顧客満足

平成 17 年 8 月 28 日
国際経済学科 4 年
水島 大輔
顧客満足
~水島式顧客満足~
第1章
顧客満足とは
1-1
顧客満足の定義
1-2
顧客満足の意味
1-3
企業の顧客満足理解度
1-4
顧客満足の必要性
1-5
これからの顧客満足
第2章
顧客満足の欠点と失敗理由
2-1
顧客満足の欠点
2-2
顧客満足の失敗理由
第3章
水島式顧客満足の全容
3-1
水島式顧客満足の定義
3-2
水島式顧客満足の意味
3-3
水島式顧客満足の基本概念
3-4
水島式顧客満足の具体的展開
3-5
顧客満足と水島式顧客満足の比較
第4章
最終局
4-1 水島式顧客満足最終局
4-2 まとめ
~第一章~
1-1
顧客満足の定義
1、提供された商品・サービスさらに提供者の理念などについて顧客が自分自身の基準に
よって納得の得られるクオリティと価値をみいだすこと
2、顧客が取引条件を受け入れたときに意識した有効選好と取引条件の差が購入する製品
に期待する成果であり、顧客が満足するのはその製品のサービスが使用時に期待した
成果に等しい、あるいは大きいときであること
3、作業成果が顧客の期待を満たしているか、もしくは期待を上回るようにするため,顧
客ニーズを理解し,且つそれをプロジェクトの作業努力に反映させるよう調整するこ
と
1-2
顧客満足の意味
CS は顧客満足の意味だが、一般的に「企業が顧客を満足させること」と間違って理解し
ている。顧客満足は「顧客が満足する」ことである。企業の CS 活動とは顧客満足を最大限
にする活動である。顧客満足に力を入れなかった企業、顧客満足の定義や意味を勘違いし
た企業は、潰れていく。顧客満足は事業を展開する上で最も重要な要素である。
1-3
図1
企業が顧客満足を取り入れている割合
8 0.0 0%
7 0.0 0%
6 0.0 0%
取り入れている
5 0.0 0%
取り入れていない
4 0.0 0%
取り入れようとしてい
る
断固取り入れない
3 0.0 0%
2 0.0 0%
1 0.0 0%
0.0 0%
75.90%
8.6 0%
1 .70%
-2-
8.60%
図 1 グラフでは企業の顧客満足を取り入れている割合を示している。取り入れている企
業で長期的かつ継続的な利益を上げている企業は、30%にも満たない。
1-3
企業の顧客満足の理解度
その他5.4%
顧客接点での
サービス改善技
法3.4%
自社と競合への
顧客評価41.3%
製品・サー
ビスの改善
手段8.6%
顧客評価による自社のマ
ネージメント41.3%
一流企業の CS 担当者ですら、顧客満足の意味である、顧客を満足させるのではなく、顧客
が満足をするという大前提を理解していないことがグラフでわかる。企業 CS 担当者が顧客
満足を理解していないのでは、企業の長期的かつ継続的な利益は期待できない。
1-4
顧客満足の必要性
バブル景気の日本企業
物を作れば売れる。
現代の日本企業
物が売れない。
理由
企業が消費者を選ぶ時代が終わり、消費者が企業を選ぶ
時代到来
結果
顧客が満足する商品やサービスを提供しなければ、企業
の拡大もなく、存続も危うくなる。
ゆえに顧客満足は企業にとって重要な要素。
-3-
1-5
これからの顧客満足とは
今までの経営のバイブルは「顧客満足」「クオリティ」「コスト削減」「市場占有率」「マ
ーケット調査」であったが、次世代の経営のバイブルは「顧客ロイヤリティ」「顧客維持」
「客離れ 0」「顧客の生涯価値」へと変わる。だからこそ顧客満足の形態も変えていく必要
があるがゆえに顧客満足の欠点を浮き彫りにし、1 つずつ解決し、新しい顧客満足を形成し、
誰でも満足し、社内顧客・社外顧客すべての企業が満足できる顧客満足を考えた経営を行
っていかなければ、企業の長期的かつ継続的な利益は期待できないのである。
~第二章~
2-1
顧客満足の欠点
問題点① 企業全体の時代の流れ、顧客満足認識・理解不足
問題点②
明快かつ実行しうるミッション・ステートメントがないこと、あっても実務に
浸透させることの重要性の認識不足。
結
果
従業員の不満足度が上がり顧客が満足できるサービスを行えない、企業の利益が
上がらない。企業の存続が危うくなる。
2-2
顧客満足の失敗例
我が国の失敗している顧客満足の根源
管理者による顧客満足の理解不足、企業としての目的は一応わかっているが具体的にど
うしたらいいか戸惑っている状況である。アメリカではコロンブスのアメリカ大陸到達の
例がよくでる。目的のはっきりしない我が国の顧客満足経営にぴったりである。我が国の
企業で行っている顧客満足経営の失敗の根源である。これが、コロンブス・シンドローム
である。
-4-
顧客満足経営失敗による倒産状況
図2
2005 年 7 月報
倒産件数は 675 件、前月比 2 ケタの減少率
注)2005 年 4 月以降、集計対象を変更したことで前年同月との単純比較はできない。
2001 年 1 月~2005 年 3 月の数値は参考値として掲載している。
倒 産 件 数 675 件
前 月 比
負 債 総 額
4174 億 2400 万円
件数
15.0%減
前
月
794 件
負債
5.0%減
前
月
4394 億 8200 万円
図 2 は、顧客満足失敗による経営破綻のグラフである。企業が顧客に見放され、潰れてい
く。上のグラフの倒産件数を減らし、従業員全員が納得するサービスをし、顧客を維持す
るために考えたのが第三章で述べる、水島式顧客満足である。
-5-
失敗理由①
企業の顧客満足に対する、不満や理解不足。
今、従業員、とくにサービス業で直接お客に接している人たち、ウェイターやウェイト
レス、販売員やレジ係、フロント、窓口やカウンター電話のコミュニケーターらは CS アレ
ルギーである。理由は、経営者や管理職が口を開けば「CS」「顧客満足」「お客様第一」と
言うわりには、経営者・管理職自体が、顧客満足を本当の意味で理解していない。
経営者・管理職の顧客満足の間違い
間違い
サービス改善の技法
レストランやホテル、レジャー施設、デパートやスーパー、小売業などの販売業や銀行、
旅行会社などの企業に多く見られる現象である。「CS 活動とは顧客接点におけるサービス
改善の技法である」という考え方である。
接客態度のマニュアルが作り、挨拶の仕方、お辞儀の作法、笑顔の作り方が顧客満足だ
と考えている企業が多い。お客に対する従業員、サービス提供者の接客態度を命令と管理
でマニュアルどおりすれば顧客を満足させることができるという発想。
例
某大手住宅展示場の場合・・・
住宅展示場にお客様がいらしたら、まず、笑顔を作って、「おはようございます」と明るく
にっこり笑って挨拶をする。部屋をご案内し終わったら、リビングに座っていただく。コ
ーヒーをお勧めする。顧客満足達成率 70%(紅茶やウーロン茶が飲みたいお客はどうした
らいいのかな。)お帰りのときは門の外に立ち御車が見えなくなるまで最敬礼をしてお見送
りする。
※ 今でも続けられている。お客様にいい印象を与えるという意味では礼儀の正しさ、マナ
ー、言葉使いを教育することはきわめて重要である。問題は、CS は直接顧客に接する
従業員の仕事であり、顧客に接しない間接部門、管理職、経営者はサービスには関係な
いという姿勢の企業がいかに多いかである。企業自体が時代に合わせた顧客満足を作成
しなければならないのである。
-6-
~第三章~
3-1
水島式顧客満足の定義
水島式顧客満足とは、下の 4 つを常に意識することで、企業と顧客の間に信頼関係を築
くことを意味するのである。企業が社外顧客・社内顧客と深い信頼関係を得ることである。
従来の顧客満足を取り入れ新しい顧客満足の形が水島式顧客満足である。
水島式顧客満足の目的は、従来の顧客満足の徹底した見直しと改善に経験や独自のアイ
デアを盛り込み昇華し経営に生かすことである。
・顧客志向・・・単にお客様に顔を向けている状態である。漠然と顧客を意識している状
態である。
・顧客焦点・・・ある特定のターゲットになる顧客を意識する。
上の 2 つは企業の立場から距離を置いて顧客を見ている概念である。
・顧客主導・・・マーケットの主導権が企業から顧客に移った事を意識することである。
企業が顧客から選ばれる時代の認識を怠らない
・顧客中心・・・企業経営の中心に顧客(社外顧客と社内顧客)を据えて会社の組織、
戦略、構造を組み立てる考え方である。
3-2
水島式顧客満足の意味
水島式顧客満足は、顧客評価型満足である。顧客評価型満足の意味は「顧客を経営の中
核において、顧客の評価に基づいてすべての構造、組織、戦略を組み立てる企業経
営、継続的かつ長期的な利益の確保と維持を企業存続の目的にして、前提条件として顧客
満足、顧客に感動を与える顧客満足」であり、失敗理由①の解決策と同時に次世代の顧客
満足である
3-3
水島式顧客満足の基本概念・条件
水島式顧客満足(顧客評価型満足)で顧客を中心にした基本概念が 9 つあります。言い
換えれば下の 9 つの基本概念を認識して実行していかなければ本当の意味での「水島式顧
客満足」を行っているとは言えない。
-7-
①
顧客中心経営時代の到来の認識
②
伝統的なモノ生産時代の経営観からの決別
③
利益の根源はサービスの高さである認識
④
顧客の概念の拡大と整理
⑤
カネ中心の経営からヒト中心経営の認識
⑥
命令・監督からの権限付与による従業員の自主裁量権の拡大
⑦
従業員(採用)と教育への投資
⑧
従業員(社内顧客)満足なしに顧客の満足・感動は生まれない
⑨
企業の目的は顧客との信頼関係によってもたらされる長期的な継続的な利益の確保と
維持であることの認識
なぜ、1990 年代の「前進した顧客満足」が破綻したか、さらに「顧客満足はわかるがな
にをしたらいいかわからない」という企業が潰れていく理由は、時代に合わせた顧客満足
経営を行っていないからである。水島式顧客満足は、9 つの柱をたて常時対応できる次世代
の顧客満足である。つまり、水島式顧客満足である。
①~⑨の見解
① 顧客中心経営時代の到来の認識とは
今までの、モノを作れば売れる考えの企業中心の時代は終わった。世界は企業・起業を
中心に回っているのではなく、顧客を中心に回っているのである。水島式顧客満足の考え
である顧客中心を徹底しなければ、企業は 21 世紀を生き残れない。顧客が企業を選ぶ時代、
企業が顧客から選ばれる時代時代になった。
今までの企業が売り込むという考え方とやり方では顧客は企業を見放す。顧客の望む価
値・クオリティを見出して、顧客が求めるものを提供する。世界の経済が潤っているとき
に行われていたプッシュ戦略(企業が売りたいモノを流通チャンネルにプレミアム、リベ
ートなどを餌に売り込む。押し戦略)である。水島式顧客満足でプッシュ戦略は実施しな
い。水島式顧客満足ではプッシュ戦略の逆であるプル戦略を主軸におく。
プル戦略とは、引き戦略である。顧客のドアを押し入るのではなく、顧客にドアを引い
て開けてもらう。お客・顧客の視点で求めている価値を見出す、顧客の求めている価値を
提供していくのが①の見解である。
-8-
② 伝統的モノ生産時代の経営観からの決別
潰れていく企業の根本的な間違いは伝統的なモノ生産時代に形成された経営観から脱出
できないことである。潰れていく企業の会社組織はバブルの時の工業経済社会になってか
ら生まれたものである。バブル時の企業は雇用者、経営者と被雇用者、労働者の知的水準
が二極化していたのである。一握りのエリートが企業組織をリードしなければ企業が円滑
に動かなかった。経営者を頂点にピラミッド型の組織を作り、命令と管理で動かすのが当
然であった。潰れていく企業の経営者のほとんどが伝統的なモノ生産時代以外の組織のあ
り方は考えられないのである。
水島式顧客満足では、顧客が求める価値を提供することである。サービス経済社会と同
じ考えである。労働者・スタッフは無機質なモノを扱わない。一人一人感情を持ち個性の
ある顧客に役に立つ価値を提供する社会であり満足である。反復的な機械的な作業では顧
客が満足する価値は提供できない。水島式顧客満足では、作業ではなく仕事を求める。
潰れていく企業が見落としている点がある。高学歴化による労働者の質の変化である。
現代では、後数年すればすべての就職者(ワーカー)候補者は大学に入学できる。すべて
の人が高等教育を受けられる時代が到来する。
水島式顧客満足の考えでは、労働者の・スタッフの質が変化している認識を怠らない。
理由は経営者と労働者の知的水準に差が無くなってきたからである。ましてサービス経済
社会では、肉体労働から知的労働が求められる時代だからである。古い顧客満足を実施し
ている企業、潰れていく企業、顧客満足を理解していない企業は、いまだに命令と管理で
労働者のモチベーションを上げられると信じているのである。
③ 利益の根源はサービスのクオリティの高さである認識
顧客満足を理解していない企業は、企業の利益はサービスのクオリティの高さによって
得られるという考えは理解できない。モノを作れば売れる時代を過ごした企業は資本と労
働の生産性の高さが企業に利益をもたらしてきたからである。
水島式顧客満足では、企業の利益はサービスのクオリティの高さによるというのは、ヒ
トに役に立つことを提供して、顧客が満足する度合いを高めることが利益をもたらすとい
うことである。
水島式顧客満足では、クオリティは品質ではない。基準を満たすことである。さらにモ
ノのクオリティは客観的であるが、サービスのクオリティは受けてである顧客の主観的基
準こそが顧客満足である。
当然のことであるが、水島式顧客満足では満足した顧客が再購入をし、固定客から得意
客、さらに贔屓客になって生産の顧客を創り出すことによって企業に利益をもたらすとい
う筋書きの上にある。
-9-
水島式顧客満足の目的は長期的かつ継続的な利益の確保と維持にある。利益の確保と維
持の前提にある顧客満足を得ることが水島式顧客満足のすべての始まりである。
④ 顧客の概念の拡大
通常、お客や顧客と言えば、売り手の提供する商品やサービスに対して対価を払ってく
れる人、つまり、買い手を意味する。企業・組織が提供するものでベネフィット(広い意
味での利益・利便)を得る人はすべて顧客である。会社が提供する報酬に対して労働を提
供してベネフィットを受けている従業員も立派に顧客である。仕入先、運送業者も顧客、
税金を受け取ってベネフィットを得ている地方公共団体や国も広い意味での顧客である。
水島式顧客満足では、同時に顧客とお客の違いも認識することを前提条件に入れる。
⑤ カネ中心の経営からヒト中心経営への認識
バブル景気の経営は財務主導型の経営で財務優先であった。経営の資源であるヒト、カ
ネ、モノ、情報のうちでヒトは単なる労働力として扱われていた。もちろん、企業経営の
財務の重要性は変わらない。ただ財務一辺倒の経営は行き詰る。顧客も社内顧客である従
業員も個々が人格を持った人間であるという認識が水島式顧客満足を生かした経営を行う
際に今後の鍵になる。
⑥ 命令・監督からの権限付与による従業員の自主裁量権の拡大
顧客が満足する、感動することが企業の利益を生み出すなら、顧客との接点での顧客に
対する対応が極めて重要である。お客が顧客になるか、見捨てて競争相手にいってしまう
か、つまり会社・企業に利益を生み出すのか、または、損害を与えるのか、利益と損害の
分かれ目はすべて顧客との接点で発生する。
顧客は自分に接したあらゆるヒト、モノによって企業になんらかの印象を持ち、自分の
判断で評価する中には、当然、広告や新聞・テレビでの報道、業績の悪化、合併、新製品
の発表。さらに水島式顧客満足で重要なのは株価である。
顧客は自分に対応してくれたヒトを企業を代表するヒトと考える。社員であろうとパー
トであろうとアルバイトであろうと区別しない。顧客は何か問題が起こったときに直ちに
解決することを望んでいる。問題を解決する権限が与えられていたらたいていの問題は直
ちにで解決し顧客は満足し、感動する。
多くの企業はエンパワーメントを権限委譲と完全に勘違いしている。正しくは権限付与
である。一定の範囲内での自分の判断で社会的にも経済的にも自主的に行動する権限を与
えることである。
- 10 -
私が実際に経験した、エンパワーメントがある。中学 2 年の修学旅行で予定のフライト
がキャンセルされた時のサウスウエスト航空のジョン・ウエイン空港のカウンターの女性
は上司に相談することなく自分の判断で、顧客である私立森村学園の修学旅行生を予定通
りにサンホセへ行ける手配をしてくれた。
自分の判断で可能にしたのは、担当者が変わっても同じクオリティのサービスが提供で
きる全社的なシステムが整っていることが前提条件であるが、お客としては最初に接触し
た担当者で問題が解決すると信頼感が高まりその企業に更なる利益と信頼が生まれる。
⑦ 従業員の採用と教育への投資
水島式顧客満足ではヒトがすべてである。
モノを作る場合はヒトと付き合うのが嫌いな、内向的なヒトでも出来上がった製品のク
オリティに関係ない。しかし、感情に左右されるヒトにサービスを提供する場合は通用し
ない。サービスで求める人材は人間性の豊かさである。明るくて、親切で、心配りのでき
る、ヒトが喜ぶことを自分の喜びにすることができるヒトである。すべてのヒト・顧客が
満足するサービスを提供できるとは考えてはいけない。サービスには向くヒトと向かない
ヒトが歴然として存在する。
サービスが伝説になっているノードストローム、サウスウエスト航空、リッツ・カール
トン・ホテルなどのサービス一流企業は、「感じのいいヒト(ナイス・ピープル)に技術を
教えることができるが、技術を持っているヒトをナイスにすることはできない。
」カラスの
中から九官鳥を探す努力が経営者に必要である。
サービスのクオリティを向上させ維持するためには従業員の教育に投資をすることが必
要である。企業は設備への投資は惜しまないが、従業員の教育にはお金を惜しむ。
父の企業の友達に色々と聞いてみたところ組織的な教育プログラムをもっている企業は
極めて少ない。
⑧ 従業員(社内顧客)満足なしに顧客の感動は生まれない
「顧客満足はわかるが従業員の満足はどうなる」というのが従来の顧客満足の大きな問
題点の 1 つであると私は説いた。従業員は社内顧客という顧客であるという考えに立てば、
従業員の満足は優先させるべきである。
『顧客は二番目』というタイトルの本を読みました。
結論から言うと「従業員が満足しなければ顧客が満足することはあり得ない」ということ
である。
顧客の客離れ 0 を目指すと同じように、従業員の離職率を減らすこと、従業員の定着率
を高めることが必要である。日本の企業はアメリカの企業のように従業員の離職率に関心
- 11 -
はなかったが、労働市場の流動化と終身雇用制の崩壊から今後は従業員の定着性をいかに
高めるかが水島式顧客満足の大きな目的の一つである。働きやすい、自分の能力を評価し
てくれる企業に有能な人材が移動していく傾向が減少していく。
『経営資本の力』という本で「顧客が満足すれば従業員は満足するから顧客満足と従業
員満足は一致する」とある。全くの逆である。
従業員の満足を高める第一は、顧客満足という観点からその従業員の業務を出来るだけ
客観的に評価するシステムを作る。まずは、従業員を認めることが大切である。ヒトに認
められたいことが最大のモチベーションである。水島式顧客満足を完成させるためには、
まず社内顧客である従業員の満足を高めなければならない。顧客満足を理解していない企
業は、顧客は店につくものではなくヒトにつくという事実を経営者は見逃しがちである。
多くの企業、とくにサービス業では高い離職率を前提にした人事政策をとり、結果とし
て経済的な潜在力を失っている。従業員の定着の経済性を表すデータはありませんが、
(株)
水島商事では、客離れを 5%減らすと利益が 2 倍になるという原則がある。
原則は、社内顧客である従業員にも株主にも当てはまる原則である。従業員がその企業
に長く勤めれば勤めるほど仕事に慣れ、多くのことを学び、企業にとって大切になる。と
くに顧客に接する従業員は顧客の評価に大きな影響を及ぼす。顧客が接するのは従業員。
価格も性能も品揃えも競合社と差がなければ、顧客を据えていた従業員が辞めてしまえば
せっかく築いた顧客とのいい関係は消滅する。
顧客の評価を高めようとしてもうまくいかない最大の理由は従業員の企業に対する評価
の重要性を経営者が理解していないことである。水島式顧客満足を実施するにあたって顧
客を喜ばせることを得意とする担当者を配置替えしたり、辞めさせてしまっては元も子も
ない。もちろん人事政策は企業にとって重要な問題であるが、企業都合が最優先して、顧
客の立場からの人事政策は全く考慮に入れないのが一般的である。顧客は店についてくれ
るものではなく、ヒトについている。
父と話をした時に親切に接客をしてくれた店員が辞めたり転勤したことが原因で、その
店に行かなくなったことがあると聞いた。父はみずほ銀行では一人のお客の担当者が父の
顧客と一生制度を作りこの問題を個人的に解決した。
水島式顧客満足では、担当者と顧客の間に制度を作り評価を上げようと思う。
⑨ 企業の目的は顧客との信頼関係によってもたらす長期的な継続的な利益の確保と維持
であることの認識
企業を経営していれば今月の売り上げ・利益が最大の関心事である。父の話を参考にす
ると、目の前の海には魚はいない。いくら網を投げても魚穫量は減ってきた。漁師が増え
たのと新しい最新式の漁法を使ってくるので、資源が枯渇している。いかに魚を囲い込み、
育てるか、水産業はいち早くそれに気づき、方向の転換をして養殖漁業に力を入れた。成
- 12 -
果は期待通りの大成功である。
水島式顧客満足では、水産業の例を生かし収穫のマーケティングを撤廃して。養殖のマ
ーケティングを実施し、顧客を一生繋ぎとめる経営を実施すべきである。
水島式顧客満足・21 世紀の企業の目的は提供する商品・サービスはもちろん経営理念か
ら接客態度まで含めて顧客の期待に応え、期待を上回る満足を継続的に提供して顧客との
信頼関係を築き上げ維持する事によって適正な利益を社会に貢献することである。信頼関
係を築き上げる基本条件が顧客が満足することであり、さらに顧客との感動の分かち合い
によって目的が達成できる。
3-4
水島式顧客満足の具体的展開
水島式顧客満足へ踏み切る条件は整った。経営者も理解した、社内の従業員も理解を得
た、水島式顧客満足を目指そう、という段階にきた後の問題は水島式顧客満足を具体的に
どう展開するかにかかっている。
事実、実際の日常の業務の中で展開していくプログラムになるとどうしたらわからない。
どこの企業でも CS 推進の部門での最大の問題点であることは、父や企業の CS 担当者の友
人からよく聞かされる。
この問題点を水島式顧客満足として解決する。
まず、重要なポイントが 2 つある
・すべての業務を絶えず顧客の視点で見つめ、評価すること。つまり、あらゆる状況で発
生する問題を自分がお客だったらどう感じるかという視点を経営者から現場の従業員ま
ですべてが持ち続けることである。
・製品の場合、お客は成果を評価するだけだが、サービスの場合には成果の評価と同時に
それに至るプロセスも併せ評価するということである。
以上 2 点をしっかりと踏まえて、水島式顧客満足の具体的展開をしていく。
水島式顧客満足具体的展開の 4 つのポイント
ミッション・ステートメントの明文化・徹底化をすることで、以下の 4 つのポイントを徹
底化することができる。
- 13 -
① 完結型サービス提供システムの構築
② 社内顧客、共同経営者としての従業員の位置づけ
③ 情報公開の徹底化と開かれたコミュニケーション
④ 競合社との比較を視野に入れた顧客視点による業務評価基準の明確化
水島式顧客満足具体的展開の 4 つのポイントの見解
ミッション・ステートメントの明文化・徹底化とは
ミッション・ステートメントは全社員の行動規範である
ミッション・ステートメントとは、単に社訓といったものではない。経営理念も含まれ
るが、企業行動の約束、その具体的な指針である。日本で顧客満足の理解が適当な理由の
一つはミッション・ステートメントがない、あってもそれが日常の業務の中に埋没してし
まって忘れられているからである。
『消費者対応論』という本の調査結果によると、58 社回答社のうち、10 社、3 割が「な
い」あるいは「無記入」である。「社外に公表していない」社が 2 社あった。ミッション・
ステートメントとは抽象的な経営理念ではない。企業の存在目的の簡潔な表明であり、企
業の規範であり、具体的に行動に移せるもので、誰にでも理解できるものでなければなら
ない。
水島式顧客満足では、解決するためにマーケティング学者のフィリップ・コトラーの定
義を使わせていただく。
フィリップ・コトラーの定義
「組織の目的についての声明、一般的に組織が成就したいと望んでいること」
フィリップ・コトラーの定義を企業が認識することで、経営者から従業員までミッショ
ン・ステートメントを理解し業務に専念することができる。
ミッション・ステートメントの事例
ミッション・ステートメントの企業行動で一番身近な企業はドミノ・ピザである。有名
なドミノ・ピザのミッション・ステートメントは次の通りである。
- 14 -
ドミノ・ピザのミッション・ステートメント
「高いクオリティのピザを適切な価格で温かいうちに 30 分以内で配達すること」
① ドミノの店にはテーブルがない。店内でお客に食べさせるとスピード配達の妨げになる。
② 物流がドミノ・ピザのミッションを支えている。地域のセンターで事前に基本食材を用
意し、各店に二日に一度配達する。
③ メニューは簡単。ピザの大きさは大・小の 2 種類しかない。
④ 店舗は最大限のスピードで調理できるように設計し、ピザが電話で注文が入ると速やか
に作られるようになっている。
⑤ 焼けすぎを防ぐためにタイマーと温度調節のできる自動オーブンを設置している。
⑥ 可能な限り迅速に届けるために配達先のルートは事前に調べ上げている。
⑦ ピザが壊れないように、さめないように工夫がしている。
ほとんどの宅配ピザ業者はこのやり方を実施しているが、ドミノ・ピザが初めてこの方式
を生み出したときは明らかに①~⑦のミッション・ステートメントによって判断したもの
である。
ドミノ・ピザの創業者、トム・モナハンは「会社ではすべてこのミッション・ステート
メントに従ってやるべきか、やらざるべきかを決定する」といっている。
水島式顧客満足ではミッション・ステートメントの徹底化を図り、経営者・従業員の意
志の統一と具体的な指針のもと誰にでも理解でき判断の基準にできるミッション・ステー
トメントの重要性を水島式顧客満足で説く
① 完結型サービス・システムの構築
サービスはシステムとして考えなければならないとあるが。反論が多い。サービスはそ
れぞれサービス提供者の気持ちでやるべきだから、システムにすべきではないという意見
が顧客満足を理解していない企業が反対する。
従業員に権限を与え自主性を尊重することがお客を圧倒するすばらしいサービスを提供
するわけですから、システムでサービスを提供すると言われると機械的な、サービス提供
をイメージしがちである。水島式顧客満足でいう、サービスのシステム化というのは仕組
み・仕掛けである。世界を見渡しても完結型サービス・システムの構築を実施しているの
は私の知っている限りノードストロームがある。
- 15 -
ノードストロームの完結型サービス・システムの構築事例
ノードストロームの販売員の給料は 95%が売り上げに対する歩合である。お客の購入高
に比例して収入が増えるわけですから歩合制にすれば売る気になる。歩合はいきすぎにな
るとハードセールの弊害が出る。しかし、ノードストロームのすごいところはハードセー
ルにならない仕掛けがある。返品自由の制度である。無理やりにお客に買わせても、返品
自由ですから返品されればコミッションは当然入ってこない。ノードストロームには大体 4
店に 1 点の割合で「ラック」というアウトレットがある。季節外れ、流行遅れ、返品され
た品物を処分する店である。さらにアウトレットのアウトレットがアリゾナ州にある。「ラ
スト・チャンス」という。店ではシステムが顧客の視点でできているからうまく回るので
ある。
お客は店につくのではなくヒトにつく。顧客に信頼がある販売員が辞めてしまったら客
離れを起こして客は減る。辞めなくても休みを取っていればお客はがっかりする。水島式
顧客満足では、解決するためにシステムを活用する。チームで対応できるように仕掛けを
作って対応する。お客の失望はかなり減る。チームで対応し成功した企業にはゼロックス
などがある。
『カスタマー・ロイヤリティの経営』という本に日本の企業の風土はアメリカ
よりチーム行動に向いているにもかかわらず、担当者がいなければなにもわからない企業
が多すぎると説いている。顧客満足を理解せずに客第一を無視し考え方が企業よりである
と思う。
② 社内顧客、共同経営者としての従業員の位置づけ
社内顧客の問題は水島式顧客満足ではかなりの重要度を占める。次章の「顧客満足にお
けるヒトの位置づけ」
、で詳しく述べる。結論から言うと従業員をこれまでの使用人、被雇
用者という位置づけから、事業を展開していく上でのパートナー、共同経営者と位置づけ
なければならないということである。
③ 情報公開の徹底化と開かれたコミュニケーション
水島式顧客満足の鍵はコミュニケーションと情報公開にある。顧客が製品・サービス提
供する企業に対して信頼を抱かなければ顧客の獲得、維持はできない。時代は顧客が企業
を選ぶ時代である。顧客の選択の基準は信頼である。当たり前であるがいい加減な商品、
当てにならないサービスでは信頼の獲得はない。
獲得は社外顧客に対してばかりではない。社内顧客である従業員に対してはとくに情報
公開の徹底とコミュニケーションは重要である。親戚の伯父さんも日産自動車の大幅なリ
- 16 -
ストラ計画を朝、配達された新聞で初めて自分の会社の運命を知ったといっていた。
「会社には研究開発などのマル秘事項以外に隠すものはない。会社に対する疑心暗鬼が
社員のやる気を失わせる最大の敵だ」役員報酬までガラス張り「隠し事ゼロ」の経営を実
行している GL サイエンスの森憲司社長と水島商事の水島タエ子は言う。実際に水島タエ子
は自分の給料と会社の年商を社員に発表している。メーカーの販売代理人から顧客の購買
代理人という大胆な顧客主導経営を実践している㈱ミスミの田口弘社長はこの問題の重要
性を自ら書いて『隠すな』という本を日本経済新聞社から出している。
水島式顧客満足では社内顧客である従業員に対してはとくに情報公開の徹底とコミュニ
ケーションは重要である。
④ 顧客視点による業務評価基準の明確化
顧客サービスの分野は販売と違って実際の数字でプロセスや成果を評価することが出来
ない。サービスの場合、商品と違って成果に対する評価だけでなく、プラス成果を手にす
るプロセスの評価が求められている。
企業の重役会議の議題は数字だらけである。実際に父の会社の重役会議に参加したが数
字だらけの資料が配布された。水島式顧客満足ではどんな素晴らしい成果を顧客満足だけ
で上げるのではなく数字であげるべきだと考える。
企業では PDCA(計画・実施・検証・評価)が行わなければならない。⑤では疑問が残
る、顧客サービスの分野で評価を数字化することは可能なのかということである。
水島式顧客満足では可能である。
日本で顧客満足に関心・実施を行っている企業では、従業員の業績評価に顧客からのお
褒めの言葉や仲間・同僚・上司の推薦という形で、顧客が満足した場合の評価をしている
ところが増えてきた。これでは客観性に欠けるし、評価の質のばらつきを避けることはで
きない。
水島式顧客満足では、顧客のサービスのクオリティを数字で評価することで顧客満足を
定着させ、さらに継続性をもたせ、顧客サービスの利益貢献度を明らかにし、公正な従業
員の業務査定を行う意味で極めて重要視する。
クロネコヤマトの顧客サービスの評価の数字化
顧客サービスの評価を数字で実施している企業にクロネコヤマトのヤマト運輸に話を聞
きに行った。
具体的なサービスレベルを指標として翌日配達未達成率である。クール宅急便では温度
管理の不良率を指標にしている。クロネコヤマト指標はサービスのレベルを保つ上で大変
- 17 -
有効であると教えていただいた。注意点はサービスレベルの指標が企業の視点で作ってい
ることが多いということである。ヤマト運輸も前はそうだった。都内 23 区の翌日未達率が
高いことがわかった。1 番の原因は配達先の不在によるものである。企業論理で考えると配
達に行ったのに留守で渡せなかったのはお客に責任があると考える。一方、お客の企業論
理はたまたま不在の時に届けてきたクロネコに責任があると言う。しかし、サービスレベ
ルを維持できない。対策としてクロネコでは不在対策から在宅時配達という顧客の視点に
立った考え方に切り替えた。
顧客サービスの業務をいかに顧客の視点で競合社と比較しながら、日常的にサービスレ
ベルをチェックする方法はすでにアメリカの企業にでは日常業務に取り込まれている。
水島式顧客満足によるミッション・ステートメント作成の仕方
ミッション・ステートメントが企業と顧客満足にとっていかに重要かは述べた。水島式
顧客満足ではさらに具体的な問題を付け加えてよりミッション・ステートメントをより高
い位置へもっていく。
今現在、企業が行っているミッション・ステートメント作成の仕方
①必ずしも短い必要はないが、シンプルであること。
②社内の意見をできるだけ広く集めること。
③外部の力をうまく活用すれば、明快さと新鮮なものの見方を持ち込むことができる。
④言葉づかいや語調には、会社の性格や姿勢を反映させること。
⑤可能な限りの手段をつくし、必要なだけの言語をつかって、ミッション・ステートメン
トを全社員が共有できるようにすること。つねに人びとの目に触れるようにすること。
⑥ミッション・ステートメントを指針として活用すること。常に見直しを怠らず、社員の
評価にも取りいれること。経営者は、いつもそれを口にしつづけ、実践しつづけなけれ
ばならない。
①~⑥が今企業が行っているミッション・ステートメント作成の仕方であるが難しく経
営者・管理者の経営理念を従業員が理解しにくいという弱点がある。
現在、日本では顧客満足経営を実施している企業が、全企業で 75.90%に達しているが顧
客が満足し、なおかつ従業員(バイトを含む)が満足している企業は少ない。
失敗理由②
明快かつ実行しうるミッション・ステートメントがないこと、あっても実務に浸透させる
- 18 -
ことの重要性の認識不足により的確なサービスを行えない。
結
果
従業員の不満足度が上がり顧客が満足できるサービスを行えない、企業の利益が上がら
ない。企業の存続が危うくなる。
ミッション・ステートメ
失敗理由②解決策
ントとは。
ミッション・ステートメントの明文化・徹底化を行うことにより
企業活動のあらゆる面に
従業員全体(バイトを含み)企業がどの顧客をターゲットに戦略
おける企業の目標、ビジ
していくか、企業が何を求めているかをはっきりするので、従業
ョン、姿勢、社風、戦略
員が顧客に対して間違ったサービスをせず、企業の利益につなが
などを端的に表現した宣
るサービスを行うことができる。
伝文。
結
果
・
完結型サービス提供システムの構築
・
社内顧客、共同経営社としての従業員の位置づけ
・
情報公開の徹底化と開かれたコミュニケーション
・
競合社との比較を視野に入れた顧客視点による業務評価基準の明確化
※
上の 4 つが確立され、より高度な顧客満足経営が行え、企業に継続的な利益をも
たらすことができる。
水島式顧客満足で解決すると以下のようになる。
・水島式顧客満足によるミッション・ステートメント作成の基本
水島式顧客満足によるミッション・ステートメント作成にあたって、①~④の質問に答
えていただく。
① 我々の存在理由は何か
② 顧客はだれか
- 19 -
③ その顧客の求めている価値はなにか
④ その価値に答える顧客満足・ビジネスはなにか
企業の全社員が①~④の質問を解くことにより、企業の指標がみえてくる。
水島式顧客満足によるミッション・ステートメントの詳細
解決策:ミッション・ステートメントの明文化・徹底化
結果:完結型サービス提供の構築
社内顧客、共同経営者としての従業員の位置づけ
情報公開の徹底化と開いたコミュニケーション
競合社との比較を視野に入れた顧客視点による業務評価基準の明確化
※4 つの項目が改善される。
ミッション・ステートメントとは
目的:問題点②の解決である。ミッション・ステートメントを明文化し徹底することで従
業員が企業の指標を認識し、顧客が満足するにはどうしたらいいと自分で判断でき
実行できる。ミッション・ステートメントが明文化してないのに顧客満足と言われ
ても従業員はストレスが溜まり CS アレルギーを起こす。CS アレルギーを起こさせ
ないためにはミッション・ステートメントが重要であることの認識を示す。
ミッション・ステートメントとは
・全社員の行動模範。
・ミッション・ステートメントとは、単に社訓と言ったものではない。経営理念も含み、
企業行動の約束、企業の具体的な指針である。
※わが国の企業ではすべての従業員が理解し基づいて行動を起こせる明快なミッション・
ステートメントを備えている企業は一部の外資系企業(リッツ・カールトンやジョンソ
ン・アンド・ジョンソン・メディカル)を除いてほとんどない。
- 20 -
ミッション・ステートメントの成功事例
例:ザ・リッツ・カールトン・ホテルのミッション・ステートメント
① リッツ・カールトン・ホテルはミーティング・プランナーに好むホテルとなる。
ミーティング・プランナーなど、特定の顧客に対するサービスの改善あげることができ、
ミーティング・プランナーがもたらすリッツ・カールトン・ホテルにとって大きな収入
源である。それだけの収入源がある以上、彼らの期待に添うには何をすべきか明記して
おく必要がある。
② プランナーの立場に立ち、考えられる問題は速やかに解消する
ミーティング・プランナーはさまざまな顧客を抱えており、私たちは、個々の顧客に
合わせて一緒にプランを練っていきます。会議はホテルにとって、非常に大切なビジ
ネスである。だからホテルの人間すべてにその重要さを認識してもらい、プランナー
のニーズを理解していただくにミッション・ステートメントでも大きく扱っている。
③ 上得意客には、その人のビジネス目的に合わせた個別的な配慮と、特別な商品・サービ
スを提供する。
リッツ・カールトン・ホテルの上得意客とは常にホテルを利用している企業を指す、
彼らのロイヤリティを維持することが成功の鍵であると考えている。
④ リッツ・カールトン・ホテルは、心からゲストをもてなし、彼らに快適に過ごしてもら
うことを最大の使命とする。
場所柄、各ホテルの異なったニーズを抱えるため、リッツ・カールトン・ホテルでは
会社のミッション・ステートメントの他に、ホテルごとのステートメントも作成して
いる。
ミッション・ステートメントはリッツ・カールトン・ホテルで従業員の一人が常に持参し
ている例です。
- 21 -
① あたたかい心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びするように心がけます。
② お客様のニーズを先読みしお応えします。
③ 感じのよいお見送りを。さよならのごあいさつは心をこめて。できるだけお客様の名前
をそえるよう心がけます。
従業員がミッション・ステートメントを理解し実行するだけでリッツ・カールトン・ホテ
ルはゲストの 98 パーセントが満足しているという結果が出ている。現在のリッツ・カール
トン・ホテル・カンパニーは 10 年の間に世界中の 30 ヶ所に増やし、従業員 14000 人をか
かえる企業なった。
ミッション・ステートメントを更なる高みへ①
定義:抽象的な経営理念ではない。企業の存在目的の簡潔な表明であり、企業全体の模範
であり、具体的に行動に移せるもので、誰にでも理解できるものでなければならな
い。
採用:フィリップ・コトラーの定義「組織の目的についての声明、一般的に組織が成就し
たいと望んでいること」
合↓
体
従来のミッション・ステートメントに盛り込む
結
果
経営者から従業員までミッション・ステートメントを理解し業務に専念することができる。
ミッション・ステートメントを更なる高みへ②
基本:水島式顧客満足によるミッション・ステートメント作成にあたり、①~④の設問に
答えていただく。
① 我々の存在理由は何か
② 顧客は誰か
③ 顧客の求めている価値は何か
④ 価値に答える顧客満足・ビジネスはなにか
- 22 -
※この設問に経営者・管理職に答えていただくことミッション・ステートメントを作成す
る上で経営理念と指標と企業の価値を認識し、従業員と顧客に企業価値を理解させるこ
とができる。
ルール①:必ずしも短い必要はないが、シンプルであること。
ルール②:社内の意見をできるだけ広く集めること。
ルール③:文体・表現の力をうまく活用すれば、明快さと新鮮なものの見方を持ち込むこ
とができる。
ルール④:言葉使いや語調には、会社の性格や姿勢を反映させること
ルール⑤:可能な限りの手段を尽くし、また必要な言語だけを使って、ミッション・ステ
ートメントを全社員が共有できるようにすること。常にヒト(社内・社外)の
目に触れるようにすること。
ルール⑥:ミッション・ステートメントを指針として活用すること。常に見直しを怠らず
に、社員の評価に取り入れること。経営者は、いつもそれを口にしつづけ、実
践しつづけなければならない。
※ルールを守ることで企業の指標を見失わずにミッション・ステートメントを作成するこ
とができる。管理職・従業員・バイトに至るまで、企業の存在価値を一人ひとりが認識
し、サービスを間違わない。
3-5
顧客満足と水島式顧客満足の比較
顧客満足
定義
1、 提供された商品・サービスさらに提供者の理念などについて顧客が自分自身の基準に
よって納得の得られるクオリティと価値をみいだすこと
2、 顧客が取引条件を受け入れたときに意識した有効選好と取引条件の差がその購入する
製品に期待する成果であり、顧客が満足するのはその製品のサービスが使用時に期待
した成果に等しい、あるいは大きいときであること
3、 作業成果が顧客の期待を満たしているかもしくはそれを上回るようにするため,顧客
ニーズを理解し,且つそれをプロジェクトの作業努力に反映させるよう調整すること
- 23 -
水島式顧客満足
定義
顧客志向 単にお客様に顔を向けている状態。漠然と顧客を意識している状態である。
顧客焦点 ある特定のターゲットになる顧客を意識する。
上の 2 つは企業の立場から距離を置いて顧客を見ている概念である。
顧客主導
マーケットの主導権が企業から顧客に移った事を意識することである。企業が顧
客から選ばれる時代の認識を怠らない
顧客中心
企業経営の中心に顧客(社外顧客と社内顧客)を据えて会社の組織、
戦略、構造を組み立てる考え方である。
+
従来の顧客満足
比較
顧客満足
広い範囲で顧客を獲得しようとしているので、本当の満足を与えられない
企業が顧客ばかり意識しすぎていて、企業内部で従業員不満足度が UP
従業員不満足度が UP することで、顧客に十分な満足を与えられない
企業の最大の目的である、継続的な長期的な利益が得られない
企業の存在価値が無くなる場合もある(倒産)
水島式顧客満足
顧客志向・顧客焦点を意識することで、ターゲットを絞り世代別、男女別など細かく満足
を与えることができる
ターゲットを絞り、顧客主導・顧客中心を意識し、社内顧客を満足させることを考えた上
で会社の組織、戦略、構造を組み立てる考えることができる。
企業内部で従業員不満足度が UP することがなく、顧客に十分な満足を与えることができる
- 24 -
企業の最大の目的である、継続的な長期的な利益が得られる
企業の存在価値が認められる
結果
・ 従来の顧客満足に顧客志向・顧客焦点・顧客主導・顧客中心を盛り込むことで、タ
ーゲットを絞り世代別、男女別などに細かく満足を与えることができる。
・ 社内顧客を意識し、企業の組織・戦略・構造を組み立てるので従業員不満足度が UP
することがなく、顧客に十分な満足を与えることができる。
・ 結果、企業の最大の目的である、継続的な長期的な利益を得ることができる
参考文献
・ T.K.コネラン&R.ゼンケ著 『一生の顧客は最高の利益を生む』 和田和春訳 ダイヤ
モンド社
1999
・ パトリシア・ジョーンズ&ラリーカハナー著『世界最強の社訓~ミッション・ステート
メントが会社を救う~』 講談社 2001
・ 顧客満足ってなぁに? 佐藤知恭 著
・ 続顧客満足ってなぁに? 佐藤知恭 著
・ 「顧客満足」を超えるマーケティング 佐藤知恭 著
・
帝国バンク個別倒産集計表
- 25 -