近年の米国小売業の概況 - ドラッグストア研究会

「近年の米国小売業の概況」
米国のマスマーケット業態では、スーパーマーケットとディスカウントストアが 40%づつとい
う圧倒的な構成比を占めている。この二つの業態は OTC(大衆薬)のみならず調剤薬も積極的
に拡販している。日本では 2009 年からの OTC の規制緩和により業態間競争が激化するが、ド
ラッグストアを営む人は、他の業態の強さを充分に意識して専門性を高める対策を今から打っ
ておかなければならない。
2005 年度の成長性では、チェーンドラッグが全体で 7.7%、既存店ベースで 6.0%と順調に成長
した。スーパーマーケットは年間売上げ 2.9%、既存店成長率 1.3%という低い成長で、食品の
売上げが他の業態に奪われている構造が続いていることが推測される。
《2005 年マスマーケット業態別売上げ》
スーパーマーケット
ディスカウントストア
チエーンドラッグ
ダ ラ ー ス ト ア
合計
年間売上げ
4862 億ドル
4536 億ドル
1892 億ドル
328 億ドル
11618 億ドル
構成比
42%
40%
15%
3%
100%
対前年比
+2.9%
+6.6%
+7.7%
+8.3%
+4.6%
既存店前年比
+1.3%
+3.5%
+6.0%
+0.2%
-
純利益率
1.3%
1.6%
1.8%
3.5%
-
《2005 年度マスマーケット業態別店舗数》
スーパーマーケット
ディスカウントストア
チエーンドラッグ
ダ ラ ー ス ト ア
合計
店舗数
33450 店
16853 店
23475 店
23425 店
97203 店
構成比
34.4%
17.3%
24.2%
24.1%
100.0%
対前年比
+592 店
+297 店
+298 店
+912 店
+2099 店
現在の消費者はどの業態・店舗も選びたい放題だが、消費者の購買パターンをみると、スーパ
ーマーケット、ドラッグストアそしてディスカウントストアが最も日常的に利用される業態だ。
世帯の利用状況を見てみると、スーパーマーケットは 99%、ディスカウントストアは 87%、そ
してドラッグストアは 83%の世帯が活用している。しかし利用頻度は落ちており、ディスカウ
ントストアは 2001 年の年間 24 回利用から、2005 年は 18 回に、スーパーマーケットは 72 回
から 64 回に落ちている。一方スーパーセンターは 2001 年の 20 回から 2005 年の 27 回に、ダ
ラーストアは 11 回から 13 回へ、ホールセールクラブは 10 回から 11 回へと増加している。ド
ラッグストアは年間 15 回で変わりはないが、利用頻度が低いのが非常に気になる。
多くの業態が来店頻度を増すために食品の取扱いを増やしている。例えば、ターゲットは食品と
飲料水売り場のスペースを 50%増加すること、ペーパー類の売り場も増加することを発表した。
今米国の小売業がいかに顧客の来店頻度を増加させるために懸命な努力をしているかが分る。
06 年 12 月号
1
《消費者の年間業態利用回数》
業態
スーパーマーケット
ディスカウントストア
スーパーセンター
チェーンドラッグ
ダ ラ ー ス ト ア
2005 年
64 回
18 回
27 回
15 回
13 回
2001 年
72 回
24 回
20 回
15 回
11 回
差
-8 回
-6 回
+7 回
0回
+2 回
企業別に見てみると、世界一のウォルマートが成長の鈍化、従業員による訴訟、販売管理費の
増大、地域の消費者による出店拒否、韓国からの撤退等、海外におけるつまずきの顕在化など
大きな問題を抱えだしている。さらに消費者が小売業にエキサイティングな売り場、流行に沿
った商品のタイムリーな売り場展開、そして待たない・混み合わない売り場環境を強く求めて
きており、現在のウォルマートの店に余り魅力を感じなくなってきている。そして今ではコス
コやターゲットが米国の消費者にとって最も利用したい小売業になっている。
チェーンドラッグストア分野では、ウォルグリーンと CVS が角をつき合わせた戦いをしてい
る。ウォルグリーンは殆ど自前で出店をしているが、CVS は積極的な買収をかけている。ライ
トエイドは調剤客を取れなくて苦戦をしているし、ジーンコチューは設定した売上げ・利益ゴ
ールを達成出来ず苦戦している。
スーパーセンター業態の成長はスーパーマーケット業態を苦戦に追いやっている。スーパーマ
ーケット No.2 のアルバートソンはスーパー部門をスーパーバリューに、ドラッグストア部門
(セイボン、オスコ)を CVS に売却した。このアルバートソンは、かつては非常に優秀なス
ーパーマーケットとして賞賛を浴びていた企業だ。その中で、スーパーマーケット No.1 のク
ローガーやセイフウエイは、ローコスト&ロープライスオペレーションから「魅力的な売り場
作りとこだわった品揃えのライフスタイルフォーマット」に変換したことが業績の建て直しに
功を奏している。リージョナルチェーンの H.E.バット、パブリクス、ウエグマン、ホールフー
ズマーケットなどはオーガニック野菜や惣菜に専門性を生かし、徹底してウォルマートとの差
別化を図り強固な地位を確立した。
チェーン名
ウォルマート
ホームデポ
クローガー
コストコ
ターゲット
シアーズ HD
ロウズ
ウォルグリーン
アルバートソン
セイフウエイ
06 年 12 月号
業態
ディスカウントストア
ホームセンター
スーパーマーケット
ホールセールクラブ
ディスカウントストア
GMS
ホームセンター
ドラッグストア
スーパーマーケット
スーパーマーケット
2005 年度売上高
$312,427
$81,511
$60,553
$52,935
$52,620
$49,124
$43,243
$42,202
$40,358
$38,416
前年比
+9.5%
+11.5%
+7.3%
+10.0%
+12.3%
+147.5%
+18.6%
+12.5%
+1.4%
+7.2%
2
いずれにしても、トップ 10 企業のうちホームセンター企業以外の 8 企業は OTC や調剤を扱っ
...
ており、専門性や便利性の無い物売りドラッグの売上げを奪っていった。日本でも 2009 年の
OTC の規制緩和がドラッグビジネスに大きな影響を与えることは間違いない。
《2005 年度トップ 10 社米国小売業ランキング》
ランク
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(9)
(8)
(7)
(6)
(10)
ウォルマート・ストアーズ
ホームデポ
クローガー
コストコ
ターゲット
シアーズ HD
ロウズ
ウォルグリーン
アルバートソンズ
セイフウェイ
売上高
($100 万)
$312,427
81,511
60,553
52,935
52,620
49,124
43,243
42,202
40,358
38,416
前年比
9.5%
11.5
7.3
10.0
12.3
147.5
18.6
12.5
1.4
7.2
純利益高
($100 万)
$11,231
5,838
958
1,063
2,408
858
2,771
1,560
446
561
前年比
9.4%
16.7
NA
20.5
27.7
-22.4
27.3
15.5
4.1
0.2
既存店
成長率
3.4%
3.8
5.9
7.0
5.6
-1.2
6.1
8.2
0.4
5.9
資料:プレスリリース、アニュアルレポート
カッコ内は前年の順位
Excell-K
ドラッグストア研究会
会長
06 年 12 月号
松村 清
3