公共サービスの民間開放等による ビジネス創造への

公共サービスの民間開放等による
ビジネス創造への中小企業参入機会
拡大検討調査
報 告 書
【概 要 版】
平成19年3月
財団法人 大阪市都市型産業振興センター
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1 調査の概要
調査の背景・目的
調査内容
背景:・規制改革における公民連携の制度化 ⇒“民間にできることは民間に任せる”
・大阪市の行財政改革 ⇒ 公共サービスの効率的・効果的な提供
目的:民間事業者の公共サービスへの参入可能性の検討によるビジネスチャンスの創造
① 公共サービスの民間開放等をめぐる状況
・背景・経緯を示し、公共サービスの民間開放の諸制度を比較・整理
・大阪市における民間開放の取り組み状況の全体像を整理
② 公共サービスの民間開放の先進的取組
・大阪市が保有する施設ストックを概観し、市民の利用状況を整理
・大阪市や他都市における公共サービスの民間開放の事例をヒアリング調査
③ 公共サービスの民間開放等によるビジネス創造の可能性の検討
・ヒアリング調査をもとに、民間開放による効果と今後の課題を整理
・課題を踏まえ、他都市における民間開放の先進事例にみる積極的姿勢からみて
可能性を検討
④ 公共サービスにおける官の使命と役割の検討
・公共サービスにおける官の使命と役割の基本軸を明らかにし、その詳細を次の3点
から検討
1)バリュー・フォ・マネー(VFM)の考え方からみた官・民の役割
2)公共サービスのプロセスにおける官の役割
3)公共サービスの事業分野からみた行政関与の必要性評価
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2 公共サービスの民間開放等をめぐる状況
公共サービスの民間開放等をめぐる背景・経緯
地方自治法改正
規制改革・
指定管理者制度の導入制度化
総合規制
⇒ 民間開放
改革会議
⇒ 「規制改革・民間開放推進3か年計画 」
推進会議
公共サービス改革法
(市場化テスト法 )
公共サービスの民間開放の諸制度
項目
根拠法
概
要
対
象
PFI制度
PFI法
(11年9月施行)
構造改革特区制度
特区法
(14年12月施行)
指定管理者制度
官民競争入札等
地方自治法
(15年9月施行)
公共サービス改革法
(18年7月施行)
公共施設等の建設、
維持管理、運営等を
民間の資金、経営お
よび技術的ノウハウを
活用して行う手法であ
り、事業コストの削減
やより質の高い公共
サービスの提供を目
指す
地域の特性に応じ
て地域を限定して、
法律や政令、通達等
の規制緩和など規
制の特例措置を導
入することで、地域
経済の活性化を促
進する
地方公共団体の保有す
る「公の施設」の管理事務
を、従来の第三セクター等
だけでなく、広く民間事業
者等へ開放する〔18年9
月1日までに管理委託を
している「公の施設」全て
について指定管理者制
度に移行〕
国または地方公共団体等の
実施する公共サービスについ
て、「民間にできることは民間
に」との観点から見直しを行い、
選定された公共サービスを官
民競争入札等に付すことによっ
て、公共サービスの質の維持
向上と経費の削減をともに実
現する
公共施設等の整備等
に関する事業
規制対象分野
「公の施設」の管理
(行政処分が含まれる
場合がある)
公共サービス(本法による
法令の特例措置により、
行政処分も対象となり得る)
3
大阪市における取り組み状況
・推進中の各局の改革マニュフェストには“民間企業等の活用”などの表現が随所に見られ、公共サービスの民間
開放を進めることが明記されている。
● 指定管理者制度の導入状況 〔平成16年度より徐々に導入され、18年度に本格的に導入されている〕
所管局
形
式
市民局
健康福祉局
ゆとりとみどり振興局
経済局
都市環境局
公募
19
32
58
1
1
非公募
32
45
13
1
10
合計
51
77
71
2
11
環境事業局
住宅局
建設局
港湾局
消防局
教育委員会事務局
公募
15
0
9
10
1
11
非公募
0
1
0
0
0
18
合計
15
1
9
10
1
29
所管局
形
式
民間企業参画:78ケース
公募 :157ケース (50%)
277ケース (57%) 公的機関のみ:79ケース
非公募:120ケース (50%)
(43%)
(平成18年度末現在)
(注) 全国の公募割合:29.1%
政令市の公募割合:48.8%
● PFI制度の導入状況
・大阪市では都市環境局津守下水処理場の消化ガス発電設備整備事業のみ
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3 公共サービスの民間開放の先進的取組
大阪市が保有する施設の概況と利用状況
● 大阪市の保有施設の概況
・保有建物は総数で約2,800施設、延べ床面積は約1,500万㎡(公園事務所など細かいものも含む )
・内訳は市営住宅が約630万㎡と4割を占め、次いで、スポーツ施設、福祉施設等の一般営繕施設と、小中学校等
の学校施設がそれぞれ2割強
・建築時期別にみると、全体としては築40年以上のものが10.2%、30~39年のものが18.7%。耐用年数が近づきつつ
あり、長寿命化などの対策が必要なものは3割近い
● 市民利用施設の概況とその利用状況
・ 上記施設の内、一般市民の入館や利用が主目的のものは288施設(下表の概要参照)
≪貸出型施設≫
≪開放型施設≫
区民センター/ホール :37
人権文化センター
:13
老人福祉センター :35
学習センター : 5
クレオ大阪
:5
青少年会館 :12
その他貸館(青年センター等):21
野球場
:13
図書館 :24
庭球場 :14
運動場、体育館
:28
集客施設(博物館など) :23
スポーツセンター
宿泊施設など
:6
プール :28
:24
・ これらの利用状況をみると、施設による差異が大きい。傾向として、人権文化センター、青少年会館、老人福祉
センターは利用が低調。区民センター/ホールのみをみても、利用率は23.6%~66.3%の広範囲にわたって分布
・ 低い利用率のものは自主事業を展開するなど、改善の余地あり
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大阪市ならびに他都市における公共サービスの民間開放の主な事例
● 保健・福祉分野 〔大阪市立ゆとり健康創造館:ラスパOSAKA 〕
概要
・基本的目的:中小企業勤労者の福利厚生 ・副次的目的:市民の余暇活用・健康増進・交流
・施設構成:温泉浴施設、温水プール、フィットネス、会議室・集会室、レストランなど
指定管理状況
・ニュージャパン観光(株)が受任し、フィットネス部門、施設管理部門で新規雇用あり
・イベントは管理者が自由展開可能 〔例:メディカルスクール、エアロ、パワーヨガ、岩盤浴〕
今後の指定管理
のあり方について
・より有効活用を図りたい施設・設備:駐車場(目的外使用の壁あり)、 大型スクリーン
・サービス低下の回避:市分担の修理は安全審査などのため大阪市建築技術協会が介在し、
最低3~4ヶ月を要する。このため、受任企業が直接、業者へメンテを依頼するケースあり
● 教育関係 〔京都御池創生館 (京都市御池中学校) 〕
概要
・3中学校の統合が契機となり、1)中学校のあり方、2)御池通の活性化、3)公共施設としての
地域施設ニーズ、3点を検討し、中学校跡地を複合施設(中学校、保育所、高齢者デイサービ
スセンター、災害時備蓄倉庫、市民トイレ、オフィススペース、職員研修所、レストラン、カフェ、
ショップなど)をPFI事業方式にて実現した、全国初のケース
PFI導入に
関して
・委員会(自治連合会長、小中学校長,PTA役員)にて検討し、案を地域総意として合意形成
・方式:BTO ・事業期間:15年契約 ・施設建設コスト:直接施行に比べて3割減
複合施設のメリット
・中学生と乳幼児、高齢者との交流が自然発生 ・学校と地元とのつながりの深化(寄付増)
● スポーツ施設 〔民間受任企業 〕
指定管理者概況
・大阪市や他都市でプール、スポーツセンターなどを数多く受任。運営受託のケースもあり
取組み事例
・委託と異なり、企画から運営まである程度自由なプログラムが可能(健康づくり、体力づくり)
行政への要望等
・老朽施設では受任以前からの不具合放置の設備まで受任者の負担となるケースは要改善
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● 文化・芸術関連施設 〔大阪市中央公会堂 〕
施設概要
・実業家:岩本栄之助が資金を大阪市に寄付して1918年に開業した赤煉瓦の複合施設
指定管理状況
・サントリーパブリシティーサービス(株)が受任。施設運営受託も多い(国立文楽劇場など)
・効果:「館が明るくなった」、「入りやすくなった」との声。気軽でオープンな施設のイメージ浸透
・企業姿勢をクレド(企業理念:顧客満足を高める)として明確化・冊子化し、全員が共有
今後の指定管理
のあり方について
・柔軟な事業が可能となれば、自主事業をより積極的に展開し、若い世代の利用促進を図れる
・受任期間の更新時は、職員の雇用や配置に関わるため、半年くらいの余裕期間が望まれる
● 文化・芸術関連施設 〔大阪市立芸術創造館 〕
概要
・芸術表現を目的とした活動の支援拠点。稽古場・スタジオを完備し、練習や発表の場を提供
指定管理状況
・複合施設クリエイティブセンター大阪を手がけた小原啓渡氏が館長。LLPを設立して受任
・自主事業(ゼミ、ラボ、テク、エクス、サロンの5事業)を自費で展開し、最高の稼働率達成
今後の指定管理
のあり方について
・レコーディングスタジオなど時間延長のフレキシブル対応が可能となれば一層喜ばれる
・指定管理者申請時には設備の確認が徹底できず費用等の予測が不可能。市で管理すべき
● 設備・機能の一部を特定利用 〔 放出下水処理場の上部空間利用 〕
概要
・国庫補助を受けている処理施設と人工地盤の上を農園として市単費で整備し、市民に開放
・農園事業は外郭団体が運営。市は外郭から使用料を徴収し、外郭は有料で市民に貸出
・農園のため、利用者はほぼ毎日世話をしに来園し、農園以外の場内施設(緑地、せせらぎ公
園、遊歩道など)の利用促進効果あり。来場機会の創出方法として成功事例
上部利用などに
関して
・農園として利用するには国に対して目的外使用の手続きが必要
・補助金適正化法で、目的外使用にて収益事業を実施する場合、補助金割合額の返還が必要
国への要望
・目的外利用に関して、規制緩和や特区で対応可能として、本来の事業目的を達している場合
の適正化法の適用免除となれば、上部空間の利用促進が期待可能
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4 公共サービスの民間開放等によるビジネス創造の可能性の検討
民間開放による効果と今後の課題
● 民間開放による諸効果
ⅰ)利用料の増収等による収益改善の直接的効果
ⅱ)利用者の満足度向上による消費者余剰増加と
しての経済効果
ⅲ)施設・拠点の知名度向上効果
ⅳ)指定管理者となった企業等のスキル向上効果、
イメージアップ効果
ⅴ)雇用機会の増加による経済効果、自己実現的
効果
● 民間開放を通じて明らかとなった問題点・課題
ⅰ)利用料金制の導入によるインセンティブの付与
ⅱ)設備・備品等のトラブルによる費用負担・投資的経費の明確化
ⅲ)局による民間開放のスタンス・積極性の不統一是正
ⅳ)指定管理者制度の更新時の次期管理者決定スケジュールの問題
ⅴ)夜間の利用などサービス時間帯の弾力化
ⅵ)自主事業の先行予約などの統一的ルール化
ⅶ)地元との連携促進
ⅷ)Webの有効活用
ⅸ)単年度予算方式の見直しと効果のフィードバックの必要性
ⅹ)適化法の弾力的運用など国への働きかけの強化
他都市における民間開放の先進事例にみる姿勢
● 乃村工藝社(長崎歴史文化博物館など)にみる先進事例の特徴
・同博物館がオープンする半年以上前に指定管理者となり、サービス業務が確立する以前の企画段階から関与
・調査・研究、教育普及、資料の収集管理など博物館本来の役割を担う学芸部門も含め、本格導入された初のケース
・同社は従来から文化施設の展示企画・設計・施工をおこない、学芸員とともに博物館づくりに携わってきた経験がある
● 千葉県我孫子市(提案型公共サービス民営化制度)にみる先進事例
・「提案型公共サービス民営化制度」の先駆的導入を実施。企業、NPO等から委託・民営化の提案を募集し、コストと
サービスの質を総合的に審査し、民営化がプラスのものについて、提案に基づき委託・民営化を推進
● 他都市の事例を踏まえた先進的姿勢と民間開放の可能性
・上記事例には、博物館や自治体業務の本来的なあるべき姿を見据え、先導者の覚悟をもって実施する姿勢が共通
・大阪市でも上記の課題等を克服する姿勢をとれば、民間開放をより有効に展開できる可能性は大
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5 公共サービスにおける官の使命と役割の検討
公共サービスにおける官の使命と役割の基本軸
● 大阪市「総務局長改革マニュフェスト」にみる官の使命
・『市民の満足度を高め、より質の高い行政サービスを提供するため、(中略)効率的かつ効果的に事業を運営できる諸
システムと、 (中略)人事給与制度をつくりあげ、その適正な運用を図ることを通じて市役所内部の構造改革を牽引する
ことを総務局の使命とします。』
● 官の使命と役割の基本軸
・官の使命:市民の満足度を高め、より質の高い行政サービスを提供すること
・官の役割:受益者負担や効率性、効果・効用などの最適化を図るべく、官民協働(PPP)を適宜、適切に導入すること
バリュー・フォ・マネー(VFM)の考え方と官・民の役割
● バリュー・フォ・マネー(VFM)とは
・「納税者に対する価値(の最大化)」。納税額=マネーに対して、価値=バリューを最大とするように公共サービスの質・
量のあり方、事業スキームなどを最適化しようとする考え方
● PFIの基本原理と官/民の役割
・性能発注:公共が民間に委ねる公共サービスの内容やアウトプット水準を指標として提示するのみ(手段は問わない)
官の役割:企画立案(公共サービスの中心的ターゲット、サービス内容・水準に関する意思決定)
・競争原理:周到な準備のもと民間事業者の自主性と創意工夫にもとづく自由な競争型提案を受けつける公募方式
官の役割:最適な事業者を選出できるように、市場メカニズムを適切に導入すること
・事業評価:当初の性能基準と照合して、民間事業者が提供するサービス業務を評価し、達成状況を把握すること
官の役割:評価を通じた適切なマネジメント(ただしベースとして、当該分野における幅広い経験が重要 )
・リスクの最適配分 :「PFI事業におけるリスク分担等に関するガイドライン」 に準じて、官・民で最適に分担する
官の役割:想定されるリスクをできる限り明確化した上で選定事業者と適切にリスク分担すること
・民の役割:経験を活かし創意工夫のある事業提案を行い、設計・建設して、所定の公共事業・公共サービスを提供する
官の役割:リスク分担を含めて企画立案し、最適な事業者を選定し、運営・維持段階で適切な事業評価をする
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公共サービスのプロセスにおける官の役割
● 企画段階
・新たな公共サービス提供に際しての動機づけの確認 ・事業スキームの概略検討(5W1H)
● 構想段階
・法律面など国・府との調整 ・ファイナンス ・中止・縮小をも含めた事業スキーム決定
● 計画段階
・ニーズを踏まえたサービス内容の決定 ・管理者として監視・管理、リスク分担 ・諸般の情勢変化への対応
● 施設整備段階
・施設完成までの管理・監督 ・ファイナンスの確実な実行 ・リスク顕在化時の機敏な対応
● サービス提供段階
・サービスの適切な履行に対する管理 ・サービスの質向上への対応 ・サービス運営の統括者としての意思決定
公共サービスの事業分野からみた行政関与の必要性評価
● 行政関与の基本的考え方
・以下の観点に該当する事務事業は、その性質からみて公的関与の割合が大
①法律で実施の義務有(例:義務教育) ②受益範囲が不特定多数の市民に及び、サービス対価の徴収困難(例:道路)
③社会生活を営むうえで必要な生活環境確保(例:ごみ) ④生命、財産、権利の擁護、市民の不安解消(例:防犯、建築)
⑤生活の安定の支援、生活の安全網整備(例:生活保護) ⑥新たな社会的ニーズへの先導的対応(例:少子化対策)
● 公的関与の妥当性が薄れている事務事業の観点
①社会経済情勢の変化、目的達成による実施意義の低下 ②市民ニーズの低下、ニーズに対しサービス供給が過剰
③国・他都市のサービス水準と比較し、対象や水準の見直し余地がある ④国・県で同種のサービス提供がある
⑤民間等の活動を阻害、民間との競合あり ⑥財源制約下で実施の緊急性が認められない
● 公益性、必需性の観点による行政関与の必要性
・公費負担/受益者負担の観点から、官が担うべきサービスを“公益性”と“必需性”の2つの観点から分類すると、公益性
が高く、かつ必需性も高いものは行政関与の妥当性が大きく公費負担とすべきという原則が成り立つ
・ただし、大阪市の場合、民間企業が指定管理者となって受任するケースが多いことからもわかるように、民間サービスが
普及していることから、他都市と比較して新規の公的サービス拠点整備の必要性は相対的に少ない
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