「園舎にこめられた子ども達への願い」

この園舎の特徴は、
「園舎にこめられた子ども達への願い」
園長
1.部屋を仕切る壁が全開閉の可動式扉で4クラス分のスペースが一つの空間になる事
高杉美稚子
2.OMソーラーシステム
3.GEOシステムを融合させたこと
4.湿度の調節システム
5.各教室内にベッドルームを設け家庭の温かさを取り入れた環境作り
私は
「教育は真の自立への援助の道」
6.教室やトイレの仕様を幼児の成長に合わせた学年別仕様である事
「教育は知ることの喜びを与えること」
7.防犯録画カメラを設置し、24時間のセキュリティーを入れ、園児の安全確保対策を整えた事
「教育は感動と思い出を作ること」
と考えています。
8.教職員のコミュニケーションを円滑にする為のPHSシステムとLAN
9.感動体験の為の教育的効果を高めるハードウエア
この実現のために教育理念があり教育目標があり、この未来型園舎があります。
です。
本園は、この20年、教育界に新たな提言をし続けて来ました。そして、この園舎は20年温めてきた成
果であり、これからの新しい教育を形にしたものです。
このように、未来型の園舎であるからこそ、逆に自然のかおり、ぬくもりを大切にして近代的な中に、自然を肌で感
じられる建築、そして、全て本物志向である事を大切に建築致しました。
『確固たる教育理念に基づき、21世紀50年後も永続的に良い環境を保つ未来型園舎』
『子供達が大好きな童話の主人公
バーバパパ
のように季節、行事、朝夕、晴雨、目的別に対応できる
変化にとんだ園舎』
これから必要とされる事は落ち着いた本質を捉えた教育だと考えています。建築にもその考え方を表しました。建物
自体が主張しすぎない、子どもの姿、生活、活動が入って始めて完成する、長年使っても飽きのこない、使うほど温
かみが増していく、しっとりした風合いの建物を目指し、外壁にもやわらかさと温かみを出しました。
『訪れたすべての人が、心が温かく、やさしくなりほっとくつろげる空間、園舎、園庭、そして、再び訪
れる事を楽しみにして頂ける吉塚幼稚園全体である事』
そして、心から
『いつも子供たち一人一人が主役の心を大切に、子供たちにとって毎日毎日が、夢いっぱい、感動いっぱ
い、そんな幼稚園でありつづけたい』
という思いを込めて、園舎建築を致しました。
あらゆる教育の理想を追求し、吉塚幼稚園が目指す21世紀の新しい幼稚園の教育を実践する場を創造す
るための第一歩となる園舎となりました。
人に優しい,自然に優しいOMソーラーとジオパワーシステムは単に経済効率を考えてするものではあり
ません。
1.自立の援助―過保護、過干渉、体験不足をなくし、真の耐性、生きる力を培う
2.換気が良いので喘息,風邪等の感染症の予防が期待出来、健康をつくる
3.常時、適正温度が保たれ活動がしやすくなり、カリキュラムの密度が濃くなる
4.肌で自然を感じる事により、全てに優しく、敏感になり、感性が高まる
1.可動式扉の目的
ティームティーチングやオープンデュケ―ションを取り入れるためのソフトウェアにふさわしいハードウェアとして
可動式扉を採用しました。クラス単位の活動も、2クラス合同の活動も、4クラス全部が一つのフロア―になったダ
イナミックな活動も可能となります。教員にとっても経験豊富な先生が、後輩の指導、バックアップがしやすいシス
可動式扉は
1.ティームティーチングにより子どもを多面的に捕らえる事ができる
2.画一的な教育からの脱皮をはかり、動線の拡大により活動が広がる
3.オゾン層の破壊による紫外線の増加から子どもを守り、健康管理をする
年齢別の建築仕様は、子ども達の年齢ごとの発達、育ちを十分考えたものです。
テムです。他の先生の指導を学びやすい環境です。
先生同士の協力や切磋琢磨は子ども達の教育環境の向上に結びつきます。
平成12年度より1年2学期制に致しました。子ども達に対する先生の影響は絶大です。2クラスペアの活動はペア
のクラス担任との相互指導で、子ども達に色々な経験を与え、いろいろな角度から子ども達を心身ともに援助できる
システムです。子ども達の心理的ストレスを極力押さえた指導ができます。1年間で個性の違う担任と接する事は、
子ども達にとって個性の幅を広げる事に繋がると考えています。
2.OMソーラーシステム
7.防犯録画カメラを出入り口全てと、園庭に設置し、24時間のセキュリティーを入れ、園児の安全確保対策を整
太陽熱を床下暖房に利用するシステムです。
えた事
幼い子供たちにふさわしい空調システムを探していて、めぐり合ったシステムです。
駐車場の分離と出入り口を一箇所にした事、次に、園舎への子どもの動線を配慮に入れた上で、スクールバス乗降
OMソーラーシステムの素晴らしい点は、全く空気を汚さない事です。子ども達の健康にぴったりのシ
所を独立させて安全な空間を作りました。又、防犯録画カメラだけでなく、職員が全員、防犯会社へ直結している小
ステムです。
型の非常通報装置を、常時携帯しており、園内だけでなく、園外保育等で何処にいても(日本中なら)危険を通報でき、
建物内全体に温度むらが少ない事は想像以上に快適な事ですし、季節や晴雨の変化にも敏感になってく
更に、園児の安全を確保する事が出来るシステムも備えました。
れる事と思います。
電話会社と園バスをコンピューターで結び、何時にバス停につくか保護者の携帯電話から確認出来るシステムも取り
デメリットは、冬に雨が続いた時の事と、夏の暑さに対する対応です。
入れ、待ち時間の危険性を最小限にする事も実践しています。
その答えが次のGEOシステムです。
8.教職員のコミュニケーションを円滑にする為のPHSシステムとLAN
3.GEOシステム
子供たちから目を離すことなく教職員間のコミュニケーションを向上するため、また子ども達の活動記録を能率よ
地下5メートルの温度を利用する空調システムです。地下5メートルの温度は一年中約15度でほぼ一
く残すためにPHSシステムとLANを採用しました。
定しています。建物の基礎部分に直径50センチメートル長さ5メートルの2重構造のパイプを約40
プログラムはシステムエンジニアをされている保護者の方の協力で出来上がりました
本埋めています。この二重構造の部分に外気を送り込み、地熱を床下に導く事で空調します。空気の通
り道に活性炭や小石の層があり、空気が浄化されます。このシステムのおかげで、冬に天気の悪い日が
9.感動体験の為の教育的効果を高めるハードウエア
続いても園舎内は最低15度は確保されます。
●玄関には子供たちが、毎朝触っていくことにより歴史と共に風格が増していく、御影石の『ぞう』のモニュメ
幼児の環境にとってこの両システムが優れている点は、換気システムである点です。どんどん新鮮で適温の
ントや夢いっぱい白雪姫と小人達
空気が教室に入る事により、風邪などの感染予防が期待できます。
空気取り入れ口やGEOシステムのパイプ底等にフィルターや活性炭が入っていますのでアトピーや喘息
などのアレルギー疾患に対しても、効果が期待できます。このOMソーラーシステムとGEOシステムを
組み合わせた事が世界で始めての試みです。
4.加湿器と除湿機
一年中を通して空気が乾燥している時には加湿、湿気が多いときは除湿機の設備もあります。
風邪やインフルエンザ対策としてトイレのエアータオルと共に採用しました。
5.各教室内にベッドルームを設け家庭の温かさを取り入れた環境作り
幼児は急に体調が悪くなる事が在ります。そんな時ちょっと休める小部屋を教室の続きに作りました。担任のそ
ばで安らげるという事は、心のケアにも役立ちます。少人数で絵本や紙芝居を見る時も気分が高まります。
6.教室やトイレの仕様が幼児の成長に合わせた学年別仕様である事
幼稚園の3年間の成長は目覚しいものがあります。心も体も大きく成長します。そこで、教室やトイレを各学年
にふさわしい仕様にしました。
3歳児は家庭の延長を考え、トイレやシャワーを教室のすぐ横に作りました。
入園当初のまだ新しい環境に慣れてない時でも、安心して外遊びが出来るように3歳児専用の芝生の遊
●子ども達が裸足で走り回っても安全なような天然無垢材のイーペ材の外部デッキ
び場を作りました。
●子ども達の動線をしっかり考慮した作りの、裏玄関口のエントランス代わりのバス乗降所
友達との活動がスムーズになり、動きも一段と活発になる4歳児は、運動場に一番近い場所です。ウッ
●3歳児のみが使用出来る運動場3歳児ランド
ドデッキがグループ遊びの場になっています。
●雨を自然の形で大地に還すといった自然のサイクルを乱さないことも考慮した敷地内の舗装
5歳児の活動は多彩です。音楽室やホール、絵本の広場を自由に使えるポジションです。
●運動場の園舎回りには、クッション性の良い、安全性を高めるアーバンブロック。
●表、裏玄関の円形の温かみのある木製の子ども達の靴置き場
●床にはすべて天然無垢材フローリングを使用、壁紙についても環境や安全品質に関しても、世界で最も厳しい
●毛利さんが宇宙に飛んだ年に作製した屋外遊具スペースジャトル。子ども達の動線を切ることなく、エンドレスに
基準の「ドイツ商品安全・表示 協会」の安全基準をクリアしたRAL壁紙を使用しできる限り自然の材料と施工
遊べる空間にしました。楽しく遊ぶ中で、子ども達がこの時代に身に付けておかなければならない25の基本動作を組
方法を採用
み込み、飽きずに遊び続ける中で、基礎大量区が知らず知らずのうちに身につくように工夫した設計です。
●各学年のテーマカラーは、年少
年中
ピンクとイエロー(私の部屋)
グリーンとイエロー(私の家)・年長
ブルーとイエロー(皆の城)
各学年の部屋の可動式扉は、学年別のクラス名と広場名に併せ、年少は花の広場なので、『はなびらの形』、年
中は森の広場なので、森に住む動物達が大地を踏みしめて歩いている『足跡の形』、年長組は大空の広場なので
、『太陽と地球、そして、それを目指し宇宙空間に飛び出した4つの年長組飛行船』を表現
又、平成14年度には、この屋外遊具の下すべてに、ゴムを敷きました。この施工は、東京ディズニーランドについ
で、日本では始めての施工で、スペースシャトルに合わせて、カシオペア、北斗七星、水星、木星、太陽、オリオン
星座などを配置した、神秘的な宇宙空間を表現しています。
一度、靴を脱いであがってみて下さい。そのクッション性は素晴らしく、落ちたときの衝撃をほとんど吸収してく
れます。
●トイレの壁面は、出版社の協力を得、デビット・マッキーの「ぞうのエルマー」(アリス館)とレオレオニの
『さかなはさかな』(好学社)の絵本のページから、特殊フィルムを使用した巨大壁画にし、トイレットホルダ
ーはかわいい動物達の顔。保護者用のトイレには、オムツ変えシート、チャイルドシートの設置。
●お預かり保育専用のワイワイクラブの部屋と授乳用ベビールームを設置
●一つ一つが可動式になってコーナー保育もできるような設計のお道具箱
●床はクッション性があり温かく、足や腰に負担をかけない、転んでも比較的安全な、浮き床構造、床の高さは
全てバリアフリー
●4・5歳児の保育室の床は、木材をふんだんに使い、全て斜め張りし、中央には科学的興味も持つように「東
西南北」を英語で示している。
日本の家屋は「縦と横」が多いので、日本人は斜めの感覚が磨かれていない.
というデーターがあるので、床を斜
め張りにする事により、この部屋で毎日生活するという事は、他では磨かれない視覚に関する感性を高めてくれ
●子ども達が自然教育や、絵本を読んだ後に描く絵画のその心をそのまま記録する、コンピューターに連動した録音、
る
録画システム
●各教室における採光照明器具については、園児の色彩感覚を健全に育てるため、出来るだけ自然光を取り入れる
●可動式扉で、「太陽の広場」と連動させる事が出来るプレイルーム
配慮をしたこと
●自分の踊りや姿勢がチェック出来るように、片面は総鏡張りで吸音性のある防音室となっているミュジック&ダン
●裸足教育をする為、画鋲を一切使用しない様に、全ての壁面にピクチャアレール〔紙をはさんで止める〕をつ
スの部屋
ける。
●舞台設備を、市民小ホールなみに充実させ、全ての操作は、舞台脇と3階ホワイエで操作でき、舞台照明や天井照
●各部屋のベットルームの中には、貴重な子ども達の絵やお話の宝石箱(子どものつぶやき集)をお預かりする
明(自動で昇降)もふんだんに取り入れているドリームホール(講堂)
為の鍵つきの貴重品箱も設置
●OMソーラーのダクトが通っている3階屋根裏部屋は,園舎面積と同じ広さの巨大行事別倉庫
●子ども達の作品が吊って飾れるテーマカラーのアミ天井(アミアミボード)を設置
●園舎の看板やサインは吉塚幼稚園らしく「ぞうのマーク」や、夢のあるデザイン
などを取り入れました。
●保育室には天然無垢材を使用した机といす
●教材庫は図書室用の可動式書庫を採用
●各部屋のガラスは全てペアガラスで、構造的にも新耐震基準に適合、2階、「太陽の広場」にある円錐形のガ
近代的なシステムの中に、自然の香りのする温かみのある園舎が完成したと思っております。
ラストップライト部分は、阪神淡路大震災クラスの大地震時でも、構造体が変形してガラスが割れる事がないよ
これらの試みは,世界で始めてあり,地球的観点から注目される園舎と教育になると考えておリます。建物を単に作
うな耐震構造。全ての部屋のガラスは、ペアガラスで強度が安全な上に、防音効果が高く、まわりへの騒音対策
るということではなく、子ども達にとって、本当に適切な、良い環境と教育の在り方そのものを見つめた結果です。
にも役にたつ。
やがて、いつか建造物はなくなる日がやってきますが、この理念は22世紀へと受け継がれていくものと確信します。
●「太陽の広場」にある円錐形のガラストップライトの下では、いつでも、自然の太陽光の中で絵本が読めるよ
この環境の中で、次に大切なことは、このシステムと環境を十分に生かした教育システムです。
うに、回りにグルッと絵本棚を設置。夜は、ガラストップライトに光がともり、二本の柱は『大樹』を形作って
ソフトウェアとハードウェアがうまくマッチした所に理想の教育があると思います。ゆっくりでも着実によりよい幼
おり、ピアノ線で「天の川」や、森の妖精ノームの「ふりこ」をはじめとする環境整備も設置。
児教育を研究していく所存です。
「自由空間」をアレンジ。障害を持つ子ども達の感覚統合訓練に使用する教具を配置し、子ども達が自然に遊
ぶなかで、右脳と左脳のバランスを図り、感覚と平行バランスを磨くことが出来る空間です。
これからも、吉塚幼稚園はそのような,新しい波を,教育界に向けて、発信し続けてまいります。子ども達の夢を、
輝かしい未来を、園児達、保護者の皆様、職員と、愛と勇気と知恵をもって実現してまいります。