第 21 回　「競走中止の事例①　～心房細動のお話～」この号が発行される週には夏のローカル競馬開催がありましたが、このうち競馬で心房細動の発症がも終了し、関東・関西ともに本場開催が再開となり確認されたものは28頭でした。昨年１年間で競馬にます。ローカル競馬開催は各競馬場の特色が色濃く出走した競走馬の延べ頭数は48,967頭ですので、発出て、競馬ファンの皆様だけではなく我々出張職員症率は0.057％ということになります。そのなかの一にとっても楽しみな競馬開催ですが、こうした形態頭が、昨年11月６日京都競馬場で行なわれた「みやはアメリカ競馬でも東海岸では夏のサラトガ開催、西こステークス」競走に出走したゴルトブリッツ号で海岸ではデルマー開催といった夏ならではローカルす。３番人気での出走にも関わらす大きく遅れた15 色豊かな競馬開催が行われています。着入線と成績が振るいませんでしたが、レース中に横田貞夫（よこた　さだお）――――――――――――――――――――――― さて、今回は今年のローカル競馬においてみられ心房細動を発症していたことが判りました。その後た「競走中止」の事例について紹介したいと思います。は心房細動も治癒し、３連勝で帝王賞を制したこと～競走中止～今年の第２回福島競馬開催、第６日目の第８競走。は記憶に新しいところです。（…と原稿をまとめている時に、放牧先で腸捻転を発症して死亡したという報が入ってきました。これからの活躍が期待されて藤田騎手鞍上のビップセレブアイ号は勝負どころのいただけに大変残念なことです。ご冥福をお祈りし４コーナーにかかる際に失速して外側に逃避。そのます。）後急に内側の埒に向かって突進し埒を壊して転倒、この心房細動という症状。レース直後に事故馬救競走中止となりました。藤田騎手は埒に激突する直護係の獣医職員が聴診した時には心音不整であって前に飛び下り、幸い大事には至りませんでした。当も、競走馬診療所まで歩いて戻っていくほんの10分初は何が起こったのか不明でしたが、当該馬は転倒ほどの間に正常に復してしまう場合があります。こしたものの歩様には異状を認めず、診断の結果は「心のように心電図で確認できなかった場合でも、事故房細動」でした。馬救護係の診断をもって心房細動と診断しています。当日の競走成績には『ビップセレブアイ号は、競発作性の心房細動は自然に治癒することが多く、出走中に疾病〔心房細動〕を発症し、4コーナーで転倒走当日は栗東トレセンに戻っても心房細動が治ってしたため競走中止。』と記載されています。ＪＲＡのいない状態でも、翌日には正常に復しているものがホームページ上で、２回福島競馬第６日目第８競走大半です。レース翌日になっても正常に復していなのレース結果のパトロールビデオをご覧いただくこいものは自然治癒の望みが薄く、心電図で慎重にモとができますが、競走中止したビップセレブアイ号ニターしながら投薬して治療することになります。が４コーナーに差し掛かったところで尻尾を挙げながら外側に逃避していく姿を確認することができま～出走診断～す。心房細動を発症すると、体内を巡る血液量が一心房細動を発症した競走馬の記録は、競走馬診療気に激減することから苦しくなり、尻尾を挙げる所所の電子カルテ上に残されます。心房細動を発症し作は時々確認されるところです。ゴール板手前で、騎て次に出走する際には、出走週の追い切り調教時に手の鞭に反応して尻尾を振り回す出走馬もいますが、テープ心電計を背負って追い切り調教を実施し、そその状態とは明らかに異なる尻尾を挙上する姿を確の調教状態ならびに心電図上に何ら問題が無いこと認することができます。を確認したうえで出走が許可されます。～心房細動～心房細動を発症した競走馬が、再び心房細動を発症する例は多くはありませんが少なからずあります。「心房細動」という病名は、競馬ファンの皆さんも私が入会した30年近く前、当時はまだ数少なかった耳にされたことがあるかと思いますが、この病気は芦毛の誘導馬で、人気を背負って凡走した時には必心臓の拍動のリズムを司っているペースメーカーにず心房細動を発症していた元競走馬がいました。過異状を来たし、血液を送り出している心室ではなく、去25年を遡ってみると、心房細動発症馬は650頭ほど体内を巡っている血液が心臓に戻ってくる心房といいましたが、そのうちの31頭では複数回の発症を確うところが痙攣を起こしたような状態になるもので認しています。発作性の心房細動というのは単発で、す。きちんとした収縮活動ができなくなることから、その時限りのものですが、繰り返して発症する競走心室から体内に送り出される血液量は通常の80％く馬は心臓に器質的な問題を抱えている可能性がある獣医学専攻を修了し、らいになり、この状態が競走中に突然起これば、出かも知れません。 1984年日本中央競馬会走馬は尻尾を挙げるほど苦しくなり、一気に失速す栗東トレーニング・センター競走馬診療所　所長。昭和35年生まれ。岐阜大学大学院　農学研究科（現ＪＲＡ）入会。美浦トレーニングセンター競走馬診療所に７年、栗東トレーニングセンター競走馬診療所に８年、ＪＲＡ本部馬事部防疫課・獣医課にることになります。心房細動を発症した出走馬に騎乗していた騎手からは、「突然、手応えが無くなった。」とか「鞭を振るっても反応しなかった。」という話を聞きますが、自転車に乗っていて突然チェーンが外れた感じとい 11年勤務して、う話も聞きます。エンジンである心臓が急に働かな 2010年３月から現職。くなるわけですから、この感想は的を射ていると思います。この心房細動。ＪＲＡでは昨年は35頭の発症報告次回は今年のローカル競馬で見られた競走中止の事例をもう一例紹介したいと思います。公開されたパトロール映像では、『心房細動』を発症したビップセレブアイ号が馬群から遅れていく際に尻尾を挙上する姿を確認することができます。次回は９月24日発行号