ちに食肉
として使用するか,凍結肉として保存する。
図3鹿のモモの骨抜き(Nichola Fletcherより引用)
辻井:日本の養鹿一全目本養鹿協会の活動から
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長ければ長いほど,その食肉の鮮度維持期間も長い
6.鹿肉の凍結法
ということになる。急速凍結後,一30℃以下の営業
素材の鮮度をそのまま維持するための,凍結のポ
用の冷凍庫などで密閉状態におくと,長期間保存出
イントは,0∼一7℃位までの氷が結晶化する温度帯
来る。
すなわち最大氷結晶生成帯を早く通過させること
である。すなわち,緩慢凍結すると,肉内の氷の結
8.鹿肉の解凍
晶が大きくなり,肉の細胞繊維を破壊して,解凍時
冷東肉を解凍する方法は,一般的には水に浸漬す
のドリップもより多くなり,肉がパサパサした食感
るか冷蔵庫に放置し,なるべぐ低温で6∼12時間か
けて解凍する。いきなり水やお湯につけるのは避け
になり,肉の旨味がなくなってしまうため,出来る
だけ氷の結晶を小さくするために凍結を早くする
ことが必要である。急速凍結するためには,肉をな
る。解凍時に出る血や水分はその都度必ずクッキン
るべく凍りやすいように薄く平らにのばし,冷凍保
のうちから冷蔵庫に入れておくと,肉汁が徐々に解
グペーパーで吸取る。夕食に使用する場合には,朝
存用のジップ式袋を利用してパックの中に入れ,出
け,肉の旨昧や風味が損なわれない。半解凍状態で
来るだけ空気が入らないように真空状態にして温
度伝達を高める。パーシャル室などを利用して,肉
調理するのが望ましく,指で押してみて内部が少し
の温度を一1℃に近づけて凍結までの時間を短縮す
豚のスライス程度の厚さで,必ず繊維に直角に切る
ることが大切である。アルミニウムは,ステンレス
ようにする。
の約14倍の熱伝導率に優れているので肉の温度を
急速に奪ってくれる。したがって,アルミニウム・
凍っているくらいが適当である。肉の切り方は,牛・
9.鹿肉の熟成(エージング)
アルミのトレーに置いて凍結する。
肉の旨みは熟成の程度によって風味が左右され
る。すなわち,肉が熟成すると発酵食品の匂いに似
本格的な急速凍結法は,アルコールによる液体凍
た,香ばしいような匂いがする。これは肉の熟成の
トレーを十分に冷凍庫に入れて冷やし,先ほど肉を
結で,凍結後の冷凍焼けを防ぎ,アルコールが直接
目安となる。動物は死後,筋肉の硬直を起こす。こ
肉に触れるのを防ぐために鹿肉を真空パックする。
の死後硬直時の食肉は,筋肉が硬く引っ張り合って
冷凍庫内に一20℃以下のアルコールを入れた容器
を用意し,真空パックした肉をアルコールの中に入
いる状態で,熟成すると肉自体の持つ酵素の働きに
れる。肉の凍結を確認する。ステーキ程の大きさで
分解されて旨み成分のアミノ酸が増し,肉の風味を
あれば20分位で完全に凍結する。、凍結後アルコー
良くし,美味しくなる。肉の熟成は鶏肉:ほぼ12
ルを切り,一20∼30度位の冷凍庫で保存する。
時間,鹿肉:7目位,豚肉:10目前後,牛肉:20
よって,筋肉が柔らかくなると同時にタンパク質が
目前後である。肉屋の店頭に熟成した肉を並べると
’X−)
肉の色は黒くなって,買い手がいなくなる。した
がって,肉の色が鮮やかな内(熟成の浅い肉)に販売
8 1
している。外食店のステーキの方が家庭で焼いたス
テーキよりも美味しいと感じるのは,外食店では調
D
’ン
C
理をして出すので,肉の色はあまり重要ではなく,
肉の熟成を待って調理をするためである。
10. ドライエージング
図4鹿カタの骨抜き(Nichola Fletcherより引用)
専用の冷蔵庫(一2℃で解凍,熟成が出来る)を使用
7.鹿肉の鮮度維持期
し,肉をタオルや布でくるみ,きれいな状態を保つ
ようにする。使用するタオルや布は滅菌をし,こま
死後から死後硬直の時間,すなわち食肉の鮮度維
めに取り替える。手間は掛るが,肉の熟成はグンと
持期間である。死後から硬直が解けるまでの時間が
違ってくる。これは,部分肉を長期保存すると,内
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部にたまったドリップ(肉汁)が染みこんで酸っぱ
料理する前に水気を取り,軽くたたいて乾燥させた
いような匂い(チルド臭)を発しないようにするた
後に料理に供する。
めである。熟成は酵素の働きによって起こり,一定
の時間が必要である。酵素の働きは温度が高いと早
(1)ステーキ用のマリネード
オリーブオイル大さじ4,辛口の白ワイン大
くなり,温度が低いと遅くなる。したがって,熟成
さじ3,レモンの絞り汁 1個,ニンニクのみじん
を早めるためには温度を高くすれば良いというこ
とになるが,熟成を急ぐ場合は食肉用冷蔵庫よりも
(パセリ,あさつき,ミント,ロバージュ,塩,胡
切り 一片,パセリの根と葉 1片に香味野菜少々
温度の高い野菜庫などを利用する方が良い。この時,
椒)。
温度が高い分,雑菌の繁殖も考慮する必要がある。
(2)ヨーグルトマリネー一ド
プレーンヨグルト 1カップ,レモンの絞り汁
ドライエージングをする場合,肉の表面と冷蔵庫内
の殺菌が必要である。庫内に殺菌灯などを設置する
小さじ1,グラムマルサラワイン デザートスプン
ことも必要である。
1: 肋骨付き肉などに向く。
(3)焼肉用のマリネード
皿 鹿肉料理
鹿肉の料理においては,鹿肉には脂肪分が乏しい
赤ワイン1.5L,赤砂糖 小さじ3,黒胡椒の実
大さじ1,丁子 3個,月桂樹の葉 6枚,カレー粉
ので鹿肉料理には,この点を充分頭において調理す
大さじ1,サルビアの葉 3枚,ナツメッグ,ロー
ることを忘れてはならない。
ズマリー,タイム 1つまみ 冷蔵庫内で2∼10
日間漬け,焼く時にも肉にかけてやる。
1.マリネード
(4)シチューのマリネード
マリネードとは,酢,ブドウ酒,油,香辛料,ハー
辛ロワイン0,4L,水0.4L,オリーブオイル
ブなどで調合したもので鹿肉などを処理によって,
0.4L, セロリー 2本刻む, ニンニク 2片砕
嗜好性,保存性を高める。新鮮な若い鹿肉の場合マ
く,玉ねぎ 2個刻む,人参 2本刻む,月桂樹の
リネードは必要としない。硬い年老いた鹿肉などの
葉1枚,西洋ネズの実6個を砕く,トマトピュー
場合は有効である。鹿肉をマリネード処理すると筋
レ 大さじ1材料をゆっくり煮て急速に冷ます。
線維,結合組織が膨潤するため鹿肉の軟らかさが増
12∼24時間肉を漬け,シチューや焼肉に供する。
す。この効果は醤油,清酒,レモン汁などにもみら
れる。マリネード処理による肉の軟化は,マリネー
2、ラーディング
ドの主要液であるワインビネガーpH2.5,赤ブドウ
鹿肉には脂肪分が乏しいので,長時間鹿肉を焼く
酒pH4.5,レモン汁pH2。8,醤油pH4。7などが酸性
時,肉が乾燥してしまうので鹿肉にラードやベーコ
である。鹿肉が酸性状態になった時,保水性の向上
ンの小片を差し込むことが必要である。肉の表面に
と,筋肉に内在する酸性プロテアーゼの活性化に
脂肉を置く(バーディング)と,肉の中に脂肪を取り
よって鹿肉の軟化が起こる。新鮮肉の保水性は,筋
入れる(ラーディング)がある。ラーディング用の針
タンパク質の等電点に相当するpH5.O付近で最低
値を示すが,それより酸性側でもアルカリ性側でも
または箸を用いて,硬い豚の細長い脂肪を切り取っ
て少量ずつ突き入れる。この時,少し端を突き出し
保水性は増大する。マリネード処理によって肉の
ておくと,切り身がおいしそうに見える。また,細
pHは4.0前後に低下すると筋線維問は押し広げら
いナイフを用いて4−5cm間隔で突き刺し,豚の脂肪
れ,水を保持できる空聞が増し,保水性が向上して
やラードをニンニクと一緒に入れても良い。
軟らかく調理できる。ぺ一スト状にしたマリネード
に鹿肉を漬け,ジッパー付きビニール袋(多量の場
3.ベニスンロースト
合はボウル,バット缶等)に入れ,空気を抜いて,
ロース肉固まりに塩,胡椒,スパイスをすり込み,
密封状態にして冷蔵庫で3時問から一晩漬け込む。
鹿肉とワイン少量をビニール袋に入れ,冷蔵庫で一
1時間,シ
晩寝かせる。箸を使って肉の表面に穴をあけ,ニン
ステーキやスペアリブなどの場合は
チューやローストの場合は2∼3時間で充分である。
ニクをマッチ棒形に切って肉の穴に押し込む。肉の
辻井1目本の養鹿一全日本養鹿協会の活動から
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表面に塩,胡椒をすり込み,セージを振りかける。
35%添加する。あらびきにする場合も肉の結着力を
ロースト皿に金網を敷き,その上に肉をのせてサラ
高めるために半量はすりつぶす必要がある。オート
ダ油をふりかける。予め190℃に温めておいたオー
ミール,水,塩,玉ねぎやニンニクのすりおろし,
ブンで!時問半焼く。ジャガ芋は布かキッチンペー
ブラックペパー,セージなどを加えてよく混ぜる。
パーでふき,乾かし,金網の上のベニスンロースト
肉の温度が上昇すると結着力が落ち,食感が悪くな
の周りに置くか,耐熱皿に置いてオーブンの下の段
るので,冷やしながら手早くする。塩漬け腸は,ソー
に置く。サラダ油をジャガ芋にも振りかけて,ベニ
セージを作る2時間前に水に戻しておき,肉を詰め
スンローストが出来上がる40分前に調理し始める。
る時にすべりがいいように,腸に水を通しておく。
ベニスンローストと共にカリフラワー,ブロッコリ,
布製の絞り袋にミンチ肉を入れ,絞り袋の口金の先
セロリーなどの温野菜を皿に盛り付ける。ソースは
に腸を付けて肉を入れる。よく空気を抜かないと,
卵黄とバターにレモンにレモンや酢を加えたオラ
加熱したときに破裂する恐れがある。適度な長さに
ンダソースか酢漬けのビネグレットソースが合う
区切る。形を作り終わったらソーセージにひもをか
け,ソーセージを乾燥させる。薫製用の缶の中で火
(写真1)。
をいれ,少し水で濡らした桜の木でスモークする。
薫製は60∼70℃で1時問。60∼70℃で1時間乾燥さ
せ,ソーセージを殺菌するためにソーセージを70℃
で30分問ボイルする(写真2)。
写真1鹿背肉のロースト(長野県提供)
4.燥 煙
燃製は,広葉樹材の煙を前処理の塩蔵した鹿肉に
評謝
写真2鹿肉たたきと鹿バラ肉ソーセージ
(全目本養鹿協会提供)
当てることによって保存性・香味を加える加工方法
である。燃煙には油脂の酸化防止効果があり,煙成
6.鹿肉ハム
分中のホルムアルデヒドやフェノール物質が殺菌
成分として作用する。燃煙方法には,煙煙温度で分
モモ肉のかたまりに穴を開け,豚の脂肪を入れ,
類される「温燃」とr冷燥」がある。保存性を重視
塩・砂糖・黒胡椒を肉にすり込む。肉をキチンと整
したものは冷燃である。「冷燃」とは20∼30℃で長
形してから,タコ糸で細かく縛る。ハーブなどと一
時間燃煙する方法で,出来上がり製品の水分含量が
緒にストックバックに入れ,空気を抜いて冷蔵庫で
少ない。r温燃」は50∼70℃程度で,数時間ないし
4∼7目ほど熟成させる。ボウルなどに肉を入れ,流
1昼夜燃煙する方法で,水分が多く塩分量が低く製
水で数時間放って塩抜きをする。塩抜きが終わった
品は冷蔵保管が必要である。
ら,ぺ一パータオルなどでよく表面を拭き,クッキ
5.鹿肉ソーセージ
ングペーパーなどで包んで冷蔵庫内で乾燥させる。
桜の木で70∼75度2時問ほど燃煙する。煉煙後,
鹿肉を塩漬けにした後,鹿肉を角切りしてミン
70℃のお湯で2時問ほどボイルし,水に30分ほど
サーでミンチ状に切り刻む。ブタ脂肪を鹿肉の約
浸して冷却する。
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(4)鉄板焼き
鉄板をあまり高温にせず少量のゴマ油を引いて
焼く。焼肉のタレ,ニン・ニク,ショウガ醤油をつけ
る。
(5)シャブシヤブ
クズ肉でも良く,シャブシャブのタレ,ポン酢と
薬味の組合せをっける。
その他,鹿肉のミンチカツ(写真3),鹿モモ肉に
軽いスモークをかけたロティー(写真4),鹿肉のク
レープ巻き(写真5),ローゼーに仕上げた鹿肉(写真
6),鹿肉のカレー,鹿肉のシチューなどの料理が出
写真3鹿のミンチカツ(長野県提供)
写真4鹿モモニクに軽いスモークをかけた
(長野県提供)
来る。
写真5鹿肉のクレープ巻き(長野県提供)
7.その他の鹿料理
(1)刺 身
生の背ロース,肩ロースが適す。ショウガ,ニン
ニク,ゴマ油,ワサビ,七味唐辛子等の薬味をつけ
る。
(2)タタキ
カツオと同じく,ブロックの固まりの表面のみを
軽く火を通して切る。ポン酢に刻みネギ,七味唐辛
子等の薬味を入れる(写真2)。
(3)鹿肉のステーキ
写真6 ローゼーに仕上げた鹿肉(長野県提供)
フライパンを熱し,バターで鹿肉を焼く,好みに
応じて火を弱め,温かい皿に肉を置き,鍋の汁で手
参考資料
早くクリーム,オニオン,ヨーグルトなどのソース
NicholaFlecherVenison.The Monarch ofthe Table.1983.
をかける。
鐘