第58回結核予防全国大会開催要領 期 日 平成19年3月27日¸∼28日¹ 場 所 ホテルグランヴィア岡山 〒700−8515 岡山県岡山市駅元町1−5 TEL 086−234−7000(代表) 主 催 岡山県,財団法人結核予防会 後 援 厚生労働省,社団法人日本医師会,社団法人全国結核予防婦人団体連絡協議会,健康・体力 づくり事業財団,岡山市,岡山県教育委員会,岡山市教育委員会,岡山県市長会,岡山県町 村会,社団法人岡山県医師会,社団法人岡山県病院協会,社団法人岡山県歯科医師会,社団 法人岡山県薬剤師会,日本赤十字社岡山県支部,社団法人岡山県看護協会,社団法人岡山県 放射線技師会,社団法人岡山県臨床検査技師会,社団法人岡山県栄養士会,岡山県国民健康 保険団体連合会,社会福祉法人岡山県社会福祉協議会,岡山県愛育委員連合会,岡山県栄養 改善協議会,JA岡山県女性組織協議会,財団法人岡山県健康づくり財団 【第1日】3月27日¸ ¸ 結核予防会全国支部長会議 (3F ク リ ス タ ル) 10:00∼11:30 ¹ 第1回全国結核予防婦人団体連絡協議会理事会 (3F サ フ ァ イ ア) 10:00∼10:30 º 全国結核予防婦人団体連絡協議会総会 (3F パ ー ル) 10:40∼11:40 » 第2回全国結核予防婦人団体連絡協議会理事会 (3F サ フ ァ イ ア) 11:45∼12:10 ¼ 支部長午餐会 (3F ク リ ス タ ル) 12:15∼13:00 ½ 研鑽集会 (4F フェニックス) 13:30∼16:00 主題 「すすめよう結核根絶に向かって −結核予防法とともに歩んだ55年,そしてこれから−」 司会 加藤 誠也 財団法人結核予防会結核研究所副所長 1)基調講演 青木 正和 財団法人結核予防会会長 「世界から見た日本の結核 −新たな時代の出発−」 2)シンポジウム ①シンポジスト ア 高井 裕子 岡山県津山保健所保健師 イ 下内 昭 大阪市健康福祉局医務監(大阪市保健所保健主幹) ウ 重藤えり子 国立病院機構東広島医療センター統括診療部感染症診療部長 エ 藤本 貴子 岡山県愛育委員連合会会長 ②特別発言 三宅 智 厚生労働省健康局結核感染症課長 ③まとめ 石川 信克 財団法人結核予防会結核研究所所長 ¾ アトラクション (4F フェニックス) 16:15∼16:45 備中神楽 演 者:総社社中 ¿ 全国結核予防婦人団体連絡協議会懇談会 (3F ク リ ス タ ル) 17:10∼17:50 À 大会決議・宣言起草委員会 (3F サ フ ァ イ ア) 17:10∼18:10 Á 大会歓迎レセプション (4F フェニックス) 18:30∼20:00 【第2日】3月28日¹ ¸ 特別講演 (4F フェニックス) 10:30∼11:30 「なまこ壁とエル・グレコ −倉敷と大原美術館が訴えること−」 大原謙一郎 ¹ 大会式典 (4F フェニックス) 11:50∼13:15 1)開会のことば 財団法人結核予防会岡山県支部支部長 末長 敦 2)大会運営委員長あいさつ 岡山県知事 石井 正弘 3)結核予防会総裁おことば 財団法人結核予防会総裁 4)結核予防会会長あいさつ 財団法人結核予防会会長 青木 正和 5)秩父宮妃記念結核予防功労賞第10回受賞者表彰 6)来賓祝辞 厚生労働大臣 社団法人日本医師会会長 岡山県議会議長 岡山市長 社団法人全国結核予防婦人団体連絡協議会会長 7)議 事 ①議長選出 ②全国支部長会議報告 ③研鑽集会報告及び追加討議 ④決議および宣言 ⑤次期開催地について 8)閉会 Message 第58回結核予防全国大会を迎えて 末長 敦 (すえなが あつし) 結核予防会岡山県支部長 第58回結核予防全国大会が平成19年3月27,28日 及啓発と健康診断受診率の向上へ徹底して対応して の両日,結核予防会総裁秋篠宮妃殿下のご臨席を賜 いくことが重要であります。そしてその節目となる り,岡山市で開催される運びとなりましたことは, 今大会は大きな意味を持っていることを忘れてはな 誠に光栄であり喜ばしい限りであります。 りません。 顧みますと結核予防全国大会の前身である第3回 研鑽集会では,「すすめよう 結核根絶に向かっ 全国支部長大会が,昭和27年4月に秩父宮妃殿下の て―結核予防法とともに歩んだ55年,そしてこれか ご臨席を賜り,岡山で開催されて以来,今回が2回 ら―」と題して,結核根絶の新たな対策について発 目となります。 表や討議を予定しており実りの多い大会になります その間55年の時を経て,結核に対する対応も変わ ってきました。 ことを期待しております。 最後になりましたが,本県は「晴れの国 岡山」 かつて国民病と恐れられた結核は,不治の病から と言われるほど気候 治る病気へと様変わりしましたが,新たに集団感染 に恵まれており,日 や院内感染,多剤耐性例の増加などの大きな問題を 本三大名園の後楽園 残したまま,この春,感染症法へ統合されることに もございます。多く なりました。 の皆様のご参加を心 結核固有の対策はDOTSも含めさらに強化してい くことが必要であり,その為には,正しい知識の普 よりお待ち申し上げ ております。 Contents ■メッセージ 第58回結核予防全国大会を迎えて 末長 敦 ……1 ■結核予防全国大会 ●支部長会議に向けて「『ストップ結核新戦略』からの新 しい挑戦」 石川 信克 ……2 ●研鑽集会「すすめよう 結核根絶に向かって」 加藤 誠也 ……4 ●第10回秩父宮妃記念結核予防功労賞各賞受賞者紹介…5 ■2007年3月24日世界結核デーテーマが決定! 「結核 誰もがかかる どこにでもある」 小原 尚美 ……9 ■DOTS 岡山市保健所におけるコホート検討会の取り組み について 宮地 千登世 ……10 ■シリーズ かたき病─結核æ 「結核の化学療法 素晴らしく進歩したけれど…」 青木 正和 ……12 ■平成18年度フィルム評価会に参加して ●フィルムの質的向上,読影の向上を目指して 矢部 勤 ……14 ●フォーラム:胸部検診の精度管理の向上に向けてより 「肺癌検診の精度管理」……………………………………15 ■第28回結核予防会事務職員セミナーに参加して 和久 秀則 ……16 ■JATA健康ネットワーク通信№12 菊地 健司 ……17 ■首都ジャカルタ都市部における結核支援活動の10年間の成果 石川 信克 ……20 ■米国スタディツアー報告(パート2)─CDCの役割と活動─ 加藤 誠也 ……22 ■結核予防会支部紹介の頁 岡山県支部 渡辺 睦生 ……24 ■エイズ Living Together─私たちはすでにHIVと共に生き ている 池上 千寿子 ……25 ■思い出の人を偲んで 木野 智慧光先生 青木 正和 ……26 ■平成19年度厚生労働省予算案(結核感染症課・生活習慣 病対策室・がん対策推進室・老人保健課)………………28 ▽予防会だより …………………………………………………32 〔表紙〕第58回結核予防全国大会ポスターより 〔カット〕佐藤奈津江 3/2007 複十字 No.314 1 結核予防全国大会支部長会議に向けて 「ストップ結核新戦略」からの新しい挑戦 結核研究所所長 石川 結核対策は今,新しい時代を迎えている。世界的 信克 そこで2006年から新10年計画として,「ストップ結 に結核問題への関心が高まり,世界「ストップ結核 核世界新戦略(Stop TB Strategy) 2006-2015」 新戦略」が打ち立てられ,そのための大きなうねり が打ち出されたのである。 が始まったのである。国内的には,疫学的な漸減と 結核予防法の廃止,新感染症法への統合という動き その新戦略の目指すところは,以下のとおりであ る。 りき の中で,対策を「後退させまい」という力みこそあ るが,世界の新しい流れからすれば,やや消極的と ① すべての患者が質の高い結核の診断・治療(即 ちDOTS)が受けられるようにすること も思える雰囲気が漂っている。経済・福祉・保健大 ② HIVエイズ合併結核,多剤耐性結核,その他結 国のわが国が,いまだに毎年3万人近い結核新患者 核の持つ社会的弱者やハイリスク群の課題に取 を発生させ,高齢者が半分を占めるとはいえ,路上 り組むこと で結核で倒れる人は後を絶たず, 20歳と30歳代でも, 5千人もの人に結核を毎年発病させていることを思 えば,「後退させない」よりもっと積極的な取り組 みが必要なことは自明なことである。 そこで,日本の結核予防にかかわる組織や人々が いま世界から受ける挑戦とは何か,を考えてみよう。 ③ 患者や家族,地域社会が力をつけ,成長するよ うに支援すること ④ すべての保健医療関係者に協力・連携を呼びか けること ⑤ 他の健康対策も含めた保健システムの強化・向 上に貢献すること この挑戦への応答こそが,今回の結核予防全国大会 ⑥ 新しい診断法や治療薬の研究を支援すること の課題でもある。 の6つである。 この中身は,国連が掲げるミレニアム開発目標 ●世界の新しい動き (MDGs)に沿ったもので,従来の医学や医療の概 世界的に見れば,結核は診断,治療の方策があり 念を超え,広く人間の尊厳や人権を意識し,患者や ながら,毎年900万人の新発生患者,150万人の死亡 地域社会の参加やすべての保健医療の連携,これか という重荷と苦悩が人類にのしかかっており,エイ らの市民社会のあり方に迫るものである。昨今の個 ズ,マラリアと並んで最も優先順位の高い健康課題 人情報や人権擁護にまつわる組織防衛的な狭義の概 とされている。WHO(世界保健機関)は,既に 念に比べ,はるかに前向きな人間の開発や安全保障 1990年初期にDOTS戦略を確立し,2005年までに患 の理念によるものといえる。 者の7割を見つけて,8.5割を治癒させるという目 標で世界的な拡大プログラムを展開してきた。しか し,拡大は半分程度しか及ばず,ある期間内に叩か 2 ●日本の結核予防が受ける挑戦とは 上記新戦略から日本の結核予防関係者が受ける挑 なければ効果が挙がらないとして,世界中の政府・ 戦を考えてみたい。 団体・人材を動員した,「ストップ結核パートナー ¸ まず日本ではどこまでDOTSが行われているの シップ」なる新しい組織(WHOに事務局を置く, か。質の高い結核治療とは,きっちり直すこと 世界規模の連携組織)が生み出されたのであった。 である。入院・外来を問わず,服薬支援が十分 結核制圧には,必要なお金の投入と拡大した連携が にされているであろうか。地域で十分面倒が見 必要であり,日本政府も結核予防会も参加している。 られる体制の支え無しに,早期退院ばかりが急 3/2007 複十字 No.314 「ストップ結核新戦略」からの新しい挑戦 がれていないか。日本のDOTSはかなり進展し る人々が今なすべき戦いの課題が見えてこよう。ま てきたが,まだまだ十分とは言えない。 た,従来の予防会の枠を超えて,政治家も含め,い ¹ 社会的弱者への対策はどうか,都会のホームレ や行政,地方自治体,民間諸団体,専門家も含めた スは数倍も結核が多く,時に人知れず路上で死 広義のパートナーシップ,「日本版ストップ結核 ぬ人もいる。ワーキング・プアの若者たちで重 (Stop TB,Japan)」の構築の必要がますます感じ 症結核で見つかる人も後を絶たない。日本の患 られる。 者の半数を占める高齢者の結核の病態は,複雑 化しているが,治療できる体制は不十分である。 ●結核予防会の現実的課題 糖尿病や認知症がある高齢者が結核を発病する 一方,上記の挑戦を全国レベルでどう展開してゆ となかなか行き場所がない。日本人より数倍高 けるのか。日本の結核予防会各支部の現状を見ると, い来日外国人の結核医療も困難がある。刑務所 支部間の能力の違いとともに,超えねばならないい の結核問題はいまだ闇の中の状態といえる。 くつかの山があるように見える。支部によっては, º 住民参加は,結核予防会の柱の一つであったし, 結核の健康診断等の日常業務や結核専門家の激減に 今も結核予防婦人会の役割がある。 より,専門集団としての機能が失われつつある所も » 連携で言えば,福祉・保健・医療の連携はある 多い。このまま行けば,結核業務の返上や自然消滅, 程度はできてきたが,個別には努力が見られる 他疾患対策への方向転換である。もう一つの道は, が,政治的にはまだ不十分である。 結核業務の意図的な維持に向けた構造転換や強化で ¼ 結核による保健体制全体の向上という点では, あり,各県における結核対策の計画立案,実施,評 日本の保健所や保健行政の柱が結核対策であっ 価のための情報提供や,技術支援の基地として,支 た歴史から見れば,結核対策の果たした役割は 部が機能してゆくことはできないか。このためには, 大きい。その今日的意義は何か。患者一人一人 支部,本部,研究所の連携が必要で,結核を意識し の治癒を目指したDOTSのやり方は,これから たネットワーク事業が考えられる。国の罹患率が, の効果的医療評価,健康管理の基礎ともいえる。 10万対5を切り,日本の30年以上も先を行っている また結核予防会が,住民の健康ニーズの転換か 米国では,州によっては患者が毎年数名程度しか出 ら,生活習慣病対策を積極的に取り組もうとす ず,適切な対策が維持できなくなっている。そこで るのも,DOTS教訓の応用という視点に立てば, 国を4つのブロックに分け,それぞれのブロックの 前向きに捕らえられる。 中心となる州に共通のセンターを置くか,各州の結 ½ 結核研究は先進国日本が世界に貢献できる重要 核対策官がブロック毎にネットワークを作り,定期 な分野で,そのための政治的支援,予算の確保 的に研究・研修会を開催するといったシステムが出 が必要である。 来上がっている。このための予算は国が相当分負担 ¾ また世界への貢献という意味では,国際協力の 重要性は言うまでもなく,結核予防会は日本の し,全体の責任者が中央のCDCに事務所を与えら れている。 国際医療協力のパイオニアであり,目玉であっ 結核減少に伴い,他の健康ニーズに対応しようと たが,これからも国際協力には力を注いでいか する結核予防会の新しい事業の転換は,このような ねばならない。国際医療協力こそ,憎しみと敵 全国的な結核機能低下への機能強化を視点に入れて 意に満ちたこの世界に,武器によらず平和をも こそ本来的な姿といえるのではないだろうか。 たらす確実な道である。結核はこの闘いにふさ そのために,各県レベルでも「日本版ストップ結 わしい兵器ともいえる手段といえるのではない 核」パートナーシップ設立に向けた準備が望まれる。 か。 支部が中心となって,県行政,専門家,政治家,運 動体,NGO,その他あらゆる関係者のリストアッ 上記より,結核予防会を中心に,結核予防に携わ プをし,動員を試みることができよう。 3/2007 複十字 No.314 3 研鑽集会 「すすめよう 結核根絶に向かって」 −結核予防法とともに歩んだ55年,そしてこれから− 座長 結核研究所副所長 加藤 誠也 結核が著しいまん延のため「国民病」と呼ばれて つある。さらに,一般の人のみならず医療従事者に いた昭和26年から,幾多の改正を経ながら対策の支 おける結核に対する関心の低下は,有症状で感染性 柱であり続けた結核予防法は,平成19年4月より感 の高い患者の受診の遅れ・診断の遅れと,それによ 染症法に統廃合されることになった。 って引き起こされる集団感染事件,院内感染事件の 我が国の結核は,戦後の著しい高まん延状況から 1970年後半までは年率約10%の早さで減少した。こ このように我が国の結核は様々な問題を抱えてい れは,間接撮影による定期健康診断や凍結乾燥技術 るが,感染症法の下にこれらを克服し,結核の根絶 によるBCGのような当時としては革新的技術と共 を目指して新たな歩みを始めなければならない。 に,結核予防法の下に官民一体となった「国民病」 今回の研鑽集会では,まず,結核予防会青木正和 克服への熱意と努力がそれを支えていた。その後, 会長に「世界から見た日本の結核−新たな時代の出 罹患率の鈍化,さらに,一時は逆転上昇の時期も経 発−」と題した基調講演をいただき,我が国の今後 て,我が国の結核は「中まん延状態」にあり,欧米 の結核対策のあり方を論じていただく。 の先進国と較べると30年程度遅れている。 最も罹患率が低い長野県と,高い大阪府,東京都 引き続きシンポジウムでは,結核の保健医療活動 に携わっていただいている4人の方々にそれぞれの では3倍ほどの地域差があり,抱える課題も異なっ 活動について発表をしていただく。 ている。大阪,東京などの大都市部でホームレス, ① 高井裕子氏 (岡山県津山保健所保健師)には高齢 日雇い労務者,無職,生活保護受給者などの社会的 経済的弱者がハイリスク集団となっており,罹患率 化が進む地域における患者支援活動について, ② 下内昭氏(大阪市結核感染症課保健所保健主幹) が高い原因の一つになっている。また,若年者の罹 には,大都市が抱える結核の課題とその克服の 患の改善の停滞は大都市で特に顕著であり,これは, ための取り組みと成果について, この年代の新規感染と発病が減少していないことを 示唆している。 ③ 重藤えり子氏(国立病院機構東広島医療センタ ー,統括診療部感染症診療部長)には,結核専 我が国の結核患者の半数近くを70歳以上の高齢者 門医療機関の立場から,近年,大きく変化しつ が占めており,特に,高齢化率の高い地域に多い。 つある結核医療現場から課題や今後のあり方に このような地域における高齢の患者に対するDOTS ついて (服薬支援)はそれぞれの地域に適合した方法で社 ④ 藤本貴子氏(岡山県愛育委員連合会会長)には, 会資源を有効に活用しながら進める必要がある。罹 開催県である岡山県における結核予防婦人会組 患率が低下した地域では今後,対策,医療における 織の活動とこれからのあり方について, 技術的適正性をいかに維持するかが課題の一つとな る。 医療現場も多くの問題を抱えている。高齢患者の 治療は合併疾患等のために困難を伴うこともあっ て,予後不良例も多い。結核病床は採算性に大きな 4 誘因になっている。 また,特別発言として,厚生労働省健康局結核感 染症課長三宅智氏に,平成19年4月から施行される 感染症法と今後の結核対策について, 最後に石川信克結核研究所長からまとめのコメン トをいただく。 問題があり,入院期間の短縮化に伴い病床利用率が 今回の研鑽集会では結核予防法と共に歩んだ歴史 低下して結核病床を病棟単位で維持することが困難 を踏まえながら,それぞれのお立場における結核対 になることを契機に結核病床を廃止する医療機関が 策の現状と課題を共通の理解とした上で,改正感染 増えており,二次医療圏内に結核病床がない地域も 症法の下に結核の根絶を目指してどのような対策が 増えている。また,結核医療の専門家の減少・不足 なされるべきかを,ご参加の皆様と共に考える機会 は地方のみならず都市部においても,問題となりつ としたい。 3/2007 複十字 No.314 第10回秩父宮妃記念結核予防功労賞 各賞受賞者紹介 秩父宮妃記念結核予防功労賞は,平成7年8月25日逝去されました秩父宮妃殿下のご遺言に基づき,財団法人結核予防会に 賜りましたご遺贈金を原資として,結核予防に大きな功績のあった方々,あるいは団体を顕彰し,もって結核予防の一層の推 進を図るとともに,半世紀以上にわたり結核予防会総裁をつとめられた妃殿下のご遺志にお応えし,その御名を永く留めよう とするものです。 本会では昭和24年の第1回から第48回まで,結核予防全国大会式典の際に165人,24団体を「結核予防功労者」として表彰 してまいりました。この秩父宮妃記念結核予防功労賞は,この結核予防功労者の制度をさらに発展させ,スケールを大きくし たもので,賞の種類も増やし,授賞対象も世界にまで広げております。 本賞は,毎年,結核予防全国大会式典の席上で,総裁秋篠宮妃殿下から表彰していただく予定です。ただし結核予防世界賞 については,国際結核肺疾患予防連合(IUATLD:世界各国の結核予防会の連合組織)の世界大会が開催される年には,本賞を 世界にアピールする意味をこめて,その席上,総裁の名代として本会会長から表彰することとしております。 今年度の受賞者は世界賞1名,保健看護功労賞5名,事業功労賞2団体8名の計14名2団体で,大会式典の中で総裁秋篠宮 妃殿下より表彰が行われます。また,世界賞受賞者については,平成19年11月8日から11月12日まで南アフリカ共和国,ケー プタウンにおいて開催される「第38回国際結核肺疾患予防連合」にて,結核予防会会長青木正和より表彰の予定となっており ます。 *紹介文は表彰順 世界賞 保健看護功労賞 ヤ ー プ ・ ブ ル ッ ク マ ン こ も り あ し と み た か こ ふ み こ 安次富 文子 Jaap F. Broekmans 小森 多佳子 看護師 医師 看護師 沖縄県島尻郡南風原町 国籍 オランダ 岐阜県岐阜市 沖縄県総合保健協会 オランダ結核予防会 独立行政法人国立病院 看護課長 (KNCV)政策顧問 機構長良医療センター 看護師長 ヤープ・ブルックマン博士は, オランダ結核予防会を再生させ, 世界のDOTS戦略を推進した立役 者の一人である。1975年から1987 年まで12年間にわたり,タンザニ アの保健省の結核・ハンセン病対 策調整官,保健省医療監査官とし て活躍された。その後2005年まで, KNCVの理事長として,ベトナム, 中国,インドネシア,タンザニア でのDOTS戦略の開発と普及に尽 力された。最近は世界の結核戦略 の推進体であるSTOP 結核パート ナーシップの創立にかかわり,副 議長を務めた。2001年から2004年 まで,WHOの技術諮問委員会の 初代議長を務められた。2000年か ら2005年までは,USAIDの資金 援助を受ける世界的結核連携機関 TBCTAの議長を務めた。日本の 結核予防会をTBCTAメンバーと して加えるなど,日本の良き理解 者である。最近は,森亨氏の後任 としてWHO西太平洋地域 (WPRO)のTAG(技術諮問グル ープ)の議長を務める。 昭和50年4月,沖縄県結核予防 会に入職以来,現在まで,長期に 結核患者が強いられている長期 亘り総合健診機関の看護課長とし にわたる入院を大きな問題と捉 え,患者・家族の声に耳を傾け, て,住民健診を始めとする巡回健 診をとおして,結核予防事業の最 長期入院患者の分析を重ねるなど 前線で活躍してきた。 して早期退院の実現に向けた看 沖縄県の乳幼児に対するBCG接 護・支援の方法について,病棟看 種後のツ反応陽転率は98%であ 護師の中心となり研究・実践を重 り,その接種技術は高い評価を得 ねてきた。 ている。その理由は結核研究所か 平成13年度に国立療養所岐阜病 らBCG接種技術の面でトップレベ 院(現,独立行政法人国立病院機 ルの専門医を派遣していただき, 構長良医療センター)が院内DOTS 実技指導を含めた講習会等をした を導入するに当たり,外来看護師 ことが大きな要因となった。 長として中心になり,より良い その時期に,当人は,直に指導 DOTSを実施するための基盤づく りに尽力した。平成14年度からは, を受けツ反検査と判定などを学ん だ上で実践し,それを後輩達に受 岐阜市保健所との連携を積極的に け継ぎ今日にいたっている。 進め,結核連絡会を立ち上げ,結 結核予防会沖縄県支部からの, 核患者と治療に携わる医療関係者 とのコーディネート役として,院 「 小 中 学 生 , 乳 幼 児 の ツ 反 応 , BCG接種調査報告書」は基礎的技 内DOTS及び退院後の地域DOTS 術が今日に至るまで正しく受け継 への支援に従事している。 がれてきた結果によるものである。 また,高齢者施設職員などを対 本年2月に定年退職となった 象とした講演を重ね,結核感染予 が,これからも後輩のために結核 防や正しい知識の普及啓発に力を 予防の基礎となるBCG接種等の正 注ぐなど,岐阜県全域における地 しい知識を伝えるために更なる活 域DOTSの体制づくりに向けた活 躍が期待されるところである。 躍がますます期待されている。 3/2007 複十字 No.314 5 く に や ふ み こ 國谷 文子 看護師 神奈川県横浜市 医療法人明芳会横浜旭 中央総合病院看護部長 平成10年,国立療養所南横浜病 院に看護部長として赴任し結核看 護と関わる。病院近辺にある寿町 の簡易宿泊所や路上で生活する患 者の中には,アルコール依存症や 人間関係をうまく築けない患者も 見られ,無断離院や院内の規則違 反による強制退院などで治療が中 断されることが多かった。この対 策として,療養のしおり作成,保 健師との連携による患者訪問等を 行った。院内ではDOTSの取り組 みを開始し,服薬指導・情報収集 などで患者とのコミュニケーショ ンを深め信頼関係を築くことで療 養指導に効果をあげた。平成11年 横浜市からの要請を受けDOTS事 業に協力,看護部長として窓口と なりシステムの検討を行った。院 内体制の整備,退院後の患者が通 う診療所への病院看護師・医師の 派遣等を行ってDOTS中断者を減 らし,寿町周辺の結核罹患率は激 減した。このDOTS方式は全国に 広がり,診療報酬にも反映される など実績を残し,現在も看護部長 として活躍している。 は っ た じゅんこ 八田 純子 保健師 兵庫県淡路市 兵庫県洲本健康福祉事 務所(洲本保健所)保 健師長 平成7年の阪神・淡路大震災時 には津名保健所に所属,避難所で の結核排菌患者の有無の確認,被 災地での結核対策や予防について の研修実施など予防体制の整備を 図った。 平成9年,淡路圏域は罹患率が 6 3/2007 複十字 No.314 55.8と高く島内の3保健所が県の 結核対策重点モデル保健所の指定 を受けた。この事業として改善目 標の設定や感染源調査,高齢者結 核対策調査事業,保健師研修会等 実情に応じた効果的な結核対策を 展開した。また結核病床を有する 中核病院と3健康福祉事務所(保 健所)共同の結核支援会議の開催, 患者が服薬管理するための「服薬 手帳」の作成など患者の支援体制 を確立,さらにDOTSの具体的な 連携方策の検討などにも力を注 ぎ,これらの努力で平成16年淡路 圏域の結核罹患率が24.2と半減で きた。保健師長として後輩の育成 に努めながら,必要に応じて医療 従事者向け研修を企画運営し地域 の医療・保健・福祉関係者の資質 向上に大きく貢献した。 た か の と も こ 高野 智子 保健師 熊本県熊本市 熊本県宇城保健所 昭和51年から県内保健所で保健 師活動に従事。熊本県衛生部保健 予防課に結核担当保健師として初 めて配属され,精神病院の実態調 査と結核健診の導入,全国に先駆 けたコホート観察調査の実施な ど,現場に即した事業を通して県 の指標の改善を試みた。また,平 成15年度からは保健所保健師とし て,積極的に管内の結核専門病院 へDOTSに関する情報提供を行 い,院内DOTSの導入および充実 に貢献した。その後,病院スタッ フとともにDOTSカンファレンス を立ち上げ,アセスメント票を用 いた服薬支援計画の作成や外来部 門・地域の関係機関との連携を進 めるなど,DOTS支援体制の基盤 作りに尽力し,DOTS事業の展開 に努めている。 事業功労賞(団体) さ っ ぽ ろ し き た く け ん こ う を ま も る つ ど い 札幌市北区健康をまもるつどい 札幌市北区健康をまも るつどい会長 齋藤 芳子 札幌市北区健康をまもるつどい は,昭和41年8月,結核を撲滅す ることを目的として前身である札 幌市「家族を結核からまもる婦人 のつどい」として発足した。その 後,平成5年に独立,平成9年に は結核を中心とした活動から,男 女参画による地域の健康づくり事 業を目指し,団体名称を「札幌市 北区健康をまもるつどい」に変更 し再出発した。保健衛生知識の普 及啓発活動や各種健診の受診勧奨 など地域の健康づくり活動におい て長年にわたりリーダー的な役割 を担ってきた。特に生活習慣病予 防事業への協力参加,保健衛生の 向上を目的とする講習会・研修会 の開催と参加,関係行政機関・公 衆衛生関係団体との連携など幅広 い健康づくり活動に成果をあげて いる。また,複十字シール運動募 金では,札幌市内唯一,町内会の 全面的な協力を得て,取りまとめ から配布までを行っており,毎年, 北海道全体の募金額の約2割を占 める実績は著しいものである。 お か や ま け ん あ い い く い い ん れ ん ご う か い 岡山県愛育委員連合会 岡山県愛育委員連合会 会長 藤本 貴子 昭和30年の岡山県愛育委員連合 会結成当初より,住民宅を一軒一 軒声かけ訪問をして,健康状態の 把握,胸部レントゲン検査,乳幼 児のツベルクリン検査,BCG予防 接種の普及啓発及び受診勧奨を行 い,受診率の向上に努めてきた。 また,昭和58年に全国結核予防 婦人団体連絡協議会へ正式加入し て後,複十字シール募金運動を岡 山県愛育委員連合会の事業として 主体的に実施している。特に街頭 キャンペーンへの取組を拡大し, 平成17年度はJR駅26ヵ所の他,市 町村役場,保育園,学校など,幅 広い対象への普及啓発に尽力して いる。これらの取組によるBCG予 防接種や健診の受診率の向上か ら,岡山県の結核罹患率は常に全 国と比べて低くなっている。 岡山県の結核撲滅の実現におい て,岡山県愛育委員連合会の地道 な普及啓発活動はなくてはならな いものとなっている。 事業功労賞(個人) い い じ ま あきら 飯島 昭 医師 埼玉県さいたま市 飯島医院副院長 大宮医師会立大宮准看 護学校長 昭和40年1月大宮医師会に入会 以来,40年以上の長きに亘り医師 会の行う地域医療活動に寄与して 来た。昭和41年4月より結核指定 医研究会員となり,結核予防事業 の推進に尽力されると共に,昭和 42年より平成12年3月迄,三橋 中・南中・大宮高校校医として児 童・生徒の結核検診に尽力され た。又,平成2年5月より平成15 年5月迄,保健所結核相談医とし て毎月2回保健所に勤務,年間約 450名の結核相談に貢献された。 更に,平成8年4月より大宮医師 会の肺がん検診読影委員となり現 在も結核肺がん検診に尽力されて いる。昭和47年から平成12年3月 迄,大宮医師会副会長・理事・監 事として大宮医師会の行う地域医 療活動に貢献された。平成4年4 月からは大宮医師会立大宮准看護 学校校長として,生徒の結核検診 をはじめ健康管理に尽力され,平 成13年6月から16年6月迄,さい たま市教育委員会(うち平成14年 6月から16年6月の間は委員長) として,児童・生徒の結核検診を はじめ健康管理に尽力されてい る。 ふ じ も と と も あ き 藤本 知明 医師 千葉県我孫子市 藤本内科医院院長 昭和32年5月静岡県吉原市吉原 病院内科医長として,病院の診療 にあたられると同時に,吉原保健 所の嘱託医として,結核検診及び 吉原保健所管内小学校の学校検診 において,胸部レントゲンの読影 等結核予防業務に貢献した。昭和 38年からは,青梅市立総合病院に て30床の結核病床を有する結核科 長を併任し,結核診療に尽力した。 研究分野においても,昭和42年 から1年間厚生省(当時)の委託 により抗結核薬エタンブトールの 治療研究員となり20例の症例研究 を修め,大きく貢献した。 また,昭和44年2月我孫子市に 開院以来,日常の診療の傍ら往診 も積極的に行うなど,結核患者の 診療及び地域の結核対策に貢献す るとともに,昭和45年からは我孫 子市の嘱託医として予防接種業務 の他,昭和45年から平成10年まで の28年間,学校保健の分野におい ても児童の健康管理に尽力し,平 成15年4月には,管内児童生徒結 核対策委員としても活躍されるな ど地域の健康維持増進に大きく寄 与してきた。 昭和59年5月から21年間千葉県 柏保健所結核診査協議会委員とし て,現在も県の結核対策に尽力し ている。 み ず の か つ ゆ き 水野 勝之 医師 愛知県愛知郡長久手町 水野内科院長 昭和41年に名古屋大学医学部を 卒業し,呼吸器専門医として,名 古屋大学,愛知医科大学に勤務し て地域診療にあたった。 平成4年,愛知医科大学第三内科 助教授を最後として退職し,愛・地 球博記念公園にほど近い長久手町 内にて開業し現在に至っている。 愛知県瀬戸保健所結核診査協議 会委員として,平成5年から平成 17年までの12年間にわたり在任し た。また,結核診査協議会委員長 として5年間務めた。 結核の診断,治療に長年尽力し, 現在も地域診療に当たっている。 い と う と も ぶ み 伊藤 朋文 医師 岐阜県多治見市 岐阜県東濃地域結核診 査協議会委員 国立療養所岐阜病院(現,独立行 政法人国立病院機構長良医療セン ター)及び国立療養所恵那病院(現, 市立恵那病院)において37年余にわ たり結核を中心とした医療に従事 し,その専門的識見をもって岐阜 県及び東濃地域における結核医療 の推進に指導的役割を果たしてい る。また,地域の保健医療関係者 の指導を始め,学校保健,産業保 健,地域保健と広範囲に及ぶ結核 予防に係わる様々な業務の推進に も積極的な役割を果たしている。 昭和54年から21年間岐阜県恵那 保健所の結核診査協議会委員を, 平成12年から現在に至るまで岐阜 県東濃地域保健所(現,東濃保健所) の結核診査協議会委員を務める他, 住民に対して集団施設研修会など 3/2007 複十字 No.314 7 で結核予防の啓発活動を,また岐 阜県東濃地域の「地域健康危機管 理に関する専門家会議」の委員と して感染症を中心とした健康危機 管理にも尽力しており,今後も, 岐阜県の結核予防活動においての 活躍がますます期待されている。 い し さ か た め ひ さ 石坂 為久 医師 福井県越前市 医療法人林病院副院長 滋賀県高島診療所に所長として 勤務した後,昭和28年より福井県 武生市にある医療法人林病院に勤 務し,当時の結核蔓延防止に取り 組み,県の結核対策に尽力した。 特に,結核患者の早期発見と早 期治療を目指し服薬支援に力を入 れ,また,家族等の接触者に対し ては,保健所等の関係機関と連携 を密に取り合いながら二次感染防 止を図るなど,地域医療に尽力し た功績は大きい。 昭和49年4月からは福井県結 核・感染症診査会丹南結核診査協 議会の委員および委員長を30年に わたり歴任し,人権に配慮した適 正医療に尽力するとともに,校医, 産業医としても結核予防対策と健 康管理に積極的に取り組んだ。 現在においても,地域住民の胸部 X線写真の読影を行うとともに複十 字シール運動への協力,更には,婦 人団体の要請に応じ,結核に関する 衛生教育を通じて地域住民の結核予 防を含む健康づくりに貢献している。 か し わ ぎ み さ を 柏木 みさを 団体役員,折り紙講師 奈良県吉野郡大淀町 大淀町健康を守る婦人 の会会長,更生保護婦 人会大淀地区会長 昭和45年奈良県健康を守る婦人 8 3/2007 複十字 No.314 の会発足以来,大淀町地域婦人会 会長として,また大淀町健康を守 る婦人の会会長として,地域・家 庭の健康づくりは女性の役割であ ることを自覚して,積極的に複十 字シール運動の活動を続けてき た。 その活動の中で折り紙の講師を していて,シールの用途に一つの 名案が浮かんだ。それは自分の手 先を活用した「シール運動」,す なわち和紙で小物(つまようじ入 れ・フィルムケースを活用した雛 人形・箸袋等)を作り,それらに シールを貼り付けて,生活の中か ら常時啓発として健康の輪を広げ ることにした。このアイディアを 持って,各種団体のイベント・研 修会等にも赴いて,和紙とシール で数々の美しい小物を作って人気 は上々であった。 健康を託したこの複十字シール 運動こそ尊い命を救う世界共通の ボランティア活動であること,そ して結核予防の原動力であること を強く訴え続けていきたいと願 い,現在も継続している。 に し い け ん じ 西井 研治 医師 岡山県岡山市 岡山県健康づくり財 団附属病院院長 昭和56年岡山大学医学部第二内 科に入局以来,主に呼吸器疾患に ついて研鑽を積んだ。昭和60年か ら財団法人結核予防会岡山県支部 岡山診療所に勤務し,診療や検診 事業を通して,結核の早期発見や 治療に貢献している。平成6年か らは,10年以上にわたって結核診 査協議会委員,岡山県学校結核対 策委員会の委員を務め,結核患者 管理,医療の適正化,集団感染対 策等,学校や施設等における結核 対策に率先して取り組んでいる。 標準治療導入を推進し,岡山県の 初回治療PZA処方割合の向上に寄 与している。平成14年からは,岡 山大学医学部第二内科の非常勤講 師を務め,後輩の指導育成に力を 注ぐと共に,県内各地の保健所や 医療機関,福祉施設に対する結核 予防研修会の講師を積極的に務 め,専門職の育成にも精力的に取 り組んでいる。また,結核予防講 演会等,県民に対する結核予防教 育にも尽力し,岡山県の結核医療 の向上や結核予防対策への功績は 大きい。 ま つ し ま と し は る 松島 敏春 医師 岡山県倉敷市 淳風会倉敷第一病院 呼吸器センター長 昭和45年熊本大学医学部第一内 科,昭和48年から平成16年までの 31年間,川崎医科大学呼吸器内科 の講師,助教授,教授として結核 をはじめとする呼吸器疾患の教育 に寄与した。結核病学会では,永 年にわたり理事,評議員として活 動し中国四国支部,支部長を務め た他,結核と関連の深い日本呼吸 器学会でも理事,評議員を永年務 め,結核対策に尽力している。平 成9年から岡山県倉敷保健所,平 成13年からは倉敷市保健所の結核 診査協議会委員並びに委員長とし て現在もなお地区の結核対策に貢 献し,平成15年からは,倉敷市立 学校児童生徒結核対策委員会の副 委員長として新しくスタートした 児童生徒における結核対策のあり 方も検証している。この間,岡山 県内各地で講演等を通じ地域の医 師に結核に関する注意を喚起する 等,結核予防活動に精力的に取り 組んでいる。 2007年3月24日<世界結核デー>テーマが決定! TB anywhere is TB everywhere 結核研究所国際協力部企画調査科 小原 尚美 世界結核デーのテーマ解説 2007年のテーマは,結核は治療をすれば治る病気であ るのにもかかわらず,世界的にみて非常事態が続いてい ることを訴えている。この状況は,結核対策,サーベイ ランス,研究,新たな技術の開発,HIV合併結核に対して 十分な資源が投入されてこなかったことを反映している。 WHOは,患者発見率と治療成功率について,2005年に 定めた目標の達成状況を今年中に発表する予定である。 世界の50ヵ国が患者発見率の目標である70%を達成し,25 ヵ国が両方(患者発見率70%と治療成功率85%)の目標値 を達成したと報告している。世界の平均的な治療成功率 と患者発見率は,それぞれ84%,60%(いずれも2005年) と推測されているが,絶対数としては毎年約200万人もの 結核患者が治療を受けていない状況である。 世界的な脅威である結核からの挑戦に打ち勝つために も, 「ストップ結核世界計画(2006−2015) 」に対する資金 を確保し,ストップ結核戦略を施行する努力が必要であ る。ドナー国を含めた全ての政府と各国の政策決定者が 結核の影響を受けている人々や地域の立場にたって<ス トップ結核>のために責務を果たすことが求められてい る。 世界結核デーのテーマは,以下のメッセージを含んで いる。 1.結核蔓延国が自らの結核対策への財政的支援を改善す る。 2.コミュニティの関与を高める。 3.ドナー国が結核対策に資源を投入する。 4.政策決定者が超多剤耐性結核(XDR-TB)注1)とHIV合 併結核の脅威から地域を守る。 注1)超多剤耐性結核については,今年度多くのメディアで取り 上げられたが,WHOが10月に行った専門委員会では,多剤耐性 に加えてフルオロキノロンいずれかと注射二次薬(カプレオマ イシン,アミカシン,カナマイシン)の少なくともひとつに耐 性をもつ結核菌をXDR-TBと定義すると発表した。 2015年までに結核の有病率と死亡率を,1990年の半分のレ ベルにまで下げるための計画が示されている。昨年3月 に発表された「ストップ結核戦略」では,①質の高い DOTS拡大の推進,②HIV合併結核,多剤耐性結核やその 他の問題への取組み,③保健医療体制の強化への支援, ④すべての保健医療従事者の参加促進,⑤結核患者やコ ミュニティの権利の拡大(エンパワーメント) ,⑥結核研 究の推進,が戦略として掲げられており, 「ストップ結核 世界計画」を支援する形になっている。これにより, DOTS戦略を結核対策の中心としつつ,新たな戦略の導入 を通じて,活動の枠をコミュニティやNGOの参加, ACSM注2)活動,MDRとHIV合併結核対策等に拡大するこ とが示されている。 このように活動の枠が広がりつつある中で,国レベル のパートナーシップの構築がますます重要になっている。 日本でもストップ結核パートナーシップジャパンを結成 し,結核対策に取り組むための緊急性を訴え,持続的な アドボカシー活動を行っていくことが求められている。 出典:世界結核デーテーマ: http://www.stoptb.org/events/world_tb_day/2007/ XDR最新ニュース: http://www.who.int/bulletin/volumes/84/12/06-011206/en/ index.html ストップ結核戦略: http://www.who.int/tb/features_archive/stop_tb_strategy/en/ 世界の結核対策 2006∼2015年 新10ヵ年計画へ 世界では,毎年900万人が結核を発病し,170万人が結核 の犠牲となり死亡している。特に,HIV感染率が高いアフ リカでは結核が増加し深刻な問題を引き起こしている。さ らに多剤耐性結核・超多剤耐性結核が脅威となっている。 国境なき医師団は,2006年に,最も報道されなかった人 道的危機を10項目かかげ,その中に結核の増加を挙げて いる。 昨年1月に発表された, 「ストップ結核世界計画」には, 国連ミレニアム開発目標に沿って結核の罹患率を減らし, index.htm 2006年,10の最も報じられなかった人道的危機: http://www.msf.or.jp/2007/01/10/5710/200610.php 注2)ACSM(Advocacy, Communication, Social Mobilization): アドボカシー・コミュニケーション・社会動員 従 来 , ア ド ボ カ シ ー や IEC( Information, Education, Communication)は,別々に表現されてきたが,社会動員などの 活動を含む広い概念で,対策を強化するためにACSMと表現され るようになった。尚,ACSM作業部会はストップ結核パートナー シップの作業部会の一つとして,位置付けられている。 3/2007 複十字 No.314 9 Use DOTS More Widely −岡山市保健所におけるコホート検討会 の取り組みについて− 岡山市保健所保健課 宮地 千登世 ●はじめに ●コホート検討会開催までの経過 岡山市は岡山県南の中心部に位置し,平成19年1 岡山市では以前から,地区担当保健師が初回面接 月に周辺の二町が合併し,面積約790平方km,人口 や接触者調査を行った後,定期的に服薬支援を行う 約70万人の中核市です。 こととなっていましたが,支援の方法は地区担当保 結核の現状としては新登録患者が平成17年には 健師に任されており,服薬期間中どのくらいの間隔 117人,罹患率は17.6で年によって多少の増減はあ で服薬確認できていたか,仮に途中で服薬中断して りますが,徐々に患者数が減少する傾向にあります。 いた場合,早期に確認できていたか等について振り 患者の内訳としては,ほとんどを高齢者が占め,6 返りをするシステムがありませんでした。治療中の 割が70歳以上の状況であり,それに伴い高齢者の通 菌検査も地区担当保健師が各自で主治医に確認し結 所施設や入所施設,患者が入院していた医療機関な 果を把握している状況でした。そこで,服薬支援に どの接触者検診を多く抱えています。また一方で, ついての基準や評価がなく保健師が実際行っている 年齢の若い20∼30歳代の患者の割合はほぼ横這い 服薬支援の状況を振り返り,保健所全体で評価して で,外国からの留学生や就労者もおり,言葉の問題 いく必要があると考え,まずは,日本版DOTSの取 など苦慮することもあります。 (図1) り組みでコホート検討会を実施することとしまし 図1 た。 年代別患者発生割合 開始前には先進保健所でのコホート検討会を見学 H17年 0∼9歳 10∼19歳 20∼29歳 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳 60∼69歳 70歳以上 H16年 H15年 H14年 H13年 しプレゼンテーションの方法や,発表のための書式 などの提供を受けました。そして平成14年度に第1 回目のコホート検討会を開催することができまし た。実施する際には,普段使っている結核患者登録 をできるだけ利用し,簡単な書式で菌検査の状況, 0% 20% 40% 60% 80% 100% 服薬確認が時系列でわかるものを利用し,コホート 検討会を開催することで地区担当保健師にとって負 ●岡山市保健所の結核業務態勢 担が増えたと感じないように心がけました。 岡山市保健所は以前から保健師が地区分担制で業 務を行っており,保健所の医師1名,結核担当保健 ●コホート検討会の実際 師1名,事務者1名と各地域の6保健センター(並 検討会の対象者は本来ならば登録患者全員に行う びに合併町にある4つの分館)の約60人の保健師で べきですが,まず,喀痰塗抹陽性患者のうち治療終 結核業務全般を行っています。係の担当者が届出受 了した人を中心に検討を行いました。あわせて喀痰 理や結核診査協議会,職員研修など全市に関わる業 塗抹陽性患者以外でも処遇困難事例や,再発事例な 務を行い,対患者支援については主に地区担当保健 ども取り上げ,どのように支援していったかなどを 師が行っており,届出から登録除外になるまで継続 まとめ,保健師全体のレベルアップを図る職員研修 して支援しています。 も兼ねるように企画しました。出席者は保健所の職 員以外に結核医療の専門医師と,結核研究所の先生 を講師としてお願いし,医療面や,保健師の実際に 10 3/2007 複十字 No.314 支援している状況についてアドバイスをいただいて 図3 います。検討内容は,菌検査の把握ができているか % 100 年度別服薬支援確認月数の割合 (コホート観察の治療成績が治癒,治療完了になっ ているか),保健師の服薬支援ができているか(初 80 回面接ができているか,治療中に訪問や電話等で確 60 実に服薬確認ができているか,中断を把握している 40 場合速やかに把握できているか,中断理由を確認で きているか等)を中心に担当保健師が発表し,でき 月 カ 9 平成16年度 月 カ 8 月 カ 7 平成15年度 月 カ 6 月 カ 5 平成14年度 月 カ 4 月 カ 3 月 カ 2 ●コホート検討会での気づき 0 月 カ 1 ている点,改善が必要な点などを検討していきました。 20 平成17年度 平成14年度から17年度まで年1回から2回のペー スでコホート検討会を実施してきました(表)。そ 表 て訪問や電話連絡をしていてもただ薬を飲めている コホート検討会実施状況 実施日 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 H15.1.14 H15.6.23 事例数 12 21 検討時間 2時間30分 2時間30分 H16.1.16 9 3時間 H16.6.28 11 3時間 H17.2.14 18 3時間 H18.3.20 20 3時間 参加人数 研修内容 かを聞くだけでなく,どのように服薬確認をしたか 28 31 をきちんと記録に残す大切さなども学びました。 再発事例についてグル 19 ープ討議 多剤耐性となって再治 27 療となった事例紹介 ●今後の課題 26 外国での結核対策紹介 訪 問DOTSを 行 っ た 事 20 例紹介 検討会実施前には患者支援について治療成績でし か評価できていなかったものが,コホート検討会を 開催することで,保健所全体で患者の1つ1つの結 の中で,菌検査によって治療成績を見るとき,地区 果を振り返り,地区担当保健師だけでなく岡山市保 担当保健師が個別に把握することでは十分に菌検査 健所として改善すべき点に気づきそれを次に生かし の把握ができていないことに気づきました。そこで ていく場となっています。しかし,初回面接はほぼ 保健所でまとめて治療開始後2ヵ月目と治療終了時 100%できていますが,地域での服薬確認について に菌検査を把握することにしました。それによって はまだ不十分であり,保健師全体のレベルアップが 把握した菌検査をサーベイランスに反映することが 必要な状況です。さらに今年度からは,DOTS事業 できるようになりました(図2)。また,初回面接 の一つとして服薬支援アセスメント票を利用し,保 の重要性や,ただ服薬確認するだけでなくその患者 健師によって服薬確認の回数や,方法などのばらつ が治療開始後何ヵ月目に当たるのか,その月にあわ きがあったものを点数化して,できるだけ各保健師 せた支援ポイントをもって服薬確認することを学ぶ が同じように患者支援できるようにしていきたいと ことができました。それによって年々確認できてい 考えています。 るパーセントが増えてきています(図3)。あわせ また,現在結核病床を持つ病院とは看護間連携は できているのですが,まだ保健所がどのように患者 図2 支援をしているかが,病院に情報提供できていない 菌検査による治療成績の割合 ことからコホート検討会で検討したことを各病院に 100% 還元できる方法を考えていきたいと思っています。 80% 不明 脱落中断 60% 治療失敗 死亡 その他 40% 治療完了 治癒 20% 今後,引き続きコホート検討会を通じて結核業務の 評価をおこなうと共に,岡山市版DOTS事業として 服薬支援を充実し,患者を治療完了に結びつけるこ とができる保健師の活動としていけるよう,内容を 充実していきたいと考えています。 0% 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 3/2007 複十字 No.314 11 シリーズ かたき病 ―― 結 核(7) 結核の化学療法 素晴らしく進歩したけれど… 結核予防会 会長 青木 1.人類最大の医学的進歩の一つ 正和 図1 喀痰塗抹陽性初回治療例の治療成績(2004年登録例) 死亡 13% 脱落・中断 1% 1944(昭和19)年のストレプトマイシン(以下ス 治療失敗 5% トマイ)の開発から半世紀の結核化学療法の進歩は, 人類が達成した医学的進歩の中でも最大の成果の一 菌成績不明 3% つと言えます。先ず,1955(昭和30)年にほぼ確立 したストマイ,ヒドラジッド(以下ヒドラ),パス の3剤併用で多くの結核患者が死なないで済むよう になり,1975(昭和50)年のリファンピシン,ピラ 治療成功 78% ジナミドを含む短期化学療法の開発で結核は本当に 治るようになったと言われます。これによって救わ れた命,享受することができた生活は世界では想像 図2 年齢階級別新登録患者の1年以内の死亡率(2005年 もできないほど莫大なものであると言えましょう。 登録例) 第2には,今では1∼2週間の化学療法で大部分 の結核患者の感染性がなくなり,他人に感染させな 歳 40−44 1.2 45−50 1.6 いようになりました。 この結果として1年余の安静, 50−54 家族や親しい人からの隔離,あるいは,胸を大きく 55−59 切る結核外科療法から結核患者は開放されました。 臨床対照実験」の手法が確立され,エビデンスに基 75−79 づく医学を大きく発展させたことも誇るべき功績で 80−84 していることは結核以外では見られない素晴らしい 4.1 65−69 70−74 確実に治るまでのシステムを作りあげ,世界で実践 6.4 60−64 第3に,結核化学療法の研究で「無作為割り当て した。その上,患者支援方策やDOTSの確立などで, 5.5 6.1 8.3 12.3 16.5 85−89 21.1 24.4 90歳∼ 0 5 10 15 20 25 30 % 成果と言えましょう。 それでは,結核化学療法は既に完成し,結核の治 います。これを年齢階級別に見ると図2に示したよ 療には問題はないか,といえばそうは言えません。 うに,75歳以上では10%を越える患者さんが死亡し 次に述べるように,多くの問題が残されていると言 ており,85歳以上では20%以上の死亡率を示してい わざるを得ません。 るのです。2005(平成17)年の塗抹陽性肺結核初回 2.今でも救えない高齢患者が多い 図1は,2004(平成16)年に登録された塗抹陽性 12 治療例10,457例のうち4,907例,46.9%は70歳以上の 高齢者です。およそ20%もの方が亡くなっていては, 「結核は今では治る病気」とはとても言えません。 肺結核初回治療例の治療成績を見たものです。確か 優れた薬があるのに,何故このように多くの方が に,78%の患者は治っていますが,13%の患者さん 亡くなるのでしょうか? この疑問には1959(昭和 が登録後9ヵ月までに結核または非結核で死亡して 34)年以降「国立療養所(国立病院機構)全国共同 3/2007 複十字 No.314 表 国立療養所(国立病院機構)全国共同研究班 結核患者 死亡調査 す。RFPとINHの両剤耐性例は,他の薬に耐性があ ろうがなかろうが多剤耐性結核MDR-TBと呼ばれ, 年 1959 1969 1979 1989 1999 2004 特に注目されています。わが国の未治療患者での 全死亡(人) 3,433 2,079 1,402 1,011 724 640 MDR-TBの頻度は0.7%と報告されています。 1838 1363 902 551 332 270 肺結核死(%) (53.5) (65.6) (64.3) (54.5) (45.9) (42.2) 最近,MDR-TBでさらに一定の2剤以上に耐性 60歳以上の% 11.1 43.8 63.0 75.9 81.8 91.4 を示す例を超多剤耐性結核XDR-TBと呼んで注目さ 肺機能不全 51.2 48.5 56.3 44.5 26.5 15.9 れています。耐性の問題は化学療法では重大な問題 全身衰弱 15.5 23.7 21.8 25.2 41.3 51.5 ですが,稿を改めて考えたいと思います。 急速進展 4.7 9.2 8.4 14.1 24.4 18.2 喀 血 25.6 16.1 8.0 6.7 4.5 2.6 4.標準治療を行えない患者が1/3 化学療法は進歩したのに,今でも治療失敗や死亡 研究班」が繰り返し行っている結核患者死亡調査が が後を絶たないもう一つの理由は,今,最も有効な 答えてくれます。表に見るように,国立病院機構で 治療法と言われる「標準治療」*を使えない,あるい 入院中に亡くなる結核患者の死因は非結核死が少し は,使わない患者が,初回治療例の36.7%もあるこ ずつ増えていますが,それでも2004年にも結核死が とです。この大部分の理由は,「患者が高齢で肝障 42.2%を占めています。1959年から2004年までの45 害の副作用の可能性があるためにピラジナミド 年間に最も変わったことは,入院中に肺結核で亡く (PZA)を使えない」というものですが,この他に なった患者さんで60歳以上の方の割合は,1959年に も合併症,肝機能検査での異常値, 「副作用が心配」, は11.1%だったのが2004年には91.4%になっている 「何となく」などさまざまな理由が挙げられていま ことです。そして肺結核による死亡の直接の原因は す。標準治療が最も有効なことは世界で繰り返し確 全身衰弱が51.5%と半数以上を占め,また,入院中 認されているので,可能な限り何とかして使用する にも係わらず急速な進展が18.2%と増えてきている ことと,「標準治療を行えない患者の治療方式ガイ ことです。しかも最終入院から死亡までの期間をみ ドラインの作成」が重要と考えられます。 ると1ヵ月以内46%,2ヵ月以内が66%と非常に早 期に亡くなっています。高齢,重症,肺機能低下, 5.より確実な治療を――DOTS 低アルブミン血症の場合に致死的になることが分か いくら良い薬があっても,患者が服用しなければ っていますが,これからますます比率が増えていく 病気は治りません。標準治療なら6ヵ月の服薬で完 「高齢結核患者の死亡をどうすれば減らせるか?」 了するのですが,不規則に服用したり,中断したり は大きな課題なのです。 3.耐性も阻害要因の一つ して治療に失敗する例も後を絶ちません。このため 「日本版DOTS戦略」がすすめられ,服薬を確実に するためのさまざまな支援事業が行われています。 もう一つの問題は耐性の問題です。抗結核薬は言 今後,入院期間が短くなる傾向があるので,外来で うまでもなく結核菌を殺菌し,あるいは増殖を止め のDOTSをどのようにして推進するかも重要な問題 て効果を発揮します。菌がある薬に耐性になってし の一つです。 まえば,その薬は効きません。2002年の全国調査に * 標準治療:RFP,INH,PZA,EB(またはSM)の4 よると,今まで結核の薬を使ったことのない新登録 剤を2ヵ月,その後RFP,INHの2剤を4ヵ月使う6 患者でも8.2%はリファンピシン(RFP),ヒドラ ヵ月療法(2RHZE/4RHと略すことが多い)。世界中で (INH),ストマイ(SM),エタンブトール(EB) 標準治療として使われている。 の4つの主要薬剤のどれかに耐性をもっています。 これらの薬剤のうち最も重要なRFPとINHの両剤に 耐性になってしまうと,治療は極めて困難になり, 文献:町田和子ほか,抗酸菌症治療研究会,2006・12・2 (東京) 手術をしなければ治癒率は今でも50∼70%程度で 3/2007 複十字 No.314 13 平成18年度フィルム評価会に参加して フィルムの質的向上,読影の向上を目指して 結核予防会千葉県支部(ちば県民保健予防財団) 画像診断部参事 平成18年度・結核予防会フィルム評価会が2006年 12月21日,22日の2日間,結核予防会結核研究所に おいて,全国44支部施設から医師13名,放射線技師 63名と,メーカーから9名の技術者が参加して行わ れました。 プログラムは,初日に胸部間接フィルムの評価と フォーラム「胸部検診の精度管理の向上に向けて」, 2日目に胸部直接フィルムの評価と技術検討会と, 精度管理を重視した内容でした。 <フィルム評価> 評価は参加者が6班に分かれ,それぞれ医師であ る班長と放射線技師の副班長が進行役となって合議 のうえで総合判定を下します。初めにグループ間の 評価に偏りをなくするためにサンプルフィルムを用 いた評価を行い,充分な全体討議を加えて統一性を 持たせました(目合わせと称する)。 本評価は全国支部か集まった間接・直接フィルム について,濃度,コントラスト,鮮鋭度等の10因子 (直接:9因子)について,それぞれの良否を解析 して最終的に読影価値からみた総合判定を下しまし た。 ① 間接フィルム A評価「読影価値の極めて優れたフィルム」と, B評価「優れたフィルムで,A評価に近いもの」が 115本中55本(48%)と約半数,C上評価「読影可 能で,B評価に近いもの」が54本(47%)でした。 ② 直接フィルム A評価とB評価が95枚中42枚(44%),C上評価 が51枚(54%)でした。 ③ デジタル処理フィルム 評価AとB評価が48枚中14枚(29%),C上評価 が31枚(65%)でした。 結核予防会フィルム評価会が合格基準としている A評価,B評価,C上評価は,間接・直接フィルム でそれぞれ95%,98%を占めており,結核予防会支 部施設が撮影しているフィルムは,読影価値の高い ものであると言えましょう。また,精度管理も行き 届いた状況下にあることが窺われました。 デジタル処理フィルムは22支部施設から集まり漸 次増加しております。今後,モニター読影や画像評 価面の精度管理が必要と感じました。 14 3/2007 複十字 No.314 矢部 勤 C上評価以下であったフィルムはわずかですが存 在しました。評価を下げた要因については,装置, 撮影条件,現像処理等に分けて改善案を纏めて当該 支部に提案されております。 <フォーラム> 最初に結核研究所の星野斎之医師から結核病型や 胸部疾患症例で精密検査の対象になる割合が低かっ た症例,健常者例を精密検査とした症例の画像評価 が実施されました。 次に,岡山県健康づくり財団附属病院の西井研治 医師から「肺癌検診の精度管理」と題して,専門的 な立場から,1)肺癌検診は必ずしも肺癌死亡率の 減少に寄与しているとは言えないレベルの市町村や 検診機関が存在する,2)精度管理が行き届いてい ない市町村や検診機関が存在する,3)精度管理を 無視した価格競争になっている等,肺癌検診の現状, 肺癌検診に必須な実践的な精度管理について話さ れ,大変参考になりました。 <おわりに> 検診の精度向上は,検診を実施していくうえで重 要であり,精度の良否は結核,肺癌検診に大きく影 響すると考えます。現在,結核予防会が実施してい る胸部検診のシェアは全国の約半数を占めます。 このことから「結核予防会フィルム評価会」の果 たす役割は重要でありその責務も重いと考えます。 今後も評価会を継続することにより,間接・直接フ ィルムの質的向上,その読影の向上に期待したいと 存じます。 全体でのフィルム評価の風景 フィルム評価会 フォーラム:胸部検診の精度管理の向上に向けてより 「肺癌検診の精度管理」 平成18年12月21日º∼22日»,結核予防会フィ 次に受診者数の伸びは全国統計では少なく,集団 ルム評価会が開催された。この中で行われた21日 検診はほぼ横ばいとなっており,個別検診が都市部 のフォーラムで,肺がん検診ガイドラインの策定に において増加している。受診者数が増えているのに, も関わっていらっしゃる岡山県健康づくり財団附属 それに応じて発見数が増えていないのは,個別検診 病院長の西井研治先生に,肺癌検診にまつわる様々 の精度管理が十分ではない可能性が想定される。個 な問題点を提起していただいたので,報告する。 別検診に関するまとまったデータがなく,精検完了 今,肺癌検診が置かれている状況は非常に厳しい ものがあり,生き残っていくのは本当に厳しいとい 率が61.5%(集団方式80.7%)と低いので精度にば らつきがある。 現在,考えられる肺癌検診の精度管理の問題点は, うことが言えるだろうという発言があった。 国では,現在肺がん検診ガイドラインの作成を行 ①個別検診の精度管理を高めることである。地域の っており,標準的な方法で検診を実施すれば,死亡 精度管理をどう見守るかという問題においては,生 率低下を証明できるだけの検診であることが報告さ 活習慣病精度管理指導協議会の機能を高めることが れていて,自信を持ってやっていればいいという励 必要であり,生活習慣病精度管理指導協議会が,検 ましの言葉も頂いた。ただ,CT検診については, 診機関ごとに数値を集計し,検討した事項を公表し 死亡率を低下させる十分な証拠が現在のところない ていけば,検診受診者も検診委託自治体もその事実 ということで,勧められないという結論に至ってい を比較検討することができる 次に大きな問題は,②検診受診者の減少である。 ることも報告された。 さらに,注目されていることは精度管理で,先日 老人保健法における肺癌検診の最初の入り口は市町 (12月16日)に行われた肺癌集検セミナーでの議論 村が対象者に受診勧奨するところから始まるが,そ について,紹介された。大阪府立成人病センター疫 の勧奨が個人情報保護や市町村合併などの諸事情で 学課の中山富雄先生がまとめられた報告による図 十分できないことにある。受診者がきちんと把握さ 「性・年齢階級別受診者数と発見肺癌数」を見ると, れなければ受診間隔が定まらず,高い精度を保つ検 60 歳以上から発見率が上がり,受診効率が高い, 診は望めなくなる。さらに,検診方法が施設・地域 一方,効率は悪くとも重症化を防ぐという意味では, ごとによって異なり,精検率にも影響し,誰のため 40歳台からの受診を促すべきであろうということ の検診かわからなくなるという,肺癌検診の存在意 がひとつにある。 義が問われるようになっている。 図 受診数 (人) 男受診者数 女受診者数 男発見肺がん数 女発見肺がん数 800,000 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 発見肺がん数 (人) 679 800 700 287 600 500 400 300 463 403 199 120 32 315 194 159 53 46 8 242 176 72 80歳以上 75∼79歳 70∼74歳 65∼69歳 60∼64歳 55∼59歳 45∼49歳 19 50∼54歳 16 40∼44歳 200,000 100,000 0 岡山県下で行った市町村の検診担当者アンケート 性・年齢階級別受診者数と発見肺癌数 200 100 0 の中でも,検診委託業者選定に入札という価格競争 が入り込み,精度管理項目を無視した選定が実施さ れていることが判明している。この現実を見極め, 精度管理を高めて,受診者の死亡率低下が肺癌検診 の目的であることを受診者・検診を委託する市町 村・そしてその精度管理を見届ける生活習慣病精度 管理指導協議会を含めた都道府県・国にきちんと示 していく必要があるとまとめられた。 (文責:編集部) 3/2007 複十字 No.314 15 第28回結核予防会事務職員セミナーに参加して 第28回結核予防会事務職員セミナーに 参加して 結核予防会兵庫県支部総務部企画調整課 主任 和久 実は平成17年度の事務職員セミナーの受講者候補 として心の準備をバッチリしていたのですが,個人 情報保護のプライバシーマーク取得の事務手続きと 重なり,泣く泣く断念してから1年,入社5年目で ようやく清瀬の地に立つことができました。 こんな感傷に浸る間もなく部屋に荷物だけ入れ, セミナー初日が始まりました。 最初の青木会長による講義では,以前姫路市の結 核予防医師研修会においても講師として来て頂いた こともあって,医師対象でも十分わかりやすかった 印象があり,今回のお話は事務職員向けで更にわか りやすく感じました。金子専務からは,結核対策の みならず,医療制度改革や公益法人制度改革など各 支部が現在直面している題材が出され,参加された みなさんの関心も高いようでした。なかでも「公衆 衛生の向上を目的とする事業」を公益事業とみなさ れるかどうかは今後の支部運営に大きな影響がある ため注意して聞いていました。篠原課長による「ネ ットワーク事業」に関しては,全国組織である結核 予防会のネームバリューを生かした意義ある発想で あることに感心しました。山下部長による「本部事 業について」では自分自身が結核予防会支部の職員 であるという自覚のもと,日常業務を振り返り,仕 事内容の確認の意味を込めて一つ一つチェックしな がら聞きました。結核研究所大角主任研究員の国際 協力活動の講義からは世界中からの入国による感染 の可能性がある限り世界レベルでの結核撲滅が重要 であると感じました。 2日目はワークショップで,4名の先生方からの 助言のもと「組織の求める事務職員像」について意 見を交換し合いました。 我々がすべきことは何かを考えたときに,①様々 な職種間における意思疎通をするための工夫 ②支 部の経営状況や向かっていく方向を全ての職員で共 有する工夫 ③職員の役割,職責に応じた意識付け や能力,技術を習得するための教育制度を自分たち から団体へ提案していくこと ④複十字シール運動 では外部に協力を得る前に職員である自分たちが率 先して知識を深めること ⑤医療制度改革,公益法 人制度改革をきっかけに各支部と本部が危機感を持 ち,経営感覚を磨く必要があること…このようなま 16 3/2007 複十字 No.314 秀則 とめになりました。 3日目はJALアカデミーの斉藤先生による接遇の 講義でした。この種類の講義は実は支部においても 受講したことがありましたが,受講してみると抜け ていたことがあって,実践し身体で覚える努力をし ないと受講しても意味がないことに気づきました。 最後の講義は島尾顧問による「日本の禁煙対策」 という内容でした。一昔前は男性ではほとんどの人 に喫煙習慣があったのが現在では約半数になってい るとの話から鉄道の禁煙車両が増え,敷地内禁煙の 動きが活発であることも頷けました。また日本の禁 煙対策が諸外国に比べ地味であることも知りまし た。 研修期間全体を通じての印象ですが,全国支部参 加者の自己紹介が,全国の街に放浪癖のある私は仕 事面だけでなく地域情報がゲットできるので,とて も楽しみでした。 「お国訛りも入れて話しましょう」, 私は自己紹介でこう呼びかけました。参加者が地域 性や個性を発揮し研修会という画一的になりやすい 場で言葉による個性ある表現は格好のツールになる と考えたからです。その狙いが当たったかどうかは わかりませんが多くの支部の方と情報交換やお話が でき満足しています。 またこのセミナーの準備に奔走された三宅課長を はじめとする本部普及課の皆様ならびに本部の皆 様,そして人生の先輩としてアドバイスを頂いた4 名のアドバイザーの先生方にこの場をお借りしまし て厚くお礼申し上げます。 研修を終え晴れやかな笑顔の参加者 JATA健康ネットワーク通信 結核予防会 健康ネットワーク事業部調整課長 菊地 2月5日·∼6日¸,こまばエミナース(目黒区) において,「結核予防会における『特定健診・特定 No. 12 健司 がリードしていってほしいという期待を寄せられ た。 保健指導』戦略会議・戦術会議」が開催され,支 部・本部事業所の163名が参加し,これからの結核 予防会が目指す方向性について共通認識を持つ機会 を得たので,ここに報告する。 健診と保健指導は1セット 産業医の立場から,大阪ガス株式会社健康開発セ ンター統括産業医岡田邦夫医師から,「特定健診・ 特定保健指導の課題と目標」と題して,発表があっ た。今回の医療制度改革では,生活習慣病の予防健 診というものを意識したものとなっている。つまり, あまり症状が著しく現れていなくても,本人が納得 して保健指導を受けたいと意識できる手法が求めら れている。そして,実際に行動変容が促されるよう な,保健指導が必要である。今までのやりっぱなし, 結核予防会のリーダーシップを求める大村補佐 言いっぱなしは,医療費効果が導き出されないため, どの医療保険者からも求められない。 結核予防会の意識改革 さらに,特定健診から特定保健指導の流れもタイ 厚生労働省保険局総務課医療費適正化対策推進室 ムラグを無くすことが,実施手法の一つとして挙げ 大村良平室長補佐より,「制度改正の趣旨と保険者 られている。つまり,健診を実施し,その当日にラ の動向及び全国組織健診機関の役割」と題して,講 イフスタイルに基づいた保健指導を健診結果とリン 演があった。今回の医療制度改革は,生活習慣病と クさせて行うことが, 受診者本人の理解度が高まり, いうヘルスの問題を,医療費という保険サイドから 行動変容をスムーズに導き出せる。また,保健指導 見直し,予防を重視した形で進められていることを の一貫性を持たせるため, 保健指導の初回と2回目, 説明された。今まで,市町村の住民健診・健保の福 3回目の整合性を取る必要も出てくるため,保健指 利厚生の分野で行われてきた健診が,医療保険者の 導の質を高め20年度実施に向けて準備を進めていか 義務となり,健診のアプローチが,市町村の保健衛 なければならない。 生担当者から,国保などの医療保険担当者に対して また,健診機関は,健診ができるということだけ 標準的な健診・保健指導プログラムの確定を 前に でなく,保険者に対して健診内容の提案を行い,健 厚生労働省健康局総務課保健指導室二宮博文保健 診とそれに続く保健指導によってもたらされる医療 師より,「望まれる特定保健指導のあり方」という 費効果を評価するところまで,一連の流れで実施す 講演が続いた。これからの保健指導は,糖尿病等の ることが要求されている。例えば,医療費分析一つ 生活習慣病の有病者・予備群を25%減少させること とっても,在院日数が多いのか,1件あたりの医療 を政策目標として掲げている。まず保健指導対象者 費が高いのか,老人医療費が高いのか,どの年齢層 を選定し,情報提供するグループと動機付けを行う をターゲットにするべきなのか,これらは地域の状 グループと積極的支援をするグループに階層化す 況によってかなり違ってくる。そこで,健診から保 る。さらに,それぞれの保健指導に実施要件を設け, 健指導の一連の流れを,医療保険者と共に展開でき ポイント化して効果が出る保健指導の一区切りをつ るネットワーク(全国支部)というシステムをすで けるものとなる。 行われることが指摘された。 に持っていることは,結核予防会の強みである。 今後,保険者協議会などと情報交換し,さらに国 保ヘルスアップ事業などと関わることで,特定健 今後,標準的な健診・保健指導プログラムは,3 月末には確定版として,広く公にされることになっ ているとまとめられた。 診・特定保健指導の実施事業者として,結核予防会 3/2007 複十字 No.314 17 医療保険者にとって魅力ある健診・保健事業実施 者として内定を受けるためには,1)保険者の立場 で進めること,2)さらに市町村であれば首長,企 業であれば社長や幹部の意思を確認し,実施内容の 意志統一を図ること,3)健康支援プログラムを理 解してやりっぱなしにならない実践をサービスとし て提供すること,4)プログラムの評価や幹部への 事例報告から課題を提示する松尾敏一部長 事例報告から本部支部の一体感を 説得を協力依頼できる学術的支援者を確保するこ と,5)全国支部とシェアできるプログラムをモジ ュール化して,普遍化することを条件としてあげた。 岩手県支部健診部松尾洋一部長と福岡県支部企画 とにかく,現在行っている健康支援者養成研修の最 事業第二部松尾敏一部長より,事例報告があった。 大限の活用や,ボランティアとして結核予防婦人会 まず,岩手県の松尾部長は,現在支部で行っている の活用など,今有る資源,すでに活動しているネッ 事業が,健診と教育はセットで行ってきたことを重 トワーク事業を有効活用しつつ,予防会本部支部が 要視し,現在の事業を特定保健指導に生かしつつ, 提供できる健診・保健指導の姿を早く形にして,ま 今後の対策のポイントを報告された。事後指導や講 だ手をつけられない保険者に提案していく作業に取 演,健康相談など,どれもが特定保健指導への移行 り掛かる必要性を強く訴えた。 が可能であり,国保ヘルスアップ事業を通じて健康 支援のOJTの準備を行っている。さらにできる事業 内容(事業所に対して提案できる得意分野)をきち んと見極めることをまず実施し,さらに企業や大都 市を顧客として見据えている。そして,岩手県では, 保険者協議会との情報交換を始めていることなどが 情報提供された。 次に福岡県の松尾部長は,福岡県の特定健診・特 定保健指導のモデル事業実施の経緯と現状を報告さ れた。準備段階で,福岡県健康対策課と健保,結核 これからの予防会の使命を語る金子専務 予防会福岡県支部の3者で打ち合わせを行い,保健 指導の階層化は産業医科大学の松田先生に依頼し, 結核予防会の戦略とは 積極的支援の部分を実施した。しかし,保健指導に 最後に結核予防会金子洋専務理事より,今後の進 は地理的・人員的な問題があり,健保側にも拠点支 むべき方向性が示された。特定健診・特定保健指導 店への集約という協力を得て, 73名の支援を行った。 の受注と質の確保に向けて,本部と支部が協力しあ 現在,2回目の保健指導を行うことになっており, っていくことを強調した。 最終的な課題をあげていくことになっているが,現 「メタボリックシンドロームの対象者・予備群を 状でも契約に結びつける広報や事業者との情報交 どれだけ減らすかという結果が求められている事業 換,受診システムのコンピュータ対応,保健指導で であり,質の高い健診と保健指導をできるかが最大 きる保健師や,栄養士,運動指導士などの研修や人 のポイントになる」と述べ,全国組織のメリットを 員体制,健診実施のマニュアル化などの課題を報告 生かした結核予防会のネットワーク事業をさらに推 された。 進する呼びかけから始まった。 結核予防会が特定健診・特定保健指導に取り組む 特定健診・特定保健指導の受託に向けて 18 前に,保険者の捕らえ方を整理した。ターゲットを アドバイザー片山文善氏より,「特定健診・特定 3つの保険者(市町村国保・健保/政管健保・複数 保健指導事業計画受託対応について」という題で, 県にまたがる健保)に分け,さらにその被扶養者を 発表があった。2007年10月に保険者が事業実施者を ターゲットにした戦略を考える必要があるとした。 内定するまでに事業計画を結核予防会としてまと その上で,被保険者と被扶養者が全国どこにいても, め,受託に向けての準備を3月末までに固める必要 健診と質の高い保健指導を受けられる体制を整備す を強く話された。 ることが期待されており,これこそが「結核予防会 3/2007 複十字 No.314 の使命」とした。 初日のプログラムを終了した。 具体的には,情報を本部支部で共有化し,運営の 改善など国にも要望していく考えを示し,メタボリ ックシンドロームをはじめとする生活習慣病予備群 を減らすための精度管理や,行動変容を促す保健指 導のノウハウを確立し,さらに全国共同開発・共同 利用できるコンピュータシステムを持って,どこで も誰でも受けられる全国のネットワークをJATA健 康ネットワーク事業部として充実させていく。その 指導評価委員飯島先生からのメッセージ 方策として,19年度からさらに体制強化を行い,疫 学的分析や保健指導のスキルアップを充実させるこ とを表明した。 戦術会議を通して 2日目には,「保健指導」「渉外」「システム」の 結核予防会は,会の憲法でもある寄付行為を改正 3班に分れて班別討議を行った。その後の全体討議 し,生活習慣病対策を主要な事業と位置付け,全国 にて,代表者の報告及びオブザーバーのコメントが 組織としての結核予防婦人会との連携強化も図り, 発表された。まず保健指導の班は,群馬県支部事業 生活習慣病予防を国民運動として展開する。 部保健課山口泰子課長補佐から概要が報告され,鹿 加えて支部のブロック会議を行い,その流れを受 児島県支部計画調整課保健推進班山本聖子班長から けて全国会議で戦略会議を随時行っていきたいとい 追加があり,さらに指導評価委員の飯島美世子先生 う意向を発表した。また,支部に対し,健康支援者 より19年度半ばに健保が計画書を出すのだから,20 養成研修の修了者をこれからの特定健診の中心にす 年度からは,特定保健指導をするのだという強い意 え,4月から始まる保険者協議会の保健指導者研修 気込みでがんばりましょうと応援を頂いた。 への参加やまたそこから派生すると想定される研修 続いてシステムの班は,群馬県支部事業部保健課 会事業への受託についても検討していることを明ら 船津正課長補佐より報告,本部健康ネットワーク事 かにした。 業部サポート・システム課吉田達也課長より補足が また,全国組織のメリットを生かし,コスト削減 あり,既存のコンピュータシステムの活用や,単独 を図るために,コンピュータ情報システムを共同開 事業所での特定健診・保健指導であっても,結核予 発し,共同利用を進める方針である。記録の管理・ 防会が開発するシステムをぜひ活用して欲しいとい 健診結果の自動判定・健診結果に基づく保健指導対 う要望が上がった。 象者の振り分け・保険者への報告・保健指導のツー 最後に,渉外の班は,秋田県支部企画事業推進部 ルとなる効果的システムなど,「特定健診・特定保 縄田屋宗夫部長より報告,アドバイザーの片山文善 健指導を実施するには情報システムの開発は不可欠 氏より保険者協議会との情報交換を密にし,危機感 である」との考えを表明した。 をもって営業活動を開始していただきたいと激励を 最後に,平成20年4月から実施される公益法人制 受けた。 度改革において,公益法人である各支部の公益性認 午前中の時間だけでは,とても話し尽くせない内 定を念頭において,JATA健康ネットワーク事業が 容だったため,仲村理事長,金子専務理事,竹下企 展開されていることを強調した。 画・情報部長からも,様々な機会を作って,全体会 議などの情報交換を行いたいという感想が述べら COPD共同研究について れ,会は終了した。 結核予防会事業部普及課青木新主任より,COPD の事業について,昨年11月16日に行った共同研究記 者発表会から,結核予防会がなぜCOPDの共同研究 を行うのか,また何を行うのかを説明した。すでに 1ヵ所の市で,住民健診1389名の問診を実施し,19 年度からは全国支部でも実施することを踏まえて, 共同研究委員会と事務説明会を2月21日実施するこ と,また23年度までの実施にあたり,適宜委員会と 事務説明会を実施することを支部の担当者に報告し, アドバイザー片山氏の激励を受ける 3/2007 複十字 No.314 19 インドネシアプロジェクトの新しい方向を探る 首都ジャカルタ都市部における 結核支援活動の10年間の成果 結核研究所 所長 石川 日本の結核予防会はシール募金の益金による国際 信克 との協議を行いました。 協力事業の一環として,1997年11月よりインドネシ 上記の2診療所では,過去10年間で6500人もの塗 ア結核予防会(PPTI)との共同プロジェクトを実 抹陽性患者の治療を行ってきました(表1)。活動 施してきました。主な内容は,首都ジャカルタ市内 は年々改善・向上しており,全体としては,毎年 の結核対策(DOTS)への技術的,資金的支援です。 5000人に及ぶ結核を疑う患者の検査をし,900人の 活動場所はPPTIに付随した胸部診療所(JRC)と 喀痰塗抹陽性患者を発見,塗抹陰性でもレントゲン 市内スラム地区にあるバラデワ診療所(BC)の2 等で1000人以上の結核患者を診断しました。これは ヵ所で,貧しい患者さん達への効果的なDOTSの促 進を目指してきました。 DOTSに通ってきたバイク運転手(右),事務員(左) 調子はどんどん良くなっていると DOTSにきた患者さん達 当初は国の結核対策も弱体で,都市部の貧しい患 ジャカルタで治療している全患者の2割程度に相当 者への対策は殆どなされておらず,小規模ながら, するということです。また治療成功率は90%と高い このプロジェクトがパイオニア的な役割を果たして 治療成績です(表2)。ただ,JRCとBCでは,差が きたといえます。 あり,患者発見数も治癒率もBCの方が高くなって しかしこの数年間, 国の対策も強化されつつあり, います。この理由には,JRCは街の中央部に位置し, 薬の配給や患者の診療記録や台帳の整備もされてき 患者の毎日の受診には困難があるとみられ,BCは ました。プロジェクト10年目を迎えるに当たり,そ 地域に密着しており,住民との距離も近いことが挙 の成果を見直し,今後のあり方を検討することにな げられます。検査室機能の評価としては,塗抹標本 りました。 の再チェックによる読み間違い率で見ると,JRCは まず,昨年7月に太田正樹医師(結核研究所)が 3%程度でやや高く,BCでは1%以下で低くなって 予備的調査を行い,11月には私が現地を訪問して視 いて,両診療所の検査室スタッフの質という課題が 察をし,ソエディオノPPTI事務局長はじめ現地側 あります(表3)。 表1 共同プロジェクト患者発見数の推移(1998年∼2005年) 20 人/年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 有症状結核疑 3036 4130 4043 4452 4619 4423 4987 4899 塗抹陽性患者 516 866 799 769 841 860 909 869 塗抹陰性結核患者 776 984 656 1012 1070 1167 1282 1796 3/2007 複十字 No.314 これらの活動の資金源は,日本のみでなく他の国 費等の支援や,レントゲン検査や他の検査費用への や組織からの支援,自力の部分もありますが,日本 支援も正確な診断に役立ってきたといえましょう。 の結核予防会が,上記の高い成果に大きな貢献をし 印象的だったのは,バラデワ診療所に来る多くの てきたことは明らかです。特に貧しい患者への交通 若い患者さん達が, このクリニックにとても感謝し, 喜んでいる様子と,スタッフ達の熱意でした。これ には,ここで長く活動してきたハリム医師の献身的 表2 塗抹陽性患者の治療結果(1998年∼2005年) 患者合計 計 ジャカルタ 胸部診療所 (JRC) バラデワ 診療所 (BC) 6429人 1411人 5018人 な仕事振りも無視できないでしょう。貧しい地域に 根ざし,さまざまなボランティア活動も動員したや り方は,結核予防会の真の姿であると感じました。 今後の継続の課題として,もう10年もやって,か 90.2% 77.9% 93.2% なりの成果も出たので,共同プロジェクトをするこ 死亡 3.2% 2.8% 3.3% と自体は意義があるとしても,漫然と同じ事を続け 治療失敗 0.9% 3.5% 0.4% るのはいかがなものか,という質問を合同評価会で 治療脱落 2.7% 5.3% 2.2% 投げました。JRCはぜひ同じように続けてやりたい, 転出 3.0% 10.7% 1.0% BCはHIVエイズ患者が出始めたので,HIVと結核 治療成功 に関するプロジェクトがしたい,と提案をしてきま 表3 顕微鏡検査読み間違い率(2002年∼2005年) した。 私としては,議論を踏まえ,来年(平成19年)に ジャカルタ 胸部診療所 (JRC) バラデワ診療所 (BC) 2002年 3.0% 2.9% な印象としては,年間100万円程度の支援で,かな 2003年 3.3% 1.8% り成果も上がっているように思えるので,何らかの 2004年 2.6% 1.5% 2005年 3.3% 0.6% 向けて,PPTIから新しい提案をしてくれるようお 願いし,日本でも検討することにしました。個人的 薬局に空シートを見せる患者 新しい視点とテーマで,活動が継続できればいいと 思います。 洗濯する母親の傍で遊ぶ少女(漁港スラム) 3/2007 複十字 No.314 21 米国スタディツアー報告(パート2) −CDCの役割と活動− 結核予防会結核研究所 副所長 (兼研究部長) 加藤 誠也 結核予防会結核研究所は厚生科学研究新興・再興 生労働省結核感染症課と結核研究所の4∼5倍であ 感染症研究事業「効果的な結核対策」の一環として, る)。地方の27ヵ所に46人の公衆衛生専門家,10ヵ 低まん延状況における対策のあり方を研究するた 所に10人の医師を派遣している め,平成18年8月28日から9月1日まで,米国スタ 2005年のCDCの結核対策予算は総額1億4450万 ディツアーを行った。前々号(312号)のサンフラ ドル(日本円で約168億円)で,7割以上が予防と ンシスコを中心とした対策現場の報告に引き続き, 地方への配分に使われている。全米50州と10大都市 今 回 は ア ト ラ ン タ に あ る Center for Disease (ニューヨーク,シカゴ,ワシントンDC,ロサンゼ Control and Prevention(CDC)について報告する。 ルスなど)さらに,米国統治領(プエルトリコ,バ 米国の結核対策の象徴 ージニア諸島,グアム,マーシャル諸島)の68対策 プログラムに年間1億ドル以上配分されている。一 −Department of TB Elimination(結核根絶部) 部の地域ではCDCからの配分予算が結核予算の全 米国の結核対策の目標はCDCのDepartment of 額になっている。米国は連邦制であるため国家と州 TB Elimination(結核根絶部)という部の名前に表 の関係は独立的とされており,結核対策については れている。米国の結核罹患は1980年代に,①ホーム 国と州との関係は契約ほど厳密でなく,どちらかと レスや薬物中毒者の増加,②高まん延国からの移民 いうとパートナーシップの関係であるとされている の増加,③HIV/AIDSの増加,④結核に関する関 が,中央政府から大きな予算が配分されている。ち 心の低下とそれによる予算の減少によって,上昇に なみに,日本の厚生労働省の平成17年度の結核対策 転じた。これに対して,Institute of Medicine【医 予算額は約80億円である。米国の結核患者の実数で 学研究所】が作成した"Ending Neglect【無視の終 は日本のほぼ半数であることを考え合わせると,根 焉】"という報告書に基づき,米国は「根絶」を目 絶を目指すという目標と予算配分もかなりの違いが 指して,CDCに人員と大きな予算を配分して,積 ある。 極的な活動を行っている。 結核対策における中央政府の関与, 地方政府との関係 国の結核対策としてのCDCの活動 ¸ 患者データ,薬剤感受性検査,治療結果から CDC結核根絶部は組織図に示すように,米国の なるCDCの様式に記入し,オンラインでCDC 国家結核対策 (National Tuberculosis Control Program; NTP),すなわち,政府の結核対策策定, に転送され,集計・分析を行っている。 ¹ 罹患減少を加速させるための対策 研究,研修,技術支援,国際協力の統括と実施機関 低まん延地域の対策,メキシコ国境における としての機能を持っている。日本で言うと,厚生労 対策,移民・難民への対策,全検出株を結核菌 働省結核感染症課と結核研究所の機能を併せ持つイ 遺伝子タイピングの対象にするための検討,集 メージである。結核根絶部の人員は300人以上(厚 団への対策評価などを行っている。 図:CDC結核根絶部組織図 22 サーベイランス 3/2007 複十字 No.314 º リファレンスラボ 米国の公衆衛生検査室の技術的支援,国外の » り,一部はweb上でも公開している。結核治療 (2003) ,接触者健診(2005),Quantiferon TB Gold 検査室,新しい検査法の開発・評価などを行っ Test(2005),医療環境における感染防御(2005) ている。 など,ガイドラインも策定している。 国際協力 研究活動 米国で患者が多いメキシコ,ベトナム,フィ リピンをはじめとして,DOTS拡大,多剤耐性 ¸ 分子疫学研究 結核,結核HIVのために,6ヵ国に14人のスタ 1990年代にRFLP法によって行われた分子疫学研 ッフを派遣して,16ヵ国に技術支援を行ってい 究の成果を基にして,VNTR法とspoligo-typing法 る。 を用いて全米で分離された結核菌株の遺伝子タイピ 対策技術の適正性の確保 ¸ TB Controller's Association ングをカリフォルニアとミシガンの2つの検査室で 行っている。 ¹ 共同臨床研究 全米の州レベルの結核担当官の集まりであるTB 1998年に結核根絶部を中心に結核治験連合(The Controller's Associationは,年1回2日間で研修と TB Trials Consortium)が組織されて,診断,疾患 会議を行っている。これによって,州の中で密接な 管理,感染・発病に関する臨床,検査,疫学研究の 連携(例:患者の紹介)のためのネットワーク化, ための共同研究を行っている。世界28ヵ所に臨床研 アドボカシー,技術の標準化とガイドライン作成が 究のサイトを持っており,CDCはデータ管理と調 可能となっている。当初は任意団体であったが,近 整を担っている。 年はCDCがこれに資金を配分している。このよう º 共同疫学研究 な組織は他に,National TB Controller's Association 結核対策に関連する疫学,行動科学,経済,検査 【全国結核対策官協議会】 , Regional TB Controller's 等の研究を行う目的で,2001年に組織された。大学, A s s o c i a t i o n【 地 域 結 核 対 策 官協 議 会 】, N u r s e 行政,病院,営利/非営利団体の結核研究者の協力 Allied Health Association【看護職保健関係協議会】 機構で,アメリカとカナダの21ヵ所で研究が行われ がある。 ている。 ¹ 研修センター まとめ CDCはサンフランシスコをはじめ全国4ヵ所に 研修センターを設置し,それぞれ結核担当者・医療 米国の結核対策から,根絶を目指す目標の高さ, 従事者に対する研修コースや研究プロジェクトを持 政府の結核対策に対する関与の大きさ,全国と世界 っているセンターもある。また,医療従事者に対す も巻き込んだ研究のためのネットワーク,低まん延 る24時間相談ホットラインが設置されている。これ 状況下における技術的適正性確保のための活動な は,結核患者が著しく減少した地域では,結核医療 ど,今後の我が国の対策のあり方に多くの示唆を得 のレベルを維持することが難しくなっているため ることができた。 に,必要とされる。日本でも今後,このような機能 強化が必要になってくると思われる。 º 接触者健診の支援 米国の接触者健診は基本的には州が責任を持って いるが,サンフランシスコのような罹患の多い都市 では,市の衛生部(結核クリニック)が担当してい る。患者数が少なく接触者健診の調査官が不慣れな 州で大規模な集団感染が起きた場合や,比較的慣れ た都市部でも十分な人員を割り当てることができな いような場合にも,CDCから担当官を派遣して支 援を行っている。 写真 CDCの外観:9.11後,ブッシュ大統領が生物テロ対 » 策の視察に訪れた際に改築が決まった。セキュリティは極 研修材料の提供/ガイドラインの策定 情報,教育,行動科学研究部門が中心に様々な研 めて厳重で,敷地内で写真撮影は許されなかった。 修資料と印刷物あるいは電子ファイルを出版してお 3/2007 複十字 No.314 23 結核予防会支部紹介のページ 岡 山 県 支 部 結核予防会岡山県支部 ú岡山県健康づくり財団 人々の総合的な健康づくりを めざして 専務理事 渡辺 睦生 ────────────────────── はじめに 当支部は,昭和15年2月に結核予防会岡山県支 部として設立されました。 その後,県民の疾病予防や健康づくり,環境衛生の 向上及び生活環境の保全を支援するための総合的な 実務団体が必要との気運が高まり,平成3年10月に結 核予防会岡山県支部,岡山対ガン協会,岡山県予防医 学協会,岡山県衛生会の4団体を統合し, 「財団法人岡 岡山県健康づくり財団全景(空撮) 山県健康づくり財団」 として, 新たにスタートしました。 ────────────────────── 健康と環境を通した地域貢献 当支部の特徴は,同じ敷地内に一次予防を担当す 医療部門では,100床の附属病院を開設し内科全 般,特に呼吸器疾患を中心に専門医による適切な診 断や治療を行っています。 る健康増進部門,二次予防を担当する人間ドック・ また,理学療法士による高齢者の介護予防を目的 集団健診部門,そして三次予防としての附属病院を とした専門的リハビリや専門スタッフによる難病に 有しております。 ついての相談・支援や情報提供などを行っていま 健診部門では,マンモグラフィ検診車・リフト付 す。 胸部検診車・聴覚障害者支援システム搭載胃部デジ 健康増進部門は,疾病によって社会活動からリタ タル検診車などを使用し,学校・住民・事業所・施 イヤすることを防ぎ,いきいきと生活することが出 設などの多様なニーズにお応えできる出張健康診断 来るよう人々の健康づくりをサポートするとともに を行うとともに施設内に専用フロアを設けて人間ド 運動技法の開発や実践の場の提供などにも努めてい ックを実施しています。 ます。総合的な健康づくりの拠点機能と健康増進施 環境部門では,飲料水や食品検査などを通じて食の 策の支援機能を併せ持つ施設として高齢者,障害者 安全確保を図るとともに浄化槽関係団体及び関係業 はもとより,国体候補選手などのスポーツ競技者ま 者との協力,連携を密にして,保守点検や清掃,法定 で幅広い方々に利用していただいています。 検査を行い快適な生活環境の創造に貢献しています。 ────────────────────── おわりに 平成20年度から実施される見込みの医療制度改革 や公益法人法の見直しなど保健や医療を取り巻く環 境は急激に変化し,厳しさを増しております。 このような状況の中,役職員が一体となり,今ま で培った経験を生かし,多様化するニーズに応えら れる総合的な健診・検査機関としてより一層の努力 をしてまいりたいと考えています。 岡山県南部健康づくりセンターにあるモニュメント 24 3/2007 複十字 No.314 Living Together―私たちはすでにHIVと共に生きている 特定非営利活動法人ぷれいす東京代表 第20回日本エイズ学会学術集会会長 池上 千寿子 蔓延しているために「恋愛ならば大丈夫」と思い込 「なにげない一言」 んだりします。ふたつには性感染は自業自得でウイ KT ルスではなく本人の責任とレッテルを貼られがちな ので周囲には言えません。その結果,職場や家庭や 地域には「感染者はいないはず」が前提となってし まい,感染した人はますます孤立します。このよう な環境こそがケアと予防の双方を妨げ,感染を広げ る温床なのです。 ぷれいす東京では,HIV感染は他人事ではなく自 分事だという意識の転換がどうしたらできるのかを 調査・研究してきました。その結果,疫学数値,ウ イルスや免疫,感染経路と予防方法等の情報提供だ けでは他人事のままで予防行動の動機付けにはなり にくいことが示唆されました。「自分にもおこりう る」ということが知識ではなく,「気づき」として 腑に落ちたときに初めて他人事から自分事になるの です。その「気づき」を提供してくれるのが他なら ぬ当事者の語りであり手記なのです。 HIV陽性者は特別な遠い人ではなく,当たり前に 隣にいて自分と同じように生活している人だという こと,HIVの有無に関わらず私たちはHIVと共にあ る社会に生きているということ,このことに気づく ことが支えあうケアの環境を整備し,誰がHIVを持 っているかの詮索ではなく,だれもが予防すること (ぷれいす東京冊子 が大切なのだという意識を育てるのではないでしょ 「Living Together-Our Stories」 )より) A5判36p/定価700円(税込) 申込FAX:03-3361-8835・MAIL:[email protected] うか。このことからぷれいす東京では,Living Together−ケアと予防をつなぐ戦略,というキャ ンペーンを実践してきました。職場,地域,学校で 自分が共感した手記を朗読しあい,感想を語り合い, 気づいたことを伝えあう,という取り組みです。 昨年,第20回日本エイズ学会・学術集会の会長を 日本で報告されたHIV感染者AIDS患者の数はす 務めましたが,そのテーマをLiving Together−ネ でに12,000人を超え,増え続けています。おもにセ ットワークを広げ真の連携を創ろう−としました。 ックスで感染するので文字通りだれにでも感染の可 1,500人をこす参加をいただき,多くの当事者と研 能性はあるのですが,多くの人は「自分や家族には 究者,ケアと予防の専門職が一堂に会してエイズの 関係が無い」と感じていないでしょうか。ひとつに リアリティーを捉えなおし,複合的な対策にむけて は性感染といえば性風俗が原因だろうという誤解が 議論を深めることができたと思います。 3/2007 複十字 No.314 25 結核診療のうねりと共に き の ち え こう 木野 智慧光 先生 文:結核予防会 会長 青木 正和 木野先生はいつも大きな声で話される。外来では 「隣から聞こえてくる木野先生の声に私の患者さん が頷いているので困ったよ」と何人もの先生が言っ 結核研究所では午前中は患者の診療,午後は研 ていた。何時もはっきりと話をするので患者さんの 究室での研究という態勢をとっていた。昭和25年 評判が良かったし,先生自身も診療を大切にしてい 9月に長野県御代田村小学校で結核集団感染事件 た。結核予防会に勤められた昭和25年6月から予防 が発生すると,先生はこの対策にあたることを命 会顧問を辞められる平成9年までの47年間,現在の じられた。その後4年間にわたって感染児童の経 複十字病院の内科長,診療部長,院長,あるいは, 過を詳細に追求し,初感染病巣の治癒,あるいは 予防会の常任理事として,何時も予防会の診療活動 進展の様相が明らかになった。これが先生の博士 の中心で活躍された先生の一生であった。 論文にまとめられている。昭和33年4月には予防 東大から予防会へ 会の機構改革があり,療養部は結核研究所から独 立して「結核研究所附属療養所」となったが,木野 先生は,名古屋の第8高等学校から東京大学医学 先生は研究所の所属となり,12月には結核研究所 部に入学され,昭和22年に卒業,インターンを終了 研究部臨床学研究科長に任命された。しかし午前 後,東京大学医学部第2内科に入局された。しかし は診療,午後は研究という態勢は変わらず,昭和 間もなく,当時東大教授をされていた岡治道先生ら 33年には第2回結核実態調査,昭和34年には国立 に勧められ,昭和25年6月には結核予防会結核研究 療養所との共同研究の第1回結核死亡調査と臨 所に移られた。当時,結核研究所は研究部と診療部 床・疫学的研究が続き,臨床研究にますます磨き からなり,病院は独立してなかった。診療部は152 がかかった。 床の病床数で昭和22年に発足したが,東京電力(昭 和24年),富士銀行(26年),朝日新聞(27年),国 26 最初の研究 診療部内の中枢で 税庁(29年),日本軽金属(29年)と次々に大企業 先生は昭和36年4月に結核研究所附属療養所外 の委託病棟が建設されていた。また,昭和25年には 来科長となったが,以後は最後まで診療部門の中 わが国でもストレプトマイシンがごく一部の患者に 枢で重要な役割を果たし続けた。昭和38年には附 短期間使われ始めた。木野先生が予防会に移られた 属療養所内科長,昭和50年12月には附属療養所副 のは,まさにこのような結核療養所の拡張期であ 所長となった。多くの委託病棟を抱えて附属療養 り,結核化学療法の黎明の時期であった。 所の病床数は昭和34年には636床となり,最盛期を 3/2007 複十字 No.314 迎えていた。しかしその後,各企業の患者数は急 49年)まで「結核予防会化学療法協同研究会議」 速に減少し,病棟は一部を一般に開放,あるいは の名前で次々と結核誌に報告されている。この結 閉鎖して病床数は次第に減り始めた。療養所の経 果はまた,結核病学会で木野先生により「外来治 営は昭和44年から連続赤字に転落した。このため, 療か入院治療か」(第37回総会),「結核化学療法に 従来の結核療養所から,非結核性疾患を扱う一般 関する最近の問題点」(42回総会),「結核化学療法 病棟として患者減少をくい止めることが緊急の課 の考え方」(49回総会),「肺結核の短期化学療法」 題となった。木野先生が副所長となった時期はま (53回総会)などのシンポジウムで発表された。ま さにこの転換の時期だったのである。附属療養所 た,60回総会では胸部疾患学会との合同招請講演 は木造平屋建てで何百メートルもある中央廊下の 「結核短期化学療法の現況と問題点」を行っている。 左右に広がった建物だったが,近代的病院に変え 木野先生の化学療法の仕事は結核研究所の岩崎龍 ることも不可欠だったし,医師の補充も,職員の 郎先生の影響を受け,当時3年から4年以上の長 意識改革も必要だった。昭和51年11月に新病院は 期間行われていた化学療法を1年半程度に短縮す 完成,98床の一般病床を開設して昭和52年1月, ることを目指すものであった。その後,結核化学 名称を結核研究所附属病院に改めた。この時まで 療法は6ヵ月の短期療法となってゆくが,当時と の附属療養所の累積赤字は既に6億円を超えてい すれば画期的なものであった。また,結核治療は た。 もっぱら療養所で行われていた当時,予防会では 複十字病院院長として 診療所での外来治療をすすめており,この実績の もとに外来治療の安全性,実施可能性を示すもの 昭和57年4月,小林英二院長の後を受けて木野先 であった。これらの研究は,治療期間の短縮,外 生は結核研究所附属病院の院長となった。同時に結 来治療の推進をすすめるもので,この方向に向か 核予防会の理事,評議員に任命され,結核予防会全 っての結核化学療法の発展を推進するもので,わ 体の運営,特に診療態勢建て直しの重責も負うこと が国の結核治療の改善に大きく寄与している。 となった。附属病院は結核の他に肺癌など非結核性 呼吸器疾患に診療領域を広げ,さらに消化器科の併 講演・会議を楽しんで 設などの努力を重ねた。平成元年6月には附属病院 木野先生は医療関係者の研修でも活発に活動さ は名称を「複十字病院」に改め,病院のさらなる改 れた。その講義は言語も論理も明晰で,声も大き 革を進めた。しかし,結核患者の減少は急速に進み, く聞き易かった。医師,保健師,看護師などを対 結核療養所から変わった病院の経営は難しかった。 象とした研修,講演はもちろん,NHKの「療養の 木野先生が院長を辞する平成6年4月まで,複十字 時間」などでも大変好評で何度も出演されていた。 病院の運営は困難の連続だった。結核病床の転換, それだけでなく,何時でも誰とでも話をすること そして集束の大きな「うねり」は一段と加速し,激 が好きだった。最後の何年かは転倒骨折にはじま しいものであった。 る衰えと余病などのために複十字病院,新山手病 予防会協同研究の中心で 院,あるいは介護老人保健施設「保生の森」への 入退院を繰り返されていたが,平成18年10月16日 木野先生の研究活動は昭和30年代から化学療法に に肺炎と脳出血を併発され,12月3日亡くなられ 移り,結核予防会各支部を組織した「結核予防会化 た。享年82歳であった。木野智慧光先生は,結核 学療法協同研究会議」での共同研究,沖縄県や複十 化学療法の黎明期,発展期に内科医として活動を 字病院での研究などを精力的にすすめた。予防会化 始め,結核療養所治療の最盛期に結核病院長にな 学療法協同会議の結果は,「肺結核外来化学療法の って転換の第一歩をすすめるなど,医師としての 効果と近接成績」として第1報(昭和35年)から第 生涯を結核診療の「うねり」と共に過ごされた先 7報(昭和41年)まで,あるいは,「菌陰性空洞の 生であった。謹んで心からご冥福をお祈りする次 予後」として第1報(昭和45年)から第3報(昭和 第である。 3/2007 複十字 No.314 27 平成19年度厚生労働省予算 (案) 平成19年度結核感染症課予算(案)の概要 事 項 平成18年度 平成19年度 予 算 額 予 算(案) 感染症対策 千円 差 引 増△減額 平成18年12月 (単位:千円) 主 な 内 容 千円 千円 [10,766,592] [18,354,141] [7,587,549] <対前年度伸率 +70.6%> (3,550,315) (10,056,730) (6,506,415) <対前年度伸率 +183.3%> 6,509,502 <対前年度伸率 +186.5%> 3,490,820 10,000,322 [3,185,953] [2,903,116] 1 感染症の発生・拡大に備えた事前対応型行政の構築 2,131,398 → 1,864,500 ・感染症危機管理体制整備事業 73,633 → 42,696 ・感染症発生動向調査システム費 73,849 → 165,841 ・感染症対策特別促進事業費 57,642 → 407,978 ・病原体等管理体制整備事業 0 → 254,955 917,378 → 40,363 ・重要医薬品供給確保費 [677,407] [6,959,862] 2 良質かつ適切な医療の提供体制の整備 ・感染症指定医療機関運営費 ・結核医療費 677,407 6,959,862 635,149 → 665,991 0 → 6,251,666 [817,359] [865,237] 3 感染症の発生予防・防止措置の充実 ・感染症予防事業費 4 調査研究体制の強化 602,031 → 602,031 600,000 → 600,000 [4,955,243] →[6,660,623] 0 → 490,568 (厚生労働科学研究費) ・新興・再興感染症研究 ・結核研究所補助 2,326,245 → 2,396,032 0 → 490,568 [771,728] [788,430] 5 人材育成の充実及び国際協力の強化 (65,855) (61,027) 6,360 → 4,619 [107,499] [104,937] 6動物由来感染症対策 7 その他 73,624 → 78,742 [251,403] [81,936] [9,201,206] [9,603,911] (3,538,684) (2,681,761) 新型インフルエンザ対策 3,479,189 → 2,575,353 ※「感染症対策」の再掲 [2.648.567] [2,600,654] (286,838) (169,712) 1 万全の対応に向けた体制づくり ・感染症危機管理対策整備事業費 227,343 → 113,304 73,633 → 42,696 [4,370,218] [5,641,828] 2 的確な予防と封じ込め ・感染症発生動向調査費 1,657,061 → 1,713,490 943,070 → 995,068 [1,594,785] [748,559] 3 充実した医療の提供 1,594,785 → 748,559 ・重要医薬品供給確保費 28 3/2007 複十字 No.314 (抗インフルエンザウイルス薬の確保) 917,378 → 40,363 ・感染症指定医療機関運営費 635,149 → 665,991 4 国際協力 [587,636] [612,870] 病原体管理体制の整備 [0] [254,955] ※「感染症対策」の再掲 肝炎対策等 431,122 0 → 254,955 ・病原体等管理施設基準の確認検査 0 → 23,898 ・病原体等所持者研修会経費 0 → 6,728 ・病原体等管理システムの構築・運用 0 → 224,329 2,226,450 肝炎対策等 2,657,572 431,122 → 2,657,572 ・特定感染症検査等事業費 353,020 → 2,024,538 ・感染症対策特別促進事業費 ・ウイルス肝炎予防感染者支援事業費 74,295 → 633,034 3,807 → 0 (※ 疾病対策課へ事業を移行) 結核対策 [7,358,083] [0] [△7,358,083] <対前年度伸率 △100.0%> (7,357,489) (0) (△7,357,489) <対前年度伸率 △100.0%> 7,161,283 0 <対前年度伸率 △100.0%> △7,161,283 ※結核予防法が感染症法に統合されたことに伴い,結核対策経費と感染症対策経費を統合した。 事 項 平成18年度 平成19年度 予 算 額 予 算(案) 予防接種対策 千円 差 引 増△減額 千円 主 な 内 容 千円 [1,238,394] [1,224,131] [△14,263] <対前年度伸率 △1.2%> (1,238,394) (1,224,131) (△14,263) <対前年度伸率 △1.2%> 計 1,238,394 1,224,131 △14,263 <対前年度伸率 △1.2%> 12,321,619 13,882,025 1,560,406 <対前年度伸率 +12.7%> ※1.[]内の数字は厚生労働省計上分(他局他課計上分を含む) ※2. ()内の数字は健康局計上分(他課計上分を含む) 平成19年度予算(案)の概要(生活習慣病対策室) (単位:千円) 事 項 (項)厚生労働本省 平成18年 度予算額 (A) 平成19年度 差 引 当初内示額 増△減額 (B) (B)− (A) 356,282 548,931 192,649 健康局一般行政費 3,191 3,126 △65 健康栄養対策費 3,191 3,126 △65 64,274 120,111 55,837 5,279 5,012 58,995 115,099 56,104 生活習慣病予防対策推進費 23,493 79,965 56,472 栄養対策総合推進費 21,646 21,794 148 たばこ・アルコール対策推進費 13,856 13,340 △516 0 204,415 204,415 備 考 (大)厚生労働本省一般行政に必要な経費 (大)厚生労働行政情報化推進に必要な経費 保健医療関係情報化経費 循環器病診療施設情報ネットワーク事業費 生活習慣病対策推進費 △267 委託先:民間団体 (大)国際会議等に必要な経費 国際会議等経費 国際分担金 (目)国際がん研究機関等分担金 たばこ規制枠組条約締約国会議事務局分担金 3/2007 複十字 No.314 29 平成19年度厚生労働省予算 (案) (大)医師等国家試験実施に必要な経費 医師等国家試験費 健康局国家試験費 管理栄養士国家試験費 46,902 46,576 △326 (大)健康増進総合支援システム事業に必要な経費 241,915 174,703 (項)保健衛生諸費 539,161 557,234 18,073 231,108 227,980 △3,128 149,768 182,440 若年期からの肥満予防対策事業 63,515 0 たばこ対策促進事業費 17,825 45,540 (目)予防接種対策費等補助金 197,136 205,968 健康日本21推進事業費 33,353 34,356 163,783 171,612 110,917 123,286 △67,212 e−ヘルス事業 (大)疾病予防及び健康づくり推進に必要な経費 疾病対策事業費 (目)疾病予防対策事業費等補助金 メタボリックシンドローム予防戦略事業 32,672 補助先:都道府県 △63,515 メタボリックシンドローム予防戦略事業に統合 27,715 補助先:都道府県 地域健康づくり推進対策費 8,832 1,003 補助先:健康・体力づくり事業財団 婦人の健康づくり推進事業費 食生活改善地区組織活動強化費 7,829 補助先:日本食生活協会 国民健康・栄養調査委託費 (目)国民健康・栄養調査委託費 12,369 委託先:地方公共団体 (項)保健衛生施設整備費 (大)保健衛生施設等施設整備に必要な経費 保健衛生施設等施設整備費補助 (メニュー) (目)保健衛生施設等施設整備費補助金 計 − − − 895,443 1,106,165 210,722 平成18年 度予算額 (A) 事 項 農村健診センターの整備 平成19年度 差 引 当初内示額 増△減額 (B) (B)− (A) 備 考 <厚生科学課計上分> (項)科学研究費 (目)厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究経費 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究経費 糖尿病戦略等研究経費 計 2,384,861 2,721,155 336,294 1,499,889 1,759,626 259,737 884,972 961,529 76,557 2,384,861 2,721,155 336,294 平成19年度がん対策関係予算案の概要 (単位:千円) 項 目・事 業 名 がん対策の総合的かつ計画的な推進 1.がん予防・早期発見の推進 ¸効果的で質の高いがん検診の普及 がん検診精度管理評価事業 がん検診実施体制強化モデル事業 マンモグラフィの緊急整備事業 乳がん検診及び子宮がん検診についての啓発普及事業 (女性のがん検診及び骨粗鬆症啓発普及等事業費の女性のがん検診部分) 30 3/2007 複十字 No.314 平成18年度 平成19年度 予算額 予算額案 差 引 増△減額 備考 16,089,696 21,197,141 5,107,445 4,516,094 3,037,691 △1,478,403 2,425,897 14,932 0 2,312,500 677,369 12,989 55,000 0 △1,748,528 △1,943 55,000 △2,312,500 98,465 98,465 0 項 目・事 業 名 新 マンモグラフィ検診従事者研修事業 ○ 新 マンモグラフィ検診精度向上事業 ○ 平成18年度 平成19年度 予算額 予算額案 差 引 増△減額 0 0 156,540 354,375 156,540 354,375 2,090,197 2,452 22,563 17,825 241,915 702,189 1,092,751 10,502 0 2,360,322 36,351 21,986 45,540 174,703 516,985 1,425,534 26,100 113,123 270,125 33,899 △577 27,715 △67,212 △185,204 332,783 15,598 113,123 3,057,634 8,952,228 5,894,594 250,379 1,044 35,750 98,672 114,913 0 0 364,590 502 64,055 161,806 114,730 7,299 16,198 114,211 △542 28,305 63,134 △183 7,299 16,198 ¹がん診療連携拠点病院の機能強化と診療連携の推進 がん診療連携拠点病院機能強化事業 がん診療施設情報ネットワーク事業 全国がん診療連携拠点病院連絡協議会等経費 新 がんに係る放射線治療機器緊急整備事業 ○ 新 がん相談支援推進事業 ○ 1,264,980 962,000 300,884 2,096 0 0 5,355,108 1,669,500 312,392 1,314 3,360,000 11,902 4,090,128 707,500 11,508 △782 3,360,000 11,902 新 º国立がんセンター東病院通院治療部(仮称)の設置 ○ 0 26,751 26,751 »地域の特性を踏まえた対策の推進 新 がん対策推進特別事業 ○ 0 0 1,485,000 1,485,000 1,485,000 1,485,000 1,542,275 1,531,760 10,515 0 1,720,779 1,698,486 11,440 10,853 178,504 166,726 925 10,853 243,338 460,718 217,380 243,338 213,580 △29,758 189,257 84,777 △104,480 2,475 51,606 0 0 △2,475 △51,606 0 128,803 128,803 0 0 0 0 247,138 205,717 25,781 15,640 247,138 205,717 25,781 15,640 8,272,186 8,742,500 470,314 5,528,342 1,803,750 57,360 815,266 811 2,447 53,456 3,845 6,909 0 6,177,790 1,803,750 57,355 593,679 711 3,421 52,891 3,629 6,723 42,551 649,448 0 △5 △221,587 △100 974 △565 △216 △186 42,551 444 4,004 3,560 444 0 1,595 2,409 1,151 2,409 ¹がん予防の推進と普及啓発 第3次対がん10か年総合戦略経費(がん相談事業費) 生活習慣病対策推進費 たばこ対策促進事業 健康増進総合支援システム開発等経費 国立がんセンターがん予防・検診研究センター経費 肝炎等克服緊急対策研究経費 肝炎対策費・ウイルス肝炎予防感染者支援事業費 新 がんに関する普及啓発推進事業 ○ 2.がん医療水準均てん化の促進と情報収集提供体制の整備 ¸がん専門医等がん医療専門スタッフの育成 がん専門医等育成促進検討会経費 がん医療指導者養成研修事業 がん医療水準均てん化の推進に向けた看護職員資質向上対策 専門薬剤師研修事業(H19も引き続き、がん領域を想定) 新 がん医療水準の均てん化を目的とした医療水準調査事業 ○ 新 がん患者に対するリハビリテーションに関する研修事業 ○ ¼がん医療に関する情報の収集提供体制の整備 がん対策情報センター関係経費 院内がん登録促進事業 新 がん登録調査・精度管理指導事業 ○ 3.がんの在宅療養・緩和ケアの充実 ¸在宅緩和ケア対策の推進 在宅ホスピスケア研修等経費 (医療提供体制推進事業費補助金(統合補助金)の内数) 末期医療患者の生活の質(QOL)推進事業 在宅医療の推進のための実地研修事業 新 在宅緩和ケア対策推進事業 ○ (医療提供体制推進事業費補助金(統合補助金)の内数) ¹緩和ケアの質の向上及び医療用麻薬の適正使用の推進 新 がん医療における緩和ケアの意識調査等事業 ○ 新 がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修事業 ○ 新 医療用麻薬適正使用推進事業 ○ 4.がんに関する研究の推進及び医療技術の開発振興 第3次対がん総合戦略研究経費(厚生科学課計上) がん研究助成金 国立がんセンター腫瘍ゲノム解析・情報研究部経費 国立がんセンター臨床開発センター経費 第3次対がん総合戦略企画運営会議経費 研究費配分機能移管関係事務費(国立がんセンター分) 培養生物資源保存管理基盤整備費・疾患遺伝子解析用DNAバンク事業費 医薬品等審査情報収集調査費(国内未承認薬海外承認情報収集調査費) ファーマコゲノミクス利用医薬品臨床評価推進費 新 治験実施状況調査事業 ○ 5.その他 がん対策推進費 新 がん対策推進協議会経費 ○ 備考 3/2007 複十字 No.314 31 平成19年度厚生労働省予算 (案) 平成19年度老人保健事業等予算(案)の概要(老健局老人保健課) 平成19年度の老人保健事業予算(案)は,247億円(対前年比8億円増)であり,この他,がん検診関係予算(案)として,3.5億円計上したところであ る。老人保健事業の変更箇所及び新規事業の概要については次のとおりである。 1 肝炎ウイルス検診等の実施について 老人保健事業における肝炎ウイルス検診等については,C型肝炎等緊急総合対策の一環として,平成14年度からの5ヵ年計画として実施され,平成 18年度が最終年度となっている。しかしながら,何らかの理由による未受診の者が相当程度存在するものと推計されることから,老人保健事業の最 終年度となる平成19年度においても,引き続き下記のとおり実施することとした。 ア 節目検診 40歳 イ 節目外検診 平成19年度基本健康診査においてALT(GPT)値により要指導と判定された者及び平成14年度から平成18年度までの本事業に基づく肝炎ウイルス検 診の対象者であって,受診の機会を逸した者 2 がん検診に関する新規事業について ア がん検診実施体制強化モデル事業 がん検診の精度管理に資するため,都道府県において,がん検診実施機関の名称,所在地,検診実施日や,受診者数,受診率,要精検率等の検診実 績等のデータベースを構築する。 イ マンモグラフィ検診従事者研修事業 マンモグラフィによる乳がん検診の診断精度の向上に資するため,十分な知識・経験を取得させるための上級研修を実施する。 ウ マンモグラフィ検診精度向上事業 デジタル式マンモグラフィ導入機関に対し,マンモグラフィによる乳がん検診におけるコンピュータ診断支援システムの導入の支援を行う。 (単位:千円) 事項 (項)保健衛生諸費 (目)保健事業費等負担金 (肝炎対策費:再掲) (目)疾病予防対策事業費等補助金 がん検診実施体制強化モデル事業 マンモグラフィ検診従事者研修事業 女性のがん検診及び骨粗鬆症啓発普及等事業 (目)成果重視事業マンモグラフィ緊急整備事業費補助金 (項)厚生労働本省 (小)老人保健事業企画費 がん検診精度管理評価事業 (項)保健衛生諸費 (目)保健衛生施設等設備整備費補助金 マンモグラフィ検診精度向上事業(健康局計上分) 平成18年度 平成19年度 予算額 予算額案 23,952,687 24,745,264 (3,173,742) (3,175,503) 差 引 増△減額 備考 792,577 1.健康手帳作成費 (1,761) 2.健康教育費 3.健康相談費 4.健康診査費 5.機能訓練費 6.訪問指導費 0 0 122,318 2,312,500 55,000 156,540 122,694 0 55,000 156,540 376 △2,312,500 14,932 12,989 △1,943 0 354,375 354,375 67,906 1,429,108 686,824 22,372,888 131,741 56,797 補助先:都道府県 補助先:都道府県,公益法人,NPO法人 補助先:都道府県 補助先:都道府県,市町村,厚生労働大 臣が認めた者 予防会だより 複十字病院西平副院長 第11回アジア太平洋呼吸器 学会総会においてベストポスター賞を受賞! Dr. Tetsuro Nishihara 西平先生は,2006年11月に京都で開催されたアジア太平洋呼吸器学会総会で,「不治 といわれた結核性食道・気管支瘻の手術」のポスター報告において,ベストポスター賞 を受賞されました。この内容は,複十字病院院内発表会でも報告されています。 (文責:編集部) 平成18年12月25日,結核予防会が記者発表を実施! 反響続々 結核予防法を統合した改正感染症法の成立に際し広く国民にメッセージを発信するため,厚生労働省において記者 会見が行われました。その後新聞に結核に関する記事が記載されるなど,反響が続いています。1月15日·には,朝 日新聞で「国境なき医師団」が「06年,もっとも報じられなかった10の人道的危機」の中に結核を取り上げている記 事や日本経済新聞で結核/HIVの合併の記事が,1月16日¸には,「超多剤耐性」結核菌の国内状況の記事が掲載さ れました。(文責:編集部) 32 3/2007 複十字 No.314 ●結核予防会管理職経営セミナー 9:30∼10:45 石綿曝露による肺・胸膜疾患 標記研修会は,1月10日¹∼12日»の3日間,経団連 国立病院機構近畿中央胸部疾患 ゲストハウス(静岡県)において,15名の参加を得て開 センター院長 坂谷 光則 催された。助言者は丸瀬和美(鳥取県支部事務局長), 10:45∼12:00 C型肝炎をめぐる最近の治療の進歩 加藤健蔵(新潟県支部事務局長)にお願いし,アドバイ 兵庫医科大学総合内科肝胆膵科 ザーには金子専務理事,山下事業部長を迎えた。プログ 助教授 中村 秀次 ラムは以下の通り。 【1月10日¹】 ●結核予防会における「特定健診・特定保健指導」戦略 13:00∼ 1.我々の事業の本質を探る 会議 <名著論文学習・討論> 2月5日·・6日¸の2日間,こまばエミナース(東 15:00∼ 2.予防医療情勢から今後の事業戦 京都目黒区)において,165名の参加を得て,標記会議 略を予測する…国の医療政策と が開催された。内容は以下の通り。 支部事業について… 【2月5日·】 <講義と質疑応答> ¸結核予防会における「特定健診・特定保健指導」戦 【1月11日º】 略会議 8:30∼ 3. 「勝利する組織」の条件とは 13:30∼13:45 挨拶(基本方針) <論文学習・事例研究と討論> 結核予防会理事長 仲村 英一 13:00∼ 4.収支計算書と貸借対照表から経 13:45∼14:45 講演1「制度改正の趣旨と保険者の 営のウイークポイントを見出す 動向及び全国組織健診機関の役割」 <事例分析と討論> 厚生労働省保健局総務課医療費適正化 15:00∼ 5.経営収支改善へのアクションプラ 対策推進室室長補佐 大村 良平 ンと具体的行動はどうあるべきか 14:45∼15:45 講演2「特定健診・特定保健指導の …人件費管理を中心として… 課題と目標」 <課題学習・グループ討議と報告> 大阪ガス株式会社健康開発センター 【1月12日»】 統括産業医 岡田 邦夫 8:30∼ 6.永 遠 の 課 題 「 収 支 拡 大 と コ ス 16:00∼16:50 講演3「望まれる特定保健指導のあ ト・ダウン」とどう向き合うか り方」 <事例報告と討議>…支部活動にお 厚生労働省健康局総務課 ける成功例・失敗例… 保健指導室保健師 二宮 博文 10:30∼ 7.部下のやる気を引き出す改善改 16:50∼17:30 支部事例報告 革土壌を創りあげる 岩手県支部健診部長 松尾 洋一 <講義と討論> 福岡県支部企画事業第二部長 13:00∼15:30 8.成果獲得に向けたパッション・ 松尾 敏一 リーダーを目指す 17:30∼18:20 討議1「特定健診・特定保健指導事 <総括討論と決意表明> 業計画受託対応について」 株式会社HITS代表取締役 片山 文善 ●平成18年度(第47回)結核予防会医師研修会 討議2「特定健診・特定保健指導」 2月1日º・2日»の2日間,結核予防会本支部より 予防会の戦略 69名の参加の下,大阪新阪急ホテルにおいて標記研修会 結核予防会専務理事 金子 洋 が開催された。内容は下記の通り。 18:20∼18:30 事業説明 COPD共同研究について 【2月1日º】 結核予防会普及課主任 青木 新 13:00∼13:10 開会挨拶 結核予防会理事長 18:30∼20:00 意見交換会 仲村 英一 【2月6日¸】 13:10∼14:10 結核予防法から感染症法への統合 ¹「特定健診・特定保健指導」戦術会議 結核予防会結核研究所所長 石川 信克 9:00∼11:45 班別討議 14:10∼15:25 医療制度改革とメタボリックシンド ①「保健指導」②「渉外」③「システム」 ローム,新たな健診・保健指導体制 12:00∼12:30 全体討議 について 厚生労働省健康局生活習慣病対策室 ●第11結核予防関係婦人団体中央講習会 室長補佐 鈴木 章記 平成19年2月14日¹∼16日»の3日間,メルパルク東 15:45∼17:00 COPD−診断と治療の最近の考え方− 京において標記講習会が開催された。内容は下記の通り。 大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器病態 主 催 財団法人結核予防会・社団法人全国結核予防婦 制御内科学教授 平田 一人 人団体連絡協議会 17:00∼17:30 「COPD共同研究」について 後 援 厚生労働省・東京都 結核予防会大阪府支部支部長 小倉 剛 参加者 105名 18:00∼20:00 懇親会 目 的 本講習会は,結核予防会総裁秋篠宮妃殿下のご 【2月2日»】 臨席のもと開会し,全国の各婦人団体会員を対 9:00∼9:30 結核予防会健康ネットワーク事業に 象として,結核予防に関する知識の向上と,結 ついて 核予防に関する地域活動の浸透を図り,併せて 結核予防会健康ネットワーク事業部 各団体相互の親善交流と相互啓発により,結核 副部長 中野 静男 予防事業の推進に寄与することを目的とする。 3/2007 複十字 No.314 33 【2月14日¹】 14:00∼14:30 開講式 主催者挨拶 全国結核予防婦人団体連絡協議会 会長 中畔 都舍子 結核予防会会長 青木 正和 総裁お言葉 秋篠宮妃殿下 来賓挨拶 厚生労働省健康局長 外口 崇 「健康の歌」斉唱 一 同 14:40∼14:55 写真撮影 15:10∼15:50 講演① 「結核予防婦人会について」 全国結核予防婦人団体連絡協議会 事務局長 山下 武子 16:00∼16:40 講演② 「メタボリックシンドロー ムってなぁに?」 結核研究所保健看護学科長 永田 容子 16:50∼17:30 講演③ 「最も新しい結核の話」 結核研究所副所長 加藤 誠也 【2月15日º】 7:00∼8:00 増上寺拝観 9:20∼10:50 講演④ 「複十字シールでコミュニ ケーションを!」 結核予防会資金課長 佐藤 利光 11:00∼11:45 歌唱 「健康の歌」 声楽家 松田 敏江 13:10∼13:30 講演⑤ 「肺の生活習慣病COPD」 日本ベーリンガーインゲルハイム 加藤 久幸 13:40∼14:30 講演 ⑥ 「“ 情 け は 人 の た め な ら ず”−世界に展開する結核プロジ ェクト−」 結核予防会国際部長 小野崎 郁史 14:40∼15:00 スタディツアー参加者報告 15:05∼ オリエンテーション 15:15∼17:30 情報交換会「私は○○○人の人々と複 十字シールについてお話をしました」 18:00∼ 懇親会 【2月16日»】 9:00∼11:00 全体討議 助言 山下 武子 司会 佐藤 利光 11:00∼11:30 終講式 主催者挨拶 全国結核予防婦人団体連絡協議会 会長 中畔 都舍子 結核予防会理事長 仲村 英一 修了証・記念バッジ授与 受講者代表挨拶 熊本県健康を守る婦人の会 北里 リヨ子 「蛍の光」斉唱 一 同 ●第3回COPD共同研究委員会並びに事務説明会 2月21日¹15:00より,35名の参加を得て,東京ドー ムホテル(東京都文京区)において開催された。内容は 以下の通り。 議題:1.「COPD共同研究」パイロットスタディ中間 報告 2.平成19年度からの「COPD共同研究」全国展 開について 34 3/2007 複十字 No.314 3.その他 15:00∼16:30 委員会 16:30∼17:30 事務説明会 17:30∼ レセプション ●第12回国際結核セミナー 平成19年3月1日º10:00∼16:00,ヤクルトホール において結核研究所主催で開催された。内容は以下の通 り。 10:00∼10:05 開会挨拶 結核研究所長 石川信克 10:05∼11:45 招聘講演 座長:結核研究所副所長 加藤誠也 「米国の結核対策」サンフランシスコ 市結核対策部長(結核クリニック所長) Dr. Masae Kawamura (通訳:結核研究所研究部 伊藤邦彦) シンポジウム「日本の結核対策にどう活かすか Part2」 13:00∼16:00 13:00∼13:10 「イントロダクション」 座長:結核研究所長 石川信克 13:10∼13:25 「ハイリスク対策」 横浜市港北福祉保健センター 吉田道彦 13:25∼13:40 「接触者対策」 東京都多摩立川保健所 成田友代 13:40∼13:55 「結核クリニック」 結核研究所研究部 伊藤邦彦 14:10∼14:25 「結核患者管理・接触者健診強化研修」 結核研究所対策支援部 永田容子 14:25∼14:40 「CDCと地方の役割」 結核研究所副所長 加藤誠也 14:40∼14:45 「結核対策の戦略性」 結核研究所顧問 田中慶司 14:50∼15:45 全体討議 15:45∼15:55 助言 Dr. Masae Kawamura (フロア通訳 大角晃弘・小原尚美) 15:55∼16:00 閉会挨拶 結核研究所長 石川信克 ●世界結核デー記念 結核イブニングセミナー 平成19年3月1日º18:00∼20:00,ヤクルトホール において結核研究所・結核予防会共催で開催された。内 容は以下の通り。 総合司会:結核研究所対策支援部長 小林典子 18:00∼18:05 開会挨拶 結核予防会理事長 仲村英一 18:05∼18:30 ①「エスティマ号で巡回する啓発活動」 国立病院機構和歌山病院 望月知奈美 18:30∼18:55 ②「結核の危機管理訓練」 山形県村山保健所 近野睦子 19:00∼19:45 「施設における結核のリスクマネージ メント」 結核予防会会長 青木正和 19:45∼19:55 青木会長質疑 19:55∼20:00 閉会挨拶 結核研究所副所長 加藤誠也 ●平成18年度全国結核対策推進会議 平成19年3月2日»9:30∼15:30,ヤクルトホール において結核研究所主催で開催された。内容は以下の通 り。 9:30∼9:40 開会の挨拶 結核研究所長石川 信克 9:40∼10:20 講演「改正感染症法における結核対策」 厚生労働省健康局結核感染症課 課長補佐 杉江 拓也 健診・保健指導の理念の転換 保健指導対象者の選定と階層化 岩手医大医学部衛生学公衆衛生学講座 教授 坂田 清美(グループワークまで) 10:40∼11:40 評価の考え方 ①評価の重要性②個別の評価③全体評価 11:40∼12:10 医療費評価とは何か 13:10∼15:30 グループワーク 事例の検討・発表 15:40∼17:00 企画の実際(講義) ①提案書作成に必要な情報②提案書と は? ③作成の為の必要条件 株式会社HITS 【3月3日¼】 8:30∼9:50 企画書作成の要点 ∼これからの事業を受託するために∼ 鹿児島支部 松岡 純子 10:00∼11:00 全体討議 国立循環器病センター 予防健診部部長 岡山 明 12:00∼16:00 企画の実際 Ⅱ 提案書の作成 株式会社HITS 【3月4日¶】 ●平成18年度結核予防会健康支援者養成研修会 9:30∼10:00 アウトソーシング先として求められて (上級コース研修会) いること 標記研修会は,3月1日º∼3月4日¶,21支部31名 国立循環器病センター の参加を得て結核研究所において開催され,終了証を授 予防健診部部長 岡山 明 与した。内容は以下の通り。 10:00∼11:30 国保ヘルスアップ事業の理解 【3月1日º】 ∼現場からの期待に応えるために∼ 13:00∼13:15 オリエンテーション 結核予防会 丹波市役所健康部健康課 大槻 秀美 13:15∼15:00 グループワーク 事例の検討 12:30∼14:20 企画の実際 Ⅲ 企画提案のシュミレ 岩手医大医学部衛生学公衆衛生学講座 ーション 教授 坂田 清美(グループ発表まで) 国立循環器病センター 15:10∼16:00 グループ発表 予防健診部部長 岡山 明 16:10∼17:30 行動変容に関する理論と支援の実際 丹波市役所健康部健康課 大槻 秀美 ∼コーチングの手法を用いて∼ 14:30∼15:00 全体討議・修了式 結核予防会事業部 佐藤 利光 なお,3月3日¼16:00∼20:00に保健指導評価会議 【3月2日»】 を行ったことを申し添えます。 10:20∼11:20 基調講演「結核接触者健診ガイドライ ン改訂版 概説」 高知市保健所 豊田 誠 11:30∼13:00 昼食&ポスター展示 13:00∼15:30 シンポジウム 「地域DOTSの協働:関係機関との連 携強化」 座長:結核研究所対策支援部 小林典子 13:05∼13:20 ①報告 保健所長会アンケート 尼崎市保健所 新谷幸弘 13:20∼13:35 ②調剤薬局での取り組み 八王子薬剤師会 茂木 徹 13:35∼13:50 ③訪問看護ステーションの取り組み 訪問看護ステーション仁風荘 井上陽子 13:50∼14:05 ④日 本 語 学 校 と の 協 働 に よ る 地 域 DOTS みなと保健所 峯田尚美 14:20∼14:50 講演「検証;日本版DOTS」 結核研究所名誉所長 森 亨 14:55∼15:25 全体討議 15:25∼15:30 ポスター講評および閉会挨拶 結核研究所副所長 加藤誠也 9:30∼10:30 ●結核予防会の本 平成19年改訂 治療中のあなたと家族の方へ 結核予防会結核研究所対策支援部長 小林典子 著 A5判・24頁・オールカラー 定価241(本体230+税5%)円 全ページリニューアル・増ページ! 9カ月のDOTS手帳・連絡先記入・メモなど更に使いやすくなりました。 山形県健康福祉部次長 兼 山形県衛生研究所所長 阿彦忠之 著 日本結核病学会・抗酸菌検査法検討委員会 編 ご注文・お問い合わせは,結核予防会出版調査課まで TEL:03-3292-9289 FAX:03-3292-9208 mail:[email protected] 3/2007 複十字 No.314 35 多額のご寄付を下さった方々 36 真田明志,瀬野利一 械,ジャパンデジタルエンターテイン <指定寄付等>敬称略 熊本県−熊本県医師会,天草郡市医師 メント,ジャパン・マーケティング・ 小山政二,木野美奈子,三浦隆次,近 会,くまもと心療病院,伴病院,宮崎 エージェンシー,ジンカンパニー,ス 藤久子,鈴木ミヨ子(複十字病院),田 外科胃腸科医院,郷胃腸科内科クリニ ウィングマン,鈴松,千徳,ゼベック 中元直(宮城県支部),原崎信子(保生 ック,司法書士行政書士平島尚典事務 スインターナショナル,大洋産業,テ の森),奥原喜三郎(新山手病院),大 所,西山クリニック,谷 MAクリニ クノレイ,電技社,東京ハガネ,東伸 塚製薬・診断事業部月井完治(結核研 ック,アドファータ,阿蘇製薬,有明 電機,徳山,徳力建設工業,ナナ・コ 究所),太田伸一郎,寺田ちづ子(本部) 測量開発社,友和会,中央電子工業, ーポレート・コミュニケーション,西 <シール募金>敬称略 肥後タクシー,ダイヤエンジニアリン 林,日発エンタープライズ,日本トジ 東京都−東京都地域婦人団体連盟(東 グサポート,サンレイメディカル,熊 ックス,ハウセット,八方社,ピーテ 京都地婦連),宝仙学園,頌栄女子学院 本綜合管理,福島文隆堂,化学及血清 ィーエス・ファシリティーズ,フジ企 中・高等学校,豊島区立駒込中学校, 療法研究所,熊本県弘済会,自衛隊熊 画,富士石材,フリーセル,ペエック 帝京中学・高等学校,エイム,伊藤商 本病院,反後皓介,金澤和夫 ス,ポパイ食品工業,マインドトップ, 会 本部−トーメン・ホットライン,東京 マムハウスマーケティング,マルオ, 京都府−水田正光,小澤壽一郎,佐々 印刷機材トレーディング,東京新康華, メディック投資顧問,山商,大和調剤 木康夫,轟健史 東京地区生コンクリート協同組合,東 センター,ユー・エイチ・アイシステ 大阪府−滝本武一,庄司修三郎,下出 京パック,東邦金属工業,トライター ムズ,裕和産業,ユニコンプロダクト, 喜久子,寺澤恒子,山本勝,宮田津, ム,ドヴア,中田,中西食品,日清化 ユニバーサルコミュニケーション,早 折本洋子,谷口勝治,新井道煥,笠井 工,日新興産,新日石不動産駐車事業 稲田大学インターナショナル,アー 敬三,菅沼孝之,吉野孝幸,小林正夫, 部,野口ビル企画,フォーデイズ,深 ル・アイ・エー,アイサービス,川昌 磯田勝信,上田英雄,吉村直樹,田中 田キディ,富士キメラ総研,藤田桂子, エスエス献材林業オフィスビルディン 泰,山口保彦,月岡榮子,新いづもや 中島達晃,プロジェクト弐壱,ヘイワ グ,北里学園,コクサイエアロマリン, 愛媛県−陸上自衛隊松山駐屯地,伊予 堂,マーベラスエンターテイメント, 三共消毒,サン・フレア,サンミック 銀行,愛媛銀行,セキ,ルネサステク 槙コンサルタントオフィス,マツミハ 商事,品川総合福祉センター,シノダ, ノロジ西条事業所,済生会西条病院, ウジング,マンネット,三元建設,明 赤光会,大同コンクリート工業,テ 四国ガス松山本社,丸住製紙,キタム 文図書,森村設計,ユナイテッドシス ィ・オーオー,東京文化学園,八幸自 ラメディカル,宮原医院,伊予鉄道, テム,ユニバーサルウィング,吉村エ 動車,濱屋ガラス,パナック,福陽会, 愛媛サニタリープロダクツ,日本郵政 ンタープライズ,よろず屋,ラボ・シ 富士精密,フレッシュシステム,プロ 公社四国支社,愛媛新聞社,十全総合 ステム,レイケン,池田佳代,白須紀 ントコーポレーション,マースジヤパ 病院,西条道前病院,済美平成中等教 子,青山正博,福井絵里,松田正己, ン,ムトウユニパック,ヤンセンファ 育学校,八幡浜ライオンズクラブ,西 高瀬淳,中畑佐和子,近藤直子,齋藤 ーマ,有機合成薬品工業,ユタカ,理 条愛寿会病院,明光石油,イサムモー 八重,須田勝吉,小野崎郁史,鶴巻暁, 工協産 ター,林病院,石川病院,高圧ガス工 釜田彰子,八木さおり,山下美恵,福 業松山営業所,大久保内科クリニック, 田真紀,亀野邁夫,小林賢治,中山照 太陽印刷,眞理神経クリニック,秋川 子,蓑田祐三,林美由紀,王憲,高橋 会計事務所,井川重機,森熊,宇都宮 真千子,古津圭代,伊藤公子,田近秀 嘉忠弁護士事務所,クロスタニン四国 敏,林田文子,田村淑子,関口諭可子, H18.6.29 埼玉県 阪 信 副支部長を委嘱する 販売,井出工具,アサヒジム,伊予鉄 鈴木直,鈴木卓二,佐藤美千恵,ホス H18.6.28 埼玉県 金井忠男 副支部長の委嘱を解く 高島屋,愛媛県漁業協同組合連合会, ピティウム聖十字会中島医院,小泉博 青木商店,城東開発解体,コンピュー 資,田中慶司,桐岡智二,龍野晋次, お詫びと訂正 ター会計,藤田行雄司法書士事務所, 千疋屋ギャラリー,深尾勲,堀井至孝, 前号(No.313)において誤りがありましたので,お詫 ロッキー産業,善復寺,浦岡胃腸クリ 加藤紀美子,小林喜順,遠藤亜貴子, ニック,関西建物,愛媛県看護協会, 竹内章子,アイドマ,インフィニティ はと観光,村上耳鼻咽喉科,愛媛メデ ー,エイ.アンド.エイ,化研産業, ィカルラボラトリー,吉田眼科,神村 金井猛,銀座 月堂,クリエイティブ シャッター,南予生コン,コニカミノ ステージ,ケイジェイシー,ゲインズ ルタメディカル,母恵夢,日本食研, フォードジャパン,広栄運輸機工,三 山下外記,池田築,松崎一三,菅瑞江, 雅商事,システムラバー工業,品川機 3/2007 複十字 No.314 役員人事《支部》 発令日 支部名 氏名 発令内容 び申し上げますと共に訂正いたします。 P.31左段京都府のシール募金者の記載が荒井龍也様か ら西祥太郎様までの9名様分重複しておりましたので, お詫び申し上げます。 お知らせ 第11回日本CT検診学会読影セミナー・第6回日本CT検診学会肺気腫セミナー 読影セミナーでは, 「検診CT画像で要精検にする陰影としない陰影」というテーマで,CT検診画 像の読影経験の多い先生方に,要精検(D,E判定)にする,しないの判断の分かれ目を解説してい ただく予定です。肺気腫セミナーは, 「検診でのCOPD取り扱い基準を考える」というテーマで行い ます。関心のある方は多数ご参加下さい。 (詳細後日) 日時:2007年6月23日(土曜日)午前10時∼午後5時 会場:癌研有明病院 吉田記念講堂(東京都江東区有明) 読影セミナー世話人:JA長野厚生連 小諸厚生総合病院 放射線科 丸山雄一郎 〒384−8588 長野県小諸市与良町3−2−31 電話:0267−22−1070 Fax:0267−23−9127 e-mail:[email protected] 肺気腫セミナー世話人:聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院呼吸器内科 駒瀬裕子 〒241−0811 横浜市旭区矢指町1197−1 電話:045−366−1111 Fax:045−366−1190 e-mail: [email protected] 平成19年3月15日 発行 複十字 2007年314号 編集兼発行人 山下 武子 発行所 財団法人結核予防会 〒101- 0061 東京都千代田区三崎町1-3-12 電話 03(3292) 9211(代) 印刷所 日本印刷株式会社 東京都千代田区外神田6-3-3 電話 03(3833) 6971 結核予防会ホームページ URL http://www.jatahq.org 本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。 複十字シール運動 みんなの力で目指す,結核・肺がんのない社会 平成18年度複十字シール 複十字シール運動は,結核や肺がんなど,胸の病 気をなくすため100年近く続いている世界共通の 募金活動です。複十字シールを通じて集められた 益金は,研究,健診,普及活動,国際協力事業な どの推進に大きく役立っています。皆様のあたた かいご協力を,心よりお願いいたします。 運動の輪を広げてください。シールは,はがきや,手紙や包装の封印,何にでも使えます。 問合せ:資金課 TEL03-3292-9287(直)
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