現代青年の動機づけと仕事における評価

現代青年の動機づけと仕事における評価
- 大学生の動機づけと仕事での評価との関連 -
牧野幸志
(摂南大学 経営学部)
キーワード:動機づけ,仕事における評価,大学生
The Motivation and Evaluation at the Workplace of Contemporary Adolescents
Koshi MAKINO
(Faculty of Business Administration, Setsunan University)
Key Words: Motivation, Evaluation at the Workplace, University Students
目 的
本研究の最終的な目的は,現代青年の仕事への動機づけの
規定因,仕事場でのコミュニケーション・スキルと仕事での
成果との関連を検討することである。本研究では仕事の規定
因の中から個人特性の一般的達成動機を取り上げ,仕事にお
ける評価との関連性を検討する。現代青年の中でも大学生を
対象とし,一般的な動機づけと仕事における評価との関連性
を検討する。仕事における評価は,自己評価と周りからの評
価を区別する。まず,現代青年の一般的な動機づけと仕事で
の評価との関連を調べる。どのような動機づけが仕事での評
価と関連しているのかを検討する。次に,各動機づけの高低
により,仕事における評価が異なるのかを検討する。どのよ
うな動機づけが仕事の成果と関連するかを調べることで,仕
事への評価に影響を与える動機づけの要因が明らかになると
考えられる。
方 法
調査参加者 調査参加者は大阪府内の大学生 133 名(男性
95 名,女性 38 名,年齢幅 18~22 歳,平均年齢 19.56 歳)。
ただし,欠損値があるため分析により人数が異なる。
調査項目の構成 動機づけに関する項目 承認欲求 日本
版承認欲求尺度(植田・吉森, 1990)に「まったくあてはまら
ない~非常にあてはまる」で回答(20 項目,5 段階評定,1
因子構造) 達成動機 達成動機尺度(堀野, 1987)に「まっ
たくあてはまらない~非常にあてはまる」で回答(23 項目,
5 段階評定,3 因子構造) 仕事における評価 自己評価 職
場での仕事に関する自己評価に「まったくあてはまらない~
非常にあてはまる」で回答(5 項目,1 因子構造) 周りから
の評価 職場での仕事に関する周りからの評価に「まったく
あてはまらない~非常にあてはまる」で回答(5 項目,1 因子
構造)。数値が高いほど,その程度が高いことを示す。
結 果 と 考 察
現代青年の動機づけと仕事における評価との関連
現代青年の一般的な動機づけと仕事場での評価との関連を
検討するために相関分析を行った(表 1 参照)。承認欲求,3
つの達成動機(社会的達成,個人的達成,挑戦・成功)と仕事
に関する 2 つの評価との間の相関を求めた。相関分析の結
果,個人的達成欲求と仕事に関する自己評価との間に有意な
正の相関がみられた。つまり,個人的な目標を持ち努力する
動機が高い人ほど,仕事に関する自己評価が高かった。自分
の目標を決めて努力する動機が働き,仕事においても成果を
あげ,自己評価が高いのであろう。また,個人的達成欲求,
挑戦・成功欲求と周りからの評価との間に有意な正の相関が
みられた。つまり,個人的な目標を持ち努力する動機や何か
に挑戦し成し遂げようとする動機が高い人ほど,職場におけ
る仕事に関する周りからの評価が高いことが明らかとなっ
た。自分の目標を持って努力すること,何かに挑戦する気持
ちが,仕事に対する動機づけを高め,周りからの評価を高め
たと考えられる。他方,人から肯定的な評価を受けたい,あ
るいは人に悪く評価されるのを避けたいという承認欲求や社
会から称賛されたいという社会的達成動機は,仕事での自己
評価や周りからの評価とはほとんど関連はみられなかった。
現代青年の動機づけの高低による仕事における評価の差異
現代青年の 4 つの動機づけの高低(高群,低群)により,仕
事に関する評価(自己評価,周りからの評価)が異なるのかを
検討するため 1 要因 2 水準の分散分析を行った。
承認欲求と仕事評価 承認欲求の高低により仕事に関する
評価が異なるかを検討した。その結果,2 つの評価に有意差
はみられなかった。承認欲求の高低により,自己評価も周り
からの評価も異ならなかった。
社会的達成欲求と仕事評価 社会的達成欲求の高低により
仕事に関する評価が異なるかを検討した。その結果,2 つの
評価に有意差はみられなかった。社会的達成欲求の高低によ
り,自己評価も周りからの評価も異ならなかった。
個人的達成欲求と仕事評価 個人的達成欲求の高低により
仕事に関する評価が異なるかを検討した。その結果,自己評
価において有意差がみられた(F (1, 131)=8.22, p <.01)。
個人的達成欲求が高い人は,低い人と比べて,仕事での自己
評価が高かった。つまり,個人的に目標を決めて努力する動
機づけの高い人は,仕事での自己評価が高かった。
挑戦・成功欲求と仕事評価 挑戦・成功欲求の高低により
仕事に関する評価が異なるかを検討した。その結果,2 つの
評価に有意差はみられなかった。挑戦・成功欲求の高低によ
り,自己評価も周りからの評価も異ならなかった。
全体として,個人的達成欲求の高い人は仕事における評価
が高かった。これは,おそらく個人的な目標を持ち努力する
動機が高い人は,仕事に対する動機づけも高く,成果を上げ
ており,仕事において高い評価を得ていると予想される。
表 1 現代青年の動機づけと仕事における評価との相関関係
一般的達成動機
承認欲求
仕事評価
社会的
個人的
挑戦成功
自己評価
-.01
.16
.28**
.17
周りの評価
-.05
.16
.29**
.25**
注)
**
p <.01, N =133, 数値は相関係数